説明

電池監視装置

【課題】組電池における隣接する単位電池の接続部が切断された際に、安全性を確保しつつ、監視ユニットにおける通信を維持可能な電池監視装置を提供する。
【解決手段】組電池1における複数の単位電池(B1〜Bn)のうち少なくとも一部の単位電池が物理的に切断され得る接続部であるサービスプラグS/Pが切断された際に、サービスプラグS/Pを介して接続されていた単位電池に対応する監視ユニット間を遮断すると共に、サービスプラグS/Pを介して接続されていた単位電池に対応する監視ユニットにおける信号の伝達経路を、隣接する監視ユニットからマイコン20へ切り替える伝達経路切替部22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルが直列接続されて構成される組電池を監視する電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組電池では、メンテナンス時等における安全性を確保する観点から、所定数の電池セルを単位電池としてグループ化し、隣接する単位電池を接続する接続部の一部に、当該接続部を物理的に切断するためのサービスプラグやヒューズ等を設ける構成とされている。なお、サービスプラグは、取り付けることで隣接する単位電池間を導通状態とし、取り外すことで隣接する単位電池間を遮断状態とするプラグである。
【0003】
このように構成される組電池を監視する電池監視装置としては、組電池における各単位電池に対応して設けられた複数の監視ユニット、各監視ユニットに対して監視を指示する指示信号を出力するマイクロコンピュータ(以下、単にマイコンという。)からなる制御部等で構成されている。
【0004】
ここで、高電圧で駆動する監視ユニットに対して制御部は低電圧で駆動することから、全ての監視ユニットを個別に制御部に接続しようとすると、各監視ユニットと制御部との間の全てに絶縁性を確保することが必要となってしまう。このため、全ての監視ユニットを制御部に接続するのではなく、一部の監視ユニットと制御部とを接続し、制御部に接続された監視ユニットと隣接する監視ユニットとの間の通信線で接続することで、制御部からの指示信号等を監視ユニット間で伝達する構成(デイジーチェーン接続)が好ましい。
【0005】
しかし、この場合、例えば、組電池における単位電池の間に設けたサービスプラグを取り外し、単位電池間を遮断状態にしたとしても、サービスプラグを介して接続されていた単位電池に対応する監視ユニット間の通信線が電流の迂回経路となることがあり、安全性に問題がある。
【0006】
これに対して、例えば、特許文献1の電池監視装置では、サービスプラグを介して接続された単位電池に対応する監視ユニット間の通信線にダイオードやスイッチを設け、サービスプラグを取り外した際に、監視ユニット間の通信線に不必要に電流が流れてしまうことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−14498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の電池監視装置の如く、サービスプラグ等を介して接続された単位電池に対応する監視ユニット間の通信線にダイオード等を設ける構成とする場合、サービスプラグ等を取り外した際に、サービスプラグ等と単位電池との接続部の電位が不安定となり、監視ユニットにおける通信が途絶する可能性がある。このように、監視ユニットにおける通信が途絶すると、制御部にて監視ユニットを適切に制御できず、電池監視装置の信頼性が低下してしまうといった問題がある。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、安全性を確保しつつ、組電池における隣接する単位電池の接続部が切断された際に監視ユニットにおける通信を維持可能な電池監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の電池セルが直列に接続されて構成される組電池を所定数の電池セル毎にグループ化した単位電池それぞれに対応して設けられ、対応する単位電池を監視する複数の監視ユニット、および監視ユニットへ監視を指示する指示信号を出力する監視制御手段を備え、複数の監視ユニットのうち監視制御手段からの指示信号を取得した監視ユニットが、隣接する監視ユニットへ信号伝達手段を介して指示信号を含む信号を伝達するように構成された電池監視装置であって、組電池における複数の単位電池のうち少なくとも一部の単位電池は、物理的に切断