説明

電源システム

【課題】構成を複雑化させることなく、複数の電源ICのいずれかの電源系統に異常が発生した場合に、それら複数の電源IC全ての動作を停止させる。
【解決手段】複数の電源ICのうち第1の電源ICから出力された電源電圧を分圧した分圧電圧を生成する分圧電圧生成部と、第1の電源ICから出力された電源電圧の電圧値を検出する電圧監視部と、複数の電源ICのうち第1の電源IC以外の第2の電源ICから出力された電源電圧の電圧値が、当該第2の電源ICに設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、分圧電圧の電圧値を変化させる分圧電圧調整部とを有し、第1の電源ICは、分圧電圧の電圧値と所定の基準電圧値との差が所定値以上である場合、電源電圧の生成を停止し、第2の電源ICは、電圧監視部にて検出された電圧値が、第1の電源ICに設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると電源電圧の生成を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源ICを有する電源システムに関し、特に、複数の電源ICのそれぞれが、当該電源ICに設定された電圧値の電源電圧を生成して負荷へ出力する電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンター等の高速化、高機能化及び低価格化に伴い、その内部の電子回路にSOC(System On Chip)が採用されるようになっている。
【0003】
SOCとは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)に、CPU(Central Processing Unit)やメモリー、ロジック回路、USB(Universal Serial Bus)インターフェース等のIP(Intellectual Property)、及び、AD(AnalogDigital)コンバーター等を集積したチップのことである。
【0004】
SOCは、半導体の微細プロセスで製造されるケースが増えている。その結果、SOCへ電力を供給するための電源数が増加している。例えば、I/O(Input/Output)用に3.3Vの電源が必要となり、内部ロジック回路駆動用に1.2Vの電源が必要となる。
【0005】
複数の電源を用いる場合、複数の電圧を生成するために、複数の電源IC(Integrated Circuit)をシステム基板上に搭載する必要がある。なお、電源ICは例えば、DC/DCコンバーターICや、3端子レギュレーターである。
【0006】
また、複数の電源を用いる場合、複数の電源のそれぞれが生成した電圧の出力を開始または停止するシーケンス(順番及び時間)は、予め決められている必要がある。これはSOC(半導体)の劣化や破壊を防ぐためである。具体的には例えば、内部ロジック回路駆動用の電圧を出力し、その後100ミリ秒以内に、I/O用の電圧を出力する。
【0007】
なお、複数の電源のそれぞれを切断する際のシーケンスを制御するための技術が例えば、特許文献1に開示されている。
【0008】
特許文献1に開示されている技術では、複数の電源のうちのいずれかに異常が発生した場合に、予め決められた切断のシーケンスが逆転する状態を最小限の時間に抑えるようにしている。
【0009】
ここで、複数の電源のいずれかの電源系統に異常が発生した場合、それら複数の電源全ての動作を停止し、その停止状態を保持する必要がある。これは、電源に異常が発生した場合には、大電流が流れて電流が低下した可能性があり、その状態を継続するのは望ましくないからである。
【0010】
このような動作を実現するための技術が例えば、特許文献2に開示されている。
【0011】
特許文献2に開示されている技術では、複数の電源のそれぞれに対応付けられ、複数の電源のそれぞれの電圧異常を検出するための回路を設けている。そして、複数の電源のいずれかに電圧異常が検出されると、その旨が他の電源に通知される。複数の電源のそれぞれは、他の電源の電圧異常の通知を受け付けるための端子を備えており、電圧異常の通知をその端子にて受け付けると、動作を停止してその停止状態を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−204496号公報
【特許文献2】特開2001−5539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、汎用の電源ICは、他の電源ICの電源系統に異常が発生したことの通知を受け付ける端子を設けていないのが一般的である。これは、ピン数を減らすことによって省スペース化を実現し、できるだけ多くのアプリケーションに採用されやすいようにしているためである。または、汎用の電源ICでは、他の電源ICと組み合わせた使用方法が想定されていないためである。
【0014】
上述した特許文献2に開示されている技術を用いれば、複数の電源ICのそれぞれが、他の電源ICの電源系統に異常が発生したことの通知を受け付けることが可能ではある。
