説明

電源装置及びその制御方法

【課題】突入電流による破損を確実に抑えつつ、コストダウンを図ることが可能な電源装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】電源装置16の制御部36は、内部抵抗検出部28が検出したバッテリ20の内部抵抗が相対的に高い状態であることを検出した場合、バッテリ電圧とシステム電圧との差電圧に関する第1の閾値を用いて第1の開閉器22を開状態から閉状態に切り替え、前記内部抵抗が相対的に低い状態であることを検出した場合、前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を用いて第1の開閉器22を開状態から閉状態に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リレー回路への突入電流による破損を防止するためのプリチャージを実行可能な電源装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いる高圧バッテリを有する電源装置が知られている(特許文献1)。特許文献1では、HVバッテリ(194)を構成するバッテリモジュール(BM1、BM2)と駆動回路(191、192)及びモータ(MG1、MG2)との間に、2つのシステムメインリレー(SMR1、SMR2)が並列に接続されている(図2)。また、一方のシステムメインリレー(SMR1)には制限抵抗(LR)が直列に配置されている。
【0003】
モータの駆動時には、まずシステムメインリレー(SMR1)をオンしてプリチャージを実行する。システムメインリレー(SMR1)側には制限抵抗(LR)が存在するため、負荷側電圧(Vinv)は緩やかに増加し、突入電流の発生を防止する(図3、[0049])。そして、負荷側電圧(Vinv)が、例えば、電源側電圧(Vbat)の約80%程度に達したところでプリチャージを完了し、別のシステムメインリレー(SMR2)をオンする。負荷側電圧(Vinv)がほぼ電源側電圧(Vbat)に等しくなったところで、システムメインリレー(SMR1)をオフしてHVバッテリ(194)をオン状態とする([0049])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−327001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1では、負荷側電圧(Vinv)が電源側電圧(Vbat)の約80%程度に達したところでプリチャージを終了する。しかしながら、特許文献1では、電源側電圧(Vbat)用の電圧センサ(VB)及び負荷側電圧(Vinv)用の負荷側電圧センサ(VI)それぞれの仕様については特に触れられていない。大きな突入電流が発生すると、抵抗が直列接続されていないリレー{システムメインリレー(SMR2)}の接点等が破損するおそれがある。突入電流を確実に抑制するためには、電源側電圧センサ(VB)及び負荷側電圧センサ(VI)それぞれについて検出精度を高くする必要があるが、検出対象の電圧領域(利用される電圧の範囲)全体について検出精度を高くすると、各電圧センサのコストが増大してしまう。
【0006】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、突入電流による破損を確実に抑えつつ、コストダウンを図ることが可能な電源装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電源装置は、電気負荷に電源回路を介して接続されて前記電気負荷に電力を供給するバッテリと、前記電源回路において前記バッテリの正負いずれか一方の端子と前記電気負荷の間で接点が接続された第1の開閉器と、前記第1の開閉器と並列に接点が接続された第2の開閉器と、前記第1の開閉器と並列に且つ前記第2の開閉器と直列に接続された抵抗と、前記第1及び第2の開閉器を開閉して前記電気負荷への電力の供給を制御する制御部とを備えたものであって、さらに、前記バッテリと前記電源回路の間の電源電圧を検出する電源電圧検出部と、前記電源回路と前記電気負荷との間のシステム電圧を検出するシステム電圧検出部と、前記バッテリの内部抵抗を検出する内部抵抗検出部とを有し、前記制御部は、前記第1の開閉器が開状態であるとき、前記第2の開閉器を開状態から閉状態に切り替えた後、前記電源電圧