説明

電池

【課題】簡易な構成で、積層電極体の内部で発生した気泡の除去を促進し、これにより電池性能を向上した電池を提供する。
【解決手段】電池1は、セパレータ5を介して第1電極板と第2電極板とが積層された積層電極体6と、電解液又は電解質と、第1電極板に電気的に接続された第1電極端子と、第2電極板に電気的に接続された第2電極端子とを備え、電解液又は電解質と積層電極体6とを密閉して収納した電池容器と、積層電極体と電池容器との間に電池容器と一体又は別体に形成され、且つ、絞り出し方向に進むに従って次第にその厚みを減少する絞り出し部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池、特に電池性能を向上した電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池には、放電のみ行う一次電池や充放電が可能な二次電池が存在する。これらは一般的に、電極板、すなわち正極板および負極板がセパレータを介して積層された積層電極体を電解液等とともに電池容器に密閉した構成をしている。
そして、電池の充電または放電の際には、正極活物質、負極活物質、または電解液等の反応により、一般的に電池容器の内部に気泡が発生する。
当該気泡が積層電極体の内部に滞留すると、積層電極体の電極板のうち当該気泡に接触している部分は電極板間のイオン伝導への寄与が困難となるため、電池性能が劣化する恐れがある。
このため、電池容器の内部に当該気泡の流路を形成して、電池性能の劣化を防止する電池(特許文献1及び特許文献2参照)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−282143号公報
【特許文献2】特開2003−151635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電池は、電池容器の壁面と積層電極体との間に気泡の流路を形成したスペーサを配置するものであるため、積層電極体の内部で発生した気泡の除去を十分に行うことは困難であった。
一方、特許文献2の電池は、積層電極体内部に気泡の流路を形成した部材であるガラス繊維を配置しているので、積層電極体の内部で発生した気泡の除去も可能である。しかし、積層電極体の内部に電極板とセパレータ以外の当該部材を配置する必要があるので、電池性能を同じくした場合の電池の寸法は、当該部材を配置しない電池の方が当該部材を配置する電池に比べ小型化が可能となる。すなわち、当該部材を配置することで、電池が大型化する恐れがある。また、当該部材を加える必要があるため、製造コストが上昇する恐れがある。
そこで、本発明は、積層電極体の内部に上記部材を配置しない簡易な構成で、積層電極体の内部で発生した気泡の除去を促進し、これにより電池性能を向上した電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の電池は、セパレータを介して第1電極板と第2電極板とが積層された積層電極体と、電解液又は電解質と、前記第1電極板に電気的に接続された第1電極端子と、前記第2電極板に電気的に接続された第2電極端子とを備え、前記電解液又は前記電解質と前記積層電極体とを密閉して収納した電池容器と、前記積層電極体と前記電池容器との間に前記電池容器と一体又は別体に形成され、且つ、絞り出し方向に進むに従って次第にその厚みを減少する絞り出し部とを有することを特徴とする。
【0006】
すなわち、電池は充電又は放電の際に積層電極体が膨張するが、電池容器と積層電極体との間に絞り出し部を有することで、当該膨張に伴い、電池容器の内部で発生した気泡を絞り出し方向へ絞り出すとともに当該気泡を浮かび上がらせることができる。すなわち、当該気泡の浮上を促進して当該気泡が積層電極体の内部に滞留することを防止することができるので、優れた性能を示す電池を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池によれば、簡易な構成で、積層電極体の内部で発生した気泡の除去を促進し、これにより電池性能を向上した電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態の電池の概要図である。図1(a)は、電池の正面からの透視概要図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A´線におけるYZ断面概要図である。
