電池及びその製造方法
【課題】標準規格に準拠した漏れのない円筒型空気亜鉛電池を製造し、空気亜鉛電池を汎用的に使用する。
【解決手段】本発明の空気亜鉛電池製造方法によれば、正極膜の対向する両端部の隙間を樹脂で充填して融着させることにより、亜鉛ゲルの漏れのない空気亜鉛電池を製造する。他の方法では、正極膜の両端部を加熱または加圧するか端部に超音波を照射して互いに融着させることにより、亜鉛ゲルの漏れのない空気亜鉛電池を製造する。
【解決手段】本発明の空気亜鉛電池製造方法によれば、正極膜の対向する両端部の隙間を樹脂で充填して融着させることにより、亜鉛ゲルの漏れのない空気亜鉛電池を製造する。他の方法では、正極膜の両端部を加熱または加圧するか端部に超音波を照射して互いに融着させることにより、亜鉛ゲルの漏れのない空気亜鉛電池を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の製造方法に係り、円筒型の標準規格に準拠した空気亜鉛電池を製造する方法に関する。また、円形以外の多様な形状を有するボタンセル電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永い間、電気機器の小型化が進み、多くの携帯用電気機器の開発が行われてきた。しかし、近年、移動通信が急速に発展してユビキタスインターネットという新しいパラダイムが紹介されはじめた頃より、小さくて携帯にも便利な電気機器の開発に一層注目が集まっている。MP3プレーヤー、デジカメ、移動電話、PDA、ラップトップコンピューターなど電気機器のほとんどが小型化され、携帯にも便利な形状に作られている。また、このような小型化と共に、MP3フォン、デカフォンなど一つの機器に様々な機能を組み合わせる試みもなされている。このような試みは、ユーザに対して移動の自由と使用の便宜を提供しているが、電力の安定的な供給が新しい課題となっている。
【0003】
従来から電気機器に対する電力供給手段として、電池(battery)が汎用されてきた。す
なわち、従来から電池として、マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池、空気亜鉛(zinc-air)電池などの1次電池と、ニッケルカドミウム (Ni−Cd) 電池、ニッケル水素 (Ni−H) 電池、リチウムイオン電池などの2次電池とが使用されてきた。これらのうち空気亜鉛電池は、1.4Vの比較的に高い電圧を提供し、エネルギー密度が高くかつ放電容量が大きいという利点を有する。また、電池の放電が完了するまでほとんど均一な放電特性を示すので、重金属の含有で使用が抑えられている水銀電池の代用として使用できるものとされている。
【0004】
この従来の電池は通常正、極(cathode)、負極(anode)、これらを隔離するセパレータ(separator)及び電解質を含み、これらは導電性材質の正極缶及び負極缶によって密封され
る。正極缶及び負極缶はそれぞれ正極及び負極と接触して電池の正極端子及び負極端子として機能する。特に、電池内の電解質の漏れを防止するために正極缶と負極缶の密封を必要とし、従来には正極缶と負極缶との間にガスケット(gasket)を挟持し、缶を折り曲げて(crimp)密封してきた。
【0005】
このような従来のボタンセル電池は、タトル(Tuttle)などの米国特許第5,423,027号(特許文献1)、第5,486,431号(特許文献2)及び韓国特許第306032
1号(特許文献3)などに開示されている。添付図を参照して従来技術を具体的に説明する。
【0006】
図1は、米国特許5,432,027号(特許文献1)に開示の従来のボタンセル電池の
断面図である。
【0007】
図1のボタンセル電池は、正極14、負極12、これらの間に介在されたセパレータ16及び電解質18を含み、正極缶20と負極缶22がこれらを密封する。密封部24ではガスケット26が正極缶20と負極缶22との間に挟持されてこれらを絶縁し、正極缶20が負極缶22の方に折り曲げられて負極缶22を覆うことにより密封される。
【0008】
図2は、韓国特許第3060321号(特許文献3)に開示のボタンセル電池の製造方
法を示す図である。
【0009】
図2の(a)に示すように、負極缶22上に負極12、セパレータ16、電解質18、正極14及びガスケット26を順次に配置し、これらを正極缶20 で覆う。次に、図2
の(b)に示すように、正極缶20の外周部を負極缶22の方に折り曲げて電池の内部を密封する。
【0010】
このように従来の電池製造方法は、缶を折り曲げることで電池を密封するので工程が簡単であるという利点があるが、正極缶20を折り曲げる場合、それにより正極14と接触する正極缶20の中心部にも圧力が加えられて変形が起こるという問題があった。密封度を高めるために折曲圧力を上げる場合、このような問題はさらに深刻になる。また、正極缶20と負極缶22との間にガスケット26が挟持されるのでその製造が煩雑であるという問題もある。
【0011】
また、円形のボタンセル電池を製造する場合には、従来の折曲による方法が好ましいが、四角形、五角形などの多角形の電池を製造する場合には、多角形の角部で折曲部が重畳される問題があって、多角形の電池製造には適用できないという不具合がある。
【0012】
図3は、従来のボタン型空気亜鉛電池の断面図である。
【0013】
図3を参照すると、従来のボタン型空気亜鉛電池は、正極14としての膜(membrane)と負極12としての亜鉛ゲルとを含み、膜と亜鉛ゲルとの間にはセパレータ(separator)1
6が介在される。そして、膜と亜鉛ゲルはそれぞれ導電性の正極缶20と負極缶22内に収容されて電池を構成する。
【0014】
膜は水分子を含む透過性膜であって、空気中の酸素と接触して水酸化イオン(OH-)
を発生させる。この反応は、下記式で表される。
【0015】
【化1】
この反応において電子は正極缶20を介して供給される。膜の材質としては通常炭素が汎用されるが、必要電圧または応用分野によって適切な材料が用いられる。
【0016】
このように正極における反応には酸素が必要であるため、正極は空気と接触し得る経路を必要とし、これにより正極缶20の下部には空気孔21が形成される。空気孔21は、電池を使用しない際には密封されて正極における反応を抑制する。
【0017】
上述した化学反応によって発生した水酸化イオンは、セパレータ16を介して負極の亜鉛ゲルに伝達される。セパレータ16は、水酸化イオンに対しては透過性を有する一方、亜鉛ゲルの漏出を防止し、亜鉛ゲルと膜を絶縁させる機能を有する。
【0018】
亜鉛ゲルは亜鉛粉末を主に含み、添加剤と電解質が混合される。通常電解質としては水酸化カリウム(KOH)水溶液が用いられる。水酸化イオンが亜鉛ゲル内に伝達されると、亜鉛粉末が水酸化イオンと反応して酸化される。この反応は、下記式で表される。
【0019】
【化2】
この反応により負極で電子が発生し、発生した電子は負極缶22を介して伝達される。このような化学反応により理論的には最大1.65Vの電圧が発生できる。
【0020】
従来の空気亜鉛電池は、ほとんどボタンセル形状にのみ使用され、このボタンセル形状の空気亜鉛電池も缶の折曲によって電池の密封が行われた。従来の空気亜鉛電池の製造方法は、日本特開第2002−373711号(特許文献4)に開示されている。
【0021】
図4を参照して従来の空気亜鉛電池の製造方法を説明する。空気亜鉛電池は、負極としての亜鉛ゲル12、正極としての正極膜14、及びこれらを絶縁させるセパレータ16を含み、それぞれ亜鉛ゲル12及び正極膜14と接続された負極缶22及び正極缶20がこれらを被包する。一方、正極缶20には正極膜14に空気が接触するべく貫通孔28が形成される。
【0022】
缶の末端部において負極缶22と正極缶20 の間にガスケット26が挟持 され、正極缶20とガスケット26が負極缶22の方に折り曲げられることで電池の密封が行われる。
【0023】
このような空気亜鉛電池は、電圧、エネルギー密度、放電容量、放電特性などに優れた性質を有しているが、従来の空気亜鉛電池の使用分野は補聴器、カメラなど特殊な分野に制限されていて、特にボタン型電池に販売されるに留まり、AAA、AAなどの円筒型標準規格の製造が行われなかった。円筒型の空気亜鉛電池を常用化するためには、円筒型電池が適用される応用分野に適した電圧及び電流を発生させるべく、空気亜鉛電池を製造せねばならないことはもとより、空気亜鉛電池を円筒状に製造する方法そのものが開発される必要がある。
【0024】
図5を参照して円筒型空気亜鉛電池製造における問題点を説明する。
【0025】
図5は、仮想の円筒型空気亜鉛電池の断面図であり、図3と同じ構成要素については同じ参照符号を付する。空気亜鉛電池は負極として亜鉛ゲルを含んでいるため、亜鉛ゲルの漏れが防止される必要がある。図3に示す従来のボタン型電池は、亜鉛ゲルの下部に正極膜14及びセパレータ16が配置されて亜鉛ゲルの漏れを防止し得るため、製造し易い。しかし、図5に示すように、円筒型電池は、セパレータ16と正極膜14が亜鉛ゲルを被包する構成を有し、円筒形状を形成するに当たり、正極膜14とセパレータ16が接合部30、32を有するため、亜鉛ゲルの漏れを遮断しにくい。
【0026】
したがって、円筒型の空気亜鉛乾電池を製造するためには、亜鉛ゲルの漏れを遮断しながらセパレータ12及び正極膜14の接合部を接合する方法の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第5,423,027号
