電池用接続部材
【課題】簡単な形状変更を行うのみの安価な構成としながらも、接続リードや電池間接続体として用いたときに、溶接強度の向上と接続抵抗の低減を確実に得ることができる電池用接続部材を提供する。
【解決手段】電池B1,B2における互いに接続すべき2つの構成要素の間または二つの電池B1,B2間に両端の溶接部2,3、43,44が溶接により接合される電池用接続部材であって、板状の長手方向の前記両端部に、平面視で直線形状または曲線形状を有する線状の溶接用プロジョクション7,9,38〜41,50,53がそれぞれ設けられている。
【解決手段】電池B1,B2における互いに接続すべき2つの構成要素の間または二つの電池B1,B2間に両端の溶接部2,3、43,44が溶接により接合される電池用接続部材であって、板状の長手方向の前記両端部に、平面視で直線形状または曲線形状を有する線状の溶接用プロジョクション7,9,38〜41,50,53がそれぞれ設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、円筒形蓄電池における渦巻状極板群の上端に接合された集電体と封口体とを電気的接続するための接続リード、または径方向に並置した2個の円筒形蓄電池を相互に接続するための電池間接続体として好適に用いることができる電池用接続部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケル−カドミウム蓄電池やニッケル−水素蓄電池に代表される円筒形アルカリ蓄電池は、信頼性が高く、そのメンテナンスが容易であることから、携帯電話機やノートパソコンなどの携帯型電子機器の電源として幅広く使用されている。さらに、近年では、電動工具や電気自動車などの電源として大電流放電に適した円筒形アルカリ蓄電池の要望が高まっている。
【0003】
上述の大電流放電用途に用いられるアルカリ蓄電池としては、正極板と負極板を、それぞれの上端部あるいは下端部が渦巻状極板群の上下からそれぞれ突出するように巻回し、その上下から突出した正極板と負極板の先端部分に図10に示すような集電体60を複数箇所で溶接することにより、極板群からの集電性を高め、上記集電体60を接続リード61を介して封口体62に電気的に接続したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記アルカリ蓄電池は、集電体60に十字状に配設された四つの切欠き63の両側からそれぞれ下向き方向に直角に屈曲して一体形成されてなるバーリング突起片64の各一部分を正極板(図示せず)の端部に交差した状態で溶接し、接続リード61の下端部を、これの円弧状切欠き65を集電体60の中央の透孔66の孔縁に合致させた位置決め状態で集電体60上に重合して、接続リード61の下端部と集電体60とを、接続リード61に突設された4個の点状の溶接用プロジェクション67を介し抵抗溶接して相互に接合している。この溶接時には、円弧状切欠き65が無効電流を低減するよう機能する。また、接続リード61の上端部と封口体62とは、封口体62の突出部68を接続リード61の嵌合孔69に嵌入した状態で、接続リード61に突設された4個の点状の溶接用プロジェクション70を介し抵抗溶接して相互に接合している。
【0005】
また、上記電動工具や電気自動車などの駆動電源には、複数個の円筒形蓄電池をその径方向に並置して、それらの隣接する各2個の蓄電池を互いに直列接続することにより、所要の出力電圧を得るように構成した電池モジュールが用いられている。上記隣接する各2個の円筒形蓄電池間を互いに電気的接続するための電池間接続体としては、図11に示すような形状を有するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
上記電池間接続体71は、一方の蓄電池B1の底部の形状に接続するための第1の溶接部72と他方の蓄電池B2の封口体に接続するための第2の溶接部73とが両端部にそれぞれ形成されている。第1の溶接部72は、平面状に形成され、蓄電池B1の底部の円形に対応して周方向に沿って4個のスリット孔74が十字状の配置で形成されているとともに、各スリット孔74の両側にそれぞれ点状の溶接用プロジェクション75が形成されている。各スリット孔74は、各溶接用プロジェクション75を介し抵抗溶接して第1の溶接部72と蓄電池B1の底部とを相互に接合するときの無効電流を低減するよう機能する。
【0007】
第2の溶接部73には、蓄電池B2の封口体に当接する環状凹部76と、この環状凹部76の中心に形成されて蓄電池B2の正極端子を挿通させる開口77と、環状凹部76に形成された4個の孔78と、環状凹部76の底面における各孔78の両側位置にそれぞれ突設された点状の溶接用プロジェクション79とが設けられている。各孔78は、各溶接用プロジェクション79を介し抵抗溶接して第2の溶接部73と蓄電池B1の封口体とを相互に接合するときの無効電流を低減するよう機能する。
【特許文献1】特開2001−155712号公報
【特許文献2】特開2002−246003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記接続リード61は、点状のプロジェクション67,70を介し抵抗溶接して集電体60および封口体62にそれぞれ接合されるので、溶接面積が小さいことに起因して以下のような課題がある。すなわち、上記接続リード61では、十分な溶接強度が確保することができないために振動、衝撃およびひねりなどが加わったときの耐久性が不十分であり、このために電池特性のばらつきや溶接外れが発生し易く、また、接続リード61と集電体60および封口体62との各接続点での接続抵抗が増大することから、各接続点で電圧降下が生じて蓄電池の大電流の充放電における作動電圧が低下する。さらに、大電流を流したときには、その電流が小さな溶接面積の溶接用プロジェクション67,70の部分に集中して、発熱したり、電気抵抗が増大するといった不具合が生じる。しかも、溶接用プロジェクション67,70を介して抵抗溶接するときには、その溶接用プロジェクション67,70を溶融して完全に潰した状態にしないと、これによっても電気抵抗が増大する。
【0009】
一方、電池間接続体71においても、やはり点状の溶接用プロジェクョン75,79を介し抵抗溶接して蓄電池B1,B2に接合するので、上述した接続リード61と同様に、十分な溶接強度が確保できないことから振動、衝撃およびひねりなどが加わったときの耐久性が不十分であるため、溶接外れが発生し易く、接続抵抗が増大するために大電流を流したときに発熱したり、電気抵抗が増大するといった不具合が生じる課題がある。
【0010】
そこで、従来では、上述の課題の解消を図るために、溶接用プロジェクョン67,70,75,79の個数を増やして多点溶接することも行われている。ところが、その場合には、溶接回数が増えるだけでなく、同時に複数点の抵抗溶接を行うことが非常に難しいことから、各溶接用プロジェクョン67,70,75,79の溶接状態にばらつきが生じ易く、溶接不良の箇所に溶接外れが発生するおそれがある。接続リード61では、複数点のうちの1点でも溶接外れが生じると、電池特性が極端に悪化する問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、簡単な形状変更を行うのみの安価な構成としながらも、接続リードや電池間接続体として用いたときに、溶接強度の向上と接続抵抗の低減を確実に得ることができる電池用接続部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の電池用接続部材は、電池における互いに接続すべき2つの構成要素の間、または二つの電池間に両端部の溶接部が溶接により接合される電池用接続部材であって、長手方向の前記両端部のうちの少なくとも一方に、平面視で直線形状または曲線形状を有する線状の溶接用プロジョクションがそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に係る発明の電池用接続部材は、請求項1の発明を、電池の集電体と封口体とを電気的に接続する接続リードとして用いるものであって、一端部の第1の溶接部に、前記集電体の注液孔に対応した形状の第1の切欠きが形成されているとともに、封口体に溶接される他端部には第2の溶接部に第2の切欠きが形成され、前記それぞれの切欠きの両側において線状を有する溶接用プロジェクションまたは前記切欠きの両側に跨がって延びる曲線状の溶接用プロジェクションが設けられている。
【0014】
請求項3に係る発明の電池用接続部材は、請求項2の発明において、純ニッケルまたは鉄ニッケルめっき材により板状に形成されている。
【0015】
請求項4に係る発明の電池用接続部材は、請求項1の発明を、並置された2個の電池の端子を電気的に接続する電池間接続体として用いるものであって、両端部の溶接部の中央に、それぞれ開口と、この開口に連通して径方向外方に延びる複数個の切欠きと、この各切欠きの両側において前記開口の孔縁に沿った弧状の曲線状に形成された溶接用プロジェクションとを備えている
請求項5に係る発明の電池用接続部材は、請求項4の発明において、両端部のうち一端部の溶接部中央の開口は正極端子を挿通し、前記開口の周縁は封口体下面に溶接用プロジェクションが当接し、溶接されるために凹部形成されている。
【0016】
