説明

電流分布測定装置、その異常時対応方法、および燃料電池システム

【課題】燃料電池のセルの各測定対象部位に流れる電流分布を測定する電流分布測定装置において、電流分布の測定精度の向上を図る。
【解決手段】第1板状部材および第2板状部材に形成された一対の導電部それぞれに異なる周波数の交流電流を供給し、電流検出部51aの出力信号から各周波数に対応する交流成分(振幅)を抽出することで、各第1導電部における回り込み電流による交流電流量の変化を把握する。そして、一対の導電部それぞれに供給した各周波数の交流電流量に対する電流検出部51aの出力信号から抽出した各周波数の交流電流量の比率、および電流検出部51aの出力信号それぞれに含まれる直流電流量に基づいて、実際にセル10aの各測定対象部位に流れる電流を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の内部を流れる電流分布を測定する電流分布測定装置、およびこれを適用した燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気エネルギを出力する複数のセルを積層配置して構成された燃料電池に適用されて、この燃料電池の内部を流れる電流分布を測定する電流測定装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の電流測定装置は、電流を測定するための電流測定部を、同一の隣り合うセル間に複数個配置し、隣り合うセル間における複数の測定対象部位を流れる電流を測定することで、セル面内に流れる電流分布を測定する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−280643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の電流測定装置では、隣り合うセル間における複数の部位に対応して分割された電流測定部を有する構成としているが、セルにおける各電流測定部に対向するセル面は、各電流測定部に対応して分割されていない。
【0006】
このため、燃料電池のセルの測定対象部位に流れる電流は、隣り合うセル間を流れる際に、セルの積層方向とは異なるセルの面方向にも流れることがある。例えば、セルにおける隣り合う測定対象部位の一方を流れる電流が、セルの面方向に沿って他方の測定対象部位に流れてしまうことがある。
【0007】
この結果、各電流測定部にて、セルの各測定対象部位に流れる電流を測定しようとしても、他の測定対象部位から流れ込む電流(以下では、回り込み電流と呼ぶ。)の影響を受けてしまうので、セルの各測定対象部位に流れる電流分布を精度よく測定することができないといった問題がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、燃料電池のセルの各測定対象部位に流れる電流分布を測定する電流分布測定装置において、電流分布の測定精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを出力する複数のセル(10a)を積層配置して構成された燃料電池(10)に適用され、測定対象となるセル(10a)の各測定対象部位を流れる電流分布を測定する電流分布測定装置であって、測定対象となるセル(10a)に隣接して配置され、セル(10a)の測定対象部位それぞれに対応する部位に第1導電部(201)が形成された第1板状部材(200)と、測定対象となるセル(10a)における第1板状部材(200)の反対側に隣接して配置され、第1導電部(201)と対となるように測定対象部位それぞれに対応する部位に第2導電部(301)が形成された第2板状部材(300)と、第1導電部(201)それぞれを流れる電流を検出する電流検出手段(51a)と、第1導電部(201)および第1導電部(201)と対になる第2導電部(301)で構成される一対の導電部(201、301)それぞれに対し、異なる周波数の交流電流を供給する交流電流供給手段(60)と、電流検出手段(51a)の各出力信号から、一対の導電部(201、301)それぞれに供給した交流電流の各周波数に対応する交流成分それぞれを抽出する交流成分抽出手段(51b)と、交流電流供給手段(60)にて供給した各周波数の交流電流量に対する交流成分抽出手段(51b)にて抽出した周波数それぞれに対応する交流成分の交流電流量の比率、および電流検出手段(51b)の出力信号それぞれに含まれる直流成分の直流電流量に基づいて、測定対象部位それぞれに流れる電流を演算する電流演算手段(51c)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
これによると、一対の導電部(201)それぞれに異なる周波数の交流電流を供給し、電流検出手段(51a)の各出力信号から各周波数に対応する交流成分(振幅)を抽出することで、各第1導電部(201)における回り込み電流による交流電流量の変化を把握することができる。
【0011】
ここで、発電時にセル(10a)間を流れる電流(直流電流)における回り込み電流による変化は、一対の導電部(201、301)に供給した交流電流における回り込み電流による変化と同等に変化すると考えられる。
【0012】
このため、一対の導電部(201、301)それぞれに供給した各周波数の交流電流量に対する電流検出手段(51a)の出力信号から抽出した各周波数に対応する交流成分の交流電流量の比率、および電流検出手段(51a)の出力信号それぞれに含まれる直流成分の直流電流量に基づいて、実際にセル(10a)の各測定対象部位を流れる電流を演算することができる。
【0013】
従って、セル(10a)の所定の測定対象部位に流れる電流を測定する場合に、他の測定対象部位から流れ込む回り込み電流の影響を補正することができるので、セル(10a)の各測定対象部位に流れる電流分布を精度よく測定することが可能となる。
【0014】
また、燃料電池(10)における出力電圧と出力電流の関係には、出力電流が小さい領域では、出力電流が増加したとしても出力電圧にほとんど影響しない。しかし、出力電流が大きい領域では、出力電流の増加に応じて、セル(10a)内における電極の反応抵抗等が増加することで、出力電圧が大きく低下するといった特性がある(図8に示すI−V特性図参照)。このため、燃料電池(10)の出力電圧が低い場合に、交流電流供給手段から一対の導電部(201、301)に供給する交流電流量が大きいと、燃料電池(100)の出力電圧がさらに低下してしまう虞がある。
【0015】
そこで、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、測定対象となるセル(10a)の電圧を検出するセル電圧検出手段(102)を備え、交流電流供給手段(60)は、一対の導電部(201、301)に供給する交流電流量を調整可能に構成されており、セル電圧検出手段(102)にて検出された電圧の低下に応じて、交流電流量を低下させることを特徴とする。
【0016】
これによれば、セル電圧検出手段(102)にて検出された電圧の低下に応じて、一対の導電部(201、301)に供給する交流電流量を低下させているので、一対の導電部(201、301)に交流電流を供給することに起因して、燃料電池(100)の出力電圧が低下することを抑制可能となる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の電流分布測定装置において、電流分布の測定対象となるセル(10a)の電圧を検出するセル電圧検出手段(102)と、交流電流供給手段(60)にて一対の導電部(201、301)それぞれに各周波数の交流電流を供給した状態におけるセル電圧検出手段(102)の出力信号および電流検出手段(51a)の出力信号からインピーダンスを演算するインピーダンス演算手段(51d)と、を備え、インピーダンス演算手段(51d)は、交流電流供給手段(60)で印加した交流電流の各周波数におけるインピーダンスを演算することを特徴とする。
【0018】
