説明

電源装置、それを用いた画像形成装置、電源装置の制御方法、及び電源装置の制御プログラム

【課題】省エネモード時の省電力性能が高い電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置600は、整流部601と、整流部601の出力を昇圧し一次直流電圧を出力するアクティブフィルタ部603と、一次直流電圧から二次直流電圧を生成するDC/DCコンバータ部605とを有している。動作モードが省エネモードに移行するとき、一次直流電圧Vdcが通常動作時の略2倍に昇圧され、その後、省エネモードでの動作時に、アクティブフィルタ部603が停止される。平滑用コンデンサC1に蓄えられるエネルギーは、通常動作時のエネルギーの略4倍となる。省エネモードでの動作時に平滑用コンデンサC1に蓄積されたエネルギーが供給されることで、アクティブフィルタ部603が停止してから長時間、交流電源101からの電力供給がない状態で、DC/DCコンバータ部605を動作させることが可能となり、スリープ時の消費電力が大幅に減少される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源装置、それを用いた画像形成装置、電源装置の制御方法、及び電源装置の制御プログラムに関し、特に、アクティブフィルタを有する電源装置、それを用いた画像形成装置、電源装置の制御方法、及び電源装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば画像形成装置(スキャナ機能、ファクシミリ機能、複写機能、プリンタとしての機能、データ通信機能、及びサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)、ファクシミリ装置、複写機、プリンタなど)などに用いられる電源装置としては、力率改善や高調波対策のためにアクティブフィルタを有するものがある。
【0003】
下記特許文献1には、このようなアクティブフィルタを用いた電源装置が開示されている。この電源装置は、機器の動作モードが省電力モード(省エネモード)であるときに、アクティブフィルタを動作停止状態にすることで消費電力を減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−90830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電源装置では、省エネモード時(スリープ時)において、単にアクティブフィルタが停止されるため、アクティブフィルタに蓄積されるエネルギーは小さい。そのため、省エネモード時において、DC/DCコンバータ部には、アクティブフィルタからのエネルギー供給はほとんど行われず、商用電源からのエネルギー供給が行われる。
【0006】
ところで、上記のような電源装置においては、省エネモード時の省電力性能をさらに向上させることが望まれている。
【0007】
この発明はそのような要請に鑑みてなされたものであり、省エネモード時の省電力性能が高い電源装置、それを用いた画像形成装置、電源装置の制御方法、及び電源装置の制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、通常動作モードの下での動作時よりも省電力化される省エネモードを動作モードとして動作可能な電源装置は、交流を整流する整流部と、整流部の出力を昇圧し一次直流電圧を出力するアクティブフィルタ部と、アクティブフィルタ部から出力された一次直流電圧から二次直流電圧を生成するDC/DCコンバータ部と、動作モードが通常動作モードから省エネモードに移行するとき、一次直流電圧を通常動作モードの下での通常動作時よりも昇圧させ、その後、省エネモードの下での動作時にアクティブフィルタ部を停止させるフィルタ制御部とを備える。
【0009】
好ましくはフィルタ制御部は、動作モードが通常動作モードから省エネモードに移行するとき、一次直流電圧を通常動作モードの下での通常動作時の略2倍に昇圧させる。
【0010】
好ましくはDC/DCコンバータ部は、SiC又はGaNを用いたスイッチング素子を有する。
【0011】
この発明の他の局面に従うと、画像形成装置は、上述のいずれかに記載の電源装置を有し、DC/DCコンバータ部により生成された二次直流電圧を用いて動作する。
【0012】
この発明のさらに他の局面に従うと、通常動作モードの下での動作時よりも省電力化される省エネモードを動作モードとして動作可能であり、交流を整流する整流部と、整流部の出力を昇圧し一次直流電圧を出力するアクティブフィルタ部と、アクティブフィルタ部から出力された一次直流電圧から二次直流電圧を生成するDC/DCコンバータ部とを備える電源装置の制御方法は、動作モードが通常動作モードから省エネモードに移行するとき、一次直流電圧を通常動作モードの下での通常動作時よりも昇圧させる昇圧制御ステップと、昇圧ステップにより一次直流電圧が昇圧された後、省エネモードの下での動作時にアクティブフィルタ部を停止させる停止制御ステップとを備える。