請求項6に係る発明の電池用接続部材は、請求項4の発明において、純ニッケル、鉄ニッケルめっき材、銅ニッケルめっき材またはニッケル−銅−ニッケルのクラッド材により板状に形成されている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、線状の溶接用プロジェクションを介して抵抗溶接することにより、従来の点状の溶接用プロジェクションによる場合に比較して溶接面積が大きくなるので、接続抵抗を低減できるとともに大きな溶接強度を確保することができる。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1の発明を接続リードに適用したもので、線状の溶接用プロジェクションの長さを長く設定することにより、従来の点状の溶接用プロジェクションの点数を増やすよりも接続抵抗を低減することができ、しかも、溶接に際して、加圧力に多少のばらつきがあっても、溶接性に大きな影響が生じない利点がある。したがって、集電体および封口体との各間の接続抵抗がそれぞれ低減するのに伴い、電池として機能したときの内部抵抗を低減できる。
【0019】
しかも、線状の溶接用プロジェクションは、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるから、その溶接面積の増大に伴って剥離強度の高い接合状態を得ることができる。また、従来の点状の溶接用プロジェクションを限られた面積内に多数点形成するのは困難であるが、線状の溶接用プロジェクションは所要の金型を用いた絞り加工により容易に形成することができ、従来の点状の溶接用プロジョクションを多数点設ける溶接リードに比較して、金型の管理が容易となり、且つ金型の寿命を長く確保でき、さらに、少ない溶接回数で集電体および封口体に接合できる利点がある。
【0020】
請求項3の発明によれば、この様な金属材質を用いた接続リードは電解液によって腐食することがない。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1の発明を電池間接続体に適用したものであって、線状の溶接用プロジェクションを介して接合するので、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるので、接続抵抗を相当に低減することができ、しかも、線状の溶接用プロジェクションでは、加圧力に多少のばらつきがあっても、溶接性に大きな影響が生じない。そのため、この電池間接続体を用いて構成した電池モジュールは、接続抵抗が低減するとともに、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が増大するのに伴って高い溶接強度を得ることができるから、この電池間接続体を用いて構成した電池モジュールは、大きな振動、衝撃またはひねりなどが加わった場合の耐久性を十分に確保することができ、溶接外れといった不具合が発生するおそれがない。
【0022】
請求項5の発明では、一端の溶接部に開口を設けて正極端子を挿通させ、その開口の周縁が封口体と当接するように凹部形成されているので、正極端子に収納されている安全弁体を溶接時に熱損傷することがない。
【0023】
請求項6の発明では、電池間接続体は接続リードのように電解液による腐食の影響を受けることがないことから、特に上記素材のうちの銅ニッケルめっきおよびニッケル−銅−ニッケルのクラッド材を用いれば、安価なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図および正面図であり、この実施の形態では、円筒形蓄電池における集電体と封口体とを電気的接続するための接続リード1Aとして用いるものを例示してある。
【0025】
上記接続リード1Aは、純ニッケルまたは鉄ニッケルめっき材の0.60mmの厚さを有する板金により、平面視で見た全体形状がほぼ長方形に形成されており、その長方形の長手方向の両端部に、第1の溶接部2および第2の溶接部3がそれぞれ設けられている。一端部(図の左端部)の第1の溶接部2には、後述する上部集電体の円形の透孔に対応したほぼ半円形状の第1の切欠き4が端部中央に形成され、その切欠き4の両側に、長手方向に対し直交方向に延びる直線形状の一対の第1の溶接用プロジェクション7が下面に向け突設されている。一方、他端部(図の右端部)の第2の溶接部3には、後述する封口体の突出部に対応した弧状の第2の切欠き8が端部中央に形成され、その第2の切欠き8の縁部に対応した曲線形状の一対の第2の溶接用プロジェクション9が、第2の切欠き8の両側位置の縁部に沿った配置で下面に向け突設されている。
【0026】
図2(a)、(b)は、上記一実施の形態に係る変形例の電池用接続部材である接続リード1Bを示す平面図および正面図であり、同図において、図1と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この接続リード1Bが図1のものと相違するのは、第2の溶接部3において、図1の一対の曲線状の第2の溶接用プロジェクション9に代えて、第2の切欠き8の縁部全体に対応した長い曲線形状の単一の第2の溶接用プロジェクション10が、第2の切欠き8の縁部全体に沿った配置で下面に向け突設されている構成のみである。
【0027】
上記実施の形態の接続リード1A,1Bは、上述した所定厚みの板材に絞り加工を施して各溶接用プロジェクション7,9,10を形成したのち、図1(a)または図2(a)に示すような平面形状に打ち抜き加工する工程を経て製造され、容易に製造することができる。また、上記接続リード1A,1Bの厚みは、上記実施の形態においては、0.60mmに設定したが、0.20〜0.80mmの範囲内に設定するのが好ましく、その場合、各溶接用プロジェクション7,9,10の突出高さを0.25〜0.50 mmに設定するのが好ましい。
【0028】
図3は図1の接続リード1Aを介して正極集電体11と封口体12とを電気的に接続した状態の斜視図である。正極集電体11が接合される極板群13は、帯状の正極板14と負極板17とがこれらの間にセパレータ18を介在させて渦巻状に巻回されてなる周知の構成を備えたものである。正極集電体11は、極板群13の断面形状内に納まるほぼ矩形状の導電性板材からなり、その中央部に、極板群13の中央の空隙部に対応する円形の注液孔19が設けられ、矩形状の4つの角部から中央部近傍までそれぞれ延びる切欠き状の四つの開口部20が穿設されているとともに、この各開口部20から下向き方向に屈曲されてなるバーリング突起片21が一体形成されている。この正極集電体11は、計8つのバーリング突起片21をそれぞれ正極板14の端部に対し交差した配置で、その一部分を端部に食い込ませた状態で抵抗溶接されて正極板14に接合されている。
【0029】
上記接続リード1Aは以下のような手順で正極集電体11に接合される。すなわち、接続リード1Aの第1の切欠き4を正極集電体11の注液孔19の孔縁に合致させた配置で第1の溶接部2が正極集電体11の上面のほぼ中央部に重ね合わされて、第1の溶接部2の第1の切欠き4を挟んだ2箇所に一対の溶接電極を当接させて加圧しながら抵抗溶接を行うことにより、一対の第1の溶接用プロジェクション7が溶融して第1の溶接部2が正極集電体11に接合される。
【0030】
上記抵抗溶接を行うときには、第1の切欠き4により一対の溶接電極間における第1の溶接部2の表面に流れる無効電流が減り、且つ直線状の一対の第1の溶接用プロジェクション7と正極集電体11との接触部に流れる溶接電流が増して、第1の溶接用プロジェクション7が確実に溶融される。但し、一対の第1の溶接用プロジェクション7は、直線状であることから、従来の接続リードのような点状のものと異なり、完全に溶融しなくても、溶接部分での電気抵抗が増大することがなく、十分な接合状態を得ることができる。
【0031】
このようにして第1の溶接部2が正極集電体11に接合された接続リード1Aは、図1に破線で図示した折れ線に沿って直角に屈曲されて、図3に図示するような起立状態とされる。なお、接続リード1Aを正極集電体11に予め接合したのちに、この正極集電体11を極板群13に接合する手順で組み立てを行ってもよい。
【0032】
つぎに、接続リード1Aにおける起立状態とされた第2の溶接部3に封口体12が接合される。すなわち、接続リード1Aの第2の切欠き8を封口体12の下面の突出部22の周端部に沿わせた配置で第2溶接部3を封口体12の下面に重ね合わせて、一対の溶接電極を封口体12の上面と接続リード1Aの第2の溶接部3とに当接させて加圧することにより、一対の溶接電極間に第2の溶接部3と封口体12とを挟み込む状態で抵抗溶接される。これにより、一対の第2の溶接用プロジェクション9が溶融して、第2の溶接部3が封口体12に接合される。
【0033】
なお、図2の接続リード1Bを用いて正極集電体11と封口体12とを相互に電気的接続する場合にも、上記接続リード1Aで説明したと同様の手順で行われる。また、上記実施の形態の各接続リード1A,1Bは、長手方向の両端部の第1の溶接部2および第2の溶接部3の双方にそれぞれ第1の溶接用プロジェクション7および第2の溶接用プロジェクション9または10を設けた場合を例示したが、一端部は、正極集電体を一体形成した形状、または別体の正極集電体を予め一体化した構成とすることができるので、少なくとも第2の溶接部3に第2の溶接用プロジェクション9または10を設ければ足りる。
【0034】