これによれば、セル(10a)の局所的なインピーダンスを測定することができるので、例えば、局所的なインピーダンスに基づいて、セル(10a)の局所的な内部水分量を把握することが可能となる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明の如く、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電流分布測定装置において、交流電流供給手段(60)および電流演算手段(50a)を、それぞれ異なる電源ラインから給電する構成としてもよい。
【0020】
また請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電流分布測定装置において、第1板状部材(200)および第2板状部材(300)は、少なくとも一方がプリント基板の積層体で構成されていることを特徴とする。
【0021】
これによれば、電流分布測定装置の厚みを薄くすることができるので、燃料電池(10)の熱容量の増加を抑制することができる。
【0022】
ここで、セル(10a)における所定の測定対象部位に他の測定対象部位からの回り込み電流が多い場合には、燃料電池(10)に何らかの異常が生じていることが考えられる。
【0023】
そこで、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の発明において、電流検出手段(51a)の出力信号それぞれが異常であるか否かを判定する出力異常判定手段(S60)を備え、出力異常判定手段(S60)は、交流成分抽出手段(51b)にて抽出した交流電流の各周波数に対応する交流成分の交流電流量が所定の異常基準値以上である場合に、電流検出手段(51a)の出力信号が異常であると判定することを特徴とする。
【0024】
これによれば、電流検出手段(51a)の出力信号が異常であると判定することができるので、燃料電池(10)の異常を検出することが可能となる。
【0025】
また、セル(10a)における所定の測定対象部位に他の測定対象部位からの回り込み電流が多くなる要因の1つとして、第1板状部材(200)とセル(10a)との間の一部の接触不良が考えられる。
【0026】
そこで、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電流分布測定装置の異常時対応方法であって、出力異常判定手段(S60)にて異常と判定された場合に、燃料電池(10)の積層方向の締付荷重を増加させることを特徴とする。
【0027】
これによれば、燃料電池(10)の積層方向の締付荷重を増加させるので、第1板状部材(200)とセル(10a)との間の一部の接触不良を解消し、電流検出手段(51a)の出力信号の異常状態から復旧させることが可能となる。
【0028】
また、請求項8に記載の発明の如く、請求項6に記載の電流分布測定装置と、燃料電池(10)の発電状態を制御する発電制御手段(50)と、を備え、発電制御手段(50)では、出力異常判定手段(S60)にて異常と判定された場合に、電流分布測定装置の出力に基づく燃料電池(10)の発電状態の制御を禁止する構成とすれば、燃料電池(10)を適切に保護することが可能となる。
【0029】
ここで、セル(10a)における所定の測定対象部位に対応する電位と、他の測定対象部位における電位とが異なる場合には、高電位となる測定対象部位から低電位となる測定対象部位へと回り込み電流が流れ易くなると考えられる。
【0030】
そこで、請求項9に記載の発明では、酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを出力する複数のセル(10a)を積層配置して構成された燃料電池(10)に適用され、測定対象となるセル(10a)の各測定対象部位に流れる電流分布を測定する電流分布測定装置であって、測定対象となるセル(10)に隣接して配置され、セル(10)の測定対象部位それぞれに対応する部位に導電部(201)が形成された板状部材(200)と、導電部(201)それぞれを流れる電流を検出する電流検出手段(51a)と、複数の導電部(201)それぞれにおける電位と予め設定された基準電位との電位差を検出する電位差検出手段(103)と、電位差検出手段(103)における各出力信号に応じて、電流検出手段(51a)の出力信号を補正する出力信号補正手段(51e)と、を備え、出力信号補正手段(51e)は、複数の導電部(201)のうち、所定の基準電位差よりも大きい電位差となる導電部(201)における電流検出手段(51a)の出力信号に対して所定の電流量を増加させる補正を行うと共に、所定の基準電位差以下の電位差となる導電部(201)における電流検出手段(51a)の出力信号に対して所定の電流量を減らす補正を行うことを特徴とする。
【0031】
これによれば、各導電部(201)の電位と基準電位との電位差を比較することによって、電流検出手段(51a)の出力信号を補正しているので、セル(10a)における所定の測定対象部位に流れる電流を測定する場合に、他の測定対象部位から流れ込む回り込み電流の影響を補正することができ、セル(10a)の各測定対象部位に流れる電流分布を精度よく測定することが可能となる。
【0032】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係る電流分布測定装置の斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る第1板状部材の分解斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る第1導電部を説明するための説明図である。
【図5】第1実施形態に係る第2導電部を説明するための説明図である。
【図6】第1実施形態に係る電流分布測定装置の概略構成図である。
【図7】第1実施形態に係る電流分布測定装置の電流の流れを説明するための説明図である。
【図8】燃料電池の出力電圧と出力電流の関係を示すI−V特性図である。
【図9】回り込み電流による電流検出精度への影響を説明するための説明図である。
【図10】第1実施形態に係る燃料電池システムの制御処理を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態に係る電流分布測定装置の概略構成図である。
【図12】セルの内部水分量と内部抵抗との関係を示す特性図である。
【図13】セルの等価回路を示す回路図である。
【図14】図13の回路に高周波から低周波までの正弦波電流を印加した場合のセルのインピーダンスを複素平面上に表示した特性図である。
【図15】第3実施形態に係る電流分布測定装置の斜視図である。
【図16】第3実施形態に係る電流分布測定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0035】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図10に基づいて説明する。図1は、本実施形態の電流分布測定装置100を適用した燃料電池システムの全体構成図である。この燃料電池システムは、電気自動車の一種である、いわゆる燃料電池車両に適用されており、車両走行用電動モータ等の電気負荷に電力を供給するものである。
【0036】
まず、燃料電池システムは、図1に示すように、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池10を備えている。燃料電池10は、図示しない車両走行用電動モータや2次電池といった電気負荷に供給される電気エネルギを出力するもので、本実施形態では、固体高分子電解質型燃料電池を採用している。
【0037】
より具体的には、燃料電池10は、基本単位となる燃料電池セル10a(以下、単にセル10aと記載する。)が複数個、電気的に直列に接続されて構成されたものである。換言すれば、燃料電池10は、複数のセル10aが積層配置されて構成されている。
【0038】
