説明

電波吸収部材およびシールド蓋部材

【目的】本発明は、電波吸収部材およびシールド蓋部材に関し、既存の回路にも適用可能であり、かつ体積の増加を最小限度に抑えつつ実装および調整の省力化が実現され、さらに、性能が高く安定に維持されることを目的とする。
【解決手段】接地される導体部材に接する第一の面と、占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を個別に処理する複数の回路が配置される回路基板の一方の面に接する第二の面と、前記複数の回路が配置された前記回路基板上の異なる領域に個別に対峙し、かつ前記複数の回路の間のアイソレーションが図られ、かつ前記複数の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成された溝を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、占有帯域の全てまたは一部が同じである高周波信号を個別に処理し、あるいは生成する複数の回路が配置された回路基板の実装に供される電波吸収部材およびシールド蓋部材に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置の受信部では、目標から到来した受信波は、例えば、図7に示すように、方向性結合器71によって2つの信号に分割される。これらの2つの信号の内、一方の信号は増幅器72によって増幅された後、局部発振器(OSC)73によって生成された第一の局発信号が注入される周波数変換器74によって第一の中間周波信号に変換され、後段に配置された第一の中間周波増幅部(図示されない。)に引き渡される。また、上記2つの信号の内、他方の信号は、局部発振器73によって生成された第二の局発信号か注入される周波数変換器75によって第二の中間周波信号に変換され、後段に配置された第二の中間周波増幅部(図示されない。)に引き渡される。なお、上述した第一の中間周波信号および第二の中間周波信号は、それぞれ遠いレンジと近いレンジとに位置する目標の測位や測距のために用いられる。
【0003】
従来、このようなレーダ装置の受信部は、増幅器72および周波数変換器74が実装された第一のユニット81と、第二の周波数変換器75が実装された第二のユニット82と、局部発振器73が実装された第三のユニット83とがそれぞれ所定のキャビティに実装され、かつ相互に結線されることによって構成されていた。
【0004】
しかし、近年、レーダ装置に対する高性能化、低廉化および小型化の厳しい要求を満たすために、上記受信部は、方向性結合器71、増幅器72、局部発振器73および周波数変換器74、75が1枚の基板上に実装される1つのユニットとして構成されつつある。また、このような1枚の回路基板は、一般に、受信波の占有帯域内に分布する雑音等がアンテナ以外の外部から直接入力されることを防止するために、金属製のキャビティ等のようなシールドケース内に実装される。
【0005】
なお、本発明に関連した先行技術としては、特許文献1〜5に開示される以下の技術がある。
(1) 信号源と付加回路とを結ぶ信号伝送用の導電路と信号帰還用の導電路の配置に特徴があり、このような配置の下で回路配線基板からの電磁波の放射を防止できる点に特徴がある電子回路配線基板及び電子回路配線方法…特許文献1
【0006】
(2) 電波吸収体または高い抵抗性金属材料が充填されたビアホールによって、高周波集積回路が埋め込まれるキャビティ部が取り囲まれ、さらに、高いアイソレーションを必要とする2つの信号パターン間に電波吸収体または高抵抗性金属材料が充填されたビアホールが配置されることによって、共振による発振または周波数特性の劣化が防止され、かつ設計上の制約が緩和されると共に、高い周波数まで高密度に集積回路化でき、しかも、信号パターン間に高いアイソレーションを実現することができる点に特徴があるマイクロ波集積回路…特許文献2
【0007】
(3) 電源電位とグランド電位との電位差から生じる電界を吸収する電波吸収体が筐体の内部に設置され、電源ノイズ源と無線通信基板との距離を大きく離さずにノイズの影響を低減した点に特徴があるプリント配線基板および無線通信装置…特許文献3
【0008】
(4) リード線等の導電性部品が貫通するキャップの内側に電吸収体が設けられることにより、入力部から漏洩するマイクロ波が効率的に吸収され、かつパルス動作をする場合でも、パルス特性に影響を与えない点に特徴があるマイクロ波発振素子…特許文献4
【0009】
(5) プリント配線板の上にある電子部品の周辺に設けられた多数の小穴にシールド材が充填されることにより、簡単な構成で電磁障害を低減する点に特徴があるプリント配線板および電子機器…特許文献5
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−172308号公報
【特許文献2】特開平8−162559号公報
【特許文献3】特開2004−363392号公報
【特許文献4】特開2006−127767号公報
【特許文献5】特開2002−76538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した金属製のシールドケースは、そのシールドケースの接地が必ずしも理想的には実現されないため、回路基板より放射された電磁波を反射したり再放射し、しかも、その回路基板上で特定の周波数に対する共振条件を満たす場合には、設計時に予測されていなかった発振現象が生じる原因となる可能性がある。
【0012】
また、シールドケースの構造によっては、そのシールドケースの表面において生じる全反射による伝搬により、回路基板上に好ましくない結合が生じ、そのために、本来行われるべき正常な動作が妨げられる場合がある。