図4は、図3の接続リード1Aにより極板群13と封口体12とを電気的接続してなる構成を用いて構成した円筒形蓄電池を示す縦断面図である。極板群13は、正極板14(図3)の端部14aが極板群13の上方に突出し、負極板17(図3)の端部17aが下方へ突出するように構成されている。この極板群13は、負極板17の端部17aに負極集電体27を予め接合した状態で、発泡金属製のリング体からなる弾性導電体24を介在して、金属製の電池ケース23内に挿入される。負極板17は、負極集電体27の中央部から下方へ膨出した負極集電片27aが電池ケース23の底面に抵抗溶接により接合されていることにより、負極集電体27を介して電池ケース23に電気的に接続されている。極板群13は、電池ケース23の外周面に形成された環状溝部28によって内方に膨出した環状固定部29により絶縁支持部材30を介し押圧されて、電池ケース23内に固定されている。
【0035】
上記封口体12は、電池内部に発生するガスを排出するための弁口32が突出部22に設けられたフィルタ部31と、このフィルタ部31上に重ね合わされた状態で固定されたキャップ状正極端子33と、フィルタ部31とキャップ状正極端子33との間に挟持固定されて弁口32を閉塞するゴム製の安全弁体34とを備えて構成されている。この封口体12は、電池ケース23内に収納された極板群13が環状溝部28の形成により内方に膨出する環状支持部29によって絶縁押え部材30を介し固定されたのちに、接続リード1Aを折り曲げることによって電池ケース23の上端開口部に対し平行な相対位置として電池ケース23内に挿入され、フィルタ部31の周縁部が絶縁ガスケット37を介して環状支持部29上に載置して係止される。そののち、電池ケース23は、上端開口部の周縁部が内方にかしめ加工されることにより、絶縁ガスケット37を圧縮して密閉状態に閉塞されている。
【0036】
図5は、上記接続リード1Aを用いて構成した円筒形蓄電池の溶接用プロジェクション7,9の長さと正極集電体11および接続リード1Aの間または封口体12および接続リードの間における接続抵抗との関係を示す特性図である。この特性図は、純ニッケルにより幅が15mmで、且つ厚みが0.60mmの形状に作った接続リードを用いて実測した結果である。
【0037】
上記接続リード1Aでは、直線状または曲線状の溶接用プロジェクション7,9を介して接合するので、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるので、接続抵抗を相当に低減することができる。線状の溶接用プロジェクション7,9の長さを長くする場合には、点状の溶接用プロジェクションの点数を増やすよりも接続抵抗が低減する。しかも、比較的多数の点状の溶接用プロジェクションを介し抵抗溶接する場合には、全ての溶接用プロジェクションに均一に加圧力をかけないと、安定して抵抗溶接が行えないのに対し、線状の溶接用プロジェクション7,9では、加圧力に多少のばらつきがあっても、溶接性に大きな影響が生じない利点がある。
【0038】
したがって、上記接続リード1Aを用いて構成した円筒形蓄電池は、正極集電体11と接続リード1Aとの間および封口体12と接続リードとの間の各接続抵抗がそれぞれ低減するのに伴い、電池として機能したときの内部抵抗を低減でき、それに加えて、接合面積が大きいことから、大電流が流れた場合にもその電流が接合箇所に集中せず、且つ接合箇所での電圧降下も僅かであって、大電流放電時でも蓄電池としての作動電圧を高く保つことができ。
【0039】
しかも、上記接続リード1Aは、線状の溶接用プロジェクション7,9を介して溶接することにより、点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるから、その溶接面積の増大に伴って高い溶接強度を得ることができる。
【0040】
したがって、上記接続リード1Aを用いて構成した円筒形蓄電池は、正極集電体11と接続リード1A間および接続リード1Aと封口体12との各間の接合箇所に十分な溶接強度を確保することができるので、大きな振動、衝撃またはひねりなどが加わった場合の耐久性を十分に確保することができ、電池特性のばらつきや溶接外れといった不具合が発生するおそれがない。また、上記接続リード1Aは、アルカリ蓄電池において純ニッケルまたは鉄ニッケルめっき材を素材として形成されており、電解液によって腐食することもない。
【0041】
また、従来の点状の溶接用プロジェクションを限られた面積内に多数点形成するのは困難であるが、上記接続リード1Aでは、溶接用プロジェクション7,9が線状であるから、この線状の溶接用プロジェクション7,9は所要の金型を用いた絞り加工により容易に形成することができ、従来の点状の溶接用プロジョクションを多数点設ける溶接リードに比較して、金型の管理が容易となり、且つ金型の寿命を長く確保できる利点がある。また、この接続リード1Aは、少ない溶接回数で正極集電体11および封口体12に接合できる利点がある。
【0042】
図6の特性図において、上記接続リード1Aを用いて構成した円筒形蓄電池の板厚と正極集電体11および接続リード1Aの間または封口体12および接続リードの間の接続抵抗との関係を示す特性図である。また、同図には、比較のために、従来の点状の溶接用プロジェクションを設けた接続リードの板厚と接続抵抗との関係を示してあり、破線の特性曲線は点状の溶接用プロジェクションを2点設けた場合、1点鎖線は点状の溶接用プロジェクションを1点設けた場合である。
【0043】
図6から明らかなように、上記接続リード1Aの場合には、従来の1点の溶接用プロジェクションを設けた接続リードと比較して、板厚を同一とした場合に接続抵抗を大幅に低減することができる。なお、図2の接続リード1Bを用いる場合にも、上記接続リード1Aの上述したと同様の効果を得ることができる。
【0044】
図7(a)〜(d)は、何れも本発明の他の実施の形態に係る接続リード1C〜1Fを示す平面図であり、同図において、図1または図2と同一若しくは実質的に同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。(a)の接続リード1Cは、第1の溶接部2に、一実施の形態と同様の一対の直線状の第1の溶接用プロジェクション7が同一の配置で形成されているとともに、第2の溶接部3に、第1の溶接部2と同一形状の第2の溶接用プロジェクション38が、第1の溶接用プロジェクション7と平行となる配置で形成されている。
【0045】
(b)の接続リード1Dは、第1の溶接部2に、一対の直線状の第1の溶接用プロジェクション39が長方形の長手方向に沿った配置で形成されているとともに、第2の溶接部3には、第1の溶接部2と同一形状の第2の溶接用プロジェクション40が、第1の溶接用プロジェクション39と同一方向を向いた配置で形成されている。
【0046】
(c)の接続リード1Eは、第1の溶接部2に、(a)と同一の一対の直線状の第1の溶接用プロジェクション39が同一の配置で形成されているとともに、第2の溶接部3には、第1の溶接部2と同一形状の第2の溶接用プロジェクション41が、第1の溶接用プロジェクション39と平行となる配置で形成されている。
【0047】
(d)の接続リード1Fは、第1の溶接部2に、(b)と同一の直線状の第1の溶接用プロジェクション39が同一の配置で2対形成されているとともに、第2の溶接部3には、第1の溶接部2と同一形状の2対の第2の溶接用プロジェクション40が、第1の溶接用プロジェクション39と同一の配置で形成されている。
【0048】
本発明の実施の形態による各接続リード1A〜1Fの、剥離強度については、従来の接続リードが200〜300Nであるのに対し、600N以上と格段に強くなる。各接続リード1C〜1Fの接続抵抗を比較すると、接続リード1Cと接続リード1Eは、ほぼ同等で、接続リード1Dよりも第1および第2の各線状の溶接用プロジェクション7,38、39,41の対向が近接している分、低くなる。(d)の接続リード1Fは、各二対ずつの線状の溶接用プロジェクション39,40からなるので、集電効率の向上し、最も接続抵抗に優れるが、狭い領域に密にプロジェクション39,40を形成するので、加工が難しくなる。
【0049】
図8(a)は本発明を電池間接続体42Aに適用した場合の一実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。上記電池間接続体42Aは、純ニッケル、鉄ニッケルめっき材、銅ニッケルめっき材またはニッケル−銅−ニッケルのクラッド材の何れかを素材として、0.40mmの厚さを有する板金で、平面視で見た全体形状が、両端部が蓄電池B1,B2の外形に対応した半円を有するほぼ長方形に形成されており、その長方形の長手方向の両端部に、第1の溶接部43および第2の溶接部44がそれぞれ設けられている。厚みは、実施の形態において0.40mmに設定した場合を例示したが、0.30〜0.60mmの範囲内に設定するのが好ましい。
【0050】
一端部(図の左端部)の第1の溶接部43には、一方の蓄電池B1の封口体12におけるフィルタ部31(図4)に当接する環状の凹部47が形成されている。この環状の凹部47の中心部には、蓄電池B1の封口体12におけるキャップ状正極端子33(図4)を挿通させる円形の開口48が形成されている。さらに、環状の凹部47には、開口48において90°の等間隔で4箇所の孔縁から開口48に連通して径方向外方に向け延びるスリット状の4つの切欠き49が形成され、この各切欠き49の各々の間の箇所に、開口48に沿った弧形状を有する曲線状の第1の溶接用プロジェクション50が下面に向け突設されている。一方、他端部(図の右端部)の第2の溶接部44には、第1の溶接部43とそれぞれ同一形状の開口51、4つの切欠き52および第2の溶接用プロジェクション53が形成されている。