【特許文献2】米国特許第5,486,431号
【特許文献3】韓国特許第3060321号
【特許文献4】日本特開第2002−373711号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、負極缶と正極缶との間に別途のガスケットを挟持することなく、折曲による缶の変形を防止するボタンセル電池の製造方法を提供することにある。
【0029】
また、本発明の他の目的は、円形のボタンセル電池はもとより多角形のボタンセル電池にも適用可能なボタンセル電池の製造方法を提供することにある。
【0030】
また、本発明のさらに他の目的は、缶の変形を防止し、多角形のボタンセル電池を製造することができる空気亜鉛電池の製造方法を提供することにある。
【0031】
また、本発明はまた他の目的は、亜鉛ゲルの漏れを遮断した円筒型の空気亜鉛電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、負極と、正極と、前記負極に対して電子が移動可能であるように配置された負極缶と、前記正極に対して電子が移動可能であるように配置された正極缶と、電池の胴体を形成するボディとを含み、前記ボディの一端は前記負極缶の端部と融着され、前記ボディの他端は前記正極缶の端部と融着されて電池の内部が密封された、電池が提供される。
【0033】
上記目的を達成するために、本発明の他の実施形態によれば、正極として機能する正極膜と、負極として機能する亜鉛ゲルと、前記正極膜に対して電子が移動可能であるように配置された正極缶と、前記亜鉛ゲルに対して電子が移動可能であるように配置された負極缶と、電池の胴体を形成するボディとを含み、前記ボディの一端は前記負極缶の端部と融着され、前記ボディの他端は前記正極缶の端部と融着されて電池の内部が密封された、空気亜鉛電池が提供される。
【0034】
一方、上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池において、前記正極膜の両端部が隙間を置いて対向し、前記隙間は樹脂で充填された、空気亜鉛電池が提供される。
【0035】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極とを含む空気亜鉛電池において、前記正極膜の両端部が重畳されて融着された、空気亜鉛電池が提供される。
【0036】
また、上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを円筒状に被包して密封する正極膜と、前記正極膜を円筒状に被包し、空気が流通可能な開口が形成されたハウジングと、前記正極膜と前記ハウジングとの間に挟持され、空気が流通可能な開口が形成された絶縁体とを含む、円筒型空気亜鉛電池が提供される。
【0037】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、第1極と、第2極と、前記第1極に対して電子が移動可能であるように配置された第1缶と、前記第2極に対して電子が移動可能であるように配置された第2缶と、電池の胴体を形成するボディとを含む電池の製造方法において、前記第1缶の端部と前記ボディの一端を融着させる第1融着段階と、前記第2缶の端部と前記ボディの他端を融着させる第2融着段階とを含む、電池の製造方法が提供される。
【0038】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、正極として機能する正極膜と、負極として機能する亜鉛ゲルと、前記正極膜に対して電子が移動可能であるように配置された正極缶と、前記亜鉛ゲルに対して電子が移動可能であるように配置された負極缶と、電池の胴体を形成するボディとを含む空気亜鉛電池の製造方法において、前記負極缶の端部と前記ボディの一端を融着させる第1融着段階と、前記正極缶の端部と前記ボディの他端を融着させる第2融着段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法が提供される。
【0039】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極とを含む空気亜鉛電池を製造する方法において、前記正極を両端部が隙間を置いて対向するように配置する段階と、前記隙間を樹脂で充填し、前記両端部と前記樹脂を融着させる段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法が提供される。
【0040】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極とを含む空気亜鉛電池を製造する方法において、前記正極を両端部が重畳されるように配置する段階と、前記正極膜の重畳された両端部を互いに融着させる段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法が提供される。
【0041】
また、上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能する正極とを含む空気亜鉛電池の製造方法において、前記正極膜を円筒状に密封する段階と、前記正極膜内に前記亜鉛ゲルを充填する段階と、前記充填された正極膜を円筒型絶縁体内に挿入する段階と、前記絶縁体を被覆するハウジングを形成する段階とを含む、円筒型空気亜鉛電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、缶の折曲による変形を防止し、缶と極(またはMEA)間の接触の信頼性を高め、電池の性能を向上させることができる。
【0043】
また、本発明によれば、正極缶と負極缶が重畳されないため別途のガスケットの挟持が不要になるので、製造工程の単純化を図ることができる。
【0044】
また、本発明によれば、缶を折り曲げて電池を密封しないため、円形はもとより多角形の横断面を有する多様な形状の電池を製造することができる。
【0045】
特に、本発明を空気亜鉛電池に適用する場合、従来円形のボタンセル形状のみを採用した空気亜鉛電池の形状を多様化して、空気亜鉛電池の適用範囲を拡大することができる。
【0046】
また、本発明によれば、円筒型空気亜鉛電池における亜鉛ゲルの漏れ現象を防止することができる。
【0047】
また、本発明によれば、亜鉛ゲルの漏れを防止した円筒型空気亜鉛電池を製造することができるので、AAAないしA規格に規格化して空気亜鉛電池を汎用的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】従来のボタンセル電池の断面図である。
【図2】従来のボタンセル電池の製造方法を示す図である。
【図3】従来のボタン型空気亜鉛電池の断面図である。
【図4】従来のボタンセル空気亜鉛電池の断面図である。
【図5】仮想の円筒型空気亜鉛電池の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態によるボタンセル電池の断面図である。
【図7】図6の電池の缶とボディの融着部を示す拡大図である。
【図8】本発明の一実施形態によるボタンセル電池の製造方法を示す流れ図である。
【図9】缶とボディの融着方法を示す流れ図である。
【図10】缶とボディの融着方法を示す流れ図である。
【図11】缶とボディの融着方法を示す流れ図である。
【図12】本発明の他の実施形態によるボタンセル電池の製造方法を示す流れ図である。
【図13】本発明のまた他の実施形態によるボタンセル空気亜鉛電池を示す断面図である。
【図14】本発明のまた他の実施形態によるボタンセル空気亜鉛電池の製造方法を示す流れ図である。
【図15】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の横断面図である。
【図16】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を示す図である。
【図17】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を示す図である。
【図18】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の横断面図である。
【図19】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付図面を参照して本発明の具体的実施形態を説明する。
【0050】
図6は、本発明の一実施形態によるボタンセル電池の断面図である。
【0051】
本実施形態のボタンセル電池は、U字型断面を有する第1缶52と第2缶54、及びボディ56を含み、これらの内部に第1極42、第2極44、これらを絶縁させるためのセパレータ46及び電解質48が含まれている。
【0052】
極42、44はU字型缶52、54の収容部に収容され、缶52、54 の端部60は
極42、44よりも高く突出される。第1缶及び第2缶52、54は導電性材質からなり、プレス工程によって製造できる。第1極42は第1缶52と電子移動可能に接触するので、第1缶52は第1極42の外部端子として機能し、第2缶54も第2極44と接触して第2極44 の外部端子として機能することができる。
【0053】
セパレータ46は多孔性材質からなり、第1極42と第2極44が直接接触することを防止する一方、電解質48を介した電子の移動を可能にする。
【0054】
