説明

電流測定装置

【課題】 配電線路に流れる電流の測定誤差を小さくする。
【解決手段】 クランプ式電流計10のインピーダンスと、クランプ式電流計10の出力端に並列に接続される抵抗15とにより生じる位相誤差Δφと、同一の時刻に取り込むべき電圧及び電流のデータの取り込み時間差により生じる位相誤差2πΔtと、クランプ式電流計10a、10bの鉄心11a、11b内の磁束密度が、鉄心11a、11bへの印加磁界に対して比例しないことによる位相誤差αとを、予め記憶しておく。そして、鉄心11a、11b略全周に分布するようにコイル12が鉄心11a、11bに対して巻き回されたクランプ式電流計10により測定した電流IU、IWの位相を、これらの位相誤差Δφ、2πΔt、αを加算した位相誤差ηに基づいて補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定装置に関し、特に、配電線路に流れる電流を非接触で測定するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
配電線路の電力を測定する理想的な方法は、配電線路内で生じる電圧降下と配電線路を流れる電流を直接測定し、測定した電圧降下と電流に基づいて電力を測定する方法である(この方法を電圧降下法という)。しかしながら、配電線路は長距離であり、しかも複雑に張り巡らされているため、配電線路の電圧降下を直接測定することは困難である。また、施設内の変電室は常に運転状態であるため、変電室の運転を停止して、多数の電流計や電流モニタ用のシャント抵抗を、配電線路に結線するのは実際的ではない。
そこで、配電線路の電力を測定する方法として、配電線路の電圧については直接測定し、配電線路に流れる電流についてはクランプ式の電流計を用いて非接触で測定する方法がある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−101237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クランプ式の電流計を用いた場合には、配電線路に流れる電流を直接測定していない。それにも関わらず、特許文献1に記載の技術では、クランプ式の電流計の構成に起因する測定誤差を考慮していなかった。このため、配電線路に流れる電流の測定誤差が大きくなり、電力の測定誤差が大きくなる虞があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、配電線路に流れる電流の測定誤差を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電流測定装置は、分離することが可能な一対の鉄心と、前記鉄心に対して巻き回されたコイルとを有し、前記一対の鉄心が組み合わさったときに当該一対の鉄心に閉磁路が形成され、当該閉磁路の内側の空間を貫通する配電線路を流れる電流を測定するクランプ式電流計と、前記クランプ式電流計により測定された電流を用いて前記配電線路に流れる電流を計算する電流計算装置と、を備える電流測定装置であって、前記電流計算装置は、前記配電線路に実際に通電される電流の位相と、前記クランプ式電流計での測定に基づいて得られる電流の位相との差である位相誤差を予め記憶する記憶手段と、前記配電線路の電力の計算のために、前記クランプ式電流計での測定に基づく電流のデータを入力すると、その電流の位相を、前記記憶手段に記憶された位相誤差に基づいて補正する補正手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、配電線路に実際に通電される電流の位相と、クランプ式電流計での測定に基づいて得られる電流の位相との差である位相誤差を予め測定して記憶しておき、その位相誤差を用いて、クランプ式電流計での測定に基づく電流の位相を補正し、位相を補正した電流を用いて配電線路の電力を計算するようにした。したがって、配電線路に流れる電流の測定誤差を小さくすることができ、配電線路の電力の測定誤差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態の電力測定装置により電力を測定する対象となる配電線路と、配電線路を挟んだ状態のクランプ式電流計と、配電線路の電圧を直接測定する電圧測定装置の構成の一例を示す図である。
【図2】電力を測定して表示する電力計算装置の構成の一例を示す図である。
【図3】本実施形態のクランプ式電流計の巻線構造の概略の一例を示す図である。
【図4】本実施形態のクランプ式電流計により配電線路に流れる電流を測定する原理を説明する図である。
【図5】シャント抵抗に流れる電流を測定する方法の一例を説明する図である。
【図6】模擬信号の周波数に対する時間差の測定結果の一例を示す図である。
【図7】クランプ式電流計の鉄心内の磁束密度が、鉄心への印加磁界に対して比例しないことによる位相誤差と通電電流との関係の一例を示す図である。
【図8】鉄心により形成される閉磁路の直線部分の1箇所のみにコイルが巻き回されている様子と、このようにしてコイルが巻き回された鉄心をケーシングしたクランプ式電流計が、U相の配電線路を挟んでいる様子とを示す図である。