検出部が検出した前記電源電圧と前記システム電圧検出部が検出したシステム電圧との差電圧に応じて、前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替え、さらに、前記制御部は、前記内部抵抗検出部が検出した前記バッテリの内部抵抗が相対的に高い状態であることを検出した場合、前記差電圧に関する第1の閾値を用いて前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替え、前記バッテリの内部抵抗が相対的に低い状態であることを検出した場合、前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を用いて前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、バッテリの内部抵抗が相対的に高いとき、電源電圧とシステム電圧との差電圧の閾値を大きくし(大きい第1の閾値を用い)、バッテリの内部抵抗が相対的に低いとき、前記差電圧の閾値を小さくする(小さい第2の閾値を用いる)。従って、バッテリの内部抵抗が高い電圧領域では、電源電圧検出部及びシステム電圧検出部の少なくとも一方の検出精度を低くすることが可能となる。その結果、バッテリの内部抵抗にかかわらず、電源電圧検出部及びシステム電圧検出部の検出精度が高い場合と比べ、電源電圧検出部及びシステム電圧検出部の少なくとも一方の要求仕様を緩和することができる。従って、電源電圧検出部及びシステム電圧検出部の少なくとも一方についてコストダウンを図ることが可能となる。
【0009】
加えて、バッテリの内部抵抗が高い場合、第1の閾値を用いるため、バッテリの内部抵抗が高い領域において、システム電圧検出部の検出精度が高い場合、第1の開閉器をより早く閉状態にすることが可能となる。これにより、プリチャージ制御を迅速に完了することが可能となる。
【0010】
前記内部抵抗検出部は、前記電源電圧検出部を含み、前記制御部は、前記電源電圧が相対的に低い状態であることを検出した場合、前記第1の閾値を用いて前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替え、前記電源電圧が相対的に高い状態であることを検出した場合、前記第2の閾値を用いて前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替えてもよい。
【0011】
バッテリの特性上、電源電圧が相対的に低い状態は、バッテリの内部抵抗が相対的に高い状態に対応し、電源電圧が相対的に高い状態は、バッテリの内部抵抗が相対的に低い状態に対応する。このため、上記構成によれば、電源電圧検出部を内部抵抗検出部としてそのまま流用することが可能となる。従って、更なるコストダウンを図ることが可能となる。或いは、内部抵抗検出部が、例えば、電源電圧検出部と残容量検出部の両方を備えるような場合、フェールセーフの点で優れたものとなる。
【0012】
この発明に係る電源装置の制御方法は、電気負荷に電源回路を介して接続されて前記電気負荷に電力を供給するバッテリと、前記電源回路に前記バッテリの正負いずれか一方の端子と前記電気負荷の間で接点が接続された第1の開閉器と、前記第1の開閉器と並列に接点が接続された第2の開閉器と、前記第1の開閉器と並列に且つ前記第2の開閉器と直列に接続された抵抗と、前記第1及び第2の開閉器を開閉して前記電気負荷への電力の供給を制御する制御部とを備えた電源装置の制御方法であって、前記第1の開閉器を開状態としつつ、前記第2の開閉器を開状態から閉状態に切り替える第1切替ステップと、前記第2の開閉器を閉状態に保ちつつ、前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替える第2切替ステップと、前記第1の開閉器を閉状態に保ちつつ、前記第2の開閉器を閉状態から開状態に切り替える第3切替ステップとを備え、前記第2切替ステップでは、前記バッテリの出力電圧と、前記電気負荷の入力電圧と、前記バッテリの内部抵抗とを検出し、前記バッテリの内部抵抗が相対的に高い状態であることを検出した場合、前記バッテリの出力電圧と前記電気負荷の入力電圧との差電圧が第1の所定値を上回ったときに前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替え、前記バッテリの内部抵抗が相対的に低い状態であることを検出した場合、前記差電圧が前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値を上回ったときに前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、バッテリの内部抵抗が相対的に高いとき、電源電圧とシステム電圧との差電圧の閾値を大きくし(大きい第1の閾値を用い)、バッテリの内部抵抗が相対的に低いとき、前記差電圧の閾値を小さくする(小さい第2の閾値を用いる)。