【0013】
この発明のさらに他の局面に従うと、通常動作モードの下での動作時よりも省電力化される省エネモードを動作モードとして動作可能であり、交流を整流する整流部と、整流部の出力を昇圧し一次直流電圧を出力するアクティブフィルタ部と、アクティブフィルタ部から出力された一次直流電圧から二次直流電圧を生成するDC/DCコンバータ部とを備える電源装置の制御プログラムは、動作モードが通常動作モードから省エネモードに移行するとき、一次直流電圧を通常動作モードの下での通常動作時よりも昇圧させる昇圧制御ステップと、昇圧ステップにより一次直流電圧が昇圧された後、省エネモードの下での動作時にアクティブフィルタ部を停止させる停止制御ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
これらの発明に従うと、動作モードが通常動作モードから省エネモードに移行するとき、アクティブフィルタ部が出力する一次直流電圧が通常動作モードの下での通常動作時よりも昇圧され、その後アクティブフィルタ部が停止される。したがって、省エネモード時の省電力性能が高い電源装置、それを用いた画像形成装置、電源装置の制御方法、及び電源装置の制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置のハードウェア構成を示す側面図である。
【図2】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】電源装置の構成を示す回路図である。
【図4】電源装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置について説明する。
【0017】
画像形成装置は、用紙などをローラにより搬送しその用紙などに電子写真方式により印刷(プリント)を行うプリント機能や、文書データなどをHDD(Hard Disk Drive)などに保存するサーバ機能などを有している。画像形成装置は、電源装置を有し、電源装置によって交流電源から生成された直流電圧を用いて、種々の機能を実行する。
【0018】
[実施の形態]
【0019】
まず、本実施の形態に係る画像形成装置の全体の構成について説明する。
【0020】
[画像形成装置の全体の構成]
【0021】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置のハードウェア構成を示す側面図である。
【0022】
図を参照して画像形成装置1は、給紙カセット3と、排紙トレイ5と、プリント部30とを備える。
【0023】
給紙カセット3は、画像形成装置1の下部に、画像形成装置1の筐体に抜き差し可能に配置されている。各給紙カセット3に装てんされた用紙は、印字時に、1枚ずつ給紙カセット3から給紙され、プリント部30に送られる。給紙カセット3の数は1つに限られず、それより多くてもよい。
【0024】
排紙トレイ5は、画像形成装置1の筐体の上方に配置されている。排紙トレイ5には、プリント部30により画像が形成された用紙が筐体の内部から排紙される。
【0025】
プリント部30は、画像形成装置1の筐体の内部に配置されている。プリント部30は、おおまかに、用紙搬送部200と、トナー像形成部300と、定着装置400と、駆動部(図2に図示)500とを有している。プリント部30は、いわゆるタンデム方式でCMYKの4色の画像を合成し、用紙にカラー画像を形成可能に構成されている。
【0026】
用紙搬送部200は、給紙ローラ210、搬送ローラ220、排紙ローラ230などで構成されている。給紙ローラ210、搬送ローラ220、及び排紙ローラ230は、それぞれ、例えば対向する2つのローラで用紙を挟みながらそのローラを回転させて用紙を搬送する。給紙ローラ210は、給紙カセット3から用紙を1枚ずつ給紙する。給紙ローラ210により、用紙が画像形成装置1の筐体の内部に給紙される。搬送ローラ220は、給紙ローラ210により給紙された用紙をトナー像形成部300に搬送する。また、搬送ローラ220は、定着装置400を経由した用紙を排紙ローラ230に搬送する。排紙ローラ230は、搬送ローラ220により搬送された用紙を画像形成装置1の筐体の外部に排出する。用紙搬送部200は、これら以外にも用紙を搬送するためなどに用いられるローラを有していてもよい。
【0027】
トナー像形成部300は、4色のトナーボトル301Y,301M,301C,301K(以下、これらをまとめてトナーボトル301と呼ぶことがある)と、中間転写ベルト305と、転写ローラ307と、4組の現像ユニット310Y,310M,310C,310K(以下、これらをまとめて現像ユニット310と呼ぶことがある)と、レーザスキャンユニット320などで構成されている。
【0028】