【図2】図1に示した第1補助シート12aの概要図である。図2(a)は、最も近接する電池容器の壁面側の面のXZ平面概要図であり、図2(b)は、YZ平面概要図であり(ただし、当該壁面から遠ざかる方向が+Y方向)である。また、図2(c)は、図2(a)のB−B´線におけるXY断面概要図であり、図2(d)は、図2(a)のC−C´線におけるXY断面概要図である。
【図3】図1の電池の変形例を示し且つ図1(b)に相当する断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る電池は、積層電極体と電池容器の間に、電池容器と一体又は別体に形成され、且つ、後述の「絞り出し方向」に進むに従って次第にその厚みを減少する後述の「絞り出し部」により、電池の充電または放電による積層電極体の体積変化を利用して積層電極体の各電極板付近で発生した気泡を当該絞り出し方向へ絞り出し、結果として当該気泡の浮力の働く方向(重力の働く方向と逆方向)へ当該気泡を浮かび上がらせ(以下、「絞り出し機能」という)、これら電極板への当該気泡の滞留を低減すること特徴の1つとしている。以下、図面を参照しながら、詳述する。
なお、実施形態及びその変形例の電池としては、一次電池または二次電池等のいずれの電池でも用いることが可能であるが、ここでは電池の一例として、充放電可能な電池、例えば蓄電池であるリチウムイオン二次電池を用いて説明する。
【0010】
以下、本実施形態の電池1につき図1を参照して説明する。まず、電池1の構成の概要を説明した後、上記「絞り出し機能」につき説明する。
図1(a)は、電池1の正面(XZ平面)からの透視概要図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A´線のYZ平面における断面概要図である。なお、以下で使用する図1は、いずれも同一の直交座標系を用いている。また、図1(a)は理解促進のための概要図であるため、図1(b)に示した各構成が全て記載されているわけではない。
【0011】
まず、電池1は、XY平面上に略矩形の形状の底面をもち且つ当該略矩形の全ての辺からZ軸方向へ伸びる壁面をもつ角型の導電性(例えば、アルミニウム合金等の金属製)の容器本体2と、容器本体2に収納され且つ正極板3と負極板4とがセパレータ5を介して積層された積層電極体6と、積層電極体6を容器本体2に収納後に容器本体2を密閉する蓋7とを備えている(容器本体2と蓋7とがレーザー溶接等にて密閉されて「電池容器」となる)。なお、図示しないものの、電池容器には電解液又は電解質が蓄えられる。
ここで、蓋7は容器本体2と同一の材質である。そして、蓋7には、蓋7を貫通して配置される円柱状(XY平面における断面形状が実質的に直径rの円)の電極端子(正極端子8及び負極端子9)と、電極端子を蓋7に固定し且つ電極端子と蓋7との間を電気的に絶縁する絶縁性の樹脂10(例えば、プラスチック樹脂等)が形成されている。
上述のように本実施形態では一例として導電性の電池容器として説明するので、積層電極体6と電池容器との間を電気的に絶縁すべく、容器本体2の内側の底面に当該底面と実質的に同じ形状及び寸法の絶縁性の樹脂板11(例えば、プラスチック樹脂製のシート)を配置している。また、容器本体2の底面以外の他の壁面については、後述の絶縁性樹脂からなる一対の第1補助シート12(12a、12b)及び一対の第2補助シート13が配置される。
具体的には、積層電極体6を、−Y方向と+Y方向から一対の第1補助シート12(12a、12b)で挟み込み、また、−X方向と+X方向から一対の第2補助シート13で挟み込み、これら4つの補助シートを互いに絶縁テープで固定して1つのユニットとした上で、当該ユニットを容器本体2に挿入する。この際、これら補助シートは、積層電極体6が直接的に容器本体2に接触して損傷することを防止し且つ積層電極体を円滑に容器本体2に挿入するための挿入ガイドとして機能することができる。
【0012】
積層電極体6は、一例として、複数の正極板3と複数の負極板4とがセパレータ5を介して順次積層された積層型の積層電極体であるとして、以下説明する。