従って、バッテリの内部抵抗が高い電圧領域では、電源電圧検出部及びシステム電圧検出部の少なくとも一方の検出精度を低くすることが可能となる。その結果、バッテリの内部抵抗にかかわらず、電源電圧検出部及びシステム電圧検出部の検出精度が高い場合と比べ、電源電圧検出部及びシステム電圧検出部の少なくとも一方の要求仕様を緩和することができる。従って、電源電圧検出部及びシステム電圧検出部の少なくとも一方についてコストダウンを図ることが可能となる。
【0014】
加えて、バッテリの内部抵抗が高い場合、第1の閾値を用いるため、バッテリの内部抵抗が高い領域において、システム電圧検出部の検出精度が高い場合、第1の開閉器をより早く閉状態にすることが可能となる。これにより、プリチャージ制御を迅速に完了することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態に係る電源装置を搭載した電動車両のブロック構成図である。
【図2】高圧バッテリの出力電圧、残容量(SOC)及び内部抵抗の関係の例を示す図である。
【図3】前記実施形態に係るシステム電圧センサと比較例に係るシステム電圧センサの検出精度を示す図である。
【図4】前記実施形態に係るプリチャージ制御のフローチャートである。
【図5】前記実施形態に係るプリチャージ制御を行う際の高圧リレー及びプリチャージリレーのオンオフ(開閉)並びにバッテリ電圧、システム電圧及びシステム電流の関係の例を示すタイムチャートである。
【図6】前記プリチャージ制御において高圧リレーをオン(開)にする閾値を設定するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.一実施形態
[1−1.電動車両10の構成]
図1は、この実施形態に係る電源装置16を搭載した電動車両10(以下「車両10」ともいう。)のブロック構成図である。車両10は、電源装置16に加え、走行用のモータ12(電気負荷)及びインバータ14(電気負荷)を有する。
【0017】
モータ12は、3相交流ブラシレス式であり、電源回路18及びインバータ14を介して高圧バッテリ20(以下「バッテリ20」ともいう。)から供給される電力に基づいて車両10の駆動力F[N](又はトルク[N・m])を生成する。また、モータ12は、回生を行うことで生成した電力(回生電力Preg)[W]をバッテリ20や図示しない補機に出力することでバッテリ20の充電や前記補機の駆動を行う。
【0018】
インバータ14は、3相フルブリッジ型の構成とされて、バッテリ20からの直流を3相の交流に変換してモータ12に供給する一方、回生動作に伴う交流/直流変換後の直流を高圧バッテリ20や前記補機に供給する。
【0019】
電源装置16は、電源回路18及びバッテリ20を含む。電源回路18は、高圧リレー22(第1の開閉器)と、プリチャージリレー24(第2の開閉器)と、プリチャージ抵抗26と、バッテリ電圧センサ28(電源電圧センサ)と、コンデンサ30(電気負荷)と、システム電圧センサ32と、システム電流センサ34と、電子制御装置36(以下「ECU36」という。)とを有する。
【0020】
高圧バッテリ20は、複数のバッテリセルを含む蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素電池又はキャパシタ等を利用することができる。本実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。なお、インバータ14とバッテリ20との間に図示しないDC/DCコンバータを設け、バッテリ20の出力電圧又はモータ12の出力電圧を昇圧又は降圧してもよい。
【0021】
高圧リレー22は、車両10が通常動作(力行又は回生)をする際に用いられるノーマルオープン型のオンオフスイッチであり、バッテリ20の正極側とインバータ14との間に配置される。