【0051】
なお、形成用素材としては、2個の蓄電池B1,B2間をこれらの外部において接続するので、前述の接続リード1A〜1Fのように電解液による腐食の影響を受けることがないことから、銅ニッケルめっきおよびニッケル−銅−ニッケルのクラッド材を用いることができ、これらを用いれば、接続抵抗が低く、安価なものとなる。また、上記電池間接続体42Aは、凹部47および溶接用プロジェクション50,53を金型を用いた絞り加工により形成したのちに、打ち抜き加工を行う過程を経て製作される。
【0052】
上記電池間接続体42Aは、径方向に並置した2個の円筒形蓄電池B1,B2を直列接続する用途に用いられるものである。すなわち、上記電池間接続体42Aの第1の溶接部43は、一方の蓄電池Bの正極側の周縁部に絶縁リング54を取り付けた状態で、開口48に蓄電池Bにおける封口体12のキャップ状正極端子33を挿通させて、環状の凹部47の底面を封口体12のフィルタ部31に当接させ、絶縁リング54を介在して蓄電池B1に向け加圧しながら、各2個の第1の溶接用プロジェクション50間に溶接電流を流す抵抗溶接を行うことにより、溶融した第1の溶接用プロジェクション50がフィルタ部31に溶着し、第1の溶接部43が封口体12に接合される。
【0053】
一方、第2の溶接部44は、他方の蓄電池B2の電池ケースの底部外面に当接させた状態で蓄電池B2に向け加圧しながら、各2個の第2の溶接用プロジェクション53間に溶接電流を流す抵抗溶接を行うことにより、溶融した第2の溶接用プロジェクション53が電池ケースの底部外面に溶着し、第2の溶接部44が電池ケースの底部に接合される。
【0054】
上記第1および第2の溶接部43,44の抵抗溶接を行うときには、切欠き49,52により一対の溶接電極間における第1の溶接部43または第2の溶接部44の表面に流れる無効電流が減り、且つ曲線状の各2個の第1の溶接用プロジェクション50とフィルタ部31との接触部または第2の溶接用プロジェクション53と電池ケースの底部との接触部に流れる溶接電流が増して、第1または第2の溶接用プロジェクション50,53が確実に溶融される。このとき、第1および第2の溶接用プロジェクション50,53は、曲線状であることから、従来の接続リードのような点状のものと異なり、完全に溶融しなくても、溶接部分での電気抵抗が増大することがなく、十分な接合状態を得ることができる。
【0055】
上記電池間接続体42Aにおいても、上記接続リード1A〜1Fで説明したとほぼ同様の効果を得ることができる。すなわち、上記電池間接続体42Aでは、曲線状の溶接用プロジェクション50,53を介して接合するので、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるので、接続抵抗を相当に低減することができる。しかも、比較的多数の点状の溶接用プロジェクションを介し抵抗溶接する場合には、全ての溶接用プロジェクションに均一に加圧力をかけないと、安定して抵抗溶接が行えないのに対し、曲線状の溶接用プロジェクション50,53では、加圧力に多少のばらつきがあっても、溶接性に大きな影響が生じない利点がある。したがって、上記電池間接続体42Aを用いて構成した電池モジュールは、接続抵抗が減ずるとともに、大電流が流れた場合にもその電流が接合箇所に集中しないので、大電流の出入特性が優れる。
【0056】
しかも、上記電池間接続体42Aは、点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が増大するのに伴って高い溶接強度を得ることができる。したがって、上記電池間接続体42Aを用いて構成した電池モジュールは、大きな振動、衝撃またはひねりなどが加わった場合の耐久性を十分に確保することができ、溶接外れといった不具合が発生するおそれがない。さらに、上記電池間接続体42Aの場合には、従来の点状の溶接用プロジェクションを第1および第2の溶接部にそれぞれ8点ずつ設けた電池間接続体と比較して、板厚を同一とした場合に接続抵抗を約10%低減することができる。これにより、上記電池間接続体42Aは、所要の接続抵抗を得る場合に、従来の電池間接続体よりも板厚を薄く設定することができる。
【0057】
図9は本発明を電池間接続体42Bに適用した他の実施の形態に係る電池用接続部材を示す斜視図であり、同図において、図8と同一若しくは実質的に同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この電池間接続体42は、第1および第2の溶接部43,44において、4個の第1の切欠き49,52が、図8の電池間接続体42Aの配設位置に対し約45°ずらした各位置に90°の等間隔で形成され、且つ隣接する各2個の切欠き49,52の各間の箇所に、弧形状を有する曲線状の第1および第2の溶接用プロジェクション50,53が下面に向け突設されている。この電池間接続体42Bは、上記電池間接続体42Aより線状プロジェクション50,53の距離が近接している分、接続抵抗が低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る電池用接続部材は、線状の溶接用プロジェクションを介し溶接して接合するので、接続抵抗を低減できるとともに高い溶接強度を確保することができるから、接続リードに適用することにより、電池内部抵抗を低減でき、且つ耐振動性や耐衝撃性の高い蓄電池を得ることができ、一方、電池間接続体に適用することにより、接続抵抗を低減でき、各接続強度の高い電池モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a)、(b)は本発明を接続リードに適用した場合の一実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図および正面図。
【図2】(a)、(b)は同上の実施の形態に係る変形例の電池用接続部材を示す平面図および正面図。
【図3】図1の接続リードにより集電体と封口体とを電気的に接続した状態の斜視図。
【図4】同上の電池用接続部材を用いて構成した円筒形蓄電池を示す縦断面図。
【図5】同上の電池用接続部材を用いて接合したときの溶接用プロジェクションの長さと接続抵抗の関係を示す特性図。
【図6】同上の電池用接続部材を用いて接合したときの板厚と接続抵抗の関係を示す特性図。
【図7】(a)〜(d)は何れも本発明を接続リードに適用した場合の異なる実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図。
【図8】(a)は本発明を電池間接続体に適用した場合の一実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図9】本発明を電池間接続体に適用した場合の他の実施の形態に係る電池用接続部材を示す斜視図。
【図10】従来の接続リードにおける集電体と封口体とを電気的に接続するときの相対位置関係を示す分解斜視図。
【図11】(a)は従来の電池間接続体を示す平面図、(b)は(a)のA−A線で切断した断面図。
【符号の説明】
【0060】
1A〜1F 接続リード(電池用接続部材)
2 第1の溶接部
3 第2の溶接部
4 切欠き
7,9,10 溶接用プロジェクション
8 切欠き
11 集電体
12 封口体
19 注液孔
33 正極端子
38〜41 溶接用プロジェクション
42A,42B 電池間接続体(電池用接続部材)
43 第1の溶接部
44 第2の溶接部
48 開口
49,52 切欠き
50,53 溶接用プロジェクョン
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、円筒形蓄電池における渦巻状極板群の上端に接合された集電体と封口体とを電気的接続するための接続リード、または径方向に並置した2個の円筒形蓄電池を相互に接続するための電池間接続体として好適に用いることができる電池用接続部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケル−カドミウム蓄電池やニッケル−水素蓄電池に代表される円筒形アルカリ蓄電池は、信頼性が高く、そのメンテナンスが容易であることから、携帯電話機やノートパソコンなどの携帯型電子機器の電源として幅広く使用されている。さらに、近年では、電動工具や電気自動車などの電源として大電流放電に適した円筒形アルカリ蓄電池の要望が高まっている。
【0003】
上述の大電流放電用途に用いられるアルカリ蓄電池としては、正極板と負極板を、それぞれの上端部あるいは下端部が渦巻状極板群の上下からそれぞれ突出するように巻回し、その上下から突出した正極板と負極板の先端部分に図10に示すような集電体60を複数箇所で溶接することにより、極板群からの集電性を高め、上記集電体60を接続リード61を介して封口体62に電気的に接続したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記アルカリ蓄電池は、集電体60に十字状に配設された四つの切欠き63の両側からそれぞれ下向き方向に直角に屈曲して一体形成されてなるバーリング突起片64の各一部分を正極板(図示せず)の端部に交差した状態で溶接し、接続リード61の下端部を、これの円弧状切欠き65を集電体60の中央の透孔66の孔縁に合致させた位置決め状態で集電体60上に重合して、接続リード61の下端部と集電体60とを、接続リード61に突設された4個の点状の溶接用プロジェクション67を介し抵抗溶接して相互に接合している。この溶接時には、円弧状切欠き65が無効電流を低減するよう機能する。また、接続リード61の上端部と封口体62とは、封口体62の突出部68を接続リード61の嵌合孔69に嵌入した状態で、接続リード61に突設された4個の点状の溶接用プロジェクション70を介し抵抗溶接して相互に接合している。
