説明

電源回路およびその出力制御方法

【課題】電源回路のより好ましい出力制御を実現する。
【解決手段】直流の入力電圧を変圧して直流の出力電圧を生成する電源主回路(1)と、出力電圧が第1の電圧よりも低い場合に、出力をアクティブにする出力短絡保護回路(5)と、入力電圧と出力電圧との差電圧が第2の電圧よりも低い場合に、出力をアクティブにする差電圧検出回路(6)と、出力短絡保護回路(5)の出力がアクティブかつ差電圧検出回路(6)の出力がインアクティブの場合に、電源主回路(1)を、再起動が必要なシャットダウン状態にする制御回路(7)と、入力電圧が第3の電圧よりも低い場合に、シャットダウン状態を解除するリセット回路(4)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関し、特に、低電圧入力および出力短絡から電源回路を保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーやACアダプタ等から供給される直流電圧を所望の電圧に変換して出力する電源回路が多くの電子機器に用いられている。一般に、電源回路は、出力短絡が発生すると、過電流による部品の破壊等を回避するために出力を停止する出力短絡保護回路を備えている。さらに、入力電圧検出回路を備え、入力電圧が低下し過ぎたことを検出した場合に出力短絡保護回路を動作させて出力を停止するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−282964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電源回路は、出力停止に関して入力電圧の低下と出力短絡とを同列に扱っているため、入力電圧の低下によって出力電圧が低下した場合でも、出力短絡が発生したとみなして再起動が必要なシャットダウン状態となってしまう。しかし、出力停止の原因が入力側にある場合、すなわち、入力電圧の低下によって出力が停止した場合には、入力電圧が回復したら出力が自動的に復帰することが好ましい。
【0005】
かかる点に鑑みて、本発明は、電源回路のより好ましい出力制御を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明によって次のような解決手段を講じた。すなわち、直流の入力電圧を変圧して直流の出力電圧を生成する電源主回路と、出力電圧が第1の電圧よりも低い場合に、出力をアクティブにする出力短絡保護回路と、入力電圧と出力電圧との差電圧が第2の電圧よりも低い場合に、出力をアクティブにする差電圧検出回路と、出力短絡保護回路の出力がアクティブかつ差電圧検出回路の出力がインアクティブの場合に、電源主回路を、再起動が必要なシャットダウン状態にする制御回路と、入力電圧が第3の電圧よりも低い場合に、シャットダウン状態を解除するリセット回路とを備えているものとする。
【0007】
これによると、入力電圧はそのままで出力電圧のみが下がり過ぎた場合に、出力短絡が発生したとみなして、電源主回路がシャットダウンされ、入力電圧を一旦遮断することでシャットダウン状態が解除される。すなわち、入力電圧の低下によって出力電圧が低下しても、電源主回路はシャットダウンしないため、再起動の必要がない。
【0008】
好ましくは、制御回路は、出力短絡保護回路の出力がアクティブかつ差電圧検出回路の出力がアクティブの場合に、電源主回路を、再起動が不要な出力停止状態にする。
【0009】
これによると、電源主回路は、入力電圧の低下に伴って出力電圧が下がり過ぎた場合に、再起動が不要な出力停止状態となり、入力電圧が回復すると自動的に通常状態に復帰する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、入力電圧の低下によって電源回路が頻繁にシャットダウンすることを防止し、電源回路の可用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る電源回路の構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る電源回路のタイミングチャートである。
【図3】第2の実施形態に係る電源回路の構成図である。
【図4】第2の実施形態に係る電源回路のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る電源回路の構成図である。電源主回路1は、例えばバッテリーやACアダプタ等から入力される直流電圧Vinを降圧し、直流電圧Voutを出力する。電源主回路1は、信号SDがある程度の期間、例えば、電圧Voutが0Vから出力下限電圧を上回るまでの起動時間以上アクティブ(例えば、Hレベル)であるときシャットダウン状態になる。また、電源主回路1は、信号RSTがアクティブ(例えば、Hレベル)になるとシャットダウン状態が解除される。電源主回路1は、例えば降圧型のDC−DCコンバータで構成することができる。
