説明

電源制御装置

【課題】安価な回路構成で、機器を使用していない間の待機電力を無くす電源制御装置を提供する。
【解決手段】制御回路部19と、第1降圧回路部20と、加熱ヒータ8と、制御回路部19によって導通可能な接続状態及び導通不可能な遮断状態に切り換えられる第1スイッチ21と、押圧時のみオン状態となる第2スイッチ22を有する起動回路部23と、を備え、制御回路部19は、第2スイッチ22が押圧されることで、加熱ヒータ8を介して電源ポート24に電源51から電源電流の供給を受けて起動し、かつ、第1スイッチ21をオン状態に切り換え、第2スイッチ22がオフ状態に切り換わった後は、加熱ヒータ8を介さずに第1スイッチを介して電源ポート24に電源51から電源電流の供給を受けることで、第1スイッチ21をオン状態に維持し続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ヒータを負荷として用いる電気機器において、安価な回路構成で、機器を使用していない間の待機電力を無くす電源制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネ志向の高まりにより、様々な電気機器において、機器を使用していない間の待機電力を無くすことが求められている。例えば、洗濯機等の電気機器において、待機時の電力消費を無くす電源制御装置として、特許文献1に示すようなものがある。
【0003】
この特許文献1の電源制御装置は、図7に示すように、給水弁、排水弁及び、モータなどの負荷39と、負荷39に直列に接続されたスイッチング素子40と、負荷39をスイッチング素子40を介して制御するマイコン41と不揮発性メモリ42よりなる制御回路部43と、押圧時のみ閉成する電源投入スイッチ44と電流制限抵抗45よりなる起動部46と、制御回路部43によって制御されるリレー制御コイル47と、リレー制御コイル47により開閉されるリレー48とからなり、交流電源51に起動部46及び、リレー48を並列に接続し、これらを制御回路部43に対して直列に設けた構成になっている。なお、電流制限抵抗45は、電源投入スイッチ44を押圧した際に流れる電源電流を制限する役割を有している。
【0004】
起動時には、電源投入スイッチ44の押圧により、制御回路部43のマイコン41に電源電流が供給され、マイコン41が起動する。そして、起動したマイコン41は、交流電源51と制御回路部43の間に設けられたリレー48がオン状態となるようにリレー制御コイル47を制御する。また、定常時には、マイコン41は、スイッチング素子40を制御することにより、負荷39について所定の動作を行う。更に、待機時には、制御回路部43による制御プログラムの終了に基づき、リレー48をオフ状態となるようにリレー制御コイル47を制御して交流電源51を遮断する。これにより、待機時の電力消費を無くすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−136567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加熱ヒータを負荷として用いる電気ケトルなどの電気機器の場合、電源スイッチをオンにすると同時に加熱ヒータにも電源電流を流して湯水等を加熱するという商品の特性上、また、コストを抑える上で、特許文献1のように、負荷を制御するスイッチング素子のような部品を加熱ヒータに直列に設ける必要はない。
【0007】
しかしながら、特許文献1の電源制御装置を電気ケトルに用いる場合、電源投入スイッチの押圧によりマイコンを起動させるためには、スイッチング素子等の加熱ヒータを制御する部品を必ず設ける必要がある。すなわち、加熱ヒータを制御する部品を設けなかった場合、制御回路部にかかる電圧は、電流制限抵抗と加熱ヒータで分圧された電圧値となる。そして、加熱ヒータの抵抗値は通常数Ω程度であり、通常数kΩ以上である電流制限抵抗の抵抗値と比べて非常に小さいため、マイコンを起動するために必要となる電圧を確保できないためである。
なお、電流制限抵抗を設けない場合であれば、負荷を制御する部品を設けなくてもマイコンを起動することが可能である。しかし、電流制限抵抗を設けない場合、電源投入スイッチを操作した際に、大電流が流れることによって、電源投入スイッチが損傷してしまう問題が生じてしまう。
【0008】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、加熱ヒータを負荷として用いる電気機器において、安価な回路構成で、機器を使用していない間の待機電力を無くす電源制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る電源制御装置の特徴構成は、制御回路部と、
電源と制御回路部の基準ポートとの間に直列に設けられた第1降圧回路部と、
制御回路部と第1降圧回路部とに対して並列に設けられた加熱ヒータと、
