説明

電池収納部圧抜シール構造

【課題】本発明は、電池の電気分解で発生するガスを、耐圧密閉構造である電池収納部から、単純でしかも小さな取りつけ場所で外部に放出する圧抜構造を提供する。
【解決手段】電池収納部圧抜シール構造に関するものであり、水中にて用いる機器の電池収納部外殻6に対し、一定間隔dをもって支持される外蓋5を配置し、前記電池収納部外殻6に前記外蓋5に対向して溝部7を形成すると共に、当該溝部7に沿ってU字状弾性体8を内蔵させ、かかるU字状弾性体8の足部8A、8B先端が溝部7の底面7A及び外蓋面5Aに弾発力を持って接し、かつ当該U字状弾性体8の開口部8C側を周囲の空間と繋がる隙間d方向に配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主として潜水作業に用いる電池収納ケースにおいて、内部に収納した電池により発生したガスを放出する防爆構造に関する技術であって、具体的には、新規な電池収納部圧抜シール構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
潜水作業に用いる電源としての電池の収納部は、外部からの水圧に対して、水深100〜300mの外部からの圧力、1〜3MPaに耐える構造とすることが一般的である。しかるに、屋外で使用する機器であることから特に電池の交換の時に電池が濡れることがある。本発明は、この外部から圧力のかかる電池収納部の耐圧構造において、内部の電池が水に濡れたときの電池周辺の電気分解によって生じるガスによる内部圧力の放出構造に関わる技術である。
【0003】
この現象が起きた時に、電池収納部内の圧力が上昇すると、電池の蓋を開けたときにこの蓋が内部の圧力で飛び、操作者が怪我をする可能性があった。このため、設計によって要求される内部の圧力上昇限度は異なるが、0.05〜0.5MPaにすることが望ましい。
【0004】
この電池収納部の内部に溜まったガスの外部への放出を目的として、従来技術では、圧抜きバルブを取りつけるが、小さな場所に取りつける目的で、破損して再使用できない構造であったり、専用の取りつけ場所を確保しなければならない欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−140163
【特許文献2】特開2009−004271
【0006】
上記の特許文献は、電池収納部の内部の圧力上昇に対する防爆構造でしかも限られた場所に取りつける構造が提案されているが、欠点としては、圧抜き部が破損して再使用できない構造であった。
尚、他の圧抜き構造としていわゆる逆止弁があるが、これには専用の取りつけ場所を確保しなければならないという構造上の欠陥があり、通常では採用はできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような従来技術の欠点を改良しようとするものであり、電池の電気分解で発生するガスを、耐圧密閉構造である電池収納部から、単純で、しかも小さな取りつけ場所で外部に放出する圧抜構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、電池収納部圧抜シール構造に関するものであり、水中にて用いる機器の電池収納部外殻に対し、一定間隔をもって支持される外蓋を配置し、前記電池収納部外殻に前記外蓋に対向して溝部を形成すると共に、当該溝部に沿ってU字状弾性体を内蔵させ、かかるU字状弾性体の足部先端が溝部の底面及び外蓋面に弾発力を持って接し、かつ当該U字状弾性体の開口部側を周囲の空間と繋がる隙間方向に配置したことを特徴とする。
【0009】
そして、より具体的には、前記電池収納部外殻の開口部を囲んで溝部を形成したもので、この溝部の断面構造が四角形状であり、更に、前記U字形状弾性体の足部にあって、溝部の底面に接する側の足部の長さが外蓋面に接する側の足部の長さより長い電池収納部圧抜シール構造に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあって、電池収納部が水中に沈められると、水圧、即ち外部側隙間から周囲の圧力が上昇し、U字形状の弾性体のUの開口部に水圧が加わる。このため、前記弾性体は両足先端部が溝の底部と外蓋に弾性力で押しつけられるので、水が内部に浸入することはない。このように、弾性体におけるU字内側からの圧力が発生し、セルフシールの機能が発揮されることとなる。
【0011】