本実施形態において、電池の密封は、缶52、54とボディ56の融着によって行われる。ボディ56は絶縁性樹脂からなり、第1缶52と第2缶54を絶縁させる一方、端部60で缶52、54と融着して電池内部を密封することができる。ボディ56と缶52、54の融着は、超音波、加圧、加熱などによって行われ、これについては後述する。
【0055】
一方、融着による結合の信頼性を高めるために缶52、54の端部60の形状を変形することができる。
【0056】
図7は、第1缶とボディの融着部を示す拡大図である。
【0057】
図7の(a)に示すようにボディ56と融着する缶52の端部60には貫通孔62aが
形成できる。この場合、溶融されたボディ56が貫通孔62aの内部を充填するので、ボ
ディ56の硬化後、缶52とボディ56の結合の信頼性が向上できる。また、図7の(b)及び図7(c)にそれぞれ示すように、缶52の端部に凸部62bまたは凹部62cを形成して缶52とボディ56の結合の信頼性を向上させることも可能である。
【0058】
次に、図6及び図8を参照して本発明の一実施形態によるボタンセル電池の製造方法を説明する。本実施形態の方法は、段階100からスタートする。段階100 において、
第1缶52上に第1極42を配置し、第2缶54上に第2極44を 配置して缶と極の結
合体を形成する。極42、44は、缶52、54の端部60が突出するように缶52、54 の収容部に収容される。
【0059】
次に、段階110において第2缶54をボディ56の一端に融着させる。図9乃至図11を参照して、第2缶54とボディ56の融着方法を詳述する。
【0060】
図9に示すように、第2缶54とボディ56の融着はボディ56を先に溶融させた後に行われる。具体的に、先ずボディ56の一端を溶融させた後(段階110a)、ボディ56の一端に第2缶54を配置する(段階110b)。ボディ56の溶融は通常加熱によって行われるが、加熱だけでなく加圧または超音波の照射によって行っても良い。具体的な溶融方式はボディ56の材質によって選択される。
【0061】
次に、第2缶54を加圧して缶の端部をボディ56内部に挿入し(段階110c)、ボディ56を冷却硬化させることにより第2缶54とボディ56を融着させることができる(段階110d)。
【0062】
一方、先ず、第2缶54をボディ56の一端に配置し、ボディ56を熱溶融させ、缶54の重さにより缶54の端部がボディ56に挿入されて融着するようにすることも可能である。
【0063】
他の方法では、図10に示すように、第2缶54を加熱して融着させることができる。この場合、第2缶54を所定温度で加熱する(段階110e)。次に、第2缶54をボディ56の一端に配置し、第2缶54の端部をボディ56内に押し込む(段階110f)。この段階において、缶54の端部がボディ56を溶融させると共にボディ56内に挿入される。最終的に、ボディ56を冷却硬化して融着させる(段階110g)。缶54の加熱温度は、ボディ56の溶融点、押込時の圧力などにより決定される。
【0064】
図11に示すように、第2缶54とボディ56の融着はインモールド成形により行うこともできる。具体的に、第2缶54を金型に挿入する(段階110h)。金型にはボディ56形状の射出空間が形成される。次に、段階110iにおいて樹脂を注入してボディ56を射出成形することにより、ボディ56と第2缶54が融着した結合体が形成される。
【0065】
再び図8に戻ると、段階120において、ボディ56と第2缶54の融着によって形成された空間にセパレータ46を配置して電解質48を充填する。最後に、第1極42と結合された第1缶52をボディ56の他端に融着させることにより電池の密封を完了する(段階130)。第1缶52とボディ56の融着は、前記第2缶54とボディ56の融着に用いられた方法と同様に、図9乃至図11を参照して説明した方法を採用して行うことができる。
【0066】
このように本実施形態では、缶52、54を折り曲げずにボディ56と融着させて電池を密封することにより、従来缶52、54を折り曲げる時に缶52、54の中心部で起こる変形を防止することができる。よって、缶52、54と極42、44の接触の信頼性を高めることができ、電池の性能を向上させることができる。
【0067】
また、缶52、54は、U字型断面を有するならば円形はもとより多角形の形状に製造しても構わないため、多角形のボタンセル電池を製造することも可能であり、電池の使用範囲を多様化することができる。
【0068】
前記実施形態では、第2缶54、第1缶52の順に融着させたが、第1缶52を先に融着させることも可能であり、缶52、54を同時に融着させることもできる。
【0069】
具体的に、図12は、本発明の他の実施形態によるボタンセル電池の製造方法を示す。本実施形態は、図8の実施形態と同様にして、缶と極の結合体を形成することでスタートする(段階200)。 次に、ボディ56の一端に第2缶54を配置し(段階210)、
ボディ56と第2缶54による空間内部にセパレータ46及び電解質48を挿入する(段階220)。次に、段階230でボディ56の他端に第1缶を配置する。
【0070】
最後に、段階240において、ボディ56の両端を溶融させ、缶52、54 の端部を
ボディ56の内部に挿入した後、ボディ56を冷却硬化してボディ56と缶52、54を融着させる。段階240における融着は、図9乃至図11を参照して上述した多様な方式を用いて行うことができる。
【0071】
本実施形態では二つの缶を同時に融着させることから、工程を単純化して電池製造の効率性を向上させることができる。
【0072】
本発明は、空気亜鉛電池にも適用可能である。
【0073】
図13は、本発明のまた他の実施形態によるボタンセル空気亜鉛電池を示す断面図である。
【0074】
本実施形態の空気亜鉛電池は、U字型断面を有する正極缶72と負極缶74、及びボディ56を含み、正極缶72の収容部にはMEA(Membrane Electrode Assembly)65が収
容されて正極缶72と接触されている。また、電池の内部には負極として機能する亜鉛ゲル66が充填されている。正極缶72及び負極缶74は導電性材質からなり、それぞれ正極外部端子及び負極外部端子として機能することができる。一方、正極缶72には貫通ホール68が形成されてMEA65と空気の接触が可能になる。
【0075】
本実施形態の空気亜鉛電池は、正極缶72及び負極缶74がボディ56に融着して電池内部を密封する。正極缶72及び負極缶74とボディ56の融着は、前記図6及び図7の実施形態による缶とボディの融着と同様であるので、具体的な説明を省略する。
【0076】
次に、図13及び図14を参照して本発明のまた他の実施形態によるボタンセル空気亜鉛電池の製造方法を説明する。
【0077】
本実施形態の方法によれば、段階300で負極缶74をボディ56の一端に融着させる。負極缶74とボディ56の融着は図7を参照して説明した多様な方法を採用して行うことができる。
【0078】
次に、負極缶74とボディ56の結合体によって形成された内部空間に亜鉛ゲル66を充填する(段階310)。ボディ56と負極缶74の融着によって両者の結合部が密封されているので、亜鉛ゲル66の漏れが防止される。
【0079】
段階320で正極缶72をボディ56の他端に融着させる。正極缶72は MEA65
、または正極膜及びセパレータと予め結合し、正極缶72の端部60はMEA65よりも高く突出する。本段階で突出した正極缶72の端部60がボディ56の他端に融着する。正極缶72とボディ56の融着は、図9乃至図11を参照して上述した多様な方法を採用して行うことができる。このような正極缶72とボディ56の融着により電池の密封が完了する。
【0080】
本実施形態では、負極缶74、正極缶72の順にボディ56と融着させたが、正極缶72を先に融着させることもできる。また、負極缶74と正極缶72を同時に融着させることも可能である。この場合、図12を参照して上述した実施形態と同様にして、缶72、74の配置と亜鉛ゲル66の充填を完了した後、缶72、74とボディを融着させて電池を密封することができる。
【0081】
本実施形態では、缶72、74を折り曲げずにボディ56と融着させて電池の密封を行うので、缶72、74の折曲による変形を防止することができ、これにより電池の性能を改善することができる。また、多角形の缶を使用できるので、円形のボタンセルはもとより多角形のボタンセル電池を製造することが可能であり、円形ボタンセルのみを採用した既存の空気亜鉛電池の適用分野を拡大することができる。特に、本発明をボタンセル電池のほかに円筒型、四角柱型などの標準規格の電池に拡大適用する場合、空気亜鉛電池を汎用的に使用することも可能である。
【0082】
以下、円筒型の空気亜鉛電池についてより具体的に説明する。
【0083】
図15は、本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の横断面図である。
【0084】
本実施形態の円筒型空気亜鉛電池は、亜鉛ゲル66、亜鉛ゲル66を被包するセパレータ46、及び正極膜として作用する膜64を含み、さらに膜64は絶縁体78とハウジング80によって被覆できる。
【0085】
前記ハウジング80は、プレス加工によって製造された金属板からなり得、電池保護用及び外観保持用として提供される。また、ハウジング80は、電池の上部(図示せず)で正極の膜64と接続されて膜64に電子を供給する正極缶として機能することもできる。絶縁体78は、ハウジング80と膜64間を絶縁させて電流の漏れを防止するためのもので、射出成形などにより樹脂材質で製造することができる。一方、正極の膜64に酸素を供給できるように、ハウジング80と絶縁体78には開口84が形成される。