【0015】
しかし、特許文献2に開示されている技術を用いた場合、電源ICの周辺に回路等を追加する必要があり、構成が複雑化してしまうという問題点がある。
【0016】
本発明は、構成を複雑化させることなく、複数の電源ICのいずれかの電源系統に異常が発生した場合に、それら複数の電源IC全ての動作を停止させることができる電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明の電源システムは、複数の電源ICを有し、該複数の電源ICのそれぞれが、当該電源ICに設定された電圧値の電源電圧を生成して負荷へ出力する電源システムであって、
前記複数の電源ICのうち第1の電源ICから出力された電源電圧を分圧した分圧電圧を生成する分圧電圧生成部と、
前記第1の電源ICから出力された電源電圧の電圧値を検出する電圧監視部と、
前記複数の電源ICのうち前記第1の電源IC以外の第2の電源ICから出力された電源電圧の電圧値を検出し、該検出された電圧値が、当該第2の電源ICに設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、前記分圧電圧の電圧値を変化させる分圧電圧調整部と、を有し、
前記第1の電源ICは、前記分圧電圧の電圧値を検出し、該検出された電圧値と所定の基準電圧値との差が所定値以上である場合、電源電圧の生成を停止し、
前記第2の電源ICは、前記電圧監視部にて検出された電圧値が、前記第1の電源ICに設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、電源電圧の生成を停止する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上説明したように構成されているので、構成を複雑化させることなく、複数の電源ICのいずれかの電源系統に異常が発生した場合に、それら複数の電源IC全ての動作を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の電源システムを適用した電力供給システムの実施の一形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した電源システムに電源が投入されたときの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】図1に示した電源システムにおいて電源電圧の出力が開始された後、第1の電源ICから出力された電源電圧に異常が発生したときの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】図1に示した電源システムにおいて電源電圧の出力が開始された後、第2の電源ICから出力された電源電圧に異常が発生したときの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本発明の電源システムの他の形態の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の電源システムを適用した電力供給システムの実施の一形態の構成を示すブロック図である。
【0022】
本実施形態の電力供給システムは図1に示すように、電源システム10と、負荷であるSOC20とを備えている。
【0023】
電源システム10は、第1の電源ICである電源IC100と、第2の電源ICである電源IC120とを備えている。また、電源システム10は、分圧電圧調整部であるスイッチ111及びゲート112と、電圧監視部113と、分圧電圧生成部を構成する第1の抵抗である抵抗114及び第2の抵抗である抵抗115と、コイル116と、コンデンサー117とを備えている。なお、ゲート112はスイッチ111を制御する制御部として動作する。
【0024】
電源IC100は、例えばDC/DCコンバーターICであり、内部電源部101と、DC/DCコンバーター部102と、パワーオンリセット部107と、発振部108と、タイマー部109と、リセットアウト端子110とを備えている。
【0025】
内部電源部101は、外部から出力された電圧を受け付け、受け付けた電圧から、電源IC100の各部の動作に必要な3.3V〜5V程度の電圧値の電圧を生成する。なお、本実施形態においては、外部から出力され、内部電源部101及び後述するDC/DCコンバーター部102が受け付ける電圧の電圧値を24Vとしている。
【0026】
パワーオンリセット部107は、外部から出力された電圧の電圧値を検出する。そして、パワーオンリセット部107は、検出した電圧値が所定の電圧値に達すると、DC/DCコンバーター部102及びタイマー部109の動作を開始させるための動作開始信号をDC/DCコンバーター部102及びタイマー部109へ出力する。
【0027】
