説明

電池

【課題】サイクル特性および安全性を向上させることができる電池を提供する。
【解決手段】正極21と負極22とがセパレータ23を介して対向配置されている。負極22は、負極集電体22Aにリチウム金属層22Bが設けられた構成を有している。単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率は、1.05以上3.00以下であり、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みは、平均で10μm以上40μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質としてリチウム金属を用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(Videotape Recorder;ビデオテープレコーダ),デジタルスチルカメラ,携帯電話あるいはラップトップコンピューターに代表されるポータブル電子機器が多く登場し、それらの小型軽量化が図られている。それに伴い、これらの電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池について、エネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。中でも、負極に炭素材料を用い、正極にリチウム(Li)と遷移金属とを含む複合酸化物を用い、電解液に炭酸エステルを用いたリチウムイオン二次電池は、従来の鉛電池あるいはニッケルカドミウム電池と比べて、大きなエネルギー密度を得ることができるので実用化されている。
【0003】
また、高エネルギー密度を得ることができる二次電池としては、負極にリチウム金属を用い、負極反応にリチウム金属の析出および溶解反応のみを利用したリチウム金属二次電池がある。リチウム金属二次電池は、リチウム金属の理論電気化学当量が2054mAh/cm3 と大きく、リチウムイオン二次電池で用いられる黒鉛の2.5倍にも相当するので、リチウムイオン二次電池を上回る高いエネルギー密度を得られるものと期待されている。これまでも、多くの研究者等によりリチウム金属二次電池の実用化に関する研究開発がなされている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】ジャンポール・ガバノ(Jean-Paul Gabano)編,「リチウム・バッテリーズ(Lithium Batteries )」,ロンドン,ニューヨーク,アカデミック・プレス(Academic Press),1983年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなリチウム金属二次電池では、充電過程において負極にリチウムがデンドライト状に析出しやすくなり、デンドライトの先端で電流密度が非常に高くなる。このため、電解液の分解などによりサイクル特性が低下してしまうという問題があった。また、リチウム金属は活性が高いので、安全性を高めることが重要であった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サイクル特性および安全性を向上させることができる電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電池は、正極および負極と共に電解液を備えたものであって、正極は、正極集電体と、この正極集電体に設けられた正極活物質層とを有し、負極は、負極集電体と、この負極集電体に設けられたリチウム金属層とを有し、単位面積あたりの正極の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極の容量の比率(完全充電時における単位面積あたりの負極の容量/単位面積あたりの正極の容量)は、1.05以上3.00以下であり、完全充電時におけるリチウム金属層の片面の厚みは、平均で10μm以上40μm以下のものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池によれば、単位面積あたりの正極の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極の容量の比率を1.05以上とし、完全充電時におけるリチウム金属層の片面の厚みを平均で10μm以上とするようにしたので、サイクル特性を向上させることができる。また、単位面積あたりの正極の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極の容量の比率を3.00以下とし、完全充電時におけるリチウム金属層の片面の厚みを平均で40μm以下とするようにしたので、安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の一実施の形態に係る二次電池の一構成例を分解して表すものである。この二次電池は、正極リード11および負極リード12が取り付けられた巻回電極体20をフィルム状の外装部材30の内部に収納した構成を有している。
【0010】
正極リード11および負極リード12は、外装部材30の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード11および負極リード12は、例えば、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0011】
外装部材30は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されている。外装部材30は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体20とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。
【0012】
なお、外装部材30は、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0013】
図2は、図1に示した巻回電極体20のII−II線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体20は、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ24により保護されている。
【0014】
正極21は、例えば、正極集電体21Aと、この正極集電体21Aの両面あるいは片面に設けられた正極活物質層21Bとを有している。正極集電体21Aには、長手方向における一方の端部に正極活物質層21Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に正極リード11が取り付けられている。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。
【0015】
正極活物質層21Bは、正極活物質として、例えば電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電材およびポリフッ化ビニリデンなどの結着材を含んでいてもよい。
【0016】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、リチウムと遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。高いエネルギー密度を得ることができるからである。このようなリチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、あるいはこれらを含む固溶体(Li(Nix Coy Mnz )O2 ))(x,yおよびzの値は0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1である。)、あるいはマンガンスピネル(LiMn2 4 )などのリチウム複合酸化物、またはリン酸鉄リチウム(LiFePO4 )などのオリビン構造を有するリン酸化合物が挙げられる。
【0017】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン,酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物、二硫化鉄,二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
【0018】
正極活物質層21Bは、また、例えば導電材を含んでおり、必要に応じて更に結着材を含んでいてもよい。導電材としては、例えば、黒鉛,カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。結着材としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。
【0019】
負極22は、負極集電体22Aと、この負極集電体22Aの両面あるいは片面に設けられたリチウム金属よりなるリチウム金属層22Bとを有している。負極集電体22Bには、長手方向における一方の端部にリチウム金属層22Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に負極リード12が取り付けられている。負極集電体22Aは、例えば、銅などの金属材料により構成されている。
【0020】
この二次電池では、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率(完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量/単位面積あたりの正極21の容量)は、1.05以上3.00以下であり、また、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みは、平均で10μm以上40μm以下である。比率が低く、厚みが薄いと、サイクル特性が低下してしまうからである。また、比率が高く、厚みが厚いと、安全性が低下してしまうからである。
【0021】
なお、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率は、正極活物質層21Bとリチウム金属層22Bとが対向している領域における比率とする。また、正極21の容量は、充電容量を意味する。更に、完全充電とは、例えば、日本蓄電池工業会(電池工業会)の定めた指針の一つである「リチウム二次電池安全性評価基準ガイドライン」(SBA G1101)に記載され定義される「完全充電」を指す。また換言すれば、各電池の公称容量を求める際に用いた充電方法、標準充電方法、もしくは推奨充電方法を用いて充電した後の状態を指す。
【0022】
セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0023】
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電解液は、例えば、非水溶媒などの溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含有している。
【0024】
溶媒としては、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むことが好ましく、中でも、化1に示した環式炭酸エステル誘導体が望ましい。電解液の分解反応を抑制することができ、サイクル特性をより向上させることができるからである。環式炭酸エステル誘導体は、1種を単独で用いてよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0025】
【化1】