【0086】
膜64とセパレータ46は平面状に製造した後、亜鉛ゲル66を被包するように円筒状に湾曲可能である。湾曲された膜64及びセパレータ46の両端部70は隙間を置いて対向配置され、接合子82によって接合される。接合子82は樹脂からなり、膜64及びセパレータ46に融着して両端部70の接合部からの亜鉛ゲル66の漏れを防止することができる。また、接合子82は、図示のように膜64及びセパレータ46の一部を覆うように成形して密封効果を一層高めることができる。
【0087】
以下、図15と図16及び図17を参照して本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を説明する。
【0088】
最初に、円筒型の絶縁体78を用意する。絶縁体78は射出成形によって円筒状に製造できる。
【0089】
次に、平面状の膜64とセパレータ46を用意し、図16に示すように、セパレータ46と膜64を、その両端部70が隙間を置いて対向するように射出成形用金型86に配置する。前記金型86には、膜64とセパレータ46の両端部70の隙間周辺にのみ樹脂が注入される空間88が形成される。金型としては、膜64及びセパレータ46全体を収容することなく接合部のみを収容するものを用意しても良い。
【0090】
その後、図17に示すように、空間88に樹脂を注入し、膜64及びセパレータ46と融着させて接合子82を形成する。このとき、樹脂は膜64及びセパレータ46の両端部70の一部を覆うように成形できる。また、樹脂と接触する膜64及びセパレータ46の両端部70の表面には凹凸または開口を形成して脂の融着を容易にできる。樹脂が膜64及びセパレータ46と融着するため内部空間が密閉可能になり、亜鉛ゲル66が充填された場合には亜鉛ゲル66の漏れを防止することができる。
【0091】
このように形成された円筒型膜64及びセパレータ46内に亜鉛ゲル66 を充填し、
これらを絶縁体78内に挿入する。最後に、絶縁体78を被覆するハウジング80を形成して円筒型空気亜鉛電池の製造を完了する。
【0092】
次に、図18を参照して本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池を説明する。
【0093】
図18は、本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の横断面図である。
【0094】
本実施形態において、上記実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0095】
本実施形態の円筒型空気亜鉛電池は、亜鉛ゲル66、亜鉛ゲル66を被包するセパレータ46、及び正極膜として作用する膜64を含み、さらに膜64は絶縁体78とハウジング80によって被覆できる。また、ハウジング80及び絶縁体78には空気の流通を可能にする開口84が形成できる。
【0096】
膜64とセパレータ46は平面状に製造した後、亜鉛ゲル66を被包するように円筒状に湾曲できる。このとき、湾曲された膜64及びセパレータ46の両端部は重畳される。この場合、図18に示すように、両端部70に互いに逆方向の傾斜面を形成することで、これらが自然に重なり、重畳後にも厚さの増加を抑えることができる。両端部の形状は、図示のような傾斜面に限定されず、一面には凸部を形成し、他面には凹部を形成するなど相補的な形状であるならばどの形状でも採用可能である。重畳された両端部70は、加熱、加圧または超音波の照射によって融着できる。このため、亜鉛ゲル66が膜64及びセパレータ46の接合部から漏れることを防止できる。一方、図18には、膜64とセパレータ46が連続的な傾斜面を有することが示されているが、それぞれ異なる形状を有することで接合後の密閉効果を向上させることもできる。
【0097】
次に、図18及び図19を参照して本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を説明する。
【0098】
先ず、円筒型の絶縁体78を用意し、平面状の膜64とセパレータ46を用意する。次に、図19に示すように、セパレータ46と膜64を、その両端部が重畳されるようにジグ90に配置する。ジグ90は、膜64及びセパレータ46全体でなく接合部のみを収容することができる。
【0099】
その後、ジグ90を介して重畳された両端部70を加熱または加圧するか超音波を照射して融着させる。このように膜64及びセパレータ46の両端部が互いに融着するため内部空間が密閉可能になり、亜鉛ゲル66が充填された場合には亜鉛ゲル66の漏れを防止することができる。
【0100】
このように形成された円筒型膜64及びセパレータ46内に亜鉛ゲル66 を充填し、
これらを絶縁体78内に挿入する。最後に、絶縁体78を被覆するハウジング80を形成して円筒型空気亜鉛電池の製造を完了する。
【0101】
以上、具体的な本発明の実施形態を説明したが、これは単なる例示的なものに過ぎず、本発明の範囲内で各種の変形が可能である。
【0102】
例えば、前記実施形態による電池において、セパレータ46と膜64が別個の構成要素として開示されているが、これらを一つの構成要素に代替することもできる。特に、本発明において、これら構成要素をMEA(Membrane-Electrode Assembly)に代替することが
できる。MEAは、従来の正極膜とセパレータの機能をする複合体であって、これについては本技術分野に公知されている。勿論、MEAを採用せずに正極膜とセパレータを別個の構成要素として含むことも可能であり、これも本発明の範囲内のものであることは明白であろう。また、本発明における各構成要素の材質は、公知の構成要素のいずれかを用いても良い。当業者はこれらのうち最適の材質を容易に選択して用いることができる。
【0103】
また、前記実施形態の製造方法において、各工程を特定の順序で説明したが、本発明の範囲を逸脱しない限度で工程の順序の変更が可能であることは、当業者にとって容易に理解できるであろう。
【0104】
また、本発明の実施形態による電池の主要機能と関連した必須な構成要素についてのみ説明したが、電池の機能を向上させるために公知の各種構成要素を追加することができる。例えば、空気亜鉛電池の膜と正極缶との間に発水膜、拡散膜などの様々な機能性膜を介在することができる。
【0105】
本発明は図面に示された実施形態を参考として説明されたが、これは単なる例示的なものに過ぎず、この技術分野における当業者であれば、これより各種の変形及び均等な他の実施形態が可能であることが理解できるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の製造方法に係り、円筒型の標準規格に準拠した空気亜鉛電池を製造する方法に関する。また、円形以外の多様な形状を有するボタンセル電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永い間、電気機器の小型化が進み、多くの携帯用電気機器の開発が行われてきた。しかし、近年、移動通信が急速に発展してユビキタスインターネットという新しいパラダイムが紹介されはじめた頃より、小さくて携帯にも便利な電気機器の開発に一層注目が集まっている。MP3プレーヤー、デジカメ、移動電話、PDA、ラップトップコンピューターなど電気機器のほとんどが小型化され、携帯にも便利な形状に作られている。また、このような小型化と共に、MP3フォン、デカフォンなど一つの機器に様々な機能を組み合わせる試みもなされている。このような試みは、ユーザに対して移動の自由と使用の便宜を提供しているが、電力の安定的な供給が新しい課題となっている。
【0003】
従来から電気機器に対する電力供給手段として、電池(battery)が汎用されてきた。す
なわち、従来から電池として、マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池、空気亜鉛(zinc-air)電池などの1次電池と、ニッケルカドミウム (Ni−Cd) 電池、ニッケル水素 (Ni−H) 電池、リチウムイオン電池などの2次電池とが使用されてきた。これらのうち空気亜鉛電池は、1.4Vの比較的に高い電圧を提供し、エネルギー密度が高くかつ放電容量が大きいという利点を有する。また、電池の放電が完了するまでほとんど均一な放電特性を示すので、重金属の含有で使用が抑えられている水銀電池の代用として使用できるものとされている。
【0004】
この従来の電池は通常正、極(cathode)、負極(anode)、これらを隔離するセパレータ(separator)及び電解質を含み、これらは導電性材質の正極缶及び負極缶によって密封され
る。正極缶及び負極缶はそれぞれ正極及び負極と接触して電池の正極端子及び負極端子として機能する。特に、電池内の電解質の漏れを防止するために正極缶と負極缶の密封を必要とし、従来には正極缶と負極缶との間にガスケット(gasket)を挟持し、缶を折り曲げて(crimp)密封してきた。
【0005】
このような従来のボタンセル電池は、タトル(Tuttle)などの米国特許第5,423,027号(特許文献1)、第5,486,431号(特許文献2)及び韓国特許第306032
1号(特許文献3)などに開示されている。添付図を参照して従来技術を具体的に説明する。