【0022】
プリチャージリレー24は、プリチャージ制御(後述)を実行するために用いられるノーマルオープン型のオンオフスイッチであり、バッテリ20の正極側とインバータ14との間において、高圧リレー22と並列に且つプリチャージ抵抗26と直列に配置される。プリチャージ抵抗26は、プリチャージリレー24をオン(閉)にした際、モータ12側の入出力電圧(後述するシステム電圧Vsys)を緩やかに上昇させるために用いる。
【0023】
バッテリ電圧センサ28は、バッテリ20の入出力電圧(以下「バッテリ電圧Vbat」又は「電源電圧」という。)を検出してECU36に出力する。コンデンサ30は、その一端が、プリチャージリレー24及び高圧リレー22の正極側の連結点38とインバータ14との間に配置され、他端が、インバータ14とバッテリ20の負極側との間に配置される。
【0024】
システム電圧センサ32は、モータ12及びインバータ14を含む電気負荷(以下「負荷」という。)側の入出力電圧(以下「システム電圧Vsys」又は「負荷電圧」という。)を検出するものであり、コンデンサ30よりもモータ12側においてコンデンサ30と並列に配置されている。システム電流センサ34は、モータ12及びインバータ14を含む負荷側の電流(以下「システム電流Isys」又は「負荷電流」という。)を検出するものであり、コンデンサ30の一端とインバータ14との間に配置されている。
【0025】
ECU36は、通信線40を介して車両10の各部を制御するものであり、図示しない入出力部、演算部及び記憶部を含む。本実施形態においてECU36は、突入電流による破損を防止するためのプリチャージ制御を実行する。
【0026】
[1−2.高圧バッテリ20の特性]
図2には、高圧バッテリ20の出力電圧(バッテリ電圧Vbat)、残容量(SOC)及び内部抵抗Rbat[Ω]の関係の例が示されている。図2からわかるように、バッテリ電圧Vbatが高いとき(例えば、電圧V3)、SOCも高い(例えば、SOC3)が、内部抵抗Rbatは低くなる(例えば、抵抗R3)。一方、バッテリ電圧Vbatが低いとき(例えば、電圧V1)、SOCも低いが(例えば、SOC1)、内部抵抗Rbatは高くなる(例えば、抵抗R1)。なお、本実施形態のバッテリ20は、電圧V1から電圧V3まで(SOC1からSOC3まで)が使用範囲として設定されている。
【0027】
[1−3.システム電圧センサ32の検出精度]
図3は、本実施形態に係るシステム電圧センサ32と比較例に係るシステム電圧センサの検出精度を示す図である。すなわち、図3では、横軸がシステム電圧Vsysの真値(システム電圧センサ32の位置における電圧の真値)であり、縦軸が本実施形態のシステム電圧センサ32及び比較例のシステム電圧センサの誤差e[%]である。図3において、曲線50、52に挟まれた領域が、システム電圧Vsysの真値に対して、本実施形態のシステム電圧センサ32による検出値(すなわち、システム電圧Vsys)が取り得る領域を示し、直線60、62に挟まれた領域が、比較例のシステム電圧センサによる検出値が取り得る領域を示す。
【0028】
図3からわかるように、比較例のシステム電圧センサによる検出値は、バッテリ20の使用範囲である電圧V1から電圧V3まで誤差eがe1から−e1の範囲に収まるように設定(設計)されている。このため、比較例のシステム電圧センサは、一定且つ相対的に高い検出精度を備えている。
【0029】
一方、本実施形態のシステム電圧センサ32による検出値(すなわち、システム電圧Vsys)は、バッテリ20の使用範囲のうち電圧V2から電圧V3までは、比較例と同様に、誤差eがe1から−e1の範囲に収まるように設定されている。このため、本実施形態のシステム電圧センサ32は、電圧V2から電圧V3の範囲で一定且つ相対的に高い検出精度を備えている。しかし、電圧V1から電圧V2までは、誤差eがより大きくなり、例えば、真値が電圧V1であるとき、誤差eがe2から−e2の範囲に収まるように設定されている。このため、本実施形態のシステム電圧センサ32は、電圧V1から電圧V2の範囲で相対的に低い検出精度となっている。
【0030】
このように、本実施形態では、比較例と比較して電圧V1から電圧V2の範囲で検出精度が低くなっているが、後述する制御を採用することにより、低い検出精度を補うことが可能となる。
【0031】
2.プリチャージ制御