(R11,R12,R13およびR14は、メチル基,エチル基あるいはそれら少なくとも一部の水素をフッ素(F),塩素(Cl)若しくは臭素(Br)で置換した基、または水素、またはフッ素基、または塩素基、または臭素基を表す。R11,R12,R13およびR14のうちの少なくとも一つはハロゲンを有する基である。R11,R12,R13およびR14は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0026】
化1に示した環式炭酸エステル誘導体について具体的に例を挙げれば、化2の(1)から(27)に示した化合物などがある。
【0027】
【化2】

【0028】
溶媒としては、また化3の(1)に示した1,3−ジオキソール−2−オンあるいは化3の(2)に示した4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどの不飽和結合を有する環式炭酸エステルも好ましい。電解液の分解反応を抑制することができ、サイクル特性をより向上させることができるからである。溶媒に不飽和結合を有する環式炭酸エステルを含む場合には、その含有量は0.01質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの範囲内でより高い効果を得ることができるからである。不飽和結合を有する環状の炭酸エステルは、1種を単独で用いてよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0029】
【化3】

【0030】
溶媒は、これらの他にも、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、燐酸トリメチルが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で混合してもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0031】
電解質塩としては、化4に示した軽金属塩を含むことが好ましい。負極22の表面に安定な被膜を形成し、溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性などの電池特性を向上させることができるからである。化4に示した軽金属塩は、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0032】
【化4】

(R31は、化5,化6または化7に示した基を表し、R32は、ハロゲン,アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表し、X11およびX12は、酸素または硫黄をそれぞれ表し、M11は、遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、M11は、短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウムを表し、aは1から4の整数であり、bは0から8の整数であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1から3の整数である。)
【0033】
【化5】

(R41は、アルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。)
【0034】
【化6】

(R43,R44は、アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表す。R43,R44は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0035】
【化7】