【0006】
図1は、米国特許5,432,027号(特許文献1)に開示の従来のボタンセル電池の
断面図である。
【0007】
図1のボタンセル電池は、正極14、負極12、これらの間に介在されたセパレータ16及び電解質18を含み、正極缶20と負極缶22がこれらを密封する。密封部24ではガスケット26が正極缶20と負極缶22との間に挟持されてこれらを絶縁し、正極缶20が負極缶22の方に折り曲げられて負極缶22を覆うことにより密封される。
【0008】
図2は、韓国特許第3060321号(特許文献3)に開示のボタンセル電池の製造方
法を示す図である。
【0009】
図2の(a)に示すように、負極缶22上に負極12、セパレータ16、電解質18、正極14及びガスケット26を順次に配置し、これらを正極缶20 で覆う。次に、図2
の(b)に示すように、正極缶20の外周部を負極缶22の方に折り曲げて電池の内部を密封する。
【0010】
このように従来の電池製造方法は、缶を折り曲げることで電池を密封するので工程が簡単であるという利点があるが、正極缶20を折り曲げる場合、それにより正極14と接触する正極缶20の中心部にも圧力が加えられて変形が起こるという問題があった。密封度を高めるために折曲圧力を上げる場合、このような問題はさらに深刻になる。また、正極缶20と負極缶22との間にガスケット26が挟持されるのでその製造が煩雑であるという問題もある。
【0011】
また、円形のボタンセル電池を製造する場合には、従来の折曲による方法が好ましいが、四角形、五角形などの多角形の電池を製造する場合には、多角形の角部で折曲部が重畳される問題があって、多角形の電池製造には適用できないという不具合がある。
【0012】
図3は、従来のボタン型空気亜鉛電池の断面図である。
【0013】
図3を参照すると、従来のボタン型空気亜鉛電池は、正極14としての膜(membrane)と負極12としての亜鉛ゲルとを含み、膜と亜鉛ゲルとの間にはセパレータ(separator)1
6が介在される。そして、膜と亜鉛ゲルはそれぞれ導電性の正極缶20と負極缶22内に収容されて電池を構成する。
【0014】
膜は水分子を含む透過性膜であって、空気中の酸素と接触して水酸化イオン(OH-)
を発生させる。この反応は、下記式で表される。
【0015】
【化1】
この反応において電子は正極缶20を介して供給される。膜の材質としては通常炭素が汎用されるが、必要電圧または応用分野によって適切な材料が用いられる。
【0016】
このように正極における反応には酸素が必要であるため、正極は空気と接触し得る経路を必要とし、これにより正極缶20の下部には空気孔21が形成される。空気孔21は、電池を使用しない際には密封されて正極における反応を抑制する。
【0017】
上述した化学反応によって発生した水酸化イオンは、セパレータ16を介して負極の亜鉛ゲルに伝達される。セパレータ16は、水酸化イオンに対しては透過性を有する一方、亜鉛ゲルの漏出を防止し、亜鉛ゲルと膜を絶縁させる機能を有する。
【0018】
亜鉛ゲルは亜鉛粉末を主に含み、添加剤と電解質が混合される。通常電解質としては水酸化カリウム(KOH)水溶液が用いられる。水酸化イオンが亜鉛ゲル内に伝達されると、亜鉛粉末が水酸化イオンと反応して酸化される。この反応は、下記式で表される。
【0019】
【化2】
この反応により負極で電子が発生し、発生した電子は負極缶22を介して伝達される。このような化学反応により理論的には最大1.65Vの電圧が発生できる。
【0020】
従来の空気亜鉛電池は、ほとんどボタンセル形状にのみ使用され、このボタンセル形状の空気亜鉛電池も缶の折曲によって電池の密封が行われた。従来の空気亜鉛電池の製造方法は、日本特開第2002−373711号(特許文献4)に開示されている。
【0021】
図4を参照して従来の空気亜鉛電池の製造方法を説明する。空気亜鉛電池は、負極としての亜鉛ゲル12、正極としての正極膜14、及びこれらを絶縁させるセパレータ16を含み、それぞれ亜鉛ゲル12及び正極膜14と接続された負極缶22及び正極缶20がこれらを被包する。一方、正極缶20には正極膜14に空気が接触するべく貫通孔28が形成される。
【0022】
缶の末端部において負極缶22と正極缶20 の間にガスケット26が挟持 され、正極缶20とガスケット26が負極缶22の方に折り曲げられることで電池の密封が行われる。
【0023】
このような空気亜鉛電池は、電圧、エネルギー密度、放電容量、放電特性などに優れた性質を有しているが、従来の空気亜鉛電池の使用分野は補聴器、カメラなど特殊な分野に制限されていて、特にボタン型電池に販売されるに留まり、AAA、AAなどの円筒型標準規格の製造が行われなかった。円筒型の空気亜鉛電池を常用化するためには、円筒型電池が適用される応用分野に適した電圧及び電流を発生させるべく、空気亜鉛電池を製造せねばならないことはもとより、空気亜鉛電池を円筒状に製造する方法そのものが開発される必要がある。
【0024】
図5を参照して円筒型空気亜鉛電池製造における問題点を説明する。
【0025】
図5は、仮想の円筒型空気亜鉛電池の断面図であり、図3と同じ構成要素については同じ参照符号を付する。空気亜鉛電池は負極として亜鉛ゲルを含んでいるため、亜鉛ゲルの漏れが防止される必要がある。図3に示す従来のボタン型電池は、亜鉛ゲルの下部に正極膜14及びセパレータ16が配置されて亜鉛ゲルの漏れを防止し得るため、製造し易い。しかし、図5に示すように、円筒型電池は、セパレータ16と正極膜14が亜鉛ゲルを被包する構成を有し、円筒形状を形成するに当たり、正極膜14とセパレータ16が接合部30、32を有するため、亜鉛ゲルの漏れを遮断しにくい。
【0026】
したがって、円筒型の空気亜鉛乾電池を製造するためには、亜鉛ゲルの漏れを遮断しながらセパレータ12及び正極膜14の接合部を接合する方法の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第5,423,027号
【特許文献2】米国特許第5,486,431号
【特許文献3】韓国特許第3060321号
【特許文献4】日本特開第2002−373711号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、負極缶と正極缶との間に別途のガスケットを挟持することなく、折曲による缶の変形を防止するボタンセル電池の製造方法を提供することにある。
【0029】
また、本発明の他の目的は、円形のボタンセル電池はもとより多角形のボタンセル電池にも適用可能なボタンセル電池の製造方法を提供することにある。
【0030】
また、本発明のさらに他の目的は、缶の変形を防止し、多角形のボタンセル電池を製造することができる空気亜鉛電池の製造方法を提供することにある。
【0031】
また、本発明はまた他の目的は、亜鉛ゲルの漏れを遮断した円筒型の空気亜鉛電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、負極と、正極と、前記負極に対して電子が移動可能であるように配置された負極缶と、前記正極に対して電子が移動可能であるように配置された正極缶と、電池の胴体を形成するボディとを含み、前記ボディの一端は前記負極缶の端部と融着され、前記ボディの他端は前記正極缶の端部と融着されて電池の内部が密封された、電池が提供される。
【0033】
上記目的を達成するために、本発明の他の実施形態によれば、正極として機能する正極膜と、負極として機能する亜鉛ゲルと、前記正極膜に対して電子が移動可能であるように配置された正極缶と、前記亜鉛ゲルに対して電子が移動可能であるように配置された負極缶と、電池の胴体を形成するボディとを含み、前記ボディの一端は前記負極缶の端部と融着され、前記ボディの他端は前記正極缶の端部と融着されて電池の内部が密封された、空気亜鉛電池が提供される。
【0034】
一方、上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池において、前記正極膜の両端部が隙間を置いて対向し、前記隙間は樹脂で充填された、空気亜鉛電池が提供される。
【0035】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極とを含む空気亜鉛電池において、前記正極膜の両端部が重畳されて融着された、空気亜鉛電池が提供される。
【0036】
また、上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを円筒状に被包して密封する正極膜と、前記正極膜を円筒状に被包し、空気が流通可能な開口が形成されたハウジングと、前記正極膜と前記ハウジングとの間に挟持され、空気が流通可能な開口が形成された絶縁体とを含む、円筒型空気亜鉛電池が提供される。
【0037】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、第1極と、第2極と、前記第1極に対して電子が移動可能であるように配置された第1缶と、前記第2極に対して電子が移動可能であるように配置された第2缶と、電池の胴体を形成するボディとを含む電池の製造方法において、前記第1缶の端部と前記ボディの一端を融着させる第1融着段階と、前記第2缶の端部と前記ボディの他端を融着させる第2融着段階とを含む、電池の製造方法が提供される。