【0005】
また、上記電動工具や電気自動車などの駆動電源には、複数個の円筒形蓄電池をその径方向に並置して、それらの隣接する各2個の蓄電池を互いに直列接続することにより、所要の出力電圧を得るように構成した電池モジュールが用いられている。上記隣接する各2個の円筒形蓄電池間を互いに電気的接続するための電池間接続体としては、図11に示すような形状を有するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
上記電池間接続体71は、一方の蓄電池B1の底部の形状に接続するための第1の溶接部72と他方の蓄電池B2の封口体に接続するための第2の溶接部73とが両端部にそれぞれ形成されている。第1の溶接部72は、平面状に形成され、蓄電池B1の底部の円形に対応して周方向に沿って4個のスリット孔74が十字状の配置で形成されているとともに、各スリット孔74の両側にそれぞれ点状の溶接用プロジェクション75が形成されている。各スリット孔74は、各溶接用プロジェクション75を介し抵抗溶接して第1の溶接部72と蓄電池B1の底部とを相互に接合するときの無効電流を低減するよう機能する。
【0007】
第2の溶接部73には、蓄電池B2の封口体に当接する環状凹部76と、この環状凹部76の中心に形成されて蓄電池B2の正極端子を挿通させる開口77と、環状凹部76に形成された4個の孔78と、環状凹部76の底面における各孔78の両側位置にそれぞれ突設された点状の溶接用プロジェクション79とが設けられている。各孔78は、各溶接用プロジェクション79を介し抵抗溶接して第2の溶接部73と蓄電池B1の封口体とを相互に接合するときの無効電流を低減するよう機能する。
【特許文献1】特開2001−155712号公報
【特許文献2】特開2002−246003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記接続リード61は、点状のプロジェクション67,70を介し抵抗溶接して集電体60および封口体62にそれぞれ接合されるので、溶接面積が小さいことに起因して以下のような課題がある。すなわち、上記接続リード61では、十分な溶接強度が確保することができないために振動、衝撃およびひねりなどが加わったときの耐久性が不十分であり、このために電池特性のばらつきや溶接外れが発生し易く、また、接続リード61と集電体60および封口体62との各接続点での接続抵抗が増大することから、各接続点で電圧降下が生じて蓄電池の大電流の充放電における作動電圧が低下する。さらに、大電流を流したときには、その電流が小さな溶接面積の溶接用プロジェクション67,70の部分に集中して、発熱したり、電気抵抗が増大するといった不具合が生じる。しかも、溶接用プロジェクション67,70を介して抵抗溶接するときには、その溶接用プロジェクション67,70を溶融して完全に潰した状態にしないと、これによっても電気抵抗が増大する。
【0009】
一方、電池間接続体71においても、やはり点状の溶接用プロジェクョン75,79を介し抵抗溶接して蓄電池B1,B2に接合するので、上述した接続リード61と同様に、十分な溶接強度が確保できないことから振動、衝撃およびひねりなどが加わったときの耐久性が不十分であるため、溶接外れが発生し易く、接続抵抗が増大するために大電流を流したときに発熱したり、電気抵抗が増大するといった不具合が生じる課題がある。
【0010】
そこで、従来では、上述の課題の解消を図るために、溶接用プロジェクョン67,70,75,79の個数を増やして多点溶接することも行われている。ところが、その場合には、溶接回数が増えるだけでなく、同時に複数点の抵抗溶接を行うことが非常に難しいことから、各溶接用プロジェクョン67,70,75,79の溶接状態にばらつきが生じ易く、溶接不良の箇所に溶接外れが発生するおそれがある。接続リード61では、複数点のうちの1点でも溶接外れが生じると、電池特性が極端に悪化する問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、簡単な形状変更を行うのみの安価な構成としながらも、接続リードや電池間接続体として用いたときに、溶接強度の向上と接続抵抗の低減を確実に得ることができる電池用接続部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の電池用接続部材は、電池における互いに接続すべき2つの構成要素の間、または二つの電池間に両端部の溶接部が溶接により接合される電池用接続部材であって、長手方向の前記両端部のうちの少なくとも一方に、平面視で直線形状または曲線形状を有する線状の溶接用プロジョクションがそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に係る発明の電池用接続部材は、請求項1の発明を、電池の集電体と封口体とを電気的に接続する接続リードとして用いるものであって、一端部の第1の溶接部に、前記集電体の注液孔に対応した形状の第1の切欠きが形成されているとともに、封口体に溶接される他端部には第2の溶接部に第2の切欠きが形成され、前記それぞれの切欠きの両側において線状を有する溶接用プロジェクションまたは前記切欠きの両側に跨がって延びる曲線状の溶接用プロジェクションが設けられている。
【0014】
請求項3に係る発明の電池用接続部材は、請求項2の発明において、純ニッケルまたは鉄ニッケルめっき材により板状に形成されている。
【0015】
請求項4に係る発明の電池用接続部材は、請求項1の発明を、並置された2個の電池の端子を電気的に接続する電池間接続体として用いるものであって、両端部の溶接部の中央に、それぞれ開口と、この開口に連通して径方向外方に延びる複数個の切欠きと、この各切欠きの両側において前記開口の孔縁に沿った弧状の曲線状に形成された溶接用プロジェクションとを備えている
請求項5に係る発明の電池用接続部材は、請求項4の発明において、両端部のうち一端部の溶接部中央の開口は正極端子を挿通し、前記開口の周縁は封口体下面に溶接用プロジェクションが当接し、溶接されるために凹部形成されている。
【0016】
請求項6に係る発明の電池用接続部材は、請求項4の発明において、純ニッケル、鉄ニッケルめっき材、銅ニッケルめっき材またはニッケル−銅−ニッケルのクラッド材により板状に形成されている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、線状の溶接用プロジェクションを介して抵抗溶接することにより、従来の点状の溶接用プロジェクションによる場合に比較して溶接面積が大きくなるので、接続抵抗を低減できるとともに大きな溶接強度を確保することができる。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1の発明を接続リードに適用したもので、線状の溶接用プロジェクションの長さを長く設定することにより、従来の点状の溶接用プロジェクションの点数を増やすよりも接続抵抗を低減することができ、しかも、溶接に際して、加圧力に多少のばらつきがあっても、溶接性に大きな影響が生じない利点がある。したがって、集電体および封口体との各間の接続抵抗がそれぞれ低減するのに伴い、電池として機能したときの内部抵抗を低減できる。
【0019】
しかも、線状の溶接用プロジェクションは、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるから、その溶接面積の増大に伴って剥離強度の高い接合状態を得ることができる。また、従来の点状の溶接用プロジェクションを限られた面積内に多数点形成するのは困難であるが、線状の溶接用プロジェクションは所要の金型を用いた絞り加工により容易に形成することができ、従来の点状の溶接用プロジョクションを多数点設ける溶接リードに比較して、金型の管理が容易となり、且つ金型の寿命を長く確保でき、さらに、少ない溶接回数で集電体および封口体に接合できる利点がある。
【0020】
請求項3の発明によれば、この様な金属材質を用いた接続リードは電解液によって腐食することがない。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1の発明を電池間接続体に適用したものであって、線状の溶接用プロジェクションを介して接合するので、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるので、接続抵抗を相当に低減することができ、しかも、線状の溶接用プロジェクションでは、加圧力に多少のばらつきがあっても、溶接性に大きな影響が生じない。そのため、この電池間接続体を用いて構成した電池モジュールは、接続抵抗が低減するとともに、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が増大するのに伴って高い溶接強度を得ることができるから、この電池間接続体を用いて構成した電池モジュールは、大きな振動、衝撃またはひねりなどが加わった場合の耐久性を十分に確保することができ、溶接外れといった不具合が発生するおそれがない。