DC/DCコンバーター部102は、外部から出力された電圧を受け付ける。そして、DC/DCコンバーター部102は、パワーオンリセット部107から出力された動作開始信号を受け付けると、受け付けた電圧をスイッチングすることにより、電源IC100に設定された電圧値の電源電圧を生成する。なお、本実施形態において電源IC100に設定された電圧値は1.2Vとする。また、DC/DCコンバーター部102は、スイッチング部103と、停止保持部104と、異常検出部105と、電圧検出部106とを備えている。
【0028】
スイッチング部103は、100KHz〜1MHz程度の周波数で、受け付けた電圧をスイッチングする。スイッチング部103は、オンの状態のときにコイル116にエネルギーを蓄積する。そして、スイッチング部103は、オフの状態のときに、コイル116に蓄積されたエネルギーをコンデンサー117に移動させる。これを繰り返すことにより、受け付けた電圧の電圧値を電源IC100に設定された電圧値に変換する。すなわち、コンデンサー117の電極間の電位差は、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値となる。電源IC100から出力された電源電圧は、出力線11を介してSOC20へ入力されるとともに、抵抗114,115によって分圧されて分圧電圧aが生成される。生成された分圧電圧aは、電圧検出部106及び異常検出部105に入力され、電圧検出部106及び異常検出部105にて分圧電圧aの電圧値が検出される。なお、スイッチング部103は、停止保持部104から出力され、スイッチング部103を停止させるための第1の停止指示信号を受け付けている間、スイッチングを停止する。つまり、スイッチング部103が第1の停止指示信号を受け付けている間は、電源電圧の生成が停止する。
【0029】
電圧検出部106は、所定の基準電圧値の基準電圧源(不図示)を備え、検出された分圧電圧aの電圧値と所定の基準電圧値とがほぼ同じになるようにスイッチング部103を制御する。これにより、電源IC100から出力される電源電圧の電圧値が1.2Vで安定する。
【0030】
異常検出部105は、電圧検出部106と同様に、所定の基準電圧値の基準電圧源(不図示)を備えている。異常検出部105は、検出された分圧電圧aの電圧値と所定の基準電圧値とを比較する。検出された分圧電圧aの電圧値と所定の基準電圧値との差が所定値以上である場合、異常検出部105は、何らかの異常が発生していると判断し、その旨を示す異常検出信号を停止保持部104へ出力する。分圧電圧aの電圧値が所定の基準電圧値とほぼ同じになるように電圧検出部106にて制御されているにもかかわらず、差が所定値以上である場合、SOC20に過電流が流れている等、何らかの異常が発生していることが想定される。そのため、異常検出部105は、検出された分圧電圧aの電圧値と所定の基準電圧値との差が所定値以上である状態を異常とみなす。
【0031】
停止保持部104は、異常検出部105から出力された異常検出信号を受け付けると、第1の停止指示信号のスイッチング部103への出力を開始する。それとともに、停止保持部104は、リセットアウト端子110からのリセットアウト信号の出力を停止させるための第2の停止指示信号をタイマー部109へ出力する。なお、リセットアウト信号については後述する。
【0032】
タイマー部109は、所定時間をカウントするタイマー(不図示)を備えている。なお、所定時間とは例えば、電源IC100,120のそれぞれが、電源電圧の生成を開始してからそれぞれに設定された電圧値で安定して電源電圧を出力するまでの時間である。タイマー部109は、電源システム10の電源が投入された後、パワーオンリセット部107から出力された動作開始信号を受け付けるまでは、電源IC100が動作状態にないことを示すリセット状態信号をリセットアウト端子110へ出力している。そして、タイマー部109は、パワーオンリセット部107から出力された動作開始信号を受け付けると、タイマーを起動させる。そして、タイマー部109は、タイマーを起動させてから上記の所定時間の経過後に、電源IC100が動作状態にあることを示すリセット解除状態信号のリセットアウト端子110への出力を開始する。なお、リセットアウト端子110がリセット解除状態信号を受け付けている間、リセットアウト信号がリセットアウト端子110から信号線13を介してSOC20へ出力される。また、タイマー部109は、停止保持部104から出力された第2の停止指示信号を受け付けると、リセット解除状態信号の出力を停止し、リセット状態信号をリセットアウト端子110へ出力する。
【0033】
発振部108は、電源IC100の外部に接続された振動子とともに発振回路を構成し、電源IC100の各部が動作するのに必要なクロック信号を供給する。発振部108から供給されるクロックは例えば、DC/DCコンバーター部102がスイッチングを行う際のスイッチング周期の基となるクロックや、タイマー部109のクロック等である。
【0034】
抵抗114は、出力線11と接続されている。また、抵抗115は、抵抗114と直列に接続されるとともに、アースと接続されている。なお、抵抗114と抵抗115との接続点の電圧値が、上述した分圧電圧aの電圧値となる。
