説明

電源装置

【課題】発電機と入力電圧を昇圧または降圧して出力する電圧変換部と蓄電部を有する電源装置において、電源装置の出力が低い場合でも電源装置のエネルギー効率の低下を排除した電源装置を提供すること。
【解決手段】発電機からの出力を電圧変換部を介して負荷に供給する第1の電力供給経路と、蓄電部からの出力を電圧変換部を介さずに負荷に供給する第2の電力供給経路と、前記負荷の消費電流を検出する電流検出部と、第1の電力供給経路と前記第2の電力供給経路とを切り替える制御部とを有し、制御部は、電流検出部が変換効率が最低値と最高値の中間値以上となるときの消費電流を検出したときに第1の電力供給経路に切り替え、電流検出部が所望の変換効率が中間値より低くなるときの消費電流を検出したときに第2の電力供給経路に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機と入力電圧を昇圧または降圧して出力する電圧変換部と蓄電部を有する電源装置に関し、特に電源装置のエネルギー効率の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携帯機器の電源として、現在リチウムイオン二次電池などの二次電池が用いられているが、容量が少なく使用可能な時間が短かったり、充電しなければならなかったりといった煩わしさがある。そこで、充電池からの入力出力電圧がその許容範囲を超えて出力される場合は、負荷を駆動できなかったり、負荷を破損させてしまったりする恐れがある。そこで、燃料電池の出力を電圧変換部を介して負荷へ電力を供給する電源システムが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、携帯機器用の電源は小型であることが求められるため、電圧変換部は小型で高効率なスイッチングコンバータが用いられることが多い。発電機から供給される入力電圧を所定の出力電圧となるように昇圧または降圧するスイッチングコンバータである電圧変換部の概略図を図2に示す。
【0004】
電圧変換部103において設定された出力電圧Voよりも発電機100からの入力電圧Viの方が高い場合には、制御回路208は、MOS−FETである第2切替スイッチ204を非導通状態とする。また、制御回路208は、MOS−FETである第1切替スイッチ201を所定の周期内で導通状態と非導通状態になるようにスイッチング動作をさせることによって入力電圧を降圧して出力する。
【0005】
電圧変換部103において設定された出力電圧Voよりも発電機100からの入力電圧Viの方が低い場合には、制御回路208は、第1切替スイッチ201を導通状態とする。また、制御回路208は、第2切替スイッチ204を所定の周期内で導通状態と非導通状態になるようにスイッチング動作をさせることによって入力電圧を昇圧して出力する。
【0006】
電圧変換部103が昇圧する際も降圧する際も、第1切替スイッチ201及び第2切替スイッチ204の導通状態の切り替え時に、第1切替スイッチ201及び第2切替スイッチ204及びダイオード202及びダイオード205においてオン/オフ状態の遷移に電力が消費されるスイッチング損失が生じる。そのため、電圧変換部の動作周波数を高くすると単位時間あたりのスイッチングの回数が増加するためスイッチング損失も増加する。また、周波数が固定で負荷の消費電流が小さい場合、すなわち電圧変換部の出力が小さいときは、電圧変換部の出力が大きい場合に比べて、電圧変換部の出力に対するスイッチング損失の割合が高くなるため、電圧変換部の変換効率が低くなるという問題が生じる。
【0007】
そこで、電圧変換部の出力が小さいときはスイッチング周波数を低くし、1周期あたりのスイッチング損失の割合を低くすることで変換効率を高める方法が知られている。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−123110号公報