制御回路部の電源ポート及び加熱ヒータの電源ポート接続側と、電源との間に設けられた、制御回路部によって導通可能な接続状態及び導通不可能な遮断状態に切り換えられる第1スイッチと、
第1スイッチの電源側と基準ポートとの間に設けられ、押圧時のみオン状態となる第2スイッチを有する起動回路部と、を備え、
制御回路部は、第2スイッチが押圧されることで、加熱ヒータを介して電源ポートに電源から電源電流の供給を受けて起動し、かつ、第1スイッチをオン状態に切り換え、第2スイッチがオフ状態に切り換わった後は、加熱ヒータを介さずに前記第1スイッチを介して電源ポートに電源から電源電流の供給を受けることで、第1スイッチをオン状態に維持し続ける点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、加熱ヒータの抵抗値は通常数Ω程度と非常に低いことから、一つの導線と見立てて利用することにより、電源→加熱ヒータ→電源ポートのルートが形成される。そして、起動回路部の一端を基準ポートと接続し、他端を第1スイッチの電源側に接続したことにより、電源→加熱ヒータ→電源ポート→制御回路部→基準ポート→起動回路部→電源のルートが形成される。従って、第2スイッチをオン状態にすることにより、上記ルートを通る閉回路(第1閉回路)が形成され、電源から電源電流が供給されることにより起動した制御回路部が第1スイッチをオン状態に切り換える。その後、第2スイッチをオフ状態にした場合には、第1閉回路は形成されなくなるが、第1スイッチはオン状態となっているため、電源→第1スイッチ→電源ポート→制御回路部→基準ポート→第1降圧回路部→電源の閉回路(第2閉回路)が形成されているため、制御回路部へ電源電流を供給し続けることが可能となる。
一方、機器を使用していない間は、第1スイッチ及び、第2スイッチはともにオフ状態となっており、第1閉回路及び、第2閉回路はともに形成されないため、電源電流は流れることはなく、待機電力を無くすことが可能となる。
【0011】
本発明に係る電源制御装置の別の特徴構成は、第1降圧回路部は、電源と制御回路部の基準ポートとの間に抵抗及びコンデンサを並列に設け、かつ、電源ポートと基準ポートとの間にダイオードを設けた構成からなる点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、第2閉回路に電源電流が流れる場合において、第1降圧回路部での発熱を低く抑えることが可能となる。すなわち、電源電圧を基準とした場合、コンデンサに流れる電流は位相が90度進む関係にあるため、コンデンサで電力の消費、つまり、発熱を生じることはなく、また、コンデンサと並列に接続された抵抗の値を、コンデンサの容量リアクタンスに比べて十分に高い値に設定することにより、第1降圧回路部に流れる電流のほとんどが、並列に接続された抵抗側ではなく、コンデンサ側に流れることになり、抵抗はほとんど発熱を生じることがないためである。
したがって、第1降圧回路部は、発熱をほとんど生じることがないため、発熱の対策等の開発上の負担を軽減することが可能となる。また、余分な放熱部品等を追加する必要がないため、コスト面での負担も軽減することが可能となる。
【0013】
本発明に係る電源制御装置の更に別の特徴構成は、起動回路部は、第2スイッチと第2スイッチと直列に接続された第2降圧回路部とからなる点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、第2降圧回路部の抵抗成分の大きさを変えることによって、第1閉回路に流れる電源電流の大きさを調整することが可能となる。第1閉回路が形成されたときに必要となる電流量は、電源制御装置の起動時に必要となる電流量、すなわち、制御回路部が起動し、かつ、第1スイッチをオン状態にするのに必要な電流量があれば足りる。一方、第2閉回路が形成されたときに必要となる電流量は、制御回路部の起動を維持し、第1スイッチをオン状態に維持する電流量に加えて、例えば、ブザーによる報知や発光素子の点灯など定常時の動作に必要となる電流量も必要となり、通常は、起動時に必要となる電流量よりも大きくなる。
したがって、第1閉回路に流れる電流量は、第2閉回路に流れる電流量以下で足り、また、第1閉回路と第2閉回路は異なる閉回路を形成しているため、第2閉回路に必要な電流量を考慮する必要はなく、第1閉回路に流れる電流量を小さくすることが可能となる。そのため、第2スイッチには、電流定格の小さい、安価で小型のスイッチを用いることが可能となる。
【0015】
本発明に係る電源制御装置の更に別の特徴構成は、加熱ヒータによって加熱される被加熱物の温度を検出する温度検出手段を備え、制御回路部は、温度検出手段により所定の温度を検出すると、第1スイッチをオフ状態にする点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、制御回路部は、温度検出手段により所定の温度を検出すると、所定の動作が完了したと判断して、直ちに第1スイッチをオフ状態にすることが可能となる。第1スイッチ及び、第2スイッチはともにオフ状態となっており、第1閉回路及び、第2閉回路はともに形成されないため、電源電流は流れることはなく、待機電力を無くすことが可能となる。