【0035】
ゲート112は、電源IC120の電源電圧をSOC20へ出力するための出力線12と、信号線13とに接続されている。ゲート112は、信号線13にリセットアウト信号が流れているときに、電源IC120から出力された電源電圧の電圧値が電源IC120に設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、信号cを出力する。
【0036】
スイッチ111は、一端が外部から出力された電圧を受け付け、他端が抵抗114と抵抗115との接続点に接続されている。スイッチ111は、ゲート112から出力された信号cを受け付けると、オフの状態からオンの状態へ切り替わる。スイッチ111がオンの状態になると、外部からの電流が抵抗114と抵抗115との接続点に流れ込むことになる。このとき、分圧電圧aは、流れ込んだ電流による影響を受け、電圧値が変化する。なお、本実施形態においては、外部から出力され、スイッチ111の一端が受け付ける電圧の電圧値を24Vとしている。そのため、スイッチ111がオンの状態になると、分圧電圧aの電圧値は上昇することになる。
【0037】
電圧監視部113は例えば、コンパレーター等である。電圧監視部113は、出力線11と接続されており、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値を検出する。そして、電圧監視部113は、検出された電圧値が、電源IC100に設定された電圧値に応じて予め決められた値よりも大きな値である間、電源IC120へ信号bを出力する。なお、電源IC120に1.2Vの電圧が入力されることによって電源IC120が動作する仕様であれば、電圧監視部113を用いずに、出力線11と電源IC120とを直接接続してもよい。
【0038】
電源IC120は例えば、3端子レギュレーターである。電源IC120は、イネーブル端子121を備えており、電圧監視部113から出力された信号bをイネーブル端子121にて受け付ける。また、電源IC120は、外部から出力された電圧を受け付ける。そして、電源IC120は、イネーブル端子121にて信号bを受け付けている間、受け付けた電圧から、電源IC120に設定された電圧値の電源電圧を生成する。本実施形態において電源IC120に設定された電圧値は3.3Vとする。そして、電源IC120は、生成した電源電圧を出力線12を介してSOC20へ出力する。なお、電圧監視部113を用いずに、出力線11と電源IC120とを直接接続した場合、出力線11とイネーブル端子121とが接続される。そして、電源IC120は、イネーブル端子121にて受け付けられた電圧の電圧値が、電源IC100に設定された電圧値に応じて予め決められた値よりも大きな値である間、電源電圧を生成する。
【0039】
SOC20は、電源IC100から出力された電源電圧を受け付ける電源端子201と、電源IC120から出力された電源電圧を受け付ける電源端子202とを備えている。また、SOC20は、電源IC100のリセットアウト端子110から出力されたリセットアウト信号を受け付けるリセット端子203を備えている。SOC20は、リセット端子203にてリセットアウト信号を受け付けている間、動作する。
【0040】
以下に、上記のように構成された電源システム10の動作について説明する。
【0041】
まず、図1に示した電源システム10に電源が投入されたときの動作について説明する。
【0042】
図2は、図1に示した電源システム10に電源が投入されたときの動作を説明するためのタイミングチャートである。なお、図2においては、電源IC100から出力される電源電圧のことを「1.2V出力」と表記し、電源IC120から出力される電源電圧のことを「3.3V出力」と表記している。これは、以降の説明で参照する図3及び図4においても同様である。
【0043】
図1に示した電源システムに電源が投入されると、タイマー部109は、リセット状態信号をリセットアウト端子110へ出力する。このとき、電源IC100は、電源電圧の生成を開始していない。そのため、電圧監視部113から信号bが出力されておらず、電源IC120も電源電圧の生成を開始していない。
【0044】
そして、時刻t1において、パワーオンリセット部107にて検出された電圧値が所定の電圧値に達すると、パワーオンリセット部107は、DC/DCコンバーター部102及びタイマー部109へ動作開始信号を出力する。
【0045】
パワーオンリセット部107から出力された動作開始信号を受け付けたDC/DCコンバーター部102は、電源電圧の生成を開始する。これにより、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値が上昇していく。
【0046】
また、パワーオンリセット部107から出力された動作開始信号を受け付けたタイマー部109は、タイマーを起動させる。
【0047】
そして、時刻t2において電源IC100から出力された電源電圧が、電源IC100に設定された電圧値に応じて予め決められた電圧値よりも高くなると、電圧監視部113は、電源IC120への信号bの出力を開始する。