[2−1.プリチャージ制御の目的]
上記のように、本実施形態では、車両10の力行時にはバッテリ20からモータ12に電力を供給し、車両10の回生時にはモータ12の回生電力Pregをバッテリ20に充電する。バッテリ20とモータ12とを接続する際、高圧リレー22をオン(閉)とする。この際、モータ12及びインバータ14は作動させない場合(すなわち、インバータ14の図示しない複数のスイッチング素子それぞれの駆動デューティをゼロとする)場合、コンデンサ30にのみ電力が蓄積されることとなる。
【0032】
高圧リレー22をオン(閉)とする際のバッテリ20とコンデンサ30間のシステム電流Isys(以下「突入電流Ii」という。)が大き過ぎ、限界突入電流Ii_limを超えると、例えば、高圧リレー22の接点の破損を引き起こす可能性がある。ここでの突入電流Iiは、次の式(1)により求められる。
Ii=ΔV÷Rbat ・・・(1)
【0033】
上記式(1)において、ΔVは、バッテリ電圧Vbatとシステム電圧Vsysとの電圧差である(ΔV=Vbat−Vsys)。また、Rbatは、バッテリ20の内部抵抗である。なお、ここでの値は全て真値を意味する。
【0034】
上記式(1)からわかるように、電圧差ΔVを小さくすれば、突入電流Iiを小さくすることができる。そこで、本実施形態では、プリチャージ抵抗26と直列に配置されたプリチャージリレー24を先にオン(閉)として緩やかにシステム電圧Vsysを上昇させ、電圧差ΔVを小さくした後、高圧リレー22をオン(閉)として突入電流Iiを抑制する。
【0035】
また、上記式(1)からわかるように、内部抵抗Rbatが高ければ、突入電流Iiは小さくなる。そこで、本実施形態では、内部抵抗Rbatが高い場合、システム電圧センサ32の検出精度が低くなることを許容する。これに伴って、内部抵抗Rbatに応じて高圧リレー22をオン(閉)にする判定基準(後述する閾値THΔV)を切り替える。
【0036】
[2−2.プリチャージ制御の詳細]
(2−2−1.プリチャージ制御の全体的な流れ)
図4は、本実施形態に係るプリチャージ制御のフローチャートである。図5は、本実施形態に係るプリチャージ制御を行う際の高圧リレー22及びプリチャージリレー24のオンオフ(開閉)並びにバッテリ電圧Vbat、システム電圧Vsys及びシステム電流Isysの関係の例を示すタイムチャートである。図4のフローチャートを開始する際、プリチャージリレー24及び高圧リレー22はオフ(開)となっている。また、図5では、モータ12及びインバータ14は作動させず、コンデンサ30にのみ電力が蓄積される状態を示す。
【0037】
図4のステップS1において、ECU36は、高圧リレー22をオン(閉)にする閾値THΔVを設定する(詳細は後述する。)。ステップS2において、ECU36は、プリチャージリレー24をオン(閉)にする(図5の時点t1)。これにより、システム電圧Vsysは、緩やかに増加する。
【0038】
ステップS3において、ECU36は、バッテリ電圧センサ28からのバッテリ電圧Vbatとシステム電圧センサ32からのシステム電圧Vsysとの差電圧ΔVを検出する。ステップS4において、ECU36は、差電圧ΔVが、ステップS1で設定した閾値THΔV以下であるか否かを判定する。差電圧ΔVが閾値THΔV以下でない場合(S4:NO)、ステップS3に戻る。差電圧ΔVが閾値THΔV以下である場合(S4:YES)、ステップS5に進む。
【0039】
ステップS5において、ECU36は、高圧リレー22をオン(閉)にする(時点t2)。これにより、システム電圧Vsysは、バッテリ電圧Vbatに急激に近づく。ステップS6において、ECU36は、システム電圧Vsysがバッテリ電圧Vbatと等しくなり、差電圧ΔVがゼロになったか否かを判定する。当該判定は、差電圧ΔVが、ゼロに近い閾値以下になったか否かを見ることで判定することもできる。差電圧ΔVがゼロでない場合(S6:NO)、ステップS7において、ECU36は、ステップS3と同様に差電圧ΔVを検出してステップS6に戻る。
【0040】
差電圧ΔVがゼロである場合(S6:YES)、ステップS8において、ECU36は、所定時間経過後にプリチャージリレー24をオフにする(時点t3)。
【0041】
なお、図5では、上記のようにコンデンサ30のみに電力を蓄積するため、突入電流Iiが瞬間的に発生した場合を除き、システム電流Isysはゼロとなっている。