され得る接続部によって隣接する単位電池に直列に接続されており、組電池は、接続部の切断に連動して組電池から電力が供給される電気負荷との接続が遮断されるように構成されており、信号伝達手段は、接続部が切断された際に、接続部にて接続されていた単位電池に対応する監視ユニット間を遮断すると共に、接続部にて接続されていた単位電池に対応する監視ユニットにおける指示信号を含む信号の伝達経路を、隣接する監視ユニットから監視制御手段へ切り替える伝達経路切替手段を有して構成されていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、組電池における隣接する単位電池の接続部が切断された際に、切断された接続部にて接続されていた単位電池に対応する監視ユニット間が遮断されるので、監視ユニット間に信号伝達手段を介して不必要に電流が流れてしまうことを抑制することができる。
【0012】
加えて、組電池における隣接する単位電池の接続部が切断された際に、切断された接続部にて接続されていた単位電池に対応する監視ユニットにおける指示信号を含む信号の伝達経路を、隣接する監視ユニットから監視制御手段へ切り替えるので、監視ユニットにおける通信を維持することができる。
【0013】
従って、組電池における隣接する単位電池の接続部が切断されたとしても、安全性を確保しつつ、監視ユニットにおける通信を維持することができる。
【0014】
具体的には、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電池監視装置において、伝達経路切替手段の作動を制御する切替制御手段を備え、伝達経路切替手段は、接続部により接続される単位電池に対応する監視ユニットと監視制御手段との間で指示信号を含む信号を伝達する信号伝達部、および接続部により接続される単位電池に対応する監視ユニット間を導通および遮断する第1接続開閉部を有し、切替制御手段は、接続部が切断された際に、接続部により接続される単位電池に対応する監視ユニット間を遮断することを特徴とする。
【0015】
これによれば、安全性を確保しつつ、監視ユニットにおける通信を維持可能な電池監視装置を具体的に実現することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項2に記載の電池監視装置において、信号伝達部を、接続部により接続される単位電池に対応する監視ユニットと監視制御手段との間に流れる電流を所定の電流値以下に抑えるための抵抗、および接続部により接続される単位電池に対応する監視ユニットと監視制御手段との間を導通および遮断する第2接続開閉部を有する構成とし、接続部が切断された際に、切替制御手段によって、接続部により接続される単位電池に対応する監視ユニットと監視制御手段との間を導通する構成とすることが好ましい。
【0017】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の電池監視装置において、第1接続開閉部および第2接続開閉部は、フォトリレーで構成されていることを特徴とする。
【0018】
これによれば、隣接する監視ユニット間および監視ユニットと監視制御手段の間の絶縁性を確保した状態で導通および遮断することができるので、安全性を充分に確保することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明では、複数の電池セルが直列に接続されて構成される組電池を所定数の電池セル毎にグループ化した単位電池それぞれに対応して設けられ、対応する単位電池を監視する複数の監視ユニットを備え、複数の監視ユニットのうち隣接する監視ユニットが、隣接する監視ユニット間で所定の信号を伝達するための信号伝達手段を介して接続される電池監視装置であって、組電池における複数の単位電池のうち少なくとも一部の単位電池は、物理的に切断され得る接続部によって隣接する単位電池に直列に接続されており、信号伝達手段は、複数の監視ユニットのうち、接続部により接続された単位電池に対応する監視ユニット間を接続する絶縁素子を有して構成されていることを特徴とする。
【0020】
これによれば、隣接する監視ユニット間の絶縁性を確保した状態で、隣接する監視ユニット間で通信することができるので、組電池における隣接する単位電池の接続部が切断されたとしても、安全性を確保しつつ、監視ユニットにおける通信を維持することができる。
【0021】
具体的には、請求項6に記載の発明のように、請求項5に記載の電池監視装置において、絶縁素子として、フォトカプラを採用することができる。