【特許文献2】特開平10−215569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の技術では、電圧変換部の設計時に、低いスイッチング動作時においても安定的に電力を供給することができるようにインダクタやコンデンサの係数を設定する必要があり、回路が大型化してしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、発電機の入力電圧を昇圧または降圧して出力する電圧変換部と蓄電部とを有する電源装置において、負荷の消費電流が小さい場合でも電源装置のエネルギー効率の低下を排除した小型な電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、発電機からの出力を電圧変換部を介して負荷に供給する第1の電力供給経路と、蓄電部からの出力を電圧変換部を介さずに負荷に供給する第2の電力供給経路と、負荷の消費電流を検出する電流検出部と、第1の電力供給経路と第2の電力供給経路とを切り替える制御部とを有し、電圧変換部は、消費電流に応じて変換効率が変化するものであり、制御部は、電流検出部が変換効率が最低値と最高値の中間値以上となるときの消費電流を検出したときに第1の電力供給経路に切り替え、前記電流検出部が前記変換効率が前記最低値と前記最高値の前記中間値より低くなるとき消費電流を検出したときに第2の電力供給経路に切り替えることを要旨とする。
【0012】
かかる特徴によれば、負荷の消費電流、すなわち電圧変換部の出力電流に対する変換効率特性を事前に求めておき、その変換効率の最大値と最小値の中間の効率に相当する負荷電流以下の電流を電流検出部が検出したときは、負荷への電力供給経路を電圧変換部を介さない第2の電力供給経路にすることで、電圧変換部の変換効率が低い電力供給を回避することができる。なお、中間値とは変換効率の最低値と最高値の中間値付近も含み20〜80%の間で設定して良い。この電力供給路を切り替える際の変換効率は、電源装置を適用する負荷の種類や電源装置に用いた蓄電部の電源容量の大きさや発電機と蓄電部の出力配分に応じて、十分な変換効率を適宜設定することが望ましい。また、電力供給経路を切り換える際の変換効率の設定には、ヒステリシスを持たせておくことが望ましい。切り替え時のヒステリシスを持たせることで、負荷変動が微動だった場合等の電力供給経路の切り替えのばたつきを抑え、安定した電力を供給することができる。
【0013】
本発明の第2の特徴は、電圧変換部は、発電機の電圧を昇圧または降圧して負荷へ供給するものであり、電圧変換部は、発電機からの出力をエネルギーとしてチャージあるいは放出するインダクタと、インダクタにエネルギーをチャージするチャージ状態とエネルギーを負荷に放出する放出状態とに切り替えるスイッチング素子とを有し、スイッチング素子は、エネルギーの放出状態を切り替えるときにエネルギーの損失であるスイッチング損失が生じるものであり、変換効率は、スイッチング損失値と消費電流とに影響されるものであり、制御部は、スイッチング損失値を下回る消費電力に等価な消費電流を電流検出部が検出したときに第2の電力供給経路に切り替えることを要旨とする。
【0014】
かかる特徴によれば、予め電圧変換部のスイッチング損失を求めておき、電圧変換部の出力電圧の設定が固定であり既知の場合は、負荷の消費電流、すなわち電圧変換部の出力電流を電流検出部により検出し、負荷の消費電流よりもスイッチング損失の方が大きい場合は、電力供給経路を電圧変換部を介さない第2の電力供給経路とすることで、電圧変換部の変換効率が低い電力供給を回避することができる。また、電圧変換部の出力電圧が可変である様な場合には、電圧検出部などを用い、負荷に供給される電圧と電流を検出することで負荷の消費電力を求めてもよい。また、負荷への電力供給経路を切り換える際にはヒステリシスを持たせても良い。例えば、予め設定する電力供給経路を切り替える負荷の消費電流及び消費電力値に幅を持たせ、その幅の間の電流を検出した際に電力供給経路を切り替えても良い。また、予め求めていたスイッチング損失より負荷の消費電力が所定の電力分大きくなってから電力供給経路を第2の電力供給経路から第1の電力供給経路に切り替え、逆に予め求めていたスイッチング損失より負荷の消費電力が所定の電力分小さくなってから電力供給経路を第1の電力供給経路から第2の電力供給経路に切り替えても良い。ここで、所定の電力分小さい負荷の消費電力とは、変換効率が十分に良い負荷の消費電流値の最小の値である。電源装置を適用する負荷の種類や電源装置に用いた蓄電部の電源容量の大きさや発電機と蓄電部の出力配分に応じて、電力供給経路を切り換える際のヒステリシスの電力値を適宜設定することが望ましい。これによって負荷変動が微動だった場合等の電力供給経路の切り替えのばたつきを抑え、安定した電力を供給することができる。