【0022】
請求項5の発明では、一端の溶接部に開口を設けて正極端子を挿通させ、その開口の周縁が封口体と当接するように凹部形成されているので、正極端子に収納されている安全弁体を溶接時に熱損傷することがない。
【0023】
請求項6の発明では、電池間接続体は接続リードのように電解液による腐食の影響を受けることがないことから、特に上記素材のうちの銅ニッケルめっきおよびニッケル−銅−ニッケルのクラッド材を用いれば、安価なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図および正面図であり、この実施の形態では、円筒形蓄電池における集電体と封口体とを電気的接続するための接続リード1Aとして用いるものを例示してある。
【0025】
上記接続リード1Aは、純ニッケルまたは鉄ニッケルめっき材の0.60mmの厚さを有する板金により、平面視で見た全体形状がほぼ長方形に形成されており、その長方形の長手方向の両端部に、第1の溶接部2および第2の溶接部3がそれぞれ設けられている。一端部(図の左端部)の第1の溶接部2には、後述する上部集電体の円形の透孔に対応したほぼ半円形状の第1の切欠き4が端部中央に形成され、その切欠き4の両側に、長手方向に対し直交方向に延びる直線形状の一対の第1の溶接用プロジェクション7が下面に向け突設されている。一方、他端部(図の右端部)の第2の溶接部3には、後述する封口体の突出部に対応した弧状の第2の切欠き8が端部中央に形成され、その第2の切欠き8の縁部に対応した曲線形状の一対の第2の溶接用プロジェクション9が、第2の切欠き8の両側位置の縁部に沿った配置で下面に向け突設されている。
【0026】
図2(a)、(b)は、上記一実施の形態に係る変形例の電池用接続部材である接続リード1Bを示す平面図および正面図であり、同図において、図1と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この接続リード1Bが図1のものと相違するのは、第2の溶接部3において、図1の一対の曲線状の第2の溶接用プロジェクション9に代えて、第2の切欠き8の縁部全体に対応した長い曲線形状の単一の第2の溶接用プロジェクション10が、第2の切欠き8の縁部全体に沿った配置で下面に向け突設されている構成のみである。
【0027】
上記実施の形態の接続リード1A,1Bは、上述した所定厚みの板材に絞り加工を施して各溶接用プロジェクション7,9,10を形成したのち、図1(a)または図2(a)に示すような平面形状に打ち抜き加工する工程を経て製造され、容易に製造することができる。また、上記接続リード1A,1Bの厚みは、上記実施の形態においては、0.60mmに設定したが、0.20〜0.80mmの範囲内に設定するのが好ましく、その場合、各溶接用プロジェクション7,9,10の突出高さを0.25〜0.50 mmに設定するのが好ましい。
【0028】
図3は図1の接続リード1Aを介して正極集電体11と封口体12とを電気的に接続した状態の斜視図である。正極集電体11が接合される極板群13は、帯状の正極板14と負極板17とがこれらの間にセパレータ18を介在させて渦巻状に巻回されてなる周知の構成を備えたものである。正極集電体11は、極板群13の断面形状内に納まるほぼ矩形状の導電性板材からなり、その中央部に、極板群13の中央の空隙部に対応する円形の注液孔19が設けられ、矩形状の4つの角部から中央部近傍までそれぞれ延びる切欠き状の四つの開口部20が穿設されているとともに、この各開口部20から下向き方向に屈曲されてなるバーリング突起片21が一体形成されている。この正極集電体11は、計8つのバーリング突起片21をそれぞれ正極板14の端部に対し交差した配置で、その一部分を端部に食い込ませた状態で抵抗溶接されて正極板14に接合されている。
【0029】
上記接続リード1Aは以下のような手順で正極集電体11に接合される。すなわち、接続リード1Aの第1の切欠き4を正極集電体11の注液孔19の孔縁に合致させた配置で第1の溶接部2が正極集電体11の上面のほぼ中央部に重ね合わされて、第1の溶接部2の第1の切欠き4を挟んだ2箇所に一対の溶接電極を当接させて加圧しながら抵抗溶接を行うことにより、一対の第1の溶接用プロジェクション7が溶融して第1の溶接部2が正極集電体11に接合される。
【0030】
上記抵抗溶接を行うときには、第1の切欠き4により一対の溶接電極間における第1の溶接部2の表面に流れる無効電流が減り、且つ直線状の一対の第1の溶接用プロジェクション7と正極集電体11との接触部に流れる溶接電流が増して、第1の溶接用プロジェクション7が確実に溶融される。但し、一対の第1の溶接用プロジェクション7は、直線状であることから、従来の接続リードのような点状のものと異なり、完全に溶融しなくても、溶接部分での電気抵抗が増大することがなく、十分な接合状態を得ることができる。
【0031】
このようにして第1の溶接部2が正極集電体11に接合された接続リード1Aは、図1に破線で図示した折れ線に沿って直角に屈曲されて、図3に図示するような起立状態とされる。なお、接続リード1Aを正極集電体11に予め接合したのちに、この正極集電体11を極板群13に接合する手順で組み立てを行ってもよい。
【0032】
つぎに、接続リード1Aにおける起立状態とされた第2の溶接部3に封口体12が接合される。すなわち、接続リード1Aの第2の切欠き8を封口体12の下面の突出部22の周端部に沿わせた配置で第2溶接部3を封口体12の下面に重ね合わせて、一対の溶接電極を封口体12の上面と接続リード1Aの第2の溶接部3とに当接させて加圧することにより、一対の溶接電極間に第2の溶接部3と封口体12とを挟み込む状態で抵抗溶接される。これにより、一対の第2の溶接用プロジェクション9が溶融して、第2の溶接部3が封口体12に接合される。
【0033】
なお、図2の接続リード1Bを用いて正極集電体11と封口体12とを相互に電気的接続する場合にも、上記接続リード1Aで説明したと同様の手順で行われる。また、上記実施の形態の各接続リード1A,1Bは、長手方向の両端部の第1の溶接部2および第2の溶接部3の双方にそれぞれ第1の溶接用プロジェクション7および第2の溶接用プロジェクション9または10を設けた場合を例示したが、一端部は、正極集電体を一体形成した形状、または別体の正極集電体を予め一体化した構成とすることができるので、少なくとも第2の溶接部3に第2の溶接用プロジェクション9または10を設ければ足りる。
【0034】
図4は、図3の接続リード1Aにより極板群13と封口体12とを電気的接続してなる構成を用いて構成した円筒形蓄電池を示す縦断面図である。極板群13は、正極板14(図3)の端部14aが極板群13の上方に突出し、負極板17(図3)の端部17aが下方へ突出するように構成されている。この極板群13は、負極板17の端部17aに負極集電体27を予め接合した状態で、発泡金属製のリング体からなる弾性導電体24を介在して、金属製の電池ケース23内に挿入される。負極板17は、負極集電体27の中央部から下方へ膨出した負極集電片27aが電池ケース23の底面に抵抗溶接により接合されていることにより、負極集電体27を介して電池ケース23に電気的に接続されている。極板群13は、電池ケース23の外周面に形成された環状溝部28によって内方に膨出した環状固定部29により絶縁支持部材30を介し押圧されて、電池ケース23内に固定されている。
【0035】
上記封口体12は、電池内部に発生するガスを排出するための弁口32が突出部22に設けられたフィルタ部31と、このフィルタ部31上に重ね合わされた状態で固定されたキャップ状正極端子33と、フィルタ部31とキャップ状正極端子33との間に挟持固定されて弁口32を閉塞するゴム製の安全弁体34とを備えて構成されている。この封口体12は、電池ケース23内に収納された極板群13が環状溝部28の形成により内方に膨出する環状支持部29によって絶縁押え部材30を介し固定されたのちに、接続リード1Aを折り曲げることによって電池ケース23の上端開口部に対し平行な相対位置として電池ケース23内に挿入され、フィルタ部31の周縁部が絶縁ガスケット37を介して環状支持部29上に載置して係止される。そののち、電池ケース23は、上端開口部の周縁部が内方にかしめ加工されることにより、絶縁ガスケット37を圧縮して密閉状態に閉塞されている。
【0036】
図5は、上記接続リード1Aを用いて構成した円筒形蓄電池の溶接用プロジェクション7,9の長さと正極集電体11および接続リード1Aの間または封口体12および接続リードの間における接続抵抗との関係を示す特性図である。この特性図は、純ニッケルにより幅が15mmで、且つ厚みが0.60mmの形状に作った接続リードを用いて実測した結果である。
【0037】
上記接続リード1Aでは、直線状または曲線状の溶接用プロジェクション7,9を介して接合するので、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるので、接続抵抗を相当に低減することができる。線状の溶接用プロジェクション7,9の長さを長くする場合には、点状の溶接用プロジェクションの点数を増やすよりも接続抵抗が低減する。しかも、比較的多数の点状の溶接用プロジェクションを介し抵抗溶接する場合には、全ての溶接用プロジェクションに均一に加圧力をかけないと、安定して抵抗溶接が行えないのに対し、線状の溶接用プロジェクション7,9では、加圧力に多少のばらつきがあっても、溶接性に大きな影響が生じない利点がある。