一方、電池が濡れた場合、特に海水の場合は海水中に電解質を含むので、塩素と水素が気体となって多量に発生する。この結果、内部の圧力が周囲の圧力より高い状態となる。しかるに、U形状の弾性体は内部側隙間からのこの圧力により、足先先端部が狭まるように変形する。その結果、気体の流路が発生し気体が外部(海水中)に逃出する。このように、気体を外部へ逃出した後は内部の圧力が低下し、再び元の状態に戻ることとなる。このように、本発明の電池収納部圧抜シール構造は破損が発生しない構造となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の第1実施例の一部省略断面図である。
【図2】図2は図1の主要部の拡大断面図である。
【図3】図3はU形状弾性体の拡大断面図である。
【図4】図4は図2における水中に没した際の圧力がかかる状態図である。
【図5】図5は図2における内部から気体が抜ける際の状態図である。
【図6】図6は本発明の第2実施例の一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電池収納部圧抜シール構造の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではないことは勿論である。
【実施例1】
【0014】
以下、具体例をもって本発明の電池収納部圧抜シール構造を説明するが、図1は本発明の第1実施例の一部省略断面図であり、図2は図1の主要部の拡大断面図である。図中、符号1は水中ライト等の機器を示したもので、この例では、説明を簡略化するために電池収納具そのものを示している。符号2は電池収納部であって、この収納部2内に筒型電池3が納められている。
【0015】
さて、かかる電池3に対して電池収納部2の開口部4に対して外蓋5が螺着されている。即ち、機器1の電池収納部2の外殻6に対し、一定間隔(d)をもって支持される外蓋5を配置する。そして、この外殻6には外蓋5に対向する部位に好ましくは断面四角形状の周溝部7を形成すると共に、当該溝部7に沿って図3に例示したごときU字状弾性体8を内蔵させ、かかるU字状弾性体8の足部先端8A及び8Bが溝部7の底面7A及び外蓋5の内面5Aに弾発力を持って接し、かつ当該U字状弾性体8の開口部8C側を周囲の空間(即ち水中側)と繋がる側に向けて配置したことを特徴とするものである。
【0016】
そして、より具体的には、前記U字形状弾性体8の足部8A、8Bにあって、溝部7の底面7Aに接する側の足部8Aの長さが、外蓋5の内面5Aに接する側の足部8Bの長さより長い構造とするのが好ましい。
【0017】
図4は図2における水中に没した際の圧力がかかる状態図である。即ち、機器(電池収納具)1が水中に沈められると、水圧、即ち外部側隙間(d)から水が入り込み、U字形状の弾性体8のU形状の開口部8Cに水圧が加わる。このため、前記弾性体8は両足部8A、8Bが夫々溝部7の底部7Aと外蓋5の内面5Aに弾性力で押しつけられることになり、水が機器1の内部に侵入することはない。この状態を矢印で示した。このように、弾性体8におけるU形状の開口部8C側からの圧力が発生し、セルフシールの機能が発揮されることとなる。
【0018】
更に詳しくは、水圧によってU字形状弾性体8は図2に示すように四角形状の溝部7の左側の側面に押しつけられ、その水圧によってU字形状弾性体8隙間(d)を塞ぎ続けて、水圧による水の侵入を防止する。
【0019】
一般のOリングに用いられるゴム硬度70度の弾性体にて形成されたU字形状弾性体8を用い、隙間(d)を0.3mm以下とすれば、300m相当の水圧3MPaで隙間(d)へのはみ出し現象で破損しないことを確認した。
【0020】
一方、電池3が水に濡れた場合、特に海水の場合は塩素と水素が気体となって多量に発生し、電池収納部2内に充満する。この結果、電池収納部2内の圧力がより高い状態となり、通常の場合には電池収納具1が破壊される可能性が高くなる。しかるに、図5は図2における内部から気体が抜ける際の状態図であり、本発明の電池収納部圧抜シール構造にあっては、電池収納部2内にて発生した気体が隙間(d)を通ってU形状の弾性体8に達し、内側からのかかる気体の圧力により、両足部8A,8B(特に足部8B側)が接触している夫々の面より離れるように変形する。この状態を矢印で示した。その結果、気体の流路が発生し気体が外部(海水中)に逃出する。このように、気体を外部へ逃出した後は電池収納部2の内部の圧力が低下し、再び元の状態に戻ることとなる。このように、本発明の電池収納部圧抜シール構造は内部にて気体の発生があっても破損が生じない構造となるのである。
【0021】
一般のOリングに用いられるゴム硬度70度の弾性体にて形成されたU字形状弾性体8を用い、足部8A、8Bの寸法を巾0.5mm、長さ1.0mmとし、足先端の取りつけ時の変形量を0.1〜0.5mmとしたところ、気体の流出開始圧力は0.05〜0.2MPaとなった。この結果から、巾2mm以下で高さ2mm以下の小さな四角形状溝部寸法での圧抜き構造が可能であることを確認した。