【0022】
また、請求項7に記載の発明のように、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電池監視装置において、物理的に切断され得る接続部を、隣接する単位電池間を遮断可能なサービスプラグとすることができる。
【0023】
また、請求項8に記載の発明のように、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電池監視装置において、物理的に切断され得る接続部を、隣接する単位電池間を遮断可能なヒューズとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る電池監視装置を含む組電池制御システムの全体構成図である。
【図2】第2実施形態に係る電池監視装置を含む組電池制御システムの全体構成図である。
【図3】第3実施形態に係る電池監視装置を含む組電池制御システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る電池監視装置を含む組電池制御システムの全体構成を示している。
【0027】
本実施形態では、車載高圧バッテリである組電池1の制御システムに本発明の電池監視装置2を適用している。図1に示すように、本実施形態の組電池制御システムは、主たる構成として組電池1および電池監視装置2を備える。
【0028】
本実施形態の組電池1は、車両走行用の電動機等の各種電気機器(図示略)に電力を供給するものである。組電池1の正極端および負極端は、システムメインリレーSMRを介して各種電気負荷に接続されている。システムメインリレーSMRは、外部からの制御信号に応じて高電圧電池である組電池1と高電圧使用機器である各種電気機器との間を導通および遮断するものであり、例えば、後述するサービスプラグS/Pの取り外しに連動して、システムメインリレーSMRがオフされて、組電池1と各種電気機器との間が遮断される。
【0029】
組電池1は、リチウムイオン電池等からなる電池セル1aを直列接続したもので、互いに隣接する所定数の電池セル毎にグループ化した複数の単位電池B1〜Bnの直列接続体として構成されている。なお、説明の便宜のため、本実施形態では、図1に示すように、組電池1を4つの単位電池B1〜B4の直列接続体で構成している例について説明する。
【0030】
組電池1における複数の単位電池B1〜Bnのうち、少なくとも一部の単位電池は、サービスプラグS/Pを介して隣接する単位電池に接続されている。本実施形態では、単位電池B2における最も高電圧となる電池セル1aの正極端子と、単位電池B2に隣接する単位電池B3における最も低電圧となる電池セル1aの負極端子との間に、単位電池B2および単位電池B3を接続するサービスプラグS/Pが設けられている。
【0031】
このサービスプラグS/Pは、メンテナンス時等において、単位電池B2と単位電池B3との接続を物理的に切断し得る接続部に相当しており、サービスプラグS/Pを取り外すことで、隣接する単位電池間の接続を遮断可能に構成されている。これにより、電池交換等のメンテナンス時等における安全性の向上を図っている。
【0032】
このように構成される組電池1には、検出ラインを介して各単位電池B1〜B4の状態(過放電状態および過充電状態)を監視する電池監視装置2が接続されている。
【0033】
電池監視装置2は、単位電池B1〜Bnの各電池セル1aの状態を監視する過充放電検出機能を有する装置である。なお、過放電状態は、各電池セル1aの両端の電圧が信頼性の低下を招く過度な低電圧となる異常状態を意味し、過充電状態は、各電池セル1aの両端の電圧が信頼性の低下を招く過度な高電圧となる異常状態を意味する。
【0034】
具体的には、電池監視装置2は、各単位電池B1〜Bnに対応して設けられた監視ユニットU1〜Un、および監視ユニットU1〜Unを含む各種制御機器の作動を制御するマイコン20を備えて構成されている。なお、説明の便宜のため、本実施形態では、図1に示すように、単位電池B1〜B4に合わせて4つの監視ユニットU1〜Unで構成する例について説明する。
【0035】
本実施形態の監視ユニットU1〜U4は、対応する単位電池B1〜B4の各電池セル1aの両極端子に検出ラインを介して接続され、単位電池B1〜B4の監視を指示する指示信号(例えば、クロック信号CLK)に応じて単位電池B1〜B4における各電池セル1aの過放電状態および過充電状態を監視し、監視結果を出力信号として後述するマイコン20へ出力するように構成されている。
