説明

電池封口体および電池

【課題】電池缶内に発電要素を密閉状態で収容した電池において、ガスケットと封口板の間に大きな空間スペースを必要とせず、また、封口板の強度を損なうことなく所定の作動圧で確実に動作可能な安全弁機能を備えることを可能にし、さらに、電池の耐漏液性を向上させる。
【解決手段】封口板33、ガスケット35、集電子31とを集合一体化した電池封口体30にあって、上記封口板33は少なくとも1つの通気孔34を形成し、上記ガスケット35は、上記封口板33および上記集電子31に密着する略層状に形成するとともに、上記通気孔34に対応する位置に薄肉部39を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電池封口体および電池に関し、たとえば有底筒状の電池缶内に発電要素を密閉状態で収容した電池において、電池端子を兼ねる封口板と、集電子と、樹脂製ガスケットを集合一体化させた電池封口体およびその封口体を用いて封止された電池に適用としてとくに有効である。
【背景技術】
【0002】
たとえばLRなどのアルカリ乾電池では、発電要素を収容した電池缶内を気密封止するために、電池端子を兼ねる封口板と、集電子と、樹脂製ガスケットを集合一体化させた電池封口体が使用されている。
【0003】
この電池封口体は、正常な使用時あるいは保管時における漏液発生を確実に抑止する一方、過放電等により電池内圧が異常上昇したときには、その異常上昇した内圧(発生ガス)を外部へ安全に逃がす必要がある。つまり、正常時における封止機能と異常時における安全弁機能の両方を備える必要がある。
【0004】
図10は、上記安全弁機能を備えた従来の電池封口体30’をその組み立て工程段階別に示す。同図に示す電池封口体30’は、次のようにして組み立てられる。
【0005】
まず、同図の(a)に示すように、電池端子(負極端子)を兼ねる皿状の金属製封口板33の内側面に、棒状の金属製集電子(負極集電子)31をスポット溶接等で接合する。封口版33には通気孔34’があらかじめ設けられている。
また、同図の(b)に示すように、樹脂製ガスケット35’の中央ボス部38に金属製の補強用キャップ41を被せる。このキャップ41には上記集電子31を貫通させる透孔が形成されている。
【0006】
上記樹脂製ガスケット35’には、周縁パッキング部36、中間隔壁部37、中央ボス部38が同心状に一体形成されている。
中間隔壁部37は、電池内圧が異常上昇したときに、その内圧によって大きく変形移動するように形成されているとともに、この変形移動の際に亀裂を生じて先行破断するような薄肉部が設けられている。
【0007】
中央ボス部38には上記集電子31を圧入状態で挿通させる孔が形成されている。同図の(c)に示すように、上記集電子31を上記中央ボス部38の孔に挿通させることにより、同図の(d)に示すように、封口板33、集電子31、ガスケット35’を集合一体化した電池封口体30’が構成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の電池封口体30’には、次のような問題があった。
まず、上記封口体30’においては、集電子31とガスケット35’間での密閉性(シール性)が電池の耐漏液性能に大きく関与する。集電子31はガスケット35’の中央ボス部38を圧入状態で貫通させられる。このとき、上記密閉性を良くするためには、集電子31とボス部38間に作用する弾性応力を大きくする必要がある。しかし、その弾性応力を大きくすると、ガスケット35’側の歪ストレスが局部的に増大して、長期保存での耐久性が低下するという背反が生じる。このため、ガスケット35’のボス部38に補強用キャップ41を被せるなどの対策が必要であった。しかし、そのキャップ41も、局部的な歪ストレスが原因となって生じる樹脂の劣化による耐漏液性低下は防ぐことができない。
【0009】
また、上記封口体30’では、電池の異常内圧(ガス圧)によりガスケット35’の中間隔壁部37が大きく変形移動することによって、薄肉部に亀裂を生じさせる構造になっている。その変形移動を可能にするスペースを確保するため、中間隔壁部37と封口板33の間には、通気孔34’により外気に連通された大きな空間スペースが形成されている。この空間スペースを形成するため、上述した電池封口体では、電池内容物の収容スペースが小さくなってしまうという問題があった。
【0010】