【0048】
電圧監視部113から出力された信号bを受け付けた電源IC120は、電源電圧の生成を開始する。これにより、電源IC120から出力された電源電圧の電圧値が上昇していく。
【0049】
このように、電源IC100からSOC20への1.2Vの電源電圧の出力が開始され、その後、電源IC120からSOC20への3.3Vの電源電圧の出力が開始されるというシーケンスが実現される。
【0050】
なお、電源システム10の電源が投入された直後で、電源IC120から電源電圧が出力されていない状態においては、タイマー部109がリセット状態信号をリセットアウト端子110へ出力している。このとき、リセットアウト端子110からリセットアウト信号が出力されていないため、ゲート112から信号cが出力されることはなく、スイッチ111はオフの状態となっている。従って、電源IC100は、電源IC120から出力された電源電圧の電圧値によらず、電源電圧を生成することができる。
【0051】
タイマー部109は、タイマーを起動させてから所定時間の経過後に、リセット解除状態信号のリセットアウト端子110への出力を開始する。これにより、時刻t3においてリセットアウト端子110からのリセットアウト信号の出力が開始される。
【0052】
次に、図1に示した電源システムに10において電源電圧の出力が開始された後、第1の電源ICである電源IC100から出力された電源電圧に異常が発生したときの動作について説明する。
【0053】
図3は、図1に示した電源システム10において電源電圧の出力が開始された後、第1の電源ICから出力された電源電圧に異常が発生したときの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0054】
時刻t4において電源IC100から出力された電源電圧に異常が発生すると、分圧電圧aの電圧値が変化する。このとき、分圧電圧aの電圧値と所定の基準電圧値との差が所定値以上になると、異常検出部105は、何らかの異常が発生していると判断する。そして、異常検出部105は、異常検出信号を停止保持部104へ出力する。
【0055】
異常検出部105から出力された異常検出信号を受け付けた停止保持部104は、第1の停止指示信号のスイッチング部103への出力を開始する。それとともに、停止保持部104は、第2の停止指示信号をタイマー部109へ出力する。
【0056】
停止保持部104から出力された第1の停止指示信号を受け付けたスイッチング部103は、スイッチングを停止する。
【0057】
また、停止保持部104から出力された第2の停止指示信号を受け付けたタイマー部109は、リセット解除状態信号の出力を停止し、リセット状態信号をリセットアウト端子110へ出力する。これにより、リセットアウト端子110からのリセットアウト信号の出力が停止する。
【0058】
スイッチング部103がスイッチングを停止すると、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値は低下していく。
【0059】
電圧監視部113は、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値が電源IC100に設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、信号bの出力を停止する。これにより、電源IC120が電源電圧の生成を停止する。
【0060】
このように、電源IC100から出力された電源電圧に異常が発生した場合、電源IC100,120の両方からの電源電圧の出力を停止することができる。なお、停止保持部104からスイッチング部103へ第1の停止指示信号を出力している限り、この状態が保持される。すなわち、電源システム10の電源を一旦切断しない限りこの状態が保持される。
【0061】
次に、図1に示した電源システム10において電源電圧の出力が開始された後、第2の電源ICである電源IC120から出力された電源電圧に異常が発生したときの動作について説明する。
【0062】
図4は、図1に示した電源システム10において電源電圧の出力が開始された後、第2の電源ICから出力された電源電圧に異常が発生したときの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0063】
電源IC120から出力された電源電圧に異常が発生し、時刻t5において電圧値が電源IC120に設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下した場合、ゲート112は、信号cをスイッチ111へ出力する。これは、信号線13にリセットアウト信号が流れているためである。これにより、スイッチ111がオンの状態になる。その結果、抵抗114と抵抗115との接続点に外部からの電流が流れ込み、分圧電圧aの電圧値が上昇する。
【0064】