【0036】
化4に示した軽金属塩としては、例えば、化8に示した軽金属塩が好ましい。
【0037】
【化8】

(R31は、化9,化10または化11に示した基を表し、R33は、ハロゲンを表し、M12は、リン(P)またはホウ素を表し、M21は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウム(Al)を表し、a1は1から3の整数であり、b1は0,2または4であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1から3の整数である。)
【0038】
【化9】

(R41は、アルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。)
【0039】
【化10】

(R43,R44は、アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表す。R43,R44は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0040】
【化11】

【0041】
化8に示した軽金属塩について具体的に例を挙げれば、化12の(1)に示したジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、化12の(2)に示したテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウム、化12の(3)に示したジフルオロビス[オキソラト−O,O’]リン酸リチウム、化12の(4)に示したジフルオロ[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、化12の(5)に示したビス[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、あるいは化12の(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムなどがある。
【0042】
【化12】

【0043】
電解質塩としては、また、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、またはLiN(CF3 SO2 2 ,LiN(C2 5 SO2 2 あるいはLiN(C4 9 SO2 )(CF3 SO2 )などの化13に示したリチウム塩、またはLiC(CF3 SO2 3 などの化14に示したリチウム塩、または化15に示した環状のイミド塩、または化16に示した環状のイミド塩も好ましい。種々の電池特性を向上させることができるからである。
【0044】
【化13】

(mおよびnは、1以上の整数である。)
【0045】
【化14】

(p,qおよびrは、1以上の整数である)
【0046】
【化15】

(M1は短周期型周期表における1A族元素,2A族元素またはアルミニウムを表す。R29は、炭素数2から5のアルキレン基、またはそれらの少なくとも一部の水素をフッ素で置換した基を表す。R29は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。tは、1, 2または3である。)
【0047】
【化16】

(M2は、短周期型周期表における1A族元素,2A族元素またはアルミニウムを表す。R30は、炭素数2から5のアルキレン基、またはそれらの少なくとも一部の水素をフッ素で置換した基を表す。R30は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。uは、1, 2または3である。)
【0048】
化15に示した環状のイミド塩および化16に示した環状のイミド塩としては、例えば、化17の(1)に示した1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、化17の(2)に示した1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム、化17の(3)に示した1,3−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウム、化17の(4)に示した1,4−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウム、あるいは化17の(5)に示したパーフルオロヘプタンニ酸イミドリチウムが挙げられる。これらの環状のイミド塩は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0049】
【化17】

