電池監視装置
【課題】電池を実際に使用している自動車や発電プラントや家庭用蓄電システムなどのオンサイトや、実負荷を所望の負荷状態に制御しながら、電池の内部インピーダンス特性を測定し、電池状態をリアルタイムで監視できる電池監視装置を実現すること。
【解決手段】複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部、とで構成されていることを特徴とする。
【解決手段】複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部、とで構成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池監視装置に関し、詳しくは、電池を実際に使用している自動車やプラントなどのオンサイト(現場)や、実負荷を所望の負荷状態に制御しながら電池の状態をリアルタイムで測定監視できる電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繰り返し充電が行える二次電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車などの走行モータ駆動電源として用いられるとともに、化石燃料に頼らない太陽発電や風力発電などの環境負荷が比較的少ないエネルギーを蓄えることができるという視点からも、産業界や公共機関や一般家庭などでも広く用いられつつある。
【0003】
一般に、これらの二次電池は、所定数の電池セルを直列に接続することで所望の出力電圧が得られる電池モジュールとして構成され、所望の出力電圧が得られる所定数の電池モジュールを並列に接続することで所望の電流容量(AH)が得られる電池パックとして構成されている。
【0004】
ところで、自動車に走行モータ駆動電源として搭載される二次電池は、充電時間、航続距離などの利便性から、当面はリチウムイオン電池が主流になると考えられている。
【0005】
図32は、従来の二次電池を用いた電池システムの一例を示すブロック図である。図32において、電池モジュール10は、複数の電池セル111〜11nと電流センサ12が直列接続されたものであり、負荷Lと直列に接続されている。
【0006】
電池監視装置20は、電池モジュール10を構成する複数の電池セル111〜11nと電流センサ12に個別に対応するように設けられている複数のA/D変換器211〜21n+1と、これらA/D変換器211〜21n+1の出力データが内部バス22を介して入力される処理装置23とで構成されている。
【0007】
電池モジュール10の各電池セル111〜11nの出力電圧と電流センサ12の検出信号は、それぞれ対応するA/D変換器211〜21n+1に入力されてデジタル信号に変換され、これらA/D変換器211〜21n+1の出力データは内部バス22を介して処理装置23に入力される。
【0008】
処理装置23は、A/D変換器211〜21n+1の出力データに基づいてたとえば各電池セル111〜11nの内部抵抗値を求めるとともにそれらの内部抵抗値から所望の電流を取り出す場合の電圧降下分を推定し、これらのデータを外部バス30を介して上位の電池システム制御部40に伝送する。
【0009】
電池システム制御部40は、電池監視装置20から入力されるデータに基づき、現在の電池モジュール10の出力電圧で安定に負荷装置Lを駆動できるように、電池モジュール10および負荷装置Lを制御する。
【0010】
このような電池モジュール10を構成する二次電池の性能を評価する指標の一つに、図33および図34に示すような内部インピーダンス特性がある。図33は満充電された電池を高温状態に放置した場合のインピーダンス特性例図であり、図34は高温状態で充放電を繰り返した場合におけるインピーダンス特性例図である。なお、図33および図34において、左図は交流インピーダンス測定結果に基づく複素インピーダンスを複素座標にプロットしたコールコールプロットを示し、右図はそのインピーダンス周波数特性を表すボード線図を示している。
【0011】
図33の左図は、放置期間がたとえば1年、2年、・・と長くなるのにしたがって交流インピーダンスが大きくなっていく過程を示している。図34の左図は、充放電がたとえば50回、100回、・・と繰り返されるのにしたがって交流インピーダンスが大きくなっていく過程を示している。
【0012】
インピーダンスが大きくなると、電流を取り出すときの電池電圧降下が大きくなり、十分な出力電圧が得られなくなる。各右図の周波数が低い部分は、自動車のアクセルを長い時間踏み続けることに相当する。これらのデータから、周波数が低い部分ではインピーダンスが大きくなるため、どんどん電圧降下が大きくなることが推測できる。すなわち、電池の劣化に伴って出力特性が変化し、十分な出力を取り出せなくなってしまう。
【0013】
図35は二次電池の交流インピーダンスを測定する従来の測定回路の一例を示すブロック図であって、図32と共通する部分には同一の符号を付けている。図35において、電池10と電流センサ12の直列回路の両端には、掃引信号発生器50が接続されている。この掃引信号発生器50は、図33および図34の右図に示す周波数特性領域を含む範囲で出力周波数が掃引変化する交流信号を、電池10と電流センサ12の直列回路に出力する。
【0014】
交流電圧モニタ60は、電池10の両端の交流電圧を測定してインピーダンス演算装置80に入力する。交流電流モニタ70は、電流センサ12に流れる交流電流を測定してインピーダンス演算装置80に入力する。
【0015】
インピーダンス演算装置80は、掃引信号発生器50の出力信号の各周波数における交流電圧モニタ60の測定電圧と交流電流モニタ70の測定電流との比である電池10の複素インピーダンスを算出する。これら算出された複素インピーダンスを複素平面にプロットすることにより、図33や図34に示すようなコールコールプロットを得ることができる。
【0016】
このようにして作成されるコールコールプロットから、たとえば図36に示すような電池10の等価回路の各パラメータを推定できる。なお、図36の等価回路は、直流電源Eと、抵抗R1と、抵抗R2とコンデンサC2の並列回路と、抵抗R3とコンデンサC3の並列回路と、抵抗R4とインダクタンスL4の並列回路とが直列接続されている。このような交流法によるインピーダンスの測定については、自動測定方法も含めて特許文献1に詳しく記載されている。
【0017】
一方、自動車に搭載されているリチウムイオン電池の状態を監視し、電池の性能を最大限に活用するための情報を上位システムに提供するとともに、万が一ユーザーに危険を及ぼすような異常が電池に起きた際に安全にシステムを停止させることを目的として、非特許文献1に記載されているようなコントローラが開発され実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2003−4780号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】日置慎二郎、外5名、「リチウムイオンバッテリーコントローラの開発」、CALSONIC KANSEI TECHNICAL REVIEW、カルソニックカンセイ株式会社、vol.7 2010 p.6-10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
前述のように、電池の内部インピーダンス特性を測定することにより、電池の様々な情報を得ることができるので、電池を実際に使用している自動車や発電プラント、家庭用蓄電システムなどのオンサイト(現場)において電池の内部インピーダンス特性を測定できれば、それらの情報に基づいて電池の現状を把握するとともに、電池の現状に応じて常に最大限有効に活用するように制御することができる。
【0021】
しかし、図32に示す従来のシステム構成では、各電池セル111〜11nの内部抵抗値を求めることはできるものの、処理装置23と電池システム制御部40との間のデータ通信が間欠的になることから、各電池セル111〜11nの電圧データは周期がたとえば100ms以上の離散的データとなってしまう。
【0022】
この結果、瞬時もしくは一定時間積分平均された電圧、電流、温度などで構成されるテーブルを参照して各電池セル111〜11nの状態を検知できるようにするのに留まり、情報が多く詰まっている各電池セル111〜11nの内部インピーダンス特性を測定することはできない。
【0023】
また、図35に示す従来の測定回路によれば、掃引信号発生器50が必要であり、オンサイトの各セルについて図35のような測定回路を実装することはコスト的、スペース的にも実現は困難である。
【0024】
本発明は、これらの課題を解決するものであって、その目的は、電池を実際に使用している自動車や発電プラントや家庭用蓄電システムなどのオンサイトや、実負荷を所望の負荷状態に制御しながら電池の内部インピーダンス特性を測定し、電池の状態をリアルタイムで監視できる電池監視装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、
前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、
これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部、
とで構成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項2の発明は、
複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、
前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、
これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部と、
前記電池モジュールの負荷装置としての自動車の駆動系を構成しているアクセルの動きを監視し、その検出信号を前記電力/インピーダンス演算部と前記電池モジュール状態管理部に入力するアクセルワーク監視部、
とで構成されていることを特徴とする。
【0027】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の電池監視装置において、
前記電力/インピーダンス演算部は離散フーリエ変換または高速フーリエ変換を行い、その結果から所望の周波数領域における電池内部インピーダンス特性を示す等価回路定数を推定することを特徴とする。
【0028】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の電池監視装置において、
前記電力/インピーダンス演算部は、電池内部の反応時定数に応じてその時定数を最適に推定できる時間分解能と時間スパンで測定データを取得し、その時定数に支配的に関与していると思われる等価回路定数を推定することを特徴とする。
【0029】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電池監視装置において、
前記電力/インピーダンス演算部に、前記各電池セルの温度情報を付加することを特徴とする。
【0030】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の電池監視装置において、
前記実負荷に高周波成分が存在しないときには、前記実負荷と並列に高周波域を含んだ負荷を発生させる擬似負荷装置を接続することを特徴とする。
【0031】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の電池監視装置において、
前記実負荷をあらかじめ設定された所定の負荷プログラムにしたがって駆動制御する負荷制御部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
これらにより、電池を実際に使用する自動車やプラントなどのオンサイトや、実負荷を所望の負荷状態に制御しながら、電池の内部インピーダンス特性を測定でき、電池状態をリアルタイムで監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】電力/インピーダンス演算部24の具体例を示すブロック図である。
【図3】図2の等価回路パラメータ測定部24cの具体例を示すブロック図である。
【図4】電池のインピーダンス特性例図である。
【図5】図36の等価回路についての定数推定インピーダンス特性例図である。
【図6】図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図である。
【図7】a=4の相関係数Corr(i)のグラフである。
【図8】サンプルインピーダンス特性例図である。
【図9】他のサンプルインピーダンス特性例図である。
【図10】他のサンプルインピーダンス特性例図である。
【図11】矩形波パルスf(t)の特性例図である。
【図12】重み付けの具体例を示す説明図である。
【図13】重み付けで定数推定した結果例を示す説明図である。
【図14】図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図である。
【図15】定電流パルスの応答測定例図である。
【図16】ナイキストプロット例図である。