正極板3は、アルミニウム等の正極用金属箔の両面にマンガン酸リチウム等の正極活物質が塗工された後、略矩形に打ち抜かれて形成される。この打ち抜きの際、正極活物質が塗工されていない正極用金属箔も正極板3と一体に打ち抜かれ、当該正極用金属箔は正極板3に接続した正極タブ14となる。
一方、負極板4は、銅等の負極用金属箔の両面にカーボン等の負極活物質が塗工された後、略矩形に打ち抜かれて形成される。この打ち抜きの際、負極活物質が塗工されていない負極用金属箔も負極板4と一体に打ち抜かれ、当該負極用金属箔は負極板4に接続した負極タブ15となる。負極板4のXZ平面における略矩形の寸法は、電池容器の内部に折れ曲がることなく収納される寸法であり、正極板3のXZ平面における略矩形の寸法は、負極板4のXZ平面における略矩形の寸法よりも小さい。従って、図1(a)に示すように、Y方向から見て、正極板3は負極板4の面内に配置される。また、負極タブ15は、正極板3と負極板4とを後述のようにY方向に積層した際に、XZ平面上で正極タブ14と重ならない位置に配置される。
セパレータ5は、樹脂製のセパレータであっても、セラミックセパレータであっても、いわゆる電池に用いることができるセパレータであればよい。ここでは、セパレータ5は袋状に形成され、当該袋の内部に正極板3の全面が収められ且つ当該袋の内部から外部へ正極タブ14が突出するように当該袋の寸法が設計される。
なお、袋状のセパレータの内部に電極板(正極板3または負極板4)の全面が収められ且つ当該袋の内部から外部へ電極タブ(正極タブ14または負極タブ15)が飛び出している状態を「内包」という。
【0013】
そして、正極板3より寸法の大きな負極板4から積層を始め、負極板4の上(+Y方向)に上記袋状のセパレータ5で包まれた正極板3を積層し、次に、当該セパレータ5で包まれた正極板3の上(+Y方向)に負極板4を積層する。この際、積層される複数の正極板3は、それぞれに接続された各々の正極タブ14のXZ平面における位置を揃えて積層される。また、積層される複数の負極板4は、それぞれに接続された各々の負極タブ15のXZ平面における位置を揃えて積層される。
これを順次繰り返し、最終的に複数の正極板3と複数の負極板4からなり且つYZ平面をX方向から見たY方向の両端に負極板4が配置される積層電極体6が形成される。
なお、Y方向から見て実質的に同じ位置に揃えられた全ての正極タブ14は、リベット打ち又は溶接等で、正極端子8に電気的に接続される。この際、正極タブ14を直接的に正極端子8に接続してもよいし、正極タブ14と正極端子8との間に金属製の正極用リードを介在させてもよい。また、Y方向から見て実質的に同じ位置に揃えられた全ての負極タブ15は、リベット打ち又は溶接等で、負極端子9に電気的に接続される。この際、負極タブ15を直接的に負極端子9に接続してもよいし、負極タブ15と負極端子9との間に金属製の負極用リードを介在させてもよい。
【0014】
次に、第1補助シート12及び第2補助シート13につき、説明する。まず、図2を用いて、第1補助シート12の説明を行う。上述の「絞り出し部」である第1補助シート12aと12bはいずれも同じ形状であるので、図2では第1補助シート12aを代表的に示している。
図2(a)は、最も近接する電池容器の壁面側の第1補助シート12aの面(以下、第1面という)のXZ平面概要図である。同図に示すように、第1面は略矩形である。具体的には、電池容器2のXZ平面におけるX方向の内壁間の幅と、電池容器2の内壁のZ方向の長さよりも小さく且つ積層電極体6のZ方向の高さ以上の長さを実質的に備えた略矩形の形状である。
また、第1補助シート12aには、第1面の−Z側の端部から+Z側の端部までZ方向に延びる溝状の凹部16がX方向に複数本(ここでは9本)形成され、且つ、これらは互いに均等間隔で形成されている。ここでは、図2(c)に示す図2(a)のB−B´線断面図のように、凹部16の形状は略矩形の形状としているが、後述の気泡が電池容器の底面側(−Z方向)から蓋7側(+Z方向)へ浮力により上昇できる通路として機能を備えていればいかなる形状でもよいので、例えば半円形状としてもよい。