【0050】
特に、LiPF6 と、化4に示した軽金属塩、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、化13に示したリチウム塩、化14に示したリチウム塩、化15に示した環状のイミド塩、および化16に示した環状のイミド塩からなる群のうちの少なくとも1種とを混合して用いることが好ましい。イオン伝導性を向上させることができると共に、サイクル特性などの電池特性を向上させることができるからである。
【0051】
電解質塩としては、これらの他にも、LiB(C6 5 4 、LiCH3 SO3 、LiCF3 SO3 、LiAlCl4 、LiSiF6 、LiCl、LiBr、LiB(OCOCF3 4 あるいはLiB(OCOC2 5 )などが挙げられ、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0052】
電解質塩の含有量(濃度)は、溶媒に対して、0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲外ではイオン伝導度の極端な低下により十分な電池特性が得られなくなる虞があるからである。そのうち、化4に示した軽金属塩の含有量は、溶媒に対して0.01mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内においてより高い効果を得ることができるからである。
【0053】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0054】
まず、例えば、正極活物質と、導電材と、結着材とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
【0055】
また、例えば、負極集電体22Aに、リチウム金属を張り付けることによりリチウム金属層22Bを形成し、負極22を作製する。
【0056】
次に、正極集電体21Aに正極リード11を取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード12を取り付け、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層し、巻回して巻回電極体20を形成する。
【0057】
次いで、巻回電極体20をラミネートフィルムよりなる外装部材30の間に挟み込んだのち、外装部材30の外縁部同士を一辺を残して貼り合わせ袋状とする。その際、正極リード11および負極リード12を外装部材30の外部に導出させる。
【0058】
続いて、外装部材30の内部に開放辺から電解液を注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、外装部材30の開放辺を貼り合わせる。これにより図1および図2に示した二次電池が完成する。
【0059】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して、負極22の表面にリチウム金属となって析出する。放電を行うと、例えば、リチウム金属層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって溶出し、電解液を介して正極21に吸蔵される。その際、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率が、1.05以上3.00以下であり、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みが、平均で10μm以上40μm以下となっているので、サイクル特性および安全性が共に改善される。
【0060】
このように本実施の形態によれば、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率を1.05以上とし、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みを平均で10μm以上とするようにしたので、サイクル特性を向上させることができる。また、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率を3.00以下とし、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みを平均で40μm以下とするようにしたので、安全性を向上させることができる。
【実施例】
【0061】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0062】
(実施例1−1〜1−15)
図1,2に示したラミネートフィルム型の二次電池を作製した。まず、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )と、導電材としてグラファイトと、結着材としてポリフッ化ビニリデンとを混合して正極合剤を調製したのち、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。続いて、この正極合剤スラリー帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させたのち圧縮成型して正極活物質層21Bを形成した。そののち、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード11を取り付けた。
【0063】
また、厚み8μmの電解銅箔よりなる負極集電体22Aの両面にリチウムよりなるリチウム金属層22Bを形成し、負極22を作製した。その際、電解銅箔の表面粗度は、Ra値を0.5mm±0.2μm、Rzを2.5μm±0.8μmとした。また、実施例1−1〜1−3では、リチウム金属層22Bを圧延することにより形成し、実施例1−4〜1−15では、蒸着により形成した。更に、実施例1−1〜1−3では、リチウム金属層22Bの厚みを片面につき30μmとし、誤差範囲を±5μmとした。また、実施例1−4〜1−6,1−13では、リチウム金属層22Bの厚みを片面につき20μmとし、誤差範囲を±2μmとした。また、実施例1−7〜1−9,1−14では、リチウム金属層22Bの厚みを片面につき10μmとし、誤差範囲を±2μmとした。また、実施例1−10〜1−12,1−15では、リチウム金属層22Bの厚みを片面につき5μmとし、誤差範囲を±2μmとした。加えて、正極活物質層21Bとリチウム金属層22Bとが対向している領域において、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率(完全充電時における単位面積あたりの負極の容量/単位面積あたりの正極の容量)が、表1に示したように1.05〜3.00以下となるように、正極21と負極22とを設計した。なお、表1では、正極活物質層21Bとリチウム金属層22Bとが対向している領域において、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率を単に比率として表した。以下の実施例における同様である。そののち、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード12を取り付けた。
【0064】
【表1】

