説明

電流検出装置及び電力量計

【課題】耐外乱性能を向上して精度よく測定できるとともにコストを抑える電流検出装置、及びこれを利用した電力量計を提供する。
【解決手段】導体4に流れる電流を検出する電流検出装置であって、導体4の周囲に配置され、導体4に流れる電流に応じた磁界を受けて導体4に流れる電流を検出する複数のコイル1a,1bと、複数のコイル1a,1bの各々の一端同士を磁気的に短絡する第1磁性体(磁性体2a)と、第1磁性体(磁性体2a)と当接しないように設けられ、複数のコイル1a,1bの各々の他端同士を磁気的に短絡する第2磁性体(磁性体2b)と、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に複数のコイル1a,1bの外側に設けられた第3磁性体(磁性体3a,3b)とを備え、複数のコイル1a,1bと第1磁性体(磁性体2a)と第2磁性体(磁性体2b)とは、全体として導体4を周回するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁電変換により導体を流れる電流の大きさを検出する電流検出装置及びこれを用いた電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般家庭や工場、事務所の負荷電流を検出する電流検出装置が普及している。当該電流検出装置は、負荷電流を磁界に変換するコイルを構成する一次導体と、当該コイルを構成する一次導体により発生された磁界を検出する磁電変換部とを備えている(例えば特許文献1)。
【0003】
当該磁電変換部は、トロイダルコアといわれるドーナツ状の磁性体コアに、導線を巻いたコイルにより形成されるが、当該ドーナツ状の磁性体コアにエナメル線のような導線を巻きつける製造に手間がかかるため高価なものとなってしまうという問題点がある。
【0004】
一方、トロイダルコアを用いず、棒状の磁性体コアに導線を巻いたコイルを磁電変換部とし一次導体に近接させ一次導体に流れる電流が発生する磁界を検出する方式を用いた電流検出装置も存在する。しかしながら、棒状の磁性体コアに導線を巻いたコイルを磁電変換部とした電流検出装置は、一次導体の周囲を磁電変換部が取り巻いていないため、一次導体と磁電変換部の位置が変わってしまうと出力される信号の値が変わってしまうため精度よく電流を検出することができないという問題点がある。
【0005】
そこで、特許文献2に記載の電流検出装置は、上述した問題点に鑑み、製造に手間がかからず、高精度に電流検出を行うことを目的としている。図6は、特許文献2に記載されている従来の電流検出装置100の構成を示す斜視図である。また、図7は、従来の電流検出装置の構成を模式的に示す構成図である。図6に示すように、電流検出装置100は、一次導体110、コイル部120,130、支持部140,150、接続線160、及び出力端子170,180により構成されている。
【0006】
一次導体110は、鉄、銅等の導電性のある金属により構成されており、負荷電流を導通し、負荷電流に対応した磁界を発生する。
【0007】
コイル部120,130は、フェノールやベークのような導電性のない芯材にエナメル線のような導線が巻きつけられたコイルであり、一次導体110に流れる電流により発生した磁界を受け、当該電流に対応した低レベルの電流や電圧等の電気信号をコイル導線に発生する。このコイル部120,130は、中空構造の芯材を有するものであっても良いし、内部まで材質が充填されている芯材を有するものであっても良いし、フェライトやパーマロイ等の磁性体を芯材とするものであってもよい。また、コイル部120,130は、芯材を具備せず、融着材料や接着剤等の接合剤によりコイル導線同士が接合されてコイルが形成されたものであってもよい。また、接続線160は、コイル部120とコイル部130とを電気的に直列に接続する。
【0008】
支持部140,150は、フェライトやパーマロイ等の磁性体により構成されており、コイル部120,130を挟み込む位置に配置されたものであり、磁気抵抗が低いため、一次導体110に流れる電流により発生された磁界をコイル部120,130に伝達する。
【0009】
出力端子170,180は、一次導体110に流れる電流に対応した低レベルの電流や電圧等の電気信号を出力する。コイル部120,130は、コイル導線の一端が出力端子170,180に接続されており、一次導体110に流れる電流に対応した電気信号を出力端子170,180に出力する。
【0010】
上述した特許文献2に記載の電流検出装置によれば、コイル部120,130が円柱状にエナメル線等のコイル導線が巻かれて製作されるため、ドーナツ状の芯材にコイル導線が巻きつけられて製作されるトロイダル型のコイルより製造が容易である。
【0011】