【0042】
(2−2−2.閾値THΔVの設定)
図6には、高圧リレー22をオン(閉)にする閾値THΔVを設定するフローチャート(S1の詳細)が示されている。ステップS11において、ECU36は、バッテリ電圧センサ28からバッテリ電圧Vbatを取得する。続くステップS12において、ECU36は、バッテリ20の内部抵抗Rbatが高いか否かを判定する。図2を参照して説明したように、内部抵抗Rbatが高いとき、バッテリ電圧Vbatが低くなる。そこで、本実施形態では、バッテリ電圧Vbatが所定範囲(V1以上V2未満)の間にあるか否かにより、内部抵抗Rbatが高いか否かを判定する。
【0043】
バッテリ電圧VbatがV1以上V2未満の範囲にあり、内部抵抗Rbatが高い場合(S12:YES)、ステップS13において、ECU36は、高内部抵抗用の閾値THΔV1を選択する。当該閾値THΔV1は、後述する低内部抵抗用の閾値THΔV2よりも大きい(THΔV1>THΔV2)。
【0044】
ステップS12において、バッテリ電圧VbatがV1以上V2未満の範囲になく、内部抵抗Rbatが高くない場合(S12:NO)、ステップS14に進む。
【0045】
ステップS14において、ECU36は、バッテリ20の内部抵抗Rbatが低いか否かを判定する。図2を参照して説明したように、内部抵抗Rbatが低いとき、バッテリ電圧Vbatが高くなる、なる。そこで、本実施形態では、バッテリ電圧Vbatが所定範囲(V2以上V3以下)の間にあるか否かにより、内部抵抗Rbatが高いか否かを判定する。
【0046】
バッテリ電圧VbatがV2以上V3以下の範囲にあり、内部抵抗Rbatが低い場合(S14:YES)、ステップS15において、ECU36は、低内部抵抗用の閾値THΔV2を選択する。当該閾値THΔV2は、前述の高内部抵抗用の閾値THΔV1よりも小さい(THΔV2<THΔV1)。
【0047】
ステップS14において、バッテリ電圧VbatがV2以上V3以下の範囲になく、内部抵抗Rbatが低くない場合(S14:NO)、バッテリ電圧Vbatは、バッテリ20の使用範囲(電圧V1〜V3)内にないといえる。このため、ステップS16において、ECU36は、エラー表示を行い、今回の処理を終了する。
【0048】
3.本実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、バッテリ20の内部抵抗Rbatが相対的に高いとき(バッテリ電圧VbatがV1以上V2未満であるとき)、閾値THΔV1を用い(図6のS13)、バッテリ20の内部抵抗Rbatが相対的に低いとき(バッテリ電圧VbatがV2以上V3以下であるとき)、閾値THΔV2を用いる(S15)。従って、バッテリ20の内部抵抗Rbatが高い電圧領域(V1以上V2未満)では、システム電圧センサ32の検出精度を低くすることが可能となる。
【0049】
すなわち、内部抵抗Rbatが高い場合、高圧リレー22がオンであるときのシステム電流Isysは、内部抵抗Rbatが低い場合と比べて緩やかに増加することとなる。また、内部抵抗Rbatが高い場合とは、バッテリ電圧Vbatが低い場合に対応する(図2参照)。このため、バッテリ電圧Vbatが低い場合、システム電圧センサ32の検出精度が相対的に低くても(システム電圧センサ32の検出値が真値と比べて低く、差電圧ΔVが大きくなっても)、高圧リレー22の接点等を破損する可能性は低くなる。この点を踏まえ、本実施形態では、内部抵抗Rbatが高い場合のバッテリ電圧Vbatの範囲(V1以上V2未満)では、システム電圧センサ32の検出精度を低くすることが可能となる(図3参照)。
【0050】
その結果、バッテリ20の内部抵抗Rbatにかかわらず、バッテリ20の使用範囲全体でシステム電圧センサ32の検出精度が高い場合(図3の比較例)と比べ、システム電圧センサ32の要求仕様を緩和することができる。従って、システム電圧センサ32についてコストダウンを図ることが可能となる。
【0051】