【0036】
具体的には、各監視ユニットU1〜U4は、過放電状態であるか否かを監視する際に、単位電池B1〜B4における各電池セル1aの両電極間の電圧が予め過放電状態時の電圧に設定された過放電閾値電圧よりも低いか否かを判定する。そして、単位電池B1〜B4における各電池セル1aの両電極間の電圧が当該閾値電圧よりも低い場合には監視結果を過放電状態とし、閾値電圧以上の場合には監視結果を正常状態とする。
【0037】
また、各監視ユニットU1〜U4は、過充電状態であるか否かを監視する際に、単位電池B1〜B4における各電池セル1aの両電極間の電圧が予め過充電状態時の電圧に設定された過充電閾値電圧よりも高いか否かを判定する。そして、単位電池B1〜B4における各電池セル1aの両電極間の電圧が当該閾値電圧よりも高い場合には監視結果を過充電状態とし、閾値電圧以下の場合には監視結果を正常状態とする。
【0038】
なお、監視ユニットU1〜U4は、対応する単位電池B1〜B4の監視を指示する指示信号(監視指示信号)を取り込むと共に隣接する監視ユニットU1〜U4の出力信号を取り込むための入力部(図示略)、隣接する監視ユニットU1〜U4に監視指示信号および出力信号を出力する出力部(図示略)等を有する。
【0039】
マイコン20は、図示しないMPU、ROM、EEPROM、RAM、入出力部等からなるマイクロコンピュータであって、ROM等に記憶手段に記憶されたプログラムに従って各種処理等を実行するものである。なお、マイコン20の入出力部には、制御機器である監視ユニットU4、後述する伝達経路切替部22等が接続されている。
【0040】
本実施形態のマイコン20は、監視ユニットU4へ各電池セル1aの監視を指示する監視指示信号を出力すると共に、各監視ユニットU1〜U4から出力される出力信号を取得し、取得した出力信号に応じて各種制御機器を制御するように構成されている。
【0041】
具体的には、本実施形態のマイコン20は、各監視ユニットU1〜U4のうち、最も高電圧となる単位電池B4に対応する監視ユニットU4に絶縁素子(例えば、フォトカプラ)21を介して接続されている。本実施形態のマイコン20と監視ユニットU4とは、双方向で通信可能に接続されており、マイコン20から監視ユニットU4へ監視指示信号が出力されると共に、監視ユニットU4からマイコン20へ各監視ユニットU1〜U4の監視結果を含む出力信号が出力される。
【0042】
また、各監視ユニットU1〜U4は、デイジーチェーン接続方式により、隣接する監視ユニット間で通信可能に通信線にて順次接続されている。より詳しくは、マイコン20に接続された監視ユニットU4が隣接する監視ユニットU3に接続されると共に、監視ユニットU3が隣接する監視ユニットU2に接続され、さらに、監視ユニットU2が隣接する監視ユニットU1に接続されている。
【0043】
このように隣接する監視ユニットU1〜U4同士を通信線を介して接続する構成とすることで、監視ユニットU4がマイコン20から取得した監視指示信号を、監視ユニットU3→監視ユニットU2→監視ユニットU1へと順次伝達すると共に、各監視ユニットU1〜U4の出力信号を、監視ユニットU4を介してマイコン20へと出力することが可能となっている。
【0044】
ここで、各単位電池B1〜B4のうち、サービスプラグS/P(物理的に切断され得る接続部)を介して接続された単位電池B2、B3に対応する監視ユニットU2、U3の間には、監視指示信号を含む信号の伝達経路を切り替える伝達経路切替部22が設けられている。「単位電池に対応する監視ユニット」とは、単位電池を構成する各電池セル1aのうち、少なくとも最も高圧となる電池セル1aの正極端子、および最も低圧となる電池セル1aの負極端子とが電気的に接続され、少なくとも単位電池全体における電池状態を監視する監視ユニットである。なお、本実施形態では、各監視ユニットU1〜U4間を接続する通信線、および伝達経路切替部22が信号伝達手段を構成している。
【0045】
この伝達経路切替部22は、マイコン20に接続されており、マイコン20からの信号に応じて制御される伝達経路切替手段を構成している。本実施形態の伝達経路切替部22は、監視ユニットU2とマイコン20との間で監視指示信号を含む信号を伝達する信号伝達部221、および監視ユニットU2、U3間を導通および遮断する第1接続開閉部222を有して構成されている。
【0046】
