説明

電源装置

【課題】 部品の配置自由度を損なうことなく、各種の冷却対象となる部品を効率よく冷却することができる電源装置を提供すること。
【解決手段】 電源装置Aは、長手状に延びる風路9と、風路9を規定する仕切板7A,7Cと、風路9に風を送り込むファン8と、風路9に沿って配置される複数の電気部品31,32と、を備え、風路9を通る風によって電気部品31,32が冷却されるように構成されており、仕切板7Aは、風路9に臨む開口71,72を有しており、上記複数の部品31,32は、上記開口71,72に嵌合しており、電気部品31,32の一部が風路9に露出する構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば溶接用の電源装置に関し、特に空気冷却のためのファンおよび風路を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溶接用の電源装置には、電源回路を構成するための複数の部品と、長手状に延びる風路と、この風路に風を送り込むファンとを備えたものがある(たとえば、特許文献1を参照)。同文献に開示された電源装置では、風路の側壁に沿って複数の部品が配置され、その風路の長手方向一端部にファンが設けられている。ファンにより風路内に送り込まれた風は各部品から熱を奪いながら風路の長手方向他端部の出口より吹き出る。特に発熱しやすい部品は、効率よく空気冷却されるようにファンの近傍に配置されている。
【0003】
このような溶接用の電源装置は、工場などの粉塵が多い雰囲気環境下で使用され、風路内に粉塵が入り込んで集積しやすい。そのため、電源装置の運用に際しては、たとえばエアブローガンを風路の出口からその内部に向け、圧縮空気の噴射によって内部の粉塵を定期的に吹き飛ばすといった除塵作業が課されている。
【0004】
しかしながら、上記従来の電源装置では、ファンに対して遠い位置にある部品が近い位置のものよりも冷却されにくく、部品の位置によって冷却効果に差が生じるので、風路の側壁に沿う各部品を効率よく冷却することができないという難点があった。このような問題は、特に、比較的大型であり、発熱も大きなリアクトルやトランスといった部品について顕著なものである。
【0005】
さらに、装置内においては、発熱が大きい部品をファンの近傍に配置する必要があるので、その部品の装置内や回路基板上における位置が制約され、部品配置の自由度がそれほど高くないという難点もある。
【0006】
除塵作業では、風路の出口から内部に向けて噴射された圧縮空気が風路の長手方向一端部に位置するファンに対して直接当たりやすくなるので、ファンが高速度に逆転して破損するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−229644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情のもとで考え出されたものであって、部品の配置自由度を損なうことなく、各種の冷却対象となる部品を効率よく冷却することができる電源装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明により提供される電源装置は、長手状に延びる風路と、上記風路を規定する仕切板と、上記風路に風を送り込むファンと、上記風路に沿って配置される複数の部品と、を備え、上記風路を通る風によって上記部品が冷却されるように構成された電源装置であって、上記仕切板は、上記風路に臨む開口を有しており、上記複数の部品は、上記開口に嵌合する電気部品を含んでおり、上記電気部品の一部が上記風路に露出していることを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記電気部品は、リアクトルまたはトランスであり、それらの本体部が上記風路内に位置している。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記本体部は、コア部と、上記コア部に巻き回された巻線部と、上記開口を封鎖する樹脂カバーとを備えている。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記樹脂カバーが上記コア部および上記巻線部を覆っている。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記樹脂カバーには、複数の放熱フィンが一体形成されている。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の放熱フィンは、上記樹脂カバーの端面において上記風路の長手方向に延び、かつ、上記風路の短手方向に並んでいる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記ファンは、上記風路の長手方向中間部に配置されており、上記風路の長手方向両端部は、風の出口になっている。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記ファンが、上記風路の長手方向と直交する方向に風を噴出すように配置されている。