【0065】
正極21および負極22を作製したのち、負極22、セパレータ23、正極21、セパレータ23の順に積層し平たく巻回して巻回電極体20とした。
【0066】
次いで、巻回電極体20をラミネートフィルムよりなる外装部材30の間に挟み込んだのち、外装部材30の外縁部同士を一辺を残して貼り合わせ袋状とした。その際、正極リード11および負極リード12を外装部材30の外部に導出させるようにした。
【0067】
続いて、外装部材30の内部に開放辺から電解液を注入し、セパレータ23に含浸させたのち、外装部材30の開放辺を貼り合わせ、図1および図2に示した二次電池を作製した。電解液には、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、炭酸エチレン:炭酸ジエチル=40:60の体積比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/kgとなるように溶解したものを用いた。また、電池容量は、実施例1−1〜1−12では1000mAhとなるように設計し、実施例1−13〜1−15では1200mAhとなるように設計した。なお、電池の厚みは0.38mm,幅は34mm,高さは50mmとした。
【0068】
実施例1−1〜1−15に対する比較例1−1として、リチウム金属層を設けなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−15と同様にして二次電池を作製した。なお、電池容量が1000mAhとなるように設計した。
【0069】
また、比較例1−2〜1−4として、リチウム金属層の厚みを片面につきそれぞれ50μm±5μm,30μm±5μm,30μm±5μmとなるようにしたことを除き、他は実施例1−1〜1−15と同様にして二次電池を作製した。その際、正極活物質層とリチウム金属層とが対向している領域において、単位面積あたりの正極の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極の容量の比率が、3.60,3.50,3.22となるように、正極と負極とを設計した。なお、電池容量は、比較例1−2,1−3では800mAhとなるように、比較例1−4では900mAhとなるように設計した。
【0070】
作製した実施例1−1〜1−15および比較例1−1〜1−4の二次電池について、23℃において、上限電圧4.2V,初期電流値1.0Cで、定電流定電圧充電を0.03C以下の電流値となる時間を設定して行い、完全充電状態とした。続いて、これらの完全充電状態の二次電池を解体して、リチウム金属層22Bの片面の平均の厚みを測定した。結果を表1に示す。
【0071】
また、実施例1−1〜1−15および比較例1−1〜1−4の二次電池について、次のようにしてサイクル特性を求めた。まず、23℃において、200mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行なったのち、4.2Vの定電圧で電流が1mAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、200mAの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで定電流放電を行なった。この充放電を繰り返し、サイクル特性は、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の維持率、すなわち、(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)から求めた。結果を表1に示す。
【0072】
また、実施例1−1〜1−15および比較例1−1〜1−4の二次電池について、次のようにして、釘刺し試験を行なった。まず、23℃において、200mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行なったのち、4.2Vの定電圧で電流が1mAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、200mAの定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで定電流放電を行なった。次に、23℃において、200mAの定電流で電池電圧が、それぞれ3.90V,3.95V,4.00V,4.10V,4.20V,4.25V,4.32V,4.37Vに達するまで定電流充電を行なったのち、電池に釘を刺し、ガスの噴出があるか否かを調べた。結果を表1に示す。なお、これらの試験は、各電池電池電圧ごとに、各4個の二次電池を用意して行った。また、表1では、1つでもガスが噴出した電池電圧のうち最も低い電池電圧を示した。
【0073】
表1に示したように、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率を1.05以上3.00以下とし、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みを平均で10μm以上40μm以下とした実施例1−1〜1−15によれば、これらよりも比率を低くし、かつ厚みを薄くした比較例1−1よりも、放電容量維持率が飛躍的に向上し、また、これらよりも比率を高くし、かつ厚い厚みとした比較例1−2〜1−4よりも、釘刺し試験で良好な結果が得られた。
【0074】
すなわち、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率を1.05以上3.00以下とし、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みを、平均で10μm以上40μm以下とするようにすれば、サイクル特性および安全性を共に向上させることができることが分かった。
【0075】
(実施例2−1〜2−3,3−1〜3−3,4−1〜4−3)
炭酸エチレンに代えて、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を用いたことを除き、他は実施例1−1,1−4,1−7とそれぞれ同様にして二次電池を作製した。ハロゲン原子を有する環式炭酸エステルには、実施例2−1,3−1,4−1では、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)とし、実施例2−2,3−2,4−2では、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンと、シス−4−フルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンと、トランス−4−フルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンとを、4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン:シス−4−フルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン:トランス−4−フルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン=3:1:1のモル比で混合した混合物(FPC)とし、実施例2−3,3−3,4−3では、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンのトランス体(DFEC)とした。
【0076】
作製した各実施例の二次電池について、実施例1−1〜1−15と同様にして、サイクル特性を調べると共に、釘刺し試験を行なった。結果を表2〜表4に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
表2〜表4に示したように、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を用いた実施例2−1〜2−3,3−1〜3−3,4−1〜4−3によれば、これらを用いていない実施例1−1,1−4,1−7よりも、それぞれ放電容量維持率が向上した。
【0081】
すなわち、電解液にハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0082】
(実施例5−1〜5−4)
実施例5−1〜5−3では、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの半分の量を、炭酸エチレン,炭酸プロピレン(PC)またはγ−ブチロラクトン(GBL)に代えたことを除き、他は実施例3−1と同様にして二次電池を作製した。
【0083】
また、実施例5−4では、電解質塩として、LiPF6 に加えて、環状のイミド塩である化17の(2)に示した1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムを用いたことを除き、他は実施例3−1と同様にして二次電池を作製した。その際、電解液における1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムの濃度は、0.1mol/kgとした。
【0084】
作製した実施例5−1〜5−4の二次電池について、実施例1−1〜1−15と同様にして、サイクル特性を調べると共に、釘刺し試験を行なった。結果を表5に示す。
【0085】
【表5】