【0038】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、正極として機能する正極膜と、負極として機能する亜鉛ゲルと、前記正極膜に対して電子が移動可能であるように配置された正極缶と、前記亜鉛ゲルに対して電子が移動可能であるように配置された負極缶と、電池の胴体を形成するボディとを含む空気亜鉛電池の製造方法において、前記負極缶の端部と前記ボディの一端を融着させる第1融着段階と、前記正極缶の端部と前記ボディの他端を融着させる第2融着段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法が提供される。
【0039】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極とを含む空気亜鉛電池を製造する方法において、前記正極を両端部が隙間を置いて対向するように配置する段階と、前記隙間を樹脂で充填し、前記両端部と前記樹脂を融着させる段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法が提供される。
【0040】
上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極とを含む空気亜鉛電池を製造する方法において、前記正極を両端部が重畳されるように配置する段階と、前記正極膜の重畳された両端部を互いに融着させる段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法が提供される。
【0041】
また、上記目的を達成するために、本発明のまた他の実施形態によれば、負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能する正極とを含む空気亜鉛電池の製造方法において、前記正極膜を円筒状に密封する段階と、前記正極膜内に前記亜鉛ゲルを充填する段階と、前記充填された正極膜を円筒型絶縁体内に挿入する段階と、前記絶縁体を被覆するハウジングを形成する段階とを含む、円筒型空気亜鉛電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、缶の折曲による変形を防止し、缶と極(またはMEA)間の接触の信頼性を高め、電池の性能を向上させることができる。
【0043】
また、本発明によれば、正極缶と負極缶が重畳されないため別途のガスケットの挟持が不要になるので、製造工程の単純化を図ることができる。
【0044】
また、本発明によれば、缶を折り曲げて電池を密封しないため、円形はもとより多角形の横断面を有する多様な形状の電池を製造することができる。
【0045】
特に、本発明を空気亜鉛電池に適用する場合、従来円形のボタンセル形状のみを採用した空気亜鉛電池の形状を多様化して、空気亜鉛電池の適用範囲を拡大することができる。
【0046】
また、本発明によれば、円筒型空気亜鉛電池における亜鉛ゲルの漏れ現象を防止することができる。
【0047】
また、本発明によれば、亜鉛ゲルの漏れを防止した円筒型空気亜鉛電池を製造することができるので、AAAないしA規格に規格化して空気亜鉛電池を汎用的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】従来のボタンセル電池の断面図である。
【図2】従来のボタンセル電池の製造方法を示す図である。
【図3】従来のボタン型空気亜鉛電池の断面図である。
【図4】従来のボタンセル空気亜鉛電池の断面図である。
【図5】仮想の円筒型空気亜鉛電池の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態によるボタンセル電池の断面図である。
【図7】図6の電池の缶とボディの融着部を示す拡大図である。
【図8】本発明の一実施形態によるボタンセル電池の製造方法を示す流れ図である。
【図9】缶とボディの融着方法を示す流れ図である。
【図10】缶とボディの融着方法を示す流れ図である。
【図11】缶とボディの融着方法を示す流れ図である。
【図12】本発明の他の実施形態によるボタンセル電池の製造方法を示す流れ図である。
【図13】本発明のまた他の実施形態によるボタンセル空気亜鉛電池を示す断面図である。
【図14】本発明のまた他の実施形態によるボタンセル空気亜鉛電池の製造方法を示す流れ図である。
【図15】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の横断面図である。
【図16】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を示す図である。
【図17】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を示す図である。
【図18】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の横断面図である。
【図19】本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付図面を参照して本発明の具体的実施形態を説明する。
【0050】
図6は、本発明の一実施形態によるボタンセル電池の断面図である。
【0051】
本実施形態のボタンセル電池は、U字型断面を有する第1缶52と第2缶54、及びボディ56を含み、これらの内部に第1極42、第2極44、これらを絶縁させるためのセパレータ46及び電解質48が含まれている。
【0052】
極42、44はU字型缶52、54の収容部に収容され、缶52、54 の端部60は
極42、44よりも高く突出される。第1缶及び第2缶52、54は導電性材質からなり、プレス工程によって製造できる。第1極42は第1缶52と電子移動可能に接触するので、第1缶52は第1極42の外部端子として機能し、第2缶54も第2極44と接触して第2極44 の外部端子として機能することができる。
【0053】
セパレータ46は多孔性材質からなり、第1極42と第2極44が直接接触することを防止する一方、電解質48を介した電子の移動を可能にする。
【0054】
本実施形態において、電池の密封は、缶52、54とボディ56の融着によって行われる。ボディ56は絶縁性樹脂からなり、第1缶52と第2缶54を絶縁させる一方、端部60で缶52、54と融着して電池内部を密封することができる。ボディ56と缶52、54の融着は、超音波、加圧、加熱などによって行われ、これについては後述する。
【0055】
一方、融着による結合の信頼性を高めるために缶52、54の端部60の形状を変形することができる。
【0056】
図7は、第1缶とボディの融着部を示す拡大図である。
【0057】
図7の(a)に示すようにボディ56と融着する缶52の端部60には貫通孔62aが
形成できる。この場合、溶融されたボディ56が貫通孔62aの内部を充填するので、ボ
ディ56の硬化後、缶52とボディ56の結合の信頼性が向上できる。また、図7の(b)及び図7(c)にそれぞれ示すように、缶52の端部に凸部62bまたは凹部62cを形成して缶52とボディ56の結合の信頼性を向上させることも可能である。
【0058】
次に、図6及び図8を参照して本発明の一実施形態によるボタンセル電池の製造方法を説明する。本実施形態の方法は、段階100からスタートする。段階100 において、
第1缶52上に第1極42を配置し、第2缶54上に第2極44を 配置して缶と極の結
合体を形成する。極42、44は、缶52、54の端部60が突出するように缶52、54 の収容部に収容される。
【0059】
次に、段階110において第2缶54をボディ56の一端に融着させる。図9乃至図11を参照して、第2缶54とボディ56の融着方法を詳述する。
【0060】
図9に示すように、第2缶54とボディ56の融着はボディ56を先に溶融させた後に行われる。具体的に、先ずボディ56の一端を溶融させた後(段階110a)、ボディ56の一端に第2缶54を配置する(段階110b)。ボディ56の溶融は通常加熱によって行われるが、加熱だけでなく加圧または超音波の照射によって行っても良い。具体的な溶融方式はボディ56の材質によって選択される。
【0061】
次に、第2缶54を加圧して缶の端部をボディ56内部に挿入し(段階110c)、ボディ56を冷却硬化させることにより第2缶54とボディ56を融着させることができる(段階110d)。
【0062】
一方、先ず、第2缶54をボディ56の一端に配置し、ボディ56を熱溶融させ、缶54の重さにより缶54の端部がボディ56に挿入されて融着するようにすることも可能である。
【0063】
他の方法では、図10に示すように、第2缶54を加熱して融着させることができる。この場合、第2缶54を所定温度で加熱する(段階110e)。次に、第2缶54をボディ56の一端に配置し、第2缶54の端部をボディ56内に押し込む(段階110f)。この段階において、缶54の端部がボディ56を溶融させると共にボディ56内に挿入される。最終的に、ボディ56を冷却硬化して融着させる(段階110g)。缶54の加熱温度は、ボディ56の溶融点、押込時の圧力などにより決定される。
【0064】
図11に示すように、第2缶54とボディ56の融着はインモールド成形により行うこともできる。具体的に、第2缶54を金型に挿入する(段階110h)。金型にはボディ56形状の射出空間が形成される。次に、段階110iにおいて樹脂を注入してボディ56を射出成形することにより、ボディ56と第2缶54が融着した結合体が形成される。
【0065】