また、コイル部120,130、及び支持部140,150は、一次導体110を周回した構成となっているため、ビオ・サバールの法則、アンペールの周回積分の法則により、コイル部120,130、及び支持部140,150に対する一次導体110の位置がずれても、精度よく一次導体110に流れる電流を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−37297号公報
【特許文献2】特開2010−256141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の電流検出装置は、外乱からの影響を受けやすいという問題点がある。そこで、外乱を遮断するためのシールド部品を備えるとすると、形状のサイズアップや部品点数の増加によるコストアップが懸念される。
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、耐外乱性能を向上して精度よく測定できるとともにコストを抑える電流検出装置、及びこれを利用した電力量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電流検出装置は、上記課題を解決するために、導体に流れる電流を検出する電流検出装置であって、前記導体の周囲に配置され、前記導体に流れる電流に応じた磁界を受けて前記導体に流れる電流を検出する複数のコイルと、前記複数のコイルの各々の一端同士を磁気的に短絡する第1磁性体と、前記第1磁性体と当接しないように設けられ、前記複数のコイルの各々の他端同士を磁気的に短絡する第2磁性体と、前記導体に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に前記複数のコイルの外側に設けられた第3磁性体とを備え、前記複数のコイルと前記第1磁性体と前記第2磁性体とは、全体として前記導体を周回するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電力量計は、上記課題を解決するために、電流検出装置と、被測定系の電圧を検出する電圧検出部と、前記電流検出装置により検出された前記導体に流れる電流と前記電圧検出部により検出された電圧とに基づいて、電力量を演算する電力演算部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐外乱性能を向上して精度よく測定できるとともにコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1の形態の電流検出装置の構成を模式的に示す構成図である。
【図2】本発明の実施例1の形態の電流検出装置の変形例における構成を模式的に示す構成図である。
【図3】本発明の実施例1の形態の電流検出装置の別の変形例における構成を模式的に示す構成図である。
【図4】本発明の実施例2の形態の電流検出装置の構成を模式的に示す構成図である。
【図5】本発明の実施例2の形態の電力量計の構成を示すブロック図である。
【図6】従来の電流検出装置の構成を示す斜視図である。
【図7】従来の電流検出装置の構成を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の電流検出装置及び電力量計の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。図1は、本発明の実施例1の電流検出装置の構成を模式的に示す構成図である。図1に示すように、本実施例の電流検出装置は、導体4に流れる電流を検出する装置であり、複数のコイル1a,1b、及び磁性体2a,2b,3a,3bにより構成される。すなわち、本実施例の電流検出装置は、図6,7で説明した従来の電流検出装置に対して、磁性体3a,3bをコイル1a,1bに平行に挿入した構成を有している。
【0020】
導体4は、鉄、銅等の導電性のある金属により構成されており、負荷電流を導通し、負荷電流に対応した磁界を発生する。
【0021】
複数のコイル1a,1bは、導体4の周囲に配置され、導体4に流れる電流に応じた磁界を受けて導体4に流れる電流を検出する。具体的には、コイル1a,1bは、フェノールやベークのような導電性のない棒状の芯材にエナメル線のような導線が巻きつけられたコイルであり、導体4に流れる電流に対応した低レベルの電流や電圧等の電気信号を出力する。
【0022】
なお、コイル1a,1bは、中空構造の芯材を有するものであっても良いし、内部まで材質が充填されている芯材を有するものであっても良いし、フェライトやパーマロイ等の磁性体を芯材とするものであってもよい。あるいは、コイル1a,1bは、芯材を具備せず、融着材料や接着剤等の接合剤によりコイル導線同士が接合されてコイルが形成されたものであってもよい。また、コイル1aとコイル1bとは、図6で説明した場合と同様に、接続線により電気的に直列に接続されている。
【0023】