【実施例2】
【0022】
図6は本発明の第2実施例の一部省略断面図である。即ち、この例ではいわゆるボタン電池3が用いられた機器1に対する例であり、電池収納部2内にボタン電池3が納められている。かかる電池3に対して電池収納部2には丸型の開口部4が形成されており、この例では、開口部4の外殻6の側面に対して外蓋5が爪5Bをもって嵌め合わされている。即ち、機器1の電池収納部2の外殻6に対し、一定間隔(d)をもって支持される外蓋5を配置したものである。そして、この外殻6の頂面には外蓋5に対向して断面四角形状の周溝部7を形成すると共に、当該溝部7にU字状弾性体8を内蔵させ、かかるU字状弾性体8の足部先端8A及び8Bが溝部7の底面7A及び外蓋5の内面5Aに弾発力を持って接し、かつ当該U字状弾性体8の開口部8C側を周囲の空間(即ち水中側)と繋がる側に向けて配置したことを特徴とするものである。
【0023】
前記U字形状弾性体8の挙動は実施例1と同様であるので説明は省略するが、水中にあってはセルフシールの機能が発揮され、内部にて気体の発生があっても破損が生じない構造となる。
【0024】
ボタン電池に実施した実施例は、取りつけ時の内部の圧力上昇を極力抑えた例である。即ち、外蓋5を締めたときのシール開始から取りつけ完了までの内部の容積変化が小さいことと、内部の圧力を外部に放出しやすいことから、組立時の内部の圧力が上昇しにくい構造となる。圧力センサー等圧力の影響を受けやすい機器を電池と共に組み込みする目的の構造に適した実施例である。
【0025】
以上の実施例からも分かるように、特にU字状弾性体の外蓋に接する側の足部厚さを薄くすること、及び外蓋側の足部先端の取りつけ時の変形量を反対側より小さくすることにより、かかる弾性体足部の動作開始圧力が溝部側の弾性体足部の動作開始圧力より小さくなり、安定した気体流出を可能とすることができる。更に、弾性体の足部長さを四角形状溝側部より短い寸法としておくと、空気放出の時に外部側の隙間へ挟み込まれて空気流路を塞ぐことを防止することができることともなる。
【0026】
電池収納部から気体が流れる他のシール部にこの溝を設けた場合に同様の効果がえられることは言うまでもなく、更に、本構造の溝部及びこれに対応するU字状弾性体を複数個設けると、より信頼性が高まる構造となることも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の電池収納部圧抜シール構造は、上記のようにきわめて優れた特徴を有すると共に、従来より殆どの水中機器の電池収納部のシールにはOリングと四角形状のOリング溝部が用いられていることから、従来の圧抜き機構を持たない密閉用Oリング溝部を小さな寸法変更だけで本発明の構造に変更できる。そして、専用の取りつけ場所を確保せずに、圧抜き構造を実現できることとなった。このため、水中で使用される機器の全てについて適用可能であり、その工業的価値は著しく高い。
【符号の説明】
【0028】
1 機器
2 電池収納部
3 電池
4 開口部
5 外蓋
5A 外蓋の内面
5B 爪
6 電池収納部の外殻
7 溝部
7A 溝部の底面
8 U字状弾性体
8A、8B U字状弾性体の足部(先端)
8C U字状弾性体の開口部
d 一定間隔(隙間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中にて用いる機器の電池収納部外殻に対し、一定間隔をもって支持される外蓋を配置し、前記電池収納部外殻に前記外蓋に対向して溝部を形成すると共に、当該溝部に沿ってU字状弾性体を内蔵させ、かかるU字状弾性体の足部先端が溝部の底面及び外蓋面に弾発力を持って接し、かつ当該U字状弾性体の開口部側を周囲の空間と繋がる隙間方向に配置したことを特徴とする電池収納部圧抜シール構造。
【請求項2】
前記溝部の断面構造が四角形状である請求項1記載の電池収納部圧抜シール構造。
【請求項3】
前記電池収納部外殻の開口部を囲んで溝部を形成した請求項1又は2記載の電池収納部圧抜シール構造。
【請求項4】
前記U字形状弾性体の足部にあって、溝部の底面に接する側の足部の長さが外蓋面に接する側の足部の長さより長い請求項1乃至3いずれか1に記載の電池収納部圧抜シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−65474(P2013−65474A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203817(P2011−203817)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(399091429)株式会社ビーイズム (4)
【Fターム(参考)】