上記問題の解決手段としては、特許文献1に開示された電池封口体がある。この封口体は、樹脂製ガスケットと封口板間を密着させるとともに、封口板の内側面(内底面)に円弧状の破断誘起溝を形成したものであって、その破断誘起溝の上に被さるガスケット部分(中間隔壁部に相当)は薄肉に形成されている。
【0011】
この電池封口体では、電池内圧をガスケットの薄肉部を介して上記破断誘起溝に直接作用させるようにしてある。その電池内圧が異常上昇すると、上記破断誘起溝が破断される。これに伴ってガスケットの薄肉部が破断して内部ガスが安全に放出される。
【0012】
上記手段によれば、ガスケットと封口板の間に大きな空間スペースを確保しなくても、安全弁機能を形成することができる。また、ガスケットと封口板を密着させる構造は、ガスケットと封口体および集電子をインサート成形により一体化させるのにも適している。このインサート成形により封口体の組立作業を簡略化することができる。また、ガスケットに大きな歪ストレスを生じさせることなく、集電子とガスケット間の密閉性を良好にすることができる。
【0013】
ところが、上記手段には、次のような問題点のあることが判明した。
すなわち、封口板に形成した破断誘起溝は電池内圧の異常上昇以外の要因によっても破断する可能性がある。つまり、上記破断誘起溝が封口板の強度を低下させ、通常の使用状態において受ける衝撃でも破断してしまう懸念が生じる。封口板は電池の一方極端子を形成する部分でもあるため、外部からの衝撃を受けやすい。
【0014】
上記懸念を払拭するためには、上記破断誘起溝を破断しにくく形成すればよいが、そうすると、今度は、安全弁としての作動圧力が高くなって、所定の作動圧で確実に動作する安全弁機能を得ることが難しくなるという背反が生じる。
【0015】
この発明は、以上のような技術背景の下になされたものであって、その目的は、ガスケットと封口板の間に大きな空間スペースを必要とせず、また、封口板の強度を損なうことなく所定の作動圧で確実に動作可能な安全弁機能を備えることができ、さらに、電池の耐漏液性を向上させることができる電池封口体を提供することにある。
【特許文献1】特開2001−126694
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は前述した課題を解決するために次の手段を提供する。
(1)発電要素を収容する電池缶の開口部を封口するとともに電池の一方極端子を形成する金属製封口板と、上記電池缶と上記封口板の間に介在して上記電池缶内を気密封止する樹脂製ガスケットと、上記封口板に接合されるとともに上記樹脂製ガスケットを貫通して上記発電要素中に挿入される棒状の金属製集電子とが集合一体化された電池封口体において、上記封口板は少なくとも1つの通気孔が形成され、上記樹脂製ガスケットは上記封口板および上記集電子に密着して略層状に形成されるとともに少なくとも上記通気孔に対応する位置に薄肉部が形成されていることを特徴とする電池封口体。
【0017】
前記手段(1)においては、以下のような手段が実施形態として好適または望ましい。
(2)前記手段(1)において、前記樹脂製ガスケットは、前記封口板および前記集電子が成形型面の一部となるインサート成形により、その封口板および集電子と一体化されていることを特徴とする電池封口体の製造方法。
【0018】
(3)前記手段(1)または(2)において、前記集電子の前記樹脂製ガスケットと密着する部分に、その集電子の長手方向と略直交する方向の凸条および/または凹溝が形成されていることを特徴とする電池封口体。
【0019】
(4)前記手段(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記集電子の前記樹脂製ガスケットと密着する部分が粗面加工されていることを特徴とする電池封口体。
【0020】
(5)前記手段(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記集電子の樹脂製ガスケットと密着する部分にシール剤があらかじめ塗布されていることを特徴とする電池封口体。
【0021】
(6)前記手段(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記集電子の前記樹脂製ガスケットと密着する部分に、金属との密着性にすぐれた樹脂があらかじめ固着されていることを特徴とする電池封口体。
【0022】
(7)前記手段(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記樹脂製ガスケットの前記集電子を囲む部分に、その部分を外側から囲繞する部品を装着したことを特徴とする電池封口体。