これらの問題点は、各部の特性、配置(実装)および回路基板上に形成される導線に併せて、シールドケースの特性や配置が十分に考慮されることによる最適化設計によって、理論的には解決される可能性がある。しかし、このような最適化設計が行われた場合であっても、各部の特性のバラツキや相互干渉に起因して正常な動作が妨げられる可能性があった。
【0013】
しかし、一般に、高周波回路の特性は、シールドケースの有無で大きく異なり、例えば、シールドケースが実装された状態における調整の工程で所望の特性が得られ、かつ安定に維持されるためには、回路基板を含む各部の設計が総合的に行われなければなない。
したがって、単一の回路基板上に配置された複数の回路にシールドケースをそのまま使用することは、実際には困難であった。
【0014】
本発明は、既存の回路にも適用可能であり、かつ体積の増加を最小限度に抑えつつ実装および調整の省力化が実現され、さらに、性能が高く安定に維持される電波吸収部材およびシールド蓋部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明では、後述する第一の面、第二の面および溝を有する。その第一の面は、接地される導体部材に接する。また、第二の面は、占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を個別に処理し、あるいは生成する複数の回路が配置された回路基板の一方の面に接する。さらに、溝は、前記複数の回路がそれぞれ配置された前記回路基板上の異なる領域を個別に被装すると共に、前記複数の回路の間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電波吸収部材によって生じる前記複数の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成される。
【0016】
すなわち、上記複数の回路は、同じ回路基板上に配置されるにもかかわらず、何れも、特性の変化が許容される限度内に抑えられつつ相互間のアイソレーションが確保される。また、本発明に係る電波吸収部材の寸法は、その電波吸収部材として用いられる電波吸収体の特性や性能が最大限に活用されるため、最小限度に抑えられる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電波吸収部材にさらに溝が付加されることによって構成される。このように付加される溝は、前記複数の高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特定の回路が配置された前記回路基板上の特定の領域を被装し、前記特定の回路と複数の回路との間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記特定の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成される。
【0018】
すなわち、上記高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特性の回路は、その高周波信号を処理し、あるいは生成する複数の回路と共に同じ回路基板上に配置されるにもかかわらず、特性の変化が許容される限度内に抑えられつつこれらの複数の回路との相互間のアイソレーションが確保される。また、本発明に係る電波吸収部材の寸法は、その電波吸収部材として用いられる電波吸収体の特性や性能が最大限に活用されるため、最小限度に抑えられる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、電波吸収体は、占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を個別に処理しあるいは生成する複数の回路が配置された回路基板の一方の面に布設される。導体部材は、前記電波吸収体の面の内、前記回路基板が布設される面と反対の面に着設され、かつ接地される。前記電波吸収体は、前記複数の回路がそれぞれ配置された前記回路基板上の異なる領域を個別に被装する溝を有する。前記溝は、前記複数の回路の間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記複数の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成される。
【0020】
すなわち、上記複数の回路は、同じ回路基板上に配置されるにもかかわらず、何れも、特性の変化が許容される限度内に抑えられつつ相互間のアイソレーションが確保される。また、上記電波吸収部材の寸法は、その電波吸収部材の特性や性能が最大限に活用されるため、最小限度に抑えられる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のシールド蓋部材にさらに溝が付加されることによって構成される。このように付加される溝は、前記複数の高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特定の回路が配置された前記回路基板上の特定の領域を被装すると共に、前記特定の回路と複数の回路との間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記特定の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成される。
【0022】