各セル10aは、固体高分子からなる電解質膜の両側面に一対の電極が配置された膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)10bと、この膜電極接合体を狭持する一対のセパレータ10cで構成されている。
【0039】
一対のセパレータ10cは、カーボン材や導電性金属よりなる板状プレートからなる。つまり、燃料電池10の発電時には、セル面内をセル10aの積層方向に電流が流れると共に、セル10a(セパレータ)の面に沿って電流が流れる(図7における白抜き矢印参照)。
【0040】
各セル10aでは、以下に示すように、水素と酸素とを電気化学反応させて、電気エネルギを出力する。
【0041】
(負極側)H→2H+2e
(正極側)2H+1/2O+2e→H
さらに、燃料電池10から出力される電気エネルギは、燃料電池10全体として出力される電圧を検出する電圧センサ11、および、燃料電池10全体として出力される電流を検出する電流センサ12によって計測される。なお、電圧センサ11および電流センサ12の出力信号は、後述する制御装置50に入力されている。
【0042】
また、各セル10aのうち、セル面内の電流分布の測定対象となるセル10aには、電流分布測定装置100が隣接して配置されている。この電流分布測定装置100は、隣り合うセル10aと電気的に直列に接続されている。なお、電流分布測定装置100については後述する。
【0043】
燃料電池10の空気極(正極)側には、酸化剤ガスである空気(酸素)を燃料電池10に供給するための空気供給配管20a、並びに、燃料電池10にて電気化学反応を終えた余剰空気および空気極で生成された生成水を燃料電池10から外気へ排出するための空気排出配管20bが接続されている。
【0044】
空気供給配管20aの最上流部には、大気中から吸入した空気を燃料電池10に圧送するための空気ポンプ21が設けられ、空気排出配管20bには、燃料電池10内の空気の圧力を調整するための空気調圧弁23が設けられている。なお、本実施形態では、空気ポンプ21および空気調圧弁23によって、所定の流量および圧力の空気を燃料電池10に供給する酸化剤ガス側のガス供給手段が構成される。
【0045】
さらに、空気供給配管20aおよび空気排出配管20bには、空気調圧弁23から流出した空気の有する湿度(水蒸気)を空気ポンプ21から圧送された空気へ移動させるための加湿器22が設けられている。この加湿器22は、複数本の中空糸にて構成されており、燃料電池10へ供給される空気を加湿する機能を果たす。
【0046】
燃料電池10の水素極(負極)側には、燃料ガスである水素を燃料電池10に供給するための水素供給配管30a、水素極側に溜まった生成水を微量な水素とともに燃料電池10から外気へ排出するための水素排出配管30bが接続されている。さらに、水素供給配管30aおよび水素排出配管30bは、水素循環配管30cを介して接続されている。
【0047】
水素供給配管30aの最上流部には、高圧水素が充填された高圧水素タンク31が設けられ、水素供給配管30aにおける高圧水素タンク31と燃料電池10との間には、燃料電池10に供給される水素の圧力を調整する水素調圧弁32が設けられている。なお、本実施形態では、この水素調圧弁32によって、所定の圧力の水素を燃料電池10に供給する燃料ガス側のガス供給手段が構成される。
【0048】
水素排出配管30bには、生成水を微量な水素とともに外気へ排出するために所定の時間間隔で開閉する電磁弁34が設けられている。なお、上述の電気化学反応では、水素極側において生成水は発生しないものの、水素極側には、酸素極側から各セル10aの電解質膜を透過した生成水が溜まるおそれがある。このため、本実施形態では、水素排出配管30bおよび電磁弁34を設けている。
【0049】
水素循環配管30cは、水素供給配管30aの水素調圧弁32下流側と水素排出配管30bの電磁弁34上流側とを接続するように設けられており、これにより、燃料電池10から流出した未反応の水素を、燃料電池10に循環させて再供給している。さらに、水素循環配管30cには、水素流路30内で水素を循環させるための水素ポンプ33が配置されている。
【0050】
ところで、燃料電池10は発電効率確保のために運転中一定温度(例えば80℃程度)に維持する必要がある。このため、燃料電池10には、燃料電池10を冷却するための冷却水回路40が接続されている。この冷却水回路40には、燃料電池10に冷却水(熱媒体)を循環させるウォータポンプ41、電動ファン42を備えたラジエータ(放熱器)43が設けられている。
【0051】
さらに、冷却水回路40には、冷却水を、ラジエータ43を迂回するように流すバイパス流路44が設けられている。冷却水回路40とバイパス流路44との合流点には、バイパス流路44に流れる冷却水流量を調整するための流路切替弁45が設けられている。この流路切替弁45の弁開度が調整されることによって、冷却水回路40の冷却能力が調整される。
【0052】
また、冷却水回路40の燃料電池10の出口側付近には、燃料電池10から流出した冷却水の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ46が設けられている。この温度センサ46により冷却水温度を検出することで、燃料電池10の温度を間接的に検出することができる。なお、この温度センサ46の検出信号も、制御装置50に入力される。
【0053】
燃料電池システムには、各種制御を行う発電制御手段としての制御装置(ECU)50が設けられている。この制御装置50は、入力信号に基づいて、燃料電池システムを構成する各種電気式アクチュエータの作動を制御するもので、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。
【0054】
具体的には、制御装置50の入力側には、上述の電圧センサ11、電流センサ12および温度センサ46の検出信号等の他に、後述する電流分布測定装置100の信号処理回路51から出力される電流信号、および、車室内に設けられた車両起動スイッチ50aの操作信号等が入力される。なお、車両起動スイッチ50aは、空気ポンプ21、空気調圧弁23、水素調圧弁32等の作動開始信号を出力する開始信号出力手段の機能を兼ねる。
【0055】
一方、出力側には、上述の空気ポンプ21、空気調圧弁23、水素調圧弁32、水素ポンプ33、電磁弁34、ウォータポンプ41、流路切替弁45等の各種電気式アクチュエータ、電流分布測定装置100の入力側、および音、光、振動等により乗員にシステム異常を警告する警告手段50b等が接続されている。
【0056】
次に、本実施形態の電流分布測定装置100について説明する。電流分布測定装置100は、主に、第1板状部材200、第2板状部材300、電流測定用電圧センサ101、セル電圧測定用電圧センサ102、信号処理回路51、発振回路60を有して構成されている。なお、第1板状部材200および第2板状部材300は、セル10aと同程度の大きさに構成されている。
【0057】
まず、図2〜図5により、第1板状部材200、第2板状部材300、および電流測定用電圧センサ101について説明する。ここで、図2は、本実施形態の電流分布測定装置100の斜視図であり、図3は、第1板状部材200の分解斜視図であり、図4は、第1板状部材200における第1導電部201の電流の流れを示す斜視図である。また、図5は、第2板状部材300を説明する説明図である。
【0058】
図2に示すように、第1板状部材200は、電流分布の測定対象となるセル10aの一方の面に隣接して配置され、第2板状部材300は、電流分布の測定対象となるセル10aにおける他方の面(第1板状部材200の反対側)に隣接して配置されている。つまり、第1板状部材200および第2板状部材300は、電流分布の測定対象となる一枚のセル10aを両側から挟み込むように配置されている。なお、第1板状部材200は、セル10aの積層方向における電流流れ下流側に配置され、第2板状部材300は、セル10aの積層方向における電流流れ上流側に配置されている。
【0059】