また、所定の動作が完了した際、制御回路部が第1スイッチをオフ状態にするので、待機電力を無くすためにコンセントを抜く等の手間を省くことが可能となる。
【0017】
本発明に係る電源制御装置の別の特徴構成は、電源制御装置を備えた電気製品である点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、電気製品に待機電力を無くすことが可能な電源制御装置を備えているため、ユーザは、家庭において機器を使用していない間の待機電力を無くすことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電源制御装置では、機器を使用していない間は、第1スイッチ及び第2スイッチがともにオフ状態となるため、加熱ヒータや制御回路等に電源電流は流れることはなく、待機電力を無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る電源制御装置を搭載した電気ケトルの外観を示す斜視図
【図2】図1の電気ケトルの分離状態を示す斜視図
【図3】図1の電気ケトルの縦断面図
【図4】本発明の実施形態に係る電源制御装置のブロック図
【図5】電気ケトルにおける電源制御装置の回路図
【図6】第2閉回路が構成されたときの制御を示すフローチャート
【図7】従来の電源制御装置の回路図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0022】
本発明の電源制御装置を有する製品の一例である電気ケトルは、図1〜図3に示すように、ケトル本体Kと、ケトル本体Kが載置される電源プレートPとを備えている。
【0023】
図1及び図2に示すように、ケトル本体Kの本体肩部4の下側には、ステンレス製の円筒形状の本体胴部6が設けられている。更に、本体胴部6の下側には、樹脂製の有底円筒状の本体底部7が設けられていて、ケトル本体Kの外郭部が構成されている。
また、ケトル本体Kの外郭部には、ケトル本体Kを持ち上げるための把手2が設けられるとともに、貯留部1内の湯水を注ぐ注ぎ口3が樹脂製の円筒形状の本体肩部4に一体成型されて設けられている。これらは、把手2と注ぎ口3が、本体肩部4の中心に対して、互いに反対側に位置している。そして、把手2を把持してケトル本体Kを持ち上げて傾けることにより、貯留部1内の湯水を注ぎ口3から注がれる。
【0024】
図2及び図3に示すように、ケトル本体Kの内部には、湯水を貯留する貯留部1が設けられている。貯留部1の下側には、貯留部1内の湯水を加熱する加熱ヒータ8が設けられ、電源から供給される電源電流を加熱ヒータ8等に供給する受電機構9が本体底部7の底面の中央部に位置する状態で設けられている。
【0025】
本体底部7の外周部には、電気ケトルの動作を開始する開始スイッチ22と、動作を停止する停止スイッチ32を有する操作パネル14が設けられており、その内側には、操作基板15(図5参照)が固定されている。そして、本体底部7内側の底には、基板ホルダー16が設けられており、更に、基板ホルダー16の内側には、操作基板15とリード線により接続された電源制御基板17が設けられている。
【0026】
本体肩部4の上方には、開口部を開閉する円盤状の蓋体5が設けられている。また、蓋体5には、加熱ヒータ8により加熱された貯留部1内の蒸気を外部へ放出するための蒸気通路11と、その蒸気通路11から分岐する蒸気温度検出用の蒸気通路12が形成されている。そして、蒸気通路12には、温度センサー13が設けられている。温度センサー13は、蒸気温度を検出することにより、貯留部1内の湯水が沸騰しているか否かを判断するために用いられる。
【0027】
電源プレートPには、電源コード(図示省略)を通して供給される電源電流を外部に出力する給電機構10が上面の中央部に位置する状態で設けられ、ケトル本体Kを電源プレートPに載置した給電姿勢において、受電機構9と給電機構10とが導通状態に接続されるように構成される。
【0028】
次に、本発明に係る電源制御装置の概要について説明する。
【0029】
図4(A)〜図4(C)は、電気ケトルが加熱動作を行っていない間の待機電力を無くすことを可能とする電源制御装置の概要を説明するブロック図である。
図4(A)に示すように、電源制御装置18は、制御回路部19と、第1降圧回路部20と、第1スイッチ21と、開始スイッチ22(以下「第2スイッチ」と称する。)を有する起動回路部23とを備えており、電源51及び加熱ヒータ8が接続されている。
【0030】