【図17】図36の等価回路における各回路定数の測定結果とその測定結果に基づき算出したフィッテング用のインピーダンス特性曲線の説明図である。
【図18】スパイク検出の有無によるサンプルインピーダンス特性の比較例図である。
【図19】図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図である。
【図20】インダクタンスL成分を補正するための処理の流れを説明するフローチャートである。
【図21】図20のフローチャートの手順で補正したスパイクありの波形データを等価回路フィッティングした結果例を示す説明図である。
【図22】電力/インピーダンス演算部24の他の具体例を示すブロック図である。
【図23】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図24】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図25】図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図である。
【図26】電池のインピーダンス特性例図である。
【図27】図26の電池の等価回路例図である。
【図28】広いフィッティング対象区間の説明図である。
【図29】推定定数に基づくインピーダンス特性例図である。
【図30】狭いフィッティング対象区間の説明図である。
【図31】再推定した定数に基づくインピーダンス特性例図である。
【図32】従来の二次電池を用いた電池システムの一例を示すブロック図である。
【図33】満充電された電池を高温状態に放置した場合のインピーダンス特性例図である。
【図34】高温状態で充放電を繰り返した場合におけるインピーダンス特性例図である。
【図35】二次電池の交流インピーダンスを測定する従来の測定回路の一例を示すブロック図である。
【図36】電池の等価回路例図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図32と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、電池監視装置20は、電池モジュール10を構成する複数n個の各電池セル111〜11nに対応して設けられている複数n個の電力/インピーダンス演算部241〜24nと、これら電力/インピーダンス演算部241〜24nの出力データが内部バス25を介して入力される電池モジュール状態管理部26と、負荷装置Lとしての自動車の駆動系を構成しているアクセルL1の動きを監視するアクセルワーク監視部27とで構成されている。
【0035】
負荷装置Lとしての自動車の駆動系は、アクセルL1とインバータL2とモータL3が実質的に直列接続されている。インバータL2は、電池モジュール10と直列に接続されていて、電池モジュール10からモータL3を回転駆動するのに必要な駆動電力が供給される。モータL3は、運転者がたとえばペダル操作するアクセルL1の動きに応じてインバータL2に供給される駆動電力量を制御することにより、運転者の意図する回転速度で回転するように緩急制御される。
【0036】
運転者のペダル操作に伴うアクセルL1の動きは、アクセルワーク監視部27で連続的に監視検出されていて、その検出信号は電池モジュール状態管理部26および内部バス25を介して各電力/インピーダンス演算部241〜24nに入力される。
【0037】
電力/インピーダンス演算部241〜24nには、それぞれに対応する各電池セル111〜11nから電圧信号が入力されるとともに、電流センサ12から電流信号が入力されている。
【0038】
ここで、運転者のペダル操作に伴うアクセルL1の動きは、各電池セル111〜11nの出力電圧波形および電流センサ12の出力電流波形に、広帯域の周波数成分を含む階段波的な立ち上がりや立ち下がりの変化を与えることになる。
【0039】
本発明では、これら広帯域の周波数成分を含む波形データを、電力/インピーダンス演算部241〜24nで離散フーリエ変換(DFT)または高速フーリエ変換(FFT)を行い、その結果から所望の周波数領域における等価回路定数を推定する。これにより、電池を実際に使用している自動車やプラントなどのオンサイトにおいて、電池の内部インピーダンス特性を測定でき、電池状態をリアルタイムで監視できる。
【0040】
電池モジュール状態管理部26は、各電力/インピーダンス演算部241〜24nで測定される電池モジュール10を構成する各電池セル111〜11nの瞬時電力情報および内部インピーダンス情報を取り込むとともに、これらのデータを外部バス30を介して上位の電池システム制御部40に伝送する。
【0041】
電池システム制御部40は、電池監視装置20から入力されるデータに基づき、現在の電池モジュール10の出力電圧で安定に負荷装置Lを駆動できるように電池モジュール10および負荷装置Lを制御するとともに、各電池セル111〜11nの瞬時電力量の変化動向や内部インピーダンス情報の変化動向などに基づいて各電池セル111〜11nの性能の推移状況を把握し、充電を促すアラームを発信したり、性能劣化の傾向を解析して電池モジュール10の交換時期予測データなども出力する。
【0042】
図2は、電力/インピーダンス演算部24の具体例を示すブロック図である。図2において、各電池セル111〜11nの電圧信号Vは、アンチエイリアスフィルタ24aを介してA/D変換器24bに入力され、A/D変換器24bの出力データは等価回路パラメータ測定部24cに入力される。
【0043】
電流センサ12からの電流信号Iは、アンチエイリアスフィルタ24dを介してA/D変換器24eに入力され、A/D変換器24eの出力データは等価回路パラメータ測定部24cに入力される。
【0044】
A/D変換器24b、24eは、電池モジュール状態管理部26→アクセル変化量検出部24f→クロック制御部24g→可変クロック発生部24hで構成され、アクセルワーク監視部27から検出出力されるアクセル変化信号に基づき生成される可変クロック系統により駆動される。これにより、発進、加速、高速走行、低速走行、減速、停止、後退、それらの緩急など、運転者のアクセルワークに基づいたクロックが生成されて、それぞれの状態における電圧信号Vおよび電流信号Iがデジタルデータに変換される。
【0045】
なお、A/D変換器24b、24eのサンプリングクロック周波数は、各電池セル111〜11nの内部インピーダンスを測定したい周波数帯域に応じて変更することもできる。たとえば1kHzまでの内部インピーダンスを測定する場合は、サンプリングクロック周波数を2Ksample/sとし、アンチエイリアスフィルタ24a、24dの低域通過帯域を1kHz以下とする。
【0046】
等価回路パラメータ測定部24cには、測定しようとしている各電池セル111〜11nの等価回路パターンなどの等価回路の情報が格納されている等価回路情報格納部24iが接続されている。等価回路パラメータ測定部24cで測定された等価回路の各パラメータは、内部バス25を介して電池モジュール状態管理部26に取り込まれる。
【0047】
A/D変換器24b、24eの出力データは、電力測定部24jにも入力される。これにより、電力測定部24jは各電池セル111〜11nの瞬時電力を測定し、測定結果を電力情報格納部24kに格納する。電力情報格納部24kに格納された電力情報は、内部バス25を介して電池モジュール状態管理部26に取り込まれる。
【0048】
図3は、図2の等価回路パラメータ測定部24cの具体例を示すブロック図である。A/D変換器24b、24eの出力データは、波形データ記憶部c1に逐次格納される。
【0049】
DFT演算部c2は、波形データ記憶部c1に逐次格納される波形データを離散フーリエ変換し、電圧信号の離散フーリエ変換結果を電流信号の離散フーリエ変換結果で除算することによりインピーダンスを演算し、演算されたインピーダンスデータをインピーダンスデータ記憶部c3に格納する。なお、波形データの形態によっては、DFT演算部c2に代えてFFT演算部を用いることにより、演算処理の高速化が図れる。
【0050】
回路定数推定演算部c4は、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータに基づき、予め指定された等価回路モデルにおいて、定数フィッティングを行う。回路定数推定演算部c4で推定演算された回路定数は、たとえば図36に示した等価回路の場合、R4とL4は不変回路定数記憶部c5に格納され、その他のR1、R2、C2、R3、C3は回路定数記憶部c6に格納される。
【0051】
インピーダンス推定演算部c7は、任意の周波数におけるインピーダンスを出力する。インピーダンスデータが実在する周波数領域については、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータをそのまま出力する。インピーダンスデータが実在しない周波数領域については、不変回路定数記憶部c5および回路定数記憶部c6に格納されている回路定数に基づき推定演算し、その演算結果を出力する。
【0052】
解析条件記憶部c8には、外部から解析条件が格納される。解析条件は主に各演算部における演算条件をあらわすが、基準測定かシステム搭載時測定かの情報も含む。
【0053】
近年、電池に対して定電圧や定電流で正弦波を印加してインピーダンス特性を求め、充放電の温度特性や充電残量や性能劣化の度合などを推定して電池の状態を把握する研究が盛んに行われている。
【0054】
電池が自動車などのシステムに組み込まれる前の単体の状態では、整備された測定環境でインピーダンス測定が行えるが、システムに組み込まれてしまうと、システム上の制約などにより、十分なインピーダンス測定ができない場合がある。特に、自動車の駆動源として搭載された場合には、システム側のサンプルレートが不十分で、高い周波数領域がサンプルできないことが想定される。この場合、予め測定した測定範囲相当での比較ができなくなってしまう。
【0055】
図4は電池のインピーダンス特性例図であり、(A)は正弦波を周波数範囲1Hz〜2.5kHzで掃引するとともに、各測定周波数点で十分なサンプルレートを確保しながら測定した結果を示している。以降、(A)を基準特性とする。
【0056】
(B)は(A)の基準特性から周波数範囲1〜50Hzを切り出したものである。これは、電池をたとえば自動車システムに搭載した場合の制約により、高周波数領域が測定できない場合を想定している。(A)に表示されている虚軸の+側(グラフの下半分)は電池のL(インダクタンス)の情報を含む領域であるが、(B)ではその部分が完全に欠落している。
【0057】
電池のインダクタンスについては、構造的な特性であり、電極や電解溶液の劣化などでは経時変化しないとする考えがある。この考えに基づけば、(A)の基準特性から予め等価回路定数を求め、経時変化しない定数については、電池をシステム搭載後も、これらの定数を使用できる。
【0058】
(C)は(A)の基準特性を、図36の等価回路モデルに基づき定数フィッティングして求めたR1,R2,R3,C2,C3,L4,R4から導き出したインピーダンス特性曲線である。フィッティングは公知の演算式に基づいて行うことができる。
【0059】
(D)は(B)で推定した回路定数R1,R2,R3,C2,C3と予め取得したL4,R4を用いて、図36の等価回路モデルに基づき定数フィッティングして求めた結果から導き出したインピーダンス特性曲線である。(D)のインピーダンス特性曲線は、(C)のインピーダンス特性曲線とほぼ等しくなっている。すなわち、(B)で推定した回路定数R1,R2,R3,C2,C3と予め取得したL4,R4を用いることにより、(A)の基準特性に相当する周波数範囲におけるインピーダンス特性を推定することができる。
【0060】
上記実施例では等価回路モデルに不変回路定数を与えることによりインピーダンス推定を行っているが、等価回路上に不変回路定数を与えるのではなく、不変回路定数から時系列データを作り出し、それを測定した時系列データに足しこんだ上で、他の回路定数を推定するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施例ではL成分は低い周波数領域には影響しないという前提で定数推定を行っている。よって、定数推定時の等価回路モデルには不変回路定数L4,R4を含まず、インピーダンス推定時にのみ不変回路定数L4,R4を使用している。ところが、電池の特性によってはL成分が低い周波数領域にも影響を及ぼす可能性がある。その場合には、定数推定時の等価回路に不変回路定数L4,R4を含んだ上で定数推定するようにしてもよい。
【0062】
ところで、電池の等価回路モデルの選択にあたっては、予め、測定対象とする電池固有の特性や測定周波数範囲を認識した上で適切な等価回路モデルを選択しないと、図5のインピーダンス特性例図に示すように実物とはかけ離れた定数推定結果となる場合がある。
【0063】
図5は、図36の等価回路について、同じインピーダンスデータから異なる周波数範囲のデータを抽出し、定数推定を行った結果である。(A)は0.1Hz以上を抽出した結果であり、定数フィッティングにより導き出したインピーダンス特性曲線と、実際のインピーダンス特性が一致している。
【0064】