信号伝達部221は、監視ユニットU2とマイコン20との間に流れる電流を所定の電流値に抑えるための抵抗221a、および監視ユニットU2とマイコン20との間を導通および遮断する第2接続開閉部221bを有して構成されている。
【0047】
本実施形態では、第1接続開閉部222および第2接続開閉部221bを絶縁性に優れるフォトリレーで構成している。本実施形態の第1接続開閉部222および第2接続開閉部221bは、マイコン20からの信号に応じて制御される。
【0048】
また、信号伝達部221の抵抗221aは、第2接続開閉部221bにより監視ユニットU2とマイコン20との間を導通した際に、監視ユニットU2とマイコン20との間に流れる電流を所定の電流値以下に抑えるために設けられている。この抵抗221aの抵抗値は、監視ユニットU2とマイコン20との間に流れる電流の電流値が通電した際に人間が痛いと感じる電流知覚閾値(例えば、3.5mA)以下となるように設定されている。抵抗221aは、安全性を考慮すると、監視ユニットU2とマイコン20との間に流れる電流が電流知覚閾値以下の3.5mA程度となるように設定することが望ましい。なお、例えば、単位電池B1、B2の両端電圧が400Vである場合、監視ユニットU2とマイコン20との間に流れる電流が3.5mA以下となるように抵抗221aの抵抗値が115kΩ以上に設定される。
【0049】
本実施形態のマイコン20は、監視ユニットへ監視を指示する指示信号を出力する制御手段、各種制御機器を制御する制御手段が一体に構成されているが、本実施形態では、マイコン20における監視ユニットへ監視を指示する指示信号を出力する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が監視制御手段20aを構成し、マイコン20における伝達経路切替部22を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が切替制御手段20bを構成している。
【0050】
以上が、本実施形態に係る電池監視装置2の全体構成であり、以下、本実施形態に係る電池監視装置2の作動の概略について説明する。
【0051】
まず、本実施形態に係る電池監視装置2による各電池セル1aの過放電状態および過充電状態の監視処理について説明する。
【0052】
マイコン20は、フォトカプラ21を介して、各電池セル1aの過放電状態または過充電状態の監視を指示する監視指示信号を、監視ユニットU4に出力する。監視ユニットU4に監視指示信号が取り込まれると、監視ユニットU4では、監視対象である単位電池B4を監視指示信号に応じて監視し、その出力信号(監視指示信号および監視結果を示す信号)を監視ユニットU3に出力する。
【0053】
そして、監視ユニットU4から出力される出力信号が入力された監視ユニットU3では、監視指示信号に応じて、監視対象の単位電池B3を監視し、その監視結果と監視ユニットU4の監視結果とを含む出力信号を監視ユニットU2へ出力する。
【0054】
監視ユニットU2では、監視ユニットU3の出力信号に含まれる監視指示信号に応じて、監視対象の単位電池B2を監視し、その監視結果と監視ユニットU3、U4の監視結果とを含む出力信号を監視ユニットU1へ出力する。また、監視ユニットU1では、監視ユニットU2の出力信号に含まれる監視指示信号に応じて、監視対象の単位電池B1を監視し、その監視結果と監視ユニットU2〜U4の監視結果とを含む出力信号を、各監視ユニットU1〜U4の通信線およびフォトカプラ21を介してマイコン20に出力する。
【0055】
マイコン20では、各監視ユニットU1〜U4からの出力信号に基づいて、各電池セル1aが過放電状態または過充電状態となっているか否かを判定する。そして、当該判定の結果、各監視ユニットU1〜U4からの出力信号に過放電状態や過充電状態を示す監視結果等が含まれないと判定された場合、監視した単位電池B1〜B4は正常と判定して監視処理を終了する。一方、各監視ユニットU1〜U4からの出力信号に過放電状態や過充電状態を示す監視結果等が含まれると判定された場合、監視した単位電池B1〜B4に異常有りと判定する。
【0056】
次に、本実施形態に係る電池監視装置2の特徴的な作動である伝達経路切替部22による監視指示信号を含む信号の伝達経路の切替について説明する。
【0057】
まず、サービスプラグS/Pが取り付けられた状態、すなわち、単位電池B2、B3が導通している場合には、マイコン20により監視ユニットU2、U3間が導通するように第1接続開閉部222がオンされると共に、監視ユニットU2とマイコン20との間を遮断するように第2接続開閉部221bがオフされる。これにより、監視ユニットU2における監視指示信号を含む信号の伝達経路が監視ユニットU3となる。