そして、時刻t6において分圧電圧aの電圧値と所定の基準電圧値との差が所定値以上になると、異常検出部105は、何らかの異常が発生していると判断する。そして、異常検出部105は、異常検出信号を停止保持部104へ出力する。
【0065】
異常検出部105から出力された異常検出信号を受け付けた停止保持部104は、第1の停止指示信号のスイッチング部103への出力を開始する。それとともに、停止保持部104は、第2の停止指示信号をタイマー部109へ出力する。
【0066】
停止保持部104から出力された第1の停止指示信号を受け付けたスイッチング部103は、スイッチングを停止する。
【0067】
また、停止保持部104から出力された第2の停止指示信号を受け付けたタイマー部109は、リセット解除状態信号の出力を停止し、リセット状態信号をリセットアウト端子110へ出力する。これにより、リセットアウト端子110からのリセットアウト信号の出力が停止する。
【0068】
スイッチング部103がスイッチングを停止すると、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値は低下していく。
【0069】
電圧監視部113は、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値が電源IC100に設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、信号bの出力を停止する。これにより、電源IC120が、電源電圧の生成を停止する。
【0070】
このように、電源IC120から出力された電源電圧に異常が発生した場合も、電源IC100から出力された電源電圧に異常が発生した場合と同様に、電源IC100,120の両方からの電源電圧の出力を停止することができる。なお、停止保持部104からスイッチング部103へ第1の停止指示信号を出力している限り、この状態が保持される。すなわち、電源システム10の電源を一旦切断しない限りこの状態が保持される。
【0071】
以上の説明で明らかなように、スイッチ111は、抵抗114と抵抗115との接続点の電圧である分圧電圧aの電圧値を、異常検出部105が異常と判断するレベルまで変化させるために設けられている。
【0072】
ここで、スイッチ111がオンの状態であるときに、分圧電圧aの電圧値が上昇するように構成しているのは、以下に説明する理由による。
【0073】
分圧電圧aの電圧値を上昇させると、電源IC100の動作は、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値が、電源IC100に設定された電圧値(1.2V)よりも高いときの動作になる。すなわち、電源IC100は、生成する電源電圧の電圧値を低下させるように動作し、異常検出部105が異常と判断した時点で、電源電圧の生成が停止する。
【0074】
仮に、スイッチ111がオンの状態であるとき、分圧電圧aの電圧値が低下するように構成した場合、例えばスイッチ111の一端をGND(グランド)に接続した場合は、スイッチ111がオンの状態になると、分圧電圧aの電圧値が低下する。従って、電源IC100の動作は、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値が、電源ICに設定された電圧値(1.2V)よりも低いときの動作になる。すなわち、電源IC100は、電源電圧の電圧値を上昇させるように動作する。この場合、電源IC100から出力される電源電圧の電圧値は1.2Vよりも高くなり、電源電圧の生成が停止する前に、SOC20の許容電圧値を超えてしまうおそれがある。これは、SOC20の破壊や劣化を招くため望ましくない。
【0075】
従って、本実施形態ではスイッチ111の一端が外部から出力された24Vの電圧を受け付け、スイッチ111がオンの状態のときに、分圧電圧aの電圧値が上昇するように構成した。すなわち、電源IC100に設定された電圧値よりも高い電圧源にスイッチ111の一端を接続した。
【0076】
このように本実施形態において電源システム10は、電源IC100から出力された電源電圧を分圧した分圧電圧aを生成する分圧電圧生成部と、電源IC100から出力された電源電圧の電圧値を検出する電圧監視部113とを有する。
【0077】
また、電源システム10は、電源IC120から出力された電源電圧の電圧値を検出し、検出された電圧値が、電源IC120に設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、分圧電圧aの電圧値を変化させる分圧電圧調整部を有する。
【0078】
そして、電源IC100は、分圧電圧aの電圧値を検出し、検出された電圧値と所定の基準電圧値との差が所定値以上である場合、電源電圧の生成を停止する。
【0079】
また、電源IC120は、電圧監視部113にて検出された電圧値が、電源IC100に設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、電源電圧の生成を停止する。
【0080】
