説明

電池

【課題】十分な容量を確保しつつ良好な耐腐食性を発揮することのできる電池を提供することにある。
【解決手段】ほぼ中空円柱状をなす電池缶11の内部に、電解質が含浸されたセパレータ23を介して帯状の正極21と帯状の負極22とが積層されて巻回されてなる巻回電極体20が収容されている。電解質は、リチウム塩と、エタノールアミンとを含んでいる。これにより、高温多湿環境中(例えば50℃,90%)であっても電池缶11の外側表面での錆の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質にフッ素含有電解質塩を含むようにした電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブルタイプの電子機器が数多く登場し、これらに搭載される携帯用電源としての電池の需要が急増している。携帯用電源として普及している電池としては、アルカリマンガン電池のような一次電池のほか、ニッケルカドミウム(Ni−Cd)電池および鉛電池等の二次電池が挙げられる。しかし、前者は一回の放電のみの使用でコスト的に不利であり、後者はいずれも放電電圧が低く、エネルギー密度の向上が困難であるために、軽量化が難しいという問題を残している。水素吸蔵合金を用いたニッケル水素(NiMH)二次電池も放電電圧が低く、小型軽量化を行うには不十分なものとなっている。こうした状況から、最近では、例えば正極活物質としてリチウム複合酸化物(例えばLiCo1−y)を用いた非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)が提案されている。このリチウム複合酸化物を正極活物質とする電池は、高い充放電電圧を示すこと、高エネルギー密度を有すること等の数々の利点を有するものである。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池は、高温多湿の環境下に長期間に亘って置かれると、電池外部に錆が発生する可能性がある。このため、従来、電池缶表面の汚れや油分を除去すると共に、洗浄後の空気中における耐酸化性を向上させるような方策が提案されている(例えば特許文献1〜6参照)。
【特許文献1】特開2001−89879号公報
【特許文献2】特開平11−19607号公報
【特許文献3】特開平9−137287号公報
【特許文献4】特開平9−271728号公報
【特許文献5】特許第3145037号公報
【特許文献6】特開2000−106152公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リチウムイオン二次電池の電解質としては、例えばLiPFなどのフッ素を含有する電解質塩を含むものが広く用いられている。このようなフッ素含有電解質塩を含む電解質が、万一、電池の外部に漏れた場合には、フッ素と外気中の水分とが加水分解反応を生じ、フッ化水素酸が生成される可能性がある。このフッ化水素酸は弱酸性を示すので、主に鉄からなる外装缶の外側表面に付着すると、これを腐食する原因となる。
【0005】
こうした問題に対し、外装缶表面に防錆効果を有する被膜を予め形成しておく方法も考えられるが、製造上の煩雑さを伴ううえ、防錆被膜の形成されていない部分が僅かでも生じた場合には、腐食の進行を抑制できないケースが予想される。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、十分な容量を確保しつつ良好な耐腐食性を発揮することのできる電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池は、フッ素含有電解質塩と、エタノールアミンとを含む電解質を備えるようにしたものである。
【0008】
本発明の電池では、電解質が、フッ素含有電解質塩とエタノールアミンとを含むようにしたので、外部に漏れた場合に生成されるフッ化水素酸が中和される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電池によれば、フッ素含有電解質塩と共にエタノールアミンを含む電解質が外部に漏れた場合であっても、フッ素含有電解質塩が水と反応して生成するフッ化水素酸をエタノールアミンによって中和することができるので、十分な容量を確保しつつ外装缶等の腐食を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明における一実施の形態としての二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状をなす電池缶11の内部に、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層されて巻回された巻回電極体20を収容したものである。電池缶11は、例えば、ニッケル(Ni)めっきが施された鉄(Fe)によって構成され、一端部が閉塞される一方、他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0012】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池感11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば電池缶11と同様の材料によって構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、外部短絡などにより大電流が流れて電池が異常に発熱してしまうことを防止するものであり、例えば、チタン酸バリウム系半導体セラミックスにより構成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0013】
巻回電極体20は、例えばセンターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0014】
正極21は、例えば、正極合剤層と正極集電体層とにより構成されており、正極集電体層の両面あるいは片面に正極合剤層が設けられた構造を有している。正極集電体層は、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極合剤層は、例えば、正極活物質と、カーボンブラックやグラファイトなどの導電剤と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含んで構成されている。