【0038】
したがって、上記接続リード1Aを用いて構成した円筒形蓄電池は、正極集電体11と接続リード1Aとの間および封口体12と接続リードとの間の各接続抵抗がそれぞれ低減するのに伴い、電池として機能したときの内部抵抗を低減でき、それに加えて、接合面積が大きいことから、大電流が流れた場合にもその電流が接合箇所に集中せず、且つ接合箇所での電圧降下も僅かであって、大電流放電時でも蓄電池としての作動電圧を高く保つことができ。
【0039】
しかも、上記接続リード1Aは、線状の溶接用プロジェクション7,9を介して溶接することにより、点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるから、その溶接面積の増大に伴って高い溶接強度を得ることができる。
【0040】
したがって、上記接続リード1Aを用いて構成した円筒形蓄電池は、正極集電体11と接続リード1A間および接続リード1Aと封口体12との各間の接合箇所に十分な溶接強度を確保することができるので、大きな振動、衝撃またはひねりなどが加わった場合の耐久性を十分に確保することができ、電池特性のばらつきや溶接外れといった不具合が発生するおそれがない。また、上記接続リード1Aは、アルカリ蓄電池において純ニッケルまたは鉄ニッケルめっき材を素材として形成されており、電解液によって腐食することもない。
【0041】
また、従来の点状の溶接用プロジェクションを限られた面積内に多数点形成するのは困難であるが、上記接続リード1Aでは、溶接用プロジェクション7,9が線状であるから、この線状の溶接用プロジェクション7,9は所要の金型を用いた絞り加工により容易に形成することができ、従来の点状の溶接用プロジョクションを多数点設ける溶接リードに比較して、金型の管理が容易となり、且つ金型の寿命を長く確保できる利点がある。また、この接続リード1Aは、少ない溶接回数で正極集電体11および封口体12に接合できる利点がある。
【0042】
図6の特性図において、上記接続リード1Aを用いて構成した円筒形蓄電池の板厚と正極集電体11および接続リード1Aの間または封口体12および接続リードの間の接続抵抗との関係を示す特性図である。また、同図には、比較のために、従来の点状の溶接用プロジェクションを設けた接続リードの板厚と接続抵抗との関係を示してあり、破線の特性曲線は点状の溶接用プロジェクションを2点設けた場合、1点鎖線は点状の溶接用プロジェクションを1点設けた場合である。
【0043】
図6から明らかなように、上記接続リード1Aの場合には、従来の1点の溶接用プロジェクションを設けた接続リードと比較して、板厚を同一とした場合に接続抵抗を大幅に低減することができる。なお、図2の接続リード1Bを用いる場合にも、上記接続リード1Aの上述したと同様の効果を得ることができる。
【0044】
図7(a)〜(d)は、何れも本発明の他の実施の形態に係る接続リード1C〜1Fを示す平面図であり、同図において、図1または図2と同一若しくは実質的に同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。(a)の接続リード1Cは、第1の溶接部2に、一実施の形態と同様の一対の直線状の第1の溶接用プロジェクション7が同一の配置で形成されているとともに、第2の溶接部3に、第1の溶接部2と同一形状の第2の溶接用プロジェクション38が、第1の溶接用プロジェクション7と平行となる配置で形成されている。
【0045】
(b)の接続リード1Dは、第1の溶接部2に、一対の直線状の第1の溶接用プロジェクション39が長方形の長手方向に沿った配置で形成されているとともに、第2の溶接部3には、第1の溶接部2と同一形状の第2の溶接用プロジェクション40が、第1の溶接用プロジェクション39と同一方向を向いた配置で形成されている。
【0046】
(c)の接続リード1Eは、第1の溶接部2に、(a)と同一の一対の直線状の第1の溶接用プロジェクション39が同一の配置で形成されているとともに、第2の溶接部3には、第1の溶接部2と同一形状の第2の溶接用プロジェクション41が、第1の溶接用プロジェクション39と平行となる配置で形成されている。
【0047】
(d)の接続リード1Fは、第1の溶接部2に、(b)と同一の直線状の第1の溶接用プロジェクション39が同一の配置で2対形成されているとともに、第2の溶接部3には、第1の溶接部2と同一形状の2対の第2の溶接用プロジェクション40が、第1の溶接用プロジェクション39と同一の配置で形成されている。
【0048】
本発明の実施の形態による各接続リード1A〜1Fの、剥離強度については、従来の接続リードが200〜300Nであるのに対し、600N以上と格段に強くなる。各接続リード1C〜1Fの接続抵抗を比較すると、接続リード1Cと接続リード1Eは、ほぼ同等で、接続リード1Dよりも第1および第2の各線状の溶接用プロジェクション7,38、39,41の対向が近接している分、低くなる。(d)の接続リード1Fは、各二対ずつの線状の溶接用プロジェクション39,40からなるので、集電効率の向上し、最も接続抵抗に優れるが、狭い領域に密にプロジェクション39,40を形成するので、加工が難しくなる。
【0049】
図8(a)は本発明を電池間接続体42Aに適用した場合の一実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。上記電池間接続体42Aは、純ニッケル、鉄ニッケルめっき材、銅ニッケルめっき材またはニッケル−銅−ニッケルのクラッド材の何れかを素材として、0.40mmの厚さを有する板金で、平面視で見た全体形状が、両端部が蓄電池B1,B2の外形に対応した半円を有するほぼ長方形に形成されており、その長方形の長手方向の両端部に、第1の溶接部43および第2の溶接部44がそれぞれ設けられている。厚みは、実施の形態において0.40mmに設定した場合を例示したが、0.30〜0.60mmの範囲内に設定するのが好ましい。
【0050】
一端部(図の左端部)の第1の溶接部43には、一方の蓄電池B1の封口体12におけるフィルタ部31(図4)に当接する環状の凹部47が形成されている。この環状の凹部47の中心部には、蓄電池B1の封口体12におけるキャップ状正極端子33(図4)を挿通させる円形の開口48が形成されている。さらに、環状の凹部47には、開口48において90°の等間隔で4箇所の孔縁から開口48に連通して径方向外方に向け延びるスリット状の4つの切欠き49が形成され、この各切欠き49の各々の間の箇所に、開口48に沿った弧形状を有する曲線状の第1の溶接用プロジェクション50が下面に向け突設されている。一方、他端部(図の右端部)の第2の溶接部44には、第1の溶接部43とそれぞれ同一形状の開口51、4つの切欠き52および第2の溶接用プロジェクション53が形成されている。
【0051】
なお、形成用素材としては、2個の蓄電池B1,B2間をこれらの外部において接続するので、前述の接続リード1A〜1Fのように電解液による腐食の影響を受けることがないことから、銅ニッケルめっきおよびニッケル−銅−ニッケルのクラッド材を用いることができ、これらを用いれば、接続抵抗が低く、安価なものとなる。また、上記電池間接続体42Aは、凹部47および溶接用プロジェクション50,53を金型を用いた絞り加工により形成したのちに、打ち抜き加工を行う過程を経て製作される。
【0052】
上記電池間接続体42Aは、径方向に並置した2個の円筒形蓄電池B1,B2を直列接続する用途に用いられるものである。すなわち、上記電池間接続体42Aの第1の溶接部43は、一方の蓄電池Bの正極側の周縁部に絶縁リング54を取り付けた状態で、開口48に蓄電池Bにおける封口体12のキャップ状正極端子33を挿通させて、環状の凹部47の底面を封口体12のフィルタ部31に当接させ、絶縁リング54を介在して蓄電池B1に向け加圧しながら、各2個の第1の溶接用プロジェクション50間に溶接電流を流す抵抗溶接を行うことにより、溶融した第1の溶接用プロジェクション50がフィルタ部31に溶着し、第1の溶接部43が封口体12に接合される。
【0053】
一方、第2の溶接部44は、他方の蓄電池B2の電池ケースの底部外面に当接させた状態で蓄電池B2に向け加圧しながら、各2個の第2の溶接用プロジェクション53間に溶接電流を流す抵抗溶接を行うことにより、溶融した第2の溶接用プロジェクション53が電池ケースの底部外面に溶着し、第2の溶接部44が電池ケースの底部に接合される。
【0054】
上記第1および第2の溶接部43,44の抵抗溶接を行うときには、切欠き49,52により一対の溶接電極間における第1の溶接部43または第2の溶接部44の表面に流れる無効電流が減り、且つ曲線状の各2個の第1の溶接用プロジェクション50とフィルタ部31との接触部または第2の溶接用プロジェクション53と電池ケースの底部との接触部に流れる溶接電流が増して、第1または第2の溶接用プロジェクション50,53が確実に溶融される。このとき、第1および第2の溶接用プロジェクション50,53は、曲線状であることから、従来の接続リードのような点状のものと異なり、完全に溶融しなくても、溶接部分での電気抵抗が増大することがなく、十分な接合状態を得ることができる。
