説明

電流センサ

【課題】 配電網において、電気アークなどの電気的障害につながる電流現象や漏れ電流や漂遊電流を配電網において検出する電流センサを得る。
【解決手段】 本発明に係る電流センサは、導電体を流れる電流により発生する磁束を感知し、その電流を表す信号を提供するための磁束センサ14、15、16、17、18と、磁束センサから信号を取得し、電流の電気的障害を検出し、電気的障害データを提供するプロセッサとを備える。電流センサはまた、導電体を受けるためのリング形磁性構造体6,7,8,9と、磁束センサを受けるためのリング形磁性構造体内の空隙10,11,12,13とを備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電流センサの分野に関連する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国仮特許出願第60/679,997号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
農業施設の接地ネットワークを流れる漂遊電流、特に60Hzの電流は、動物にとって不快なゾーンを生み出し、異常な健康状態につながる動物の生理学的な反応を引き起こすおそれがある。
【0004】
農場の配電網での電流のレベル及び周波数並びに電気アークの有無を変更する電気モータの制御に使用される新技術も、動物環境の質に対して直接的な因果関係を有する要因の1つである(米国特許第6,690,565号明細書参照)。
【0005】
2種類の可変速モータコントローラが農業施設で往々にして使用される。一方は毎秒120回の速度で切り替わるサイリスタに基づき、他方は毎秒10000回〜毎秒20000回の間で切り替わる絶縁ゲートバイポーラトランジスタから構成される。
【0006】
電気モータの巻線の絶縁及びモータに給電する電気ケーブルの絶縁も、接地に対して容量リアクタンス成分を有する。これらの容量リアクタンス成分は、高周波電流に曝されたときに電流漏れの原因となる。漏れ電流の伝達モードは二つの技術のモータコントローラで同じであるが、漏れは、高周波数で動作する技術の場合ほどより重大である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気アークは、多くの火災の原因になることに加え、接地ネットワークで様々なレベル及び周波数の高調波を発生させるため、動物の環境に対して重要な因果関係を有する。電気アークは、配電網のあらゆる構成要素で発生し得るため、各構成要素を監視して、早期検出を実行するために、どのような起り得る故障でも特性化して予測することは有用である。本発明は、配電網において、電気アークなどの電気的障害につながる電流現象や漏れ電流や漂遊電流を配電網において検出する電流センサを提案することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、以下のものを提供する。
導電体を有する電気回路の電気的障害を監視するための電流センサであって、
前記導電体を受けるリング形磁性構造体であって、該導電体に沿って位置決めされることができるリング形磁性構造体と、
前記導電体を流れる電流により前記磁性構造体に発生する磁束を感知し、該電流を表す信号を提供するための磁束センサであって、前記リング形磁性構造体は該磁束センサを受ける空隙を備える、磁束センサと、
前記磁束センサから前記信号を受け取り、前記電流の電気的障害を検出し、電気的障害データを提供するためのプロセッサと
を備える、導電体を有する電気回路の電気的障害を監視する電流センサ。
【0009】
また、本発明は、以下のものも提供する。
導電体を有する電気回路の電気的障害を検出するための電流センサであって、導電体を流れる電流により発生する磁束を感知し、電流を表す信号を提供するための磁束センサと、信号を磁束センサから取得し、電流の電気的障害を検出し、電気的障害データを提供するためのプロセッサとを備える、電流センサ。
【0010】
本発明の別の態様は、以下のものも提供する。
電気的障害監視システムであって、
導電体及び識別子がそれぞれ関連付けられる複数の電流センサであって、当該複数の電流センサのそれぞれは、導電体を流れる電流により発生する磁束を感知し、電流を表す信号を提供するための磁束センサと、
信号を磁束センサから取得し、電流の電気的障害を検出し、電気的障害データを提供するためのプロセッサとを有する、複数の電流センサと、
複数の電流センサにより提供されるデータを結合するためのネットワーキングモジュールと、
結合されたデータの受け取りと解析のための処理モジュールであって、識別子を使用しての電気的障害の監視と発見と、異常な状況の場合における警告とを行うための処理モジュールとを備える、電気的障害監視システム。