加えて、バッテリ20の内部抵抗Rbatが高い場合、閾値THΔV1(>THΔV2)を用いるため、バッテリ20の内部抵抗Rbatが高い領域(バッテリ電圧VbatがV1以上V2未満)において、システム電圧センサ32の検出精度が高い場合、高圧リレー22をより早くオン(閉)にすることが可能となる。これにより、プリチャージ制御を迅速に完了することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、ECU36は、バッテリ電圧Vbatが相対的に低い状態(V1以上V2未満)であることを検出した場合、相対的に値の大きい閾値THΔV1(>THΔV2)を用いて高圧リレー22を開状態から閉状態に切り替え、バッテリ電圧Vbatが相対的に高い状態(V2以上V3以下)であることを検出した場合、相対的に値の小さい閾値THΔV2(<THΔV1)を用いて高圧リレー22を開状態から閉状態に切り替える。
【0053】
バッテリ20の特性上、バッテリ電圧Vbatが相対的に低い状態は、内部抵抗Rbatが相対的に高い状態に対応し、バッテリ電圧Vbatが相対的に高い状態は、内部抵抗Rbatが相対的に低い状態に対応する。このため、上記構成によれば、内部抵抗Rbatを検出するものとしてバッテリ電圧センサ28をそのまま流用することが可能となる。従って、更なるコストダウンを図ることが可能となる。或いは、内部抵抗Rbatを検出するものとして、例えば、バッテリ電圧センサ28と、バッテリ20のSOCを検出するSOCセンサ(図示せず)の両方を備えるような場合、フェールセーフの点で優れたものとなる。
【0054】
4.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0055】
[4−1.搭載対象]
上記実施形態では、電源装置16を車両10に搭載したが、これに限らず、プリチャージ制御を要する別の対象に搭載してもよい。例えば、電源装置16を電車や船舶、航空機等の移動体に用いることもできる。或いは、電源装置16を工作機械に適用してもよい。
【0056】
[4−2.高圧バッテリ20]
上記実施形態では、高圧バッテリ20としてリチウムイオン電池を用いたが、使用状態に応じて内部抵抗が変化するものであれば、これに限らない。例えば、高圧バッテリ20は、ニッケル水素電池又はキャパシタ等の蓄電装置であってもよい。
【0057】
[4−3.高圧リレー22及びプリチャージリレー24]
上記実施形態では、高圧リレー22及びプリチャージリレー24をバッテリ20の正極側に設けたが、負極側に設けてもよい。
【0058】
[4−4.閾値THΔV]
上記実施形態では、高圧リレー22をオン(閉)にする閾値THΔVを設定するために用いる数値としてバッテリ電圧Vbatを用いたが、これに限らない。例えば、図示しないSOCセンサが検出したバッテリ20のSOCに基づいて内部抵抗Rbatの高低を判定してもよい(図2参照)。
【0059】
上記実施形態では、閾値THΔVを閾値THΔV1と閾値THΔV2の2つに分けたが、これに限らず、3つ以上であってもよい。この場合、例えば、バッテリ電圧Vbat又はSOCと閾値THΔVとの関係を規定したマップを用いることもできる。
【0060】
[4−5.電圧センサの検出精度]
上記実施形態では、バッテリ20の内部抵抗Rbatが高い電圧範囲では、システム電圧センサ32の検出精度を下げたが、これに限らない。例えば、当該範囲においてバッテリ電圧センサ28の検出精度を下げてもよい。或いは、バッテリ電圧センサ28とシステム電圧センサ32の両方の検出精度を下げてもよい。或いは、プリチャージ制御の時間短縮を目的として、バッテリ電圧センサ28とシステム電圧センサ32の検出精度は高いままとすることもできる。
【符号の説明】
【0061】
10…電動車両 12…走行用のモータ(電気負荷)
14…インバータ(電気負荷) 16…電源装置
18…電源回路 20…高圧バッテリ
22…高圧リレー(第1の開閉器)
24…プリチャージリレー(第2の開閉器)
26…プリチャージ抵抗
28…バッテリ電圧センサ(電源電圧検出部、内部抵抗検出部)
30…コンデンサ(電気負荷)
32…システム電圧センサ(システム電圧検出部)
36…ECU(制御部) Rbat…バッテリの内部抵抗
THΔV1…第1の閾値 THΔV2…第2の閾値
Vbat…バッテリ電圧(電源電圧、バッテリの出力電圧)
Vsys…システム電圧(負荷の入力電圧)
ΔV…差電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気負荷に電源回路を介して接続されて前記電気負荷に電力を供給するバッテリと、前記電源回路において前記バッテリの正負いずれか一方の端子と前記電気負荷の間で接点が接続された第1の開閉器と、前記第1の開閉器と並列に接点が接続された第2の開閉器と、前記第1の開閉器と並列に且つ前記第2の開閉器と直列に接続された抵抗と、前記第1及び第2の開閉器を開閉して前記電気負荷への電力の供給を制御する制御部とを備えた電源装置であって、さらに、