再び図8に戻ると、段階120において、ボディ56と第2缶54の融着によって形成された空間にセパレータ46を配置して電解質48を充填する。最後に、第1極42と結合された第1缶52をボディ56の他端に融着させることにより電池の密封を完了する(段階130)。第1缶52とボディ56の融着は、前記第2缶54とボディ56の融着に用いられた方法と同様に、図9乃至図11を参照して説明した方法を採用して行うことができる。
【0066】
このように本実施形態では、缶52、54を折り曲げずにボディ56と融着させて電池を密封することにより、従来缶52、54を折り曲げる時に缶52、54の中心部で起こる変形を防止することができる。よって、缶52、54と極42、44の接触の信頼性を高めることができ、電池の性能を向上させることができる。
【0067】
また、缶52、54は、U字型断面を有するならば円形はもとより多角形の形状に製造しても構わないため、多角形のボタンセル電池を製造することも可能であり、電池の使用範囲を多様化することができる。
【0068】
前記実施形態では、第2缶54、第1缶52の順に融着させたが、第1缶52を先に融着させることも可能であり、缶52、54を同時に融着させることもできる。
【0069】
具体的に、図12は、本発明の他の実施形態によるボタンセル電池の製造方法を示す。本実施形態は、図8の実施形態と同様にして、缶と極の結合体を形成することでスタートする(段階200)。 次に、ボディ56の一端に第2缶54を配置し(段階210)、
ボディ56と第2缶54による空間内部にセパレータ46及び電解質48を挿入する(段階220)。次に、段階230でボディ56の他端に第1缶を配置する。
【0070】
最後に、段階240において、ボディ56の両端を溶融させ、缶52、54 の端部を
ボディ56の内部に挿入した後、ボディ56を冷却硬化してボディ56と缶52、54を融着させる。段階240における融着は、図9乃至図11を参照して上述した多様な方式を用いて行うことができる。
【0071】
本実施形態では二つの缶を同時に融着させることから、工程を単純化して電池製造の効率性を向上させることができる。
【0072】
本発明は、空気亜鉛電池にも適用可能である。
【0073】
図13は、本発明のまた他の実施形態によるボタンセル空気亜鉛電池を示す断面図である。
【0074】
本実施形態の空気亜鉛電池は、U字型断面を有する正極缶72と負極缶74、及びボディ56を含み、正極缶72の収容部にはMEA(Membrane Electrode Assembly)65が収
容されて正極缶72と接触されている。また、電池の内部には負極として機能する亜鉛ゲル66が充填されている。正極缶72及び負極缶74は導電性材質からなり、それぞれ正極外部端子及び負極外部端子として機能することができる。一方、正極缶72には貫通ホール68が形成されてMEA65と空気の接触が可能になる。
【0075】
本実施形態の空気亜鉛電池は、正極缶72及び負極缶74がボディ56に融着して電池内部を密封する。正極缶72及び負極缶74とボディ56の融着は、前記図6及び図7の実施形態による缶とボディの融着と同様であるので、具体的な説明を省略する。
【0076】
次に、図13及び図14を参照して本発明のまた他の実施形態によるボタンセル空気亜鉛電池の製造方法を説明する。
【0077】
本実施形態の方法によれば、段階300で負極缶74をボディ56の一端に融着させる。負極缶74とボディ56の融着は図7を参照して説明した多様な方法を採用して行うことができる。
【0078】
次に、負極缶74とボディ56の結合体によって形成された内部空間に亜鉛ゲル66を充填する(段階310)。ボディ56と負極缶74の融着によって両者の結合部が密封されているので、亜鉛ゲル66の漏れが防止される。
【0079】
段階320で正極缶72をボディ56の他端に融着させる。正極缶72は MEA65
、または正極膜及びセパレータと予め結合し、正極缶72の端部60はMEA65よりも高く突出する。本段階で突出した正極缶72の端部60がボディ56の他端に融着する。正極缶72とボディ56の融着は、図9乃至図11を参照して上述した多様な方法を採用して行うことができる。このような正極缶72とボディ56の融着により電池の密封が完了する。
【0080】
本実施形態では、負極缶74、正極缶72の順にボディ56と融着させたが、正極缶72を先に融着させることもできる。また、負極缶74と正極缶72を同時に融着させることも可能である。この場合、図12を参照して上述した実施形態と同様にして、缶72、74の配置と亜鉛ゲル66の充填を完了した後、缶72、74とボディを融着させて電池を密封することができる。
【0081】
本実施形態では、缶72、74を折り曲げずにボディ56と融着させて電池の密封を行うので、缶72、74の折曲による変形を防止することができ、これにより電池の性能を改善することができる。また、多角形の缶を使用できるので、円形のボタンセルはもとより多角形のボタンセル電池を製造することが可能であり、円形ボタンセルのみを採用した既存の空気亜鉛電池の適用分野を拡大することができる。特に、本発明をボタンセル電池のほかに円筒型、四角柱型などの標準規格の電池に拡大適用する場合、空気亜鉛電池を汎用的に使用することも可能である。
【0082】
以下、円筒型の空気亜鉛電池についてより具体的に説明する。
【0083】
図15は、本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の横断面図である。
【0084】
本実施形態の円筒型空気亜鉛電池は、亜鉛ゲル66、亜鉛ゲル66を被包するセパレータ46、及び正極膜として作用する膜64を含み、さらに膜64は絶縁体78とハウジング80によって被覆できる。
【0085】
前記ハウジング80は、プレス加工によって製造された金属板からなり得、電池保護用及び外観保持用として提供される。また、ハウジング80は、電池の上部(図示せず)で正極の膜64と接続されて膜64に電子を供給する正極缶として機能することもできる。絶縁体78は、ハウジング80と膜64間を絶縁させて電流の漏れを防止するためのもので、射出成形などにより樹脂材質で製造することができる。一方、正極の膜64に酸素を供給できるように、ハウジング80と絶縁体78には開口84が形成される。
【0086】
膜64とセパレータ46は平面状に製造した後、亜鉛ゲル66を被包するように円筒状に湾曲可能である。湾曲された膜64及びセパレータ46の両端部70は隙間を置いて対向配置され、接合子82によって接合される。接合子82は樹脂からなり、膜64及びセパレータ46に融着して両端部70の接合部からの亜鉛ゲル66の漏れを防止することができる。また、接合子82は、図示のように膜64及びセパレータ46の一部を覆うように成形して密封効果を一層高めることができる。
【0087】
以下、図15と図16及び図17を参照して本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を説明する。
【0088】
最初に、円筒型の絶縁体78を用意する。絶縁体78は射出成形によって円筒状に製造できる。
【0089】
次に、平面状の膜64とセパレータ46を用意し、図16に示すように、セパレータ46と膜64を、その両端部70が隙間を置いて対向するように射出成形用金型86に配置する。前記金型86には、膜64とセパレータ46の両端部70の隙間周辺にのみ樹脂が注入される空間88が形成される。金型としては、膜64及びセパレータ46全体を収容することなく接合部のみを収容するものを用意しても良い。
【0090】
その後、図17に示すように、空間88に樹脂を注入し、膜64及びセパレータ46と融着させて接合子82を形成する。このとき、樹脂は膜64及びセパレータ46の両端部70の一部を覆うように成形できる。また、樹脂と接触する膜64及びセパレータ46の両端部70の表面には凹凸または開口を形成して脂の融着を容易にできる。樹脂が膜64及びセパレータ46と融着するため内部空間が密閉可能になり、亜鉛ゲル66が充填された場合には亜鉛ゲル66の漏れを防止することができる。
【0091】
このように形成された円筒型膜64及びセパレータ46内に亜鉛ゲル66 を充填し、
これらを絶縁体78内に挿入する。最後に、絶縁体78を被覆するハウジング80を形成して円筒型空気亜鉛電池の製造を完了する。
【0092】
次に、図18を参照して本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池を説明する。
【0093】
図18は、本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の横断面図である。
【0094】
本実施形態において、上記実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0095】
本実施形態の円筒型空気亜鉛電池は、亜鉛ゲル66、亜鉛ゲル66を被包するセパレータ46、及び正極膜として作用する膜64を含み、さらに膜64は絶縁体78とハウジング80によって被覆できる。また、ハウジング80及び絶縁体78には空気の流通を可能にする開口84が形成できる。
【0096】