【0011】
本発明の別の態様は、以下のものも提供する。
導電体を有する電気回路の電気的障害を監視する電流センサであって、
導電体を受けるためのリング形磁性構造体であって、それによって、磁性構造体は導電体に沿って位置決めされることができる、リング形磁性構造体と、
導電体を流れる電流により磁性構造体に発生する磁束を評価する磁束センサと、磁束センサを受けるための、リング形磁性構造体内の空隙と、
磁束センサから電流に関する読み取り値を受け取るためのデータ取得モジュールとを備える電流センサ。
好ましくは、電流センサは、複数のリング形磁性構造体、磁束センサ、及び空隙を備え、複数の導電体のうちの一本に対して、複数のリング形磁性構造体、複数の磁束センサ、及び複数の空隙のそれぞれがある。
【0012】
さらに、本発明に係る電流センサは、
複数のリング形磁性構造体のすべてを囲む一つの大域的なリング形磁性構造体と、
すべての導電体を流れる電流により発生する磁束を評価する一つの大域的な磁束セ ンサとを備えることができる。
したがって、各導体を流れるそれぞれの電流の差動読み取り値を、測定することが できるものである。
【0013】
測定値の信頼性は、電流センサの独自の構想により周囲の電磁界に影響を受けないため、電流センサの設置場所とは無関係である。また、導体が挿入されるオリフィスのサイズは、完全にフィットし、それによりあらゆる位置決め読み取り誤差をなくすことを確実にするように導体のサイズに従って選択される。
【0014】
ホール効果センサと信号プロセッサとを近接させることにより、誤差をなくせるのであり、なぜならば、その誤差は、通常、読み取り用の機器とホール効果センサとの間の導体の長さに起因してその間のインピーダンスにより発生するからである。
【0015】
本発明のさらなる特徴及び利点が、添付図面に関連して行われる以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電流センサの一実施形態の分解組立図
【図1A】電流センサのケース上部の斜視図
【図1B】電流センサの各磁性構造体の斜視図
【図1C】電流センサのプリント基板上の構成要素の斜視図
【図1D】電流センサの四つすべての導体に対する大域的な磁性構造体の斜視図
【図1E】電流センサのケースの底部及び構成要素の保持用の肩部の斜視図
【図2A】電流センサの平面図
【図2B】電流センサの平面図
【図3】線電流を示す波形図
【図4】突入電流を示す波形図
【図5】回路の負荷変動を示す波形図
【図6】非線形負荷の電流を示す波形図
【図7A】単相PWM型モータコントローラの電流を示す波形図
【図7B】三相PWM型モータコントローラの電流を示す波形図
【図8】電気アークにより発生する高調波を示す波形図
【図9A】配電盤での電流センサの位置を示すブロック図
【図9B】配電盤を完全に監視するための電流センサ配置を示すブロック図
【図10】配電網での電流センサの配置を示すブロック図
【図11】典型的な回路網アーキテクチャを示すブロック図
【図12】貫通式電流センサでの電気接続を示すブロック図
【図13】貫通式電流センサの可能な使用法を示すブロック図
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による電流センサの分解組立図である。
【0018】
図1Aは、図1の電流センサのケース上部の斜視図である。
【0019】
図1Bは、図1の電流センサの各導体の個々の磁性構造体の斜視図である。
【0020】
図1Cは、図1の電流センサの磁束センサ、電圧検出器、及びプロセッサと一緒のプリント基板の斜視図である。
【0021】
図1Dは、図1の電流センサの四つすべての導体に対する大域的な磁性構造体の斜視図である。
【0022】
図1Eは、図1の電流センサのケースの底部及び構成要素の保持用の肩部の斜視図である。
【0023】
図2A、図2Bは、図1の電流センサの平面図である。
【0024】
図3は、線電流を示す波形図である。
【0025】
図4は、突入電流を示す波形図である。
【0026】
図5は、回路の負荷変動を示す波形図である。
【0027】
図6は、非線形負荷の電流を示す波形図である。
【0028】
図7Aは、単相PWM型モータコントローラの電流を示す波形図である。
【0029】
図7Bは、三相PWM型モータコントローラの電流を示す波形図である。
【0030】
図8は、電気アークにより発生する高調波を示す波形図である。
【0031】
図9Aは、本発明の一実施形態による配電盤での電流センサの位置を示すブロック図である。
【0032】