【0058】
一方、サービスプラグS/Pが取り外された状態、すなわち、単位電池B2、B3が遮断されている場合には、システムメインリレーSMRがオフされて、組電池1と各種電気機器との間が遮断される。そして、マイコン20により監視ユニットU2とマイコン20との間が導通するように第2接続開閉部221bがオンされると共に、監視ユニットU2、U3間を遮断するように第1接続開閉部222がオフされる。
【0059】
これにより、監視ユニットU2における監視指示信号を含む信号の伝達経路が監視ユニットU3からマイコン20に切り替えられることとなる。この場合、マイコン20には、監視ユニットU2、U4が接続され、監視ユニットU2、U4に対してマイコン20から監視指示信号が出力されると共に、監視ユニットU1〜U4の監視結果を含む信号がマイコン20へ出力される。なお、監視ユニットU3は、監視ユニットU4を介してマイコン20と通信することができ、監視ユニットU1は、監視ユニットU2を介してマイコン20と通信することができる。
【0060】
以上、説明した本実施形態の電池監視装置によれば、組電池1における単位電池B2、B3間に設けられたサービスプラグS/Pが取り外された際に、サービスプラグS/Pを介して接続されていた単位電池B2、B3に対応する監視ユニットU2、U3間が第1接続開閉部222により遮断されるので、監視ユニットU2、U3間の通信線を介して不必要に電流が流れてしまうことを抑制することができる。
【0061】
これに加えて、組電池1における単位電池B2、B3間に設けられたサービスプラグS/Pが取り外された際に、単位電池B2に対応する監視ユニットU2における指示信号を含む信号の伝達経路を、監視ユニットU3からマイコン20へ切り替えるので、監視ユニットU2における通信を維持することができる。
【0062】
従って、組電池1における隣接する単位電池B2、B3の間のサービスプラグS/Pが取り外されたとしても、安全性を確保しつつ、各監視ユニットU1〜U4における通信を維持することができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1接続開閉部222および第2接続開閉部221bをフォトリレーで構成している。これにより、監視ユニットU2、U3間および監視ユニットU2とマイコン20の間の絶縁性を確保した状態で導通および遮断することができるので、安全性を充分に確保することができる。
【0064】
なお、監視ユニットU2とマイコン20とが導通する際には、システムメインリレーがオフされるので、監視ユニットU2およびマイコン20間の信号へ高圧ノイズが生ずることを抑制される。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る電池監視装置を含む組電池制御システムの全体構成を示している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0066】
本実施形態では、図2に示すように、サービスプラグS/Pにより接続された監視ユニットU2、U3に対応する監視ユニットU2、U3間を、絶縁素子23を介して接続している。本実施形態では、絶縁素子として2つのフォトカプラ23a、23bを用いて、監視ユニットU2、U3間で双方向に通信可能としている。なお、本実施形態では、各監視ユニットU1〜U4を接続する通信線、および絶縁素子23が信号伝達手段を構成している。
【0067】
本実施形態の如く、監視ユニットU2、U3間を絶縁素子23で接続する場合、監視ユニットU2、U3間の絶縁性を確保した状態で、監視ユニットU2、U3間で通信することができるので、サービスプラグS/Pが取り外されたとしても、安全性を確保しつつ、監視ユニットU1〜U4における通信を維持することができる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図3に基づいて説明する。図3は、本実施形態に係る電池監視装置を含む組電池制御システムの全体構成を示している。なお、本実施形態では、第1、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0069】
本実施形態では、図3に示すように、本実施形態のマイコン20は、各監視ユニットU1〜U4のうち、最も高電圧となる単位電池B4に対応する監視ユニットU4および最も低電圧となる単位電池B1に絶縁素子(例えば、フォトカプラ)21を介して接続されている。