【0023】
(8)前記手段(1)〜(7)のいずれかにおいて、前記封口板に、円周方向の位置決めを可能にする凹部および/または凸部が形成されていることを特徴とする電池封口体。
【0024】
(9)前記手段(1)〜(8)のいずれかにおいて、前記樹脂製ガスケットは、前記電池缶開口部の縮径方向へのかしめ加工により、前記集電子を締め付けながら外周から圧縮されるように形成されていることを特徴とする電池封口体。
【0025】
(10)前記手段(1)〜(9)のいずれかにおいて、前記ガスケットが、ポリアミド、ポリオレフィンの少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とする電池封口体。
【0026】
また、本発明は、前述した課題を解決する電池として、次の手段を提供する。
(11)前記手段(1)〜(10)のいずれかに記載の電池封口体を用いて封止されたことを特徴とする電池。
【発明の効果】
【0027】
電池缶内に発電要素を密閉状態で収容した電池において、ガスケットと封口板の間に大きな空間スペースを必要とせず、また、封口板の強度を損なうことなく所定の作動圧で確実に動作可能な安全弁機能を備えることができ、さらに、電池の耐漏液性を向上させることができる。
【0028】
なお、上記以外の効果については、本発明の明細書および図面の記載によりあきらかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の技術が適用された電池封口体の要部をその組み立て工程段階別に示す。同図に示すように、本発明に係る電池封口体30は金属製封口板33と、樹脂製ガスケット35と、棒状の金属製集電子31とが集合一体化されている。
【0030】
封口板33は、発電要素を収容する電池缶の開口部を封口するとともに電池の一方極端子を形成する。この封口板33は平坦な中央面部と斜めに傾斜した周縁部を有する皿状に形成されている。その斜めに傾斜した周縁面部に通気孔34が形成されている。通気孔34は1個所または所定間隔を置いて複数個所設けられている。
【0031】
樹脂製ガスケット35は、上記電池缶と上記封口板33の間に介在して上記電池缶内を気密封止する。この樹脂製ガスケット35は、封口板33および集電子31に密着して略層状に形成されているとともに、少なくとも上記通気孔34に対応する位置に薄肉部39が形成されている。
【0032】
集電子31は、上記封口板33にスポット溶接等により接合されるとともに、上記樹脂製ガスケット35の中央部を貫通して上記発電要素中に挿入されるようになっている。
【0033】
上記封口体35は、次のようにして集合一体化される。
まず、図1の(a)に示すように、封口板33の電池缶内を向く内側面に集電子31の頭部をスポット溶接等により接合する。このあと、同図の(b)および(c)に示すように、集電子31を接合した封口板33をインサート成形金型50にセットし、その封口板33の内側に樹脂製ガスケット35をインサート成形により形成する。インサート成形は封口板33および集電子31を成形型面の一部にして行う。このインサート成形により、ガスケット35が封口板33および集電子31と一体化された状態で成形される。
【0034】
上記のように構成された封口体30は、インサート成形により組み立てを効率的に行わせることが可能であるとともに、ガスケット35に大きな局部的歪ストレスを生じさせることなく、集電子31とガスケット35間の密閉性を良好にすることができる。
【0035】
また、上記ガスケット35の集電子31と密着する部分には、集電子31の所定長さ分を密着状態で囲む管状部351が形成されているが、これは、ガスケット35と集電子31間の密閉性を高めるのに有効である。
【0036】
さらに、上記集電子31の上記管状部351で囲まれる部分32には、上記密閉性を高めるために、螺旋凸条の形成、粗面加工、シール剤塗布、熱可塑性樹脂の予備固着などを行うことができる。これらの詳細については後述する。
【0037】
また、図示を省略するが、上記管状部351すなわち樹脂製ガスケット35の集電子31を囲む部分には、その部分を外側から囲繞する部品を装着してもよい。ガスケット35の材質としては、ポリアミド、ポリオレフィンの少なくとも1つを含む材料がとくに適している。
【0038】
図2は、上記封口板33の通気孔34および上記ガスケット35の薄肉部39の実施形態を示す。上述したように、封口板33の通気孔34は、周縁付近の斜めに傾斜した周縁面部に設けられている。ガスケット35には、その通気孔34と略同径の薄肉部39が形成されている。