イエロートナーボトル301Y、マゼンタトナーボトル301M、シアントナーボトル301C、ブラックトナーボトル301Kは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)のCMYK各色のトナーを貯蔵する。
【0029】
中間転写ベルト305は、環状であり、2つのローラ間に架けわたされている。中間転写ベルト305は、用紙搬送部200と連動して回転する。転写ローラ307は、中間転写ベルト305のうち一方のローラに接触している部分に対向するように配置されている。用紙は、中間転写ベルト305と転写ローラ307との間で挟持されながら搬送される。
【0030】
現像ユニット310は、感光体311(現像ユニット毎に感光体311Y,311M,311C,311Kが設けられる。)、現像装置、クリーナ、及び帯電器などを含む。イエロー現像ユニット310Y,マゼンタ現像ユニット310M,シアン現像ユニット310C,ブラック現像ユニット310Kは、それぞれY、M、C、Kの画像を形成するために配置されている。現像ユニット310は、中間転写ベルト305の直下に並置されている。レーザスキャンユニット320は、各感光体311上にレーザ光を走査可能に配置されている。
【0031】
トナー像形成部300において、レーザスキャンユニット320は、YMCKの各色別の画像データに基づいて、帯電器により一様に帯電した感光体311上に潜像を形成する。現像装置は、各感光体311に各色別のトナー像を形成する。各感光体311は、トナー像を中間転写ベルト305に転写し、その中間転写ベルト305上に、用紙に形成するトナー像の鏡像を形成する(1次転写)。その後、高電圧が印加された転写ローラ307により、中間転写ベルト305に形成されたトナー像が用紙に転写され、用紙上にトナー像が形成される(2次転写)。
【0032】
画像形成により現像ユニット310内のトナーが少なくなると、各色のトナーボトル301内に保管されたトナーが現像ユニットに供給される。
【0033】
定着装置400は、加熱ローラ401及び加圧ローラ403を有している。定着装置400は、加熱ローラ401と加圧ローラ403とでトナー像が形成された用紙を挟持しながら搬送し、その用紙に加熱及び加圧を行う。これにより、定着装置400は、用紙に付着したトナーを溶融させて用紙に定着させ、用紙に画像を形成する。定着装置400を経由した用紙は、排紙ローラ230により、画像形成装置1の筐体から排紙トレイ5に排出される。
【0034】
駆動部500は、例えば、メインモータ501、定着モータ502、黒現像モータ503、カラー現像モータ504、及びカラー感光体モータ505を有している(以下、これらのモータについて単にモータ501〜505などと称することがある。)。駆動部500は、後述するCPU(フィルタ制御部の一例)21(図2に示す。)の制御の下で駆動される。メインモータ501は、給紙工程から転写工程までの用紙搬送と、中間転写ベルト305及び黒感光体311Kの駆動とを行う。定着モータ502は、定着装置400の駆動を行う。黒現像モータ503は、ブラック現像ユニット310Kの駆動を行う。カラー現像モータ504は、イエロー・マゼンタ・シアンの現像ユニット310Y,310M,310Cの駆動を行う。カラー感光体モータ505は、イエロー・マゼンタ・シアンの感光体311Y,311M,311Cの駆動を行う。
【0035】
画像形成装置1に印字が指示されると、給紙カセット3に格納された用紙は、給紙ローラ210により1枚ずつ取り出される。用紙は、給紙ローラ210、搬送ローラ220により搬送される。給紙と並行して、帯電された各色の感光体311Y,311M,311C,311Kが、レーザスキャンユニット320により画像データに基づき露光される。感光体311上には、各色の現像ユニット310Y,310M,310C,310K内のトナーで現像されることで、トナー画像が形成される。各色の感光体311上に形成されたトナー画像は中間転写ベルト305上に転写され、中間転写ベルト305上に4色分のトナー画像が形成される。次に、転写ローラ307に電圧が印加されることで、中間転写ベルト305上に形成されたトナー画像が搬送された用紙に転写される。用紙上に形成されたトナー画像は、用紙が定着装置400を通過し熱と圧力が加えられることで、用紙に定着される。トナー画像が定着された用紙は、排紙ローラ230により排紙トレイ3に排出される。
【0036】
図2は、画像形成装置1の構成を示すブロック図である。
【0037】
図を参照して、画像形成装置1は、さらに、操作部11と、制御部(CPU部)20と、不揮発性メモリ27と、インターフェイス部29と、電源装置600とを備えている。
【0038】
