説明

電池

【課題】筐体内に収容された電池セルを気体で加圧する電池であって、筐体内の圧力の変動を緩和できる電池を提供する。
【解決手段】電池セルと、該電池セルを収容した筐体とを備え、電池セルを加圧する気体が筐体内に充填された電池であって、筐体内の圧力を制御可能な圧力制御機構を備える電池とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に収容された電池セルを気体で加圧する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、他の二次電池よりもエネルギー密度が高く、高電圧での動作が可能という特徴を有している。そのため、小型軽量化を図りやすい二次電池として携帯電話等の情報機器に使用されており、近年、電気自動車やハイブリッド自動車用等、大型の動力用としての需要も高まっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池には、正極層及び負極層と、これらの間に配置される電解質層とが備えられ、電解質層に備えられる電解質としては、例えば非水系の液体や固体が用いられる。電解質に液体(以下において、「電解液」という。)が用いられる場合には、電解液が正極層や負極層の内部へと浸透しやすい。そのため、正極層や負極層に含有されている活物質と電解液との界面が形成されやすく、性能を向上させやすい。ところが、広く用いられている電解液は可燃性であるため、安全性を確保するためのシステムを搭載する必要がある。一方、固体の電解質(以下において、「固体電解質」という。)は不燃性であるため、上記システムを簡素化できる。それゆえ、不燃性である固体電解質を含有する層が備えられる形態のリチウムイオン二次電池が提案されている。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池に関する技術として、例えば特許文献1には、リチウムを挿入脱離できる負極及び正極、非水電解液とこれらを収納するケースで構成された素電池(電池セル)を複数個組み合わせて組電池ケース(筐体)に収納してなる組電池において、上記素電池ケース外で、上記組電池ケース内の空間に気体、液体または固体粉末の少なくても1種類、もしくはそれらの混合物質を充填することで組電池ケース内に生じる静水圧を用いて素電池を加圧することを特徴とするリチウム二次電池が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、正極活物質層、電解質層、および負極活物質層からなる群より選択される少なくとも1層の表面または内部にガス発生剤を含み、二次電池の温度が60℃以上300℃未満に達したときに、ガス発生剤からガスが発生することを特徴とする非水電解質二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−214638号公報
【特許文献2】特開2008−226807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、リチウムイオン二次電池は大型の動力用としての需要も高まっているため、大容量のリチウムイオン二次電池の開発が要求されている。リチウムイオン二次電池の大容量化を図るためには、特許文献1に記載されている電池のように、複数の電池セルを直列又は並列に接続して電池を構成することが考えられる。また、電池を大型化しつつ性能を確保するためには、上記のように接続された電池セルを加圧し、電池セル内部での電気抵抗を低減させることが好ましい。特許文献1に記載されている電池は、筐体内の空間に気体、液体または固体粉末の少なくても1種類、もしくはそれらの混合物質を充填することで筐体内に生じる静水圧を用いて電池セルを加圧している。
【0008】
特許文献1に記載された電池のように、静水圧を用いて電池セルを加圧する場合、質量エネルギー密度の低下を抑制する観点から、静水圧を伝える媒体として気体を用いることが好ましいと考えられる。しかしながら、気体は、体積を一定とした場合、液体等に比べ、温度変化によって圧力が変化しやすい。すなわち、静水圧を伝える媒体として気体を用いた場合、温度等の外的要因によって該気体の圧力が変化しやすく、電池セルに加えられる圧力が変化しやすい。電池セルに加えられる圧力の変動が大きくなれば、電池の制御が困難になる等の問題を生じる虞がある。例えば、電池セルに加えられる圧力が下がりすぎると、電池セルの電池特性が低下する虞がある。一方、電池セルに加えられる圧力が高くなりすぎると、電池セルや電池セルを収容する筐体が破損したり、電池セルの電池特性が変化したりする虞がある。特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、このような問題について考慮されておらず、従来技術では上記問題を解決できなかった。