図9Bは、本発明の一実施形態による配電盤を完全に監視するための電流センサ配置を示すブロック図である。
【0033】
図10は、本発明の一実施形態による配電網での電流センサの配置を示すブロック図である。
【0034】
図11は、本発明の一実施形態による典型的な回路網アーキテクチャを示すブロック図である。
【0035】
図12は、本発明の一実施形態による貫通式電流センサでの電気接続を示すブロック図である。
【0036】
図13は、本発明の一実施形態による貫通式電流センサの可能な使用法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付図面全体を通して、同様の特徴点が、同様の参照用の符号で識別されることに留意されたい。
【0038】
一実施形態によれば、本発明は、高分解能電流測定及び過渡現象(振幅、周波数)の記録を行うことができる。
【0039】
一実施形態によれば、本発明は、電気信号を生成するツールをユーザに提供することができる。電気信号のスペクトル解析から、電気機器に影響するおそれのあるあらゆる電気的障害を識別し、動物環境に電流が存在することに関連する健康問題が動物に発生するのを防ぎ、かつ、火災の電気原因の可能性の早期検出により資産を守ることが可能である。
【0040】
図1に示す一実施形態の分解組立図は、本発明の一実施形態によるプリント基板31及び構成要素の配置を示す。図1A〜図1Eは、図1の各部分の拡大図である。
【0041】
図1の電流センサは信号を捕捉し、その値を特定のデジタル形式に変換することができると共に、デジタル通信機能を提供することもできる。
【0042】
電流センサの構成要素はすべて、ケース1内に含まれる。電流センサ100は、特定の回路のすべての導体(線路及び中性線)を担持するように構想される。各導体(図示せず)は個々の入力の穴2、3、4、5を通り、各導体の電流の特性を解析できるようにする。入力の番号2、3、4は線路導体専用であり、入力の番号5は中性線用である。これらの各入力の直径は、電流を伝達している他の導体又は機器が発生する周囲の電磁場の影響を避けることができる導体の直径に適合される。ここで留意すべきことには、いかなる数の導体でも(接地線でさえも)受けるようになっている電流センサを創り出すことができるのである。ある一実施形態では、線路導体三本と中性線一本がある。
【0043】
ケース1は二つのセクションで構成される。底部セクション1Bは、電流センサの全構成要素を受けて編成するように成形される。上部セクション1Aはカバーとして機能し、構成要素を保護すると共に、所定位置に保持する。
【0044】
導電体のサイズに従ったサイズの小型のフェライト磁性材並びに/又は他の磁性材料6、7、8、9が使用される。空隙10、11、12、13が磁性構造体に実施されて、たとえば、ホール効果センサである磁束センサ14、15、16、17を受ける。
【0045】
各磁性構造体6、7、8、9は、精密な空隙10、11、12、13を得るように機械加工される。これらの空隙10、11、12、13は、磁束の一貫性を確保すると共に、磁束センサ14、15、16、17の精度を確保する。
【0046】
図1に示す電流センサの別の態様は、磁性構造体6、7、8、9の位置決め及びその保護である。磁性構造体6、7、8、9を位置決めして所定位置に保持することは、作業が接着剤を使用して手作業で行われる場合に複雑である。保持用の肩部19、20、21、22が、磁性構造体6、7、8、9並びに磁束センサ14、15、16、17を単純かつ精密に保持する。
【0047】
磁性構造体6、7、8、9は、保持用の肩部19、20、21、22により導電体(図示せず)から保護される。これらの保持用の肩部は、磁性構造体6、7、8、9の寸法に従って機械加工される。磁性構造体6、7、8、9は、磁束センサ14、15、16、17と位置合わせされ、保護のために接着される。
【0048】
プリント基板31が使用されて、全体が接着される前に、磁束センサ14、15、16、17が磁性構造体6、7、8、9の空隙10、11、12、13内に位置決めされる。
【0049】
上述したように、ホール効果センサは、通常の変流器と比較して、より大きな周波数レンジを提供する。これにより、低い周波数及び中間の周波数のスペクトル解析が可能になる。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、電流センサの別の態様は、電流センサの直径に従ったサイズの小型フェライト磁性材、及び/又は、他の磁性材料23を使用することから成る。磁束センサ18を受けるための空隙24が、磁性構造体23に施される。
【0051】