【0018】
上記構成によると、上記ファンによって上記風路に送り込まれた風によって、上記電気部品の上記風路に露出する部分が直接冷却されることになる。このため、上記電気部品を効率的に冷却することが可能となっている。さらに、上記電気部品を効率的に冷却可能であるために、上記電気部品を以前よりも上記ファンから離れた位置に設置することが可能となり、上記電気部品の配置自由度が増加する。したがって、本発明によれば、上記複数の部品の配置自由度を損ないにくく、かつ、上記電気部品を効率的に冷却可能である。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る電源装置の実施形態の一例を示す側面図である。
【図2】図1のII矢印方向の図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図2のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図2のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図6に示す電気部品の一例を示す斜視図である。
【図9】図6のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図6のX−X線に沿う断面図である。
【図11】図6に示す電気部品の別の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1〜図7は、本発明に係る電源装置の一実施形態を示している。本実施形態の電源装置Aは、たとえばアーク溶接に必要な大電流および高電圧を出力させるために用いられる。電源装置Aは、一般的に工場などの粉塵が多い雰囲気環境下で使用される。
【0023】
電源装置Aは、ベース部材1、筐体カバー2、電源回路を構成する複数の電子部品30および電気部品31,32、ヒートシンク5、第1の仕切板6、第2の仕切板7A,7B、第3の仕切板7C、および冷却用の第1および第2のファン8,8’を備える。装置内には、第2の仕切板7Aの下側部分、第3の仕切板7C、およびベース部材1の一部によって囲われた第1の風路9が設けられているとともに、この第1の風路9とは別に、第1の仕切板6の一部、第2の仕切板7Aの上側部分、第2の仕切板7B、および第3の仕切板7Cの一部によって囲われた第2の風路9’が設けられている。これらの第1および第2の風路9,9’は、電源装置Aの前後方向(以下、「F方向」と称する)に長手状に延びている。装置内において第1および第2の風路9,9’の外側方には、ベース部材1の一部、筐体カバー2、第1の仕切板6、および、第2の仕切板7Aに囲まれた配置空間B1が設けられている。さらに、ベース部材1の一部、筐体カバー2の一部、第1の仕切板6の一部、第2の仕切板7B、および第3の仕切板7Cの一部によって囲われたファン8,8’の配置空間B2が設けられている。配置空間B1は、第1の仕切板6より上方の空間と連続している。
【0024】
ベース部材1は、F方向に長い長矩形状の平板部材である。ベース部材1の下面には、ブラケットを介して複数の車輪10が軸支されている。ベース部材1は、これらの車輪10によって床面上を移動可能である。図3に示すように、ベース部材1の上面中央部には、ベース部材1の上面に対して垂直に第2の仕切板7Aが配置されている。この第2の仕切板7Aの下側部分片面とベース部材1の上面一部とを囲うように第3の仕切板7Cが配置されている。
【0025】
筐体カバー2は、たとえば金属製であり、装置内を保護するためのものである。筐体カバー2は、ベース部材1に対して着脱可能な箱状を呈し、ベース部材1の両側部に沿って鉛直面をなす2つの側面部2A,2Bと、ベース部材1の前端部および後端部に沿って鉛直面をなす正面部2Cおよび背面部2Dを有する。一方の側面部2AにおいてF方向両端部寄りの領域には、外部の空気を第1および第2のファン8,8’の配置空間B2に導くための吸気孔部20が設けられている。吸気孔部20は比較的小さな多数のスリット孔よりなる。正面部2Cおよび背面部2Dにおいて第1および第2の風路9,9’と対応する領域には、それらの風路9,9’から風を外部に導くための通風孔部21が設けられている。通風孔部21は、風通しを良好とするために比較的大きな多数の孔よりなる。
【0026】
第1の仕切板6は、たとえば金属製であり、図3に示すように、第1および第2のファン8,8’の配置空間B2や第2の風路9’といった空間と電子部品30の配置空間B1とを分けるものである。第1の仕切板6は、F方向にベース部材1と同程度の長さを有し、その短手方向一端が第2の仕切板7Aの上端に垂直に接合される。これにより、第1の仕切板6は、筐体カバー2の上下方向中間部に水平に位置する。第1の仕切板6は、ファン8,8’の配置空間B2および第2の風路9’の上部壁をなす。