さらに、第1補助シート12aには、図2(d)に示す図2(a)のC−C´線断面図のように、第1面から裏面(以下、第2面という)へ貫通する貫通孔17が凹部16に複数形成されている。ここでは、XZ平面で円状の7つの貫通孔17が1つの凹部16に形成されているが、上記気泡及び電解液を円滑に通過させることができればよいので、貫通孔17の形状は円状でなくともよく、また、1つの凹部16に形成される貫通孔17の数も適宜変更可能である。
【0015】
第1補助シート12aの上記第2面は、後述の気泡の「絞り出し機能」を持たせるため、第1面の−Z側の端部から+Z側の端部まで+Z方向に進むにつれて、第2面が次第に第1面に近づく形状(以下、「絞り出し形状」という)に設計される。なお、絞り出し形状に沿って第2面が次第に第1面に近づいてゆく方向を「絞り出し方向」という。
言い換えれば、第1補助シート12aは、「絞り出し方向」に進むに従って次第にそのY方向の寸法(厚み)を減少するよう設計される。図2(b)のYZ断面図では、第2面の形状は、Z方向に配置された第1面に対し、第1面の−Z側の端部から所定距離L(例えば、3mm≦L≦5mm)だけ+Y方向へ離れた端部から、αの角度(例えば、45°<α<90°)で第1面へ向けて直線を引いた形状としている。上記絞り出し形状であれば必ずしも当該直線でなくともよいので、当該直線に対応する部分を例えば曲線としてもよい。ただし、第2面には、積層電極体6の電極板が接触するので、当該電極板に損傷を与えないよう、凹凸のない実質的に一様に滑らかな面とするのが望ましい。
【0016】
第2補助シート13は、図1のYZ平面上で略矩形の形状である。具体的には、電池容器2のYZ平面におけるY方向の内壁間の幅と、電池容器2の内壁のZ方向の長さよりも小さく且つ積層電極体6のZ方向の高さ以上の長さを備えた略矩形の形状である。
第2補助シート13は、第1補助シート12と異なり、絞り出し形状を備えていないが、その他(ただし、寸法を除く)は第1補助シート12と同様の構成である。具体的には、第2補助シート13は、図1のYZ平面と実質的に平行な2つの平面(表面と裏面)を備え、当該2つの平面のうち一方の平面(表面)には凹部16に相当する複数の溝が形成され、また、貫通孔17に相当する複数の貫通孔が当該溝に形成されている。当該表面は電池容器の壁面に、また、当該裏面は積層電極体に向けて配置されるので、当該2つの平面のうち他方の面(裏面)には積層電極体6の電極板が接触することになる。従って、当該裏面は、電極板に損傷を与えないよう、凹凸のない実質的に一様に滑らかな面とするのが望ましい。
【0017】
では、「絞り出し機能」につき説明する。上述のように、一対の第1補助シート12と一対の第2補助シート13と積層電極体6は、1つのユニットとして、電池容器の内部に収納されている。ここで、2つの第1補助シート12(12a及び12b)は、積層電極体6の電極板の積層方向(Y方向)に存在する積層電極体6の2つの端面のうち、−Y側の端面に第1補助シート12aの第2面が接し、+Y側の端面に第1補助シート12bの第2面が接するように配置される。また、2つの第2補助シート13は、上記積層方向(Y方向)に垂直且つ電極タブが電極板から突出する方向(+Z方向)と垂直方向(X方向)に存在する積層電極体6の2つの端面のうち、−X側の端面に一方の第2補助シート13の裏面が接し、+X側の端面に他方の第2補助シート13の裏面が接するように配置される。
そして、電池1の充放電がなされると、電解液又は電解質が分解等することで気泡が発生し、このうち積層電極体6の内部で発生した微細な気泡は正極板3及び負極板4の表面、すなわち電極板表面に付着する。図1のように電池1が配置される場合には、当該気泡の浮力は電池容器の底から蓋7に向かって重力と反対方向である+Z方向に働くので、一定量の気泡は電池容器内の蓋7の周辺まで自然に上昇してここに溜まることになる。しかし、積層電極体6の内部で発生した一部の気泡は、例えば隣り合う電極板同士で圧迫されて、自然には浮力によって上昇できず、結果として電極板の表面に気泡が付着した状態が維持される場合がある。かように電極板の表面に気泡が滞留すると、気泡に接している電極板はイオンの移動に寄与できなくなるため、電池の能力が低減する恐れがある。
