説明

電源装置、液晶駆動装置、液晶表示装置

【課題】本発明は、電子回路の消費電流を低減するとともに、これを複数の電源から分散して引き込むことが可能な電源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る電源装置15は、異なる電源電圧Vcc1、Vcc2(例えばVcc1=1.8[V]、Vcc2=2.8[V])の入力を受けて、電子回路(ロジック部11)の電源入力端に駆動電流iを供給する電源装置であって、電源電圧Vcc1の印加端と電子回路の電源入力端との間に挿入され、電源電圧Vcc1の印加端から所定の定電流i1を引き込む定電流源I1と;電源電圧Vcc2の印加端と電子回路の電源入力端との間に挿入され、電源電圧Vcc2から電源電圧Vcc1よりも低い定電圧Vreg(例えば1.65[V])を生成し、これを電子回路の電源入力端に印加するレギュレータREGと;を有して成る構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に駆動電流を供給する電源装置、並びに、これを用いた液晶駆動装置及び液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや携帯電話端末の表示手段として、液晶表示装置が広く一般に用いられている。
【0003】
なお、液晶表示装置やその電源装置に関連する従来技術の一例としては、下記の特許文献1、2を挙げることができる。
【特許文献1】特開平9−160000号公報
【特許文献2】特開平5−224621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液晶表示装置のドライバICには、液晶セルの駆動制御に必要な各種信号を生成するロジック部が搭載されているが、液晶セル駆動時におけるロジック部の消費電流は、液晶表示パネルの大型化や高精細化等に伴って、増大の一途をたどっている。
【0005】
特に、複数の信号線(セグメント信号線)とこれに直交する複数の走査線(コモン信号線)との各交点に液晶セルを備えて成る単純マトリクス型の液晶表示パネルを駆動する方式として、複数の走査線を同時選択するMLS[Multi Line Selection]駆動方式を採用する場合には、ロジック部におけるデータ信号の生成処理が複雑となり、これに要する消費電力が不可避的に大きくなる。
【0006】
しかしながら、従来のドライバICでは、ロジック系電源とアナログ系電源が完全に分離されていたため、ロジック部の消費電流については、その全てをロジック系電源で賄わねばならず、ロジック系電源の電流供給能力を超えてしまうおそれがあった。
【0007】
なお、液晶表示装置に搭載される電源装置のみならず、その余の用途に供される電源装置についても、上記と同様の課題が存在する。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、電子回路の消費電流を低減するとともに、これを複数の電源から分散して引き込むことが可能な電源装置、並びに、これを用いた液晶駆動装置、及び、液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達すべく、本発明に係る電源装置は、異なる第1、第2電源電圧の入力を受けて、電子回路の電源入力端に駆動電流を供給する電源装置であって、第1電源電圧の印加端と前記電子回路の電源入力端との間に挿入され、第1電源電圧の印加端から所定の定電流を引き込む定電流源と;第2電源電圧の印加端と前記電子回路の電源入力端との間に挿入され、第2電源電圧から第1電源電圧よりも低い定電圧を生成し、これを前記電子回路の電源入力端に印加するレギュレータと;を有する構成(第1の構成)とされている。
【0010】
なお、上記第1の構成から成る電源装置において、前記定電流源は、前記定電流の可変制御機能を備えて成る構成(第2の構成)にするとよい。
【0011】
なお、上記第1または第2の構成から成る電源装置において、第3電源電圧は、前記電子回路の最低動作保証電圧に設定されている構成(第3の構成)するとよい。
【0012】
また、本発明に係る液晶駆動装置は、液晶セルの駆動制御に必要な各種信号を生成するロジック部と、前記ロジック部の電源入力端に駆動電流を供給する上記第1〜第3いずれかの構成から成る電源装置と、を有して成る構成(第4の構成)とされている。
【0013】
また、本発明に係る液晶表示装置は、複数の走査線と複数の信号線との間に液晶セルを挟持して成る液晶表示パネルと、前記液晶セルの駆動制御を行う上記第4の構成から成る液晶駆動装置と、を有して成る構成(第5の構成)とされている。
【0014】
なお、上記第5の構成から成る液晶表示装置において、前記液晶駆動装置は、前記液晶表示パネルの垂直走査に際し、前記複数の走査線を所定本数ずつ同時に選択する構成(第6の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子回路の消費電流を低減するとともに、これを複数の電源から分散して引き込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下では、本発明を液晶表示装置に適用した場合を例に挙げて、詳細な説明を行う。
【0017】
図1は、本発明に係る液晶表示装置の一実施形態を示す図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の液晶表示装置は、液晶駆動装置1と、その駆動対象である液晶表示パネル2と、を有して成る。
【0019】