【0015】
正極活物質は、例えばリチウムを吸蔵および放出可能な正極材料の1種または2種以上を含むものである。そのような正極材料としては、例えば、一般式がLiMO(xは任意の値である)で表されるリチウム複合酸化物が挙げられる。式中のMは、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)などの遷移金属や、これらの遷移金属の混合体(例えばLiNiCo1−y)である。xは電池の充放電状態により異なり、例えば、0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。なお、正極活物質は、上記したリチウム複合酸化物の他、例えば、リチウムを含有しない金属酸化物、金属硫化物、高分子材料などや、これらの各種材料を2種以上含む材料により構成される場合もある。金属酸化物としては、例えば酸化バナジウム(V)などが挙げられ、金属硫化物としては、例えば硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、セレン化ニオブ(NbSe)などが挙げられる。正極活物質としては、特に、高電圧を発生可能とし、優れたエネルギー密度を確保する観点から、リチウム複合酸化物を使用するのが好ましい。
【0016】
負極22は、例えば、正極21と同様に、負極合剤層と負極集電体層とにより構成されており、負極集電体層の両面あるいは片面に負極合剤層が設けられた構造を有している。負極集電体層は、例えば、銅箔、ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。負極合剤層は、リチウム金属、またはリチウムを吸蔵・離脱可能な材料などよりなる負極材料と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含んで構成されている。負極合剤層としては、特に、優れた充放電サイクル特性を確保する観点から、リチウムを吸蔵および離脱可能な材料を使用するのが好ましい。
【0017】
リチウムを吸蔵および離脱可能な負極材料としては、例えば、リチウムと合金あるいは化合物を形成可能な金属あるいは半導体、またはこれらの合金あるいは化合物が挙げられる。このような金属あるいは半導体、またはこれらの合金あるいは化合物としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)またはこれらの合金あるいは化合物が挙げられる。これらの合金あるいは化合物についても具体的に例を挙げれば、LiAl、LiAlMIII (但し、MIII は2A族、3B族、4B族の金属元素および半導体元素のうちの少なくとも1種)、AlSbまたはCuMgSbなどがある。
【0018】
中でも、リチウムと合金あるいは化合物を形成可能な金属元素あるいは半導体元素としては、4B族の金属元素あるいは半導体元素が好ましく、特に好ましくはケイ素あるいはスズであり、最も好ましくはケイ素である。これらの合金あるいは化合物も好ましく、具体的には、SiB、SiB、MgSi、MgSn、NiSi、TiSi、MoSi、CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSiあるいはZnSiなどが挙げられる。なお、上記した一連のケイ素化合物は、化学量論組成のものでも、非化学量論組成のものでもよい。
【0019】
リチウムを吸蔵および離脱可能な負極材料としては、上記のほか、例えば、炭素材料、金属酸化物、高分子材料などが挙げられる。
【0020】
炭素質材料としては、例えば、熱分解炭素類、コークス類、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維または活性炭などが挙げられる。このうち、コークス類には、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなどが含まれ、ガラス状炭素類には難黒鉛化炭素材料などが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
【0021】
金属酸化物としては、例えば、酸化スズ(SnO)などが挙げられ、高分子材料としては、例えば、ポリアセチレンやポリピロールなどが挙げられる。
【0022】
セパレータ23は、例えば、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック性の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0023】
このセパレータ23には、例えば液状の電解質が含浸されている。この電解質は、例えば、非水溶媒と、電解質塩としてのリチウム塩と、非水溶媒に可溶であるエタノールアミンとを含んで構成されている。ここでいうエタノールアミンとは、モノエタノールアミン(HOCHCHNH)、ジエタノールアミン(HOCHCHNH)およびトリエタノールアミン(HOCHCHNのうちの少なくとも1種を含むものである。エタノールアミンの添加量は、例えばリチウム塩1モル(mol)に対して1.8モル%以上7.2モル%未満であることが望ましい。
【0024】
非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリルおよびプロピオニトリルなどの有機溶媒が挙げられる。非水溶媒については、上記のうち、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
リチウム塩としては、例えば、LiPF,LiBF,LiBF,LiAsF,LiCFSO,CFSOLi,LiN(CSO,LiN(CFSOまたはLiN(C2n+1SOなどのフッ素を含有するものうちのいずれか1種または2種以上を混合したものを用いる。電解質中のリチウム塩濃度は、例えば、約0.5mol/dm〜2.0mol/dmの範囲内である。リチウム塩には、例えば、保存特性や充放電サイクル特性または材料コストに関する観点から、特にLiPF,LiBF,LiN(CFSOからなる群のうちの少なくとも一種、好ましくはLiPF,LiBF,LiN(CFSO,LiPFおよびLiBFの混合物,またはLiPFおよびLiN(CFSOの混合物を含めることが好ましい。
【0026】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0027】