【0086】
表5に示したように、実施例3−1と同様の結果が得られた。また、1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムを用いた実施例5−4によれば、これを用いていない実施例3−1よりも、放電容量維持率が向上した。
【0087】
すなわち、溶媒の組成を変えても、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率を1.05以上3.00以下とし、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みを、平均で10μm以上40μm以下とするようにすれば、サイクル特性および安全性を共に向上させることができ、電解液に環状のイミド塩を含むようにすれば、よりサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0088】
(実施例6−1〜6−4,7−1〜7−4,8−1〜8−4)
電解質塩として、LiPF6 に代えて、化4に示した軽金属塩である化12の(1)に示したジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、化12の(4)に示したジフルオロ[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、化12の(5)に示したビス[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、または化12の(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムを用いたことを除き、他は実施例1−1,1−4,1−7と同様にして二次電池を作製した。
【0089】
作製した各実施例の二次電池について、実施例1−1〜1−15と同様にして、サイクル特性を調べると共に、釘刺し試験を行なった。結果を表6〜表8に示す。
【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
表6〜表8に示したように、化4に示した軽金属塩を用いた実施例6−1〜6−4,7−1〜7−4,8−1〜8−4によれば、これを用いていない実施例1−1,1−4,1−7よりも、それぞれ放電容量維持率が向上した。
【0094】
すなわち、電解液に化4に示した軽金属塩を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0095】
(実施例9−1〜9−3)
電解質塩として、LiPF6 に加えて、化4に示した軽金属塩である化12の(1)に示したジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、または化4に示した軽金属塩である化12の(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、または化12の(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムおよび環状のイミド塩である化17の(2)に示した1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムを用いたことを除き、他は実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。その際、各電解質塩の濃度は、表9に示したようにした。
【0096】
【表9】

【0097】
作製した実施例9−1〜9−3の二次電池について、実施例1−1〜1−15と同様にして、サイクル特性を調べると共に、釘刺し試験を行なった。結果を実施例1−4および実施例7−1の結果と共に表9に示す。
【0098】
表9に示したように、電解質塩としてLiPF6 に加えて、ジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、またはビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、またはビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムおよび1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムを用いた実施例9−1〜9−3によれば、LiPF6 のみを用いた実施例1−4よりも、放電容量維持率が向上した。また、電解質塩としてLiPF6 とジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムとを用いた実施例9−1によれば、LiPF6 を用いず、ジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムのみを用いた実施例7−1よりも、放電容量維持率が向上した。
【0099】
すなわち、電解質塩として、LiPF6 と、化4に示した軽金属塩、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、化13に示したリチウム塩、化14に示したリチウム塩、化15に示した環状のイミド塩、および化16に示した環状のイミド塩からなる群のうちの少なくとも1種とを混合して用いるようにすれば、好ましいことが分かった。
【0100】
(実施例10−1〜10−15)
外装部材を中空角柱状の容器に変えたことを除き、他は実施例1−1〜1−15と同様にして二次電池を作製した。具体的には、図3に示した角型の二次電池を作製した。なお、電池容量は、実施例10−1〜10−12では950mAhとし、実施例10−13〜10−15では1050mAhとした。
【0101】
作製した実施例10−1〜10−15の二次電池について、実施例1−1〜1−15と同様にして、サイクル特性を調べると共に、釘刺し試験を行なった。結果を表10に示す。
【0102】
【表10】