液晶駆動装置1は、液晶表示パネル2の液晶セルを駆動する容量負荷駆動装置であり、ロジック部11と、メモリ部12と、セグメントドライバ部13と、コモンドライバ部14と、電源部15と、を集積化して成る半導体装置である。
【0020】
ロジック部11は、映像信号や制御信号の入力を受け、液晶表示の制御に必要な各種信号(データ信号やコモン選択信号等を含む)をセグメントドライバ部13及びコモンドライバ部14に供給する手段であり、データレジスタ、コマンドデコーダ、MPU[Micro Processing Unit]インターフェイス、コントロールレジスタ、アドレスカウンタ、タイミングジェネレータなどを有して成る(いずれも不図示)。
【0021】
メモリ部12は、ロジック部11で生成されたセグメント制御信号を一旦格納し、これを適宜読み出してセグメントドライバ部13に送出するバッファ手段である。
【0022】
セグメントドライバ部13は、ロジック部11から入力されるデータ信号(延いては、装置外部から入力される映像信号)に応じてセグメント駆動信号X1〜Xmを生成し、これらを液晶表示パネル1の各信号線(液晶セルの各一端)に供給する手段である。
【0023】
コモンドライバ部14は、ロジック部11から入力されるコモン選択信号に応じてコモン駆動信号Y1〜Ynを生成し、これらを液晶表示パネル1の各走査線(液晶セルの各他端)に供給する手段である。なお、本実施形態の液晶駆動装置1において、コモンドライバ部14は、液晶表示パネル1の垂直走査に際して、液晶表示パネル1の走査線を所定の本数ずつ同時に選択するMLS駆動方式を採用した構成とされている。このような構成とすることにより、各走査線を時分割で順次選択するAPT[Alt Pleshko Technics]駆動方式を採用した構成に比べて、ロジック部11で生成すべきコモン選択信号の本数を削減することができる上、フレーム応答の低減やコモン電圧の低電圧化を図ることも可能となる。ただし、MLS駆動方式を採用する場合には、ロジック部11におけるセグメント制御信号の生成処理が複雑となり、これに要する消費電力が不可避的に大きくなるため、ロジック系電源の電流供給能力を超えないようにすることが重要となる。
【0024】
電源部15は、装置外部から第1電源電圧Vcc1(主としてロジック回路系を駆動するための電源電圧であり、例えば1.8[V])と、第2電源電圧Vcc2(主としてアナログ回路系を駆動するための電源電圧であり、例えば2.8[V])の入力を受けて、ロジック部11、メモリ部12、セグメントドライバ部13、及び、コモンドライバ部14にそれぞれ電力供給を行う手段である。なお、電源部15の内部構成及び動作については、後ほど詳述する。
【0025】
液晶表示パネル2は、複数の信号線(セグメント信号線)とこれに直交する複数の走査線(コモン信号線)との各交点にそれぞれ液晶セルを挟持して成る単純マトリクス型(STN[Super Twisted Nematic]型)の液晶表示パネルであり、各液晶セルの両端間に電圧をかけることで液晶分子の向きを変え、光の透過を制御することによって、任意の文字や画像を表示するものである。
【0026】
次に、電源部15の内部構成及び動作について、詳細な説明を行う。
【0027】
図2は、電源部部15の一構成例を示すブロック図である。
【0028】
図2に示すように、本構成例の電源部15は、定電流源I1と、レギュレータREGとを有して成る。
【0029】
定電流源I1は、第1電源電圧Vcc1の印加端とロジック部11の電源入力端との間に挿入され、第1電源電圧Vcc1の印加端から定電流i1を引き込む手段である。
【0030】
レギュレータREGは、第2電源電圧Vcc2の印加端とロジック部11の電源入力端との間に挿入され、第2電源電圧Vcc2から第1電源電圧Vcc1よりも低い定電圧Vreg(例えば、1.65[V])を生成し、これをロジック部11の電源入力端に印加する手段であって、本構成例では、オペアンプAMPと抵抗R1及びR2から成る非反転増幅回路を用いた構成とされている。
【0031】
レギュレータREGを形成する回路要素の接続関係についてより具体的に述べると、オペアンプAMPの非反転入力端(+)は、参照電圧Vrefの印加端に接続されている。なお、参照電圧Vrefは、周囲温度や電源電圧の変動に依らない定電圧(例えばバンドギャップ電圧)である。オペアンプAMPの反転入力端(−)は、抵抗R1を介して接地端に接続される一方、抵抗R2を介してオペアンプAMPの出力端にも接続されている。
【0032】
すなわち、レギュレータREGで生成される定電圧Vregは、下記の(1)式で表される電圧値となる。
【0033】
【数1】

【0034】
上記構成から成る電源部15であれば、ロジック電源側から所定の定電流i1を引き込みつつ、アナログ電源側から不足分の電流i2を分散して引き込み、両者を合わせた駆動電流i(=i1+i2)をロジック部11の電源入力端に供給することができるので、定電流i1をロジック電源側から供給し得る上限値に設定しておけば、ロジック電源の電流供給能力を最大限に活用しつつ、ロジック部11の消費電流が大きくなっても、ロジック電源の電流供給能力を超えてしまうことがなくなる。
【0035】
なお、上記構成から成る電源部15において、定電流源I1は、定電流i1の可変制御機能を備えて成る。このような構成とすることにより、ロジック電源の電流供給能力(延いては、セットの要求スペック)に応じて、定電流i1を適宜調整することができる。
【0036】