【0039】
電池内圧が異常上昇すると、その内圧(ガス圧)によって上記薄肉部39は通気孔34側へ押圧される。その押圧力すなわち電池内圧が所定以上になると、薄肉部39が通気孔34側へ押しやられて破断する。この破断により電池内圧が安全に解放される。このようにして、通気孔34と薄肉部39は安全弁機能を形成する。
【0040】
ここで注目すべきことは、上記安全弁機能の作動が封口板33の破断を伴わないことである。つまり、封口板33の強度を低下させる破断誘起溝を設けることなく、また、ガスケット35と封口板33の間に大きな空間スペースを形成することなく、上記薄肉部39だけの破断により、所定の安全弁動作を行わせることができる。
【0041】
薄肉部39は、同図の(a)〜(c)および(a’)〜(c’)にそれぞれ示すように、次の3形態のいずれかで形成するとよい。第1の形態は、(a)または(a’)に示すように、薄肉部39を封口板33の内側面に寄った位置に形成する。第2の形態は、(b)または(b’)に示すように、薄肉部39をガスケット35の電池缶内側面に寄った位置に形成する。第3の形態は、(c)または(c’)に示すように、薄肉部39をガスケット35の厚み中間位置に形成する。
【0042】
図示の例では、通気孔34と薄肉部39をほぼ同径に形成してあるが、安全弁動作において所定の作動圧が得られるならば、一方の径を他方の径よりも大きく、または小さくしてもよい。また、通気孔34と薄肉部39は必ずしも同一平面形状でなくてもよく、たとえば、複数の通気孔34にまたがるような薄肉部を形成してもよい。
【0043】
図3は、上記薄肉部39の形成する方法の一実施形態を示す。図2の(a)〜(c)にそれぞれ示す薄肉部39は、封口板33およびガスケット35の面に対して垂直方向からの型抜きにより形成されている。この型抜きは、図3に示すように、封口板33の中央面部に対して斜め方向に移動する一対の成型ピン51,52により行うことができる。
【0044】
図4は、上記薄肉部39の形成する方法の別の実施形態を示す。図2の(a’)〜(c’)にそれぞれ示す薄肉部39は、封口板33およびガスケット35の面に対して斜め方向からの型抜きにより形成されている。この型抜きは、図4に示すように、封口板33の中央面部に対して垂直方向に移動する一対の成型ピン51,52により行うことができる。
【0045】
上記2つの型抜き工程はいずれも、上記インサート成形と同時に行うことができるが、上記インサート成形後に行ってもよい。インサート成形と同時に行う場合は、工程数を減らすことができる。また、インサート成形後に行う場合は、インサート成形金型の構造を簡単化することができる。
【0046】
図5は、上記封口体60のさらに好適な実施形態を示す。同図に示すように、本発明に係る封口体30では、集電子31の樹脂製ガスケット35と密着する部分32に、その集電子31の長手方向と略直交する螺旋凸条321を設けることができる。この螺旋凸条321により、集電子31とガスケット35間の密閉性を大幅に高めることができる。
【0047】
上記効果は螺旋凸条321でなくても、螺旋凹溝、環状凸部または凹部など、集電子31の長手方向と略直交する方向の凸条および/または凹溝により得ることができる。また、図6に示すように、集電子31の樹脂製ガスケット35と密着する部分32に粗面322を設けても、同様の効果を得ることができる。
【0048】
さらに、図7の(a)〜(c)に示すように、集電子31の樹脂製ガスケット35と密着する部分32には、金属との密着性にすぐれた樹脂45をあらかじめ固着させるとよい。これにより、その樹脂45を介して集電子31とガスケット35間の密閉性をさらに大幅に高めることができる。
【0049】
さらにまた、集電子31の樹脂製ガスケット35と密着する部分32には、図7に示した上記樹脂45の代わりに、シール剤を塗布しても良い。この場合は、そのシール剤が集電子31とガスケット35間の密閉性をさらに大幅に高めることができる。
【0050】
図8は、本発明に係る電池封口体30の別の実施形態を示す。本発明に係る封口体30では、樹脂製ガスケット35を封口体33に密着させて形成することができる。これにより、そのガスケット35は、同図に示すように、電池缶11の開口部12を縮径方向にかしめ加工した際に外周から圧縮されるとともに、その圧縮によって集電子31を締め付けるように形成することができる。
【0051】
この場合、ガスケット35にはかしめ加工による応力が残留するが、この応力はガスケット35のほぼ全体に均等に分散されるので、ガスケット35の機能を損なうような部分的劣化の心配はない。