すなわち、上記高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特性の回路は、その高周波信号を処理し、あるいは生成する複数の回路と共に同じ回路基板上に配置されるにもかかわらず、特性の変化が許容される限度内に抑えられつつこれらの複数の回路との相互間のアイソレーションが確保される。また、電波吸収部材の寸法は、その電波吸収部材として用いられる電波吸収体の特性や性能が最大限に活用されるため、最小限度に抑えられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、大幅な設計の見直しや調整工数の増加を伴うことなく、安価に電子装置や電子機器の所望の性能の実現と安定化とが図られる。
本発明では、回路基板上における部品配置の自由度が高められ、その回路基板上に配置された複数の回路の好適な動作および性能が安定に確保される。
【0024】
本発明では、共通の回路基板上に配置された複数の回路に外部から到来し得る雑音の抑圧が図られ、この回路基板が導体製の筐体に収納された場合であっても、該当する筐体が空洞共振器として作動することが回避される。
したがって、本発明が適用された電子装置や電子機器では、設計、製造、調整、保守にかかわる制約が大幅に緩和され、かつ価格性能比、性能および信頼性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の斜視図である。
【図2】本実施形態の断面図を示す図である。
【図3】本実施形態における回路基板の部品面を示す図である。
【図4】本実施形態における電波吸収部材の外観を示す図である。
【図5】本実施形態における電波吸収部材の構造を示す図である。
【図6】本実施形態における導体部材の上面図を示す図である。
【図7】レーダ装置の受信部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の斜視図である。
図2は、本実施形態の断面図を示す図である。
図1および図2において、回路基板11は、アルミニューム等の導体で構成されたキャビティ12の頂部に設けられた矩形枠の一端に配置される。キャビティ12の側壁の内、その矩形枠の一端に最も近い側壁には、図示されないアンテナの給電点に結合する導波管13との結合を実現する素子が挿通される。回路基板11の部品面には、板状の電波吸収部材14および板状の導体部材15が積層され、かつネジ止めにより固定される。キャビティ12の頂部(上記矩形の溝)の開口部は、導体製の蓋部材16がネジ止めにより塞がれる。
【0027】
回路基板11には、図7に示す方向性結合器71、増幅器72、局部発振器73および周波数変換器74、75が図3に示すように配置される。
電波吸収部材14の底面(回路基板11の部品面に接触する面)には、図4(底面から見た斜視図)と、図5のハンチング部とに示すように、後述する溝14dが予め形成される。
【0028】
導体部材15は、平板状の導体で構成され、図6に示すように、既述のネジ止めに供されるネジが貫通する孔を有する。
【0029】
以下、図1ないし図6を参照して本実施形態の動作を説明する。
本発明の特徴は、本実施形態では、電波吸収部材14に形成される溝14dとその電波吸収部材14との形状および寸法にある。
電波吸収部材14は、形状および寸法が回路基板11の部品面とほぼ同じ平板状の電波吸収体に、既述のネジ止めに供されるネジが貫通する孔と、溝14dとが形成されることによって構成される。
【0030】
したがって、電波吸収部材14の底面の内、溝14dが形成されている面は、回路基板11の部品面の内、部品が配置されていない部分に直接接する。
また、溝14dは、図3および図4と、図5のハンチング部とに示すように、以下の条件(1)〜(4)を満たす。
【0031】
(1) 方向性結合器71、増幅器72、局部発振器73および周波数変換器74、75と、これらの段間に形成される導線と、導波管13から方向性結合器71に至る導線と、周波数変換器74、75の出力から既述の第一および第二中間周波数増幅部(何れも回路基板11の外部に配置される。)に至る導線との全てをアーチ状に覆う形状で形成される。
【0032】
(2) 図7に示す第一のユニット81、第二のユニット82、第三のユニット83にそれぞれ対応する3つの部分で個別に連なったアーチ状の覆いとして形成される。
【0033】
(3) 上記第一のユニット81および第二のユニット82に対応する2つの部分における深さは、既述の受信波の伝搬が疎外されない程度に大きく設定される。
【0034】
(4) 上記第三のユニット83に対応する部分における深さは、既述の局発信号(局部発振器73によって生成される。)が減衰する程度と、その局発信号の周波数が変化する程度とが許容可能である値に設定される。
【0035】
さらに、電波吸収部材14の厚みは、以下の条件(1)〜(4)が成立する値に設定される。
(1) 上記3つの部分において、電磁吸収部材14と、その電磁吸収部材14の上に積層されている導体部材15との間における浮遊容量に起因する特性の変化や劣化が許容される程度に抑えられる。
【0036】
(2) これらの3つの部分において、電磁吸収部材14によって完全には吸収されることなく導体部材15に到達し、その導体部材15によって電波吸収部材14側に反射したり、再放射される受信波や局発信号は、図2に矢印で示されるように、この電波吸収部材14によって十分に吸収される。
【0037】
(3) 電波吸収部材14が介在する空間を介して上記3つの部分の間で直接伝搬する受信波や局発信号のレベルが許容される程度に小さな値となる。
(4) 望ましくは、電源線やバイアス回路と信号線との間の結合が抑圧されることによってデカップリングが十分に図られる。
すなわち、本実施形態では、従来、第一のユニット81、第二のユニット82および第三のユニット83が1枚の回路基板11上に配置されるにもかかわらず、性能や特性が劣化することなく、これらのユニットの間におけるアイソレーションが十分に図られる。