【0070】
具体的には、本実施形態のマイコン20と監視ユニットU4とは、マイコン20から監視ユニットU4へと向かう単方向へ通信可能に接続されると共に、マイコン20と監視ユニットU1とは、監視ユニットU1からマイコン20へと向かう単方向へ通信可能に接続されている。そして、マイコン20から監視ユニットU4へ出力された監視指示信号を含む信号は、監視ユニットU3→監視ユニットU2→監視ユニットU1→マイコン20へ出力される。
【0071】
また、本実施形態では、サービスプラグS/Pにより接続された監視ユニットU2、U3に対応する監視ユニットU2、U3間を接続する絶縁素子23として1つのフォトカプラ23aを用いて、監視ユニットU3から監視ユニットU2への単方向に通信可能としている。なお、本実施形態では、各監視ユニットU1〜U4を接続する通信線、および絶縁素子23が信号伝達手段を構成している。
【0072】
本実施形態の如く、監視ユニットU4間を単方向に通信可能に接続する構成によっても、第2実施形態と同様に、サービスプラグS/Pが取り外されたとしても、安全性を確保しつつ、監視ユニットU1〜U4における通信を維持することができる。
【0073】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0074】
(1)上述の第1実施形態では、第1接続開閉部222および第2接続開閉部221bをフォトリレーで構成する例について説明したが、これに限定されず、例えば、第1接続開閉部222および第2接続開閉部221bをメカニカルリレーやMOSスイッチで構成することができる。
【0075】
(2)上述の各実施形態では、信号伝達部221を抵抗221aおよび第2接続開閉部221bで構成する例について説明したがこれに限定されない。例えば、抵抗221aを数MΩ以上の高い抵抗値とする場合には、第2接続開閉部221bを廃し、抵抗221aだけで信号伝達部221を構成してもよい。
【0076】
(3)上述の第2、第3実施形態では、監視ユニットU2、U3間に設けられた絶縁素子をフォトカプラで構成する例について説明したが、これに限定されず、例えば、絶縁素子をカップリングコンデンサやカップリングトランスで構成することができる。
【0077】
(4)上述の各実施形態では、サービスプラグS/Pにて接続された単位電池B2、B3に対応する監視ユニットU2、U3間にだけ伝達経路切替部22や絶縁素子23を設ける例について説明したが、これに限定されない。
【0078】
例えば、サービスプラグS/P以外に、物理的に切断され得る接続部であるヒューズ、バスバー、配線の何れかにより接続された単位電池に対応する監視ユニット間に伝達経路切替部22や絶縁素子23を設ける構成としてもよい。
【0079】
また、サービスプラグS/Pにて接続された単位電池に対応する監視ユニット間、最も高電圧側の単位電池とマイコン20との間、および最も低電圧側の単位電池とマイコン20との間ではなく、それら以外の監視ユニット間に伝達経路切替部22や絶縁素子23を設ける構成としてもよい。この場合、部品点数の増加等を考慮して、各監視ユニット間の全てに伝達経路切替部22や絶縁素子23を設けるのではなく、監視ユニット間の少なくとも一部に伝達経路切替部22や絶縁素子23を設ける形態が好ましい。
【0080】
(5)また、上述の各実施形態では、電池監視装置2の監視ユニットU1〜U4にて各電池セル1aの過放電状態および過充電状態の双方を監視する例について説明したが、これに限定されない。例えば、監視ユニットU1〜U4にて各電池セル1aの過放電状態および過充電状態のいずれか一方だけを監視するようにしてもよい。
【0081】
(6)また、上述の各実施形態では、電池監視装置2を車載高圧バッテリに適用する例を説明したが、車載高圧バッテリに限らず、他のバッテリに用いてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 組電池
1a 電池セル
2 マイコン(制御手段)
20a 監視制御手段
20b 切替制御手段
22 伝達経路切替部(伝達経路切替手段)
221 信号伝達部
221a 抵抗
221b 第2接続開閉部
222 第1接続開閉部
23 絶縁素子
23a フォトカプラ
23b フォトカプラ
B1〜Bn 単位電池