【0052】
図9は、上述した電池封口体30をガスケット35側から見た平面図を示す。
同図において、(a)は、封口板33の通気孔34とガスケット35の薄肉部39を1対1の対応でそれぞれ複数設けた例を示す。この場合、封口板33には凹部および/または凸部による位置決め用マーク部341が形成されている。これにより、薄肉部39を形成する際に必要な封口板33の通気口34と成形ピン51,52との位置決めが可能となる。
【0053】
上記位置決め用マーク部341は、必ずしも独立して設けなくてもよい。たとえば複数の通気孔34を円周方向に対して非対称に配設すれば、その複数の通気孔34を位置決め用マーク部として利用することが可能である。
【0054】
また、同図において、(b)は、複数の通気孔34に対し、薄肉部39を1つの環状溝により形成してある。各通気孔34はそれぞれ、その環状溝(薄肉部39)上に形成されている。この場合、薄肉部39の形態は図2の(b),(b’)に示したものに限定されるが、成形ピン52が不要となることで金型構造の簡素化がはかれる。
【0055】
表1は、本発明による電池封口体を用いた電池の漏液試験結果を示す。
【表1】

【0056】
表1において、「従来方式」は、図10に示した従来の封口体30’を使用したアルカリ乾電池(LR)を示す。集電子形状は、ガスケットとの密着部分での掲示用であって、無加工の丸棒状、ねじ状(螺旋)、粗面状の3種類を試験した。また、集電子のガスケットと密着する部分にシール剤をあらかじめ塗布したもの、成形樹脂をあらかじめ固着させたもの、どちらも無いものの3種類を試験した。
【0057】
上記条件の組み合わせにより、従来方式は1種類試験用電池、本発明方式は9種類の試験用電池をそれぞれ作製し、加速条件下での漏液発生数を調べたところ、表1に示すように、本発明方式は従来方式に比べて耐漏液性が大幅にすぐれていることが判明した。
【0058】
その場合、集電子形状は、粗面状、ねじ状、丸棒状の順で、耐漏液性向上に有効であることが判明した。また、集電子のガスケットと密着する部分は、成形樹脂をあらかじめ固着させたもの、シール剤を塗布したもの、どちらも無いものの順で、耐漏液性向上に有効であることが判明した。
【0059】
以上、本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能である。また、本発明は、請求項に記載以外に以下の付記事項を包含する。
【0060】
付記:
(1)封口板が平坦な中央面部と斜めに傾斜した周縁部を有する皿状に形成されているとともに、ガスケットの薄肉部が上記中央面部に対して垂直方向に型抜きされて形成されていることを特徴とする電池封口体。
(2)前記薄肉部が前記封口板の内側面に寄った位置に形成されていることを特徴とする電池封口体。
(3)前記薄肉部が前記ガスケットの電池缶内側面に寄った位置に形成されていることを特徴とする電池封口体。
(4)前記薄肉部が前記ガスケットの厚み中間位置に形成されていることを特徴とする電池封口体。
(5)前記集電子の前記樹脂製ガスケットと密着している部分の凸条および/または凹状による螺旋が形成されていることを特徴とする電池封口体。
【産業上の利用可能性】
【0061】
電池缶内に発電要素を密閉状態で収容した電池において、ガスケットと封口板の間に大きな空間スペースを必要とせず、また、封口板の強度を損なうことなく所定の作動圧で確実に動作可能な安全弁機能を備えることができ、さらに、電池の耐漏液性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る電池封口体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る電池封口体のA部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明に係る電池封口体の要部形成方法の一例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る電池封口体の要部形成方法の別例を示す断面図である。
【図5】集電子部分の一実施形態を示す断面図である。
【図6】集電子部分の別の実施形態を示す断面図である。
【図7】集電子部分のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る電池封口体の別の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明に係る電池封口体をガスケット側から見た平面図である。