【0015】
本発明の第3の特徴は、電圧変換部は、消費電流の増加に比例して導通損失が増加するものであり、変換効率は、導通損失が増加することにより低下するものであり、電流検出部が、変換効率が最大値となるときの消費電流の70%以上の消費電流を検出したときに第1の電力供給経路と第2の電力供給経路とから負荷へ電力を供給することを要旨とする。
【0016】
かかる特徴によれば、電圧変換部の変換効率は、負荷の消費電力が小さいとき、すなわち電圧変換部の出力の減少とともに電圧変換部からの出力にしめるスイッチング損失の割合が高いために変換効率が低くなり、逆に、電圧変換部の出力の増加と共に電圧変換部からの出力にしめるスイッチング損失の割合が小さくなるので変換効率が高くなる。しかし、電圧変換部の出力の増加と共に電圧変換部内に流れる電流が増加し、Pl=R・I2で表される伝導損失Plが増加し、電圧変換部の変換効率は電圧変換部からの出力の増加と共に低下する。Rは電圧変換部内の電気抵抗であり、Iは電圧変換部内の電流値である。そこで、電圧変換部の変換効率の最大値をとる出力電流値の少なくとも70%以上の出力電流検出した際に、第1の電力供給経路と第2の電力供給経路の両方から負荷へ電力を供給することで、伝導損失による電力損失を低減することができる。なお、負荷への電力供給経路を切り換える際にはヒステリシスを持たせても良い。例えば、電流検出部が検出した負荷の消費電流すなわち電圧変換部の出力電流が増加し電圧変換部の変換効率の最大値をとる出力電流値の100%のときに、負荷への電力供給を第1の電力供給経路と第2の電力供給経路の両方から行い、電圧変換部の出力電流が減少し電圧変換部の変換効率の最大値をとる出力電流値の80%の電流値以下となったときに第2の電力供給経路を遮断し第1の電力供給経路に切り替えて良い。ヒステリシスを持たせて負荷への電力供給路を切り替える電流値は、電圧変換部の変換効率の最大値をとる出力電流値の70%以上の電流値で設定して良い。電源装置を適用する負荷の種類や電源装置に用いた蓄電部の電源容量の大きさや発電機と蓄電部の出力配分に応じて、電力供給経路を切り換える際のヒステリシスの電力値を適宜設定することが望ましい。これにより、負荷変動が微動だった場合等の電力供給経路の切り替えのばたつきを抑え、安定した電力を供給することができる。
【0017】
本発明の第4の特徴は、発電機は、燃料電池であることを要旨とする。
かかる特徴によれば、安定した電力供給を行うことができる。
【0018】
本発明の第5の特徴は、制御部は、発電機と蓄電部のうち電力残容量が多いいずれか一方を検出し、発電機の電力残容量が多い場合は第1の電力供給経路に切り替え、蓄電部の電力残容量が多い場合は第2の電力供給経路に切り替えることを要旨とする。
【0019】
かかる特徴によれば、確実にかつ安定的に負荷へ電力を供給することができる。なお、発電機側の燃料等の残量が検出できなかったり、不確定であるなどの場合や、発電機と蓄電部のそれぞれの残量が共に100%であったり、残量が同等の場合は、優先経路を第2の電力供給経路として良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発電機と入力電圧を昇圧または降圧して出力する電圧変換部と蓄電部とを有する電源装置において、負荷の消費電流が小さい場合でも電源装置のエネルギー効率の低下を排除した小型な電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電圧変換装置の概略構成図である。
【図2】電源装置に用いられる電圧変換部の概略構成図である。