第1降圧回路部20は、電源51と制御回路部19の基準ポート25との間に直列に接続されている。また、第1スイッチ21は、電源51と制御回路部19の電源ポート24との間に直列に接続されている。更に、起動回路部23は、第1スイッチ21の電源51側と基準ポート25に接続されている。そして、加熱ヒータ8は、制御回路部19と第1降圧回路部20とに対して並列に接続されている。
【0031】
電気ケトルの動作を開始する第2スイッチ22が押圧された場合、図4(B)に太線で示すように、電源51→加熱ヒータ8→電源ポート24→制御回路部19→基準ポート25→起動回路部23→電源51の第1閉回路が形成される。そして、制御回路部19は、加熱ヒータ8を介して電源電流の供給を受けて起動し、その後、第1スイッチ21をオン状態に切り換える制御を行う。
【0032】
第2スイッチ22がオフ状態に切り換わった後は、図4(C)に太線で示すように、電源51→第1スイッチ21→電源ポート24→制御回路部19→基準ポート25→第1降圧回路部20→電源51の第2閉回路が形成される。そのため、制御回路部19は、加熱ヒータ8を介さずに電源電流の供給を受けることができ、第1スイッチ21をオン状態に維持し続けることが可能となる。
【0033】
一方、第1スイッチ21及び、第2スイッチ22がともにオフ状態の場合、第1閉回路及び、第2閉回路はともに形成されない。そのため、電源電流は流れることはなく、待機電力を無くすことが可能となる。
なお、加熱ヒータ8ではなく導線を用いた場合、第1スイッチ21がオン状態となったときに電源51が短絡状態となるため、導線を用いることはできない。また、抵抗値の低い抵抗を用いた場合、抵抗が異常に発熱してしまうため、用いることができない。
本発明では、電気ケトル等の製品で用いられている加熱ヒータ8が通常数Ω程度の抵抗値であることに着目し、一つの導線と見立てて利用することにより、発明を実現可能としている。
【0034】
次に、本発明に係る電源制御装置について、具体的に説明する。
【0035】
図5は、電気ケトルにおける電源制御装置18の更に具体的な回路図である。
電源制御装置18は、操作基板15と電源制御基板17とから構成されており、操作基板15と電源制御基板17は、リード線により接続されている。また、電源51と、貯留部1内の湯水を加熱する加熱ヒータ8と、蒸気温度検出用の温度センサー13は、電源制御基板17に接続されている。
【0036】
電源制御基板17は、制御回路部19と、第1降圧回路部20と、第1スイッチ21とを備えている。
第1降圧回路部20は、抵抗26とコンデンサ27とダイオード28とから構成されている。そして、抵抗26とコンデンサ27は並列に接続されており、その一端は基準ポート25と接続され、他端は電源51と接続されている。また、ダイオード28は、その一端は電源ポート24と接続され、他端は基準ポート25と接続されている。
第1スイッチ21は、制御回路部19によって導通可能な接続状態及び導通不可能な遮断状態に切り換えられるリレーから構成されている。そして、第1スイッチ21の一端は電源51と接続され、他端は電源ポート24と接続されている。
制御回路部19は、電源51からの電源電流が、電源ポート24からダイオード34を通って各部へ流れ込む。ツェナーダイオード38は、その一端はダイオード34と接続され、他端は基準ポート25と接続されており、電源電流が流れることにより、両端間に約24Vの電位差を生じさせる。また、マイコン29からの信号によりオンオフ制御するトランジスタ33と、第1スイッチ21を開閉制御するリレー制御コイル30とは直列に接続されており、コンデンサ36と共に、ツェナーダイオード38に並列に接続されている。
ツェナーダイオード37と抵抗49とは直列に接続されており、ツェナーダイオード37の一端はダイオード34と接続され、抵抗49の一端は基準ポート25と接続されている。そして、ツェナーダイオード37は電源電流が流れることにより、両端間に約5Vの電位差を生じさせる。また、マイコン29及びコンデンサ35は、ツェナーダイオード37に並列に接続されている。
【0037】
温度センサー13は抵抗50と直列に接続されており、ツェナーダイオード37に並列に接続され、直列に接続された両端間には約5Vの電位差が生じている。そして、温度センサー13の抵抗値と抵抗50との分圧値がマイコン29に入力される。
また、加熱ヒータ8は制御回路部19と第1降圧回路部20とに対して並列に接続されている。
【0038】
操作基板15は、起動回路部23と停止スイッチ32とを備えている。
起動回路部23は、電流制限抵抗31と加熱動作を開始する第2スイッチ22とから構成されている。そして、電流制限抵抗31と第2スイッチ22は直列に接続されており、第2降圧回路部である電流制限抵抗31の一端は第1スイッチ21の電源51側と接続され、第2スイッチ22の一端は基準ポート25と接続されている。また、停止スイッチ32は、その一端はマイコン29と接続され、他端は基準ポート25と接続されている。