【0027】
第2の仕切板7Aは、たとえば金属製であり、第1および第2の風路9,9’と配置空間B1とを仕切るものである。第2の仕切板7Aは、ベース部材1と同程度のF方向寸法を有し、ベース部材1および第1の仕切板6に対して垂直に配置される。すなわち、第2の仕切板7Aは、第1および第2の風路9,9’の垂直壁をなす。この第2の仕切板7Aの下側部分には、電気部品31,32が貫通して嵌合可能な開口71,72が設けられている。図6に示すように、第2の仕切板7Aの風路9’の内側となる片面上側部分には、ヒートシンク5が配置される。さらに、第2の仕切板7Aには、ヒートシンク5の一部を配置空間B1に対して露出させるための開口73が設けられている。
【0028】
第2の仕切板7Bは、たとえば金属製であり、第2の風路9’と配置空間B2とを仕切るものである。第2の仕切板7Bも、ベース部材1と同程度のF方向寸法を有する。第2の仕切板7Bは、第2の仕切板7Aの上側部分に対して対向するように配置され、その上端および下端が第1の仕切板6および第3の仕切板7Cに対して垂直に接合される。すなわち、第2の仕切板7Bは、第2の風路9’の垂直壁をなす。第2の仕切板7BのF方向中間部には、第2の風路9’に対して第2のファン8’を臨ませる開口70’が設けられている(図7参照)。
【0029】
第3の仕切板7Cは、たとえば金属製であり、第1の風路9を囲う断面L字状のものである。第3の仕切板7Cも、ベース部材1と同程度のF方向寸法を有する。第3の仕切板7Cの水平部分の先端は、第2の仕切板7Aの中央部に垂直に接合される一方、鉛直部分の基端は、ベース部材1に垂直に接合される。これにより、第3の仕切板7Cの水平部分は、第1の風路9の上部壁および第2の風路9’の底部壁をなし、その鉛直部分は、第2の仕切板7Aの下側部分に対向した第1の風路9の垂直壁をなす。第3の仕切板7Cの鉛直部分におけるF方向中間部には、第1の風路9に対して第1のファン8を臨ませる開口70が設けられている(図6参照)。
【0030】
ヒートシンク5は、たとえばアルミニウム製の放熱部材であり、第2の仕切板7Aの片面に固定される基部50と、基部50の一端面から延出してF方向に延びるとともに上下方向に並ぶ複数のフィン51とを有する。基部50は第2の仕切板7Aに形成された開口73を封鎖している。基部50の他端面の大部分は開口73から配置空間B1に露出している。複数のフィン51は、基部50から伝わってきた熱を空気中に効率よく放熱する部分であり、放熱効果を高めるために表面積が大きくなっている。このヒートシンク5は、図7によく示すように、F方向において風路9’の全長と同程度か短くなっている。本実施形態においてヒートシンク5は冷却対象となる。なお、ヒートシンク5は、第2の仕切板7Aに沿って複数個がF方向に並ぶように配置されていてもよい。
【0031】
複数の電子部品30は、スイッチング素子やダイオード、コンデンサといったものであり、第2の仕切板7Aの開口73から配置空間B1に露出する基部50の他端面に直接設置されている。各電子部品30からの熱は、ヒートシンク5へと速やかに伝わる。
【0032】
電気部品31は、たとえばトランスであり、図8および図9に示すように、本体部31Aと、5本の端子部31Bとを有する。本体部31Aは、図9に示すように、コア部311、一次巻線部312、二次巻線部313、支持部材314、および、樹脂カバー315を備えている。コア部311は、たとえばコの字状あるいはEの字状の金属芯である。一次および二次巻線部312,313はそれぞれコイルを形成するようにコア部311に巻き回されている。本実施形態では二次巻線部313を挟むように一次巻線部312が配置されている。支持部材314は、板状の底部314Aと蓋部314Bとの間にコア部311を挟んで固定している。底部314A、蓋部314B、およびコア部311は複数のネジ314aによって固定されている。樹脂カバー315は、コア部311、一次巻線部312、二次巻線部313、および、支持部材314の底部314Aを覆うように、たとえばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂によって形成されている。樹脂カバー315は、一端部315aが第1の風路9に対して臨み、他端部315bが配置空間B1に臨むように後述する開口71に嵌合させられている。樹脂カバー315の一端側315aには、複数の放熱フィン316が形成されている。5本の端子部31Bは、樹脂カバー315の他端側315bから突出するように設けられている。各端子部31Bは、それぞれ、一次巻線部312の両端、二次巻線部313の両端および二次巻線部313の適所に接続されている。