操作部11は、画像形成装置1の筐体に、ユーザにより操作可能に配置されている。操作部11には、表示パネル13が配置されている。表示パネル13は、例えば、タッチパネルを備えたLCD(Liquid Crystal Display)である。表示パネル13は、ユーザに案内画面を表示したり、操作ボタンを表示してユーザからのタッチ操作を受け付けたりする。表示パネル13は、制御部20のCPU21により制御されて表示を行う。操作部11は、表示パネル13や操作ボタン(図示せず)などがユーザにより操作されると、その操作に応じた操作信号又は所定のコマンドをCPU21に送信する。すなわち、ユーザは、操作部11に操作を行うことにより、画像形成装置1に種々の動作を実行させることができる。
【0039】
制御部20は、CPU21と、ROM(Read Only Memory)23と、RAM(Random Access Memory)25などを有している。制御部20は、操作部11、不揮発性メモリ27、インターフェイス部29、及び電源装置600などと共にシステムバスに接続されている。これにより、制御部20と画像形成装置1の各部とが、信号を送受可能に接続されている。
【0040】
CPU21は、ROM23、RAM25、又は不揮発性メモリ27などに記憶された制御プログラム23aなどを実行することにより、画像形成装置1の種々の動作を制御する。CPU21は、操作部11から操作信号が送られたり、クライアントPCなどから操作コマンドが送信されたりすると、それらに応じた制御プログラム23aを実行する。これにより、ユーザによる操作部11の操作などに応じて、画像形成装置1の動作が行われる。
【0041】
ROM23は、例えばフラッシュROM(Flash Memory)である。ROM23には、画像形成装置1の動作を行うために用いられるデータが記憶されている。また、ROM23には、画像形成装置1の種々の動作を行うための制御プログラム(プログラム)23aが記憶されている。そのほか、ROM23には、画像形成装置1の機能設定データなどが記憶されていてもよい。CPU21は、所定の処理を行うことにより、ROM23からのデータの読み込みや、ROM23へのデータの書き込みを行う。ROM23は、書換え不可能なものであってもよい。
【0042】
RAM25は、CPU21のメインメモリである。RAM25は、CPU21が制御プログラム23aを実行するときに必要なデータを記憶するのに用いられる。
【0043】
不揮発性メモリ27は、例えばプリント枚数などの寿命状態に関する情報など、画像形成装置1の電源オフ後も維持が必要な情報を記憶する。また、不揮発性メモリ27は、例えば、インターフェイス部29を介して外部から送られたジョブのデータなどを記憶する。不揮発性メモリ27は、画像形成装置1の設定情報や、画像形成装置1の種々の動作を行うための制御プログラムなどを記憶するように構成されていてもよい。不揮発性メモリ27は、1つのクライアントPC又は複数のクライアントPCなどから送信された複数のジョブを記憶可能である。不揮発性メモリ27は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュROMなどで構成される。
【0044】
インターフェイス部29は、例えば、NIC(Network Interface Card)などのハードウェア部と、所定の通信プロトコルで通信を行うソフトウェア部とが組み合わされて構成されている。インターフェイス部29は、画像形成装置1をLANなどの外部ネットワークに接続する。これにより、画像形成装置1は、外部ネットワークに接続されているクライアントPCなどの外部装置と通信可能になる。画像形成装置1は、クライアントPCからジョブを受信可能である。また、画像形成装置1は、画像データを、クライアントPCに送信したり、メールサーバなどを介してE−mailにより送信したりすることができる。
【0045】
インターフェイス部29は、無線通信により外部ネットワークに接続可能に構成されていてもよい。インターフェイス部29は、例えば、USB(Universal Serial Bus)インターフェイスであってもよい。この場合、インターフェイス部29は、通信ケーブルを介して接続された外部装置と画像形成装置1とを通信可能にする。
【0046】
電源装置600は、画像形成装置1の筐体の内部に設けられている。電源装置600は、商用電源に接続され、商用電源を基に画像形成装置1の各部に電力を供給する。
【0047】
現像ユニット310Y,310M,310C,310Kには、それぞれ、不揮発性メモリ319Y,319M,319C,319Kが設けられている。また、トナーボトル301Y,301M,301C,301Kには、それぞれ、不揮発性メモリ309Y,309M,309C,309Kが設けられている。
【0048】
現像ユニット310に含まれる感光体311などは、プリントを繰り返すにつれて劣化するため、現像ユニット310には寿命がある。また、プリントを繰り返すにつれトナーボトル301に貯蔵されるトナーが少なくなるため、トナーボトル301には寿命がある。すなわち、現像ユニット310やトナーボトル301は、消耗品である。CPU21は、それぞれの消耗品に関する寿命状態などの情報を、これらの不揮発性メモリ319Y〜319K,309Y〜309K(以下、これらをまとめて不揮発性メモリ719と呼ぶことがある)に格納する。これにより、各消耗品を取り外して、別の画像形成装置に装着した場合であっても、その消耗品の寿命状態を、その移行先の画像形成装置に反映させることができる。したがって、各消耗品の寿命管理を確実に行い、適正に画像をプリント可能にすることができる。
