説明

電池寿命推定装置

【課題】電池の交換時期の精度の向上を図ることができる上に、製作費用の抑制を図ることができる電池寿命推定装置の提供。
【解決手段】本発明は、計数手段と、温度センサと、配分率算出手段と、寿命算出手段と、比較手段とを備えている。計数手段は、電池の使用開始から現在までの時間を計数する。温度センサは、電池の周囲の温度を検出する。配分率算出手段は、温度センサの検出温度に基づき、電池の使用開始から現在までの温度毎の使用時間の配分率をそれぞれ求める。寿命算出手段は、配分率算出手段で求めた配分率と、電池の温度毎に予め求めてある寿命時間とに基づき、電池の寿命時間を算出する。比較手段は、計数手段の計数時間を寿命算出手段が算出する寿命時間と比較し、計数時間が算出寿命時間以上になったときにその旨の出力信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電子機器に使用される電池の寿命を推定する電池寿命推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器の一例として、インバータで駆動される電動機を制御する制御装置が知られ、この制御装置にはバックアップ電源として電池が使用されている(特許文献1参照)。バックアップ電源に使用される電池は、消耗品のために寿命があり、寿命が来る前に交換する必要がある。
このために、電池の交換時期を知らせる方法として、電池の使用時間を計測し、この計測時間が所定値に達した場合に電池交換を知らせるもの、あるいは、電池の両端の電圧を検出し、検出電圧が所定値に達した場合に電池交換を知らせるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−253577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように、電池の使用時間を計測する方法では、電池の交換時期の精度が悪いという課題がある。また、電池の両端電圧を検出する方法では、電圧検出回路が必要になり、製作費用が嵩むという課題がある。
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、電池の交換時期の精度の向上を図ることができる上に、製作費用の抑制を図ることができる電池寿命推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような構成からなる。
本発明の電池寿命推定装置は、電池の周囲の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出温度に基づき、前記電池の使用開始から現在までの温度毎の使用時間の配分率をそれぞれ求める配分率算出手段と、前記配分率算出手段で求めた配分率と、前記電池の温度毎に予め求めてある寿命時間とに基づき、前記電池の寿命時間を算出する寿命算出手段と、を備えている。
【0006】
本発明では、前記配分率算出手段が求めた各配分率を記憶する記憶手段を、さらに備えている。
また、本発明では、電池の使用開始から現在までの時間を計数する計数手段と、前記計数手段の計数時間を前記寿命算出手段が算出する寿命時間と比較し、前記計数時間が前記算出寿命時間以上になったときにその旨の出力信号を出力する比較手段を、さらに備えている。
そして、本発明では、前記寿命算出手段の算出時期の間隔と、前記比較手段の比較時期の間隔とは異なるようにした。
また、本発明では、前記比較手段から前記出力信号が出力されたときに、前記電池が交換時期に達した旨の警報を発生する警報手段を、さらに備えている。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明では、温度センサの検出温度に基づき、電池の使用開始から現在までの温度毎の使用時間の配分率をそれぞれ求め、この求めた配分率と、電池について温度毎に予め求めてある寿命時間とに基づき、電池の寿命時間を算出するようにした。このため、本発明によれば、電池の交換時期の精度の向上を図ることができる。
また、本発明では、電池の電圧を検出する電圧検出回路が不要となるので、その分のコストの抑制を図り、全体のコストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を適用したポンプの制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】電池の温度と自己放電電流との関係の一例を示す図である。
【図3】電池の寿命を温度毎に求めた一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態の動作例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態の構成)
図1は、本発明の実施形態を適用したポンプの制御装置の構成例を示すブロック図である。
この制御装置は、図1に示すように、制御部であるCPU1と、通信インターフェース2と、インバータ3と、時計IC4と、温度センサ5と、EEPROM6と、液晶パネル7とを備えている。
【0010】
そして、この制御装置では、CPU1が、通信インターフェース2を介してインバータ3を駆動制御し、ポンプ8の制御を行うようになっている。また、CPU1、時計IC4、温度センサ5、EEPROM6、および液晶パネル7は、本発明の電池寿命推定装置の実施形態として機能するようになっている。