【0033】
複数の放熱フィン316は、F方向に沿って延び、上下方向に並ぶように形成されている。各放熱フィン316は図9に示すように断面三角形状となっている。
【0034】
さらに、電気部品31には1対の接続金具33が付属している。図8に示すように、接続金具33は電気部品31を電源装置Aに組み込む前に予め樹脂カバー315に取り付けられている。各接続金具33は、図9に示すように、断面L字状であり、互いに直交する1対の板片33A,33Bによって構成されている。板片33Aには第2の仕切板7Aの厚み方向を長手方向とする長孔33aが形成されている。板片33Bには仕切板7Aの厚み方向に貫通するネジ孔33bが形成されている。この接続金具33は、長孔33aに嵌合するネジ331によって樹脂カバー315に取り付けられている。電気部品31の第2の仕切板7Aへの固定は、ネジ穴33bに通されるネジ332とナット333を介して行われる。このような取り付け構造によれば、ネジ331を緩めることによって、長孔33aの長手方向長さ分だけ、樹脂カバー315を仕切板7Aの厚み方向に動かすことが可能となっている。
【0035】
電気部品32は、たとえばリアクトルであり、本体部32Aと、端子部32Bとを有する。本体部32Aは、図10に示すように、コア部321と、コア部321に巻き回された巻線部322と、コア部321を固定する固定部材323と、固定部材323を保持する樹脂カバー324とを備えている。この電気部品32は、後述する開口72へ嵌め込まれ、電気部品31に用いたのと同様の接続金具33を用いて第2の仕切板7Aに固定される。接続金具33は樹脂カバー324に取り付けられる。このような取り付け構造によれば、ネジ331を緩めることによって、長孔33aの長手方向長さ分だけ、樹脂カバー324を仕切板7Aの厚み方向に動かすことが可能となっている。
【0036】
このような電源装置Aに用いられる電気部品31,32は、比較的大きくて重くなる傾向があり、固定時の重量バランスをとるため、第1の風路9に突出する樹脂カバー315,324の量を調整するのが望ましい。まず、第1の風路9に突出する樹脂カバー315,324の量は、接続金具33の樹脂カバー315,324に対する取り付け位置の設定によって調整可能である。さらに本実施形態では、接続金具33を樹脂カバー315,324に取り付け、第2の仕切板7Aに固定した後であっても、上述したようにネジ331を緩めることにより樹脂カバー315,324を仕切板7Aの厚み方向に動かしてその位置を調整することができる。移動後にネジ331を締めなおすことにより、移動させた位置で樹脂カバー315,324を固定することもできる。
【0037】
第1および第2ファン8,8’はたとえば複数の羽根と電動機とが一体化された軸流式のものである。
【0038】
図3に示すように、第1のファン8は、空気の吸入口80および吐出口81を有する。第1のファン8は、第3の仕切板7Cの開口70に吐出口81が一致して配置される。すなわち、第1のファン8は、第1の風路9の長手方向中間部に配置され、吐出口81が風路9の内側に臨むように位置する。これにより、第1のファン8の送風方向は、第1の風路9の長手方向に対して水平面内で交差する方向となる。吸入口80は、配置空間B2に位置し、側面部2Aの内面に対して所定の間隔をもって対向する。この側面部2Aにおける吸入口80の正面領域には、吸気孔部20が設けられていない。すなわち、側面部2AのF方向両端部寄りに位置する吸気孔部20に対して吸入口80がある程度離れて位置する。
【0039】
図3に示すように、第2のファン8’は、空気の吸入口80’および吐出口81’を有する。第2のファン8’は、第2の仕切板7Bの開口70’に吐出口81’が一致して配置される。すなわち、第2のファン8’は、第2の風路9’の長手方向中間部に配置され、吐出口81’が風路9’の内側に臨むように位置する。これにより、第2のファン8’の送風方向は、第2の風路9’の長手方向に対して水平面内で交差する方向となる。吸入口80’は、配置空間B2に位置し、側面部2Aの内面に対して所定の間隔をもって対向する。この側面部2Aにおける吸入口80’の正面領域には、吸気孔部20が設けられていない。すなわち、側面部2AのF方向両端部寄りに位置する吸気孔部20に対して吸入口80’がある程度離れた位置する。
【0040】