【0103】
表10に示したように、実施例1−1〜1−15と同様の結果が得られた。すなわち、他の形状を有する二次電池の場合にも、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率を1.05以上3.00以下とし、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みを、平均で10μm以上40μm以下とするようにすれば、サイクル特性および安全性を共に向上させることができることが分かった。
【0104】
(実施例11−1〜11−3)
炭酸エチレンに代えて、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を用いたことを除き、具体的には、実施例3−1〜3−3と同様の電解液を用いたことを除き、他は実施例10−4と同様にして二次電池を作製した。
【0105】
作製した実施例11−1〜11−3の二次電池について、実施例1−1〜1−15と同様にして、サイクル特性を調べると共に、釘刺し試験を行なった。結果を表11に示す。
【0106】
【表11】

【0107】
表11に示したように、実施例3−1〜3−3と同様の結果が得られた。すなわち、他の形状を有する二次電池の場合にも、電解液にハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0108】
(実施例12−1〜12−4)
実施例12−1〜12−3では、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの半分の量を、炭酸エチレン,炭酸プロピレンまたはγ−ブチロラクトンに代えたことを除き、具体的には実施例5−1〜5−3と同様の電解液を用いたことを除き、他は実施例11−1と同様にして二次電池を作製した。
【0109】
また、実施例12−4では、電解質塩として、LiPF6 に加えて、環状のイミド塩である化17の(2)に示した1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムを用いたことを除き、具体的には、実施例5−4と同様の電解液を用いたことを除き、他は実施例11−1と同様にして二次電池を作製した。
【0110】
作製した実施例12−1〜12−4の二次電池について、実施例1−1〜1−15と同様にして、サイクル特性を調べると共に、釘刺し試験を行なった。結果を表12に示す。
【0111】
【表12】

【0112】
表12に示したように、実施例5−1〜5−4と同様の結果が得られた。すなわち、他の形状を有する二次電池の場合に、溶媒の組成を変えても、単位面積あたりの正極21の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極22の容量の比率を1.05以上3.00以下とし、完全充電時におけるリチウム金属層22Bの片面の厚みを、平均で10μm以上40μm以下とするようにすれば、サイクル特性および安全性を共に向上させることができ、電解液に環状のイミド塩を含むようにすれば、よりサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0113】
(実施例13−1〜13−4)
電解質塩として、LiPF6 に代えて、化4に示した軽金属塩である化12の(1)に示したジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、化12の(4)に示したジフルオロ[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、化12の(5)に示したビス[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、または化12の(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムを用いたことを除き、具体的には、実施例7−1〜7−4と同様の電解液を用いたことを除き、他は実施例10−4と同様にして二次電池を作製した。
【0114】
作製した実施例13−1〜13−4の二次電池について、実施例1−1〜1−15と同様にして、サイクル特性を調べると共に、釘刺し試験を行なった。結果を表13に示す。
【0115】
【表13】

【0116】
表13に示したように、実施例7−1〜7−4と同様の結果が得られた。すなわち、他の形状を有する二次電池の場合にも、電解液に化4に示した軽金属塩を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0117】
(実施例14−1,14−2)
電解質塩として、LiPF6 に加えて、化4に示した軽金属塩である化12の(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、または化12の(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムおよび環状のイミド塩である化17の(2)に示した1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムを用いたことを除き、具体的には、実施例9−2,9−3と同様の電解液を用いたことを除き、他は10−4と同様にして二次電池を作製した。
【0118】
作製した実施例14−1,14−2の二次電池について、実施例1−1〜1−15と同様にして、サイクル特性を調べると共に、釘刺し試験を行なった。結果を表14に示す。
【0119】
【表14】