U1〜Un 監視ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが直列に接続されて構成される組電池を所定数の電池セル毎にグループ化した単位電池それぞれに対応して設けられ、対応する前記単位電池を監視する複数の監視ユニット、および前記監視ユニットへ監視を指示する指示信号を出力する監視制御手段を備え、前記複数の監視ユニットのうち前記監視制御手段からの前記指示信号を取得した監視ユニットが、隣接する前記監視ユニットへ信号伝達手段を介して前記指示信号を含む信号を伝達するように構成された電池監視装置であって、
前記組電池における複数の前記単位電池のうち少なくとも一部の単位電池は、物理的に切断され得る接続部によって隣接する前記単位電池に直列に接続されており、
前記組電池は、前記接続部の切断に連動して前記組電池から電力が供給される電気負荷との接続が遮断されるように構成されており、
前記信号伝達手段は、前記接続部が切断された際に、前記接続部にて接続されていた前記単位電池に対応する前記監視ユニット間を遮断すると共に、前記接続部にて接続されていた前記単位電池に対応する前記監視ユニットにおける前記指示信号を含む信号の伝達経路を、前記隣接する監視ユニットから前記監視制御手段へ切り替える伝達経路切替手段を有して構成されていることを特徴とする電池監視装置。
【請求項2】
前記伝達経路切替手段の作動を制御する切替制御手段を備え、
前記伝達経路切替手段は、前記接続部により接続される前記単位電池に対応する前記監視ユニットと前記監視制御手段との間で前記指示信号を含む信号を伝達する信号伝達部、および前記接続部により接続される前記単位電池に対応する監視ユニット間を導通および遮断する第1接続開閉部を有し、
前記切替制御手段は、前記接続部が切断された際に、前記接続部により接続される前記単位電池に対応する前記監視ユニット間を遮断することを特徴とする請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項3】
前記信号伝達部は、前記接続部により接続される前記単位電池に対応する監視ユニットと前記監視制御手段との間に流れる電流を所定の電流値以下に抑えるための抵抗、および前記接続部により接続される前記単位電池に対応する監視ユニットと前記監視制御手段との間を導通および遮断する第2接続開閉部を有し、
前記切替制御手段は、前記接続部が切断された際に、前記接続部により接続される前記単位電池に対応する前記監視ユニットと前記監視制御手段との間を導通することを特徴とする請求項2に記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記第1接続開閉部および前記第2接続開閉部は、フォトリレーで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電池監視装置。
【請求項5】
複数の電池セルが直列に接続されて構成される組電池を所定数の電池セル毎にグループ化した単位電池それぞれに対応して設けられ、対応する前記単位電池を監視する複数の監視ユニットを備え、前記複数の監視ユニットのうち隣接する監視ユニットが、前記隣接する監視ユニット間で所定の信号を伝達するための信号伝達手段を介して接続される電池監視装置であって、
前記組電池における複数の前記単位電池のうち少なくとも一部の単位電池は、物理的に切断され得る接続部によって隣接する前記単位電池に直列に接続されており、
前記信号伝達手段は、前記複数の監視ユニットのうち、前記接続部により接続された前記単位電池に対応する前記監視ユニット間を接続する絶縁素子を有して構成されていることを特徴とする電池監視装置。
【請求項6】
前記絶縁素子は、フォトカプラで構成されていることを特徴とする請求項5に記載の電池監視装置。
【請求項7】
前記接続部は、前記隣接する単位電池間を遮断可能なサービスプラグであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電池監視装置。
【請求項8】
前記接続部は、前記隣接する単位電池間を遮断可能なヒューズであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電池監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−251979(P2012−251979A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127219(P2011−127219)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】