CPU1は、インバータ3の駆動制御を行うとともに、例えば図4に示すように予め定めた手順に従い、電池10の寿命推定に係る処理を行う。CPU1には、電源生成回路9が交流電圧から生成する直流電圧が、電源電圧として印加されるようになっている。
【0011】
時計IC4は、日時(日と時間など)を出力するとともに、時間を計数して出力するものである。この時計IC4は、電源電圧として、ダイオードD1を介して電源生成回路9の出力電圧が印加され、かつ、ダイオードD2を介して補助電源(バックアップ電源)である電池10の電圧が印加されるようになっている。このため、時計IC4は、停電やブレーカの遮断により電源生成回路9が使用できなくなった場合でも、電池10により時計機能を維持できる。
【0012】
温度センサ5は、電池10の使用環境での温度、すなわち電池10の周囲の温度を検出し、この検出温度をCPU1に出力する。EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory )6は、情報の書き換えが可能な不揮発性メモリである。このEEPROM6には、ポンプの制御装置の出荷時において、出荷年月日や後述の(1)式などを記憶しておき、電池10を交換したときにはその交換年月日を記憶する。
液晶パネル7は、後述のようにCPU1から電池10を交換する旨の出力信号があったときに、電池10の交換時期に達した旨の警告表示を行う。
【0013】
次に、本発明の実施形態で寿命推定の処理対象となる電池10について、図2および図3を参照して説明する。
この処理対象となる電池10は1次電池であり、例えば日立マクセル株式会社が製造する製品番号「ER17/33」を使用する。この電池「ER17/33」の仕様は、標準容量が1600〔mAh〕、最小容量が1292〔mAh〕、回路電流が2.7〔μA〕である。また、自己放電電流は温度により異なり、温度と自己放電電流との関係は図2に示すようになる。
【0014】
電池の寿命は、最小容量/(自己放電電流+電池の回路電流)により求めることができる。このため、図2などを使用して電池「ER17/33」の寿命を温度毎に求めると、図3に示すようになる。
図3によれば、例えば、周囲温度が20℃の条件の下で電池「ER17/33」を連続使用した場合には、その寿命が226667時間であることを意味する。
【0015】
(実施形態の動作)
次に、本発明の実施形態の動作例について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
この実施形態では、図1に示すポンプの制御装置の出荷時に、出荷年月日(出荷時の電池10の使用開始の年月日)と、後述の(1)式とをEEPROM6に予め記憶しておく。また、時計IC4は、電池10の使用開始から日時の計数を開始する。
そして、この実施形態では、予め定めたタイミングで、CPU1が図4に示す電池10の寿命推定処理を行う。この処理は、例えば毎日あるいは1週間毎に実施し、その実施時間(実施時刻)は所定の時間とする。その実施間隔や実施時間などは、電池10が使用される場所などの使用環境や電池10の仕様特性を考慮して決定するのが好ましい。
【0016】
図4に示す寿命推定処理が始まると、ステップS1では、CPU1は温度センサ5が検出する電池10の周囲の温度を取り込む。
ステップS2では、CPU1は、その取り込んだ検出温度と、その取り込み時間(時刻)とに基づき、電池10の使用開始から現在までの全期間における、温度毎(温度別)の電池10の使用時間の配分率T1〜T5〔%〕をそれぞれ算出する。
ここで、その検出温度の取り込み時間は、EEPROM6に記憶される出荷年月日(電池10の使用開始の年月日)と、上記の寿命推定処理の予め定めたタイミングの間隔(前回から今回までの期間)とに基づいて求めることができる。あるいは、時計IC4の計数時間を参照するようにしても良い。
【0017】
温度毎の電池10の使用時間の配分率T1〜T5〔%〕は、例えば図3を参照すれば以下のようになる。
T1:−10℃以下での使用時間の全体(全使用時間)に占める比率
T2:−10℃以上であって20℃以下の範囲での使用時間の全体に占める比率
T3:20℃以上であって40℃以下の範囲での使用時間の全体に占める比率
T4:40℃以上であって60℃以下の範囲での使用時間の全体に占める比率
T5:60℃以上での使用時間の全体に占める比率
【0018】
例えば、電池10の使用開始から現在までの使用時間(経過時間)が10000時間であり、−10℃以上であって20℃以下の範囲での使用時間が2000時間、20℃以上であって40℃以下の範囲での使用時間が5000時間、40℃以上であって60℃以下の範囲での使用時間が3000時間であったとする。この場合には、T1=0〔%〕、T2=20〔%〕、T3=50〔%〕、T4=30〔%〕、T5=0〔%〕となる。
【0019】
ステップS3では、CPU1は、その算出した配分率T1〜T5をEEPROM6にそれぞれ記憶させる。EEPROM6にすでに配分率T1〜T5などが書き込まれている場合には、CPU1は新たな内容に書き換える。このような処理により記憶される今回の配分率T1〜T5は、CPU1が次回の配分率T1〜T5を算出する際に使用できる。
なお、今回算出した配分率T1〜T5のEEPROM6の書き込みに代えて、今回の配分率T1〜T5の算出に使用した温度毎の電池10の使用時間をEEPROM6にそれぞれ書き込むようにしても良い。このようにすれば、それらを次回の配分率T1〜T5の算出に使用することができる。
【0020】
ステップS4では、CPU1は、その算出した配分率T1〜T5を用いて、次の(1)式により電池10の推定寿命時間〔H〕を算出する。