【0039】
第2スイッチ22は押圧時のみオン状態となるマイクロスイッチである。第2スイッチ22がオフ状態で、かつ、第1スイッチ21もオフ状態においては、電源51と電源制御基板17と操作基板15との間で閉回路が形成されないため、加熱ヒータ8やマイコン29等に電源電流が流れることはない。そのため、電気ケトルの電源コードをコンセントに差し込んだ状態であっても、待機電力の消費は一切発生しない。
【0040】
一方、第2スイッチ22がオン状態においては、電源51→加熱ヒータ8→電源ポート24→制御回路部19→基準ポート25→起動回路部23→電源51の第1閉回路が形成される。電源ポート24から制御回路部19に流れ込んだ電源電流はマイコン29にも流れ込み、電源電流が供給されたマイコン29が起動する。起動したマイコン29は、トランジスタ33をオン状態にしてリレー制御コイル30に電源電流を流す制御を行う。そして、リレー制御コイル30に電源電流が流れることによって、第1スイッチ21がオン状態となる。
【0041】
第2スイッチ22がオフ状態になった場合においても、第1スイッチ21がオン状態であるため、マイコン29に電源電流を供給し続けることが可能となる。すなわち、交流電源である電源51の第1スイッチ21側の電圧が高い場合は、電源51→第1スイッチ21→電源ポート24→制御回路部19→基準ポート25→コンデンサ27→電源51の第2閉回路を電源電流は流れることによって、マイコン29に電源電流が供給される。一方、第1降圧回路部20側の電圧が高い場合は、電源51→コンデンサ27→ダイオード28→第1スイッチ21→電源51のルートで電源電流が流れる。この場合、ダイオード34があるため、制御回路部19側へ電源電流は流れることはないが、マイコン29は電荷が充電されているコンデンサ35から電流の供給を受けるため、トランジスタ33をオン状態に維持することが可能となる。また、リレー制御コイル30にはコンデンサ36に充電されていた電荷が供給されるため、第1スイッチ21をオン状態に維持することが可能となる。
なお、マイコン29は、ツェナーダイオード37により電圧が5Vに維持されており、また、トランジスタ33とリレー制御コイル30の両端電圧は、ツェナーダイオード38により電圧が24Vに維持されている。
【0042】
本実施例では、抵抗26の抵抗値をR=390kΩ、コンデンサ27の容量をC=1uFに設定している。したがって、コンデンサ27の容量リアクタンスXcは、電源51の周波数が60Hzの場合、以下の式から2.6kΩとなる。
Xc=1÷(2×π×f(Hz)×C(F))=1÷(2×π×60×1×10−6
Xcの値は、抵抗26の抵抗値よりも十分に小さいため、閉回路に流れる電源電流は、抵抗26側にはほとんど流れることはなく、大部分が抵抗26と並列に接続されたコンデンサ27側に流れることになる。そのため、抵抗26の発熱は、ほとんど生じることはない。また、電源51を基準とした場合、コンデンサ27に流れる電源電流は、位相が90度進む関係にあるため、コンデンサ27で電力の消費はなく、コンデンサ27は発熱を生じない。従って、第1降圧回路部20は、発熱がほとんど生じることがないため、発熱対策等の開発上の負担を軽減することが可能となる。また、余分な放熱部品等を追加する必要がないため、コスト面での負担も軽減することが可能となる。
なお、抵抗26は、電気ケトルが動作中にコンセントが抜かれた場合や、停止スイッチ32が押された場合に、コンデンサ27に充電された電荷を素早く放電する役割を有している。したがって、第1降圧回路部20は、抵抗26を有していない場合であっても、本発明の目的である待機電力を無くすことは可能である。
【0043】
第1閉回路が形成されたときに必要となる電流量は、マイコン29が起動するために必要な電流量と、第1スイッチ21をオン状態にするためにリレー制御コイル30に流す必要のある電流量、すなわち、起動時に必要な電流量があれば足りる。
一方、第2閉回路が形成されたときは、上記の内容に加えて、図示はしていないが、例えば、動作中であることを表示するLEDの点灯や、ブザー報知など、定常時に必要となる電流量が必要なため、第1閉回路が形成されたときと比べて、必要となる電流量は大きくなる。
第1閉回路と第2閉回路は異なる閉回路を形成するため、第1閉回路に必要となる電流量は、第2閉回路に必要となる電流量を考慮する必要はない。したがって、電流制限抵抗31の抵抗値を調整することにより、第1閉回路に流す電流量を小さくすることができる。その結果、第2スイッチ22には電流定格の小さい安価で小型のスイッチを用いることが可能となる。
【0044】
次に、第1閉回路が形成された後のマイコン29の制御について具体的に説明する。
【0045】