この磁性構造体23は、磁束センサ18と併せて使用して、各線電流がかなり大きい場合に、異なるモードの電流の読み取りを実行する。線路導体2、3、4、5は、すべて、この磁性構造体23を通る。
【0052】
この実施形態では、磁性構造体23は、精密な空隙24を得るように機械加工される。この空隙24は、磁束の一貫性を確保すると共に、磁束センサ18の精度を確保する。
【0053】
磁性構造体23を位置決めして所定位置に保持することは、作業が接着剤を使用して手作業で行われる場合に複雑である。保持用の肩部32が、磁性構造体23及び磁束センサ18を単純かつ精密に保持する。磁性構造体23は、保持用の肩部19、20、21、22、32により導電体2、3、4、5(図示せず)から保護される。磁性構造体23は、磁束センサ18と位置合わせされ、保護のために接着される。プリント基板31が使用されて、全体が接着される前に、磁束センサ18が磁性構造体23の空隙24内に位置決めされる。
【0054】
本発明のこの実施形態において磁束センサとして、ホール効果センサが使用される場合には、以下のことに留意すべきである。励起電流が一定に保たれる場合、出力電圧は感知されている電流、すなわち測定される電流が発生する磁界に比例する。ホール効果センサは、一般的に、定電流の電流源と、ギャップ付きトロイダルコアと、コアのギャップ内に延びるホール効果発生器とを含むものである。ホール効果発生器のギャップ内への位置決めは重要であり、その理由は、もし、ホール効果発生器がギャップ内に不正確かつ不安定に位置決めされると、結果として、ホール効果センサの作用不良となるおそれがあるからである。
【0055】
さらに、環境的な要因もホール効果センサの適正な動作に影響を及ぼし得る。特に、外部汚染物質(たとえば、埃、ゴミ、汚れ、油、流体)がホール効果センサの動作を妨げかねない。
【0056】
上記に照らして、ホール効果センサのエアギャップ内部へのホール効果発生器の確実で安定した位置決めを提供するパッケージングの構成を求める要請があり、これを本発明の構成が解決できるのである。本発明は、また、ホール効果センサを汚染物質に起因するセンサへの障害の影響から防護するものである。
【0057】
保持用の肩部が使用されない場合、ホール効果センサはエアギャップ内に導入され、エアギャップはホール効果センサのサイズよりもわずかに大きいため、測定される値の線形性がわずかに失われる。したがって、センサの較正中に、データを集め、場合によってはデータを解釈するために使用されるソフトウェア内の較正を調整することにより、各ホール効果センサが線形化される。
【0058】
この実施形態についてホール効果センサの使用と併せて説明したが、必ずしもホール効果センサである必要はなく、いかなる磁束センサでも使用可能なことに留意すべきである。たとえば、磁束センサは、磁気抵抗率センサであってもよい。追加の接続が必要であり、かつ磁気抵抗率センサの電流引き込みがホール効果センサよりも大きい場合であっても、構成要素の配置は同じである。
【0059】
プロセッサ29、たとえばデジタル信号プロセッサが、導電体入力用の穴2、3、4、5の間の中間位置に配置されて、電圧降下を制限し、これにより磁束センサ14、15、16、17、18とプロセッサ29との間の障害を制限する。導電体2、3、4、5の周囲の磁束は、磁束センサ14、15、16、17により比例するアナログ信号に変換され、入力用の穴2、3、4、5内の導電体の差の電流に対応する磁束の差の値は、磁束センサ18により比例するアナログ信号に変換される。これらの信号はDSP29に送られ、DSP29はアナログ信号を処理してデジタル信号に変換する。
【0060】
捕捉された信号のアナログ出力を有することが可能であるが、アナログ出力は近傍の磁束によって影響を受ける傾向があり、これは、送られるデータの信頼性及び精度の誤差をもたらしかねないので、デジタル出力が好ましい。
【0061】
導体の電圧の検出は、プリント基板31上に直接配置される銅箔ランド25、26、27、28により行われる。銅箔ランドは、導電体入力2、3、4、5の周囲の半月のような形状である。この銅箔ランド25、26、27、28は、アンテナとして機能する。銅箔ランドにより感知された電圧は、プリント基板31により信号プロセッサ29に直接送られる。プロセッサ29は、各線2、3、4、5の電圧がないことを個々に確認することができる。
【0062】
導体の磁束を感知し、ひいては電圧の存在を検出することができるいかなる形状又は材料でも使用することができる。好ましくは、形状及び材料の選択により、半月形の銅箔ランドを有するようなアンテナを作ることができる。
【0063】
コネクタ30は、電子回路の電源用とデータ送信用との両方として機能する。
【0064】