推定寿命時間=100/〔(T1/274894)+(T2/226667)+(T3/167792)+(T4/101732)+(T5/69838)〕・・・(1)
ここで、式中の各数値は、温度毎(配分率T1〜T5毎)に予め求めてある電池10の寿命時間であり、この例では図3の値を使用している。
【0021】
ステップS5では、CPU1は、時計IC4の現在の計数時間(電池10の使用開始から現在までの全時間)を算出した推定寿命時間と比較する。
この比較の結果、計数時間が推定寿命時間以上の場合には、ステップS6に進み、CPU1は電池10の交換を警告する旨の信号を液晶パネル7に出力する。これにより、液晶パネル7は、電池10の交換を警告する警告表示を行う。一方、計数時間が推定寿命時間以下の場合には、今回の一連の処理を終了する。
ここで、ステップS5における計数時間と推定寿命時間との比較判定は、計数時間を上記のように算出した推定寿命時間そのものと比較せずに、電池10の交換時期の安全を見込んで、例えば算出した推定寿命時間の70%〜90%(好ましくは80%)の数値と比較するのが好ましい。
【0022】
この場合には、CPU1は、例えば、計数時間が算出した推定寿命時間の80%に達したか否かを判定し、それに達したときには電池10の交換を警告する旨の信号を液晶パネル7に出力する。
なお、上記の警告表示により、電池10が交換されたときには、CPU1は交換年月日をEEPROM6に記憶させる。このため、交換された電池10の使用開始時期は、その交換年月日が基準となり、これに基づいて図4に示すフローチャートの処理が実行されることになる。
【0023】
(実施形態の効果)
以上のように、本発明の実施形態では、温度センサ5の検出温度に基づき、電池10の使用開始から現在までの温度毎の使用時間の配分率T1〜T5をそれぞれ求め、この求めた配分率T1〜T5と、電池10について温度毎に予め求めてある寿命時間とに基づき、電池10の寿命時間を算出するようにした。このため、本発明の実施形態によれば、電池10の交換時期の精度の向上を図ることができる。
また、本発明の実施形態では、電池10の電圧を検出する電圧検出回路が不要であるので、その電圧検出回路に必要な分のコストの抑制を図ることができる。
【0024】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、図4に示すようなステップS1〜S6の一連の処理を、所定の期間(所定の周期)ごとに行うようにしたが、これらの一連の処理はほぼ同時に実行する必要はない。
すなわち、ステップS1〜S4の処理については、電池10の推定寿命時間の算出精度の向上を図る上で、処理の頻度を多くするのが望ましい。一方、ステップS5、6の処理については、その処理の頻度をステップS1〜S4に比べて少なくしても実用上差し支えないと考えられる。
【0025】
言い換えると、ステップS1〜S4の処理時期の間隔やタイミングと、ステップS5、S6の処理時期の間隔やタイミングとを異なるようにしても良い。例えば、ステップS1〜S4の処理は必ず行うが、ステップS5、S6の処理については、ステップS1〜S4の処理のたびに行わず、2回または3回おきに行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0026】
1…CPU、2…通信インターフェース、3…インバータ、4…時計IC、5…温度センサ、6…EEPROM、7…液晶パネル、8…ポンプ、9…電源生成回路、10…電池、D1、D2…ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の周囲の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出温度に基づき、前記電池の使用開始から現在までの温度毎の使用時間の配分率をそれぞれ求める配分率算出手段と、
前記配分率算出手段で求めた配分率と、前記電池の温度毎に予め求めてある寿命時間とに基づき、前記電池の寿命時間を算出する寿命算出手段と、
を備えている電池寿命推定装置。
【請求項2】
前記配分率算出手段が求めた各配分率を記憶する記憶手段を、さらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の電池寿命推定装置。
【請求項3】
電池の使用開始から現在までの時間を計数する計数手段と、
前記計数手段の計数時間を前記寿命算出手段が算出する寿命時間と比較し、前記計数時間が前記算出寿命時間以上になったときにその旨の出力信号を出力する比較手段を、さらに備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池寿命推定装置。
【請求項4】
前記寿命算出手段の算出時期の間隔と、前記比較手段の比較時期の間隔とは異なることを特徴とする請求項3に記載の電池寿命推定装置。
【請求項5】
前記比較手段から前記出力信号が出力されたときに、前記電池が交換時期に達した旨の警報を発生する警報手段を、さらに備えていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電池寿命推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−3033(P2013−3033A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136068(P2011−136068)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】