第1板状部材200および第2板状部材300には、図2における左右両側に、3つの貫通孔が形成されている。これら貫通孔は、空気、水素、冷却水がそれぞれ通過するマニホールドとして機能する。
【0060】
第1板状部材200には、測定対象となるセル10aの各測定対象部位に対応する部位に第1導電部201が設けられている。また、第2板状部材300には、セル10aを挟んで第1導電部201と対となるように、測定対象となるセル10aの各測定対象部位に対応する部位に第2導電部301が設けられている。なお、第1導電部201と、セル10aを挟んで第1導電部201と対になる第2導電部301とで一対の導電部201、301が構成されている。
【0061】
本実施形態では、セル面内における電流分布を測定するために、第1導電部201と第2導電部301とがセル10aの板面の全体に分散するように設けられている。具体的には、本実施形態の第1導電部201および第2導電部301は、直交する二方向にマトリクス状(格子状)に設けられており、例えば、図2に示すように、上下方向に6個、左右方向7個という配列とすることができる。
【0062】
図3に示すように、本実施形態の第1板状部材200は、配線パターンが形成された複数のプリント基板210〜230を積層した板状の積層基板(多層配線基板)として構成されている。なお、各基板210〜230は、一般的なガラスエポキシ基板を用いることができる。
【0063】
より具体的には、本実施形態の第1板状部材200は、第1基板210、第2基板220、第3基板230の3枚のプリント基板が積層されて構成されている。これらの基板210〜230は、絶縁性接着剤を介在させてホットプレスにより一体化されている。
【0064】
第1板状部材200の各第1導電部201は、一対の電極部211、231、これらを接続する電流測定用抵抗体221等を有している。一対の電極部211、231は、第1板状部材200における両外面に設けられ、第1電極部211は第1基板210におけるセル10aに対向する面(図3の紙面手前側)に設けられており、第2電極部231は第3基板230におけるセル10aに対向する面(図3の紙面奥側)に設けられている。
【0065】
なお、本実施形態の第3基板230における第2電極部231が設けられている側の反対側には、図示しない配線を介して、発振回路60に接続される第1の交流印加部が設けられている。
【0066】
電流測定用抵抗体221は、第1基板210と第3基板230に挟まれた第2基板220に設けられている。本実施形態では、電流測定用抵抗体221は、第2基板220における第1基板210に対向する側(図3の紙面手前側)に設けられている。第2基板220における電流測定用抵抗体221が設けられている側の反対側(図3の紙面奥側)には電流測定用配線222が設けられている。図3では、電流測定用配線222を破線で囲まれた斜線で示している。第2基板220の1辺には、電流測定用配線222が接続された信号取り出し用のコネクタ223が設けられている。
【0067】
電流測定用抵抗体221は、電極部211、231より抵抗値が大きい材料から構成されている。第1電極部211、第2電極部231、電流測定用抵抗体221は、金属箔として構成されており、これらは各基板210〜230に配線パターンとして形成されている。電極部211、231と電流測定用配線222は、例えば、銅箔にて構成することができ、電流測定用抵抗体221は、例えば、ニッケル箔にて構成することができる。
【0068】
図4に示すように、各基板210〜230には、第1、第2スルーホール201a、201bが設けられている。各スルーホール201a、201bの内部には、電極部211、231と同様の銅箔から構成される導電体が設けられている。
【0069】
第1スルーホール201aを介して、第1電極部211と電流測定用抵抗体221が導通し、第2スルーホール201bを介して、電流測定用抵抗体221と第2電極部231が導通している。さらに第1、第2スルーホール201a、201bを介して電流測定用抵抗体221と電流測定用配線222が導通している。第1電極部211は電流測定用抵抗体221の一端側と導通し、第2電極部231は電流測定用抵抗体221の他端側と導通しているため、電流測定用抵抗体221では一端側と他端側との間で電流が流れることとなる。
【0070】
電流測定用配線222は、電流測定用抵抗体221の一端側および他端側と導通している。電流測定用配線222は、外部の配線と接続され、電流測定用電圧センサ101と接続されている。電流測定用電圧センサ101は、電流測定用抵抗体221の一端側および他端側の2点間の電位差を測定し、信号を信号処理回路51に出力するように構成されている。電流測定用抵抗体221の一端側および他端側の2点間の抵抗値Rは既知であるものとする。
【0071】
燃料電池10での発電が行われている場合には、第1板状部材200の各第1導電部201では、電流流れ方向上流側のセル10aから第1電極部211の板面に電流が流れる。そして、第1電極部211→第1スルーホール201a→電流測定用抵抗体221→第2スルーホール201b→第2電極部231の順に電流が流れ、第2電極部231の板面から電流流れ方向下流側のセル10aに電流が流れる。このとき、電流測定用電圧センサ101で電流測定用抵抗体221の一端側および他端側の電位差Vを測定する。電流測定用電圧センサ101で測定した電流測定用抵抗体221の一端側および他端側の電位差Vは、信号処理回路51に出力される。
【0072】
図5に示すように、本実施形態の第2板状部材300は、配線パターン(図示略)が形成された2枚のプリント基板310、320を積層した板状の積層基板として構成されている。これら基板310、320は、一般的なガラスエポキシ基板を用いることができ、絶縁性接着剤を介在させてホットプレスにより一体化されている。
【0073】
第2板状部材300の第2導電部301は、第2板状部材300における両外面に設けられた一対の電極部311、321を有している。一対の電極部311、321は、第2板状部材300における両外面に設けられている。つまり、第2導電部301の一対の電極のうち、第1電極部311が第1基板310におけるセル10aに対向する面(図5の紙面奥側)に設けられ、第2電極部321が第2基板320におけるセル10aに対向する面(図5の紙面手前側)に設けられている。
【0074】
第2導電部301における第1電極部311および第2電極部321は、各基板310、320を貫通するスルーホール301aの内部に設けられた銅箔から構成される導電体を介して導通している。なお、第1電極部311と第2電極部321との間を導通させる構成は、スルーホール301a内の導電体に限らず、他の構成としてもよい。
【0075】
また、本実施形態の第2板状部材300の第2基板320における第2電極部321が設けられている側の反対側には、図示しない配線を介して、発振回路60に接続される第2の交流印加部が設けられている。
【0076】
次に、電流分布測定装置100のセル電圧測定用電圧センサ102、発振回路60、信号処理回路51について図6、図7に基づいて説明する。図6は、電流分布測定装置の概略を示す概略構成図であり、図7は、電流分布測定装置における電流の流れを説明する説明図である。
【0077】
セル電圧測定用電圧センサ102は、測定対象となるセル10aの両面(一対のセパレータ)の電位差(セル電圧)を検出するセル電圧検出手段を構成している。セル電圧測定用電圧センサ102の出力信号は、信号処理回路51に入力されている。
【0078】
発振回路60は、第1導電部201の交流印加部と第2導電部301の交流印加部との間に交流電流を供給する交流電流供給手段である。本実施形態の発振回路60は、一対の導電部201、301それぞれに異なる周波数の交流電流を供給するように構成されている。なお、本実施形態の発振回路60は、交流電流量を調整可能に構成されている。この発振回路60の交流電流量の調整は、信号処理回路51にて行う。
【0079】