本発明の範囲が、図示と説明文のいずれか一方または双方で定める形態などには限定されないことが分かるものである。
たとえば、コアは、丸められた、又は面取りされた引き込み表面及び少なくとも製造中に複数の積層の一括保持を助けるためのインターロック式の窪みを有する種々の構成及びサイズを有してよいこと。
また、ホール発生器は、好ましくは、コア面に対してセンタリングされ、導体に対して全体的に垂直な向きを有するが、これらのパラメータは変更が可能であり、導体、コア、及びプリント基板の形成に利用される材料は特定の用途に応じて様々であってよいこと。
また、特定の用途に応じて、また、センサシステムが、利用される環境に応じて、広範囲な一次プリント基板を利用してよいこと。
さらにはまた、センサシステムが、所与の構成要素内の他の種々の特徴と組み合わせることができること。
【0065】
したがって、単純な表現では、電流センサが具備するものは、
リング形磁性構造体であって、導電体を受け、それにより、磁性構造体を導電体に沿って位置決めすることができるためのリング形磁性構造体と、
磁束センサであって、導電体を流れる電流により発生する磁束を評価するための磁束センサと、
磁束センサを受けるためのリング形磁性構造体内の空隙と、
電流に関連する読み取り値を磁束センサから受け取るためのデータ取得モジュールとからなるものである。
この単純な実施形態では、センサは、導体一本のみの電流の測定に使用される。
【0066】
別の単純な実施形態では、電流センサは、複数のリング形磁性構造体、複数の磁束センサ、及び複数の空隙を備え、それらのうちのそれぞれが複数の導電体のうちの一本に使用される。これは、図1に示すような四本の導体用のセンサが構築される場合である。
【0067】
センサを、一つを超える導体と併せて使用する場合、センサは、好ましくは、複数のリング形磁性構造体のすべてを囲む大域的なリング形磁性構造体と、上記すべての導電体を流れる電流により発生する磁束を評価する大域的な磁束センサとを備える。そして、各導体を流れる電流の差動読み取り値を測定することができる。
【0068】
図2Aに示す平面図は、本発明の一実施形態による構成要素の寸法及び配置を示す。
【0069】
特定の一実施形態では、電流センサは四つの導電体を受けることが意図される(中性線を有する三相回路3θ−4W)。導電体入力穴2、3、4、5の直径(D)は、センサ本体に挿入される導電体の直径に従って決められる。本モデルで使用される磁性構造体6、7、8、9は、パナソニック(Panasonic)製であり、型番はKR16TT18106であり、寸法は外径18mm、内径10mm、高さ6mmである。保持用の肩部19、20、21、22の幅は、図2Aの「F」寸法で示される。センサの上部(カバー)1Aが、内部の肩部及び外部の肩部と共に、磁性構造体6、7、8、9を所定位置に保持する。
【0070】
磁束センサ14、15、16、17は、空隙10、11、12、13に挿入され、接着剤の使用により所定位置に保持される。本モデルで使用される磁束センサ14、15、16、17は、Allegro Microsystems inc.製である。それらの磁束センサは、A132Xモデルファミリの一部であり、寸法は外径4.04mm、内径1.47mm、高さ3.10mmである。磁性構造体の空隙12、11、12、13、24の寸法は、図2Aの「E」寸法で示される。
【0071】
図2Bに示す平面図は、本発明の一実施形態による漏れ電流の差動読み取り用の構成要素の寸法及び配置を示す。一実施形態では、電流センサ100は、差動モードでの解析のために四つの導電体(図示せず)を受けるように意図される。本モデルで使用される磁性構造体23はMagnetics製であり、型番は54−454−1−Eであり、寸法は外径44.45mm、内径31.8mm、高さ3.18mmである。保持用の肩部32の幅は図2Aの「G」寸法で示される。
【0072】
磁束センサ18は、空隙24内に挿入され、接着剤の使用により所定位置に保持される。本モデルで使用される磁束センサ18は、Allegro Microsystems inc.製である。磁束センサは、A132Xモデルファミリの一部であり、寸法は外径4.04mm、内径1.47mm、高さ3.10mmである。磁性構造体の空隙の寸法は、図2Aの「E」寸法で示される。
【0073】
上記の所与の寸法は、単なる例示を意味するにすぎず、本発明に係る電流センサが設置される導電体に適合した他のいかなる寸法であっても使用してもよいことを理解されたい。
【0074】
ホール効果センサは、磁性構造体と共に、線路導体及び中性線に関連する信号周波数、振幅、及び高調波成分を測定することができる。
【0075】
図3は、開始時の電気モータ突入電流を示す。図3のセクションAは、電流の振幅及び突入の持続期間を示し、部分Bは、定常状態動作中の電流の値を示す。