【図3】電圧変換部の電流変化と電圧変化における変換効率変化の概念図である。
【図4】第1の電力供給経路と第2の電力供給経路の切替ヒステリシスの概念図である。
【図5】本発明に係る電圧変換装置の変更例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における電源装置の例を示す。
【0023】
図1は、電力を発生する発電機100、発電機100から入力された電圧を所定の定電圧に変換する電圧変換部103、電圧変換部103から電力を供給される負荷112、充放電が可能な蓄電部106、電圧変換部103の出力電圧を検出する電圧検出部104、発電機100から電圧変換部103を介して負荷112へ電力を供給する経路を第1の電力供給経路とし、蓄電部106から負荷112へ電力を供給する経路を第2の電力供給経路とし、第1の電力供給経路の電気的導通状態を切り替える第1の切替部102、第2の電力供給経路の電気的導通状態を切り替える第2の切替部109、負荷112へ供給される電流を検出する電流検出部105、発電機100の電力を用いて蓄電部106の充電制御を行う充電制御部111、電圧検出部104及び電流検出部105の検出値を基に、第1の切替部102及び第2の切替部109及び充電制御部111の制御を行う制御部110から構成される電源装置10を示す。
【0024】
(A)負荷変動が小さい場合の電圧変換部の変換効率と電流供給経路の切替
図1〜4を用いて、負荷変動が小さい場合の電圧変換部の変換効率と電流供給経路の切替の動作について具体的に説明する。
【0025】
始めに、負荷112の消費電流、すなわち電圧変換部103の出力電流に対する変換効率特性を求めておく。その変換効率の最大値と最小値の中間の効率に相当する負荷電流以下の電流を電流検出部105が検出したときは、制御部110は第1の切替部102を遮断し、第2の切替部109を導通状態とする。これにより、負荷112への電力供給経路を電圧変換部103を介さず、蓄電部106から電力の供給を行う、第2の電力供給経路にする。
【0026】
また、その変換効率の最大値と最小値の中間の効率に相当する負荷電流よりも大きい電流を電流検出部105が検出したときは、制御部110は第2の切替部109を遮断し、第1の切替部102を導通状態とする。これにより、負荷112への電力供給経路を電圧変換部103を介す、発電機100から電力の供給を行う、第1の電力供給経路にする。
【0027】
図4には、第1の電力供給経路と第2の電力供給経路の切替ヒステリシスを示している。例えば、電流検出部105が電流の増加を検出して、第2の電力供給経路から第1の供給経路に切り替えるタイミングは、変換効率が50%に設定するとする。次に、第1の電力供給経路から第2の電力供給経路へ切り換える際の変換効率を40%に設定する。この、2つの切替方法の切替タイミングの違いは、電力の供給源である発電機100と蓄電部106との余分な切替のばたつきを軽減することを目的としている。このとき、変換効率40%とは、十分な変換効率であるとする。もしも、2つの切替方法の切替タイミングである変換効率の設定を同じにした場合、電流検出部105が検出した電変換部105の出力が、切替タイミングである変換効率に相当する電流付近で変動したときに、制御部110は第1の電力供給経と第2の電力供給経路を小刻みに切り替えることになる。このときに、発電機100と蓄電部106の電圧値が異なっていると、負荷112に対してダメージを与える恐れがある。この点を回避するために、2つの切替方法のタイミングを異ならせ、余分な電力供給経路の切替を低減させる。
【0028】
なお、中間値とは変換効率の最低値と最高値の中間値付近も含み20〜80%の間で設定して良い。この電力供給路を切り替える際の変換効率は、電源装置を適用する負荷の種類や電源装置に用いた蓄電部の電源容量の大きさや発電機と蓄電部の出力配分に応じて、十分な変換効率を得られる範囲で適宜設定することが望ましい。
【0029】
また、切替タイミングである変換効率のヒステリシスも、十分な変換効率が得られる範囲で適宜設定することが望ましい。
また、切替タイミングは発電機100と蓄電部106との電圧値が近接していることが望ましい。