まず、正極活物質と導電剤と結着剤とを混合して正極合剤を調整し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒に分散してペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極合剤スラリーを正極集電体層に塗布し、溶剤を乾燥させたのち、ローラープレス機などにより圧縮成型して正極合剤層を形成することにより、正極21を作製する。
【0028】
続いて、負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調整し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒に分散してペースト状の負極合剤スラリーとする。さらに、負極合剤スラリーを負極集電体層に塗布し、溶剤を乾燥させたのち、ローラープレス機などにより圧縮成型して負極合剤層を形成することにより、負極22を作製する。
【0029】
次に、正極集電体層に正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体層に負極リード26を溶接などにより取り付ける。続いて、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接し、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟んで電池缶11の内部に収納する。続いて、炭酸プロピレンと炭酸ジエチルとの混合溶媒に、電解質塩としてのLiPFおよびエタノールアミンを溶解させることにより電解質を調製する。続いて、正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電池缶11の内部に電解質を注入し、セパレータ23に含浸させる。続いて、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池を作製が完了する。
【0030】
この二次電池では、充電を行うと、正極21からリチウムイオンが脱離し、セパレータ23に含浸された電解質を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、負極22からリチウムイオンが脱離し、セパレータ23に含浸された電解質を介して正極21に吸蔵される。
【0031】
通常、フッ素含有電解質塩を含む電解質が外部へ漏れてしまった場合には、電解質塩中のフッ素が水分と反応してフッ化水素酸を生じることとなる。このフッ化水素酸は弱酸性を示すことから、鉄(Fe)を含む電池缶11を腐食させる原因となる。例えば、電解質塩としてLiPFを用いた場合には、以下の(化1)のようにLiPFが加水分解を起こすことでフッ化水素(HF)が生成される。
【0032】
LiPF+HO→LiF+POF+2HF ……(化1)
【0033】
但し、実際にはHFは水に溶解して弱酸性のフッ化水素酸として存在する。ところが、本実施の形態では、電解質中のエタノールアミンが含まれていることから、万一、電解質が外部へ漏れた場合であっても、フッ化水素酸を中和することができる。なお、エタノールアミンは、化学的安定性に優れるうえ、吸湿性が高いので、電解質中に存在するものとして好適である。
【0034】
このように、本実施の形態における二次電池によれば、電解質中にエタノールアミンを含むようにしたので、高温多湿環境中(例えば50℃,90%)であっても電池缶11の外側表面での錆の発生を抑制することができる。特に、エタノールアミンの添加量を、電解質塩1モルに対して1.8モル%以上7.2モル%未満とした場合には、容量低下を招くことなく、極めて優れた錆び発生の防止効果を発揮することができる。
【実施例】
【0035】
さらに、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0036】
(実施例1〜8)
実施例1〜8として、以下に述べるようにして図1に示したいわゆる円筒型の二次電池を作製し、高温多湿環境中における錆びの発生状況について調べた。
【0037】
まず、以下のような手順により正極21を作製した。すなわち、正極活物質としてのLiCo1−yNiyOと、導電剤としてグラファイトと、バインダとしてのポリフッ化ビニリデンとを、順に94:6:3の重量比で混合することにより正極合剤を得た。
【0038】
続いて、正極合剤を溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させることによりペースト状の正極合剤スラリーとした。この正極合剤スラリーを、約20μm厚のアルミニウム箔よりなる正極集電体層の両面に均一に塗布して乾燥させたのち、正極集電体層と共に圧縮成型することで、正極21を得た。
【0039】
次に、以下のような手順により負極22を作製した。まず、負極活物質としての人造黒鉛と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを重量比で90:10の割合で混合することにより負極合剤を得た。続いて、この負極合剤を、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させることによりペースト状の負極合剤スラリーとした。さらに、約20μm厚の銅箔の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させたのち、負極集電体層と共に圧縮成型することで負極22を得た。
【0040】
次に、炭酸プロピレン50容量%と炭酸ジエチル50容量%との混合溶媒中に、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1mol/dmの濃度で溶解させたのち、所定量のエタノールアミンを防錆剤として添加することにより電解質を調製した。実施例1〜6ではジエタノールアミンを用い、実施例7ではモノエタノールアミンを用い、実施例8ではトリエタノールアミンを用いた。また、それらの添加量(1モルのLiPFに対する添加量:モル%)は後出の表1に示した通りである。
【0041】
次に、正極21、負極22および電解質と共に、ポリプロピレン製の多孔質膜よりなるセパレータを用いて、図1に示した二次電池を作製した。電池の大きさは、直径18mm、厚さ65mmとした。
【0042】