【0038】
しかも、このようなアイソレーションを実現するために回路基板11と導体部材15との間に介装される電波吸収部材14の寸法は、その電波吸収部材14を構成する電波吸収体の特性や性能が最大限に活用されるため、最小限度に抑えられる。
【0039】
したがって、本実施形態が適用されたレーダ装置は、大幅な設計の見直しや調整工数の増加を伴うことなく、安価に所望の性能の実現と安定化とが図られる。
また、本発明は、以下のパラメータ(1)〜(6)の内、何れかに制約がある場合であっても、他のパラメータの設定が可能であるならば、適用可能である。
【0040】
(1) 電波吸収部材14として用いられる電波吸収体が有効に作用する周波数帯
(2) その周波数帯における電波吸収体の特性(吸収率等を含む。)
(3) 溝14dの配置
(4) 溝14dの形状
(5) 溝14dの寸法
(6) 溝14dの深さ
【0041】
なお、本発明は、既述のレーダ装置の受信部に限定されず、占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を処理し、あるいは生成する複数の回路が配置された1枚の回路基板が備えられる如何なる電子装置や電子機器にも適用可能である。
本発明は、上記複数の回路が3つ以上である場合にも、同様に適用可能である。
【0042】
本発明は、占有帯域に電波吸収部材14によって吸収が行われる周波数帯が属するならば、どのような高周波信号の処理や生成が行われる場合にも適用可能である。
本発明に適用可能な電波吸収体は、所望の周波数帯の高周波信号が所望の吸収率で吸収されるならば、例えば、電波吸収特性を有する素材が混入された誘電体材料、フェライトその他の磁性材料等の如何なるものであってもよい。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0044】
以下、本願に開示された発明を整理し、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0045】
[請求項1] 接地される導体部材に接する第一の面と、
占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を個別に処理し、あるいは生成する複数の回路が配置された回路基板の一方の面に接する第二の面と、
前記複数の回路がそれぞれ配置された前記回路基板上の異なる領域を個別に被装する溝とを有する電波吸収部材であって、
前記溝は、
前記複数の回路の間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電波吸収部材によって生じる前記複数の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成された
ことを特徴とする電波吸収部材。
このような構成の電波吸収部材は、後述する第一の面、第二の面および溝を有する。その第一の面は、接地される導体部材に接する。また、第二の面は、占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を個別に処理し、あるいは生成する複数の回路が配置された回路基板の一方の面に接する。さらに、溝は、前記複数の回路がそれぞれ配置された前記回路基板上の異なる領域を個別に被装すると共に、前記複数の回路の間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電波吸収部材によって生じる前記複数の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成される。
すなわち、上記複数の回路は、同じ回路基板上に配置されるにもかかわらず、何れも、特性の変化が許容される限度内に抑えられつつ相互間のアイソレーションが確保される。また、本発明に係る電波吸収部材の寸法は、その電波吸収部材として用いられる電波吸収体の特性や性能が最大限に活用されるため、最小限度に抑えられる。
したがって、本発明が適用された電子装置や電子機器は、大幅な設計の見直しや調整工数の増加を伴うことなく、安価に所望の性能の実現と安定化とが図られる。
【0046】
[請求項2] 請求項1に記載の電波吸収部材において、
前記複数の高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特定の回路が配置された前記回路基板上の特定の領域を被装し、前記特定の回路と複数の回路との間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記特定の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成された溝を有する
ことを特徴とする電波吸収部材。
このような構成の電波吸収部材は、請求項1に記載の電波吸収部材にさらに溝が付加されることによって構成される。このように付加される溝は、前記複数の高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特定の回路が配置された前記回路基板上の特定の領域を被装し、前記特定の回路と複数の回路との間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記特定の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成される。
すなわち、上記高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特性の回路は、その高周波信号を処理し、あるいは生成する複数の回路と共に同じ回路基板上に配置されるにもかかわらず、特性の変化が許容される限度内に抑えられつつこれらの複数の回路との相互間のアイソレーションが確保される。また、本発明に係る電波吸収部材の寸法は、その電波吸収部材として用いられる電波吸収体の特性や性能が最大限に活用されるため、最小限度に抑えられる。