【0009】
そこで本発明は、筐体内に収容された電池セルを気体で加圧する電池であって、筐体内の圧力の変動を緩和できる電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
本発明は、電池セルと、該電池セルを収容した筐体とを備え、電池セルを加圧する気体が筐体内に充填された電池であって、筐体内の圧力を制御可能な圧力制御機構を備える電池である。
【0011】
本発明において「電池セル」とは、正極層と負極層と正極層及び負極層の間に配設された電解質とを含み、電気化学反応で生じたイオン及び電子が移動することによって生じる電気エネルギーを外部に取り出せる構造体をいう。また、本発明において、「筐体」は、電池セルを収容するとともに該電池セルを加圧する気体を充填できる、密閉可能な容器である。さらに、本発明において「筐体内」とは、筐体の内側において電池セルを加圧する気体が充填された空間であって、後に説明する副ケースが備えられた空間を除く空間を意味している。
【0012】
また、上記本発明の電池において、圧力制御機構が、筐体内の気体を出し入れ可能な副ケースを備え、副ケースは、開閉手段を介して気体を出し入れ可能であり、該開閉手段は、筐体内の圧力、副ケース内の圧力、又は、筐体内の圧力と副ケース内の圧力との差に基づいて開閉される形態とすることができる。
【0013】
また、副ケースを備えた上記本発明の電池において、副ケースを複数備えており、該複数の副ケースが、それぞれ異なる開閉手段を介して、筐体内の気体を出し入れ可能であることが好ましい。
【0014】
また、副ケースを備えた上記本発明の電池において、副ケースが筐体内に備えられている形態とすることができる。
【0015】
また、副ケースを備えた上記本発明の電池において、副ケースが筐体外に備えられている形態とすることもできる。
【0016】
また、副ケースを備えた上記本発明の電池において、副ケースの体積が可変である形態とすることができる。
【0017】
本発明において、「副ケースの体積」とは、副ケース内が占める空間の体積を意味する。
【0018】
また、副ケースを備えた上記本発明の電池において、圧力制御機構が、筐体内の気体を副ケース内に強制的に送り込む送入手段を備える形態とすることができる。
【0019】
また、副ケースを備えた上記本発明の電池において、圧力制御機構が、副ケース内の気体を筐体内に強制的に排出させる排出手段を備える形態とすることができる。
【0020】
また、上記本発明の電池において、圧力制御機構が、筐体内の圧力に基づいて筐体内の気体を筐体外に放出可能な放出手段と、筐体内の圧力に基づいて筐体内に気体を供給可能な供給手段とを備えている形態とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、筐体内に収容された電池セルを気体で加圧する電池であって、筐体内の圧力の変動を緩和できる電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態にかかる本発明の電池の構成を概略的に示す図である。
【図2】第2実施形態にかかる本発明の電池の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。
【0024】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態にかかる本発明の電池10の構成を概略的に示す図である。電池10は、組電池1、及び該組電池1を収容する筐体2を備えている。また、筐体2内には、組電池1を加圧する気体3が充填されている。さらに、電池10は、開閉手段5を介して筐体2内の気体3を出し入れ可能な副ケース4を備えている。さらに、電池10は、筐体2内の圧力を制御可能な圧力制御機構を備えており、後に説明するように、開閉手段5及び副ケース4が該圧力制御機構に含まれる。電池10を構成するこれらの要素について、以下に説明する。
【0025】
(組電池1)
組電池1は、複数の電池セルを組み合わせてなる。また、当該電池セルは、正極層と、負極層と、正極層及び負極層の間に配設された電解質層とを有している。正極層は少なくとも正極活物質を有する層であり、正極層の表面には正極集電体が配設されている。負極層は少なくとも負極活物質を有する層であり、負極層の表面には負極集電体が配設されている。このような電池セルとしては、従来の電池に用いられているものを特に限定することなく用いることができる。また、組電池1に備えられる電池セルの数は特に限定されない。さらに、組電池に備えられる電池セルの接続方法も特に限定されず、公知の方法で接続することができる。なお、図1には、筐体2内に1つの組電池1が収容された形態を例示しているが、筐体2内に収容される組電池1の数は特に限定されない。