磁性体2aは、本発明の第1磁性体に対応し、複数のコイル1a,1bの各々の一端同士を磁気的に短絡する。また、磁性体2bは、本発明の第2磁性体に対応し、第1磁性体(磁性体2a)と当接しないように設けられ、複数のコイル1a,1bの各々の他端同士を磁気的に短絡する。これらの磁性体2a,2bは、フェライトやパーマロイ等の磁性体により構成されており、コイル1a,1bを挟み込んでいる。
【0024】
コイル1a,1bは、例えば接着剤等によって磁性体2a,2bに固定されてもよいし、取り外し可能なように擦り合わせにより磁性体2a,2bに係合されていてもよい。さらには、コイル1a,1bと磁性体2a,2bが接触している必要はなく、これらを樹脂製のケースなどに装てんすることで固定する構造としてもよい。図1に示すように、これら複数のコイル1a,1bと磁性体2aと磁性体2bとは、全体として導体4を周回するように構成されている。
【0025】
磁性体3a,3bは、本発明の第3磁性体に対応し、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に、複数のコイル1a,1bの外側に設けられている。すなわち、磁性体3aは、導体4から見てコイル1aの外側にコイル1aと平行に配置されている。同様に、磁性体3bは、導体4から見てコイル1bの外側にコイル1bと平行に配置されている。
【0026】
位置関係について詳述すると、磁性体3a,3bは、磁性体2aと磁性体2bとの間の空間を埋めるように配置されており、これによりコイル1a,1bに対する外乱の影響を抑える役割を有する。また、それぞれの磁性体間には当接しないように隙間が設けられている。これにより、導体4に流れる電流に応じた磁界がコイル1a,1bに適切に発生するので、コイル1a,1bは、精度よく導体4に流れる電流を検出することができる。
【0027】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。コイル1a,1bは、導体4に流れる電流により発生された磁界を受け、当該電流に対応した電気信号をコイル導線に発生する。詳細な構成について図1に図示されてはいないが、コイル1a,1bのコイル導線の一端は、接続線によりコイル1a,1bが電気的に直列接続となるように接続されている。また、コイル1a,1bのコイル導線の他端は、出力端子を構成しており、導体4に流れる電流に対応した電気信号を出力する。
【0028】
磁性体2a,2bは、コイル1a,1bの端同士を磁気的に短絡する。この磁性体2a,2bは、フェライトやパーマロイ等の磁性体により構成されており磁気抵抗が低いため、導体4に流れる電流により発生された磁界をコイル1a,1bに伝達する。
【0029】
コイル1a,1b、及び磁性体2a,2bにより導体4を周回した構成となっているため、ビオ・サバールの法則、アンペールの周回積分の法則により、コイル1a,1b、及び磁性体2a,2bに対して導体4の位置がずれても精度よく、導体4に流れる電流を検出することができる。
【0030】
コイル1a,1bは、円柱状にエナメル線等のコイル導線が巻かれて製作されるため、ドーナツ状の芯材にコイル導線が巻きつけられて製作されるトロイダル型のコイルより製造が容易である。
【0031】
磁性体3a,3bは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に、複数のコイル1a,1bの外側に設けられており、磁性体間を当接せずに且つ磁性体間の隙間を小さくすることで、コイル1a,1bに対する外乱の影響を抑えるとともに、導体4に流れる電流に応じた磁界をコイル1a,1bに適切に発生させ、精度よく導体4に流れる電流を検出し、当該電流に応じた電気信号をコイル1a,1bに出力させる。
【0032】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る電流検出装置によれば、第3磁性体(磁性体3a,3b)を備えているため、図6,7で説明した従来の電流検出装置が磁性体140,150間に有していた隙間を小さくし、耐外乱性能を向上して精度よく測定することができる。また、本実施例の電流検出装置は、外側にシールド部品を追加する必要が無いため、サイズダウンが可能であるという利点を有する。
【0033】
なお、本発明における第3磁性体は、第1磁性体と第2磁性体との少なくとも一方に一体化して構成されていてもよい。図2は、本実施例の電流検出装置の変形例における構成を模式的に示す構成図である。図2に示すように、この変形例における電流検出装置は、複数のコイル1a,1b、及び磁性体5a,5bにより構成される。
【0034】