前記バッテリと前記電源回路の間の電源電圧を検出する電源電圧検出部と、
前記電源回路と前記電気負荷との間のシステム電圧を検出するシステム電圧検出部と、
前記バッテリの内部抵抗を検出する内部抵抗検出部と
を有し、
前記制御部は、前記第1の開閉器が開状態であるとき、前記第2の開閉器を開状態から閉状態に切り替えた後、前記電源電圧検出部が検出した前記電源電圧と前記システム電圧検出部が検出したシステム電圧との差電圧に応じて、前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替え、
さらに、前記制御部は、前記内部抵抗検出部が検出した前記バッテリの内部抵抗が相対的に高い状態であることを検出した場合、前記差電圧に関する第1の閾値を用いて前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替え、前記バッテリの内部抵抗が相対的に低い状態であることを検出した場合、前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を用いて前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替える
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置において、
前記内部抵抗検出部は、前記電源電圧検出部を含み、
前記制御部は、前記電源電圧が相対的に低い状態であることを検出した場合、前記第1の閾値を用いて前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替え、前記電源電圧が相対的に高い状態であることを検出した場合、前記第2の閾値を用いて前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替える
ことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
電気負荷に電源回路を介して接続されて前記電気負荷に電力を供給するバッテリと、前記電源回路に前記バッテリの正負いずれか一方の端子と前記電気負荷の間で接点が接続された第1の開閉器と、前記第1の開閉器と並列に接点が接続された第2の開閉器と、前記第1の開閉器と並列に且つ前記第2の開閉器と直列に接続された抵抗と、前記第1及び第2の開閉器を開閉して前記電気負荷への電力の供給を制御する制御部とを備えた電源装置の制御方法であって、
前記第1の開閉器を開状態としつつ、前記第2の開閉器を開状態から閉状態に切り替える第1切替ステップと、
前記第2の開閉器を閉状態に保ちつつ、前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替える第2切替ステップと、
前記第1の開閉器を閉状態に保ちつつ、前記第2の開閉器を閉状態から開状態に切り替える第3切替ステップとを備え、
前記第2切替ステップでは、
前記バッテリの出力電圧と、前記電気負荷の入力電圧と、前記バッテリの内部抵抗とを検出し、
前記バッテリの内部抵抗が相対的に高い状態であることを検出した場合、前記バッテリの出力電圧と前記電気負荷の入力電圧との差電圧が第1の所定値を上回ったときに前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替え、前記バッテリの内部抵抗が相対的に低い状態であることを検出した場合、前記差電圧が前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値を上回ったときに前記第1の開閉器を開状態から閉状態に切り替える
ことを特徴とする電源装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222955(P2012−222955A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86130(P2011−86130)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】