説明

電池用電極板およびこれを用いた電池

【課題】集電体の端面におけるリチウム析出やバリによる内部短絡を防止し、正極板の幅の拡大による電池の高容量化を可能とする。
【解決手段】少なくとも活物質および結着材を分散媒にて混練分散した合剤塗料を集電体13の表面に塗布して活物質層14を形成して構成される電池用電極板12において、集電体13の端面を活物質層14で被覆することにより、集電体13の端面の露出を無くし、リチウム析出や集電体13のバリによる内部短絡を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極板およびこれを用いた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウムイオン二次電池は、負極にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極にLiCoO等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって、高電位で高放電容量のリチウムイオン二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って、更なるリチウム二次電池の高容量化が望まれている。また、これらのリチウムイオン電池において、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板が内部短絡することによる急激な温度上昇を抑止することが極めて重要である。
【0003】
そこで、図3に示すように、正極板21の幅方向両端部の集電体22を露出させ、そこに断面凹形の絶縁部材23を嵌着することにより、負極板の両端部は充電に直接関与しない部分となりデンドライトの発生を抑制する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図4に示すように、電極板24の周端部端面を、150℃以上の耐熱温度を持つ耐熱性樹脂を基体とする樹脂膜であってその内部に熱可塑性樹脂を含む絶縁性樹脂膜25により被覆することで短絡を防止する方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、図5、図6に示すように電極板26の切断面や塗布端面を絶縁体層27で被覆することにより、電極群の内部へ切断バリや脱落して発生する異物の混入によるセパレータの破損を防止し、電極板の内部短絡を抑制する方法が提案されている。(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03−129678号公報
【特許文献2】特開2007−257848号公報
【特許文献3】特開2010−009818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に示される従来技術では、正極板の幅方向の両端部が絶縁部材の取付けのために集電体のみとなっており、電池容量が低下するという課題を有していた。また、特許文献2に示される従来技術では、正極活物質層の上面も一部被覆されるために、電池容量が樹脂膜被覆分低下するという課題を有していた。さらに、特許文献3に示される従来技術では、電極板の切断面や塗布端面を絶縁層で被覆した場合には、リチウム析出を防止するためには、正極板の幅を負極板の幅以下とする必要があり、電池容量が稼げないという課題を有していた。
【0008】
本発明は上記従来の課題を鑑みてなされたもので、集電体の幅方向端面を合剤層で被覆した構成とすることにより、集電体の端面におけるリチウム析出やバリによる内部短絡を防止し、正極板の幅を負極板の幅よりも小さく設計する必要が無くなるので、正極板の幅
の拡大による電池の高容量化が可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の電池用電極板は、少なくとも活物質および結着材を分散媒にて混練分散した合剤塗料を集電体の表面に塗布して合剤層を形成して構成される電池用電極板において、前記集電体の端面を合剤層で被覆した構成とするものである。
【0010】
本構成によって電極板の端面を合剤層で被覆することにより、電極板の端面部の集電体の露出をなくし、リチウム析出やバリによる内部短絡を防止し、正極板の幅を負極板と同じにでき高電池容量を可能にすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、集電体の端面を合剤層で被覆することにより集電体の露出を無くしたことで、集電体の端面部分におけるリチウム析出による短絡を防止することができる。また、集電体の端面部分のリチウム析出を防止したことにより、正極板の幅を負極板の幅よりも小さく設計する必要が無くなるので、正極板の幅の拡大による電池の高容量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る円筒形の非水系二次電池の一部切欠斜視図
【図2】(a)本発明の第1の実施の形態に係る電池用電極板の概略図(b)本発明の第1の実施の形態に係る電池用電極板のAA’断面図
【図3】従来の電極板の断面図
【図4】従来の電極板の断面図
【図5】従来の電極板の概略図
【図6】従来の電極板の概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一の発明においては、少なくとも活物質および結着材を分散媒にて混練分散した合剤塗料を集電体の表面に塗布して合剤層を形成して構成される電池用電極板において、前記集電体の端面を合剤層で被覆した構成とすることを特徴としたことで、集電体の露出を無くし、集電体の端面部分におけるリチウム析出による短絡を防止することができる。また、集電体の端面部分のリチウム析出を防止したことにより、従来のように、正極板の幅を負極板の幅よりも小さく設計する必要が無くなるので、正極板の幅の拡大による電池の高容量化が可能となる。
【0014】
本発明の第二の発明においては、合剤層で被覆される集電体の端面が集電体の幅方向および長さ方向の両端面であることを特徴としたことにより、集電体の露出を無くし、集電体のバリによる短絡を防止することができる。