【0055】
上記電池間接続体42Aにおいても、上記接続リード1A〜1Fで説明したとほぼ同様の効果を得ることができる。すなわち、上記電池間接続体42Aでは、曲線状の溶接用プロジェクション50,53を介して接合するので、従来の点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が大きくなるので、接続抵抗を相当に低減することができる。しかも、比較的多数の点状の溶接用プロジェクションを介し抵抗溶接する場合には、全ての溶接用プロジェクションに均一に加圧力をかけないと、安定して抵抗溶接が行えないのに対し、曲線状の溶接用プロジェクション50,53では、加圧力に多少のばらつきがあっても、溶接性に大きな影響が生じない利点がある。したがって、上記電池間接続体42Aを用いて構成した電池モジュールは、接続抵抗が減ずるとともに、大電流が流れた場合にもその電流が接合箇所に集中しないので、大電流の出入特性が優れる。
【0056】
しかも、上記電池間接続体42Aは、点状の溶接用プロジェクションに比較して溶接面積が増大するのに伴って高い溶接強度を得ることができる。したがって、上記電池間接続体42Aを用いて構成した電池モジュールは、大きな振動、衝撃またはひねりなどが加わった場合の耐久性を十分に確保することができ、溶接外れといった不具合が発生するおそれがない。さらに、上記電池間接続体42Aの場合には、従来の点状の溶接用プロジェクションを第1および第2の溶接部にそれぞれ8点ずつ設けた電池間接続体と比較して、板厚を同一とした場合に接続抵抗を約10%低減することができる。これにより、上記電池間接続体42Aは、所要の接続抵抗を得る場合に、従来の電池間接続体よりも板厚を薄く設定することができる。
【0057】
図9は本発明を電池間接続体42Bに適用した他の実施の形態に係る電池用接続部材を示す斜視図であり、同図において、図8と同一若しくは実質的に同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この電池間接続体42は、第1および第2の溶接部43,44において、4個の第1の切欠き49,52が、図8の電池間接続体42Aの配設位置に対し約45°ずらした各位置に90°の等間隔で形成され、且つ隣接する各2個の切欠き49,52の各間の箇所に、弧形状を有する曲線状の第1および第2の溶接用プロジェクション50,53が下面に向け突設されている。この電池間接続体42Bは、上記電池間接続体42Aより線状プロジェクション50,53の距離が近接している分、接続抵抗が低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る電池用接続部材は、線状の溶接用プロジェクションを介し溶接して接合するので、接続抵抗を低減できるとともに高い溶接強度を確保することができるから、接続リードに適用することにより、電池内部抵抗を低減でき、且つ耐振動性や耐衝撃性の高い蓄電池を得ることができ、一方、電池間接続体に適用することにより、接続抵抗を低減でき、各接続強度の高い電池モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a)、(b)は本発明を接続リードに適用した場合の一実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図および正面図。
【図2】(a)、(b)は同上の実施の形態に係る変形例の電池用接続部材を示す平面図および正面図。
【図3】図1の接続リードにより集電体と封口体とを電気的に接続した状態の斜視図。
【図4】同上の電池用接続部材を用いて構成した円筒形蓄電池を示す縦断面図。
【図5】同上の電池用接続部材を用いて接合したときの溶接用プロジェクションの長さと接続抵抗の関係を示す特性図。
【図6】同上の電池用接続部材を用いて接合したときの板厚と接続抵抗の関係を示す特性図。
【図7】(a)〜(d)は何れも本発明を接続リードに適用した場合の異なる実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図。
【図8】(a)は本発明を電池間接続体に適用した場合の一実施の形態に係る電池用接続部材を示す平面図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図9】本発明を電池間接続体に適用した場合の他の実施の形態に係る電池用接続部材を示す斜視図。
【図10】従来の接続リードにおける集電体と封口体とを電気的に接続するときの相対位置関係を示す分解斜視図。
【図11】(a)は従来の電池間接続体を示す平面図、(b)は(a)のA−A線で切断した断面図。
【符号の説明】
【0060】
1A〜1F 接続リード(電池用接続部材)
2 第1の溶接部
3 第2の溶接部
4 切欠き
7,9,10 溶接用プロジェクション
8 切欠き
11 集電体
12 封口体
19 注液孔
33 正極端子
38〜41 溶接用プロジェクション
42A,42B 電池間接続体(電池用接続部材)
43 第1の溶接部
44 第2の溶接部
48 開口
49,52 切欠き
50,53 溶接用プロジェクョン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池における互いに接続すべき2つの構成要素の間、または二つの電池間に両端部の溶接部が溶接により接合される電池用接続部材であって、
長手方向の前記両端部のうちの少なくとも一方に、平面視で直線形状または曲線形状を有する線状の溶接用プロジョクションがそれぞれ設けられていることを特徴とする電池用接続部材。
【請求項2】
電池の集電体と封口体とを電気的に接続する接続リードとして用いられるものであって、
一端部の第1の溶接部に、前記集電体の注液孔に対応した形状の第1の切欠きが形成されているとともに、封口体に溶接される他端部には第2の溶接部に第2の切欠きが形成され、前記それぞれの切欠きの両側において線状を有する溶接用プロジェクションまたは前記切欠きの両側に跨がって延びる曲線状の溶接用プロジェクションが設けられている請求項1に記載の電池用接続部材。
【請求項3】
純ニッケルまたは鉄ニッケルめっき材により板状に形成されている請求項2に記載の電池用接続部材。
【請求項4】
並置された2個の電池の端子を電気的に接続する電池間接続体として用いられるものであって、
両端部の溶接部の中央に、それぞれ開口と、この開口に連通して径方向外方に延びる複数個の切欠きと、この各切欠きの両側において前記開口の孔縁に沿った弧状の曲線状に形成された溶接用プロジェクションとを備えている請求項1に記載の電池用接続部材。
【請求項5】
両端部のうち一端部の溶接部中央の開口は正極端子を挿通し、前記開口の周縁は封口体下面に溶接用プロジェクションが当接し、溶接されるために凹部形成されている請求項4に記載の電池用接続部材。
【請求項6】
純ニッケル、鉄ニッケルめっき材、銅ニッケルめっき材またはニッケル−銅−ニッケルのクラッド材により板状に形成されている請求項4に記載の電池用接続部材。
【請求項1】
電池における互いに接続すべき2つの構成要素の間、または二つの電池間に両端部の溶接部が溶接により接合される電池用接続部材であって、
長手方向の前記両端部のうちの少なくとも一方に、平面視で直線形状または曲線形状を有する線状の溶接用プロジョクションがそれぞれ設けられていることを特徴とする電池用接続部材。
【請求項2】
電池の集電体と封口体とを電気的に接続する接続リードとして用いられるものであって、
一端部の第1の溶接部に、前記集電体の注液孔に対応した形状の第1の切欠きが形成されているとともに、封口体に溶接される他端部には第2の溶接部に第2の切欠きが形成され、前記それぞれの切欠きの両側において線状を有する溶接用プロジェクションまたは前記切欠きの両側に跨がって延びる曲線状の溶接用プロジェクションが設けられている請求項1に記載の電池用接続部材。
【請求項3】
純ニッケルまたは鉄ニッケルめっき材により板状に形成されている請求項2に記載の電池用接続部材。
【請求項4】
並置された2個の電池の端子を電気的に接続する電池間接続体として用いられるものであって、
両端部の溶接部の中央に、それぞれ開口と、この開口に連通して径方向外方に延びる複数個の切欠きと、この各切欠きの両側において前記開口の孔縁に沿った弧状の曲線状に形成された溶接用プロジェクションとを備えている請求項1に記載の電池用接続部材。
【請求項5】
両端部のうち一端部の溶接部中央の開口は正極端子を挿通し、前記開口の周縁は封口体下面に溶接用プロジェクションが当接し、溶接されるために凹部形成されている請求項4に記載の電池用接続部材。
【請求項6】
純ニッケル、鉄ニッケルめっき材、銅ニッケルめっき材またはニッケル−銅−ニッケルのクラッド材により板状に形成されている請求項4に記載の電池用接続部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−107808(P2006−107808A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289865(P2004−289865)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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