これに対し、(B)は1.0Hz以上を抽出した結果であって、定数フィッティングにより導き出したインピーダンス特性曲線から大きく外れている。これは、実物はワールブルグ素子を含んでいるにもかかわらず、データにはその特性が顕著に現れていないことにより、局所解に陥っていると推測できる。このように、同じ等価回路モデルでも、定数推定に用いるインピーダンスの周波数範囲が異なると、全く異なる結果が得られることがある。
【0065】
このような不都合は、図6に示すように構成される等価回路パラメータ測定部24cを用い、インピーダンスデータの特徴に基づいて最適な等価回路モデルを選択することにより回避でき、回路定数推定精度の向上が図れる。
【0066】
図6は等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。図6において、回路モデル選択部c9は、DFT演算部c2で推定されインピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータの特徴に基づき、最適な等価回路モデルを選択する。回路定数推定演算部c4は、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータおよび回路モデル選択部c9で選択された最適な等価回路モデルに基づき、各回路定数の推定演算を行う。
【0067】
一般的に使用される電池の等価回路モデルは、n段のRC並列回路と、1段のLR並列回路と、ワールブルグ素子とで構成されている。そこで、回路モデル選択部c9は、このような等価回路モデルの具体的な構成について、以下の手順で順次決定する。
1)ワールブルグ素子の有無
2)LR並列回路の有無
3)RC並列回路の段数
【0068】
1)まず、ワールブルグ素子については、低周波数側のインピーダンス実軸・虚軸の相関係数を用いて、有無を判断する。たとえば、Corr<−0.99であればワールブルグ有と判定する。相関係数は下式より算出する。
【0069】
【0070】
ここで、Corr(i)はi番目インピーダンスデータ周辺の相関係数、ZrealjおよびZimgjはj番目インピーダンスデータの実部・虚部をあらわす。
【0071】
【0072】
【0073】
は、各々i-a〜i+a番目インピーダンスの実部・虚部データの平均値をあらわす。なお、インピーダンスデータは周波数の昇順に並んでいるものとする。
【0074】
図7は、a=4の相関係数Corr(i)のグラフである。今回のサンプルデータではワールブルグ「有」と判断される。
【0075】
2)次に、LR並列回路の有無を判定する。高周波数測のインピーダンス虚軸が+値であれば、LR並列回路が必要と判断する。図8のサンプルインピーダンス特性図の場合には、LR並列回路「有」と判断される。
【0076】
3)最後にRC並列回路の段数を決定する。全データにおいて相関係数が−から+方向に、Corr(i)=−0.95を跨いだ回数で判定する。ただし、インピーダンスの虚軸が+領域で跨いでいる場合は、LRの特性とみなしてカウントしない。図9(A)に示すサンプルデータでは、a,b,cの3点で相関係数が−0.95を跨いでいるが、c点は(B)に示すようにインピーダンスの虚軸が320Hzを越えた+領域で跨いでいるのでカウントせず、RC並列回路は2段と判断する。
【0077】
これらにより、回路定数推定演算部c4で推定演算される各回路定数の推定精度の向上が図れる。
【0078】
十分な測定環境下で電圧・電流データを取得できれば、インピーダンスの特徴を抽出することは可能である。しかし、たとえば電池を自動車に搭載した状態では、ノイズなどの影響で必ずしも良好な測定結果が得られるとは限らない。
【0079】
その場合には、複数の等価回路モデル候補を選択した上で並列に定数推定演算を行い、対象インピーダンスデータとの誤差が最小なものを最終的な出力としてもよい。
【0080】
さらに、繰り返し演算中において、随時対象インピーダンスデータとの誤差を算出し、基準値を満たさないもの、または、明らかに収束していないものについては、演算を打ち切って他のモデルを選択するという機能を設けてもよい。
【0081】
また、回路定数推定演算部c4で推定演算を行う過程において、周波数領域や測定精度などの条件に応じて各データの重み付けを行うことにより、定数推定精度の向上を図ることもできる。
【0082】
インピーダンス特性を単一正弦波の掃引測定から得る場合は、各周波数単位で、A/D変換器のA/D分解能を考慮した振幅が設定できる。これに対し、パルスのような複数の周波数成分を含む波形の場合には、各周波数成分の振幅を制御することはできない。この場合、ある周波数成分においては、A/D分解能が足りず、正しいインピーダンスを得ることができない。さらに、このデータを用いて等価回路モデルの定数推定を行うと、誤差の大きい推定結果となる可能性がある。
【0083】
図10のサンプルデータにおいて、(A)は図36の等価回路に対応した前述図4(C)と同じものであり、正弦波形入力応答から得られたインピーダンス特性と定数フィッティングより得られたインピーダンス特性曲線である。正弦波を周波数範囲1Hz〜2.5kHzで掃引するとともに、各測定周波数点で十分なサンプルレートを確保しながら測定した結果であり、これらの回路定数を真値とする。
【0084】
(B)は、パルス入力応答から得られた結果である。ただし、R4,L4は正弦波形入力応答で得られた定数を用いている。サンプルレート1kHzで測定しており、1〜450Hzの周波数域で離散フーリエ変換を行っている。サンプルレートが低いため、高い周波数側でみえるはずのインダクタンス成分がキャプチャされていない。また、周波数が高いほど結果がばらついている。これらのばらつきは、パルスに含まれる各周波数成分の振幅とA/D変換器のA/D分解能が関係していると考えられる。
【0085】
ここで、矩形波パルスf(t)をフーリエ級数展開し、波形に含まれる周波数成分を考える。矩形波パルスf(t)は図11のように表せる。
【0086】
【0087】
【0088】
ただし、Wはパルス幅、Tは周期、mは0以上の整数である。
上式で示されるように、周波数によっては振幅amがA/D分解能に対して極めて小さくなってしまうため、この周波数近辺で結果が大きくばらつく可能性がある。
【0089】
このばらつきにより等価回路定数の推定精度が損なわれるおそれがあるが、ばらつきの影響を抑制するためには、何らかの重み付け計算が有効であると考えられる。
【0090】
具体例として、回路定数の推定にGauss-Newton法を用いる場合を考える。回路定数の真値からのずれを、ΔR2,ΔC2,ΔR3,ΔC3とすると、以下のように表せる。
【0091】
【0092】
ΔZnはn番目の実測インピーダンスと現在の回路定数から計算して得られた同周波数におけるインピーダンスとの差である。Jはヤコビアン、Tは行列の転置をあらわす。上記計算を、回路定数が収束するまで繰り返し行う。ここで、重み付けp(j)を導入し、以下の式で回路定数の推定演算を行う。
【0093】
【0094】
振幅が小さい周波数域では重み付けを小さくし、逆に振幅が大きい周波数域では重み付けを大きくすることにより、ばらつきの影響を抑える効果が期待できる。
【0095】
入力応答がパルスに近い形状の場合、フーリエ級数の性質から、たとえば図12のような重み付けが有効と考えられる。ただし、kは0以上の整数、f0はDFT演算区間を一周期とした場合の周波数、fjはf0のj次周波数を表す。
【0096】
【0097】
図13は、上記の重み付けで定数推定した結果例を示す説明図である。(A)はサンプルインピーダンス特性例図を示し、(B)は重み付けあり・なしで推定した場合における定数の真値からのずれを示している。全ての定数において、真値に近い定数推定結果になっている。
【0098】
図14は等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図であり、図3および図6と共通する部分には同一の符号を付けている。図14の回路定数推定演算部c4は、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータおよび解析条件記憶部c8から設定される重み付け関数や周波数範囲などに基づき、各データの重み付け演算などを行う。
【0099】
これらにより、前述のように、各回路定数推定精度の向上を図ることができる。
【0100】
インダクタンス成分が大きい電池に対してパルス状の立ち上がりが速い電流(電圧)を印加すると、スパイク状の電圧(電流)が発生する。このとき、A/D変換器のサンプルレートが十分に高くないと、サンプルタイミングによっては、図15に示すように、このスパイク部分がサンプルされたり、されなかったりする。
【0101】
図15は定電流パルスの応答測定例図であり、(A)は電圧スパイク部分がサンプルされた場合を示し、(B)は電圧スパイク部分がサンプルされない場合を示している。
【0102】
電池のインピーダンスを算出する場合、スパイク部分がサンプルされた場合とサンプルされなかった場合では、インピーダンスの算定結果が著しく異なり、再現性のない結果が得られてしまう。
【0103】
図16は、各々のデータから求めたナイキストプロット例図である。「-△-」は、正弦波形入力から得られた結果である。前述のように各々十分なサンプルレートを確保して各周波数を一波ずつ掃引測定した結果である。なお、正弦波形は十分に滑らかであるため、パルス入力でみられるようなスパイク応答は発生してない。以降、この「-△-」の結果を真値とする。
【0104】
「-□-」は、スパイクが検出されたデータに対して離散フーリエ変換を行った結果である。スパイク部分をキャプチャするために十分なサンプレートが確保されていないため、全体的に「-△-」の真値から大きく外れてしまっている。
【0105】
「-×-」は、スパイクが検出されなかったデータに対して離散フーリエ変換を行った結果である。スパイク部分がキャプチャされなかったため、虚軸方向に対して下に伸びることはなく、インダクタンス成分が欠落している。これらにより、スパイクが検出された場合とされなかった場合とで、特性の現れ方が著しく異なることが明らかである。
【0106】
電池のインダクタンスは構造的に決まるものであり、電極や溶液劣化で経時変化しないとする考えがある。前述のように、スパイクは電池のインダクタンスに起因するものであるが、電池の劣化診断においては、R,C成分のみ必要とし、L成分は測定できなくてもよい場合がある。そのような場合、グラフ虚軸のマイナス側(グラフ上部)の情報が正確かつ十分にあれば、電池のR(抵抗)およびC(コンダクタンス)を推定でき、電池の劣化診断が行える。
【0107】
図17は、正弦波を所定の周波数範囲1Hz〜2.5kHzで掃引するとともに各測定周波数点で十分なサンプルレートを確保して測定したインピーダンス特性およびこれを図36の等価回路モデルで定数フィッティングして得た定数R1,R2,R3,C2,C3,L4,R4から導き出したインピーダンス特性曲線である。以降、これらの測定結果を真値とする。
【0108】
図18はスパイク検出の有無によるサンプルインピーダンス特性の比較例図である。(A)はパルス応答でスパイクが検出されたデータを示し、(B)はパルス応答でスパイクが検出されなかったデータを示している。ただし、インダクタンスL成分が検出されなかったデータに対しては、R4,L4を等価回路モデルから外している。
【0109】
(C)はスパイク検出の有無による各定数の真値からのずれを示している。R,Cにおいては、スパイクが検出されなかったデータに基づいてフィッティングを行うことにより、真値に近い結果が得られる。すなわち、サンプルレートが不十分でも、スパイクなしの波形であれば、R,Cの回路定数を推定することが十分可能であることを示しているが、再現性よくスパイクのない波形を取得することは困難である。
【0110】
そこで、低サンプルレートで測定されたパルス応答データからL成分がみえるデータを補正し、等価回路のR,Cを再現性よく高精度に推定することを検討する。
【0111】
図19は等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図であり、図3と図6および図14と共通する部分には同一の符号を付けている。図19のスパイクデータ補正部c10は、波形データ記憶部c1に格納されている波形データに対してスパイク補正を行う。回路定数推定演算部c4は、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータおよび解析条件記憶部c8から設定される解析条件などに基づき、定数フィッティングで回路定数を推定および得られた定数から導き出されたインピーダンス特性曲線の算出を行う。回路定数推定演算部c4の演算結果は、回路定数記憶部c6に格納される。
【0112】
図20は、スパイクデータ補正部c10によるスパイクありの波形データのインダクタンスL成分を補正するための処理の流れを説明するフローチャートである。図20において、i(t)はt番目の電流サンプリングデータ、v(t)はt番目の電圧サンプリングデータである。srは、スパイクを検出するための係数である。トリガは、パルスの立ち上がりおよび立ち下がりを検出するためのトリガレベルである。
【0113】
ステップS1でt=1のデータ長の波形データを選択し、ステップS2でパルスの立ち上がりか否かを判断するためにT=tとしてi(t)>トリガの条件が成立するか否かを判断する。この条件が成立すればパルスの立ち上がりであると判断し、T=tとしてフラグ=FALSEとするステップS3の処理に移行する。