図6に示すように、第1の風路9は、第1のファン8からの風によって電気部品31,32を直接冷却し、その風を長手方向両端部に導くものである。この第1の風路9は、第2の仕切板7Aの下側部分および第3の仕切板7Cの鉛直部分を幅方向に対向する一対の垂直壁とし、さらに第3の仕切板7Cの水平部分およびベース部材1の一部を上下方向に対向する上部壁および底部壁として囲われており、横断面矩形状に形成されている。第1の風路9の長手方向両端部は、風が吹き出る出口90となる。第1のファン8から第1の風路9に送り込まれた風は、電気部品32の本体部32Aに直接当たって第1の風路9の長手方向両端部へと二手に分かれる。さらにその一手は電気部品31の本体部31Aの放熱フィン316に沿って流れる。従って第1のファン8から第1の風路9に送り込まれた風は、本体部31A,32Aから多くの熱を奪いながら出口90から吹き出る。すなわち、第1の風路9内において第1のファン8から出口90までの風が流れる距離は、第1の風路9全体の長さよりも短くなり、その風が速やかに外部に排出される。これにより、電気部品31,32は、第1の風路9を流れる風によって効率よく空気冷却される。出口90から吹き出る風は、筐体カバー2の正面部2Cおよび背面部2Dに設けた通風孔部21を通って速やかに外部に吹き出る。
【0041】
図7に示すように、第2の風路9’は、第2のファン8’からの風によってヒートシンク5を冷却し、その風を長手方向両端部に導くものである。この第2の風路9’は、第2の仕切板7Aの上側部分および第2の仕切板7Bを幅方向に対向する一対の垂直壁とし、さらに第1の仕切板6の一部および第3の仕切板7Cの水平部分を上下方向に対向する上部壁および底部壁として囲われており、横断面矩形状に形成されている。第2の風路9’の長手方向両端部は風が吹き出る出口90’となる。第2のファン8’から第2の風路9’内に送り込まれた風は、ヒートシンク5に直接当たって第2の風路9’の長手方向両端部へと二手に分かれ、このヒートシンク5から多くの熱を奪いながら出口90’から吹き出る。すなわち、第2の風路9’内において第2のファン8’から出口90’までの風が流れる距離も第2の風路9’全体の長さよりも短くなり、その風が速やかに外部に排出される。これにより、電子部品30は、ヒートシンク5を介して効率よく冷却される。出口90’から吹き出る風は、筐体カバー2の正面部2Cおよび背面部2Dに設けた通気孔部21を通って速やかに外部に吹き出る。
【0042】
次に、上記電源装置Aの作用について説明する。
【0043】
電源装置Aでは、溶接用の大電流および高電圧を出力するのに伴い、複数の電子部品30および電気部品31,32が発熱してその温度が高まる。特に、トランスやリアクトルといった電気部品31,32は、作動時に発熱量が多くて外形サイズも比較的大きくなっている。
【0044】
電気部品31では、一次および二次巻線部312,313で生じた熱がコア部311を通じて樹脂カバー315に伝わる。この樹脂カバー315は複数の放熱フィン316が形成されており、表面積が大きくなっている。さらに複数の放熱フィン316は、開口71から第1の風路9に露出しており、ファン8によって送り込まれた空気に直接触れるようになっている。このため、電源装置Aでは、電気部品31の駆動時に一次および二次巻線部312,313で生じた熱が効率よく奪われ、この電気部品31が冷却される。
【0045】
電気部品32では、コア部321および巻線部322が開口72から第1の風路9に露出しており、第1のファン8から送り込まれた風によって直接冷却される。このため、電源装置Aでは、電気部品32の駆動時に巻線部322で生じた熱が効率よく奪われ、電気部品32が冷却される。
【0046】
さらに、本実施形態では、複数の放熱フィン316がF方向に沿うように配置されており、放熱フィン316に沿って第1の風路9内を空気が流れるようになっている。このため、電源装置Aでは、より効率よく冷却対象となる電気部品31,32を冷却することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、電子部品30がヒートシンク5の基部50に設置されているため、電子部品30の熱は、空気中に伝わるほか速やかに複数のフィン51へ伝わる。複数のフィン51は空気に触れる表面積が大きくなるように形成されており、電子部品30からの熱は複数のフィン51によって風路9’内の空気中に効率よく放熱される。
【0048】
第1および第2のファン8,8’が動作すると、吸入口80,80’周辺の空気が第1および第2のファン8,8’に取り込まれ、その空気が第1および第2の風路9,9’の長手方向に対して交差する方向に吐出口81から風路9,9’内に送り出される。それに伴い配置空間B2には、吸気孔部20から外部の空気が流入する。
【0049】
このとき、吸入口80,80’に対して離れた位置の吸気孔部20が空気の流入抵抗となり、吸入口80,80’付近と吸気孔部20付近との間に十分な圧力差が生じる。これにより、配置空間B2内は負圧となる。吸気孔部20から配置空間B2内に吸気された粉塵を含む空気は、各ファン8,8’の吸入口80,80’へと減速・滞留しながら流れるうちに粉塵が十分取り除かれ、第1および第2のファン8,8’は、粉塵の量がより少ない空気を取り込むことができる。そのため、これらのファン8,8’から風とともに第1および第2の風路9,9’内に粉塵が入るのを効果的に抑えることができる。