【0015】
本発明の第三の発明においては、合剤層で被覆される集電体の端面が少なくとも集電体の幅方向であることを特徴としたことにより、幅方向の集電体の露出を無くし、集電体の幅方向端面部分によるリチウム析出を防止し、内部短絡を防ぐことができる。
【0016】
本発明の第四の発明においては、集電体の端面を被覆する合剤層の厚みを1mm以下であることを特徴としたことにより、合剤層の崩落を防止することができる。
【0017】
本発明の第五の発明においては、集電体の端面は合剤層で完全に被覆されたことを特徴としたことにより、集電体の露出を無くし、集電体のバリや集電体部分によるリチウム析出による短絡を防止することができる。
【0018】
本発明の第六の発明においては、集電体の表面に少なくとも活物質と結着材を含む合剤層を形成した正極板と負極板とをセパレータを介して巻回または積層して構成される電極群を電解液とともに電池外装体内に封入してなる電池において、上記正極板または負極板のすくなくともいずれか一方に第一〜第五の発明のいずれか1つに記載の電池用電極板を用いたことを特徴としたことにより、内部短絡を防止し、安全性の高い電池を提供することができる。
【0019】
本発明の第七の発明においては、正極板と負極板の幅方向の寸法を同じ寸法としたことを特徴としたことにより、正極板の幅の拡大による電池の高容量化が可能となる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る円筒形の非水系二次電池の一部切欠斜視図である。同図において本発明の非水系二次電池1は、正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布し、正極集電体の上に正極合剤層を形成した正極板2と、負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布し、負極集電体の上に負極合剤層を形成した負極板3との間にセパレータ4を介在させ、渦巻状に捲回して電極群5が構成されている。
【0021】
電極群5は、有底円筒形の電池ケース6の内部に絶縁板7により電池ケース6とは絶縁されて収容される一方、電極群5の下部より導出した負極リード8が電池ケース6の底部に接続されるとともに、電極群5の上部より導出した正極リード9が封口板10に接続される。次に、電池ケース6は、所定量の非水溶媒からなる非水系電解液(図示せず)が注液された後、開口部に封口ガスケット11を周縁に取り付けた封口板10を挿入し、電池ケース6の開口部を内方向に折り曲げ、かしめ封口される。
【0022】
なお、この非水系二次電池1を構成する正極板2または負極板3の電池用電極板12は以下のような構成で形成されている。
【0023】
図2(a)は本発明における電池用電極板12の概略図であり、図2(b)は本発明の電池電極板12の断面図である。
【0024】
本発明の電池用電極板12は、図2(a)に示すように金属箔からなる集電体13に導電材、結着材、活物質を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散した塗料を塗布することにより、形成されている。このとき、図2(b)に示すように、集電体13の幅方向端面を集電体13が露出しないように活物質層14が被覆した構成にしたり、または、集電体13の幅方向端面と長さ方向端面を集電体13が露出しないように活物質層14を被覆した構成とすることにより、電池用電極板12の幅方向端面部分、または、電池用電極板12の幅方向端面と長さ方向端面におけるリチウム析出やバリによる短絡を防止することにより、安全性が向上し、負極板3と正極板2の幅を同等とすることが可能となり、電池の高容量化が可能となる。また、集電体13の幅方向端面と長さ方向端面を活物質層14にて完全に被覆することにより、電池用電極板12の幅方向端面と長さ方向端面におけるリチウム析出やバリによる短絡を防止することにより、安全性が向上し、負極板3と正極板2の幅を同等とすることが可能となり、電池の高容量化が可能となる。
【0025】
さらに、集電体13の端面を被覆する活物質層14の厚みを1mm以下にすることにより、電極群5の構成時における端部活物質層14の崩落を防止することが可能となる。
【0026】
以下、具体的な実施例について、さらに詳しく説明する。
(実施例1)
まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム、導電材としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。この塗料を15μm厚のアルミニウム箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が170μmとなるようにプレスし、正極板2を作製した。
【0027】
ついで、負極活物質としての人造黒鉛、結着材としてのスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製し、10μm厚の銅箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が200μmとなるようにプレスし、負極板3を作製した。
【0028】
このとき、正極板2、負極板3共に幅方向の端面を集電体13の露出が無いように活物質層14で被覆し、長さ方向の端面を集電体13の露出するようにした構成かつ、同じサイズの負極板3と正極板2の形成を行った。このように形成を行った負極板3と正極板2を用いて、図1に示すような円筒形の非水系二次電池1を作製した。より具体的には、正極板2と負極板3とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ4を介して渦巻状に捲回した電極群5を作製した。
【0029】