【0114】
そして、ステップS4でスパイクが検出されたか否かを判断するためにv(t)>sr*v(t+1)の条件が成立するか否かを判断する。この条件が成立すればスパイクが検出されたと判断し、フラグ=TRUE、v(t)=v(t−1)、i(t)=i(t−1)とするステップS5の処理に移行する。続いて、t=Tのデータ長の波形データを選択するステップS6の処理に移行する。ステップS4の条件が成立しなければスパイクなしと判断して直接ステップS6の処理に移行する。
【0115】
ステップS7でパルスの立ち下がりか否かを判断するためにi(t)<トリガの条件が成立するか否かを判断する。この条件が成立すればパルスの立ち下がりであると判断し、さらにステップS8でスパイク補正の有無を判断するためにフラグ=TRUEか否かを判断する。この条件が成立すればスパイク補正ありと判断し、v(t)=v(t−1)、i(t)=i(t−1)とするステップS9の処理に移行して、一連の処理を終了する。なお、ステップS8の条件が成立しなければ、スパイク補正なしとして一連の処理を終了する。
【0116】
図21は、図20のフローチャートの手順で補正したスパイクありの波形データを等価回路フィッティングした結果例を示す説明図である。(A)はサンプルインピーダンス特性例図を示し、(B)は補正の前後における定数の真値からのずれを示している。補正後の定数は、全ての定数で真値に近い結果になっている。
【0117】
図22は、電力/インピーダンス演算部24の他の具体例を示すブロック図である。図22のブロック図では、各電池セル111〜11nからの電圧信号Vおよび電流信号Iに加えて温度信号Tも取り込んでいる。
【0118】
図示しない温度センサから出力される温度信号Tは、アンチエイリアスフィルタ24mを介してA/D変換器24nに入力され、A/D変換器24nの出力データは等価回路パラメータ測定部24cに入力される。
【0119】
電池のインピーダンス特性は、温度環境によって大きく変化する。そのため、たとえば「劣化―充電残量―インピーダンス」をテーブル化する場合には、温度パラメータは不可欠となる。したがって、図22に示すように、各電池セル111〜11nの温度モニタ結果を電力/インピーダンス演算部24に付加することは有効である。
【0120】
また、図1の実施例ではアクセルL1とインバータL2とモータL3が実質的に直列接続されている自動車の駆動系を実負荷として用い、運転者のペダル操作に伴うアクセルL1の動きによる各電池セル111〜11nの出力電圧波形および電流センサ12の出力電流波形の階段波的な立ち上がりや立ち下がりの変化に基づきインピーダンス特性推定を行う例を示しているが、実負荷に高周波成分が存在しないときには、図23に示すように実負荷と並列に擬似負荷装置DLを接続して高周波域を含んだ負荷を発生させることにより、高域までインピーダンス推定することができる。
【0121】
擬似負荷装置DLの出力波形としては、矩形波、三角波などが考えられる。その出力振幅は、たとえば電池放電レートを考慮して様々な条件で実施できるようにすればよい。
【0122】
なお、本発明で用いる電力/インピーダンス演算部24は、半導体集積回路化技術を用いることにより超小型にパッケージ化でき、たとえば自動車に搭載される電池モジュールの各電池セルに取り付ける場合にもきわめて微小のスペースが確保できればよい。
【0123】
図24も本発明の他の実施例を示すブロック図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付けている。図24において、負荷制御部LCは、たとえば負荷装置Lとしての自動車の駆動系をあらかじめ設定された所定の負荷プログラムにしたがって駆動制御する。
【0124】
これにより、実際の運転では実現困難な走行状態などを再現でき、それらの負荷変動が電池モジュール10に与える影響を電力/インピーダンス演算部24で測定することができる。
【0125】
図25は図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図であり、図6と共通する部分には同一の符号を付けている。図25において、演算部には電流波形解析部c12と推定定数演算部c13が追加されている。
【0126】
図26に示すようなインピーダンス特性をもつ電池のインピーダンス特性を、図25に示す等価回路パラメータ測定部24cが組み込まれた装置を用いて測定する手順について説明する。なお、等価回路は図27を使用するものとする。
【0127】
図26によれば、電池は周波数ごとに特徴あるインピーダンス特性を持つことが明らかである。1kHz以上ではインダクタンス、1Hz〜1kHzではコンダクタンス、1Hz以下ではCPE(Constant Phase Element)すなわちf-pに比例した特性が支配的に見えている。なお、CPEは以下の式であらわされる。
【0128】
【0129】
図24および図25において、
1)たとえば負荷装置Lとしての自動車の駆動系から電池モジュール10に適切な電流負荷が与えられる。
2)アクセルワーク監視部27は、アクセル変化信号に基づいて負荷の発生状態を監視し、適当なタイミングで電池モジュール状態管理部26を介して各電力/インピーダンス演算部24へ測定開始命令を出力する
【0130】
3)各電力/インピーダンス演算部24は、測定が終了すると、電流波形解析部c12により電流波形データの形状解析を行い、解析条件記憶部c8に設定された条件(たとえば放電パルス幅が500±10msでかつ放電遮断後の状態が10sec以上)を満たすデータのみを波形データ記憶部c1に記憶する。
【0131】
設定された所定条件を満たす波形データが得られるまで、1)〜3)を繰り返す。
なお、図2の構成ではサンプルレートの条件はアクセルワーク監視部27のアクセル変化信号に基づき設定される例を示しているが、解析条件記憶部c8に設定してもよい。
【0132】
4)データ取得後、推定定数演算部c13は波形データ記憶部c1から前述の設定条件を満たす波形データを読み出し、以下のような推定定数演算を行う。なお、使用する等価回路モデルは回路モデル選択部c9で選択されているものとする。
【0133】
4−1)まず、図28に示すように、設定された所定条件を満たす波形データの全区間をフィッティング対象として、R1,R2,C2,R3,C3,CPE(pとT)を推定する。本実施例では、測定パルスとしてパルス幅500msを使用しているため、フィッティング対象となる波形のデューティー比は0.05以下となる。これは1Hz以下の特徴的特性、すなわち、CPEのpとTを得ることが目的である。
【0134】
図29の実線は、このようにして求めた推定定数に基づくインピーダンス特性である。「+」でプロットした特性は、交流重畳波形を印加して測定して得た特性である。後者を真値とすると、低周波側は精度よく推定できているが、高周波側はずれていることがわかる。
これは、時定数が小さい特性、変化が顕著に見られる微小時間に対して、図29の場合は10秒以上というはるかに長い時間波形でフィッティングしているため、時間サンプル数の多い0.1Hz〜1Hz近辺の特性が重点的にフィッティングされた結果、微小時間が重要な高周波側は相対的に誤差が大きくなっているためと考えられる。
【0135】
4−2)次に、フィッティングの対象範囲として、図30に示すように設定された所定条件を満たす波形データの0〜1sの区間を抽出し、4−1)で求めたCPE(pとT)値を固定定数として、R1,R2,C2,R3,C3を再推定する。このときのフィッティング対象となる波形のデューティー比は、0.5程度となる。これは、1Hz以上の特徴的特性、すなわち、RとCを得ることが目的である。
【0136】
なお、R5,L5は、電池の反応系には依存せず、電池の構造で決まる値であるため、固定値とした。
【0137】
また、定数の初期値は適当なものでよい。ただし、解の収束度合いや、劣化診断の現実的な運用を考慮すると、劣化前特性における定数値を用いることがのぞましい。
【0138】
図31は、再推定した定数に基づくインピーダンス特性例図である。「+」でプロットした特性と実線で示す特性との乖離を図29と比較すると、大幅に改善されて小さくなっている。これは、時定数が小さい特性、変化が顕著に見られる微小時間に対して、図29の場合は10秒以上というはるかに長い時間波形でフィッティングしているため、時間サンプル数の多い0.1Hz〜1Hz近辺の特性が重点的にフィッティングされた結果、微小時間が重要な高周波側は相対的に誤差が大きくなっていると考えられる。
【0139】
5)4)で得られた定数は電池モジュール状態管理部26に転送される。電池モジュール状態管理部26は、定数から電池の劣化状態を判定し、結果を電池システム制御部40に通知する。
【0140】
このように、電池内部の反応時定数に応じてその時定数を最適に推定できる時間分解能と時間スパンで測定データを取得し、その時定数に支配的に関与していると思われる等価回路素子の定数を推定することを時定数毎に行うことで、等価回路定数の推定精度の向上をはかることができる。
【0141】
なお、等価回路定数のフィッティングには、勾配法、発見法、直接法など、一般的な最適解探索アルゴリズムを用いることができる。
【0142】
また、図24で設けている負荷制御部LCは、負荷装置Lとしての自動車の駆動系をあらかじめ設定された所定の負荷プログラムにしたがって駆動制御できることから、擬似負荷装置DLを有する図23にも有効である。
【0143】
また、上記各実施例では、自動車に搭載される電池モジュールの各電池セルの内部インピーダンスを測定する例について説明したが、自動車以外の発電プラントや家庭用蓄電システムなどに設けられる蓄電池の監視にも有効である。
【0144】
以上説明したように、本発明によれば、電池を実際に使用している自動車や発電プラントや家庭用蓄電システムなどのオンサイトや、実負荷を所望の負荷状態に制御しながら電池の内部インピーダンス特性を測定し、電池状態をリアルタイムで監視できる電池監視装置が実現できる。
【符号の説明】
【0145】
10 電池モジュール
111〜11n 電池セル
12 電流センサ
20 電池監視装置
241〜24n 電力/インピーダンス演算部
25 内部バス
26 電池モジュール状態管理部
27 アクセルワーク監視部
30 外部バス
40 電池システム制御部
L 負荷装置(駆動系)
L1 アクセル
L2 インバータ
L3 モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池監視装置に関し、詳しくは、電池を実際に使用している自動車やプラントなどのオンサイト(現場)や、実負荷を所望の負荷状態に制御しながら電池の状態をリアルタイムで測定監視できる電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繰り返し充電が行える二次電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車などの走行モータ駆動電源として用いられるとともに、化石燃料に頼らない太陽発電や風力発電などの環境負荷が比較的少ないエネルギーを蓄えることができるという視点からも、産業界や公共機関や一般家庭などでも広く用いられつつある。
【0003】
一般に、これらの二次電池は、所定数の電池セルを直列に接続することで所望の出力電圧が得られる電池モジュールとして構成され、所望の出力電圧が得られる所定数の電池モジュールを並列に接続することで所望の電流容量(AH)が得られる電池パックとして構成されている。
【0004】
ところで、自動車に走行モータ駆動電源として搭載される二次電池は、充電時間、航続距離などの利便性から、当面はリチウムイオン電池が主流になると考えられている。
【0005】
図32は、従来の二次電池を用いた電池システムの一例を示すブロック図である。図32において、電池モジュール10は、複数の電池セル111〜11nと電流センサ12が直列接続されたものであり、負荷Lと直列に接続されている。
【0006】
電池監視装置20は、電池モジュール10を構成する複数の電池セル111〜11nと電流センサ12に個別に対応するように設けられている複数のA/D変換器211〜21n+1と、これらA/D変換器211〜21n+1の出力データが内部バス22を介して入力される処理装置23とで構成されている。
【0007】
電池モジュール10の各電池セル111〜11nの出力電圧と電流センサ12の検出信号は、それぞれ対応するA/D変換器211〜21n+1に入力されてデジタル信号に変換され、これらA/D変換器211〜21n+1の出力データは内部バス22を介して処理装置23に入力される。
【0008】
処理装置23は、A/D変換器211〜21n+1の出力データに基づいてたとえば各電池セル111〜11nの内部抵抗値を求めるとともにそれらの内部抵抗値から所望の電流を取り出す場合の電圧降下分を推定し、これらのデータを外部バス30を介して上位の電池システム制御部40に伝送する。
【0009】
電池システム制御部40は、電池監視装置20から入力されるデータに基づき、現在の電池モジュール10の出力電圧で安定に負荷装置Lを駆動できるように、電池モジュール10および負荷装置Lを制御する。
【0010】