磁性体5aは、本発明の第1磁性体に対応し、複数のコイル1a,1bの各々の一端同士を磁気的に短絡する。また、磁性体5bは、本発明の第2磁性体に対応し、第1磁性体(磁性体5a)と当接しないように設けられ、複数のコイル1a,1bの各々の他端同士を磁気的に短絡する。これらの磁性体5a,5bは、フェライトやパーマロイ等の磁性体により構成されており、コイル1a,1bを挟み込んでいる。図2に示すように、これら複数のコイル1a,1bと磁性体5aと磁性体5bとは、全体として導体4を周回するように構成されている。
【0035】
また、磁性体5aは、本発明の第3磁性体に対応し、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に、複数のコイル1a,1bの外側に設けられている。すなわち、磁性体5aは、図1に示す磁性体2a,3a,3bを一体化したような形状を有しており、コイル1a,1bに対する外乱の影響を抑える役割を有する。
【0036】
さらに、それぞれの磁性体5a,5b間には当接しないように隙間が設けられており、導体4に流れる電流に応じた磁界がコイル1a,1bに適切に発生するので、コイル1a,1bは、精度よく導体4に流れる電流を検出することができる。
【0037】
このように、図2に示す電流検出装置によれば、図1に示す電流検出装置と同様の作用・効果を得ることができるのみならず、第1磁性体と第3磁性体とを一体化した磁性体5aを備えているので、図1に示す電流検出装置に比して部品点数を削減し、コストダウンすることができる。
【0038】
また、本発明における第1磁性体と第2磁性体とは、同じ形状を有するように構成されていてもよい。図3は、本実施例の電流検出装置の別の変形例における構成を模式的に示す構成図である。図3(a)に示す電流検出装置は、複数のコイル1a,1b、及び磁性体6a,6bにより構成される。
【0039】
磁性体6aは、本発明の第1磁性体に対応し、複数のコイル1a,1bの各々の一端同士を磁気的に短絡する。また、磁性体6bは、本発明の第2磁性体に対応し、第1磁性体(磁性体6a)と当接しないように設けられ、複数のコイル1a,1bの各々の他端同士を磁気的に短絡する。これらの磁性体6a,6bは、フェライトやパーマロイ等の磁性体により構成されており、コイル1a,1bを挟み込んでいる。図3(a)に示すように、これら複数のコイル1a,1bと磁性体6aと磁性体6bとは、全体として導体4を周回するように構成されている。
【0040】
また、磁性体6a,6bは、本発明の第3磁性体に対応し、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に、複数のコイル1a,1bの外側に設けられている。すなわち、磁性体6aは、図1に示す磁性体2aと磁性体3aの一部と磁性体3bの一部とを一体化したような形状を有しており、コイル1a,1bに対する外乱の影響を抑える役割を有する。同様に、磁性体6bは、図1に示す磁性体2bと磁性体3aの一部と磁性体3bの一部とを一体化したような形状を有しており、コイル1a,1bに対する外乱の影響を抑える役割を有する。
【0041】
また、第1磁性体(磁性体6a)と第2磁性体(磁性体6b)とは、同じ形状を有するように構成されているため、部品を共通化し、コストダウンに資するという利点を有する。
【0042】
さらに、それぞれの磁性体6a,6b間には当接しないように隙間が設けられており、導体4に流れる電流に応じた磁界がコイル1a,1bに適切に発生するので、コイル1a,1bは、精度よく導体4に流れる電流を検出することができる。
【0043】
図3(b)に示す電流検出装置は、複数のコイル1a,1b、及び磁性体7a,7bにより構成される。磁性体7aは、本発明の第1磁性体に対応し、複数のコイル1a,1bの各々の一端同士を磁気的に短絡する。また、磁性体7bは、本発明の第2磁性体に対応し、第1磁性体(磁性体7a)と当接しないように設けられ、複数のコイル1a,1bの各々の他端同士を磁気的に短絡する。これらの磁性体7a,7bは、フェライトやパーマロイ等の磁性体により構成されており、コイル1a,1bを挟み込んでいる。図3(b)に示すように、これら複数のコイル1a,1bと磁性体7aと磁性体7bとは、全体として導体4を周回するように構成されている。
【0044】
また、磁性体7a,7bは、本発明の第3磁性体に対応し、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に、複数のコイル1a,1bの外側に設けられている。すなわち、磁性体7aは、図1に示す磁性体2aと磁性体3bとを一体化したような形状を有しており、コイル1a,1bに対する外乱の影響を抑える役割を有する。同様に、磁性体7bは、図1に示す磁性体2bと磁性体3aとを一体化したような形状を有しており、コイル1a,1bに対する外乱の影響を抑える役割を有する。
【0045】
また、第1磁性体(磁性体7a)と第2磁性体(磁性体7b)とは、同じ形状を有するように構成されているため、部品を共通化し、コストダウンに資するという利点を有する。