この電極群5を有底円筒形の電池ケース6の内部に絶縁板7と共に収容し、電極群5の下部より導出した負極リード8を電池ケース6の底部に接続した。次いで、電極群5の上部より導出した正極リード9を封口板10に接続し、電池ケース6に所定量の非水系電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース6の開口部に封口ガスケット11を周縁に取り付けた封口板10を挿入し、電池ケース6の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形の非水系二次電池1を実施例1とした。
(実施例2)
まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム、導電材としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。この塗料を15μm厚のアルミニウム箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が170μmとなるようにプレスし、正極板2を作製した。
【0030】
ついで、負極活物質としての人造黒鉛、結着材としてのスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製し、10μm厚の銅箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が200μmとなるようにプレスし、負極板3を作製した。
【0031】
このとき、正極板2、負極板3共に幅方向ならびに長手方向の端面を集電体13の露出が無いように活物質層14で被覆した構成かつ、同じサイズの負極板3と正極板2の形成を行った。このように形成を行った負極板3と正極板2を用いて、図1に示すような円筒形の非水系二次電池1を作製した。より具体的には、正極板2と負極板3とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ4を介して渦巻状に捲回した電極群5を作製した。
【0032】
この電極群5を有底円筒形の電池ケース6の内部に絶縁板7と共に収容し、電極群5の下部より導出した負極リード8を電池ケース6の底部に接続した。次いで、電極群5の上部より導出した正極リード9を封口板10に接続し、電池ケース6に所定量の非水系電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース6の開口部に封口ガスケット11を周縁に取り付けた封口板10を挿入し、電池ケース6の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ
封口することにより作製した円筒形の非水系二次電池1を実施例2とした。
(比較例1)
まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム、導電材としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。この塗料を15μm厚のアルミニウム箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が170μmとなるようにプレスし、正極板2を作製した。
【0033】
ついで、負極活物質としての人造黒鉛、結着材としてのスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製し、10μm厚の銅箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が200μmとなるようにプレスし、負極板3を作製した。
【0034】
このとき、正極板2、負極板3共に幅方向、長手方向の端面は活物質層14による被覆を行わず、集電体13が露出した構成かつ、同じサイズの負極板3と正極板2の形成を行った。このように形成を行った負極板3と正極板2を用いて、図1に示すような円筒形の非水系二次電池1を作製した。より具体的には、正極板2と負極板3とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ4を介して渦巻状に捲回した電極群5を作製した。
【0035】
この電極群5を有底円筒形の電池ケース6の内部に絶縁板7と共に収容し、電極群5の下部より導出した負極リード8を電池ケース6の底部に接続した。次いで、電極群5の上部より導出した正極リード9を封口板10に接続し、電池ケース6に所定量の非水系電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース6の開口部に封口ガスケット11を周縁に取り付けた封口板10を挿入し、電池ケース6の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形の非水系二次電池1を比較例1とした。
【0036】
上記の条件で作成された非水系二次電池1に対して、充放電を500サイクル繰り返し、1サイクル目に対する500サイクル目の放電容量比を500サイクル後の容量維持率として測定を行った。さらに、充放電サイクルを500回繰り返した後に電極群5内部でのリチウム析出の状態を観察した。
【0037】
以上の項目について評価した結果を(表1)に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
(表1)の結果から明らかなように、正極板2と負極板3を同じサイズにて非水系二次電池1を作成した場合、集電体13の幅方向の端面または、幅方向と長手方向の端面を活
物質層14で覆うことで、電極板12の幅方向の端面または電極板12の幅方向と長手方向の端面におけるリチウム析出を抑制でき、500サイクル後の電池容量の維持率は高くなる。一方で、比較例1で示されるように、集電体13の幅方向、長手方向の端面を活物質層14で覆わない場合、電極板12の端面における集電体13の露出部分でリチウムが析出し、500サイクル後の電池容量の維持率は低下した。
【0040】
以上の結果より、活物質層14で集電体13の端面を覆うことにより、充放電によるリチウム析出を防止することが可能であることが分かった。
(比較例2)
まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム、導電材としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。この塗料を15μm厚のアルミニウム箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が170μmとなるようにプレスし、正極板2を作製した。
【0041】
ついで、負極活物質としての人造黒鉛、結着材としてのスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製し、10μm厚の銅箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が200μmとなるようにプレスし、負極板3を作製した。
【0042】
このとき、正極板2、負極板3共に幅方向、長手方向の端面は活物質層14による被覆を行わず、集電体13が露出した構成かつ、リチウムの析出を防止するために、負極板3の幅が正極板2の幅と比較して、2%大きいサイズで形成を行った。このように形成を行った負極板3と正極板2を用いて、図1に示すような円筒形の非水系二次電池1を作製した。より具体的には、正極板2と負極板3とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ4を介して渦巻状に捲回した電極群5を作製した。
【0043】
この電極群5を有底円筒形の電池ケース6の内部に絶縁板7と共に収容し、電極群5の下部より導出した負極リード8を電池ケース6の底部に接続した。次いで、電極群5の上部より導出した正極リード9を封口板10に接続し、電池ケース6に所定量の非水系電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース6の開口部に封口ガスケット11を周縁に取り付けた封口板10を挿入し、電池ケース6の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形の非水系二次電池1を比較例2とした。
【0044】
比較例2の条件で作成された非水系二次電池1の電池容量を100%として、上記の実施例1と電池容量の比較を行った結果を(表2)に示した。
【0045】
【表2】

【0046】
(表2)の結果から明らかなように、正極板2と負極板3を同じ幅とした構成で非水系二次電池1を作成した場合、リチウム析出の回避を目的とした正極板2を負極板3よりも小さい幅で構成した非水系二次電池1よりも電池容量は大きくなる。
【0047】
以上の結果より、正極板2と負極板3を同じサイズで構成することにより、従来の正極板2を負極板3よりも小さい幅で構成するよりも電池容量を高容量化することが可能であることが分かった。
(実施例3)
まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム、導電材としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。この塗料を15μm厚のアルミニウム箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が170μmとなるようにプレスし、正極板2を作製した。
【0048】
ついで、負極活物質としての人造黒鉛、結着材としてのスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製し、10μm厚の銅箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が200μmとなるようにプレスし、負極板3を作製した。
【0049】
このとき、正極板2、負極板3共に幅方向の端面を集電体13の露出が無いように0.5mmの厚さにて活物質層14で被覆した構成かつ、同じサイズの負極板3と正極板2の形成を行った。このように形成を行った負極板3と正極板2を用いて、図1に示すような円筒形の非水系二次電池1を作製した。より具体的には、正極板2と負極板3とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ4を介して渦巻状に捲回した電極群5を作製した。
【0050】
この電極群5を有底円筒形の電池ケース6の内部に絶縁板7と共に収容し、電極群5の下部より導出した負極リード8を電池ケース6の底部に接続した。次いで、電極群5の上部より導出した正極リード9を封口板10に接続し、電池ケース6に所定量の非水系電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース6の開口部に封口ガスケット11を周縁に取り付けた封口板10を挿入し、電池ケース6の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形の非水系二次電池1を実施例3とした。
(実施例4)
まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム、導電材としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。この塗料を15μm厚のアルミニウム箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が170μmとなるようにプレスし、正極板2を作製した。
【0051】
ついで、負極活物質としての人造黒鉛、結着材としてのスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製し、10μm厚の銅箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が200μmとなるようにプレスし、負極板3を作製した。
【0052】