これにより、構成を複雑化させることなく、複数の電源ICのいずれかの電源系統に異常が発生した場合に、それら複数の電源IC全ての動作を停止させることができる。
【0081】
なお、本実施形態では、第2の電源ICが電源IC120の1つだけである場合について説明したが、第2の電源ICが2つ以上の場合でも、上述した動作及び効果を実現することができる。この場合、ゲート112を第2の電源ICの数の分だけ用意し、第2の電源ICのそれぞれから出力された電源電圧を、当該第2の電源ICに対応するゲート112が受け付けられるようにすればよい。これにより、2つ以上の第2の電源ICのいずれかに異常が発生した場合でも、複数の電源ICの動作を停止させることができる。
【0082】
また、本発明の電源システムは図1に示した構成に限定されない。
【0083】
図5は、本発明の電源システムの他の形態の構成を説明するためのブロック図である。
【0084】
図1に示した電源システム10と図5に示した電源システム10−1とを比較すると、図5に示した電源システム10−1では、図1に示した電源システム10におけるスイッチ111及びゲート112がトランジスタで構成されている点が異なる。
【0085】
図5に示すように、抵抗を内蔵したトランジスタをトランジスタ118a〜118cとして使用することにより、非常に少ない部品点数で、図1に示した電源システム10と同一の動作を実現することができる。
【符号の説明】
【0086】
10,10−1 電源システム
11,12 出力線
13 信号線
20 SOC
100,120 電源IC
101 内部電源部
102 DC/DCコンバーター部
103 スイッチング部
104 停止保持部
105 異常検出部
106 電圧検出部
107 パワーオンリセット部
108 発振部
109 タイマー部
110 リセットアウト端子
111 スイッチ
112 ゲート
113 電圧監視部
114,115 抵抗
116 コイル
117 コンデンサー
118a〜c トランジスタ
121 イネーブル端子
201,202 電源端子
203 リセット端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源ICを有し、該複数の電源ICのそれぞれが、当該電源ICに設定された電圧値の電源電圧を生成して負荷へ出力する電源システムであって、
前記複数の電源ICのうち第1の電源ICから出力された電源電圧を分圧した分圧電圧を生成する分圧電圧生成部と、
前記第1の電源ICから出力された電源電圧の電圧値を検出する電圧監視部と、
前記複数の電源ICのうち前記第1の電源IC以外の第2の電源ICから出力された電源電圧の電圧値を検出し、該検出された電圧値が、当該第2の電源ICに設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、前記分圧電圧の電圧値を変化させる分圧電圧調整部と、を有し、
前記第1の電源ICは、前記分圧電圧の電圧値を検出し、該検出された電圧値と所定の基準電圧値との差が所定値以上である場合、電源電圧の生成を停止し、
前記第2の電源ICは、前記電圧監視部にて検出された電圧値が、前記第1の電源ICに設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、電源電圧の生成を停止する電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電源システムにおいて、
前記分圧電圧生成部は、
前記第1の電源ICにて生成された電源電圧を前記負荷へ出力するための出力線に接続された第1の抵抗と、
前記第1の抵抗と直列に接続された第2の抵抗と、から構成され、
前記分圧電圧調整部は、
一端が外部から出力された電圧を受け付け、他端が前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点に接続されたスイッチと、
前記第2の電源ICから出力された電源電圧の電圧値を検出し、該検出された電圧値が、当該第2の電源ICに設定された電圧値に応じて予め決められた値以下に低下すると、前記スイッチをオンの状態にする制御部と、を有し、
前記第1の電源ICは、前記接続点の電圧値を検出し、該検出された電圧値と前記所定の基準電圧値との差が前記所定値以上である場合、電源電圧の生成を停止する電源システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電源システムにおいて、
前記スイッチの一端は、前記第1の電源ICに設定された電圧値よりも高い電圧値の電圧を受け付ける電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−65388(P2012−65388A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205504(P2010−205504)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】