【図10】従来の電池封口体の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
11 電池缶 12 開口部
30 電池封口体(本発明) 30’ 電池封口体(従来)
31 集電子 32 ガスケットとの密着部分
321 螺旋凸条(凸条および/または凹溝) 322 粗面
33 封口板
34 通気孔 341 位置決め用マーク部
35 樹脂製ガスケット(本発明) 35’ 樹脂製ガスケット(従来)
351 管状部
39 薄肉部 41 補強用キャップ
45 樹脂 50 インサート成形金型
51,52 成型ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素を収容する電池缶の開口部を封口するとともに電池の一方極端子を形成する金属製封口板と、上記電池缶と上記封口板の間に介在して上記電池缶内を気密封止する樹脂製ガスケットと、上記封口板に接合されるとともに上記樹脂製ガスケットを貫通して上記発電要素中に挿入される棒状の金属製集電子とが集合一体化された電池封口体において、上記封口板は少なくとも1つの通気孔が形成され、上記樹脂製ガスケットは上記封口板および上記集電子に密着して略層状に形成されるとともに少なくとも上記通気孔に対応する位置に薄肉部が形成されていることを特徴とする電池封口体。
【請求項2】
請求項1において、前記樹脂製ガスケットは、前記封口板および前記集電子が成形型面の一部となるインサート成形により、その封口板および集電子と一体化されていることを特徴とする電池封口体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記集電子の前記樹脂製ガスケットと密着する部分に、その集電子の長手方向と略直交する方向の凸条および/または凹溝が形成されていることを特徴とする電池封口体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記集電子の前記樹脂製ガスケットと密着する部分が粗面加工されていることを特徴とする電池封口体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記集電子の樹脂製ガスケットと密着する部分にシール剤があらかじめ塗布されていることを特徴とする電池封口体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記集電子の前記樹脂製ガスケットと密着する部分に、金属との密着性にすぐれた樹脂があらかじめ固着されていることを特徴とする電池封口体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、前記樹脂製ガスケットの前記集電子を囲む部分に、その部分を外側から囲繞する部品を装着したことを特徴とする電池封口体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記封口板に、円周方向の位置決めを可能にする凹部および/または凸部が形成されていることを特徴とする電池封口体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、前記樹脂製ガスケットは、前記電池缶開口部の縮径方向へのかしめ加工により、前記集電子を締め付けながら外周から圧縮されるように形成されていることを特徴とする電池封口体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、前記ガスケットが、ポリアミド、ポリオレフィンの少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とする電池封口体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の電池封口体を用いて封止されたことを特徴とする電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−66087(P2006−66087A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243870(P2004−243870)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(503025395)FDKエナジー株式会社 (142)
【Fターム(参考)】