【0026】
本発明において上記電池セルの作製方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、正極活物質及び固体電解質を含有する正極材を正極集電体の表面へと配置して押圧することにより正極集電体の表面に正極層を形成し、負極活物質及び固体電解質を含有する負極材を負極集電体の表面へと配置して押圧することにより負極集電体の表面に負極層を形成し、正極層の表面に固体電解質を配置して押圧することにより固体電解質層を形成することができる。こうして、正極層、負極層、及び、固体電解質層を形成したら、表面に固体電解質層及び正極層が形成された正極集電体と、表面に負極層が形成された負極集電体とを、正極層と負極層との間に固体電解質層が配設されるように積層して積層体を形成し、押圧した積層体を外装材へと収容することにより、電池セルを作製することができる。
【0027】
組電池1において、電池セルの正極層に含有される正極活物質としては、コバルト酸リチウム等に代表される公知の正極活物質を適宜用いることができる。また、当該正極層に含有される固体電解質としては、LiPO等の酸化物系固体電解質のほか、Li
PSや、LiS:P=50:50〜100:0となるようにLiS及びPを混合して作製した硫化物系固体電解質(例えば、質量比で、LiS:P=70:30となるようにLiS及びPを混合して作製した硫化物固体電解質)等、公知の固体電解質を適宜用いることができる。このほか、正極層には、アセチレンブラック等の公知の導電材を含有させることも可能である。
【0028】
また、組電池1において、電池セルの負極層に含有される負極活物質としては、グラファイト等に代表される公知の負極活物質を適宜用いることができる。また、当該負極層に含有される固体電解質としては、正極層に用いることが可能な上記固体電解質と同様の物質を用いることができる。このほか、負極層には、アセチレンブラック等の公知の導電材を含有させることも可能である。
【0029】
また、組電池1において、電池セルの固体電解質層に用いられる固体電解質としては、正極層や負極層に用いることが可能な上記固体電解質と同様の物質を用いることができる。
【0030】
また、組電池1において、正極集電体や負極集電体としては、Al箔、Cu箔、Ni箔、Fe箔、CuNi箔、及び、CuFe箔等、電池に使用可能な公知の集電体を適宜用いることができる。
【0031】
また、組電池1において、電池セルを収容する外装材としては、後述する気体3の圧力によって破損しない程度の強度を有するとともに、当該気体3による圧力を内部の正極層、負極層、及び電解質層等に伝えられる程度の柔軟性を有するものが好ましい。このような外装材としては、電池に使用可能な公知の外装材を適宜用いることができる。
【0032】
なお、図1には、電池10が複数の電池セルを組み合わせてなる組電池1を備える形態を例示しているが、本発明はかかる形態に限定されない。すなわち、電池10は、組電池1に代えて、1つの電池セルを備える形態であってもよい。
【0033】
(筐体2)
筐体2は、組電池1を収容し、該組電池1を加圧する気体3が充填された容器であって、気体3の圧力に耐え得る構造を有している。筐体2に気体3を充填する方法は特に限定されない。例えば、適宜開閉可能な弁を有した供給口を筐体2に設け、該供給口から気体3を筐体2内に充填することができる。なお、図示はしていないが、筐体2には、電池として必要な電流端子、後に説明するセンサや配管等の導入口・出口が備えられている。
【0034】
(気体3)
気体3は、筐体2内で組電池1を加圧する気体である。気体3によって組電池1を加圧する構造とすることにより、電池10の質量エネルギー密度の低下を抑制しつつ、組電池1全体を略均等な圧力で加圧し、高い電池性能を確保することが容易になる。
【0035】
本発明に用いる気体3としては、筐体2内の部材との間で電池10の使用を阻害するような反応が起こらない気体を用いることができる。このような気体の具体例としは、乾燥空気や、窒素、二酸化炭素等の不活性気体を挙げることができる。
【0036】
(圧力制御機構)
以下に説明するように、電池10に備えられた圧力制御機構は、開閉手段5及び副ケース4を含んでいる。
【0037】
副ケース4は、筐体2内に備えられた容器である。また、副ケース4は、開閉手段5を介して筐体2内の気体3を出し入れ可能である。開閉手段5は、筐体2内の圧力、副ケース内4の圧力、又は、筐体2内の圧力と副ケース4内の圧力との差に基づいて開閉される。
【0038】
筐体2内の圧力と副ケース4内の圧力との差は、例えば以下のようにして生じる。筐体2外の熱や組電池1が発する熱等の影響を受けて、筐体2内において気体3の温度が上昇した場合、筐体2内の圧力が上昇する。一方、筐体2内の気体3の熱が副ケース4内にすぐに伝わるわけではないので、筐体2内と副ケース4内と間で温度差が生じる。この温度差によって、筐体2内と副ケース4内と間で圧力差が生じる。また、筐体2内の熱が筐体2外に放出された場合は、筐体2内の圧力が下がる。一方、副ケース4内の熱が筐体2内の気体3にすぐに奪われるわけではないので、筐体2内と副ケース4内との間で温度差が生じる。この温度差によって、筐体2内と副ケース4内と間で圧力差が生じる。すなわち、筐体2内の圧力と副ケース4内の圧力との差は、筐体2内の温度と副ケース4内の温度との差によって生じる。そのため、当該圧力差を生じやすくするためには、副ケース4を断熱材で構成することが好ましい。また、開閉手段5を閉じた状態で、副ケース4内における気体3を取り込める空間の体積(以下、「副ケース4の容積」という。)を変化させることによっても、筐体2内の圧力と副ケース4内の圧力との差を生じさせることができる。副ケース4の容積を変化させる手段は、特に限定されない。例えば、副ケース4内にピストン等を設けることが考えられる。
【0039】
上記開閉手段5の簡単な例としては、弾性体などによって副ケース4の内側に向けて押すことで閉鎖された弁と、弾性体などによって副ケース4の外側に向けて押すことで閉鎖された弁とで構成することができる。このよう構成とすれば、筐体2内の圧力が高くなることによって、副ケース4内の圧力が筐体2内の圧力に対して負圧になり、筐体2内の圧力と副ケース2内の圧力との差が所定の大きさ(弾性体などが弁を押す力)より大きくなると、一方の弁が開放され、筐体2内の気体3が副ケース4内に流れ込むことによって、筐体2内の圧力を下げることができる。逆に、筐体2内の圧力が低くなることによって、筐体2内の圧力が副ケース2内の圧力に対して負圧になり、筐体2内の圧力と副ケース2内の圧力との差が所定の大きさ(弾性体などが弁を押す力)より大きくなると、他方の弁が開放され、副ケース4内から筐体2内へと気体3が流入することによって、筐体2内の圧力を上げることができる。
【0040】
開閉手段5は、上記例のように機械的な機構によって開閉を制御する形態に限られず、以下に説明するように電気的な機構によって開閉を制御する形態であってもよい。すなわち、筐体2内の圧力及び/又は副ケース4内の圧力を測定し、該測定結果に基づいた電気的信号によって開閉される弁を開閉手段5としてもよい。このように、電気的な機構によって開閉手段5の開閉を制御する場合、筐体2内の圧力、副ケース内4の圧力、又は、筐体2内の圧力と副ケース4内の圧力との差が所定の値になったときに開閉手段5を開閉することができる。
【0041】
筐体2内の圧力及び/又は副ケース4内の圧力を測定する場合、その測定手段は特に限定されない。当該測定手段としては、公知のセンサ(不図示)を用いることができる。筐体2内の圧力と副ケース4内の圧力との差は、公知のセンサによって筐体2内の圧力及び副ケース4内の圧力を計測することによって算出できる。
【0042】
筐体2内の圧力の変動が比較的小さい場合は、上述したように、開閉手段5を開放することによって自然に生じる気体3の流れで、筐体2と副ケース4との間で気体3の出し入れを行い、筐体2内の圧力(組電池1を加圧する気体3の圧力)の変動を緩和し、電池特性の変動を抑制することができると考えられる。なお、筐体2内の圧力の変動が比較的小さい場合とは、例えば、筐体2内の気体3の圧力の変動要因として、電池10の周囲の環境温度のみを考える場合等が考えられる。
【0043】
一方、筐体2内の圧力の変動が比較的大きい場合は、開閉手段5を開放したときに筐体2内の気体3を副ケース4内に強制的に送り込む送入手段(不図示)や、副ケース4内から筐体2内へと気体3を強制的に排出させる排出手段(不図示)を設けて、筐体2と副ケース4との間で強制的に気体3の流れを作ることが好ましい。かかる形態とすることによって、筐体2内の圧力が大きく変動した場合であっても対応することができる。上記送入手段や排出手段としては、特に限定されず、公知のポンプ等を用いることができる。なお、筐体2内の圧力の変動が比較的大きい場合とは、電池10を自動車等に搭載する場合であって、該車の衝突等によって筐体2が変形することを考慮する場合のほか、組電池1の発熱量が大きい場合、組電池1がショートする可能性を考慮する場合、電池10を低温(例えば、−30℃程度)で始動する用途に用いる場合等のように電池10の使用時の温度変化が大きいと想定される場合等が考えられる。
【0044】
なお、電池10に備えられる副ケース4の数は特に限定されず、1つであっても良いが、2つ以上設けられていてもよい。副ケース4が複数設けられる場合、それらの副ケース4はそれぞれ異なる開閉手段5を介して気体3を出し入れ可能であることが好ましい。かかる形態とすることによって、一つの開閉手段5にかかる負担を軽減できる。また、副ケース4を複数設けることによって、筐体2内の圧力制御を細かく行うことや、筐体2内の圧力制御を急速に行うことが容易になる。
【0045】
複数の副ケース4がそれぞれ異なる開閉手段5を介して気体3を出し入れ可能である場合、それらの開閉手段5の開閉条件は同一であってもよく、異なっていてもよい。ここで「開閉条件が同一である」とは、筐体2内の圧力、副ケース内4の圧力、又は、筐体2内の圧力と副ケース4内の圧力との差が所定の値となったときに開閉手段5が開閉するとした場合に、当該所定の値が同一であることを意味する。このように開閉手段5の開閉条件を同一とする場合、複数の開閉手段5の全てを同時に開閉させるのではなく、開閉する順序を規定してもよい。
【0046】
また、副ケース4は、体積が可変式であってもよい。開閉手段5を閉鎖した状態で副ケース4の体積を変化させることによって、筐体2内(筐体2の内側において気体3が充填された空間であって、副ケース4が備えられた空間を除く空間)の体積を変化させ、筐体2内の圧力を制御することができる。また、開閉手段5を開放した状態で副ケース4の体積を一定のまま、副ケース4の容積を変化させることによっても、筐体2内の圧力を制御することができる。副ケース4の体積を一定のまま、副ケース4の容積を変化させる方法としては、例えば、副ケース4内にピストン等を設けて、副ケース4内において気体3を取り込める空間の体積を可変にする方法が考えられる。
【0047】
上述したように、電池10では、開閉手段5及び副ケース4、場合によってはさらに、各種センサ、該センサの測定結果を処理する手段や該センサの測定結果に基づいて開閉手段5の開閉を制御する手段、送入手段、排出手段等も用いて、筐体2内の圧力を制御することができる。よって、電池10では、これらが圧力制御機構に含まれる。
【0048】
圧力制御機構は、筐体2内の圧力を0.1kg/cm以上、40kg/cm以下の範囲で制御できるとなるように構成することが好ましい。組電池1を加圧する気体3の圧力が下がりすぎると、組電池1に備えられる電池セルの電池特性が低下する虞がある。一方、組電池1を加圧する加圧する気体3の圧力が高くなりすぎると、組電池1に備えられる電池セルや筐体2が破損したり、組電池1に備えられる電池セルの電池特性が変化したりする虞がある。
【0049】
圧力制御機構によって制御できる筐体2内の圧力の範囲を、上記範囲内に調整する方法としては、開閉手段5の開閉条件、副ケース4の容積や数、筐体2内や副ケース4内に予め充填しておく気体3の量などを調整することが考えられる。
【0050】
電池10は、上記圧力制御機構を備えることによって、筐体2内の圧力の変動を緩和することができる。したがって、電池10によれば、筐体2内の電池セルに加えられる圧力が下がり過ぎる又は上がり過ぎることによって生じる上記問題の発生を抑制することができる。
【0051】
2.第2実施形態
図2は、第2実施形態にかかる本発明の電池20の構成を概略的に示す図である。図2において、図1と同様の構成のものには同じ符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0052】
電池20は、副ケース4に代えて、筐体2外に設けられた副ケース14及び配管6を備える以外は、上記電池10と同様とすることができる。また、配管6は気体3を流通可能な管であれば特に限定されない。よって、以下の電池20の説明では、副ケース14についてのみ説明する。
【0053】
副ケース14は、備えられる位置以外は上記副ケース4と同様とすることができ、同様の機能を備えさせることができる。ただし、副ケース14は筐体2外に設けられているため、副ケース14の体積を変化させても、上記副ケース4のように、筐体2内において気体3が充填された空間の体積を変化させることはない。しかしながら、筐体2と副ケース14との間では気体3が流通可能であり、気体3は筐体2内及び副ケース14内に充填されているため、開閉手段5を開放した状態で副ケース14の容積を変化させることによって、気体3が存在する空間全体の体積を変化させることができる。よって、副ケース14の容積を変化させることによっても、筐体2内の圧力を制御することができる。かかる形態とすることによって、筐体2と副ケース14との間で気体3の出し入れに加えて、副ケース14の容積変化によっても筐体2内の圧力を調整できるため、筐体2内の圧力を細かく制御することができる。また、副ケース14の体積を変化させることによって副ケース14の容積を変化させるようにすれば、筐体2内の圧力変化を視認し易くなる。
【0054】
電池20は、副ケース4に代えて副ケース14及び配管6を備える以外は、上記電池10に備えられる圧力制御機構と同様の圧力制御機構を備えており、電池10と同様に、筐体2内の圧力の変動を緩和することができる。したがって、電池20によれば、筐体2内の電池セルに加えられる圧力が下がり過ぎる又は上がり過ぎることによって生じる上記問題の発生を抑制することができる。