ここで、図8の燃料電池10の出力電圧と出力電流の関係を示すI−V特性図に示すように、燃料電池10は、出力電流が大きい領域において、出力電流の増加に応じて出力電圧が大きく低下するといった特性がある。つまり、セル10aの出力電圧が低下している場合には、発振回路60にて供給する交流電流量が大きいと、燃料電池10の出力電圧がさらに低下する虞がある。
【0080】
そのため、本実施形態では、発振回路60から供給する交流電流量(振幅)は、セル電圧測定用電圧センサ102の出力信号の低下に応じて、発振回路60にて供給する交流電流量を低下させるように構成されている。
【0081】
本実施形態の発振回路60は、燃料電池10に接続された高電圧出力用DC−DCコンバータ(図示略)に電源ラインが接続され、当該高電圧出力用DC−DCコンバータから給電されている。
【0082】
信号処理回路51は、周知のマイクロコンピュータとその周辺回路により構成されている。信号処理回路51は、電流測定用電圧センサ101の出力信号、セル電圧測定用電圧センサ102、発振回路60にて供給する各周波数の交流電流量等に基づいて、各種演算処理を行い、演算結果を制御装置50に出力可能に構成されている。
【0083】
本実施形態の信号出力回路51は、燃料電池10に接続された低電圧出力用DC−DCコンバータ(図示略)に電源ラインが接続され、当該低電圧出力用DC−DCコンバータから給電されている。つまり、本実施形態の発振回路60および信号出力回路51は、異なる電源ラインから給電されている。
【0084】
本実施形態の信号処理回路51では、第1導電部201を流れる電流を検出する電流検出処理、電流検出処理にて検出した電流検出値に含まれる交流成分から所定周波数の交流電流量を抽出する交流成分抽出処理、電流検出値を補正して電流値を演算する電流演算処理等を行う。なお、本実施形態では、信号処理回路51の構成(ハードウェアおよびソフトウェア)のうち、電流検出手段として機能する構成を電流検出部51aとし、交流成分抽出手段として機能する構成を交流成分抽出部51bとし、電流演算手段として機能する構成を電流演算部51cとする。
【0085】
具体的には、電流検出部51aでは、電流測定用電圧センサ101による測定電位差Vと、電流測定用抵抗体221の抵抗値Rとから、電流測定用抵抗体221に流れた電流I(=V/R)、すなわち第1導電部201を流れる電流量を検出する。
【0086】
また、交流成分抽出部51bでは、第1導電部201の電流値に含まれる交流成分と直流成分とを分離すると共に、分離した交流成分から、発振回路60で供給した交流電流の各周波数に対応する交流成分を抽出する。なお、交流成分抽出部51bでは、発振回路60で供給した交流電流の各周波数の全てに対応する交流成分を抽出する構成としてもよいが、電流検出部51aにて電流値を検出した第1導電部201の周囲を囲む第1導電部201に供給した交流電流の周波数に対応する交流成分だけを抽出する構成としてもよい。
【0087】
ここで、交流成分と直流成分は、AC/DC分離回路等にて分離することができ、AC/DC分離回路で分離した交流成分から各周波数それぞれの交流成分は、バンドパスフィルタ回路等にて抽出することできる。
【0088】
また、電流演算部51cでは、電流検出部51aの各出力信号(電流検出値)に含まる回り込み電流(図7のセル10a内に示す白抜き矢印参照)による影響を補正して、各測定対象部位に流れる電流を演算する。
【0089】
ここで、回り込み電流による電流検出精度への影響ついて図9に基づいて説明する。図9は、回り込み電流による電流検出精度への影響を説明するための説明図であり、セル10aにおける隣接する2つの測定対象部位A、Bおよびこれらに対応する各第1導電部201A、201Bの等価回路図である。なお、説明の便宜上、図9では、測定対象部位Aを流れる電流が、測定対象部位Bに回り込むものとしている。また、図9では、セル10aのセパレータ10cにおける積層方向の抵抗をR、Rで示し、面方向の抵抗をRで示している。
【0090】
図9に示すように、セル10aの測定対象部位A、Bの膜電極接合体10bを流れる電流I、I(実際に測定対象部位に流れる電流)は、セル10aのセパレータ10cを流れる際に、電流Iの一部ΔIが、セル10aの面方向に流れて電流Iと合流する。つまり、電流Iの一部であるΔIが回り込み電流となる。
【0091】
この回り込み電流ΔIの影響によって、当該測定対象部位Aに対応する第1導電部201Aにて検出される電流I´が、実際に測定対象部位Aにおける膜電極接合体10bを流れる電流値よりも低くなる。
【0092】
一方、測定対象部位Bに対応する第1導電部201Bにて検出される電流I´は、回り込み電流ΔIの影響によって、実際に測定対象部位Bにおける膜電極接合体10bを流れる電流値よりも高くなる。
【0093】
このように、電流検出部51aの出力信号(電流検出値)は、実際に各測定対象部位に流れる(膜電極接合体10bを流れる)電流値から乖離し、電流分布を精度よく測定できないこととなる。
【0094】
次に、本実施形態の電流演算部51cにて行う演算処理について説明する。本実施形態では、発振回路60にて一対の導電部201、301それぞれに固有の周波数の交流電流を供給しているので、交流成分抽出部51bにて抽出した各周波数の交流成分の交流電流量(振幅)に基づいて、各測定対象部位における回り込み電流の影響による交流電流量の変化を把握することができる。
【0095】
例えば、図9に示す電流Iに第1周波数fの交流電流を重畳させ、電流Iに第2周波数fの交流電流を重畳させた場合には、当該測定対象部位Bに対応する第1導電部201Bにて検出される電流I´には、回り込み電流ΔIの影響で、第1周波数fの交流電流に加えて第2周波数fの交流電流が含まれる。この場合、測定対象部位Bに対応する第1導電部201Bにて検出される電流I´から第1周波数fに対応する交流電流量と第2周波数fに対応する交流電流量とを分離して抽出することで、測定対象部位Aから測定対象部位Bへと流れる回り込み電流の影響による交流電流量の変化を把握することができる。
【0096】
燃料電池10の発電時にセル10a間を流れる電流(直流電流)における回り込み電流の影響による変化は、一対の導電部201、301に供給した交流電流における回り込み電流による変化と同等に変化すると考えられる。すなわち、一対の導電部201、301それぞれに供給した各周波数の交流電流量に対する電流検出部51aの出力信号から抽出した各周波数に対応する交流成分の交流電流量の比率は、実際にセル10aの各測定対象部位に流れる電流に対する電流検出部51aの出力信号それぞれに含まれる直流成分の直流電流量との比率とが同等となると考えられる。
【0097】
そこで、本実施形態の電流演算部51cでは、まず、一対の導電部201、301それぞれに供給した各周波数の交流電流量に対する電流検出部51aの出力信号から抽出した各周波数に対応する交流成分の交流電流量の比率を演算する。そして、当該演算によって得られた比率、および電流検出部51aの出力信号それぞれに含まれる直流成分の直流電流量に基づいて、実際にセル10aの各測定対象部位に流れる電流値(回り込み電流の影響を排除した電流値)を演算する。
【0098】
上記構成に係る本実施形態の燃料電池システムの作動を、図10のフローチャートにより説明する。図10に示す制御フローは、車両起動スイッチ50aが投入(ON)されて、燃料電池10の発電状態となるとスタートする。なお、図10では、信号処理回路51および制御装置50にて行う制御処理を1つのフローチャートで示している。
【0099】
車両が起動すると、フラグ、タイマ等の初期化処理がなされる(S10)。そして、セル電圧測定用電圧センサ102にて測定対象となるセル10aのセル電圧を検出する(S20)。なお、セル電圧測定用電圧センサ102にて検出したセル電圧は、信号処理回路51に出力され、信号処理回路51の記憶部に記憶される。
【0100】