したがって、本発明が適用された電子装置や電子機器は、大幅な設計の見直しや調整工数の増加を伴うことなく、安価に所望の性能の実現と安定化とが図られる。
【0047】
[請求項3] 請求項1または請求項2に記載の電波吸収部材において、
前記回路基板上の異なる領域には、
前記異なる領域に配置された回路の入力または出力に前記回路基板上で連なる導線が形成された領域を含む
ことを特徴とする電波吸収部材。
このような構成の電波吸収部材では、請求項1または請求項2に記載の電波吸収部材における回路基板上の異なる領域には、前記領域に配置された回路の入力または出力に前記回路基板上で連なる導線が形成された領域が含まれる。
すなわち、複数の回路の前段または後段との段間では、既述の高周波信号は、これらの複数の回路の入力や出力に回路基板上で連なる導線の表面から電波吸収部材によって直接吸収されることによる減衰を伴うことなく、伝達される。
したがって、回路基板上における部品配置の自由度が高められ、その回路基板上に配置された複数の回路の好適な動作および性能が安定に確保される。
【0048】
[請求項4] 請求項2に記載の電波吸収部材において、
前記特定の領域には、
前記特定の回路の入力または出力に前記回路基板上で連なる導線が形成された領域を含む
ことを特徴とする電波吸収部材。
このような構成の電波吸収部材では、請求項2に記載の電波吸収部材における特定の領域には、前記特定の回路の入力または出力に前記回路基板上で連なる導線が形成された領域が含まれる。
すなわち、上記特定の回路の前段または後段との段間では、既述の高周波信号は、この特定の回路の入力や出力に回路基板上で連なる導線の表面から電波吸収部材によって直接吸収されることによる減衰を伴うことなく、伝達される。
したがって、回路基板上における部品配置の自由度が高められ、その回路基板上に配置された複数の回路の好適な動作および性能が安定に確保される。
【0049】
[請求項5] 占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を個別に処理しあるいは生成する複数の回路が配置された回路基板の一方の面に布設される電波吸収体と、
前記電波吸収体の面の内、前記回路基板が布設される面と反対の面に着設され、かつ接地される導体部材とを備え、
前記電波吸収体は、
前記複数の回路がそれぞれ配置された前記回路基板上の異なる領域を個別に被装する溝を有し、
前記溝は、
前記複数の回路の間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記複数の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成された
ことを特徴とするシールド蓋部材。
このような構成のシールド蓋部材では、電波吸収体は、占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を個別に処理しあるいは生成する複数の回路が配置された回路基板の一方の面に布設される。導体部材は、前記電波吸収体の面の内、前記回路基板が布設される面と反対の面に着設され、かつ接地される。前記電波吸収体は、前記複数の回路がそれぞれ配置された前記回路基板上の異なる領域を個別に被装する溝を有する。前記溝は、前記複数の回路の間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記複数の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成される。
すなわち、上記複数の回路は、同じ回路基板上に配置されるにもかかわらず、何れも、特性の変化が許容される限度内に抑えられつつ相互間のアイソレーションが確保される。また、上記電波吸収部材の寸法は、その電波吸収部材の特性や性能が最大限に活用されるため、最小限度に抑えられる。
したがって、本発明が適用された電子装置や電子機器は、大幅な設計の見直しや調整工数の増加を伴うことなく、安価に所望の性能の実現と安定化とが図られる。
【0050】
[請求項6] 請求項5に記載のシールド蓋部材において、
前記複数の高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特定の回路が配置された前記回路基板上の特定の領域を被装し、前記特定の回路と複数の回路との間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記特定の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成された溝を有する
ことを特徴とするシールド蓋部材。
このような構成のシールド蓋部材は、請求項5に記載のシールド蓋部材にさらに溝が付加されることによって構成される。このように付加される溝は、前記複数の高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特定の回路が配置された前記回路基板上の特定の領域を被装すると共に、前記特定の回路と複数の回路との間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記特定の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成される。