【0120】
表14に示したように、実施例9−2,9−3と同様の結果が得られた。すなわち、他の形状を有する二次電池の場合にも、電解質塩として、LiPF6 と、化4に示した軽金属塩、LiBF4 、LiClO4 、LiAsF6 、化13に示したリチウム塩、化14に示したリチウム塩、化15に示した環状のイミド塩、および化16に示した環状のイミド塩からなる群のうちの少なくとも1種とを混合して用いるようにすれば、好ましいことが分かった。
【0121】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解質として液状の電解液を用いる場合について説明したが、電解液を高分子化合物に保持させてゲル状としてもよい。この場合に用いる高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物を用いることが望ましい。
【0122】
また、上記実施の形態または実施例では、ラミネートフィルム型の二次電池を具体的に挙げて説明し、また、実施例では角型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は円筒型,ボタン型,薄型あるいはコイン型などの他の形状や大きさを有する二次電池、または積層構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図2】図1に示した巻回電極体のII−II線に沿った構成を表す断面図である。
【図3】実施例で作製した二次電池の構成を表す断面図である。
【符号の説明】
【0124】
11…正極リード、12…負極リード、20…巻回電極体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…保護テープ、30…外装部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極と共に電解液を備えた電池であって、
前記正極は、正極集電体と、この正極集電体に設けられた正極活物質層とを有し、
前記負極は、負極集電体と、この負極集電体に設けられたリチウム金属層とを有し、
単位面積あたりの正極の容量に対する完全充電時における単位面積あたりの負極の容量の比率(完全充電時における単位面積あたりの負極の容量/単位面積あたりの正極の容量)は、1.05以上3.00以下であり、
完全充電時における前記リチウム金属層の片面の厚みは、平均で10μm以上40μm以下である
ことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記正極は、リチウム(Li)と遷移金属金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含有することを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記電解液は、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項4】
前記電解液は、化1に示した化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【化1】

(R1,R2,R3およびR4は、メチル基,エチル基あるいはそれら少なくとも一部の水素をフッ素(F),塩素(Cl)若しくは臭素(Br)で置換した基、または水素、またはフッ素基、または塩素基、または臭素基を表す。R1,R2,R3およびR4のうちの少なくとも一つはハロゲンを有する基である。)
【請求項5】
前記電解液は、化2に示した軽金属塩,LiPF6 ,LiBF4 ,LiClO4 ,LiAsF6 ,化3に示したリチウム塩,化4に示したリチウム塩,化5に示した環状のイミド塩および化6に示した環状のイミド塩からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【化2】

(R31は、−C(=O)−R41−C(=O)−基(R41はアルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。)、または−C(=O)−C(R43)(R44)−基(R43,R44は、アルキル基, ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表す。)、または−C(=O)−C(=O)−基を表し、R32は、ハロゲン,アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表し、X11およびX12は、酸素(O)または硫黄をそれぞれ表し、M11は、遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、M21は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウム(Al)を表し、aは1から4の整数であり、bは0から8の整数であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1から3の整数である。)
【化3】

(mおよびnは、1以上の整数である。)
【化4】

(p,qおよびrは、1以上の整数である)
【化5】

(M1は短周期型周期表における1A族元素,2A族元素またはアルミニウムを表す。R29は、炭素数2から5のアルキレン基、あるいはそれらの少なくとも一部の水素をフッ素で置換した基を表す。tは、1, 2または3である。)
【化6】

(M2は、短周期型周期表における1A族元素,2A族元素またはアルミニウムを表す。R30は、炭素数2から5のアルキレン基、あるいはそれらの少なくとも一部の水素をフッ素で置換した基を表す。uは、1, 2または3である。)
【請求項6】
前記電解液は、化7に示した軽金属塩を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【化7】

(R31は、−C(=O)−R41−C(=O)−基(R41はアルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。)、または−C(=O)−C(R43)(R44)−基(R43,R44は、アルキル基, ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表す。)、または−C(=O)−C(=O)−基を表し、R33は、ハロゲンを表し、M12はリン(P)またはホウ素(B)を表し、M21は、短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウムを表し、a1は1から3の整数であり、b1は0,2または4であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1から3の整数である。)
【請求項7】
前記電解液は、化8の(1)に示したジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、化8の(2)に示したテトラフルオロ[オキソラト−O,O’]リン酸リチウム、化8の(3)に示したジフルオロビス[オキソラト−O,O’]リン酸リチウム、化8の(4)に示したジフルオロ[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、化8の(5)に示したビス[3,3,3−トリフルオロ−2−オキシド−2−トリフルオロメチルプロピオナト(2−)−O,O’]ホウ酸リチウム、および化8の(6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の電池。
【化8】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−258029(P2007−258029A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81869(P2006−81869)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】