【0046】
さらに、それぞれの磁性体7a,7b間には当接しないように隙間が設けられており、導体4に流れる電流に応じた磁界がコイル1a,1bに適切に発生するので、コイル1a,1bは、精度よく導体4に流れる電流を検出することができる。
【0047】
このように、図3に示す電流検出装置によれば、図1,2に示す電流検出装置と同様の作用・効果を得ることができるのみならず、第1磁性体と第2磁性体とを同じ形状により構成しているので、部品を共通化して製造を容易にし、コストダウンすることができる。
【実施例2】
【0048】
本発明の第1磁性体と第2磁性体と第3磁性体とは、導体に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に複数の磁性体が重なるように構成されていてもよい。例えば、図4は、本発明の実施例2の電流検出装置の構成を模式的に示す構成図である。図4(a)に示す電流検出装置は、導体4に流れる電流を検出する装置であり、複数のコイル1a,1b、及び磁性体8a,8b,9a,9bにより構成される。
【0049】
磁性体9aは、本発明の第1磁性体に対応し、複数のコイル1a,1bの各々の一端同士を磁気的に短絡する。また、磁性体9bは、本発明の第2磁性体に対応し、第1磁性体(磁性体9a)と当接しないように設けられ、複数のコイル1a,1bの各々の他端同士を磁気的に短絡する。これらの磁性体9a,9bは、フェライトやパーマロイ等の磁性体により構成されており、コイル1a,1bを挟み込んでいる。図4(a)に示すように、これら複数のコイル1a,1bと磁性体9aと磁性体9bとは、全体として導体4を周回するように構成されている。
【0050】
磁性体8a,8bは、本発明の第3磁性体に対応し、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に、複数のコイル1a,1bの外側に設けられている。すなわち、磁性体8aは、導体4から見てコイル1aの外側にコイル1aと平行に配置されている。同様に、磁性体8bは、導体4から見てコイル1bの外側にコイル1bと平行に配置されている。なお、磁性体9a,9bの一部も本発明の第3磁性体に対応しているということができる。
【0051】
また、第1磁性体(磁性体9a)と第2磁性体(磁性体9b)と第3磁性体(磁性体8a,8b)とは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に複数の磁性体が重なるように構成されている。すなわち、コイル1aと平行に配置されている磁性体9a,9bの一部分と磁性体8aとは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に重なるように構成されており、外乱に対して二重のシールドとなるように構成されている。同様に、コイル1bと平行に配置されている磁性体9a,9bの一部分と磁性体8bとは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に重なるように構成されており、外乱に対して二重のシールドとなるように構成されている。
【0052】
その他の構成は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0053】
図4(b)に示す電流検出装置は、導体4に流れる電流を検出する装置であり、複数のコイル1a,1b、及び磁性体10a,10bにより構成される。
【0054】
磁性体10aは、本発明の第1磁性体に対応し、複数のコイル1a,1bの各々の一端同士を磁気的に短絡する。また、磁性体10bは、本発明の第2磁性体に対応し、第1磁性体(磁性体10a)と当接しないように設けられ、複数のコイル1a,1bの各々の他端同士を磁気的に短絡する。これらの磁性体10a,10bは、フェライトやパーマロイ等の磁性体により構成されており、コイル1a,1bを挟み込んでいる。図4(b)に示すように、これら複数のコイル1a,1bと磁性体10aと磁性体10bとは、全体として導体4を周回するように構成されている。
【0055】
さらに、磁性体10a,10bは、本発明の第3磁性体に対応し、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に、複数のコイル1a,1bの外側に設けられている。すなわち、磁性体10a,10bの一部は、導体4から見てコイル1aの外側にコイル1aと平行に配置されている。同様に、磁性体10a,10bの一部は、導体4から見てコイル1bの外側にコイル1bと平行に配置されている。
【0056】