【0013】
リセット回路4は、電圧Vinが入力下限電圧よりも低い場合にリセット信号RSTをアクティブにする。入力下限電圧は、例えば、電源主回路1の動作電圧の下限値よりも少し高い電圧である。
【0014】
出力短絡保護回路5は、電圧Voutが出力下限電圧よりも低い場合に短絡検出信号SHをアクティブ(例えば、Hレベル)にする。出力下限電圧は、例えば、目標出力電圧の70%である。また、出力短絡保護回路5は、信号RSTがアクティブの場合にリセットされて信号SHをインアクティブ(例えば、Lレベル)にする。
【0015】
差電圧検出回路6は、電圧Vinと電圧Voutとの電圧差が最大差よりも低い場合に差電圧検出信号DEFをアクティブ(例えば、Hレベル)にする。最大差は、例えば、0.5Vである。
【0016】
制御回路7は、信号SHがアクティブかつ信号DEFがインアクティブ(例えば、Lレベル)である場合に、シャットダウン信号SDをアクティブにする。具体的には、制御回路7は、例えばNOT回路70とAND回路71とで構成することができる。
【0017】
次に、本実施形態に係る電源回路の動作を図2を参照して説明する。なお、便宜上各信号のアクティブをHレベル、インアクティブをLレベルとする。時刻t0では、電圧Vinおよび電圧Voutはともに0Vである。また、信号RST、SH、DEF、SDはすべてLレベルである。
【0018】
電圧Vinが入力下限電圧を上回り、信号RSTがLレベルとなると電圧Voutは上昇する。これにより、信号SDはHレベルとなるが、Hレベルを維持する時間が起動時間未満であるため電源主回路1はシャットダウンしない。電圧Vinおよび電圧Voutがそれぞれの下限電圧を上回ると、電源主回路1は通常状態となる。
【0019】
出力短絡や過負荷垂下等が発生すると、電圧Voutは低下して時刻t1で出力下限電圧を下回る。すると、信号SHはHレベルとなり、信号SDはHレベルとなる。時刻t1から時刻t2において、起動時間以上連続して信号SDがHレベルであるため、電源主回路1はシャットダウンする。シャットダウン後に、再起動操作が行われて電圧Vinは低下する。時刻t2で、電圧Vinが入力下限電圧を下回ると信号RSTはHレベルとなる。これにより、シャットダウン状態が解除されるとともに出力短絡保護回路5がリセットされて、信号SHはLレベルとなり、信号SDはLレベルとなる。再起動操作によって時刻t3で電圧Vinが上昇し始め、出力短絡や過負荷垂下等が解消されていれば、電源主回路1は通常状態となる。
【0020】
バッテリーの消耗等により電圧Vinが低下すると電圧Voutも低下し、時刻t4の直前で信号DEFはHレベルとなる。時刻t4で、電圧Voutが出力下限電圧を下回ると、信号SHはHレベルとなるが、信号DEFはHレベルであるため信号SDはLレベルのままである。したがって、電源主回路1はシャットダウンせず、出力下限電圧よりも低いながらも電圧Voutを出力し続ける。その後、電源を例えばACアダプタ等に接続することで電圧Vinが回復して上昇し始めると、それに伴って電圧Voutも回復する。
【0021】
以上、本実施形態によると、電圧Vinがそのままで電圧Voutのみが低下した状態が一定時間以上連続すると電源主回路1はシャットダウンする。すなわち、電圧Vinの低下では電源主回路1はシャットダウンしない。
【0022】
なお、過電流保護機能として、電源主回路1を例えば、過電流領域において出力電圧および出力電流がともに減少する特性を持つように構成するとよい。これによると、電圧Vinが低くかつ出力短絡が発生している場合に、シャットダウンしなくても電源回路を破壊等から保護することができる。
【0023】
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係る電源回路の構成図である。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。
【0024】
制御回路7Aは、信号RSTがアクティブの場合、あるいは信号SHおよび信号DEFがともにアクティブの場合に停止信号STをアクティブ(例えば、Hレベル)にする。すなわち、信号STは、信号RSTも兼ねている。具体的には、制御回路7Aのうち信号STの出力に係る回路部分は、例えばAND回路72とOR回路73とで構成することができる。電源主回路1は、信号STがアクティブの場合に、再起動が不要な出力停止状態になる。
【0025】