このような電池モジュール10を構成する二次電池の性能を評価する指標の一つに、図33および図34に示すような内部インピーダンス特性がある。図33は満充電された電池を高温状態に放置した場合のインピーダンス特性例図であり、図34は高温状態で充放電を繰り返した場合におけるインピーダンス特性例図である。なお、図33および図34において、左図は交流インピーダンス測定結果に基づく複素インピーダンスを複素座標にプロットしたコールコールプロットを示し、右図はそのインピーダンス周波数特性を表すボード線図を示している。
【0011】
図33の左図は、放置期間がたとえば1年、2年、・・と長くなるのにしたがって交流インピーダンスが大きくなっていく過程を示している。図34の左図は、充放電がたとえば50回、100回、・・と繰り返されるのにしたがって交流インピーダンスが大きくなっていく過程を示している。
【0012】
インピーダンスが大きくなると、電流を取り出すときの電池電圧降下が大きくなり、十分な出力電圧が得られなくなる。各右図の周波数が低い部分は、自動車のアクセルを長い時間踏み続けることに相当する。これらのデータから、周波数が低い部分ではインピーダンスが大きくなるため、どんどん電圧降下が大きくなることが推測できる。すなわち、電池の劣化に伴って出力特性が変化し、十分な出力を取り出せなくなってしまう。
【0013】
図35は二次電池の交流インピーダンスを測定する従来の測定回路の一例を示すブロック図であって、図32と共通する部分には同一の符号を付けている。図35において、電池10と電流センサ12の直列回路の両端には、掃引信号発生器50が接続されている。この掃引信号発生器50は、図33および図34の右図に示す周波数特性領域を含む範囲で出力周波数が掃引変化する交流信号を、電池10と電流センサ12の直列回路に出力する。
【0014】
交流電圧モニタ60は、電池10の両端の交流電圧を測定してインピーダンス演算装置80に入力する。交流電流モニタ70は、電流センサ12に流れる交流電流を測定してインピーダンス演算装置80に入力する。
【0015】
インピーダンス演算装置80は、掃引信号発生器50の出力信号の各周波数における交流電圧モニタ60の測定電圧と交流電流モニタ70の測定電流との比である電池10の複素インピーダンスを算出する。これら算出された複素インピーダンスを複素平面にプロットすることにより、図33や図34に示すようなコールコールプロットを得ることができる。
【0016】
このようにして作成されるコールコールプロットから、たとえば図36に示すような電池10の等価回路の各パラメータを推定できる。なお、図36の等価回路は、直流電源Eと、抵抗R1と、抵抗R2とコンデンサC2の並列回路と、抵抗R3とコンデンサC3の並列回路と、抵抗R4とインダクタンスL4の並列回路とが直列接続されている。このような交流法によるインピーダンスの測定については、自動測定方法も含めて特許文献1に詳しく記載されている。
【0017】
一方、自動車に搭載されているリチウムイオン電池の状態を監視し、電池の性能を最大限に活用するための情報を上位システムに提供するとともに、万が一ユーザーに危険を及ぼすような異常が電池に起きた際に安全にシステムを停止させることを目的として、非特許文献1に記載されているようなコントローラが開発され実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2003−4780号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】日置慎二郎、外5名、「リチウムイオンバッテリーコントローラの開発」、CALSONIC KANSEI TECHNICAL REVIEW、カルソニックカンセイ株式会社、vol.7 2010 p.6-10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
前述のように、電池の内部インピーダンス特性を測定することにより、電池の様々な情報を得ることができるので、電池を実際に使用している自動車や発電プラント、家庭用蓄電システムなどのオンサイト(現場)において電池の内部インピーダンス特性を測定できれば、それらの情報に基づいて電池の現状を把握するとともに、電池の現状に応じて常に最大限有効に活用するように制御することができる。
【0021】
しかし、図32に示す従来のシステム構成では、各電池セル111〜11nの内部抵抗値を求めることはできるものの、処理装置23と電池システム制御部40との間のデータ通信が間欠的になることから、各電池セル111〜11nの電圧データは周期がたとえば100ms以上の離散的データとなってしまう。
【0022】
この結果、瞬時もしくは一定時間積分平均された電圧、電流、温度などで構成されるテーブルを参照して各電池セル111〜11nの状態を検知できるようにするのに留まり、情報が多く詰まっている各電池セル111〜11nの内部インピーダンス特性を測定することはできない。
【0023】
また、図35に示す従来の測定回路によれば、掃引信号発生器50が必要であり、オンサイトの各セルについて図35のような測定回路を実装することはコスト的、スペース的にも実現は困難である。
【0024】
本発明は、これらの課題を解決するものであって、その目的は、電池を実際に使用している自動車や発電プラントや家庭用蓄電システムなどのオンサイトや、実負荷を所望の負荷状態に制御しながら電池の内部インピーダンス特性を測定し、電池の状態をリアルタイムで監視できる電池監視装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、
前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、
これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部、
とで構成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項2の発明は、
複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、
前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、
これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部と、
前記電池モジュールの負荷装置としての自動車の駆動系を構成しているアクセルの動きを監視し、その検出信号を前記電力/インピーダンス演算部と前記電池モジュール状態管理部に入力するアクセルワーク監視部、
とで構成されていることを特徴とする。
【0027】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の電池監視装置において、
前記電力/インピーダンス演算部は離散フーリエ変換または高速フーリエ変換を行い、その結果から所望の周波数領域における電池内部インピーダンス特性を示す等価回路定数を推定することを特徴とする。
【0028】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の電池監視装置において、
前記電力/インピーダンス演算部は、電池内部の反応時定数に応じてその時定数を最適に推定できる時間分解能と時間スパンで測定データを取得し、その時定数に支配的に関与していると思われる等価回路定数を推定することを特徴とする。
【0029】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電池監視装置において、
前記電力/インピーダンス演算部に、前記各電池セルの温度情報を付加することを特徴とする。
【0030】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の電池監視装置において、
前記実負荷に高周波成分が存在しないときには、前記実負荷と並列に高周波域を含んだ負荷を発生させる擬似負荷装置を接続することを特徴とする。
【0031】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の電池監視装置において、
前記実負荷をあらかじめ設定された所定の負荷プログラムにしたがって駆動制御する負荷制御部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
これらにより、電池を実際に使用する自動車やプラントなどのオンサイトや、実負荷を所望の負荷状態に制御しながら、電池の内部インピーダンス特性を測定でき、電池状態をリアルタイムで監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】電力/インピーダンス演算部24の具体例を示すブロック図である。
【図3】図2の等価回路パラメータ測定部24cの具体例を示すブロック図である。
【図4】電池のインピーダンス特性例図である。
【図5】図36の等価回路についての定数推定インピーダンス特性例図である。
【図6】図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図である。
【図7】a=4の相関係数Corr(i)のグラフである。
【図8】サンプルインピーダンス特性例図である。
【図9】他のサンプルインピーダンス特性例図である。
【図10】他のサンプルインピーダンス特性例図である。
【図11】矩形波パルスf(t)の特性例図である。
【図12】重み付けの具体例を示す説明図である。
【図13】重み付けで定数推定した結果例を示す説明図である。
【図14】図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図である。
【図15】定電流パルスの応答測定例図である。
【図16】ナイキストプロット例図である。
【図17】図36の等価回路における各回路定数の測定結果とその測定結果に基づき算出したフィッテング用のインピーダンス特性曲線の説明図である。
【図18】スパイク検出の有無によるサンプルインピーダンス特性の比較例図である。
【図19】図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図である。
【図20】インダクタンスL成分を補正するための処理の流れを説明するフローチャートである。
【図21】図20のフローチャートの手順で補正したスパイクありの波形データを等価回路フィッティングした結果例を示す説明図である。
【図22】電力/インピーダンス演算部24の他の具体例を示すブロック図である。
【図23】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図24】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図25】図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図である。
【図26】電池のインピーダンス特性例図である。
【図27】図26の電池の等価回路例図である。
【図28】広いフィッティング対象区間の説明図である。
【図29】推定定数に基づくインピーダンス特性例図である。
【図30】狭いフィッティング対象区間の説明図である。
【図31】再推定した定数に基づくインピーダンス特性例図である。
【図32】従来の二次電池を用いた電池システムの一例を示すブロック図である。
【図33】満充電された電池を高温状態に放置した場合のインピーダンス特性例図である。
【図34】高温状態で充放電を繰り返した場合におけるインピーダンス特性例図である。
【図35】二次電池の交流インピーダンスを測定する従来の測定回路の一例を示すブロック図である。
【図36】電池の等価回路例図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図32と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、電池監視装置20は、電池モジュール10を構成する複数n個の各電池セル111〜11nに対応して設けられている複数n個の電力/インピーダンス演算部241〜24nと、これら電力/インピーダンス演算部241〜24nの出力データが内部バス25を介して入力される電池モジュール状態管理部26と、負荷装置Lとしての自動車の駆動系を構成しているアクセルL1の動きを監視するアクセルワーク監視部27とで構成されている。
【0035】
負荷装置Lとしての自動車の駆動系は、アクセルL1とインバータL2とモータL3が実質的に直列接続されている。インバータL2は、電池モジュール10と直列に接続されていて、電池モジュール10からモータL3を回転駆動するのに必要な駆動電力が供給される。モータL3は、運転者がたとえばペダル操作するアクセルL1の動きに応じてインバータL2に供給される駆動電力量を制御することにより、運転者の意図する回転速度で回転するように緩急制御される。
【0036】
運転者のペダル操作に伴うアクセルL1の動きは、アクセルワーク監視部27で連続的に監視検出されていて、その検出信号は電池モジュール状態管理部26および内部バス25を介して各電力/インピーダンス演算部241〜24nに入力される。
【0037】
電力/インピーダンス演算部241〜24nには、それぞれに対応する各電池セル111〜11nから電圧信号が入力されるとともに、電流センサ12から電流信号が入力されている。
【0038】