【0049】
ここで、画像形成装置1は、動作モードとして、例えば通常のプリント機能などを実行する通常動作モードと、通常動作モードの下での動作時よりも省電力化される省エネモード(スリープモード)とを有している。画像形成装置1は、通常動作モードの下での動作時において、例えばプリント機能などが所定期間行われなかったときに、省エネモードに移行する。画像形成装置1は、省エネモードの下での動作時において、例えばプリント機能などを実行する場合、通常動作モードに移行する。このように、一時的に画像形成装置1が使用されない場合などにおいては、画像形成装置1が省エネモードで駆動されるので、画像形成装置1の消費電力を低減することができる。
【0050】
[電源装置600の構成]
【0051】
次に、電源装置600の構成について説明する。
【0052】
図3は、電源装置600の構成を示す回路図である。
【0053】
図を参照して、電源装置600は、整流部601と、アクティブフィルタ部603と、DC/DCコンバータ部605とを有している。整流部601には、交流電源(Vac)101が入力される。交流電源101は、例えば商用電源であり、日本国内ではAC100Vである。
【0054】
整流部601は、4つのダイオードD1〜D4を有している。交流電源101の交流電力は、各ダイオードD1〜D4によって全波整流される。これにより直流電力が得られる。整流部601で得られた直流電力は、アクティブフィルタ部603に入力される。
【0055】
アクティブフィルタ部603は、整流部601の出力を昇圧し、一次直流電圧(一次直流電源)を出力する。アクティブフィルタ部603は、一次直流電圧を昇圧することにより、入力力率を1に近づける。
【0056】
DC/DCコンバータ部605は、アクティブフィルタ部603から出力された一次直流電圧から、二次直流電圧を生成する。二次直流電圧が駆動部500など画像形成装置1の各部に供給されることで、画像形成装置1はプリント機能などを実行することができる。すなわち、画像形成装置1は、DC/DCコンバータ部605により生成された二次直流電圧を用いて動作する。
【0057】
ここで、アクティブフィルタ部603は、以下のように動作する。すなわち、アクティブフィルタ部603は、まず、整流部601からの直流電力のエネルギーを、リアクトルL1に蓄える。これは、リアクトルL1を介して接続されたMOS型の電界効果トランジスタ(MOSFET、スイッチング素子の一例)Q1が一定時間オンにされることにより行われる。リアクトルL1は、ダイオードD5などを介してコンデンサC1に接続されている。その後、電界効果トランジスタQ1が一定時間オフにされ、リアクトルL1に蓄えられたエネルギーがコンデンサC1に蓄積される。この繰り返しが行われることにより、力率が改善される。
【0058】
電界効果トランジスタQ1のオン/オフ制御は、以下のようにして行われる。
【0059】
図を参照し、整流部601で整流されてアクティブフィルタ部603に入力された直流電圧は、抵抗R1,R2にて分圧される。分圧により得られた交流電流位相信号Vacphは、乗算器MULに入力される。
【0060】
コンデンサC1に昇圧され蓄えられた電圧Vdcは、抵抗R4,R5にて分圧される。分圧により得られた直流帰還電圧信号Vdcfbと、あらかじめ決められた昇圧電圧指令(直流電圧信号)Vdch*とは、アンプA1にて比例積分制御される。アンプA1の出力Vdcaoは、乗算器MULに入力され、交流電流位相信号Vacphと乗算される。
【0061】
このように乗算され乗算器MULから出力された電流信号(直流電流指令)Idc*と、電界効果トランジスタQ1とダイオードD3,D4のアノードとの間に接続された直流電流検出抵抗R3にて検出された直流電流(直流電流帰還信号)Idcfbとは、アンプA2にて比例積分制御される。アンプA2から出力された直流電圧アンプ出力Idcaoと、PWM(Pulse Width Modulation)キャリアとなる三角波発信器OSC1とは、比較器CMP1にて比較される。比較器CMP1から、電界効果トランジスタQ1のPWMデューティ信号となるQ1オン信号Q1on*が出力される。
【0062】
Q1オン信号Q1on*は、CPU21からのアクティブフィルタオンオフ信号PFCCとともにAND回路655に入力される。AND回路655は、Q1オン信号Q1on*とアクティブフィルタオンオフ信号PFCCとの論理積をとり、アクティブフィルタ制御信号(アクティブフィルタオン信号)PFCONを出力する。アクティブフィルタ制御信号PFCONは、電界効果トランジスタQ1のゲートに入力される。すなわち、電界効果トランジスタQ1は、アクティブフィルタ制御信号PFCONをゲート信号としてオン/オフされる。