次に、本実施形態に係る電源回路の動作を図4を参照して説明する。時刻t0から時刻t1までの動作は図2の時刻t0から時刻t4までの動作と同様である。時刻t1で、電圧Voutが出力下限電圧を下回ると、信号SHはHレベルとなり、信号DEFがHレベルであるため、信号STはHレベルとなる。これにより、電源主回路1は出力停止状態となり、電圧Voutはさらに低下する。
【0026】
電圧Voutが低下すると、時刻t2で信号DEFはLレベルとなり、信号SDはHレベル、信号STはLレベルとなる。したがって、出力停止状態が解除されて電圧Voutは上昇する。電圧Voutが上昇すると、信号DEFがHレベルとなり、信号SDはLレベル、信号STはHレベルとなり、電源主回路1は再び出力停止状態となる。以後、同様の動作を繰り返す。その後、電圧Vinが回復すると電圧Voutも復帰する。
【0027】
以上、本実施形態によると、電圧Vinの低下に伴って電圧Voutが低下すると、再起動が不要な出力停止状態となる。そして、電圧Vinが回復すると電圧Voutも自動的に回復する。また、電圧Vinの低下に伴って電圧Voutが低下した場合に、電源主回路1が出力と停止とを繰り返すことで、電圧Vinが回復した場合にソフトスタートをかけることができ、出力負荷への突入電流を抑制することができる。
【0028】
なお、上記各実施形態では、便宜上、電源主回路1を降圧型のDC−DCコンバータとして説明したが、昇圧型のDC−DCコンバータを用いてもよい。また、電源主回路1で起動時間をカウントしているが、出力短絡保護回路5で起動時間をカウントしてもよい。すなわち、出力短絡保護回路5は、電圧Voutが出力下限電圧を下回る状態が起動時間以上続く場合に、信号SHをアクティブにすればよい。この場合、電源主回路1は信号SDがアクティブになるとすぐにシャットダウンするようにする。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る電源回路は、入力電圧の低下によって電源回路が頻繁にシャットダウンすることを防止することができるため、バッテリーやACアダプタなどの多様な電源電圧が接続される電子機器等に有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 電源主回路
4 リセット回路
5 出力短絡保護回路
6 差電圧検出回路
7、7A 制御回路
SH 短絡検出信号(第1の信号)
DEF 差電圧検出信号(第2の信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の入力電圧を変圧して直流の出力電圧を生成する電源主回路と、
前記出力電圧が第1の電圧よりも低い場合に、出力をアクティブにする出力短絡保護回路と、
前記入力電圧と前記出力電圧との差電圧が第2の電圧よりも低い場合に、出力をアクティブにする差電圧検出回路と、
前記出力短絡保護回路の出力がアクティブかつ前記差電圧検出回路の出力がインアクティブの場合に、前記電源主回路を、再起動が必要なシャットダウン状態にする制御回路と、
前記入力電圧が第3の電圧よりも低い場合に、前記シャットダウン状態を解除するリセット回路とを備えている
ことを特徴とする電源回路。
【請求項2】
請求項2の電源回路において、
前記制御回路は、前記出力短絡保護回路の出力がアクティブかつ前記差電圧検出回路の出力がアクティブの場合に、前記電源主回路を、再起動が不要な出力停止状態にする
ことを特徴とする電源回路。
【請求項3】
請求項1の電源回路において、
前記制御回路は、前記出力短絡保護回路の出力がアクティブかつ前記差電圧検出回路の出力がインアクティブの状態が所定時間以上続いた場合に、前記電源主回路を、前記シャットダウン状態にする
ことを特徴とする電源回路。
【請求項4】
直流の入力電圧を変圧して直流の出力電圧を生成する電源回路の出力を制御する方法であって、
前記出力電圧が第1の電圧よりも低い場合に、第1の信号をアクティブにするステップと、
前記入力電圧と前記出力電圧との差電圧が第2の電圧よりも低い場合に、第2の信号をアクティブにするステップと、
前記第1の信号がアクティブかつ前記第2の信号がインアクティブの場合に、前記電源回路を、再起動が必要なシャットダウン状態にするステップと、
前記入力電圧が第3の電圧よりも低い場合に、前記シャットダウン状態を解除するステップとを備えている
ことを特徴とする電源回路の出力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−101506(P2011−101506A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254610(P2009−254610)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】