ここで、運転者のペダル操作に伴うアクセルL1の動きは、各電池セル111〜11nの出力電圧波形および電流センサ12の出力電流波形に、広帯域の周波数成分を含む階段波的な立ち上がりや立ち下がりの変化を与えることになる。
【0039】
本発明では、これら広帯域の周波数成分を含む波形データを、電力/インピーダンス演算部241〜24nで離散フーリエ変換(DFT)または高速フーリエ変換(FFT)を行い、その結果から所望の周波数領域における等価回路定数を推定する。これにより、電池を実際に使用している自動車やプラントなどのオンサイトにおいて、電池の内部インピーダンス特性を測定でき、電池状態をリアルタイムで監視できる。
【0040】
電池モジュール状態管理部26は、各電力/インピーダンス演算部241〜24nで測定される電池モジュール10を構成する各電池セル111〜11nの瞬時電力情報および内部インピーダンス情報を取り込むとともに、これらのデータを外部バス30を介して上位の電池システム制御部40に伝送する。
【0041】
電池システム制御部40は、電池監視装置20から入力されるデータに基づき、現在の電池モジュール10の出力電圧で安定に負荷装置Lを駆動できるように電池モジュール10および負荷装置Lを制御するとともに、各電池セル111〜11nの瞬時電力量の変化動向や内部インピーダンス情報の変化動向などに基づいて各電池セル111〜11nの性能の推移状況を把握し、充電を促すアラームを発信したり、性能劣化の傾向を解析して電池モジュール10の交換時期予測データなども出力する。
【0042】
図2は、電力/インピーダンス演算部24の具体例を示すブロック図である。図2において、各電池セル111〜11nの電圧信号Vは、アンチエイリアスフィルタ24aを介してA/D変換器24bに入力され、A/D変換器24bの出力データは等価回路パラメータ測定部24cに入力される。
【0043】
電流センサ12からの電流信号Iは、アンチエイリアスフィルタ24dを介してA/D変換器24eに入力され、A/D変換器24eの出力データは等価回路パラメータ測定部24cに入力される。
【0044】
A/D変換器24b、24eは、電池モジュール状態管理部26→アクセル変化量検出部24f→クロック制御部24g→可変クロック発生部24hで構成され、アクセルワーク監視部27から検出出力されるアクセル変化信号に基づき生成される可変クロック系統により駆動される。これにより、発進、加速、高速走行、低速走行、減速、停止、後退、それらの緩急など、運転者のアクセルワークに基づいたクロックが生成されて、それぞれの状態における電圧信号Vおよび電流信号Iがデジタルデータに変換される。
【0045】
なお、A/D変換器24b、24eのサンプリングクロック周波数は、各電池セル111〜11nの内部インピーダンスを測定したい周波数帯域に応じて変更することもできる。たとえば1kHzまでの内部インピーダンスを測定する場合は、サンプリングクロック周波数を2Ksample/sとし、アンチエイリアスフィルタ24a、24dの低域通過帯域を1kHz以下とする。
【0046】
等価回路パラメータ測定部24cには、測定しようとしている各電池セル111〜11nの等価回路パターンなどの等価回路の情報が格納されている等価回路情報格納部24iが接続されている。等価回路パラメータ測定部24cで測定された等価回路の各パラメータは、内部バス25を介して電池モジュール状態管理部26に取り込まれる。
【0047】
A/D変換器24b、24eの出力データは、電力測定部24jにも入力される。これにより、電力測定部24jは各電池セル111〜11nの瞬時電力を測定し、測定結果を電力情報格納部24kに格納する。電力情報格納部24kに格納された電力情報は、内部バス25を介して電池モジュール状態管理部26に取り込まれる。
【0048】
図3は、図2の等価回路パラメータ測定部24cの具体例を示すブロック図である。A/D変換器24b、24eの出力データは、波形データ記憶部c1に逐次格納される。
【0049】
DFT演算部c2は、波形データ記憶部c1に逐次格納される波形データを離散フーリエ変換し、電圧信号の離散フーリエ変換結果を電流信号の離散フーリエ変換結果で除算することによりインピーダンスを演算し、演算されたインピーダンスデータをインピーダンスデータ記憶部c3に格納する。なお、波形データの形態によっては、DFT演算部c2に代えてFFT演算部を用いることにより、演算処理の高速化が図れる。
【0050】
回路定数推定演算部c4は、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータに基づき、予め指定された等価回路モデルにおいて、定数フィッティングを行う。回路定数推定演算部c4で推定演算された回路定数は、たとえば図36に示した等価回路の場合、R4とL4は不変回路定数記憶部c5に格納され、その他のR1、R2、C2、R3、C3は回路定数記憶部c6に格納される。
【0051】
インピーダンス推定演算部c7は、任意の周波数におけるインピーダンスを出力する。インピーダンスデータが実在する周波数領域については、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータをそのまま出力する。インピーダンスデータが実在しない周波数領域については、不変回路定数記憶部c5および回路定数記憶部c6に格納されている回路定数に基づき推定演算し、その演算結果を出力する。
【0052】
解析条件記憶部c8には、外部から解析条件が格納される。解析条件は主に各演算部における演算条件をあらわすが、基準測定かシステム搭載時測定かの情報も含む。
【0053】
近年、電池に対して定電圧や定電流で正弦波を印加してインピーダンス特性を求め、充放電の温度特性や充電残量や性能劣化の度合などを推定して電池の状態を把握する研究が盛んに行われている。
【0054】
電池が自動車などのシステムに組み込まれる前の単体の状態では、整備された測定環境でインピーダンス測定が行えるが、システムに組み込まれてしまうと、システム上の制約などにより、十分なインピーダンス測定ができない場合がある。特に、自動車の駆動源として搭載された場合には、システム側のサンプルレートが不十分で、高い周波数領域がサンプルできないことが想定される。この場合、予め測定した測定範囲相当での比較ができなくなってしまう。
【0055】
図4は電池のインピーダンス特性例図であり、(A)は正弦波を周波数範囲1Hz〜2.5kHzで掃引するとともに、各測定周波数点で十分なサンプルレートを確保しながら測定した結果を示している。以降、(A)を基準特性とする。
【0056】
(B)は(A)の基準特性から周波数範囲1〜50Hzを切り出したものである。これは、電池をたとえば自動車システムに搭載した場合の制約により、高周波数領域が測定できない場合を想定している。(A)に表示されている虚軸の+側(グラフの下半分)は電池のL(インダクタンス)の情報を含む領域であるが、(B)ではその部分が完全に欠落している。
【0057】
電池のインダクタンスについては、構造的な特性であり、電極や電解溶液の劣化などでは経時変化しないとする考えがある。この考えに基づけば、(A)の基準特性から予め等価回路定数を求め、経時変化しない定数については、電池をシステム搭載後も、これらの定数を使用できる。
【0058】
(C)は(A)の基準特性を、図36の等価回路モデルに基づき定数フィッティングして求めたR1,R2,R3,C2,C3,L4,R4から導き出したインピーダンス特性曲線である。フィッティングは公知の演算式に基づいて行うことができる。
【0059】
(D)は(B)で推定した回路定数R1,R2,R3,C2,C3と予め取得したL4,R4を用いて、図36の等価回路モデルに基づき定数フィッティングして求めた結果から導き出したインピーダンス特性曲線である。(D)のインピーダンス特性曲線は、(C)のインピーダンス特性曲線とほぼ等しくなっている。すなわち、(B)で推定した回路定数R1,R2,R3,C2,C3と予め取得したL4,R4を用いることにより、(A)の基準特性に相当する周波数範囲におけるインピーダンス特性を推定することができる。
【0060】
上記実施例では等価回路モデルに不変回路定数を与えることによりインピーダンス推定を行っているが、等価回路上に不変回路定数を与えるのではなく、不変回路定数から時系列データを作り出し、それを測定した時系列データに足しこんだ上で、他の回路定数を推定するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施例ではL成分は低い周波数領域には影響しないという前提で定数推定を行っている。よって、定数推定時の等価回路モデルには不変回路定数L4,R4を含まず、インピーダンス推定時にのみ不変回路定数L4,R4を使用している。ところが、電池の特性によってはL成分が低い周波数領域にも影響を及ぼす可能性がある。その場合には、定数推定時の等価回路に不変回路定数L4,R4を含んだ上で定数推定するようにしてもよい。
【0062】
ところで、電池の等価回路モデルの選択にあたっては、予め、測定対象とする電池固有の特性や測定周波数範囲を認識した上で適切な等価回路モデルを選択しないと、図5のインピーダンス特性例図に示すように実物とはかけ離れた定数推定結果となる場合がある。
【0063】
図5は、図36の等価回路について、同じインピーダンスデータから異なる周波数範囲のデータを抽出し、定数推定を行った結果である。(A)は0.1Hz以上を抽出した結果であり、定数フィッティングにより導き出したインピーダンス特性曲線と、実際のインピーダンス特性が一致している。
【0064】
これに対し、(B)は1.0Hz以上を抽出した結果であって、定数フィッティングにより導き出したインピーダンス特性曲線から大きく外れている。これは、実物はワールブルグ素子を含んでいるにもかかわらず、データにはその特性が顕著に現れていないことにより、局所解に陥っていると推測できる。このように、同じ等価回路モデルでも、定数推定に用いるインピーダンスの周波数範囲が異なると、全く異なる結果が得られることがある。
【0065】
このような不都合は、図6に示すように構成される等価回路パラメータ測定部24cを用い、インピーダンスデータの特徴に基づいて最適な等価回路モデルを選択することにより回避でき、回路定数推定精度の向上が図れる。
【0066】
図6は等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。図6において、回路モデル選択部c9は、DFT演算部c2で推定されインピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータの特徴に基づき、最適な等価回路モデルを選択する。回路定数推定演算部c4は、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータおよび回路モデル選択部c9で選択された最適な等価回路モデルに基づき、各回路定数の推定演算を行う。
【0067】
一般的に使用される電池の等価回路モデルは、n段のRC並列回路と、1段のLR並列回路と、ワールブルグ素子とで構成されている。そこで、回路モデル選択部c9は、このような等価回路モデルの具体的な構成について、以下の手順で順次決定する。
1)ワールブルグ素子の有無
2)LR並列回路の有無
3)RC並列回路の段数
【0068】
1)まず、ワールブルグ素子については、低周波数側のインピーダンス実軸・虚軸の相関係数を用いて、有無を判断する。たとえば、Corr<−0.99であればワールブルグ有と判定する。相関係数は下式より算出する。
【0069】
【0070】
ここで、Corr(i)はi番目インピーダンスデータ周辺の相関係数、ZrealjおよびZimgjはj番目インピーダンスデータの実部・虚部をあらわす。
【0071】
【0072】
【0073】
は、各々i-a〜i+a番目インピーダンスの実部・虚部データの平均値をあらわす。なお、インピーダンスデータは周波数の昇順に並んでいるものとする。
【0074】
図7は、a=4の相関係数Corr(i)のグラフである。今回のサンプルデータではワールブルグ「有」と判断される。
【0075】
2)次に、LR並列回路の有無を判定する。高周波数測のインピーダンス虚軸が+値であれば、LR並列回路が必要と判断する。図8のサンプルインピーダンス特性図の場合には、LR並列回路「有」と判断される。
【0076】
3)最後にRC並列回路の段数を決定する。全データにおいて相関係数が−から+方向に、Corr(i)=−0.95を跨いだ回数で判定する。ただし、インピーダンスの虚軸が+領域で跨いでいる場合は、LRの特性とみなしてカウントしない。図9(A)に示すサンプルデータでは、a,b,cの3点で相関係数が−0.95を跨いでいるが、c点は(B)に示すようにインピーダンスの虚軸が320Hzを越えた+領域で跨いでいるのでカウントせず、RC並列回路は2段と判断する。
【0077】
これらにより、回路定数推定演算部c4で推定演算される各回路定数の推定精度の向上が図れる。
【0078】
十分な測定環境下で電圧・電流データを取得できれば、インピーダンスの特徴を抽出することは可能である。しかし、たとえば電池を自動車に搭載した状態では、ノイズなどの影響で必ずしも良好な測定結果が得られるとは限らない。
【0079】
その場合には、複数の等価回路モデル候補を選択した上で並列に定数推定演算を行い、対象インピーダンスデータとの誤差が最小なものを最終的な出力としてもよい。