【0063】
このように電界効果トランジスタQ1がオン/オフされることで、コンデンサC1の両端の直流電圧Vdcは約400Vの一定電圧となり、かつ力率1の交流入力電流が実現できる。
【0064】
DC/DCコンバータ部605は、トランスT1と、トランスT1を介して接続されたMOS型の電界効果トランジスタ(スイッチング素子の一例)Q2と、トランスT1の二次側に設けられたダイオードD6及びコンデンサC2とを有している。DC/DCコンバータ部605は、アクティブフィルタ部603から出力される直流電圧Vdcすなわち一次直流電圧を定電圧制御する。DC/DCコンバータ部605は、電界効果トランジスタQ2をオン/オフ制御することにより、一次直流電圧VdcをトランスT1の二次側に絶縁し降圧し伝達させる。DC/DCコンバータ部605は、電界効果トランジスタQ2のオン/オフデューティを制御することにより、24Vの一定の二次直流電圧を出力する。
【0065】
交流電源101は、定着装置400のヒータランプH1にも接続されている。ヒータランプH1は、加熱ローラ401の内部に配置されており、用紙にトナーを定着させるための熱を発生する。交流電源101は、トライアックTRIACを介してヒータランプH1に接続されている。トライアックTRIACは、CPU21からトライアックオン信号Tron*が送られ、ゼロクロスにてオン/オフ制御される。これにより、ヒータランプH1の温度制御が行われる。
【0066】
[省エネモード移行時の電源装置600の動作]
【0067】
ここで、本実施形態において、画像形成装置1の動作モードが通常動作モードから省エネモードに移行するとき、電源装置600において、一次直流電圧Vdcが、通常動作モードの下での通常動作時(以下、単に通常動作時と称することがある。)の略2倍に昇圧される。また、一次直流電圧Vdcが昇圧された後、省エネモードでの動作時(以下、スリープ時と称することがある。)に、アクティブフィルタ部603が停止される。これらの制御は、CPU21が制御プログラム23aを実行することなどにより行われる。
【0068】
図を参照して、電源装置600のアクティブフィルタ部603において、直流電圧信号(直流電圧指令)Vdch*には、直流電圧加算指令Vdcl*が加算可能である。直流電圧加算信号Vdcl*は、スイッチSW1を介して直流電圧信号Vdch*に加算可能である。スイッチSW1は、CPU21から直流電圧加算信号Vdcaddが出力されるとオンとなる。CPU21は、動作モードが通常動作モードから省エネモードに移行するとき、省エネモードに移行するより前に、スリープ信号Sleepを受け取る。CPU21は、スリープ信号Sleepを受け取ると、直流電圧加算信号VdcaddをスイッチSW1に出力する。したがって、動作モードが通常動作モードから省エネモードに移行するとき、省エネモードに移行するより前に、直流電圧加算指令Vdcl*が直流電圧信号Vdch*に加算される。
【0069】
直流電圧加算指令Vdcl*が直流電圧信号Vdch*に加算されると、一次直流電圧Vdcは上昇し、約800Vの一定電圧となる。すなわち、一次直流電圧Vdcは、通常動作時のそれ(約400V)の略2倍に昇圧される。平滑用コンデンサC1に蓄えられたエネルギーは電圧の二乗に比例する。したがって、このように一次直流電圧Vdcが昇圧されることにより、平滑用コンデンサC1に蓄えられるエネルギーは、通常動作時のエネルギーの略4倍となる。
【0070】
直流電圧加算指令Vdcl*が直流電圧信号Vdch*に加算され、動作モードが通常動作モードから省エネモードに移行すると、CPU21は、アクティブフィルタ部603の動作を停止させる。すなわち、スリープ時において、アクティブフィルタ部603は停止している。
【0071】
本実施の形態において、アクティブフィルタ部603の後段のDC/DCコンバータ部605は、比較的に広い入力電圧範囲に対応するものであり、約800Vの直流電圧入力時にも動作可能である。アクティブフィルタ部603の電界効果トランジスタQ1は、例えばSiCやGaNの半導体を用いたものであってもよい。また、DC/DCコンバータ部605の電界効果トランジスタQ2は、例えばSiCやGaNの半導体を用いたものであってもよい。
【0072】
図4は、電源装置600の動作を示すフローチャートである。
【0073】
ステップS101において、交流電源(Vac)101がオンされる。
【0074】
ステップS103において、CPU21は、アクティブフィルタオンオフ信号PFCCをオン(H(ハイ))とする。これにより、アクティブフィルタオンオフ信号PFCCと定電圧制御によるQ1オン信号Q1on*との論理積が電界効果トランジスタQ1のゲートに出力され、アクティブフィルタ部603がオンとなる。
【0075】