【図9】配電線路に実際に通電される電流の位相から、従来のクランプ式電流計での測定に基づいて得られる電流の位相を減算した位相誤差と、従来のクランプ式電流計の回転角度との関係の一例を示す図である。
【図10】配電線路に実際に通電される電流の位相から、本実施形態のクランプ式電流計での測定に基づいて得られる電流の位相を減算した位相誤差と、本実施形態のクランプ式電流計の回転角度との関係の一例を示す図である。
【図11】本実施形態の電力測定装置で得られた電流振幅確度と、通電電流との関係の一例を示す図である。
【図12】配電線路の送電端の電力(送電端電力)と、受電端の電力(受電端電力)との測定結果を示す図である。
【図13】電圧降下法による線路損失の算出と、本実施形態の方法による線路損失の算出を、同一の条件で60回行った結果の一例を示す図である。
【図14】電圧降下法による線路損失の算出と、本実施形態の方法による線路損失の算出を、通電電流を変えて行った結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
<電力測定装置の概略構成>
図1は、本実施形態の電力測定装置により電力を測定する対象となる配電線路(図1(a))と、配電線路を挟んだ状態のクランプ式電流計(図1(b))と、配電線路の電圧を直接測定する電圧測定装置(図1(c))の一例を示す図である。また、図2は、電力を測定して表示する電力計算装置の構成の一例を示す図である。
本実施形態では、図1(a)に示すように、三相交流電源1(対称三相交流)を電源として用い、三相負荷2(対称三相負荷)を負荷として用いた配電線路の送電端3の電力Ps(W)から、受電端4の電力Pr(W)を減算して、配電線路の電力損失Plossを算出する場合を例に挙げて説明する。
尚、図1(b)に示すクランプ式電流計10a、10bは同じものであるので、以下の説明では、クランプ式電流計10a、10bを、必要に応じて、クランプ式電流計10と総称する。同様に、図1(c)に示す電圧測定装置20a、20bも同じものであるので、以下の説明では、電圧測定装置20a、20bを、必要に応じて、電圧測定装置20と総称する。
【0009】
<クランプ式電流計>
図3は、クランプ式電流計10の巻線構造の概略の一例を示す図である。具体的に図3(a)は、クランプ式電流計10が閉じた状態での鉄心とコイル(の一部)を示す正面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A´方向から見た断面図であり、図3(c)は、図3(a)のB−B´方向から見た断面図である。
図3において、クランプ式電流計10は、図3に向かって下側に位置する第1のクランプ部と、上側に位置する第2のクランプ部とを有する。第1のクランプ部は、鉄心11aと、コイル12a〜12dと、絶縁テープ13a〜13dと、絶縁テープ14a〜14dとを有している。第2のクランプ部は、鉄心11bと、コイル12e〜12hと、絶縁テープ13e〜13hと、絶縁テープ14e〜14hとを有している。ここで、同一の符号(数字)で表されているものは同じものである。
【0010】
鉄心11a、11bは、クランプ式電流計10が閉じたとき(鉄心11a、11bが組み合わさったとき)に形成される周方向の閉磁路の半周分を構成するものである。このようにクランプ式電流計10は、分離することが可能な一対の分割型の鉄心11a、11bを使用している。
コイル12a〜12hは、それぞれ同じ巻き方向で同じ回数だけ鉄心11a、11bに巻き回されている。
第1のクランプ部におけるコイル12a〜12dは直列に接続されている。例えば、コイル12aの巻き始めの部分と、コイル12dの巻き終わりの部分とを除いて、各コイル12a〜12dは、その巻き始めの部分が、その巻き始めの部分と隣接しているコイルの巻き終わりの部分と相互に電気的に接続されている。
【0011】
同様に、第2のクランプ部におけるコイル12e〜12hも直列に接続されている。例えば、コイル12eの巻き始めの部分と、コイル12hの巻き終わりの部分とを除いて、各コイル12e〜12hは、その巻き始めの部分が、その巻き始めの部分と隣接しているコイルの巻き終わりの部分と相互に電気的に接続されている。
そして、コイル12a〜12hは、クランプ式電流計10が閉じたときに直列に接続されるように構成されている。前述した例では、例えば、クランプ式電流計10が閉じたときに、コイル12dの巻き終わりの部分と、コイル12eの巻き始めの部分とが相互に電気的に接続されるように構成されている。
【0012】
本実施形態では、各コイル12a〜12hは、直径が80μmの銅線を100回巻き回すことにより構成され、コイル12a〜12hが直列に接続されると全体の巻数は800回になる。また、本実施形態では、直列に接続されたコイル12a〜12hを構成する銅線の全体の抵抗(尚、本明細書において「抵抗」は「直流抵抗」を意味する)は78.3Ωであり、インダクタンスは4.3Hである。
尚、本実施形態では、コイル12a〜12hの巻数が同じになるようにしたが、コイル12a〜12hの巻数は異なっていてもよい。また、本実施形態では、クランプ式電流計10が閉じたときに形成される閉磁路の一直線部分に、それぞれ2つのコイルが配置されるようにしたが、鉄心に配置するコイルの数は、鉄心の形状等に応じて適宜決定することができる。例えば、クランプ式電流計10が閉じたときに形成される閉磁路の一直線部分の少なくとも1つに複数のコイルが配置されるようにし、複数のコイルが配置されていない他の一直線部分には1つのコイルが配置されるようにしてもよい。
【0013】
絶縁テープ13a〜13hは、例えば、絶縁性の両面テープであり、鉄心11a、11bとコイル12a〜12hとを絶縁することに加えて、ここでは鉄心11a、11bにコイル12a〜12hを固定する役割を果たす。
絶縁テープ13a〜13hは、例えば、カプトンテープであり、コイル12a〜12hを固定すると共に、第1のクランプ部(第2のクランプ部)が、絶縁性の成形品である第1のケース(第2のケース)にケーシングされた際に、コイル12a〜12hを保護する役割を果たす。これら第1のケース及び第2のケースは、公知の技術で実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
尚、以下の説明では、クランプ式電流計10a、10bが閉じたときに直列に接続されるコイル12a〜12h全体を、必要に応じてコイル12と称する。
【0014】
図4は、配電線路に流れる電流をクランプ式電流計10により測定する原理を説明する図である。尚、図3に示したように、コイル12は、鉄心11a、11bの略全周に(好ましくは一様に)分布しているが、図4では、表記の都合上、鉄心11a、11bにより形成される閉磁路の方向の一部分のみにコイル12が巻き回されているとして表記している。
図4に示すように、クランプ式電流計10の出力端(前述した例ではコイル12aの巻き始めの部分とコイル12hの巻き終わりの部分)には、抵抗15が並列に接続されている。
クランプ式電流計10a、10bでは、鉄心11a、11bにより形成される閉磁路の内側の空間を貫通する配電線路(U相、W相)に流れる電流IU、IWを表す物理量として、クランプ式電流計10a、10bの出力端に誘起される誘起電圧を出力する。
【0015】
この誘起電圧をE0(V)、抵抗15をR(Ω)、コイル12の巻数をN(回)とすると、クランプ式電流計10により得られる電流ICTは、以下の(1)式により表される。
CT=(N×E0)/(R×Kave) ・・・(1)
ここで、Kaveは、以下の(2)式により表される結合係数Kの平均値であり、本実施形態では定数としている。このKaveは、後述する校正実験を行って、予め求めておく。
K=(N×E0)/(R×Ishunt) ・・・(2)
(2)式において、Ishuntは、実験室レベルの校正実験で負荷に直列に配置(挿入)したシャント抵抗の両端にかかる電圧とシャント抵抗の抵抗値とから求められる電流である。
図5は、Kaveを求めるために予め行う校正実験の時に、シャント抵抗に流れる電流Ishuntを測定する方法の一例を説明する図である。この校正実験では、実際の配電線路にシャント抵抗を入れて実験を行わず、実験室レベルで模擬的に作製した配電線を使用する。
図5に示すように、模擬配電線路の途中に配置したシャント抵抗41の両端にかかる電圧を、絶縁アンプ42を介して入力し、その電圧をシャント抵抗41の抵抗値で除算することにより、シャント抵抗41に流れる電流Ishuntを求めることができる。尚、ここでは、U相に配置されたシャント抵抗41の両端にかかる電圧を測定するようにしたが、V相又はW相にシャント抵抗41を配置してシャント抵抗41の両端にかかる電圧を測定するようにしてもよい。また、シャント抵抗41の代わりに電流計を配置し、この電流計の指示値を電流Ishuntの値としてもよい。
【0016】
<電圧測定装置>
図1の説明に戻り、図1(c)において、電圧測定装置20a、20bは、抵抗分圧器21a、21bと、絶縁アンプ22a、22bとを有する。抵抗分圧器21a、21bは、電圧VUV、VWVを電力計算装置30に取り込める電圧に降圧するためのものである。絶縁アンプ22a、22bは、配電線路側と電力計算装置30とを電気的に絶縁するためのものである。本実施形態では、このような構成の電圧測定装置20a、20bにより、電圧VUV、VWVを直接測定するようにしている。
<電力計算装置>
図2において、電力計算装置30は、入力端子31a、31bと、A/D変換器32a、32bと、処理装置33a、33bと、損失計算装置34と、表示装置35とを有する。尚、入力端子31a、31b、A/D変換器32a、32b、処理装置33a、33bの構成は、それぞれ同じであるので、以下の説明では、必要に応じて、これらを、入力端子31、A/D変換器32、処理装置33と総称する。
本実施形態では、測定対象の配電線路が平衡三相回路であるので、入力端子31は、4chの端子を有する。尚、測定対象の配電線路が不平衡三相回路の場合には、入力端子31を6chの端子とする。入力端子31の1ch、2chの端子には、それぞれ、U相、W相の配電線路に流れる電流IU、IWを測定するためのクランプ式電流計10a、10bから出力された誘起電圧E0が入力される。ここでは、送電端3に取り付けられたクランプ式電流計10a、10bから出力された誘起電圧E0が、それぞれ入力端子31aの1ch、2chの端子に入力され、受電端4に取り付けられたクランプ式電流計10a、10bから出力された誘起電圧E0が、それぞれ入力端子31bの1ch、2chの端子に入力されるものとする。
また、入力端子31の3ch、4chの端子には、それぞれ、電圧測定装置20a、20bから出力された電圧VUV、VWVが入力される。ここでは、送電端3に取り付けられた電圧測定装置20a、20bから出力された電圧VUV、VWVが、それぞれ入力端子31aの3ch、4chの端子に入力され、受電端4に取り付けられた電圧測定装置20a、20bから出力された電圧VUV、VWVが、それぞれ入力端子31bの3ch、4chの端子に入力されるものとする。
本実施形態では、入力端子31は、チャンネル切り替えスイッチを有し、このチャンネル切り替えスイッチにより、A/D変換器32に出力されるチャンネルを順次切り替えるようにしている。
【0017】
A/D変換器32a、32bは、それぞれ入力端子31a、31bから出力された誘起電圧E0、電圧VUV、VWVをデジタル信号に変換するものである。
処理装置33a、33bは、それぞれA/D変換器32a、32bから、クランプ式電流計10a、10bの誘起電圧E0、電圧VUV、VWVのデジタル信号を入力して、配電線路の送電端3の電力Psと受電端4の電力Prと算出する。
損失計算装置34は、送電端3の電力Psから、受電端4の電力Prを減算して、配電線路の電力損失Plossを算出して表示装置35に表示させる。処理装置33及び損失計算装置34は、例えば、CPU、ROM(例えばマスクROM及びEEPROM)、RAM、及びVRAMを備えたマイクロコンピュータを用いることにより実現できる。ただし、処理装置33及び損失計算装置34のハードウェアの構成はこのようなものに限定されない。
【0018】
処理装置33a、33bは、その機能として、電流取込部36a、36bと、記憶部37a、37bと、電流補正部38a、38bと、電圧取込部39a、39bと、電力計算部40a、40bとを有している。尚、電流取込部36a、36bと、記憶部37a、37b、電流補正部38a、38b、電圧取込部39a、39b、電力計算部40a、40bの構成は、それぞれ同じであるので、以下の説明では、必要に応じて、これらを、電流取込部36、記憶部37、電流補正部38、電圧取込部39、電力計算部40と総称する。
処理装置33における処理は、測定開始前にユーザが、電力計算装置30が備えるユーザインタフェースを操作して、所定の入力を行った後に開始される。例えば、ユーザが、所定の情報の入力操作を行った後に、測定の開始の指示を行うことにより、処理装置33における処理が開始する。
電流取込部36は、クランプ式電流計10a、10bの誘起電圧E0のデジタル信号を処理装置33内に取り込む。
記憶部37は、配電線路に実際に通電される電流の位相から、クランプ式電流計10a、10bでの測定に基づいて得られる電流の位相を減算した位相誤差η(rad)を予め(測定開始前に)記憶する。この位相誤差ηは、例えば、電力計算装置30が備えるユーザインタフェースのユーザによる操作に基づいて、記憶部37に記憶される。
ここで、位相誤差ηは、次の(3)式により表される。
η=Δφ+2×π×f×Δt+α ・・・(3)
【0019】
(3)式において、Δφは、クランプ式電流計10のインピーダンスと、クランプ式電流計10の出力端に並列に接続される抵抗15とにより生じる位相誤差(rad)であり、以下の(4)式で表される。
Δφ=tan-1((2×π×f×La)/(Ra+R)) ・・・(4)
fは周波数(Hz)であり、Laは、クランプ式電流計10のインダクタンス(H)であり、Raは、クランプ式電流計10のコイル12の抵抗値(Ω)であり、Rは、抵抗15の抵抗値(Ω)である。本実施形態では、この位相誤差Δφを定数(一定値)とし、この位相誤差Δφがユーザによる操作に基づいて記憶部37に事前に記憶されるようにしている。尚、ここでは、位相誤差Δφ自体をユーザが入力するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、Ra、Laの値は、クランプ式電流計10に固有の値であるので、処理装置33は、これらの値のみを記憶しておき、配電線路における周波数(Hz)と抵抗15の抵抗値R(Ω)とをユーザの操作により入力してもよい。
【0020】
(3)式において、Δtは、同一の時刻に取り込むべきデータの取り込み時間差(本実施形態では、入力端子31におけるチャンネルの切り替え時間を含む、実際にデータが処理装置33に取り込まれるまでに生じる時間差(sec))である。
時間差Δtは、一つの信号源から出力された模擬信号(電圧)を、入力端子31の2つのチャンネルに同時に入力し、入力端子31のチャンネルを順次切り替えてそれら2つのチャンネルから模擬信号のデータを処理装置33に取り込むことにより得られる。すなわち、この模擬信号のデータを処理装置33が取り込んだ時間の差が時間差Δtである。図6は、模擬信号の周波数fに対する時間差Δtの測定結果の一例を示す図である。図6に示す結果では、時間差Δtは、模擬信号の周波数fによらず30±0.04μsecであり、略30μsecである。そこで、本実施形態では、時間差Δtを定数(一定値)とし、この時間差Δtがユーザによる操作に基づいて記憶部37に事前に記憶されるようにしている。本実施形態では、模擬配電線路の電流のデータを電流取込部36が取り込んだ時刻から、当該電流に対応する電圧のデータを電圧取込部39が取り込んだ時刻を減算した値を時間差Δtとしている。
【0021】
(3)式において、αは、クランプ式電流計10a、10bの鉄心11a、11b内の磁束密度が、鉄心11a、11bへの印加磁界に対して比例しないことによる位相誤差(rad)である。この位相誤差αを理論的に求めることは困難であるため、本実施形態では、位相誤差αを実験的に求めるようにする。求められた位相誤差αは、ユーザによる操作に基づいて記憶部37に事前に記憶される。
【0022】
ここで、位相誤差αを求める方法の一例について説明する。
図5に示したシャント抵抗41及び絶縁アンプ42を、模擬配電線路のU相だけでなくW相に対しても配置し、U相、W相に配置したシャント抵抗41の両端にかかる電圧を、入力端子31の1ch、2chに入力し、それらの電圧のデータをシャント抵抗41の抵抗値で除算することにより、U相、W相の模擬配電線路に流れる電流IU、IWを求める(以下の説明では、この電流IU、IWを、必要に応じて、シャント抵抗により測定した電流IU、IWと称する)。
一方、U相の模擬配電線路、W相の模擬配電線路を挟んだ状態のクランプ式電流計10a、10bから出力された誘起電圧E0を、入力端子31の1ch、2chに入力し、それらの誘起電圧E0のデータを(1)式に代入することにより、U相、W相の模擬配電線路に流れる電流IU、IWを求める(以下の説明では、この電流IU、IWを、必要に応じて、クランプ式電流計により測定した電流IU、IWと称する)。
また、位相誤差Δφ及び時間差Δtを前述したようにして予め求めておく。
【0023】
そして、シャント抵抗により測定した電流IU、IWの位相からクランプ式電流計により測定した電流IU、IWの位相を減算する。このようにして得られた減算値は、位相誤差ηに等しい。したがって、これら位相誤差η(減算値)、位相誤差Δφ、及び時間差Δtを(3)式に代入することにより、位相誤差αを求めることができる。
以上のような位相誤差αの算出を、模擬配電線路に流れる電流の値を変えて行う。位相誤差αは、配電線路に流れる電流によって変化するからである。図7は、このようにして得られた位相誤差αと通電電流(模擬配電線路に流れる電流)との関係の一例を示す図である。
本実施形態では、図7に示す直線61を表す式が、ユーザによる操作に基づいて記憶部37に記憶される。ただし、位相誤差αと通電電流との関係が記憶部37に記憶されるようにしていれば、必ずしも直線61を表す式を記憶部37に記憶する必要はない。例えば、位相誤差αと通電電流とを相互に対応付けて記憶するテーブルを記憶部37に記憶してもよい。尚、このようなテーブルを記憶部37に記憶した場合、テーブルに記憶されていない通電電流に対応する位相誤差αについては、補間処理を行うことにより求めることができる。
以上のように本実施形態では、位相誤差Δφ、2πfΔt、αを個別に記憶しておき、(3)式により位相誤差ηを求めるようにしている。尚、位相誤差Δφ、2πfΔt、α、ηの単位はradではなく、度であってもよい。
【0024】
図2の説明に戻り、電流補正部38は、電流取込部36により取り込まれた、クランプ式電流計10a、10bの誘起電圧E0と、記憶部37に予め記憶されている、結合係数Kの平均値aveと、コイル12の巻数Nと、抵抗15の抵抗値Rとを(1)式に代入して、クランプ式電流計により測定した電流IU、IWを算出する。
そして、電流補正部38は、位相誤差ηを記憶部37から読み出し、クランプ式電流計により測定した電流IU、IWの位相から位相誤差ηを減算する(クランプ式電流計により測定した電流IU、IWの位相から位相誤差ηだけ遅らせる)。尚、本実施形態では、クランプ式電流計により測定した電流IU、IWの取り込み時刻を補正することにより、クランプ式電流計により測定した電流IU、IWの位相を補正するようにしている。
【0025】
電圧取込部39は、電圧VUV、VWVのデジタル信号を処理装置33内に取り込む。
電力計算部40は、電圧取込部39で取り込まれた電圧VUV、VWVのデータと、電流補正部38で位相が補正された電流IU、IWのデータとを用いて、配電線路の送電端3の電力Psと、受電端4の電力Prとを算出する。
ここで、sを、データの取り込み順を示す番号とし、iを、相を識別する記号とし、Mを、取り込んだデータの数とすると、有効電力Piは、以下の(5)式で表される。
【0026】
【数1】

【0027】
電力計算部40は、(5)式の計算を送電端3及び受電端4のそれぞれに対して行い、配電線路の送電端3の電力Psと、受電端4の電力Prとを算出する。
前述したように、損失計算装置34は、電力計算部40aから、配電線路の送電端3の電力Psを入力すると共に、電力計算部40bから、配電線路の受電端4の電力Prを入力し、送電端3の電力Psから、受電端4の電力Prを減算して、配電線路の電力損失Plossを算出する。
表示装置35は、損失計算装置34から、配電線路の送電端3の電力Psと、受電端4の電力Prとを入力すると共に、配電線路の電力損失Plossを入力し、それらを表示する。表示装置35は、例えば、液晶ディスプレイである。
尚、ここでは、損失計算装置34により、配電線路の電力損失Plossを算出するようにする場合を例に挙げて説明したが、配電線路の送電端3の電力Psと、受電端4の電力Prを算出して表示していれば、配電線路の電力損失Plossについては必ずしも算出する必要はない。配電線路の電力損失Plossの算出は、ユーザによって容易に行うことができるからである。
以上のように本実施形態では、例えば、入力端子31と、A/D変換器32と、処理装置33における、電流取込部36、記憶部37、及び電流補正部38とを用いることにより電流計算装置の一例が実現され、また、クランプ式電流計10と、この電流計算装置とを用いることにより電流測定装置の一例が実現される。
【0028】
<クランプ式電流計の巻線構成>
前述したように本実施形態では、鉄心11a、11bの略全周にコイル12が分布するようにしている(図3を参照)。以下に、このようにした経緯について説明する。
図8は、鉄心11a、11bにより形成される閉磁路の直線部分の1箇所のみにコイル71が巻き回されている様子(図8(a))と、このようにしてコイル71が巻き回された鉄心11a、11bをケーシングしたクランプ式電流計72が、図1に示したU相の配電線路を挟んでいる様子(図8(b))とを示す図である。尚、コイル71の巻数、コイル71に使用する銅線は、図3に示したコイル12と同じものである。
【0029】
本発明者らは、三相電流が通電されている状態で、図8(b)に示す状態からクランプ式電流計72を回転(回転角度θ)させたときの位相誤差ψ(位相誤差ηを除く位相誤差)の変化を、クランプ式電流計72の回転角度以外の条件を同一にした状態で求めた。
図9は、位相誤差ψと、クランプ式電流計72の回転角度θとの関係の一例を示す図である。
図9に示すように、回転角度θによって位相誤差ψが大きく変化し、クランプ式電流計72(すなわちコイル71)の位置によって位相誤差ψが大きく変わる。
図9に示す結果から、本発明者らは、鉄心11a、11bにより形成される閉磁路の一部にしかコイル71が巻き回されていないと、クランプ式電流計72(すなわちコイル71)の位置に応じて、測定対象の配電線路に隣接する配電線路から発生する磁界の影響をクランプ式電流計72が受けてしまい、その結果、位相誤差ψが変わってしまうという知見を得た。この現象を具体的に説明すると、まず、測定対象の配電線路に隣接する配電線路から発生する磁界は、鉄心11a、11bに侵入した後、鉄心11a、11bから出て行く。ここで、鉄心11a、11bにより形成される閉磁路の一部の領域にしかコイル71が巻き回されていないと、鉄心11a、11bに侵入した磁界、又は鉄心11a、11bから出て行く磁界しかコイル71で検出できないことがある。そうすると、クランプ式電流計10a、10bの誘起電圧E0が変化し、これにより、位相誤差ψが変わる。
【0030】
本発明者らは、このような知見の下、図3に示したように、鉄心11a、11bの略全周にコイル12を分布させるようにすれば、クランプ式電流計10の位置によらず、鉄心11a、11bに侵入した磁界と、鉄心11a、11bから出て行く磁界との双方を可及的に確実にコイル12で検出することができることを見出した。すなわち、鉄心11a、11bに侵入した磁界による誘起電圧E0と、鉄心11a、11bから出て行く磁界による誘起電圧E0の極性は逆であるため、それらの磁界の双方をコイル12で検出すれば、それらの磁界による誘起電圧E0をキャンセルでき、これにより、測定対象の配電線路に隣接する配電線路から発生する磁界が位相誤差ψに与える影響を低減できることになる。
【0031】
図10は、位相誤差ψと、本実施形態のクランプ式電流計10の回転角度θとの関係の一例を示す図である。
図10に示すように、鉄心11a、11bの略全周にコイル12を分布させることによって、回転角度θによって位相誤差ψが変化することを可及的に防止できることが分かる。
以上のことから、本実施形態では、鉄心11a、11bの略全周に(好ましくは一様に)コイル12を分布させるようにしている。ここで、鉄心11a、11bの略全周とは、図3に示した鉄心11a、11bのコーナ部のように、鉄心の構造により巻線が困難(又は不可能)になる箇所や、コイルが施された鉄心を収容するケースの構造により巻線が困難(又は不可能)になる箇所等、巻線が困難(又は不可能)になる箇所を除く鉄心の全周をいう。
【0032】
<電流の測定精度>
本発明者らは、図3に示した本実施形態の電力測定装置で得られる電流振幅確度を、配電線路に流れる電流(通電電流)を変えて求めた。
ここで、電流振幅確度(%)は、以下の(6)式により算出される(ただし、ICT、Ishuntは振幅を示す)。
電流振幅確度=[(ICTの振幅−Ishuntの振幅)/Ishuntの振幅]×100 ・・・(6)
図11は、本実施形態の電力測定装置で得られた電流振幅確度と、通電電流との関係の一例を示す図である。
図11に示すように、本実施形態の電力測定装置を用いることによって、電流振幅確度を±0.2%の範囲内に収めることができる。現在市販されているクランプ式電流計の電流振幅確度(カタログ値)は、±0.3%〜±1%程度であるので、本実施形態の電力測定装置では電流振幅確度を大幅に低減することができることが分かる。尚、図11において、通電電流が1Aのときの電流振幅確度の下限値が−0.2%を下回っているが、これは通電電流の値が小さいために、クランプ式電流計10から出力された誘起電圧E0が小さく、S/N比が悪くなっているためであると考えられる。しかしながら、クランプ式電流計10のパラメータ(コイル12の巻数や抵抗15の抵抗値等)を調整することにより、通電電流が1Aのときの電流振幅確度を向上させることができる。
また、図10に示したように、位相誤差ηを±0.05度の範囲に収めることができ、電流位相確度(度)を±0.05度の範囲内に収めることができる。現在市販されているクランプ式電流計の電流位相確度(カタログ値)は、±0.5度〜±1度程度であるので、本実施形態の電力測定装置では電流位相確度も大幅に低減することができることが分かる。
【0033】
<電力の測定精度>
本発明者らは、クランプ式電流計10a、10b、及び電圧測定装置20a、20bを、配電線路の送電端3と、受電端4のそれぞれに配置し、配電線路の送電端3の電力Psと、受電端4の電力Prとを同時に測定した。
図12は、配電線路の送電端3の電力Ps(送電端電力)と、受電端4の電力Pr(受電端電力)との測定結果を示す図である。図12に示すように、本実施形態の電力測定装置で算出される電力のばらつきは±0.3%程度であり、ばらつきの小さい測定が可能であることが分かる。
【0034】
また、本発明者らは、シャント抵抗を用いた電圧降下法による配電線路の電力損失Plossと、本実施形態の方法による配電線路の電力損失Plossを、同一の条件で複数回求めた。
図13は、電圧降下法による線路損失(配電線路の電力損失Ploss)の算出と、本実施形態の方法による線路損失の算出を、同一の条件で60回行った結果の一例を示す図である。
図13において、本実施形態の方法による配電線路の電力損失Plossの平均値は17.3Wであり、そのばらつきは±2W(±12%)であった。また、以下の(7)式に示す電力計確度(%)は±0.2%程度であり、電力計確度(%)を±0.3%以内に収めることができた。このように電力計確度(%)は±0.2%程度であるので、電力損失Plossのばらつき(±2W(±12%))は許容範囲内である。また、現在市販されている電力測定装置の電力計確度は、数%であることから、本実施形態の電力測定装置を用いれば、従来よりも高精度に電力の損失を測定することができることが分かる。具体的に、本実施形態の電力測定装置を用いれば、送電端3の電力の1.6%の損失を高精度に測定することができることが分かる。
電力計確度=[(本実施形態の方法による線路損失−電圧降下法による線路損失)/電圧降下法による線路損失]×100 ・・・(7)
図14は、電圧降下法による線路損失の算出と、本実施形態の方法による線路損失の算出を、通電電流を変えて行った結果の一例を示す図である。
図14に示すように、本実施形態の方法では、通電電流を変えても、線路損失を高精度に求めることができることが分かる。
【0035】
以上のように本実施形態では、クランプ式電流計10のインピーダンスと、クランプ式電流計10の出力端に並列に接続される抵抗15とにより生じる位相誤差Δφと、同一の時刻に取り込むべき電圧及び電流のデータの取り込み時間差により生じる位相誤差2πΔtと、クランプ式電流計10a、10bの鉄心11a、11b内の磁束密度が、鉄心11a、11bへの印加磁界に対して比例しないことによる位相誤差αとを、予め記憶しておく。そして、鉄心11a、11bの略全周に分布するようにコイル12が鉄心11a、11bに対して巻き回されたクランプ式電流計10により測定した電流IU、IWの位相を、これらの位相誤差Δφ、2πΔt、αを加算した位相誤差ηに基づいて補正する。
このようにすることにより、位相誤差による電力測定確度への影響を±0.1%以内(負荷力率0.7のとき、電流位相確度を±0.05度以内)、電流振幅確度を±0.2%以内、電力計確度を±0.3%以内にすることができた。したがって、送電端3の電力の1%程度の線路損失の測定を従来よりも高精度に行うことができる。これにより、本実施形態の電力測定装置を、施設内の配電線路の省エネルギー化を図るための敷設設計等に役立てたり、電力機器等の効率を高精度に評価したりすることが可能になる。
【0036】
尚、本実施形態では、クランプ式電流計により測定した電流IU、IWの位相を、位相誤差Δφ、2πΔt、αを加算した位相誤差ηに基づいて補正するようにした。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、位相誤差Δφと、2πΔt、αの少なくとも何れか1つ(例えば、位相誤差αのみ)を用いて、クランプ式電流計10により測定した電流IU、IWの位相を補正することができる。
また、本実施形態のように、位相誤差Δφ、2πΔt、αを個別に記憶するようにすれば、電力測定装置の構成や、測定対象の配電線路の状況に応じて、位相誤差Δφと、2πΔt、αの中からユーザにより選択された位相誤差のみを用いて、クランプ式電流計10により測定した電流IU、IWの位相を補正することができる。ただし、位相誤差Δφ、2πΔt、αを個別に記憶せずに、それらを加算した位相誤差(例えば位相誤差η)を記憶するようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、同一の時刻に取り込むべきデータの取り込み時間差Δtを実験の結果から求めるようにしたが、これを装置の仕様等から求めるようにしてもよい。また、ユーザの入力操作の負担を低減させたり、デフォルトの値をユーザに使用させたりするために、位相誤差Δφ、2πΔt、αや、これらを求めるための情報の何れか又は全部を、電力測定装置による測定前(例えば電力測定装置の出荷前)に記憶部37に記憶するようにしてもよい。
また、本実施形態では、鉄心11a、11bがU字状のコアである場合を例に挙げて説明したが、鉄心11a、11bの形状は、このようなものに限定されない。例えば、半円状でも半楕円状の鉄心を用いてもよい。
【0038】
以上説明した本発明の実施形態のうち、処理装置33が行う処理は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、前述した各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 三相交流電源
2 三相負荷
3 送電端
4 受電端
10 クランプ式電流計
11 鉄心
12 コイル
15 抵抗
20 電圧測定装置
30 電力計算装置
31 入力端子
32 A/D変換器
33 処理装置
34 損失計算装置
35 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離することが可能な一対の鉄心と、前記鉄心に対して巻き回されたコイルとを有し、前記一対の鉄心が組み合わさったときに当該一対の鉄心に閉磁路が形成され、当該閉磁路の内側の空間を貫通する配電線路を流れる電流を測定するクランプ式電流計と、
前記クランプ式電流計により測定された電流を用いて前記配電線路に流れる電流を計算する電流計算装置と、を備える電流測定装置であって、
前記電流計算装置は、前記配電線路に実際に通電される電流の位相と、前記クランプ式電流計での測定に基づいて得られる電流の位相との差である位相誤差を予め記憶する記憶手段と、
前記配電線路の電力の計算のために、前記クランプ式電流計での測定に基づく電流のデータを入力すると、その電流の位相を、前記記憶手段に記憶された位相誤差に基づいて補正する補正手段と、を有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記位相誤差として、
前記クランプ式電流計のインピーダンスと、前記クランプ式電流計の出力端に並列に接続される抵抗により生じる第1の位相誤差と、
前記電流計算装置に同一の時刻に取り込むべき電圧及び電流のデータの取り込み時間差により生じる第2の位相誤差と、
前記クランプ式電流計が備える前記鉄心内の磁束密度が、前記鉄心への印加磁界に対して比例しないことによる第3の位相誤差と、の少なくとも何れか1つを個別に記憶することを特徴とする請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項3】
前記第1の位相誤差は、前記クランプ式電流計のインピーダンスと、前記クランプ式電流計の出力端に並列に接続される抵抗とから事前に計算された値であり、
前記第2の位相誤差は、模擬配電線路における電圧及び電流の取り込み時間差から事前に計算された値であり、
前記第3の位相誤差は、前記模擬配電線路に配置されたシャント抵抗に流れる電流の位相の事前の測定結果と、前記クランプ式電流計で測定された前記模擬配電線路の電流の位相の事前の測定結果と、前記事前に計算された第1の位相誤差及び第2の位相誤差の値と、から事前に計算された値であることを特徴とする請求項2に記載の電流測定装置。
【請求項4】
前記第1の位相誤差と前記第2の位相誤差は、一定値であり、
前記第3の位相誤差は、電流に応じて変化する値であることを特徴とする請求項3に記載の電流測定装置。
【請求項5】
前記一対の鉄心の略全周に前記コイルが分布していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電流測定装置。
【請求項6】
前記コイルは、複数のコイルを直列に接続することにより構成され、
前記一対の鉄心のそれぞれに対して、複数のコイルが巻き回されていることを特徴とする請求項5に記載の電流測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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