また、第1磁性体(磁性体10a)と第2磁性体(磁性体10b)と第3磁性体(磁性体10a,10b)とは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に複数の磁性体が重なるように構成されている。すなわち、コイル1aと平行に配置されている磁性体10aの一部分と磁性体10bの一部分とは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に重なるように構成されており、外乱に対して二重のシールドとなるように構成されている。同様に、コイル1bと平行に配置されている磁性体10aの一部分と磁性体10bの一部分とは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に重なるように構成されており、外乱に対して二重のシールドとなるように構成されている。
【0057】
その他の構成は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0058】
さらに、図4(c)に示す電流検出装置は、導体4に流れる電流を検出する装置であり、複数のコイル1a,1b、及び磁性体11a,11bにより構成される。
【0059】
磁性体11aは、本発明の第1磁性体に対応し、複数のコイル1a,1bの各々の一端同士を磁気的に短絡する。また、磁性体11bは、本発明の第2磁性体に対応し、第1磁性体(磁性体11a)と当接しないように設けられ、複数のコイル1a,1bの各々の他端同士を磁気的に短絡する。これらの磁性体11a,11bは、フェライトやパーマロイ等の磁性体により構成されており、コイル1a,1bを挟み込んでいる。図4(c)に示すように、これら複数のコイル1a,1bと磁性体11aと磁性体11bとは、全体として導体4を周回するように構成されている。
【0060】
また、磁性体11a,11bは、本発明の第3磁性体に対応し、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に、複数のコイル1a,1bの外側に設けられている。すなわち、磁性体11aは、導体4から見てコイル1aの外側にコイル1aと平行に配置されている。同様に、磁性体11bは、導体4から見てコイル1bの外側にコイル1bと平行に配置されている。
【0061】
また、第1磁性体(磁性体11a)と第2磁性体(磁性体11b)と第3磁性体(磁性体11a,11b)とは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に複数の磁性体が重なるように構成されている。すなわち、コイル1aと平行に配置されている磁性体11aの一部分と磁性体11bの一部分とは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に重なるように構成されており、外乱に対して二重のシールドとなるように構成されている。同様に、コイル1bと平行に配置されている磁性体11aの一部分と磁性体11bの一部分とは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に重なるように構成されており、外乱に対して二重のシールドとなるように構成されている。
【0062】
その他の構成は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0063】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的な動作は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。ただし、本実施例の電流検出装置における第1磁性体と第2磁性体と第3磁性体とは、導体4に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に複数の磁性体が重なるように構成されているので、磁性体同士の対向する面積を広くとることができ、磁気抵抗を減らすことができる。このため、実施例1の場合に比して磁性体間のギャップを広くとることができ、磁性体間の隙間寸法精度を緩和することができる。
【0064】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る電流検出装置によれば、実施例1と同様の効果を得ることができ、さらに磁性体を重ねるように構成することで外乱からの影響を低減することができる。また、本実施例の電流検出装置は、磁性体間のギャップを広くとることができ、磁性体間の隙間寸法精度を緩和することができるので、コストダウンに資するという利点も有する。
【0065】
なお、実施例1,2で説明した電流検出装置を利用して電力量計を構成することができる。図5は、本実施例の電力量計の構成を示すブロック図である。この電力量計は、図5に示すように、電流検出部15、電圧検出部20、電力演算部30、及び表示部40により構成される。
【0066】