そこで、当該電池の能力の低減を防止するために、電池1は、絞り出し部による「絞り出し機能」を備えている。「絞り出し機能」は、電極板の表面に付着して、自然には又は放置しては浮力によって上昇困難な気泡をも絞り出し部の「絞り出し形状」によって「絞り出し方向」へ絞り出し、当該気泡を蓋7の周辺まで浮かび上がらせる機能であり、電池1の充放電により積層方向(Y方向)に膨張・収縮する積層電極体6の動きを積極的に利用するものである。これを以下、詳述する。
【0018】
上記ユニットとする際に使用された絶縁テープの糊は電解液等の中では変質するため、結果として、当該絶縁テープは電池容器内で緩んでいる。このため、正極活物質と負極活物質が上記の二次電池の場合、電池1の充電により、当該絶縁テープの影響を実質的に受けずに、積層電極体6の各負極板4の負極活物質はXZ平面上のいずれの位置でも実質的に同じ程度だけ積層方向(Y方向)に膨張する。
従って、充電が進むことで当該膨張の量が大きくなると、一対の第1補助シート12は、電池容器の底から蓋7に向かって、すなわち−Z側から+Z側へ、次第にそれぞれの第2面で積層電極体6に接してゆくことになる。このとき、一対の第1補助シート12のそれぞれの第1面が電池容器の壁面に接すると、第1補助シート12が積層電極体6の膨張に従ってY方向へ移動することがもはや困難となる。
このため、電池容器の壁面にそれぞれの第1補助シート12の第1面が接触した状態で積層電極体6がさらに膨張を続けると、積層電極体6が第1補助シート12の第2面を電池容器の底から蓋7に向かって(+Z方向に向かって)順次圧迫してゆくことになる。すなわち、2つの第1補助シート12の第2面同士の積層方向(Y方向)における間隔は、電池容器の底から蓋7に向かって次第に広く、言い換えれば、気泡の浮力の働く方向と垂直方向且つ当該積層方向の電池容器内部の「絞り出し部」間の距離は「絞り出し方向」へ向かって次第に広くなるため、積層電極体6の各負極板4の負極活物質がXZ平面上のいずれの位置でも同じ幅だけ積層方向(Y方向)に膨張しようとすると、積層電極体6は、自身の膨張力により電池容器の底の方から次第に加圧されてゆくことになる。
さらに言い換えれば、電池1は、「絞り出し部」である第1補助シート12の「絞り出し形状」により、積層電極体6の電極板間に加わる圧力が、電池容器の底から蓋7に向かう方向に次第に減少する構成、且つ、当該圧力の値が電極板の活物質が塗工されている箇所のいずれの箇所でも同量だけ次第に増加する構成となる。
このため、電極板に付着した気泡を、「絞り出し方向」へ効果的に絞り出し、当該気泡の浮力の働く方向へ当該気泡を浮かび上がらせることができる。
【0019】
以上の簡易な構成によって、積層電極体の内部で発生した気泡を浮かび上がらせることで当該内部からの当該気泡の除去を促進し、これにより電池性能を向上した電池を提供することができる。
なお、上記の実施形態では、積層電極体6を1つだけ電池容器に収納していたが、図3の変形例のように複数の積層電極体6(ここでは、積層電極体6aと6b)のそれぞれを図1と同様にユニット化して、電池容器に収納する構成としてもよい。ただし、この場合には、各補助シートが電極タブ14、15と対応する電極端子8、9との電気的接続の障害とならないように、積層電極体6をユニット化するのが望ましい。このため、図3では、積層電極体6aは、第1補助シート12aと、図1の第1補助シート12bに対応して配置され且つ第1補助シート12bよりもZ方向の寸法が小さく且つそれ以外は第1補助シート12bと同様の構成の第1補助シート12cとで挟まれてユニット化されている。また、積層電極体6bは、第1補助シート12bと、図1の第1補助シート12aに対応して配置され且つ第1補助シート12aよりもZ方向の寸法が小さく且つそれ以外は第1補助シート12aと同様の構成の第1補助シート12dとで挟まれてユニット化されている。
【0020】
また、図1又は図3の電池では-Z方向を重力方向としたため、重力方向の逆方向と絞り出し方向がほぼ同様の方向となった。しかし、例えば、当該電池を横向きに据える場合にも、積層電極体の内部で発生した気泡の除去を促進することができる。すなわち、図1又は図3の電池において、例えば+X方向が重力方向となる場合がありうる。この場合には、絞り出し方向と気泡の浮力の働く方向である重力方向の逆方向は必ずしも同様ではないが、絞り出し方向に絞り出された気泡はその後に自身の浮力により浮かび上がるので、積層電極体の内部への当該気泡の滞留を減少させることができる。
【0021】