次に、セル電圧測定用電圧センサ102の出力信号に基づいて、信号処理回路51にて発振回路60から各一対の導電部201、301に供給する交流電流量(振幅)を決定する(S30)。S30での決定は、予めセル電圧と交流電流量とを関連付けた制御マップに基づいて行うことができる。なお、当該制御マップには、セル電圧の低下に伴い交流電流の電流量が低下するように、セル電圧と交流電流の電流量とが関連付けられている。
【0101】
そして、各一対の導電部201、301それぞれに異なる周波数、かつ、S30にて決定した交流電流量(振幅)の交流電流を供給し(S40)、第1導電部201を流れる電流値を検出する(S50)。
【0102】
S50の電流検出処理では、電流測定用電圧センサ101によって、第1スルーホール101aと第2スルーホール101bとの二点間の電位差を測定する。そして、信号処理回路51では、電流測定用電圧センサ101の出力信号(検出電位差)から、予め設定された抵抗体121の抵抗値を除する演算処理を行うことで、抵抗体121に流れた電流を検出する。
【0103】
次に、S50の電流検出処理にて検出された電流検出値が所定の異常基準値以上であるか否かを判定する(S60)。ここで、異常基準値としては、予め設定された基準値に発振回路60にて供給する交流電流量を加算した値を設定することができる。なお、本実施形態では、S60の判定処理が、出力異常判定手段を構成している。
【0104】
S60の判定処理の結果、電流検出処理にて検出された電流検出値が異常基準値以上でないと判定された場合(S60:NO)には、電流検出処理にて検出された電流検出値から、発振回路60で供給した交流電流の各周波数に対応する交流成分を抽出する(S70)。なお、S70の交流成分抽出処理では、電流検出処理にて検出された電流検出値から、直流成分についても抽出する。
【0105】
そして、S40で一対の導電部201、301に供給した各周波数の交流電流量に対するS70にて抽出した各周波数に対応する交流成分の交流電流量の比率、およびS70にて抽出した直流成分の直流電流量に基づいて、実際にセル10aの各測定対象部位に流れる電流を演算する(S80)。
【0106】
次に、S80にて演算した電流値に基づいて、空気ポンプ21、空気調圧弁23、水素調圧弁32、水素ポンプ33、電磁弁34、ウォータポンプ41、流路切換弁45等の各種電気式アクチュエータの作動状態を決定し、当該作動状態が得られるように制御装置50から各種電気式アクチュエータに対して制御信号が出力される(S100)。
【0107】
そして、燃料電池10の運転を終了するか否かを判定する(S100)。この判定処理では、車両起動スイッチ50aがオフされたか否かを判定すればよい。この結果、燃料電池10の運転を終了すると判定された場合(S100:YES)には、各種制御処理を終了する。一方、燃料電池10の運転を終了しないと判定された場合(S100:NO)には、S20の処理に戻る。
【0108】
また、上述したS60の判定処理の結果、電流検出処理にて検出された電流検出値が異常基準値以上であると判定された場合(S60:YES)には、警告手段50bによって、電流検出値が異常基準値以上であることを乗員に警告する(S110)。そして、各種制御処理を強制終了する。つまり、S80にて演算した電流値に基づいて各種電気式アクチュエータを制御することを禁止することとなる。
【0109】
ここで、電流検出処理にて検出された電流検出値が異常基準値以上となる要因、すなわち、回り込み電流が著しく多くなる要因の1つとして、第1、第2板状部材200、300とセル10aとの間の一部の接触不良が考えられる。
【0110】
このため、電流検出処理にて検出された電流検出値が異常基準値以上となる場合の異常時対応方法としては、燃料電池10での発電を停止した後、燃料電池10の積層方向の締付荷重を増加させるようにすればよい。
【0111】
これによれば、燃料電池(10)の積層方向の締付荷重を増加させるので、第1、第2板状部材200、300とセル10aとの間の一部の接触不良を解消し、電流検出処理にて検出された電流検出値の異常状態から復旧することが可能となる。
【0112】
以上説明した本実施形態の構成によれば、第1板状部材200および第2板状部材300に形成された一対の導電部201、301それぞれに異なる周波数の交流電流を供給し、電流検出部51aの出力信号から各周波数に対応する交流成分(振幅)を抽出することで、各第1導電部201における回り込み電流による交流電流量の変化を把握することができる。
【0113】
これにより、一対の導電部201、301それぞれに供給した各周波数の交流電流量に対する電流検出部51aの出力信号から抽出した各周波数の交流電流量の比率、および電流検出部51aの出力信号それぞれに含まれる直流電流量に基づいて、セル10aの各測定対象部位に流れる電流(回り込み電流の影響を排除した電流)を演算することができる。
【0114】
従って、セル10aにおける所定の測定対象部位に流れる電流を測定する場合に、他の測定対象部位から流れ込む回り込み電流の影響を補正することができるので、セル10aの各測定対象部位に電流分布を精度よく測定することが可能となる。
【0115】
また、本実施形態では、第1板状部材200および第2板状部材300それぞれをプリント基板の積層体で構成しているので、電流分布測定装置100の厚みを薄くすることができるので、燃料電池10の熱容量の増加を抑制することができる。なお、第1板状部材200および第2板状部材300それぞれをプリント基板の積層体で構成することが好ましいが、第1板状部材200および第2板状部材300のうち一方をプリント基板の積層体で構成してもよい。これによっても、電流分布測定装置100の厚みを薄くすることができる。
【0116】
また、本実施形態では、セル電圧測定用電圧センサ102の電圧検出値の低下に応じて、一対の導電部201、301に供給する交流電流量を低下させているので、一対の導電部201、301に交流電流を供給することに起因して、燃料電池10の出力電圧が低下することを抑制することが可能となる。
【0117】
また、本実施形態では、電流検出部51aの出力信号が異常であるか否かを判定することができるので、燃料電池10の異常を検出することが可能となる。ひいては、燃料電池システムの信頼性の向上を図ることができる。
【0118】
さらに、本実施形態では、電流検出部51aの電流検出値が異常である場合に、電流分布測定装置100にて演算した電流値に基づく燃料電池10の発電状態の制御を禁止しているので、燃料電池10を適切に保護することが可能となる。
【0119】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図11〜図14に基づいて説明する。図11は、本実施形態に係る電流分布測定装置100の概略構成図である。なお、図11は、第1実施形態の図7に対応している。
【0120】
本実施形態では、電流分布測定装置100にてセル10aの局所的なインピーダンスを演算するインピーダンス演算部51dを備える点が第1実施形態と相違している。以下、第1実施形態との相違している部分について主に説明する。
【0121】
本実施形態の信号処理回路51は、インピーダンス演算部51dを備えている。このインピーダンス演算部51dは、電流検出部51aにて検出した各第1導電部201を流れる電流検出値の交流成分と、セル電圧測定用電圧センサ102の電圧検出値の交流成分を用いて、セル10aの局所的なインピーダンスを演算するインピーダンス演算手段として機能する。
【0122】
次に、セル10aの局所的なインピーダンスの測定方法について簡単に説明すると、本実施形態では、発振回路60にて第1導電部201と第2導電部301との間に所定周波数の交流電流を供給しているので、電流検出部51aの各出力信号(電流検出値)およびセル電圧測定用電圧センサ102の各出力信号(電圧検出値)には、所定周波数の正弦波が重畳される。
【0123】
このため、信号処理回路51のインピーダンス演算部51dでは、電流検出部51aの出力信号の交流成分と、セル電圧測定用電圧センサ102の各出力信号の交流成分を用いて、セル10aの局所的なインピーダンスを演算する。
【0124】