【0050】
さらに本実施形態では、接続金具33に設けられた長孔33aに沿って電気部品31,32を動かすことが可能となっている。このため、接続金具33を第2の仕切板7Aに固定したあとにも、重量バランスをとるべく、第1の風路9に臨む樹脂カバー315,324の突出量を微調整することが可能となっている。従って、電源装置Aはより好ましい重量バランスを保つことが可能である。
【0051】
第1および第2の風路9,9’が上段と下段とに分けられているため、下段の電気部品31,32の発熱によって温められた空気が上方に移動することはなく、上段の電子部品30と下段の電気部品31,32とは、互いの発熱による影響を受けずに効率よく空気冷却される。
【0052】
また、たとえば上段のヒートシンク5よりも下段の電気部品31,32の方が発熱によって温度が高くなりやすい場合、下段の第1のファン8として、送風力が比較的強いものとし、あるいは大型のものを採用することができる。すなわち、第1および第2のファン8,8’は、冷却能力が異なるものとすることができる。さらには、たとえば電子部品30および電気部品31,32の動作が時間的に大きく異なる場合、それに応じて第1および第2のファン8,8’を作動させるタイミングをそれぞれ異なるようにすることもできる。
【0053】
本実施形態の電源装置Aにおいては、第1および第2のファン8,8’が第1および第2の風路9,9’の中間部分にある。このためF方向における前後双方に第1および第2のファン8,8’に比較的近い領域が生じることになる。従って、電子部品30や電気部品31,32は、第1および第2の風路9,9’に沿うF方向においてある程度自由に配置することができる。
【0054】
上記電源装置Aの運用時には、第1および第2の風路9,9’内には、ある程度の粉塵が空気とともに入り込むため、比較的長時間にわたって使用された後の第1および第2の風路9,9’内は、ヒートシンク5のフィン51の隙間などに粉塵が堆積した状態になりがちである。そうした状態のまま電源装置Aを使用していると、ヒートシンク5や放熱フィン316の放熱効果が弱まることがある。その結果、電子部品30および電気部品31,32が十分に冷却されずに熱的に損傷してしまうおそれがある。そのため、運用に際しては、図示しないエアブローガンを用いて第1および第2の風路9,9’内の粉塵を定期的に吹き飛ばすといった除塵作業が行われる。
【0055】
エアブローガンを用いた除塵作業では、筐体カバー2を取り外して第1および第2の風路9,9’の出口90,90’を露出させた状態とし、それらの出口90,90’のうち長手方向いずれか一方側からエアブローガンによって風路9,9’内に圧縮空気を噴射する。その際、圧縮空気の噴流方向は、第1および第2のファン8,8’の送風方向に対して概ね直角に交差した方向となり、圧縮空気は、第1および第2のファン8,8’に対して風圧を作用させにくい。これにより、エアブローガンを用いた除塵作業時においても、ファン8,8’が高速に逆回転して損壊するといったことがなく、容易に除塵作業を行うことができる。
【0056】
電子部品30や電気部品31,32の端子部31B,32Bが位置する配置空間B1は、第1および第2の仕切板6,7Aによって第1および第2の風路9,9’ならびに第1および第2のファン8,8’の配置空間B2と完全に仕切られている。さらに、第2の仕切板7Aに形成された開口71,72には電気部品31,32が嵌合しており、開口71,72を通して配置空間B1に空気が流れにくくなっている。また、第2の仕切板7Aに形成された開口73はヒートシンク5の基部50によって封鎖されている。このため、ファン8,8’からの風や外部の空気が配置空間B1に積極的に入り込む余地がない。従って、配置空間B1は、除塵作業を必要とするほど粉塵が集積せず、粉塵による電子部品30や電気部品31,32の誤作動を招くおそれもない。
【0057】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0058】
上記の各実施形態で示した構成は、あくまでも一例にすぎず、各請求項に記載した事項の範囲内での各部の変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0059】
たとえば、図11に示すように、電気部品31の樹脂カバー315にフランジ部315cを設けてもよい。フランジ部315cは、第2の仕切板7Aの厚み方向視において開口71の外側に広がるように形成されている。このフランジ部315cが第2の仕切板7Aに当接するように電気部品31を設置すると、開口71をより良好に封止することができる。このようにすると、開口71を通して第1の風路9から配置空間B1へ空気がより一層流れにくくなり、配置空間B1に粉塵が入るのを防ぐことができる。なお、電気部品32の樹脂カバー324においても同様の構造とすることができる。また、必要に応じてこれらの場合も長孔33aに沿って樹脂カバー315,324を動かして電気部品31,32の位置調整を行うことが可能である。