本発明は上述した実施形態及びこれらの組み合わせに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りで種々の変形が可能である。例えば、電池容器の形状は角型として説明したが、円筒型であってもよい。同様に、上記積層電極体6は、複数の正極板と複数の負極板とがそれぞれセパレータを介して順次積層された積層電極体(積層型積層電極体)でもよいし、1つの正極板と1つの負極板とが1つのセパレータを介して積層され且つ巻かれた状態の積層電極体(捲回型積層電極体)でもよい。捲回型積層電極体の場合には、第1補助シート12で捲回型積層電極体の周囲を覆うよう構成すれば上記の実施形態と同様の効果が得られる。
また、電池容器は、導電性の材質として説明したが、プラスチック樹脂等の絶縁性の材質としてもよい。なお、電池容器が絶縁性の材質で形成された場合あっても、積層電極体6を損傷なく電池容器に収納するためには、挿入ガイドとして機能する第1補助シート12又は第2補助シート13等の補助シートは極めて有用である。
さらに、積層電極体6の寸法に比べ電池容器の寸法が大きい等のため挿入ガイドの機能が重視されない場合には、電池容器を形成する際に、絞り出し部である第1補助シート12の備えた「絞り出し形状」に相当する形状を、当該電池容器の内壁として型等により同一材料で一体に成形してもよい。この場合には、当該内壁自体が絞り出し部となる。もちろん、第1補助シート12のように電池容器と別体に形成してもよい。
その上、第1補助シート12と第2補助シート13は、それぞれ同一の材質であっても、異なる材質であってもよい。また、第1補助シートは、厚みと張りのある板状のシートであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1…電池、2…収納容器、3…正極板、4…負極板、5…セパレータ、
6…積層電極体、7…蓋、8…正極端子、9…負極端子、
10…絶縁性樹脂、11…絶縁性樹脂板、
12(12a〜12d)…第1補助シート、13…第2補助シート、
14…正極タブ、15…負極タブ、
16…凹部(溝)、17…貫通孔、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して第1電極板と第2電極板とが積層された積層電極体と、
電解液又は電解質と、
前記第1電極板に電気的に接続された第1電極端子と、前記第2電極板に電気的に接続された第2電極端子とを備え、前記電解液又は前記電解質と前記積層電極体とを密閉して収納した電池容器と、
前記積層電極体と前記電池容器との間に前記電池容器と一体又は別体に形成され、且つ、絞り出し方向に進むに従って次第にその厚みを減少する絞り出し部と
を有することを特徴とする電池。
【請求項2】
前記絞り出し部は、前記電池容器とは別体として形成された絶縁性の補助シートであり、
前記電池の充電又は放電に伴う前記積層電極体の体積変化によって、前記積層電極体の内部に生じた気泡が前記絞り出し方向へ絞り出されて浮かび上がるのを促進することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記補助シートは、前記電池容器に接することができる面に、重力方向に沿って凹部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記補助シートは、前記凹部に、前記補助シートを貫通する貫通孔を備えていることを特徴とする請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記絞り出し部は前記電池容器と一体に形成されており、前記電池の充電又は放電に伴う前記積層電極体の体積変化によって、前記積層電極体の内部に生じた気泡が前記絞り出し方向へ絞り出されて浮かび上がるのを促進することを特徴とする請求項1に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−209131(P2012−209131A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73892(P2011−73892)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】