ステップS105において、アクティブフィルタ部603がオンとなることにより、力率が改善され、一次直流電圧Vdcが約400Vで一定になるように制御される。
【0076】
ステップS107において、CPU21は、スリープ信号Sleepがオンであるか否かを検知する。
【0077】
ステップS107でスリープ信号Sleepがオンでなければ、ステップS109において、CPU21は、アクティブフィルタ部603がオンであればその状態を保持し、アクティブフィルタ部603がオフであればそれをオンにする。また、CPU21は、再びステップS107の処理を行う。このように、スリープ信号Sleepがオンでなければ、スリープ信号Sleepがオンになるまで、アクティブフィルタ部603がオンのままに保たれ、一次直流電圧Vdcの制御が継続される。
【0078】
ステップS107でスリープ信号Sleepがオンであれば、ステップS111において、CPU21は、アクティブフィルタ部603がオンであるか否かを検知する。
【0079】
ステップS111でアクティブフィルタ部603がオンでなければ、再びステップS107の処理が行われる。このように、アクティブフィルタ部603がオフのときすなわちスリープ時において、スリープ信号Sleepがオンである限りすなわちスリープ状態が継続している限り、アクティブフィルタ部603はオフのままに保たれる。
【0080】
ステップS111でアクティブフィルタ部603がオンであれば、ステップS113において、CPU21は、直流電圧加算信号Vdcaddをオン(H(ハイ))とする。
【0081】
ステップS115において、直流電圧加算信号Vdcaddがオンとされたことにより、スイッチSW1がオンとなる。これにより、直流電圧加算指令Vdcl*がアンプA1に加算される。
【0082】
ステップS117において、直流電圧加算指令Vdcl*がアンプA1に加算されることにより、力率が維持されながら、一次直流電圧Vdcが約800Vに昇圧される。
【0083】
ステップS119において、CPU21は、アクティブフィルタオンオフ信号PFCCをオフ(L(ロー))とする。これにより、アクティブフィルタ部603が停止する。
【0084】
ステップS119の処理が終了すると、再びステップS107の処理が行われる。すなわち、スリープ信号Sleepがオフになるまで、アクティブフィルタ部603は、停止したままで保持される。
【0085】
[実施の形態における効果]
【0086】
以上のように構成された画像形成装置では、通常動作モードから省エネモードへの移行時に、アクティブフィルタ部の一次直流電圧が略2倍に昇圧され、平滑用コンデンサの蓄積エネルギーすなわち入力エネルギーが略4倍になった状態でアクティブフィルタ部が停止される。そうすると、省エネモードでの動作時に平滑用コンデンサに蓄積されたエネルギーが供給されることで、アクティブフィルタ部が停止してから長時間、交流電源からの電力供給がない状態でDC/DCコンバータ部を動作させることが可能となる。したがって、スリープ時の消費電力を大幅に減少させ、省エネモード時の省電力性能をさらに高めることができる。
【0087】
例えば平滑用コンデンサに大きなエネルギーを蓄積するために、常時アクティブフィルタ部の一次直流電圧を昇圧させるようにすると、通常動作時においてアクティブフィルタ部が発熱したり、アクティブフィルタ部の効率が悪化したりし、問題となる。しかしながら、上述の実施の形態の画像形成装置では、省エネモードに移行する直前に、比較的短時間だけアクティブフィルタ部の一次直流電圧が昇圧され、その後アクティブフィルタ部が停止されるので、そのようなアクティブフィルタ部の発熱に関する問題は発生しない。一次直流電圧の昇圧は、通常動作時に行われ、スリープ負荷にはならないので、電源の効率は、アクティブフィルタ部を動作させても、アクティブフィルタ部が停止されたスリープ時よりも悪くならない。
【0088】
[その他]
【0089】
通常動作モードから省エネモードに移行する場合における昇圧前後の一次直流電圧の比は、2倍に限られない。すなわち、省エネモードに移行する直前に、一次直流電圧がそれまでよりも高く昇圧されることにより、そのような制御が行われない場合と比較して、省エネモード時の省電力性能を高める効果が得られる。
【0090】
画像形成装置としては、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などいずれであってもよい。また、画像形成装置は、スキャナ機能、複写機能、プリンタとしての機能、ファクシミリ機能、データ通信機能、及びサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)であってもよい。スキャナ機能では、セットされた原稿の画像を読み取ってそれをHDD等に蓄積する。複写機能では、さらにそれを用紙等に印刷(プリント)する。プリンタとしての機能では、PC等の外部端末から印刷指示を受けるとその指示に基づいて用紙に印刷を行う。ファクシミリ機能では、外部のファクシミリ装置等からファクシミリデータを受信してそれをHDD等に蓄積する。データ通信機能では、接続された外部機器との間でデータを送受信する。サーバ機能では、複数のユーザでHDD等に記憶したデータなどを共有可能にする。