なお、実施例1〜8に対する比較例として、電解質中にエタノールアミンの替わりにベンゾトリアゾール(C)を添加したもの(比較例1)、および電解質中にエタノールアミンを含有させないもの(比較例2)を作製した。比較例1,2は、エタノールアミンを含有させないことを除き、他は実施例1〜8と同様にして二次電池を作製した。
【0043】
このようにして得られた実施例1〜8および比較例1,2の各二次電池について、容量を評価した。さらに、電解質が漏れた状況を擬似的に再現するため、各々に用いた電解質と同じものを電池缶表面に付着させた(30秒程度、浸漬させた)のち、高温多湿環境中における錆びの発生率(n=10)および電池缶表面のべたつきについて調査した。それらの結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1において、錆びの発生率は、温度50℃、湿度90%の環境下で7日間保管した場合に、目視確認できる大きさ(長さ1mm以上かつ幅0.5mm以上)の錆びが発生する割合を示している。また、べたつきの有無については、電池表面を鉄粉に30秒間に亘って1kgfで加圧したときに、鉄粉が電池表面に付着するか否かで判断した。容量は、各実施例および各比較例の二次電池について、23℃の環境下で、1Aで4.2Vを上限として2.5時間の定電流定電圧充電を行い、その後1Aで3.0Vに達するまで定電流放電した場合の測定値である。但し、ここでは、電解質中にエタノールアミンを含まない比較例2を基準値(100%)とした場合の割合で表示した。
【0046】
表1から分かるように、エタノールアミンを含む実施例1〜8によれば、これを含まない比較例1,2よりも、錆の発生率を低減させることができた。特に、エタノールアミンの添加量を、電解質塩1モルに対して1.8モル%以上7.2モル%未満とするようにすれば、容量を低下させることなく、極めて高い防錆効果を発揮することが確認できた。
【0047】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、溶媒に液状の電解質である電解液を用いる場合について説明したが、電解液に代えて、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。具体的には、シリコンポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー又はこれらの化合物の複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマーなどを用いることができる。フッ素系ポリマーとしては、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(ビニリデンフルオライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(ビニリデンフルオライド−co−テトラフルオロエチレン)、ポリ(ビニリデンフルオライド−co−トリフルオリエチレン)などが挙げられる。
【0048】
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)あるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても、本発明を適用することができる。
【0049】
さらに、上記実施の形態または実施例では、ラミネートフィルム型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は円筒型,コイン型, ボタン型、あるいは角型などの他の形状を有する二次電池、または積層構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、本発明は、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態としての二次電池の構成を表す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…巻回電極体、21…正極、22…負極、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有電解質塩と、エタノールアミンとを含む電解質を備えたことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記エタノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンのうちの少なくとも1種を含んでいる
ことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記エタノールアミンの添加量は、前記フッ素含有電解質塩1モル(mol)に対して1.8モル%以上7.2モル%未満である
ことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項4】
前記フッ素含有電解質塩は、LiAsF,LiPF,LiBF,LiCFSO,LiN(C2n+1SO(但し、nは正数である。)のうちの少なくとも1種を含んでいる
ことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項5】
鉄を含む外装缶を備えたことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項6】
リチウムを吸蔵および放出可能な材料を含む正極と、
リチウムを吸蔵および離脱可能な材料を含む負極と、
フッ素含有電解質塩およびエタノールアミンを含む電解質と
を備えたことを特徴とする電池。
【請求項7】
前記正極は、リチウム複合酸化物を含む
ことを特徴とする請求項6記載の電池。
【請求項8】
前記負極は、炭素質材料を含む
ことを特徴とする請求項6記載の電池。
【請求項9】
前記負極は、黒鉛を含む
ことを特徴とする請求項6記載の電池。
【請求項10】
鉄を含む外装缶を備えたことを特徴とする請求項6記載の電池。

【図1】
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【公開番号】特開2008−4272(P2008−4272A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169667(P2006−169667)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】