すなわち、上記高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特性の回路は、その高周波信号を処理し、あるいは生成する複数の回路と共に同じ回路基板上に配置されるにもかかわらず、特性の変化が許容される限度内に抑えられつつこれらの複数の回路との相互間のアイソレーションが確保される。また、電波吸収部材の寸法は、その電波吸収部材として用いられる電波吸収体の特性や性能が最大限に活用されるため、最小限度に抑えられる。
したがって、本発明が適用された電子装置や電子機器は、大幅な設計の見直しや調整工数の増加を伴うことなく、安価に所望の性能の実現と安定化とが図られる。
【0051】
[請求項7] 請求項5または請求項6に記載のシールド蓋部材において、
前記回路基板上の異なる領域には、
前記領域に配置された回路の入力または出力に前記回路基板上で連なる導線が形成された領域を含む
ことを特徴とするシールド蓋部材。
このような構成のシールド蓋部材では、請求項5または請求項6に記載のシールド蓋部材における回路基板上の異なる領域には、前記領域に配置された回路の入力または出力に前記回路基板上で連なる導線が形成された領域が含まれる。
すなわち、複数の回路の前段または後段との段間では、既述の高周波信号は、これらの複数の回路の入力や出力に回路基板上で連なる導線の表面から電波吸収部材によって直接吸収されることによる減衰を伴うことなく、伝達される。
したがって、回路基板上における部品配置の自由度が高められ、その回路基板上に配置された複数の回路の好適な動作および性能が安定に確保される。
【0052】
[請求項8] 請求項6に記載のシールド蓋部材において、
前記特定の領域には、
前記特定の回路の入力または出力に前記回路基板上で連なる導線が形成された領域を含む
ことを特徴とするシールド蓋部材。
このような構成のシールド蓋部材では、請求項6に記載のシールド蓋部材における特定の領域には、前記特定の回路の入力または出力に前記回路基板上で連なる導線が形成された領域が含まれる。
すなわち、上記特定の回路の前段または後段との段間では、既述の高周波信号は、この特定の回路の入力や出力に回路基板上で連なる導線の表面から電波吸収部材によって直接吸収されることによる減衰を伴うことなく、伝達される。
したがって、回路基板上における部品配置の自由度が高められ、その回路基板上に配置された複数の回路の好適な動作および性能が安定に確保される。
【符号の説明】
【0053】
11 回路基板
12 キャビティ
13 導波管
14 電波吸収部材
14d 溝
15 導体部材
16 蓋部材
71 方向性結合器
72 増幅器
73 局部発振器(OSC)
74,75 周波数変換器
81 第一のユニット
82 第二のユニット
83 第三のユニット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地される導体部材に接する第一の面と、
占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を個別に処理し、あるいは生成する複数の回路が配置された回路基板の一方の面に接する第二の面と、
前記複数の回路がそれぞれ配置された前記回路基板上の異なる領域を個別に被装する溝とを有する電波吸収部材であって、
前記溝は、
前記複数の回路の間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電波吸収部材によって生じる前記複数の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成された
ことを特徴とする電波吸収部材。
【請求項2】
請求項1に記載の電波吸収部材において、
前記複数の高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特定の回路が配置された前記回路基板上の特定の領域を被装し、前記特定の回路と複数の回路との間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記特定の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成された溝を有する
ことを特徴とする電波吸収部材。
【請求項3】
占有帯域の全てまたは一部が同じである複数の高周波信号を個別に処理しあるいは生成する複数の回路が配置された回路基板の一方の面に布設される電波吸収体と、
前記電波吸収体の面の内、前記回路基板が布設される面と反対の面に着設され、かつ接地される導体部材とを備え、
前記電波吸収体は、
前記複数の回路がそれぞれ配置された前記回路基板上の異なる領域を個別に被装する溝を有し、
前記溝は、
前記複数の回路の間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記複数の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成された
ことを特徴とするシールド蓋部材。
【請求項4】
請求項3に記載のシールド蓋部材において、
前記複数の高周波信号と異なる無線周波信号を処理し、あるいは生成する特定の回路が配置された前記回路基板上の特定の領域を被装し、前記特定の回路と複数の回路との間のアイソレーションが図られ、かつ前記導体部材および前記電吸収部材によって生じる前記特定の回路の特性の変化が許容される形状および寸法で形成された溝を有する
ことを特徴とするシールド蓋部材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−199417(P2010−199417A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44440(P2009−44440)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】