【0055】
なお、第1実施形態では副ケース4が筐体2内に備えられた形態を例示し、第2実施形態では副ケース14が筐体2外に備えられる形態を例示した。このように、本発明の電池は、副ケースを筐体内に設けても筐体外に設けてもよい。筐体内に副ケースを設ければ、筐体から突出する部分を減らすことができ、電池を様々な場所に設置し易くなる。また、筐体と副ケースとの連結構造が破損する可能性が下がるため、耐久性及び信頼性が向上する。一方、筐体外に副ケースを設ければ、電池の構成が簡単になるため、製造及び保守が容易になる。
【0056】
3.その他の実施形態
これまでの本発明の説明では、圧力制御機構が、筐体2内の気体3を出し入れ可能な副ケース4、14を備える形態について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。例えば、圧力制御機構は、筐体2内の気体3を筐体2外(例えば、大気中。)に放出可能な放出手段(不図示)、及び筐体2内に気体を供給可能な供給手段(不図示)を備えていてもよい。上記放出手段は、筐体2内の圧力に基づいて筐体2内の気体3を筐体2外に放出できる手段であれば、特に限定されない。このような放出手段としては、例えば、機械的又は電気的に制御された弁等を用いることができる。当該放出手段を筐体2に設けることによって、筐体2内の圧力が上がり過ぎた場合に、筐体2から気体3を放出し、筐体2内の圧力を任意の圧力まで下げることができる。また、上記供給手段は、筐体2内の圧力に基づいて筐体2内に気体を供給できる手段であれば、特に限定されない。このような供給手段としては、例えば、気体3が高い密度で充填されたボンベ等を用いることができる。当該供給手段を設けることによって、筐体2内の圧力が下がり過ぎた場合に、筐体2内に気体3を供給し、筐体2内の圧力を任意の圧力まで上げることができる。なお、供給手段は、筐体2内に設けられていてもよく、筐体2外に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の電池は、携帯機器、電気自動車、ハイブリッド車等の電源として用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 組電池
2 筐体
3 気体
4 副ケース
5 開閉手段
6 配管
10 電池
14 副ケース
20 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと、該電池セルを収容した筐体とを備え、前記電池セルを加圧する気体が前記筐体内に充填された電池であって、
前記筐体内の圧力を制御可能な圧力制御機構を備える、電池。
【請求項2】
前記圧力制御機構が、前記筐体内の気体を出し入れ可能な副ケースを備え、
前記副ケースは、開閉手段を介して前記気体を出し入れ可能であり、
前記開閉手段は、前記筐体内の圧力、前記副ケース内の圧力、又は、前記筐体内の圧力と前記副ケース内の圧力との差に基づいて開閉される、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記副ケースを複数備えており、
前記複数の副ケースが、それぞれ異なる前記開閉手段を介して、前記筐体内の気体を出し入れ可能である、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記副ケースが前記筐体内に備えられている、請求項2又は3に記載の電池。
【請求項5】
前記副ケースが前記筐体外に備えられている、請求項2又は3に記載の電池。
【請求項6】
前記副ケースの体積が可変である、請求項2〜5のいずれかに記載の電池。
【請求項7】
前記圧力制御機構が、前記筐体内の気体を前記副ケース内に強制的に送り込む送入手段を備える、請求項2〜6のいずれかに記載の電池。
【請求項8】
前記圧力制御機構が、前記副ケース内の気体を前記筐体内に強制的に排出させる排出手段を備える、請求項2〜7のいずれかに記載の電池。
【請求項9】
前記圧力制御機構が、前記筐体内の圧力に基づいて前記筐体内の気体を前記筐体外に放出可能な放出手段と、前記筐体内の圧力に基づいて前記筐体内に気体を供給可能な供給手段とを備えている、請求項1〜8のいずれかに記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−151080(P2012−151080A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29901(P2011−29901)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】