第1閉回路が形成されると、図6に示すように、マイコン29は、ステップS1で起動処理を行った後、ステップS2でトランジスタ33をオン状態に維持することにより、第1スイッチ21がオン状態に維持される。そして、第2スイッチ22がオフ状態になると、第1スイッチ21がオン状態となって、第2閉回路が形成されるため、加熱ヒータ8にも電源電流が流れ、貯留部1内の湯水が加熱される。ステップS3では、温度センサー13により検出した蒸気の温度が予め設定している設定温度以上か否かを判断している。設定温度以上になった場合は、貯留部1内の湯水が沸騰したと判断し、ステップS5で、トランジスタ33をオフ状態にすることにより、第1スイッチ21がオフ状態となる。そして、加熱ヒータ8及び、マイコン29等への電源電流が遮断され、加熱動作が終了する。
一方、ステップS3において、設定温度未満の場合は、ステップ4に進み、停止スイッチ32がオン状態か否かを判断している。停止スイッチ32がオン状態になっている場合は、ステップS5に進み、上記と同様の制御を行い、加熱動作が終了する。また、停止スイッチ32がオフ状態になっている場合は、ステップS2に戻り、前述した内容と同様の制御がくり返し行われる。
【0046】
なお、本発明の電源制御装置は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0047】
例えば、前記実施形態では、第1降圧回路部20として、抵抗26及びコンデンサ27を並列に設け、かつ、電源ポート24と基準ポート25との間にダイオード28を設けた構成としているが、抵抗のみ又は、コンデンサのみで第1降圧回路部20を構成してもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、第1スイッチ21にリレーを設けた構成としているが、フォトトライアックを用いて構成しても良い。
【0049】
更に、前記実施形態では、電気ケトルに用いられる場合を例示したが、加熱ヒータを用いる他の電気機器に用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 貯留部
8 加熱ヒータ
13 温度センサー(温度検出手段)
18 電源制御装置
19 制御回路部
20 第1降圧回路部
21 第1スイッチ
22 第2スイッチ(開始スイッチ)
23 起動回路部
24 電源ポート
25 基準ポート
26 抵抗
27 コンデンサ
28 ダイオード
31 電流制限抵抗(第2降圧回路部)
51 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路部と、
電源と前記制御回路部の基準ポートとの間に直列に設けられた第1降圧回路部と、
前記制御回路部と前記第1降圧回路部とに対して並列に設けられた加熱ヒータと、
前記制御回路部の電源ポート及び前記加熱ヒータの前記電源ポート接続側と、前記電源との間に設けられ、前記制御回路部によって導通可能な接続状態及び導通不可能な遮断状態に切り換えられる第1スイッチと、
前記第1スイッチの電源側と前記基準ポートとの間に設けられ、押圧時のみオン状態となる第2スイッチを有する起動回路部と、を備え、
前記制御回路部は、前記第2スイッチが押圧されることで、前記加熱ヒータを介して前記電源ポートに前記電源から電源電流の供給を受けて起動し、かつ、前記第1スイッチをオン状態に切り換え、前記第2スイッチがオフ状態に切り換わった後は、前記加熱ヒータを介さずに前記第1スイッチを介して前記電源ポートに前記電源から電源電流の供給を受けることで、前記第1スイッチをオン状態に維持し続けることを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記第1降圧回路部は、前記電源と前記制御回路部の基準ポートとの間に抵抗及びコンデンサを並列に設け、かつ、前記電源ポートと前記基準ポートとの間にダイオードを設けた構成からなることを特徴とする請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記起動回路部は、前記第2スイッチと前記第2スイッチと直列に接続された第2降圧回路部とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記加熱ヒータによって加熱される被加熱物の温度を検出する温度検出手段を備え、前記制御回路部は、前記温度検出手段により所定の温度を検出すると、前記第1スイッチをオフ状態にすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれかに記載の電源制御装置を備えた電気製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−55114(P2012−55114A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196954(P2010−196954)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】