ここで、図12は、セル10aの内部水分量と内部抵抗との関係を示している。図12に示すように、セル10aの内部水分量と内部抵抗とは相関関係がある。すなわち、セル10a内の水分が不足すると電解質膜の水分量が減少し、電解質膜の導電率が低下する。この結果、電解質膜の抵抗が増大することとなる。従って、電解質膜の抵抗値が第1の所定抵抗値を超えている場合には電解質膜の水分量が不足していると判断することができる。また、水分が過剰になると電極の反応抵抗が増加する。このため、電極の反応抵抗が第2の所定抵抗値を超えている場合には、電解質膜の水分過剰と判断することができる。それら以外の場合には電解質膜の水分量が適正であると判断することができる。
【0125】
ところで、セル10aの電圧降下は、(1)電気化学反応による反応抵抗、(2)セル10aの電解質膜抵抗によって生じる。従って、これらの中から反応抵抗と電解質膜抵抗を測定することで、燃料電池の水分量を検出することが可能となる。
【0126】
次に、図13、図14に基づいて、反応抵抗と電解質膜抵抗の測定方法について説明する。図13はセル10aの等価回路を示している。図13の等価回路におけるR1は電解質膜の抵抗に相当し、R2は反応抵抗に相当している。図13の等価回路に所定の周波数を有する正弦波電流を印加した場合、電流の変化に対して電圧の応答が遅れる。
【0127】
図14は、図14の回路に高周波から低周波までの正弦波電流を印加した場合のセル10aのインピーダンスを複素平面上に表示したものである。印加する正弦波電流の周波数が無限に大きい場合(ω=∞)のインピーダンスは、図14におけるR1となる。また、正弦波電流の周波数が非常に小さい場合(ω=0)のインピーダンスは、R1+R2となる。高周波から低周波の間で周波数を変化させたときのインピーダンスは、図14に示すような半円を描く。
【0128】
これらによれば、セル10aにおける電解質膜の水分が不足し易い部位(例えば、セル10aにおける水素入口部付近)に対応する一対の導電部201、301に供給する交流電流の周波数を高周波に設定して当該部位のインピーダンスを検出することで、電解質膜の抵抗に相当する抵抗R1の変化を把握することができる。すなわち、セル10aにおける電解質膜の水分が不足し易い部位における電解質膜の水分量が不足しているか否かを判断することができる。
【0129】
一方、セル10aにおける水分が過剰となり易い部位(例えば、セル10aにおける空気出口部付近)に対応する一対の導電部201、301に供給する交流電流の周波数を低周波に設定して当該部位のインピーダンスを検出することで、電解質膜の抵抗および反応抵抗に相当する抵抗R1+R2の変化を把握することができる。なお、電解質膜の抵抗R1は、電解質膜の水分量が過剰となってもほとんど変化しないため、実質的には、反応抵抗R2の変化を把握することができる。すなわち、セル10aにおける水分が過剰となり易い部位において、水分量が過剰となり反応抵抗が増大しているか否かを判断することができる。
【0130】
以上の構成により、セル10a面内における局所的なインピーダンスを測定することができ、セル10a面内における局所的な内部水分量を把握することができる。また、本実施形態では、セル10a面内の全体で局所インピーダンスを測定することが可能であるため、セル10a面内の内部水分量の分布も把握可能となる。
【0131】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図15に基づいて説明する。図15は、本実施形態の電流分布測定装置100を説明するための説明図である。図15は、本実施形態の電流分布測定装置100の斜視図であり、図16は、本実施形態の電流分布測定装置100の概略構成図である。なお、図15は、第1実施形態の図2に対応し、図16は、第1実施形態の図7に対応している。
【0132】
本実施形態の電流分布測定装置100は、セル10aの各測定対象部位に対応する各導電部201における電位と基準電位(例えば、グランド)との電位差を検出し、当該電位差に応じて、電流検出部51aの各出力信号(電流検出値)を補正する構成としている点が第1、第2実施形態と相違している。以下、第1、第2実施形態と相違している部分について主に説明する。
【0133】
まず、本実施形態の電流分布測定装置100の概略構成を説明する。本実施形態の電流分布測定装置100は、板状部材200、電流測定用電圧センサ101、電位差測定用電圧センサ103、信号処理回路51等を有して構成されている。板状部材200は、第1実施形態の第1板状部材200と同様の構成である。なお、本実施形態の電流測定装置100では、第1実施形態の第2板状部材300に相当する構成を有していない。
【0134】
電位差測定用電圧センサ103は、板状部材200の導電部201における電位と、基準電位部61の基準電位との電位差を、各導電部201それぞれで検出する電位差検出手段を構成している。なお、本実施形態の電位差測定用電圧センサ、103は、各導電部201における第1基板210の第1電極211における電位と、上述した基準電位との電位差を検出するように構成されている。なお、電位差測定用電圧センサ103にて検出した電位差は、信号処理回路51に出力される。
【0135】
また、本実施形態の信号処理回路51には、電位差測定用電圧センサ103の出力信号に応じて、電流検出部51aの各出力信号を補正する出力信号補正手段としての電流補正部51eが設けられている。
【0136】
次に、本実施形態の電流分布測定装置100における電流検出部51aの出力信号の補正方法について説明する。
【0137】
セル10aにおけるセパレータ10cを流れる電流(面方向に流れる電流)は、基本的に、電位が高い部位から電位が低い部位へと流れ易いので、セル10aにおける各測定対象部位の電位の大小関係によって、セル10aの各測定対象部位間における回り込み電流の電流量を把握することができる。
【0138】
例えば、測定対象となるセル10aにおける所定の測定対象部位に対応する電位が、他の測定対象部位における電位に比較して大きい場合には、所定の測定対象部位から他の測定対象部位へと回り込み電流が流れ易くなると考えられる。
【0139】
一方、セル10aにおける所定の測定対象部位に対応する電位が、他の測定対象部位における電位に比較して小さい場合には、他の測定対象部位から所定の測定対象部位へと回り込み電流が流れ易くなると考えられる。
【0140】
このため、本実施形態の電流補正部51eでは、各導電部201のうち、電位差測定用電圧センサ103にて検出した電位差が予め設定された基準電位差よりも大きくなる導電部201の出力信号(電流検出値)に対して、所定の電流量を増やす補正を行う。なお、電流補正部51eでは、基準電位差に対して電位差が大きいほど補正によって増やす補正量(電流量)を増加させるようになっている。
【0141】
また、電流補正部51eでは、各導電部201のうち、電位差測定用電圧センサ103にて検出した電位差が基準電位差以下となる導電部201における出力信号(電流検出値)に対して、所定の電流量を減らす補正を行う。なお、電流補正部51eでは、基準電位差に対して電位差が小さいほど補正よって減らす補正量(電流量)を増加させるようになっている。
【0142】
本実施形態の構成では、板状部材200の各導電部201の電位と基準電位(例えば、グランド)との電位差を比較することによって、電流検出部51aの出力信号を補正している。このため、セル10aにおける所定の測定対象部位に流れる電流を測定する場合に、他の測定対象部位から流れ込む回り込み電流の影響を補正することができ、セル10aの各測定対象部位に流れる電流分布を精度よく測定することが可能となる。ここで、基準電位は、グランドだけではなく、例えば、水素極の電位を基準電位としてもよい。
【0143】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0144】