また、上記構成から成る電源部15であれば、ロジック部11の電源入力端に印加される電圧レベルを第1電源電圧Vcc1より低い定電圧Vregとすることができるので、第1電源電圧Vcc1を印加していた従来構成に比べて、ロジック部11の消費電流を低減することが可能となる。
【0037】
なお、ロジック部11の消費電流をできる限り低減するためには、定電圧Vregをロジック部11の最低動作保証電圧に設定するとよい。
【0038】
また、上記構成から成る電源部15であれば、レギュレータREGの働きにより、ロジック部11の電源入力端に印加される電圧レベルを一定に維持することができるので、定電流源I1の両端電圧が一定となり、延いては、ロジック電源側から引き込まれる定電流i1のばらつきを抑えることが可能となる。
【0039】
なお、上記の実施形態では、本発明を単純マトリクス型の液晶表示パネルを駆動する液晶表示装置に適用した場合を例示して説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、その他形式の液晶表示パネルを駆動する液晶表示装置はもちろん、その他の機器に搭載される電源装置全般についても、本発明を適用することが可能である。
【0040】
また、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、MLS駆動方式を採用した液晶駆動装置を例に挙げて説明を行ったが、これは、あくまで、ロジック部11の消費電力を低減すべき構成の一例であって、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、その他の駆動方式を採用した液晶駆動装置についても、本発明を適用することが可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、第2電源電圧Vcc2から定電圧Vregを生成するレギュレータREGとして、オペアンプAMPと抵抗R1、R2から成る非反転増幅回路を用いた構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものでははなく、シリーズレギュレータやスイッチングレギュレータなど、いかなる構成のレギュレータを用いてもかまわない。
【0043】
また、上記実施形態では、第1電源電圧Vcc1よりも第2電源電圧Vcc2が高い構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、両者の高低関係は逆であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば、液晶駆動装置に搭載されるロジック部の消費電流低減を図る上で有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】は、本発明に係る液晶表示装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】は、電源部15の一構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0046】
1 液晶駆動装置(容量負荷駆動装置)
11 ロジック部
12 メモリ部
13 セグメントドライバ部
14 コモンドライバ部
15 電源部
2 液晶表示パネル
I1 定電流源
REG レギュレータ
AMP オペアンプ
R1、R2 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる第1、第2電源電圧の入力を受けて、電子回路の電源入力端に駆動電流を供給する電源装置であって、
第1電源電圧の印加端と前記電子回路の電源入力端との間に挿入され、第1電源電圧の印加端から所定の定電流を引き込む定電流源と;
第2電源電圧の印加端と前記電子回路の電源入力端との間に挿入され、第2電源電圧から第1電源電圧よりも低い定電圧を生成し、これを前記電子回路の電源入力端に印加するレギュレータと;
を有して成ることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記定電流源は、前記定電流の可変制御機能を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記定電圧は、前記電子回路の最低動作保証電圧に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
液晶セルの駆動制御に必要な各種信号を生成するロジック部と、前記ロジック部の電源入力端に駆動電流を供給する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電源装置と、を有して成ることを特徴とする液晶駆動装置。
【請求項5】
複数の走査線と複数の信号線との間に液晶セルを挟持して成る液晶表示パネルと、前記液晶セルの駆動制御を行う請求項4に記載の液晶駆動装置と、を有して成ることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶駆動装置は、前記液晶表示パネルの垂直走査に際して、前記複数の走査線を所定本数ずつ同時に選択することを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−98315(P2009−98315A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268520(P2007−268520)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】