【0060】
また、たとえば、上記実施形態では、電気部品32はコア部321および巻線部322が樹脂カバー324から露出する構造となっているが、コア部321および巻線部322が樹脂カバー324に覆われた構造であっても構わない。さらにその場合、放熱フィン316と同様の放熱フィンを樹脂カバー324に設けてもよい。
【0061】
また、たとえば、上記実施形態における電気部品31では、コア部311および一次、二次巻線部312,313が樹脂カバー315に覆われているが、コア部311および一次、二次巻線部312,313が樹脂カバー315から露出していても構わない。
【0062】
また、上記実施形態では、第1のファン8と対向する第2の仕切板7Aに形成された開口71,72に電気部品31,32が嵌合させられているが、装置の構造に応じてファンと対向しない仕切板に開口を設け電気部品を嵌合させても構わない。
【0063】
また、たとえば、上記実施形態では、ヒートシンク5と電気部品31,32とが別々の風路9,9’内に設置されているが、それらを同一の風路内に設置してもよい。なお、その場合、風路およびファンを1つずつとしても構わない。
【0064】
また、電子部品30の一部を風路9’に直接臨ませるように配置してもよい。
【符号の説明】
【0065】
A 電源装置
1 ベース部材
2 筐体カバー
2A,2B 側面部
2C 正面部
2D 背面部
20 吸気孔部
21 通風孔部
30 電子部品
31,32 電気部品
31A,32A 本体部
31B,32B 端子部
311,321 コア部
312 一次巻線部
313 二次巻線部
314 支持部材
314A 底部
314B 蓋部
315,324 樹脂カバー
315a 一端部
315b 他端部
315c フランジ部
316 放熱フィン
322 巻線部
323 固定部材
33 接続金具
33A,33B 板片
33a 長孔
33b ネジ孔
331,332 ネジ
333 ナット
5 ヒートシンク
50 基部
51 フィン
6 第1の仕切板
7A,7B 第2の仕切板
7C 第3の仕切板
70,71,72,73 開口
8 ファン(第1のファン)
8’ 第2のファン
80,80’ 吸入口
81,81’ 吐出口
9 風路(第1の風路)
9’ 第2の風路
90,90’ (風路の)出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状に延びる風路と、
上記風路を規定する仕切板と、
上記風路に風を送り込むファンと、
上記風路に沿って配置される複数の部品と、
を備え、
上記風路を通る風によって上記部品が冷却されるように構成された電源装置であって、
上記仕切板は、上記風路に臨む開口を有しており、
上記複数の部品は、上記開口に嵌合する電気部品を含んでおり、
上記電気部品の一部が上記風路に露出していることを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
上記電気部品は、リアクトルまたはトランスであり、それらの本体部が上記風路内に位置している、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
上記本体部は、コア部と、上記コア部に巻き回された巻線部と、上記開口を封鎖する樹脂カバーとを備えている、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
上記樹脂カバーが上記コア部および上記巻線部を覆っている、請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
上記樹脂カバーには、複数の放熱フィンが一体形成されている、請求項3または4に記載の電源装置。
【請求項6】
上記複数の放熱フィンは、上記樹脂カバーの端面において上記風路の長手方向に延び、かつ、上記風路の短手方向に並んでいる、請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
上記ファンは、上記風路の長手方向中間部に配置されており、上記風路の長手方向両端部は、風の出口になっている、請求項1ないし6のいずれかに記載の電源装置。
【請求項8】
上記ファンが、上記風路の長手方向と直交する方向に風を噴出すように配置されている、請求項7に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−210769(P2011−210769A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74437(P2010−74437)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】