【0080】
さらに、繰り返し演算中において、随時対象インピーダンスデータとの誤差を算出し、基準値を満たさないもの、または、明らかに収束していないものについては、演算を打ち切って他のモデルを選択するという機能を設けてもよい。
【0081】
また、回路定数推定演算部c4で推定演算を行う過程において、周波数領域や測定精度などの条件に応じて各データの重み付けを行うことにより、定数推定精度の向上を図ることもできる。
【0082】
インピーダンス特性を単一正弦波の掃引測定から得る場合は、各周波数単位で、A/D変換器のA/D分解能を考慮した振幅が設定できる。これに対し、パルスのような複数の周波数成分を含む波形の場合には、各周波数成分の振幅を制御することはできない。この場合、ある周波数成分においては、A/D分解能が足りず、正しいインピーダンスを得ることができない。さらに、このデータを用いて等価回路モデルの定数推定を行うと、誤差の大きい推定結果となる可能性がある。
【0083】
図10のサンプルデータにおいて、(A)は図36の等価回路に対応した前述図4(C)と同じものであり、正弦波形入力応答から得られたインピーダンス特性と定数フィッティングより得られたインピーダンス特性曲線である。正弦波を周波数範囲1Hz〜2.5kHzで掃引するとともに、各測定周波数点で十分なサンプルレートを確保しながら測定した結果であり、これらの回路定数を真値とする。
【0084】
(B)は、パルス入力応答から得られた結果である。ただし、R4,L4は正弦波形入力応答で得られた定数を用いている。サンプルレート1kHzで測定しており、1〜450Hzの周波数域で離散フーリエ変換を行っている。サンプルレートが低いため、高い周波数側でみえるはずのインダクタンス成分がキャプチャされていない。また、周波数が高いほど結果がばらついている。これらのばらつきは、パルスに含まれる各周波数成分の振幅とA/D変換器のA/D分解能が関係していると考えられる。
【0085】
ここで、矩形波パルスf(t)をフーリエ級数展開し、波形に含まれる周波数成分を考える。矩形波パルスf(t)は図11のように表せる。
【0086】
【0087】
【0088】
ただし、Wはパルス幅、Tは周期、mは0以上の整数である。
上式で示されるように、周波数によっては振幅amがA/D分解能に対して極めて小さくなってしまうため、この周波数近辺で結果が大きくばらつく可能性がある。
【0089】
このばらつきにより等価回路定数の推定精度が損なわれるおそれがあるが、ばらつきの影響を抑制するためには、何らかの重み付け計算が有効であると考えられる。
【0090】
具体例として、回路定数の推定にGauss-Newton法を用いる場合を考える。回路定数の真値からのずれを、ΔR2,ΔC2,ΔR3,ΔC3とすると、以下のように表せる。
【0091】
【0092】
ΔZnはn番目の実測インピーダンスと現在の回路定数から計算して得られた同周波数におけるインピーダンスとの差である。Jはヤコビアン、Tは行列の転置をあらわす。上記計算を、回路定数が収束するまで繰り返し行う。ここで、重み付けp(j)を導入し、以下の式で回路定数の推定演算を行う。
【0093】
【0094】
振幅が小さい周波数域では重み付けを小さくし、逆に振幅が大きい周波数域では重み付けを大きくすることにより、ばらつきの影響を抑える効果が期待できる。
【0095】
入力応答がパルスに近い形状の場合、フーリエ級数の性質から、たとえば図12のような重み付けが有効と考えられる。ただし、kは0以上の整数、f0はDFT演算区間を一周期とした場合の周波数、fjはf0のj次周波数を表す。
【0096】
【0097】
図13は、上記の重み付けで定数推定した結果例を示す説明図である。(A)はサンプルインピーダンス特性例図を示し、(B)は重み付けあり・なしで推定した場合における定数の真値からのずれを示している。全ての定数において、真値に近い定数推定結果になっている。
【0098】
図14は等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図であり、図3および図6と共通する部分には同一の符号を付けている。図14の回路定数推定演算部c4は、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータおよび解析条件記憶部c8から設定される重み付け関数や周波数範囲などに基づき、各データの重み付け演算などを行う。
【0099】
これらにより、前述のように、各回路定数推定精度の向上を図ることができる。
【0100】
インダクタンス成分が大きい電池に対してパルス状の立ち上がりが速い電流(電圧)を印加すると、スパイク状の電圧(電流)が発生する。このとき、A/D変換器のサンプルレートが十分に高くないと、サンプルタイミングによっては、図15に示すように、このスパイク部分がサンプルされたり、されなかったりする。
【0101】
図15は定電流パルスの応答測定例図であり、(A)は電圧スパイク部分がサンプルされた場合を示し、(B)は電圧スパイク部分がサンプルされない場合を示している。
【0102】
電池のインピーダンスを算出する場合、スパイク部分がサンプルされた場合とサンプルされなかった場合では、インピーダンスの算定結果が著しく異なり、再現性のない結果が得られてしまう。
【0103】
図16は、各々のデータから求めたナイキストプロット例図である。「-△-」は、正弦波形入力から得られた結果である。前述のように各々十分なサンプルレートを確保して各周波数を一波ずつ掃引測定した結果である。なお、正弦波形は十分に滑らかであるため、パルス入力でみられるようなスパイク応答は発生してない。以降、この「-△-」の結果を真値とする。
【0104】
「-□-」は、スパイクが検出されたデータに対して離散フーリエ変換を行った結果である。スパイク部分をキャプチャするために十分なサンプレートが確保されていないため、全体的に「-△-」の真値から大きく外れてしまっている。
【0105】
「-×-」は、スパイクが検出されなかったデータに対して離散フーリエ変換を行った結果である。スパイク部分がキャプチャされなかったため、虚軸方向に対して下に伸びることはなく、インダクタンス成分が欠落している。これらにより、スパイクが検出された場合とされなかった場合とで、特性の現れ方が著しく異なることが明らかである。
【0106】
電池のインダクタンスは構造的に決まるものであり、電極や溶液劣化で経時変化しないとする考えがある。前述のように、スパイクは電池のインダクタンスに起因するものであるが、電池の劣化診断においては、R,C成分のみ必要とし、L成分は測定できなくてもよい場合がある。そのような場合、グラフ虚軸のマイナス側(グラフ上部)の情報が正確かつ十分にあれば、電池のR(抵抗)およびC(コンダクタンス)を推定でき、電池の劣化診断が行える。
【0107】
図17は、正弦波を所定の周波数範囲1Hz〜2.5kHzで掃引するとともに各測定周波数点で十分なサンプルレートを確保して測定したインピーダンス特性およびこれを図36の等価回路モデルで定数フィッティングして得た定数R1,R2,R3,C2,C3,L4,R4から導き出したインピーダンス特性曲線である。以降、これらの測定結果を真値とする。
【0108】
図18はスパイク検出の有無によるサンプルインピーダンス特性の比較例図である。(A)はパルス応答でスパイクが検出されたデータを示し、(B)はパルス応答でスパイクが検出されなかったデータを示している。ただし、インダクタンスL成分が検出されなかったデータに対しては、R4,L4を等価回路モデルから外している。
【0109】
(C)はスパイク検出の有無による各定数の真値からのずれを示している。R,Cにおいては、スパイクが検出されなかったデータに基づいてフィッティングを行うことにより、真値に近い結果が得られる。すなわち、サンプルレートが不十分でも、スパイクなしの波形であれば、R,Cの回路定数を推定することが十分可能であることを示しているが、再現性よくスパイクのない波形を取得することは困難である。
【0110】
そこで、低サンプルレートで測定されたパルス応答データからL成分がみえるデータを補正し、等価回路のR,Cを再現性よく高精度に推定することを検討する。
【0111】
図19は等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図であり、図3と図6および図14と共通する部分には同一の符号を付けている。図19のスパイクデータ補正部c10は、波形データ記憶部c1に格納されている波形データに対してスパイク補正を行う。回路定数推定演算部c4は、インピーダンスデータ記憶部c3に格納されているインピーダンスデータおよび解析条件記憶部c8から設定される解析条件などに基づき、定数フィッティングで回路定数を推定および得られた定数から導き出されたインピーダンス特性曲線の算出を行う。回路定数推定演算部c4の演算結果は、回路定数記憶部c6に格納される。
【0112】
図20は、スパイクデータ補正部c10によるスパイクありの波形データのインダクタンスL成分を補正するための処理の流れを説明するフローチャートである。図20において、i(t)はt番目の電流サンプリングデータ、v(t)はt番目の電圧サンプリングデータである。srは、スパイクを検出するための係数である。トリガは、パルスの立ち上がりおよび立ち下がりを検出するためのトリガレベルである。
【0113】
ステップS1でt=1のデータ長の波形データを選択し、ステップS2でパルスの立ち上がりか否かを判断するためにT=tとしてi(t)>トリガの条件が成立するか否かを判断する。この条件が成立すればパルスの立ち上がりであると判断し、T=tとしてフラグ=FALSEとするステップS3の処理に移行する。
【0114】
そして、ステップS4でスパイクが検出されたか否かを判断するためにv(t)>sr*v(t+1)の条件が成立するか否かを判断する。この条件が成立すればスパイクが検出されたと判断し、フラグ=TRUE、v(t)=v(t−1)、i(t)=i(t−1)とするステップS5の処理に移行する。続いて、t=Tのデータ長の波形データを選択するステップS6の処理に移行する。ステップS4の条件が成立しなければスパイクなしと判断して直接ステップS6の処理に移行する。
【0115】
ステップS7でパルスの立ち下がりか否かを判断するためにi(t)<トリガの条件が成立するか否かを判断する。この条件が成立すればパルスの立ち下がりであると判断し、さらにステップS8でスパイク補正の有無を判断するためにフラグ=TRUEか否かを判断する。この条件が成立すればスパイク補正ありと判断し、v(t)=v(t−1)、i(t)=i(t−1)とするステップS9の処理に移行して、一連の処理を終了する。なお、ステップS8の条件が成立しなければ、スパイク補正なしとして一連の処理を終了する。
【0116】
図21は、図20のフローチャートの手順で補正したスパイクありの波形データを等価回路フィッティングした結果例を示す説明図である。(A)はサンプルインピーダンス特性例図を示し、(B)は補正の前後における定数の真値からのずれを示している。補正後の定数は、全ての定数で真値に近い結果になっている。
【0117】
図22は、電力/インピーダンス演算部24の他の具体例を示すブロック図である。図22のブロック図では、各電池セル111〜11nからの電圧信号Vおよび電流信号Iに加えて温度信号Tも取り込んでいる。
【0118】
図示しない温度センサから出力される温度信号Tは、アンチエイリアスフィルタ24mを介してA/D変換器24nに入力され、A/D変換器24nの出力データは等価回路パラメータ測定部24cに入力される。
【0119】
電池のインピーダンス特性は、温度環境によって大きく変化する。そのため、たとえば「劣化―充電残量―インピーダンス」をテーブル化する場合には、温度パラメータは不可欠となる。したがって、図22に示すように、各電池セル111〜11nの温度モニタ結果を電力/インピーダンス演算部24に付加することは有効である。
【0120】
また、図1の実施例ではアクセルL1とインバータL2とモータL3が実質的に直列接続されている自動車の駆動系を実負荷として用い、運転者のペダル操作に伴うアクセルL1の動きによる各電池セル111〜11nの出力電圧波形および電流センサ12の出力電流波形の階段波的な立ち上がりや立ち下がりの変化に基づきインピーダンス特性推定を行う例を示しているが、実負荷に高周波成分が存在しないときには、図23に示すように実負荷と並列に擬似負荷装置DLを接続して高周波域を含んだ負荷を発生させることにより、高域までインピーダンス推定することができる。
【0121】
擬似負荷装置DLの出力波形としては、矩形波、三角波などが考えられる。その出力振幅は、たとえば電池放電レートを考慮して様々な条件で実施できるようにすればよい。
【0122】
なお、本発明で用いる電力/インピーダンス演算部24は、半導体集積回路化技術を用いることにより超小型にパッケージ化でき、たとえば自動車に搭載される電池モジュールの各電池セルに取り付ける場合にもきわめて微小のスペースが確保できればよい。
【0123】
図24も本発明の他の実施例を示すブロック図であり、図1と共通する部分には同一の符号を付けている。図24において、負荷制御部LCは、たとえば負荷装置Lとしての自動車の駆動系をあらかじめ設定された所定の負荷プログラムにしたがって駆動制御する。
【0124】