【0076】
図4のセクションCにおいて、通常、機械的な問題によって発生する突然の突入電流が見られる。
【0077】
配電網の総負荷は、電流センサを入口の主導体に設置することにより監視することができる。図5は、配電網の負荷の進展の一例を提供する。セクションAは、配電網の電流の安定状態値を示す。セクションBは、たとえば、モータの開始により生み出され、その後、モータを含む安定状態電流を示すセクションCが続く。セクションDは、追加の負荷がオンになったことを示す。
【0078】
電流センサは、漏れ電流の測定に二つの可能性を提供する。第一の方法は、各導体のホール効果センサにより測定される値からの漏れ電流を計算することにある。第二の選択肢は、すべての導体を含む外部のホール効果センサから漏れ電流の値を得ることである。第一の方法は、線電流が小さい場合に好ましい。
【0079】
漏れ電流スペクトルは、線電流スペクトルと大方類似する。
【0080】
図6は、サイリスタ技術(120Hzスイッチング)を使用する可変速モータドライブにより発生される電流の波形を示す。
【0081】
図7A、図7Bは、単相(7A)及び三相(7B)PWMモータドライブ(PWM=IGBTトランジスタ10kHz−20KHz)により発生される各電流の波形の相違を示す。
【0082】
図8は、導体に故障がある(接続不良)電気機器の負荷電流の波形を示す。信号は、ランダムな波形を有する低い周波数及び中間の周波数で構成される。
【0083】
電流センサは、いろいろな態様で使用することができる。その設置の位置は、監視ニーズに従って選択される。
【0084】
図9Aは建物の配電盤33を示す。この配電盤33は、コンジット内に設置された四つの導体35、36、37、38により給電され、それらの導体は、線路導体35、36と、中性線37と、接地線38とである。線路導体35、36並びに中性線37は電流センサ42に挿入される。この位置から、電流スペクトルを解析し、高調波の存在を検出し、それぞれの原因(どの種類の非線形負荷か)を特定し、電気アークの存在を検出し、漏れ電流(抵抗性か容量性か)の値を測定することが可能である。電流センサは、主導体に設置されるため、前出の情報は建物全体の配電に関する。電流センサが、配電盤33の回路に設置される場合、同じ情報をセンサにより監視される各回路41について入手することができる。
【0085】
図9Bは、配電盤33を完全に監視するための電流センサ42、43の配置を示し、一つの電流センサ42が主導体にあり、一つの電流センサ43が配電盤を出て行く各回路にある。
【0086】
図10は、モータ47に給電する配電路46の回路を示す。電流センサ48は、モータスタータ49とモータ47との間に配置される。この位置から、電流センサは、ヒューズの状態又は過負荷50、接触器49の接点51の状態、接触器の摩耗した接点52により発生する電気アークの存在、及び漏れ電流の値に関する情報を提供することができる。さらに、この新世代の電流センサは、たとえば、統合管理システム、エネルギー監視システム、又は火災アラームシステムの一部とすることができる。
【0087】
図11に示すように、電流センサ53は主配電に配置することができる。さらに、各回路54、55、56が、電流センサ57、58、59を有することができる。すべての電流センサ53、57、58、59は、ハブ60に接続される。
【0088】
ハブ60は、イーサネット(登録商標)・ネットワーク61に接続される。電流センサ53、57、58、59により送られるデータは、コンピュータシステム62、ラップトップコンピュータ63、又は専用モニタ64で解析することができる。外部リンクの場合、電流センサ53、57、58、59は、モデム65によりコンピュータシステム66にリンクすることができる。
【0089】
本発明に係る電流センサは、電流、特に漂遊電流の検出が必要な、いかなる環境でも使用することができる。
【0090】
農業分野で考えられる用途は、以下の電気機器、すなわち主配電、配電盤、配電回路、又はモータに適用できるが、これらに限定されない。
【0091】
配電網について、個人個人の要求に合わせようとする管理としては、電流センサは、たとえば、自動搾乳システム(搾乳ロボット)、攪拌翼ヘッドコントローラ、水ポンプコントローラ、電源、ポータブルミルカー、供給制御盤、又は安定クリーナーコントローラに設置することができる。
【0092】
本発明に係る電流センサは、果たし得る目的が何であれ、商業的な区域でも産業的な区域でも使用することができる。100頭を越える牛の酪農施設の配電網構成は、これらの各区域で見られるものとあらゆる側面で類似する。
【0093】
居住区域では、全般的な負荷に対する用途に加えて、本発明に係る電流センサは、既存のアーク検出式の回路遮断器に対して競合できる利点を有し、有利に使用することができる。
【0094】
今日において、電気機器の安全性は、全世界中の財政的にも社会的にも重要な問題である。多くの国々での不規則な開発、電気技師の職能へのフリーアクセス、及び制御システムの欠如が、危険な機器の出現に荷担してきた。
【0095】
上述したように、一実施形態によれば、電流センサは、いくつかの関連する導関数やそれらの大きさなどに関する計算能力を提供するプロセッサとしてプログラマブル回路を含む。各障害のそれぞれに閾値を関連付けることにより、負荷遮断を含む可能な反応コマンドの管理及び優先順位付けが提供される。
【0096】
図12は、本発明の一実施形態による貫通式電流センサ内の主要構成要素及び電気接続を示すブロック図である。この実施形態では、貫通式電流センサはプリント基板67に取り付けられる。電気回路導体(図示せず)は入力/出力71、72、73、74に接続される。電流センサは、各導体の電流を個々に解析できるように、入力/出力71、72に接続された線路導体及び入力/出力73、74に接続された接地線を個々に受ける。別法として、貫通式電流センサは、一本のみの導体又は三相用途の場合には、たとえば、線路導体三本と中性線一本等の二本を超える導体を受けるようになっていてもよい。
【0097】
プロセッサ75は、プリント基板67で、磁束センサ68、69の近傍に位置決めされて、電圧降下及び干渉を最小にする。磁束センサ68、69は、導体内を電流が流れることによって発生する磁束をアナログ信号に変換する。次に、アナログ信号はプロセッサ75に向けられて解析される。プロセッサ75は、電流の電気的障害を検出し、電気的障害信号を提供して、たとえばオン/オフスイッチ70、TRIAC、又は接触器を制御して、プロセッサ75からのコマンドに応答して負荷を切断する。磁束センサに給電する電源76も含まれる。
【0098】
この実施形態では、磁束センサ68、69は、Allegro製のモデルACS704ELC−015の貫通式ホール効果センサであるが、別法として、非貫通式ホール効果センサ、及び磁気抵抗率センサ等の他の種類の磁束センサを使用してもよい。
【0099】
磁束センサ及び回路基板は、特定の用途に応じて様々であってよく、広範囲の主なプリント基板を、特定の用途及びセンサシステムが利用される環境に応じて利用することができ、センサシステムは、所与の構成要素内の種々の他の特徴と組み合わせることができる。
【0100】
貫通式電流センサは、磁束センサ68、69と並列接続されるか、又は入力71と73との間に接続されて差動電圧を測定する電圧検出器(図示せず)を備えてもよいことを理解されたい。
【0101】
図13は、貫通式電流センサの可能な使用法を示す。卓上ファン80が家庭の電源コンセント77にプラグインされる。電流センサ78が、好ましくはファン80内部のファン電気接続79に配置されている。電流センサ78は、電気アーク、過負荷、及び過小負荷等の電気的障害の発生を検出することによりファン80の異常動作をチェックする。ファン80は、特定の条件下では、オン/オフスイッチ70を使用して切断することができる。
【0102】
本発明にかかる新規な電流センサは、シリアルの欠陥、パラレルの欠陥、又は差動の欠陥を解析し、最終的に電気回路に対して反応の指令を始動するようになっている。
【0103】
上述した本発明の各実施形態は、単なる例示を意図する。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
1 ケース
2、3、4、5 穴
6、7、8、9 磁性構造体
10、11,12,13 空隙
14、15、16、17、18 磁束センサ
19、20、21、22 肩部
23 磁性構造体
24 空隙
25,26,27,28 銅箔ランド
29 プロセッサ
30 コネクタ
31 プリント基板
33 配電盤
35、36、37、38 導体
42、43 電流センサ
46 配電路
47 モータ
48 電流センサ
49 接触器
50 ヒューズ
51、52 接点
53 電流センサ
54、55、56 回路
57、58、59 電流センサ
60 ハブ
61 イーサネット(登録商標)・ネットワーク
62 コンピュータ・システム
63 ラップトップコンピュータ
64 専用モニタ
65 モデム
66 コンピュータシステム
67 プリント基板
68,69 磁束センサ
70 オン・オフ・スイッチ
75 プロセッサ
76 電源
77 コンセント
78 電流センサ
79 電気接続線
80 卓上ファン
100 電流センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】米国特許第6,690,565号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサであって、
複数のリング形磁性構造体であって、それぞれが該磁性構造体が前記導電体に沿って位置決めできる該導電体の一つを受け取り、またそれぞれが該導電体の該一つを流れる電流により発生する磁束を評価し該電流を表す信号を提供する磁束センサを受け取る空隙を有する、複数のリング形磁性構造体と、
前記複数の導電体を囲む大域的なリング形磁性構造体と、
前記複数の導電体を流れる電流により発生する磁束を評価し、該複数の導電体を流れる電流の差の読み取り値を測定する、大域的な磁束センサと
を備える、複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項2】
前記磁束センサが、ホール効果センサであることを特徴とする、請求項1に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項3】
前記磁性構造体及び該磁束センサを前記導電体の周囲に保持する保持手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項4】
前記導電体の一つの対応する電圧をそれぞれが検出する各電圧検出器をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項5】
前記各電圧検出器は、それぞれが前記導電体の前記対応する一つを囲む半月形を有し、また該各電圧検出器はそれぞれが、電圧が該導電体の該対応する一つに存在する場合に電圧信号を発生する導体ランドを基板上に備え、該電圧信号は前記データ取得モジュールにより受け取られることを特徴とする、請求項4に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項6】
前記磁性構造体、前記磁束センサ、及び前記データ取得モジュールを保護するケースをさらに備え、該ケースに前記導電体が挿入されることができることを特徴とする、請求項1に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項7】
前記データ取得モジュールにより受け取られる読み取り値をデジタルセンサデータに変換するアナログ/デジタル変換器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項8】
前記デジタルセンサデータを送信する送信器をさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項9】
前記大域的な磁束センサがホール効果センサであることを特徴とする、請求項1に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項10】
前記大域的な磁性構造体及び前記大域的な磁束センサを前記複数の磁性構造体の周囲に保持する保持手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項11】
前記複数の導電体が、四つの導電体を有することを特徴とする、請求項1に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項12】
前記四つの導電体が、線路導体三本と中性線一本であることを特徴とする、請求項11に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。
【請求項13】
前記磁束センサからの読み取り値を受け取るデータ取得モジュールをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の複数の導電体を有する電気回路の電流を測定する電流センサ。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−57692(P2013−57692A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−285404(P2012−285404)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2008−510376(P2008−510376)の分割
【原出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(507372109)コーポレーション ヌヴォルト インク. (2)
【氏名又は名称原語表記】CORPORATION NUVOLT INC.
【Fターム(参考)】