【0091】
画像形成装置は、電子写真方式により画像を形成するものに限られず、例えばいわゆるインクジェット方式により画像を形成するものであってもよい。
【0092】
上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアによって行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。
【0093】
上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。上記のフローチャートで文章で説明された処理は、そのプログラムに従ってCPUなどにより実行される。
【0094】
本発明は、画像形成装置に限らず、上述の実施の形態に示すようなアクティブフィルタ部を有する電源装置や、それを用いた種々の装置に広く適用可能である。
【0095】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1 画像形成装置
20 制御部
21 CPU(フィルタ制御部の一例)
23a 制御プログラム
101 交流電源
400 定着装置
600 電源装置
601 整流部
603 アクティブフィルタ部
605 DC/DCコンバータ部
Vdc 一次直流電圧


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常動作モードの下での動作時よりも省電力化される省エネモードを動作モードとして動作可能な電源装置であって、
交流を整流する整流部と、
前記整流部の出力を昇圧し一次直流電圧を出力するアクティブフィルタ部と、
前記アクティブフィルタ部から出力された一次直流電圧から二次直流電圧を生成するDC/DCコンバータ部と、
動作モードが前記通常動作モードから前記省エネモードに移行するとき、前記一次直流電圧を前記通常動作モードの下での通常動作時よりも昇圧させ、その後、前記省エネモードの下での動作時に前記アクティブフィルタ部を停止させるフィルタ制御部とを備える、電源装置。
【請求項2】
前記フィルタ制御部は、動作モードが前記通常動作モードから前記省エネモードに移行するとき、前記一次直流電圧を前記通常動作モードの下での通常動作時の略2倍に昇圧させる、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータ部は、SiC又はGaNを用いたスイッチング素子を有する、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電源装置を有し、
前記DC/DCコンバータ部により生成された二次直流電圧を用いて動作する、画像形成装置。
【請求項5】
通常動作モードの下での動作時よりも省電力化される省エネモードを動作モードとして動作可能であり、
交流を整流する整流部と、
前記整流部の出力を昇圧し一次直流電圧を出力するアクティブフィルタ部と、
前記アクティブフィルタ部から出力された一次直流電圧から二次直流電圧を生成するDC/DCコンバータ部とを備える電源装置の制御方法であって、
動作モードが前記通常動作モードから前記省エネモードに移行するとき、前記一次直流電圧を前記通常動作モードの下での通常動作時よりも昇圧させる昇圧制御ステップと、
前記昇圧ステップにより前記一次直流電圧が昇圧された後、前記省エネモードの下での動作時に前記アクティブフィルタ部を停止させる停止制御ステップとを備える、電源装置の制御方法。
【請求項6】
通常動作モードの下での動作時よりも省電力化される省エネモードを動作モードとして動作可能であり、
交流を整流する整流部と、
前記整流部の出力を昇圧し一次直流電圧を出力するアクティブフィルタ部と、
前記アクティブフィルタ部から出力された一次直流電圧から二次直流電圧を生成するDC/DCコンバータ部とを備える電源装置の制御プログラムであって、
動作モードが前記通常動作モードから前記省エネモードに移行するとき、前記一次直流電圧を前記通常動作モードの下での通常動作時よりも昇圧させる昇圧制御ステップと、
前記昇圧ステップにより前記一次直流電圧が昇圧された後、前記省エネモードの下での動作時に前記アクティブフィルタ部を停止させる停止制御ステップとをコンピュータに実行させる、電源装置の制御プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−188625(P2011−188625A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51337(P2010−51337)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】