このとき、正極板2、負極板3共に幅方向の端面を集電体13の露出が無いように1.0mmの厚さにて活物質層14で被覆した構成かつ、同じサイズの負極板3と正極板2の形成を行った。このように形成を行った負極板3と正極板2を用いて、図1に示すような円筒形の非水系二次電池1を作製した。より具体的には、正極板2と負極板3とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ4を介して渦巻状に捲回した電極群5を作製した。
【0053】
この電極群5を有底円筒形の電池ケース6の内部に絶縁板7と共に収容し、電極群5の下部より導出した負極リード8を電池ケース6の底部に接続した。次いで、電極群5の上
部より導出した正極リード9を封口板10に接続し、電池ケース6に所定量の非水系電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース6の開口部に封口ガスケット11を周縁に取り付けた封口板10を挿入し、電池ケース6の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形の非水系二次電池1を実施例4とした。
(比較例3)
まず、正極活物質としてのコバルト酸リチウム、導電材としてのアセチレンブラック、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。この塗料を15μm厚のアルミニウム箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が170μmとなるようにプレスし、正極板2を作製した。
【0054】
ついで、負極活物質としての人造黒鉛、結着材としてのスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製し、10μm厚の銅箔からなる集電体13に塗布乾燥し、総厚が200μmとなるようにプレスし、負極板3を作製した。
【0055】
このとき、正極板2、負極板3共に幅方向の端面を集電体13の露出が無いように1.5mmの厚さにて活物質層14で被覆した構成かつ、同じサイズの負極板3と正極板2の形成を行った。このように形成を行った負極板3と正極板2を用いて、図1に示すような円筒形の非水系二次電池1を作製した。より具体的には、正極板2と負極板3とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ4を介して渦巻状に捲回した電極群5を作製した。
【0056】
この電極群5を有底円筒形の電池ケース6の内部に絶縁板7と共に収容し、電極群5の下部より導出した負極リード8を電池ケース6の底部に接続した。次いで、電極群5の上部より導出した正極リード9を封口板10に接続し、電池ケース6に所定量の非水系電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース6の開口部に封口ガスケット11を周縁に取り付けた封口板10を挿入し、電池ケース6の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形の非水系二次電池1を実施例5とした。
【0057】
上記の条件で電極群5を10個作製し、分解することにより、電極板活物質層14の崩落有無を確認した結果を(表3)に示した。
【0058】
【表3】

【0059】
(表3)の結果から明らかなように、活物質層14で電極板12の幅方向の端面を被覆した厚みが1.0mm以下である実施例3、実施例4では活物質層14の端部の崩落を抑制できるが、被覆した厚みが1.0mmを超える比較例3では活物質層14の端部の崩落
が発生している。
【0060】
以上の結果より、電極板12の活物質被覆層の厚みを1.0mm以下にすることにより、活物質層14の崩落を抑制することが可能となることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る電池用電極板は、端面を活物質層で被覆することにより、集電体におけるバリやリチウム析出を防止することにより、内部短絡を抑制し安全性の高い非水系二次電池を提供することが可能であるため、電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 非水系二次電池
2 正極板
3 負極板
4 セパレータ
5 電極群
6 電池ケース
7 絶縁板
8 負極リード
9 正極リード
10 封口板
11 封口ガスケット
12 電極板
13 集電体
14 活物質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも活物質および結着材を分散媒にて混練分散した合剤塗料を集電体の表面に塗布して合剤層を形成して構成される電池用電極板において、前記集電体の端面を合剤層で被覆した構成とすることを特徴とする電池用電極板。
【請求項2】
前記合剤層で被覆される集電体の端面が集電体の幅方向および長さ方向の両端面である請求項1に記載の電池用電極板。
【請求項3】
前記合剤層で被覆される集電体の端面が少なくとも集電体の幅方向である請求項1に記載の電池用電極板。
【請求項4】
前記集電体の端面を被覆する合剤層の厚みを1mm以下とした請求項1に記載の電池用電極板。
【請求項5】
前記集電体の端面は合剤層で完全に被覆された請求項1に記載の電池用電極板。
【請求項6】
集電体の表面に少なくとも活物質と結着材を含む合剤層を形成した正極板と負極板とをセパレータを介して巻回または積層して構成される電極群を電解液とともに電池外装体内に封入してなる電池において、上記正極板または負極板のすくなくともいずれか一方に請求項1〜5のいずれか1つに記載の電池用電極板を用いたことを特徴とする電池。
【請求項7】
前記正極板と負極板の幅方向の寸法を同じ寸法とした請求項6に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−98022(P2013−98022A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239988(P2011−239988)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】