電流検出部15は、本発明の電流検出装置に対応し、実施例1,2で説明した電流検出装置を利用することができる。電流検出部15は、需要家の負荷にて使用される使用電流(A1)を検出し、当該使用電流に応じた低レベルの電気信号に変換し出力する。
【0067】
電圧検出部20は、被測定系の電圧を検出する部分であり、電圧トランスやアテネッタ等の分圧抵抗器等により構成されており、需要家の負荷にて使用される使用電圧(V1)を検出し、当該使用電圧に正比例した低レベルの電気信号に変換し出力する。
【0068】
電力演算部30は、電流検出部15により検出された導体4に流れる電流と電圧検出部20により検出された電圧とに基づいて、電力量を演算する。具体的には、電力演算部30は、デジタル乗算回路やDSP(デジタル・シグナル・プロサ)等により構成されており、電流検出部15から出力された使用電流(A1)に関する信号と、電圧検出部20から出力された使用電圧(V1)に関する信号とを乗算し、需要家の使用電力に正比例したデータ(A1・V1)に変換する。
【0069】
さらに電力演算部30は、使用電力に正比例したデータ(A1・V1)の演算結果を使用量データとして編集し出力する。なお、ここで使用量データとは需要家の負荷にて使用される総積算使用電力量ならびに各時間帯毎の時間帯使用量等、需要家の使用電力に関するデータをいう。
【0070】
また、電流検出部15から出力された使用電流(A1)に関する信号は、コイルの芯材が磁性体である場合を除いて、使用電流(A1)が微分された信号に正比例した信号であるため、需要家の使用電力に正比例したデータ(A1・V1)に変換される前に、電力演算部30にて積分される。表示部40は、液晶表示器等により構成されており、使用量データを表示する。
【0071】
このように、本発明の電流検出装置を利用した電力量計を構成することにより、外乱からの影響を低減し、精度よく電力量を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る電流検出装置及び電力量計は、磁電変換により導体を流れる電流の大きさを検出する電流検出装置及びこれを用いた電力量計に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1a,1b コイル
2a,2b 磁性体
3a,3b 磁性体
4 導体
5a,5b 磁性体
6a,6b 磁性体
7a,7b 磁性体
8a,8b 磁性体
9a,9b 磁性体
10a,10b 磁性体
11a,11b 磁性体
15 電流検出部
20 電圧検出部
30 電力演算部
40 表示部
100 電流検出装置
110 一次導体
120,130 コイル部
140,150 支持部
160 接続線
170,180 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体に流れる電流を検出する電流検出装置であって、
前記導体の周囲に配置され、前記導体に流れる電流に応じた磁界を受けて前記導体に流れる電流を検出する複数のコイルと、
前記複数のコイルの各々の一端同士を磁気的に短絡する第1磁性体と、
前記第1磁性体と当接しないように設けられ、前記複数のコイルの各々の他端同士を磁気的に短絡する第2磁性体と、
前記導体に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に前記複数のコイルの外側に設けられた第3磁性体とを備え、
前記複数のコイルと前記第1磁性体と前記第2磁性体とは、全体として前記導体を周回するように構成されていることを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記第3磁性体は、前記第1磁性体と前記第2磁性体との少なくとも一方に一体化していることを特徴とする請求項1記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記第1磁性体と前記第2磁性体とは、同じ形状を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記第1磁性体と前記第2磁性体と前記第3磁性体とは、前記導体に電流が流れる方向を中心軸として、その円周上に複数の磁性体が重なるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の電流検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電流検出装置と、
被測定系の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電流検出装置により検出された前記導体に流れる電流と前記電圧検出部により検出された電圧とに基づいて、電力又は電力量を演算する電力演算部と、
を備えることを特徴とする電力量計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate