説明

電流適応性の改善のための磁気構造を備える有機発光ダイオード

有機発光デバイスは、カソードおよびデバイスの外部にあるオプションの基板を含む。デバイスはさらに、カソードまたは基板の少なくとも1つの上に配置される少なくとも1つの膜層を含む。少なくとも1つの膜層は、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む。デバイスはさらに、アノードおよびカソードとアノードとの中間にある少なくとも1つの有機層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光用途に関し、より具体的にはカソード構造に関する。本カソード構造は、特に大面積有機発光デバイスに応用されるが、選択された態様は、光の急増、減光またはそれらの繰返しの間の電流変動に起因する劣化の同じ問題に出会う関連用途で使用されることもあると理解されよう。
【背景技術】
【0002】
有機発光デバイス(OLED)は、印加電位に応答して光を放出する発光ダイオードの一種である。典型的なOLEDは、アノード、1つまたは複数の有機材料層およびカソードを含む。カソードは一般に、比較的小さな電圧が電子の放出を引き起こすような低い仕事関数を有する材料を含む。いくつかのよく使用される材料には、金、ガリウム、インジウム、マンガン、スズ、鉛、アルミニウム、銀、マグネシウム、銀/マグネシウム合金またはそれらの組合せなどの金属が含まれる。そのような材料は、低い仕事関数を有するけれども、比較的低い融点を示しかつ/または酸素もしくは水にさらされると大きな劣化を示す。アノードは一般に、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ、ニッケル、または金などの高い仕事関数値を有する透明材料を含む。酸化モリブデン(MoO3)の層が、全体の駆動電圧を低減するために含まれることもある。
【0003】
OLEDの層の1つは、ホールを輸送する能力を有する材料を含み、ホール輸送層と呼ばれる。もう1つの層は典型的には、電子輸送層として周知の、電子を輸送する能力を有する材料を含む。この層はまた、発光材料(もしくは放出層)として機能することもありまたは追加の独立した層が、ホール輸送層と電子輸送層との間に配置されることもある。電圧が印加されると、電子の流れは、デバイスを通ってカソードからアノードに流れる。アノードは、正の電荷(ホール)をホール輸送層に注入し、一方カソードは、負の電荷(電子)を電子輸送層に注入する。静電気力は、電子およびホールを一緒にし、それらは、発光層の近くで再結合し、それは、エネルギー準位の降下および可視光の範囲での輻射の放出を引き起こす。
【0004】
有機発光ダイオードは、現在のところディスプレイ用途に使用され、一般照明用途での使用を計画されている。OLEDデバイスは、光透過性基板に形成された2つの電極、例えばカソードと光透過性アノードとの間に配置される1つまたは複数の有機発光層を含む。有機発光層は、アノードとカソードとの間に電圧を印加することで光を放出する。電圧源から電圧を印加すると、電子は、カソードから有機層に直接注入され、ホールは、アノードから有機層に直接注入される。電子およびホールは、それらが発光中心で再結合するまで有機層を通って進む。この再結合プロセスは、フォトン、すなわち光の放出をもたらす。
【0005】
大面積OLEDデバイスは典型的には、多数の個別OLEDデバイスを単一基板上に組み合せるまたは各基板上に多数の個別OLEDデバイスを持つ基板の組合せである。大面積OLEDデバイスの用途には、照明が含まれる。これらの用途の大部分については、交流(AC)電力が、もっともすぐに利用できる。しかしながら、OLEDは、整流性電流/電圧特性を有し、それで典型的には、光放出のために正しい極性で配線された直流(DC)電力で動作する。これらの用途では、AC電力は、大面積OLEDを動作させるためにDC電力に変換される。
【0006】
しかしながら、電流駆動デバイスのための現在のOLED技術は、電力制御問題を示す。渦電流は、磁場源と導体との相対運動に起因して導体が変化する磁場にさらされるとき引き起こされる。導体が、磁場源によって生成される磁場に対して動くとき、起電力(EMF)が、導体内のループの周りに生成される可能性がある。材料の抵抗性に作用するこれらのEMFは、ファラデーの誘導の法則に従って、ループの周りに電流を生成する。これらの電流は、エネルギーを消散し、磁場の変化に対抗する傾向がある磁場を生じさせる。従って、移動導体が、静止物体によって生成される磁場の変化を経験するとき、ならびに静止導体が、変動磁場に出会うとき、渦電流が、形成される。これは、有機発光デバイス(OLED)にとって問題である。これは、有機層および有機/カソード界面に渦電流を誘起し、劣化を生じさせる可能性がある。また電荷注入効率を低減することによってデバイスの効率を低減し、消光を誘起することもある。
【0007】
さらに、大面積OLEDは、単一デバイスまたは大きな静電容量を有する大面積OLEDを形成するために接続できる複数デバイスを含むこともある。静電容量は、電荷を保持する本体の能力である。それはまた、所与の電位について貯蔵される(または分離される)電荷量の尺度でもある。大きな静電容量に起因して、デバイスを通る電流フローは、オーバーシュートするまたは電流の大きな変動を反映することもある。電流のオーバーシュートまたは大きな変動は、有機層を解離させかつ/または典型的にはアルミニウムであるカソード構造を焼くことによってOLEDに損傷を引き起こす可能性がある。静電容量は、面積とともに増加する可能性があるので、これは、大面積デバイスにとってさらにより有害な可能性がある。
【0008】
かなりの努力が、改善された性能を達成するためにOLEDでの材料を選択し、変更された層構造または材料を形成する際になされてきた。代替層構造を備える多数のOLEDが、開示されてきた。例えば、OLEDは、追加の機能層を含有して作られた。新しい材料を持つこれらの新しい層構造のいくつかは、実際に改善されたデバイス性能をもたらした。
【0009】
最近の進歩を考慮してさえ、渦電流および電流の大きな変動を低減し、それによって光源として使用するためのOLEDの性能および効率をさらに高めることによってOLED構造を改善する継続的必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2008/059185号パンフレット
【発明の概要】
【0011】
一態様では、本開示は、少なくとも1つの膜層が少なくともカソードまたはデバイスの外部にある基板の上に支持された状態のカソードを含む有機発光デバイスに関する。少なくとも1つの膜層は、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む。デバイスはさらに、アノードおよびカソードとアノードとの中間にある少なくとも1つの有機層を含む。
【0012】
別の態様では、有機発光デバイスは、交流デバイスである。
【0013】
別の態様では、有機発光デバイスは、直流駆動デバイスである。
【0014】
別の態様では、本開示は、有機発光デバイスを製造する方法に関する。本方法は、主にアルミニウムを含むカソードを形成するステップを含む。本方法はさらに、カソードの表面に少なくとも1つの膜層を配置するステップを含む。少なくとも1つの膜層は、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む。本方法はさらに、アノードおよびカソードとアノードとの中間にある少なくとも1つの有機層を形成するステップを含み、デバイスは、交流駆動デバイスである。
【0015】
なお別の態様では、本開示は、有機発光デバイスを製造する方法に関する。本方法は、主にアルミニウムを含むカソードを形成するステップを含む。本方法はさらに、デバイスの外部にある基板の表面に少なくとも1つの膜層を配置するステップを含む。少なくとも1つの膜層は、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。本方法はさらに、少なくとも1つの膜層内に酸化物をランダムに混合して複合層を形成するステップを含む。本方法はさらに、アノードおよびカソードとアノードとの中間にある少なくとも1つの有機層を形成するステップを含み、デバイスは、直流駆動デバイスである。
【0016】
有機発光デバイスによって実現される主要な便益は、信頼性および効率の増加である。
【0017】
有機発光デバイスによって実現される別の便益は、交流(AC)駆動デバイスでの渦電流の影響を低減するまたは除去する能力である。
【0018】
有機発光デバイスによって実現されるなお別の便益は、直流(DC)駆動デバイスでの変動電流を低減する能力である。
【0019】
有機発光デバイスによって実現されるさらに別の便益は、有機層および有機/カソード界面の劣化の低減である。
【0020】
本発明による有機発光デバイスのなお別の特徴および便益は、次に来る詳細な説明を読み、理解することからより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】例となる一実施形態による有機発光デバイス(OLED)100の横断面図である。
【図2】例となる別の実施形態によるOLED100の横断面図である。
【図3】例となる別の実施形態によるOLED100の横断面図である。
【図4】例となる別の実施形態によるOLED200の横断面図である。
【図5】例となる別の実施形態によるパターン化複合層の透視図である。
【図6】例となる別の実施形態によるパターン化複合層の透視図である。
【図7】例となる別の実施形態によるパターン化複合層の透視図である。
【図8】例となる別の実施形態によるOLED200の横断面図である。
【図9】当技術分野で周知のOLEDの電流変動率のグラフ表示である。
【図10】本開示のOLED200(金属酸化物層のない)の例示的実施形態による電流変動率のグラフ表示である。
【図11】本開示のOLED200の例示的実施形態による電流変動率のグラフ表示である。
【図12】OLED200の例示的実施形態による図10および11で例示されるような電流変動率の要約グラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
例となる実施形態の態様は、有機発光デバイス(OLED)、OLEDを含む光源、およびOLEDを製造する方法に関する。例となるOLEDは、任意の周知の目的に使用されてもよいことを理解すべきであるが、しかしながらそれは、特に一般的な点灯および照明用途に応用される。
【0023】
例となる一実施形態では、OLEDは、アノードおよびカソード、ならびに少なくともカソードまたはデバイスの外部にある基板の上に配置される少なくとも1つの膜層を含む。OLEDは、層を追加するまたは除去することを含む、さまざまな他の層組合せを含んでもよい。少なくとも1つの膜層は、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む。しかしながら、OLEDは、有機層の数、種類および順番が変わる多数の構成を含んでもよいことを理解すべきである。
【0024】
図1は、例となる一実施形態によるOLED100を表す。OLED100は、2つの電極、すなわちカソード104とアノード106との間に配置される、当技術分野で周知のようなさまざまな有機層(複数可)102を含んでもよい。カソード104の表面に配置されるのは、少なくとも1つの膜層108である。OLED100は、基板110の上に支持されてもよい。例となる実施形態では、少なくとも1つの膜層は、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組合せを含んでもよい。いくつかの実施形態では、OLED100は、交流(AC)デバイスであり、他の実施形態ではそれは、直流(DC)動作デバイスを含んでもよい。
【0025】
一実施形態では、OLEDは、AC動作デバイスであり、カソード104は、主にアルミニウムであり、すなわち>50%アルミニウム、および少なくとも>80%アルミニウムである。アルミニウムは、比較的高い耐熱性および耐酸化性を有し、それによってさまざまな要素、すなわち酸素および水に耐えるOLEDの能力を改善する。アルミニウム層は、少なくとも25ナノメートル(nm)、例えば少なくとも50nmの厚さを有してもよい。アルミニウム層はさらに、約200nm未満の厚さ、例えば約100nmの厚さを有してもよい。カソード104は、排他的にアルミニウムもしくは排他的に他の金属材料であってもよく、またはカソード104は、1つもしくは複数の金属材料とともにアルミニウムを含んでもよい。そのような他の材料の例には、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、銀、インジウム、スズ、亜鉛、ジルコニウム、サマリウム、ユーロピウム、それらの合金、およびそれらの混合物などの金属材料が含まれる。
【0026】
一実施形態では、少なくとも1つの膜層108は、マンガンである。マンガンは、磁性材料の一種であり、すなわち、磁場内に置かれると、材料の電子の磁気力は、影響を受け、それらは、特に有機/カソード界面を通じてデバイス全体にわたって渦電流を誘起する磁場の影響を低減する。交流駆動デバイスの有機層/カソード層界面での渦電流および有機層の劣化の影響を低減するために、マンガン層は、アルミニウムカソード層の上に配置される。マンガン膜層108は、少なくとも100ナノメートル(nm)、例えば少なくとも200nmの厚さを有してもよい。マンガン膜層108はさらに、約500nm未満の厚さ、例えば約250nmの厚さを有してもよい。少なくとも1つの膜層108は、排他的にマンガンもしくはコバルトであってもよく、または少なくとも1つの膜層108は、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、ニッケル−コバルト、ニッケル−アルミニウム、鉄−白金、マンガン(テトラシアノ−p−キノジメタン)2、鉄(テトラシアノ−p−キノジメタン)2、コバルト(テトラシアノ−p−キノジメタン)2、ニッケル(テトラシアノ−p−キノジメタン)2、およびそれらの組合せの群から選択される磁性材料および混合磁性組成物の1つを含んでもよい。
【0027】
OLEDはさらに、図2で例示するように第2の膜層112を含んでもよい。例となる一実施形態では、第2の膜層112は、少なくとも1つの膜層108とカソード104との間に配置される。二重層での第2の膜層112のカソード104との提携は、合金の形成を可能にすることもある。この合金の形成は、膜層から有機層102への金属の拡散の低減を可能にすることもある。光を吸収することができ、それによってOLEDの効率を低減する小さな金属粒子が、有機層の内部に拡散することもある。さらに、小さな金属粒子は、有機層と反応して金属−有機錯体を形成することもあり、それ故に有機層組成を変えて非放出層を形成し、OLEDの効率を低減する。AC駆動動作OLEDの一実施形態では、第2の膜層112は、ニッケルを含む。少なくとも1つの膜層108は、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−アルミニウム合金およびそれらの組合せの少なくとも1つである。少なくとも1つの膜層および第2の膜層108、112は、カソード104の厚さよりも大きい全厚さを有してもよい。二重層は、界面での2つの異種材料の遅延拡散によって形成される。二重層は、より安定していることもあり、有機材料中への磁性材料の移動を阻止してもよい。
【0028】
当技術分野で周知であるような基板110は、OLEDを支持するために用いられてもよい。基板は、ガラス、シリコン、またはプラスチックなどの、当技術分野で周知の任意の適切な材料を含んでもよい。例となる基板は、光学的に透明であり、デバイスで生成される光がそれを通過することを可能にする。一実施形態では、基板は、少なくとも約0.1mm、例えば約1.5mm未満、例えば0.7mmの厚さを有する。
【0029】
OLEDはさらに、図3で例示するように第3の膜層114を含んでもよい。例となる一実施形態では、第3の膜層114は、カソード104に直接隣接して配置され、カソード二重層を生じさせる。二重層での第3の膜層114のカソード104との提携は、電子注入の効率を改善する。二重層は、追加の界面を生じさせることができ、それは、電流の動きを遅くし、それによってOLEDでの有機材料の崩壊を低減することになると提案される。第3の膜層114は、少なくとも0.01nm、例えば少なくとも0.1nmの厚さを有してもよい。一実施形態では、厚さは、5nmより大きくなく、例えば2nmである。第3の膜層114は、磁性金属ハロゲン化物を含んでもよい。磁性金属ハロゲン化物は、ニッケル、銀、クロム、マンガン、セシウム、鉄、およびそれらの組合せのハロゲン化物から成る群から選択されてもよいが、限定はされない。磁性材料は、電子注入の効率を改善する。一実施形態では、金属は、ニッケルであり、ハロゲン化物は、フッ化物、ヨウ化物、またはそれらの組合せから選択されるが、他のハロゲン化物が、使用されてもよい。従って、この実施形態では、第3の膜層114は、ハロゲン化ニッケルであり、少なくとも1つの膜層108は、マンガンを含み、第2の膜層112は、ニッケル−コバルト合金を含み、カソード104は、アルミニウムを含む。界面適合は、類似金属および対応する金属ハロゲン化物が選択されるときに起こる可能性がより高い。一実施形態では、第3の膜層は、少なくとも10重量%または少なくとも25重量%の磁性ハロゲン化物を含み、例えば100重量%に至るまでを含む。
【0030】
第2の膜層112/カソード層104および第3の膜層114/カソード層104間の二重層の形成に関する前述の議論に沿って、たとえ第2の膜層112および第3の膜層114の両方が、存在していても、これらの層の材料は、カソード104に隣接して堆積されるとき、論じられた二重層を形成して各界面に二重層を与えることができると理解すべきである。
【0031】
例となる実施形態では、ランプなどの光源は、少なくとも1つの述べたようなAC動作OLED100を含む。
【0032】
別の実施形態では、磁石を含有する照明器具設備などの光源は、少なくとも1つの述べたようなAC動作OLED100を含む。
【0033】
別の実施形態では、磁石を含有する照明器具設備などの光源は、少なくとも1つの述べたようなAC動作OLED100を含む。磁石は、デバイスの近くの磁場を操作するために利用できる。この操作は、追加の性能向上を提供することができる。磁石はまた、デバイスを保持するための機械的支持および信頼できる電気的接触の手段も提供することができる。
【0034】
図4に関しては、有機発光デバイス200が、示される。OLED200は、OLED100に関連して先に述べたのと同様の多くの特徴を含み、その結果「200」シリーズでの同様の参照番号および構成要素は、図1、2、および3の「100」シリーズでの同様の番号および構成要素を指すと理解すべきである。一実施形態では、OLED200は、DC動作デバイスであり、少なくとも1つの膜層108は、カソード104の上に配置される。少なくとも1つの膜層108は、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組合せを含んでもよい。
【0035】
図4による実施形態では、少なくとも1つの膜層108は、マンガンであり、金属酸化物層108/209を形成するためにマンガン内にランダムに分散された酸化物を含む。金属酸化物層108/209は、OLEDでの電流フローのオーバーシュートまたは変動を低減する能力を有することができる。酸化物は、少なくとも5重量%、例えば少なくとも8重量%の量で複合層に存在してもよい。酸化物はさらに、複合層209の15重量%未満、例えば10重量%の量で金属酸化物層108/209に存在してもよい。酸化物の粒径は、少なくとも20nm、例えば少なくとも40nmであってもよい。粒径は、100nmよりも大きくなく、例えば60nmである。酸化物は、金属酸化物または高分子酸化物またはそれらの組合せを含んでもよく、アルミニウム、鉄、バナジウム、バリウム、ジルコニウム、クロム、インジウム−クロム、ポリエチレン、グラフェン、ポリアセチレン、それらの酸化物、およびそれらの組合せの群から選択されてもよい。一実施形態では、酸化物は、酸化アルミニウムである。
【0036】
別の実施形態では、金属酸化物層108/209は、図5〜7で例示するような規則的または不規則的パターンを有してもよい。パターン長さを増加させると、インダクタンスおよび抵抗が、増加する可能性があることは当技術分野で周知である。従って、規則的または不規則的(コイル状)パターンを有することによって、インダクタンスおよび抵抗を増加させることができ、それは、電流変動を低減するのに有効である。(銅線が大きなコイルを作ることができることは周知である。)
OLEDはさらに、より効率的な接触を提供するために第2の膜層112を含んでもよい。金属酸化物層108/209は、十分な導電性を有してもよくまたは有さなくてもよい。従って、もし金属酸化物層108/209が、使用されているならば、導電層を堆積させることは、導電性を高めることになる。一実施形態では、第2の膜層112は、金属酸化物層108/209とカソード104との間に配置される。別の実施形態では、第3の膜層216は、金属酸化物層108/209の上に配置される。第2および第3の膜層112、216は各々、少なくとも20nm、例えば少なくとも30nmの厚さを有してもよい。一実施形態では、厚さは、60nmよりも大きくなく、例えば50nmである。第2および第3の膜層112、216は、金属を含んでもよい。金属は、金、銀、ニッケル、およびそれらの組合せから成る群から選択されてもよい。一実施形態では、第2および第3の膜層112、216は、金である。けれども、層は、異なってもよいと理解されてもよい。OLED200との接続は、アルミニウム合金を含む外部コネクタ218、220を使用して行うことができる。アルミニウム合金は、次のもの(95重量%アルミニウム、ZrO2/Ta25)で構成されてもよい。OLED100との接続は、アルミニウム合金を含む218、220などの類似の外部コネクタを使用して行うことができると理解されてもよい。
【0037】
図8は、DC動作OLED200のなお別の実施形態を表す。この実施形態では、外部基板222は、第2の膜層112の下に置かれる。
【0038】
例となる実施形態では、DC動作OLED200は、変動電流がそれに印加されるとき50から200Ω+/−20%の抵抗を有し、変動電流は、少なくとも公称電流の2パーセントよりも大きい。公称電流は、それにより評価されるデバイスの最適電流であり、それは、デバイスの表面積に基づいて5mAから1Aに及ぶ可能性がある。
【0039】
例となる実施形態では、DC動作OLED200は、50マイクロヘンリーから50ミリヘンリーの間のインダクタンスを有する。
【0040】
例となる実施形態では、ランプなどの光源は、少なくとも1つの述べたようなDC動作OLED200を含む。
【0041】
別の実施形態では、磁石を含有する照明器具設備などの光源は、少なくとも1つの述べたようなDC動作OLED200を含む。
【0042】
別の実施形態では、磁石を含有する照明器具設備などの光源は、少なくとも1つの述べたようなDC動作OLED200を含む。磁石は、デバイスの近くの磁場を操作するために利用できる。この操作は、追加の性能向上を提供することができる。磁石はまた、デバイスを保持するための機械的支持および信頼できる電気的接触の手段も提供することができる。
【0043】
上で述べた層102、108、110、112、114、108/209、216、222、またはカソード104およびアノード106のための材料は、とりわけ真空蒸着法、熱蒸発法、気相堆積法およびインクジェット印刷法などの、当技術分野で周知のよく使用される任意の方法を通じて適切に堆積される。
【0044】
提示した例となる実施形態の範囲を限定することを意図することなく以下の実施例は、金属酸化物層108/209の便益を実証する。
【実施例1】
【0045】
OLED200は、図8で示す構造に従って形成された。読者の便益のために、デバイスの層は、ここでは図1〜4に従って番号を付けられる。アルミニウムカソード104は、有機層102の上に堆積された。OLED200はさらに、インジウム−チタン酸化物(ITO)アノード106および支持基板110を含んでいた。
【0046】
ポリエチレンテレフタレート(PET)で構成された外部基板222は、脱イオン水で超音波処理され、エタノールで洗浄された。この後に、基板222を70℃で30分間乾燥することが続いた。約50nmの金膜層112は、10-5torrの真空スパッタリングチャンバーで基板222の上に堆積された。200nmのマンガン膜層108は、同じチャンバーを使用してその層を堆積させることによって形成された。金属酸化物層108/209は、50重量%アルコール溶液から抽出されたコロイド状Al23の沈殿によって準備された。Al23は、Mn/Al23膜層108/209を形成するためにマンガン膜層108の上に配置された。マンガン膜層108内にランダムに分散した金属酸化物Al23は、顕微鏡を使用して50%未満であることが検証された。システムは次いで、水/溶媒を追い出し、緻密な膜を形成するために対流式オーブンで100℃で20分間アニールされた。約50nmの金膜層216は、Mn/Al23層108/209の上に堆積された。外部基板222は、図8で示すように電源と直列に接続された。パッチコネクタ218、220、224および226は、次のもの(95重量%Al、5重量%ZrO2/Ta25)のアルミニウム合金で構成された。
【0047】
電流検出オシロスコープ250は、直列に置かれた。システムは、OLEDに50ミリアンペア(mA)を供給するために15ボルト(V)の直流(DC)電源で駆動された。
【0048】
図9は、当技術分野で周知のOLEDに関して記録された始動および定常状態の電流を例示する。図10は、50nm金層112を備えて図8で例示するように形成されたOLED200についての電流記録を例示する。金属酸化物層108/209は、金層112および外部基板222に隣接して配置されなかった。図10で示す電流記録は、図9に似ている。図11は、実施例1で準備したようなOLED200についての電流記録を例示し、電流スパイクの低減を示す。図12は、図10および11で示すスコアトレースについて電流スパイクの低減の要約を例示する。その差は、金属酸化物層108/209のインダクタンスおよび抵抗に帰することができる。
【0049】
本発明は、好ましい実施形態を参照して述べられた。明らかに、変更形態および代替形態は、先の詳細な説明を読み、理解することで、他の人にも思いつくであろう。本発明は、すべてのそのような変更形態および代替形態を含むと解釈されることを意図している。
【符号の説明】
【0050】
100 有機発光デバイス(OLED)
102 有機層
104 カソード
106 アノード
108 少なくとも1つの膜層
110 基板
112 第2の膜層
114 第3の膜層
200 有機発光デバイス(OLED)
209 複合層
216 第3の膜層
218 外部コネクタ、パッチコネクタ
220 外部コネクタ、パッチコネクタ
222 外部基板
224 パッチコネクタ
226 パッチコネクタ
250 オシロスコープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、
デバイスの外部にあるオプションの基板と、
前記カソードまたは前記基板の少なくとも1つの上に配置される少なくとも1つの膜層であって、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む前記少なくとも1つの膜層と、
アノードと、
前記カソードとアノードとの中間にある少なくとも1つの有機層とを含む有機発光デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの膜層は、マンガン、ニッケル、鉄、ニッケル−コバルト、ニッケル−アルミニウム、鉄−白金、鉄−アルミニウム、マンガン(テトラシアノ−p−キノジメタン)2、鉄(テトラシアノ−p−キノジメタン)2、コバルト(テトラシアノ−p−キノジメタン)2、ニッケル(テトラシアノ−p−キノジメタン)2、およびそれらの組合せから成る群から選択される磁性材料および混合磁性材料の少なくとも1つを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスは、前記カソードの上に配置される前記少なくとも1つの膜層を有する交流駆動デバイスである、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの膜層は、マンガンを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの膜層は、25nmから500nmの間の厚さを有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの膜層とカソードとの中間に配置される第2の膜層をさらに含み、
前記第2の膜層は、鉄、ニッケル、コバルト、およびそれらの組合せから成る群から選択される金属を含む、請求項3記載のデバイス。
【請求項7】
前記カソードは、主にアルミニウムを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記カソードは、50から200nmの間の厚さを有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの膜層および前記第2の膜層は、前記カソードの厚さよりも大きい全厚さを有する、請求項6記載のデバイス。
【請求項10】
前記カソードに直接隣接して配置される第3の膜層をさらに含み、
前記第3の膜層は、ニッケル、銀、クロム、マンガン、セシウム、鉄、それらのハロゲン化物、およびそれらの組合せから成る群から選択される少なくとも1つの金属ハロゲン化物を含む、請求項6記載のデバイス。
【請求項11】
請求項3記載のデバイスを含む少なくとも1つの有機発光デバイスを含む光源。
【請求項12】
前記デバイスは、直流駆動デバイスである、請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの膜層は、前記少なくとも1つの膜層内に酸化物を含む、請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの膜層は、前記デバイスの外部にある前記基板の上に配置される、請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの膜層は、少なくとも前記外部基板と接触しているまたは前記外部基板の上にパターン形成されている、請求項14記載のデバイス。
【請求項16】
前記酸化物は、アルミニウム、鉄、バナジウム、バリウム、ジルコニウム、クロム、インジウム−クロム、ポリエチレン、グラフェン、ポリアセチレン、それらの酸化物、およびそれらの組合せから成る群から選択される金属および高分子酸化物の少なくとも1つを含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項17】
前記酸化物は、酸化アルミニウムである、請求項13記載のデバイス。
【請求項18】
前記酸化物は、前記少なくとも1つの膜層の5から15重量パーセントの間を含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項19】
第2の膜層をさらに含み、
前記第2の膜層は、前記少なくとも1つの膜層と前記カソードとの中間または前記少なくとも1つの膜層と前記基板との中間に配置される、請求項13記載のデバイス。
【請求項20】
第3の膜層をさらに含み、
前記第3の膜層は、前記少なくとも1つの膜層の上に配置される、請求項19記載のデバイス。
【請求項21】
前記第2および第3の膜層は各々、金、銀、ニッケルおよびそれらの組合せの群から選択される金属を含む、請求項20記載のデバイス。
【請求項22】
前記第2および第3の膜層は、金を含む、請求項20記載のデバイス。
【請求項23】
前記第2および第3の膜層は各々、20から100nmの間の厚さを有する、請求項20記載のデバイス。
【請求項24】
前記デバイスは、変動電流がそれに印加されるとき50から200オーム+/−20%の抵抗を有し、
前記変動電流は、少なくとも公称電流の2パーセントよりも大きい、請求項22記載のデバイス。
【請求項25】
前記外部基板は、プラスチックである、請求項14記載のデバイス。
【請求項26】
請求項12記載のデバイスを含む少なくとも1つの有機発光デバイスを含む光源。
【請求項27】
有機発光デバイスを製造する方法において、
カソードを形成するステップであって、前記カソードは主にアルミニウムを含む、ステップと、
前記カソードの表面に少なくとも1つの膜層を配置するステップであって、前記少なくとも1つの膜層は、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、ステップと、
アノードを形成するステップと、
前記カソードとアノードとの中間に少なくとも1つの有機層を形成するステップとを含み、
前記デバイスは、交流駆動デバイスである、方法。
【請求項28】
前記カソードの前記表面に前記少なくとも1つの膜層を配置するステップは、熱蒸着法、化学気相堆積法、インクジェット印刷技術、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
有機発光デバイスを製造する方法において、
カソードを形成するステップであって、前記カソードは主にアルミニウムを含む、ステップと、
前記デバイスの外部にある基板の表面に少なくとも1つの膜層を配置するステップであって、前記少なくとも1つの膜層は、磁性材料、混合磁性材料、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、ステップと、
アノードを形成するステップと、
前記カソードとアノードとの中間に少なくとも1つの有機層を形成するステップとを含み、
前記デバイスは、直流駆動デバイスであり、
前記方法はさらに、前記少なくとも1つの膜層内に酸化物を配置するステップを含む、方法。
【請求項30】
前記基板の前記表面に前記少なくとも1つの膜層を配置するステップは、熱蒸着法、化学気相堆積法、インクジェット印刷技術、およびそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
請求項3記載のデバイスを含む少なくとも1つの有機発光デバイスを含む照明器具設備であって、前記照明器具設備は磁石を含む、照明器具設備。
【請求項32】
請求項12記載のデバイスを含む少なくとも1つの有機発光デバイスを含む照明器具設備であって、前記照明器具設備は磁石を含む、照明器具設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−511808(P2013−511808A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539911(P2012−539911)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052295
【国際公開番号】WO2011/062706
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】