(1)上記各実施形態の電流分布測定装置100では、第1板状部材200に設けた第1導電部201の電流測定用抵抗体221の抵抗値と、当該抵抗体221の両端の電圧値に基づいて各第1導電部201を流れる電流値を検出しているが、これに限定されない。第1導電部201を流れる電流を検出可能な構成であれば、他の構成を採用することができる。例えば、第1板状部材200に複数の導電部を設け、当該導電部を通過する電流の磁気を検出することで、導電部201を流れる電流値を検出するようにしてもよい。
【0145】
(2)上記各実施形態では、制御装置50と信号処理回路51とを別体で構成したが、これに限定されず、制御装置50と信号処理回路51と一体に構成してもよい。
【0146】
(3)上記各実施形態では、一対の導電部201、301をマトリクス状に配置しているが、これに限定されず、例えば、セル10aの面内における空気の入口部付近や水素の出口部付近等といった所望の箇所に配置してもよい。
【0147】
(4)上記各実施形態では、本発明の燃料電池システムを電気自動車に適用した例を説明したが、これに限定されず、船舶及びポータブル発電器等の移動体に適用してもよい。
【符号の説明】
【0148】
10 燃料電池
10a セル
100 電流分布測定装置
102 セル電圧測定用電圧センサ(セル電圧検出手段)
103 電位差測定用電圧センサ(電位差検出手段)
200 第1板状部材
201 第1導電部
300 第2板状部材
301 第2導電部
50 制御装置(発電制御手段)
51 信号処理回路
51a 電流検出部(電流検出手段)
51b 交流成分抽出部(交流成分抽出手段)
51c 電流演算部(電流演算手段)
51d インピーダンス演算部(インピーダンス演算手段)
51e 電流補正部(出力信号補正手段)
60 発振回路(交流電流供給手段)
S60 出力異常判定処理(出力異常判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを出力する複数のセル(10a)を積層配置して構成された燃料電池(10)に適用され、測定対象となる前記セル(10a)の各測定対象部位に流れる電流分布を測定する電流分布測定装置であって、
前記測定対象となる前記セル(10a)に隣接して配置され、前記セル(10a)の前記測定対象部位それぞれに対応する部位に第1導電部(201)が形成された第1板状部材(200)と、
前記測定対象となる前記セル(10a)における前記第1板状部材(200)の反対側に隣接して配置され、前記第1導電部(201)と対となるように前記測定対象部位それぞれに対応する部位に第2導電部(301)が形成された第2板状部材(300)と、
前記第1導電部(201)それぞれを流れる電流を検出する電流検出手段(51a)と、
前記第1導電部(201)および前記第1導電部(201)と対になる前記第2導電部(301)で構成される一対の導電部(201、301)それぞれに対し、異なる周波数の交流電流を供給する交流電流供給手段(60)と、
前記電流検出手段(51a)の各出力信号から、前記一対の導電部(201、301)それぞれに供給した前記交流電流の各周波数に対応する交流成分それぞれを抽出する交流成分抽出手段(51b)と、
前記交流電流供給手段(60)にて供給した各周波数の交流電流量に対する前記交流成分抽出手段(51b)にて抽出した前記周波数それぞれに対応する交流成分の交流電流量の比率、および前記電流検出手段(51b)の出力信号それぞれに含まれる直流成分の直流電流量に基づいて、前記測定対象部位それぞれに流れる電流を演算する電流演算手段(51c)と、
を備えることを特徴とする電流分布測定装置。
【請求項2】
前記測定対象となる前記セル(10a)の電圧を検出するセル電圧検出手段(102)を備え、
前記交流電流供給手段(60)は、前記交流電流量を調整可能に構成されており、前記セル電圧検出手段(102)にて検出された電圧の低下に応じて、前記交流電流量を低下させることを特徴とする請求項1に記載の電流分布測定装置。
【請求項3】
前記電流分布の測定対象となる前記セル(10a)の電圧を検出するセル電圧検出手段(102)と、
前記交流電流供給手段(60)にて前記一対の導電部(201、301)それぞれに各周波数の交流電流を供給した状態における前記セル電圧検出手段(102)の出力信号および前記電流検出手段(51a)の出力信号からインピーダンスを演算するインピーダンス演算手段(51d)と、を備え、
前記インピーダンス演算手段(51d)は、前記交流電流供給手段(60)にて印加した交流電流の各周波数における前記インピーダンスを演算することを特徴とする請求項1に記載の電流分布測定装置。
【請求項4】
前記交流電流供給手段(60)および前記電流演算手段(51a)は、それぞれ異なる電源ラインから給電されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電流分布測定装置。
【請求項5】
前記第1板状部材(200)および前記第2板状部材(300)は、少なくとも一方がプリント基板の積層体で構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電流分布測定装置。
【請求項6】
前記電流検出手段(51a)の出力信号それぞれが異常であるか否かを判定する出力異常判定手段(S60)を備え、
前記出力異常判定手段(S60)は、前記交流成分抽出手段(51b)にて抽出した前記交流電流の各周波数に対応する交流成分の交流電流量が所定の異常基準値以上である場合に、前記電流検出手段(51a)の出力信号が異常であると判定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電流分布測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電流分布測定装置の異常時対応方法であって、
前記出力異常判定手段(S60)にて異常と判定された場合に、前記燃料電池(10)の積層方向の締付荷重を増加させることを特徴とする電流分布測定装置の異常時対応方法。
【請求項8】
請求項6に記載の電流分布測定装置と、
前記燃料電池(10)の発電状態を制御する発電制御手段(50)と、を備え
前記発電制御手段(50)は、前記出力異常判定手段(S60)にて異常と判定された場合に、前記電流分布測定装置の出力に基づく前記燃料電池(10)の発電状態の制御を禁止することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを出力する複数のセル(10a)を積層配置して構成された燃料電池(10)に適用され、測定対象となる前記セル(10a)の各測定対象部位に流れる電流分布を測定する電流分布測定装置であって、
前記測定対象となる前記セル(10)に隣接して配置され、前記セル(10)の前記測定対象部位それぞれに対応する部位に導電部(201)が形成された板状部材(200)と、
前記導電部(201)それぞれを流れる電流を検出する電流検出手段(51a)と、
前記複数の導電部(201)それぞれにおける電位と予め設定された基準電位との電位差を検出する電位差検出手段(103)と、
前記電位差検出手段(103)における各出力信号に応じて、前記電流検出手段(51a)の出力信号を補正する出力信号補正手段(51e)と、を備え、
前記出力信号補正手段(51e)は、前記複数の導電部(201)のうち、所定の基準電位差よりも大きい電位差となる導電部(201)における前記電流検出手段(51a)の出力信号に対して所定の電流量を増加させる補正を行うと共に、前記所定の基準電位差以下の電位差となる導電部(201)における前記電流検出手段(51a)の出力信号に対して所定の電流量を減らす補正を行うことを特徴とする電流分布測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−233242(P2011−233242A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99730(P2010−99730)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】