これにより、実際の運転では実現困難な走行状態などを再現でき、それらの負荷変動が電池モジュール10に与える影響を電力/インピーダンス演算部24で測定することができる。
【0125】
図25は図2の等価回路パラメータ測定部24cの他の具体例を示すブロック図であり、図6と共通する部分には同一の符号を付けている。図25において、演算部には電流波形解析部c12と推定定数演算部c13が追加されている。
【0126】
図26に示すようなインピーダンス特性をもつ電池のインピーダンス特性を、図25に示す等価回路パラメータ測定部24cが組み込まれた装置を用いて測定する手順について説明する。なお、等価回路は図27を使用するものとする。
【0127】
図26によれば、電池は周波数ごとに特徴あるインピーダンス特性を持つことが明らかである。1kHz以上ではインダクタンス、1Hz〜1kHzではコンダクタンス、1Hz以下ではCPE(Constant Phase Element)すなわちf-pに比例した特性が支配的に見えている。なお、CPEは以下の式であらわされる。
【0128】
【0129】
図24および図25において、
1)たとえば負荷装置Lとしての自動車の駆動系から電池モジュール10に適切な電流負荷が与えられる。
2)アクセルワーク監視部27は、アクセル変化信号に基づいて負荷の発生状態を監視し、適当なタイミングで電池モジュール状態管理部26を介して各電力/インピーダンス演算部24へ測定開始命令を出力する
【0130】
3)各電力/インピーダンス演算部24は、測定が終了すると、電流波形解析部c12により電流波形データの形状解析を行い、解析条件記憶部c8に設定された条件(たとえば放電パルス幅が500±10msでかつ放電遮断後の状態が10sec以上)を満たすデータのみを波形データ記憶部c1に記憶する。
【0131】
設定された所定条件を満たす波形データが得られるまで、1)〜3)を繰り返す。
なお、図2の構成ではサンプルレートの条件はアクセルワーク監視部27のアクセル変化信号に基づき設定される例を示しているが、解析条件記憶部c8に設定してもよい。
【0132】
4)データ取得後、推定定数演算部c13は波形データ記憶部c1から前述の設定条件を満たす波形データを読み出し、以下のような推定定数演算を行う。なお、使用する等価回路モデルは回路モデル選択部c9で選択されているものとする。
【0133】
4−1)まず、図28に示すように、設定された所定条件を満たす波形データの全区間をフィッティング対象として、R1,R2,C2,R3,C3,CPE(pとT)を推定する。本実施例では、測定パルスとしてパルス幅500msを使用しているため、フィッティング対象となる波形のデューティー比は0.05以下となる。これは1Hz以下の特徴的特性、すなわち、CPEのpとTを得ることが目的である。
【0134】
図29の実線は、このようにして求めた推定定数に基づくインピーダンス特性である。「+」でプロットした特性は、交流重畳波形を印加して測定して得た特性である。後者を真値とすると、低周波側は精度よく推定できているが、高周波側はずれていることがわかる。
これは、時定数が小さい特性、変化が顕著に見られる微小時間に対して、図29の場合は10秒以上というはるかに長い時間波形でフィッティングしているため、時間サンプル数の多い0.1Hz〜1Hz近辺の特性が重点的にフィッティングされた結果、微小時間が重要な高周波側は相対的に誤差が大きくなっているためと考えられる。
【0135】
4−2)次に、フィッティングの対象範囲として、図30に示すように設定された所定条件を満たす波形データの0〜1sの区間を抽出し、4−1)で求めたCPE(pとT)値を固定定数として、R1,R2,C2,R3,C3を再推定する。このときのフィッティング対象となる波形のデューティー比は、0.5程度となる。これは、1Hz以上の特徴的特性、すなわち、RとCを得ることが目的である。
【0136】
なお、R5,L5は、電池の反応系には依存せず、電池の構造で決まる値であるため、固定値とした。
【0137】
また、定数の初期値は適当なものでよい。ただし、解の収束度合いや、劣化診断の現実的な運用を考慮すると、劣化前特性における定数値を用いることがのぞましい。
【0138】
図31は、再推定した定数に基づくインピーダンス特性例図である。「+」でプロットした特性と実線で示す特性との乖離を図29と比較すると、大幅に改善されて小さくなっている。これは、時定数が小さい特性、変化が顕著に見られる微小時間に対して、図29の場合は10秒以上というはるかに長い時間波形でフィッティングしているため、時間サンプル数の多い0.1Hz〜1Hz近辺の特性が重点的にフィッティングされた結果、微小時間が重要な高周波側は相対的に誤差が大きくなっていると考えられる。
【0139】
5)4)で得られた定数は電池モジュール状態管理部26に転送される。電池モジュール状態管理部26は、定数から電池の劣化状態を判定し、結果を電池システム制御部40に通知する。
【0140】
このように、電池内部の反応時定数に応じてその時定数を最適に推定できる時間分解能と時間スパンで測定データを取得し、その時定数に支配的に関与していると思われる等価回路素子の定数を推定することを時定数毎に行うことで、等価回路定数の推定精度の向上をはかることができる。
【0141】
なお、等価回路定数のフィッティングには、勾配法、発見法、直接法など、一般的な最適解探索アルゴリズムを用いることができる。
【0142】
また、図24で設けている負荷制御部LCは、負荷装置Lとしての自動車の駆動系をあらかじめ設定された所定の負荷プログラムにしたがって駆動制御できることから、擬似負荷装置DLを有する図23にも有効である。
【0143】
また、上記各実施例では、自動車に搭載される電池モジュールの各電池セルの内部インピーダンスを測定する例について説明したが、自動車以外の発電プラントや家庭用蓄電システムなどに設けられる蓄電池の監視にも有効である。
【0144】
以上説明したように、本発明によれば、電池を実際に使用している自動車や発電プラントや家庭用蓄電システムなどのオンサイトや、実負荷を所望の負荷状態に制御しながら電池の内部インピーダンス特性を測定し、電池状態をリアルタイムで監視できる電池監視装置が実現できる。
【符号の説明】
【0145】
10 電池モジュール
111〜11n 電池セル
12 電流センサ
20 電池監視装置
241〜24n 電力/インピーダンス演算部
25 内部バス
26 電池モジュール状態管理部
27 アクセルワーク監視部
30 外部バス
40 電池システム制御部
L 負荷装置(駆動系)
L1 アクセル
L2 インバータ
L3 モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、
前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、
これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部、
とで構成されていることを特徴とする電池監視装置。
【請求項2】
複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、
前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、
これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部と、
前記電池モジュールの負荷装置としての自動車の駆動系を構成しているアクセルの動きを監視し、その検出信号を前記電力/インピーダンス演算部と前記電池モジュール状態管理部に入力するアクセルワーク監視部、
とで構成されていることを特徴とする電池監視装置。
【請求項3】
前記電力/インピーダンス演算部は離散フーリエ変換または高速フーリエ変換を行い、その結果から所望の周波数領域における電池内部インピーダンス特性を示す等価回路定数を推定することを特徴請求項1または請求項2に記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記電力/インピーダンス演算部は、電池内部の反応時定数に応じてその時定数を最適に推定できる時間分解能と時間スパンで測定データを取得し、その時定数に支配的に関与していると思われる等価回路定数を推定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池監視装置。
【請求項5】
前記電力/インピーダンス演算部に、前記各電池セルの温度情報を付加することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電池監視装置。
【請求項6】
前記実負荷に高周波成分が存在しないときには、前記実負荷と並列に高周波域を含んだ負荷を発生させる擬似負荷装置を接続することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電池監視装置。
【請求項7】
前記実負荷をあらかじめ設定された所定の負荷プログラムにしたがって駆動制御する負荷制御部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電池監視装置。
【請求項1】
複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、
前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、
これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部、
とで構成されていることを特徴とする電池監視装置。
【請求項2】
複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置であって、
前記各電池セルにそれぞれ設けられて前記各電池セルから電圧信号および電流信号が入力され、前記各電池セルの瞬時電力および内部インピーダンス特性を測定する複数の電力/インピーダンス演算部と、
これら電力/インピーダンス演算部の出力データが内部バスを介して入力される電池モジュール状態管理部と、
前記電池モジュールの負荷装置としての自動車の駆動系を構成しているアクセルの動きを監視し、その検出信号を前記電力/インピーダンス演算部と前記電池モジュール状態管理部に入力するアクセルワーク監視部、
とで構成されていることを特徴とする電池監視装置。
【請求項3】
前記電力/インピーダンス演算部は離散フーリエ変換または高速フーリエ変換を行い、その結果から所望の周波数領域における電池内部インピーダンス特性を示す等価回路定数を推定することを特徴請求項1または請求項2に記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記電力/インピーダンス演算部は、電池内部の反応時定数に応じてその時定数を最適に推定できる時間分解能と時間スパンで測定データを取得し、その時定数に支配的に関与していると思われる等価回路定数を推定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池監視装置。
【請求項5】
前記電力/インピーダンス演算部に、前記各電池セルの温度情報を付加することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電池監視装置。
【請求項6】
前記実負荷に高周波成分が存在しないときには、前記実負荷と並列に高周波域を含んだ負荷を発生させる擬似負荷装置を接続することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電池監視装置。
【請求項7】
前記実負荷をあらかじめ設定された所定の負荷プログラムにしたがって駆動制御する負荷制御部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電池監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図11】
【図14】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図32】
【図35】
【図36】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図21】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図6】
【図11】
【図14】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図32】
【図35】
【図36】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図21】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2013−50433(P2013−50433A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225925(P2011−225925)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
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