膜64とセパレータ46は平面状に製造した後、亜鉛ゲル66を被包するように円筒状に湾曲できる。このとき、湾曲された膜64及びセパレータ46の両端部は重畳される。この場合、図18に示すように、両端部70に互いに逆方向の傾斜面を形成することで、これらが自然に重なり、重畳後にも厚さの増加を抑えることができる。両端部の形状は、図示のような傾斜面に限定されず、一面には凸部を形成し、他面には凹部を形成するなど相補的な形状であるならばどの形状でも採用可能である。重畳された両端部70は、加熱、加圧または超音波の照射によって融着できる。このため、亜鉛ゲル66が膜64及びセパレータ46の接合部から漏れることを防止できる。一方、図18には、膜64とセパレータ46が連続的な傾斜面を有することが示されているが、それぞれ異なる形状を有することで接合後の密閉効果を向上させることもできる。
【0097】
次に、図18及び図19を参照して本発明のまた他の実施形態による円筒型空気亜鉛電池の製造方法を説明する。
【0098】
先ず、円筒型の絶縁体78を用意し、平面状の膜64とセパレータ46を用意する。次に、図19に示すように、セパレータ46と膜64を、その両端部が重畳されるようにジグ90に配置する。ジグ90は、膜64及びセパレータ46全体でなく接合部のみを収容することができる。
【0099】
その後、ジグ90を介して重畳された両端部70を加熱または加圧するか超音波を照射して融着させる。このように膜64及びセパレータ46の両端部が互いに融着するため内部空間が密閉可能になり、亜鉛ゲル66が充填された場合には亜鉛ゲル66の漏れを防止することができる。
【0100】
このように形成された円筒型膜64及びセパレータ46内に亜鉛ゲル66 を充填し、
これらを絶縁体78内に挿入する。最後に、絶縁体78を被覆するハウジング80を形成して円筒型空気亜鉛電池の製造を完了する。
【0101】
以上、具体的な本発明の実施形態を説明したが、これは単なる例示的なものに過ぎず、本発明の範囲内で各種の変形が可能である。
【0102】
例えば、前記実施形態による電池において、セパレータ46と膜64が別個の構成要素として開示されているが、これらを一つの構成要素に代替することもできる。特に、本発明において、これら構成要素をMEA(Membrane-Electrode Assembly)に代替することが
できる。MEAは、従来の正極膜とセパレータの機能をする複合体であって、これについては本技術分野に公知されている。勿論、MEAを採用せずに正極膜とセパレータを別個の構成要素として含むことも可能であり、これも本発明の範囲内のものであることは明白であろう。また、本発明における各構成要素の材質は、公知の構成要素のいずれかを用いても良い。当業者はこれらのうち最適の材質を容易に選択して用いることができる。
【0103】
また、前記実施形態の製造方法において、各工程を特定の順序で説明したが、本発明の範囲を逸脱しない限度で工程の順序の変更が可能であることは、当業者にとって容易に理解できるであろう。
【0104】
また、本発明の実施形態による電池の主要機能と関連した必須な構成要素についてのみ説明したが、電池の機能を向上させるために公知の各種構成要素を追加することができる。例えば、空気亜鉛電池の膜と正極缶との間に発水膜、拡散膜などの様々な機能性膜を介在することができる。
【0105】
本発明は図面に示された実施形態を参考として説明されたが、これは単なる例示的なものに過ぎず、この技術分野における当業者であれば、これより各種の変形及び均等な他の実施形態が可能であることが理解できるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池において、
前記正極膜の両端部が隙間を置いて対向配置され、前記隙間は樹脂で充填された、空気亜鉛電池。
【請求項2】
前記正極膜の前記樹脂と接触する表面に凹凸または開口が形成された、請求項1に記載の空気亜鉛電池。
【請求項3】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池において,
前記正極膜の両端部が重畳されて融着された、空気亜鉛電池。
【請求項4】
前記正極膜の両端部は相補的な形状を有する、請求項3に記載の空気亜鉛電池。
【請求項5】
負極として機能する亜鉛ゲルと、
正極として機能し、前記亜鉛ゲルを円筒状に被包して密封する正極膜と、
前記正極膜を円筒状に被包し、空気が流通可能な開口が形成されたハウジングと、
前記正極膜と前記ハウジングとの間に挟持され、空気が流通可能な開口が形成された絶縁体とを含む、円筒型空気亜鉛電池。
【請求項6】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池を製造する方法において、
前記正極膜を両端部が隙間を置いて対向するように配置する段階と、
前記隙間を樹脂で充填し、前記両端部と前記樹脂を融着させる段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法。
【請求項7】
前記融着させる段階は、射出成形によって前記樹脂を充填して融着させる段階である、請求項6に記載の空気亜鉛電池の製造方法。
【請求項8】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池を製造する方法において、
前記正極膜を両端部が重畳されるように配置する段階と、
前記正極膜の重畳された両端部を互いに融着させる段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法。
【請求項9】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能する正極膜とを含む空気亜鉛電池の製造方法において、
前記正極膜を円筒状に密封する段階と、
前記正極膜内に前記亜鉛ゲルを充填する段階と、
充填された前記正極膜を円筒型絶縁体内に挿入する段階と、
前記絶縁体を被覆するハウジングを形成する段階とを含む、円筒型空気亜鉛電池の製造方法。
【請求項1】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池において、
前記正極膜の両端部が隙間を置いて対向配置され、前記隙間は樹脂で充填された、空気亜鉛電池。
【請求項2】
前記正極膜の前記樹脂と接触する表面に凹凸または開口が形成された、請求項1に記載の空気亜鉛電池。
【請求項3】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池において,
前記正極膜の両端部が重畳されて融着された、空気亜鉛電池。
【請求項4】
前記正極膜の両端部は相補的な形状を有する、請求項3に記載の空気亜鉛電池。
【請求項5】
負極として機能する亜鉛ゲルと、
正極として機能し、前記亜鉛ゲルを円筒状に被包して密封する正極膜と、
前記正極膜を円筒状に被包し、空気が流通可能な開口が形成されたハウジングと、
前記正極膜と前記ハウジングとの間に挟持され、空気が流通可能な開口が形成された絶縁体とを含む、円筒型空気亜鉛電池。
【請求項6】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池を製造する方法において、
前記正極膜を両端部が隙間を置いて対向するように配置する段階と、
前記隙間を樹脂で充填し、前記両端部と前記樹脂を融着させる段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法。
【請求項7】
前記融着させる段階は、射出成形によって前記樹脂を充填して融着させる段階である、請求項6に記載の空気亜鉛電池の製造方法。
【請求項8】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能し、前記亜鉛ゲルを被包する正極膜とを含む空気亜鉛電池を製造する方法において、
前記正極膜を両端部が重畳されるように配置する段階と、
前記正極膜の重畳された両端部を互いに融着させる段階とを含む、空気亜鉛電池の製造方法。
【請求項9】
負極として機能する亜鉛ゲルと、正極として機能する正極膜とを含む空気亜鉛電池の製造方法において、
前記正極膜を円筒状に密封する段階と、
前記正極膜内に前記亜鉛ゲルを充填する段階と、
充填された前記正極膜を円筒型絶縁体内に挿入する段階と、
前記絶縁体を被覆するハウジングを形成する段階とを含む、円筒型空気亜鉛電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−79704(P2012−79704A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−269084(P2011−269084)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【分割の表示】特願2008−512222(P2008−512222)の分割
【原出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(507383378)イー.エム.ダブリュ.エナジー カンパニー リミテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【分割の表示】特願2008−512222(P2008−512222)の分割
【原出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(507383378)イー.エム.ダブリュ.エナジー カンパニー リミテッド (10)
【Fターム(参考)】
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