【0030】
以下に、図1、2を用いて、電圧変換部の変換効率と電流供給経路の切替の一例を説明する。
【0031】
平均消費電力が24W(12V・2A)でありパルス負荷が42W(約3.5msec)の負荷112に対して、発電機100としてPEFCタイプの燃料電池を用意した。燃料電池は12直列の定格出力27W(8.4V・3.2A)である。燃料タンクの容量は電力量換算で48Whである。なお、PEFCのほかにメタノール−酸素を燃料とするDMFC(ダイレクトメタノール形燃料電池)の他に、SOFC(固体酸化物形燃料電池)、MCFC(溶融炭酸塩形燃料電池)、PAFC(リン酸形燃料電池)等を用いることができる。また、燃料電池の他に太陽電池等の物理電池等の発電機100を使用することができる。また、インバータを介すことで交流発電機100を発電機100として用いることも可能である。
【0032】
蓄電部106として、容量が300mAh、公称電圧3.7Vのリチウムイオン二次電池を3直列接続したものを用意した。この蓄電部106の容量は、満充電状態の電力量として約3.7Whである。蓄電部106は、鉛蓄電池やニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等に代表される繰り返し充放電が可能な二次電池や、コンデンサやキャパシタや電気二重層コンデンサ等の電圧の印加によって電荷・静電エネルギーを蓄え電気容量を得る蓄電部を用いることが可能である。負荷112の動作電圧や最低動作電圧や負荷特性等によって、適切な二次電池あるいは蓄電部の種類を選択し、必要に応じて二次電池あるいは蓄電部を直列接続し負荷112へ供給する電圧を調整することができる。
【0033】
電圧変換部103として市販されている昇圧タイプのスイッチングレギュレータICを用いて昇圧回路を作製した。
電力供給経路の切り替えは、制御部110によって制御し、本実施の形態では制御部110に8ビットマイコンを用いた。
【0034】
制御部110によって制御される第1の切替部102及び第2の切替部109は、P型のMOS−FETを用い、MOS−FETのソース端子を負荷112側に来るように接続し、制御部110との接続は図示しないがドライブ回路を介してMOS−FETのゲート端子に接続した。なお、切替部は、MOS−FETのボディーダイオードを介してそれぞれの切替部を意図せず電流が通らないようにするために、2個のMOS−FETのソース・ゲート端子を共通にした直列接続で構成しても良い。
【0035】
図1〜4を用いて、本発明の第1の実施の形態における電源装置の動作の一例を説明する。
【0036】
負荷112の消費電流の変動が小さく、負荷112が動作時の電圧変換部103の変換効率が60〜90%の間で変動していた。また、電圧変換部103の変換効率の最大値は負荷112の消費電流が約2Aのときに効率が約90%であった。負荷112の消費電流の変動が小さく、負荷112が動作時の電圧変換部103の変換効率が60〜90%の間で変動していたので、負荷112への電力供給を第2の電力供給経路を用い、容量の少ない蓄電部106の出力に頼りすぎると蓄電部106の容量がすぐに無くなってしまうため、第2の電力供給経路から第1の電力供給経路へ切り替えるときの効率を50%とした。このときの負荷112の消費電流は約20mAであった。
【0037】
また、第1の電力供給経路から第2の電力供給経路へ切り換える際の変換効率は、40%とした。
【0038】
図3は、電圧変換部の電流変化と電圧変化における変換効率変化を示している。電圧変換部103の変換効率は、出力電流が2Aのときに変換効率90%を境に出力電流が増加すると伝導損失が増加するために変換効率が低下する。そこで、電流検出部105による電流検出値が2.2Aを超えたとき、すなわち電流検出部105が検出した負荷112の消費電流すなわち電圧変換部103の出力電流が電圧変換部103の変換効率の最大値のときの電流値2Aの110%のときに負荷112への電力供給を第1の電力供給経路と第2の電力供給経路となるように切替部の制御を行う。反対に、電流検出部105による電流検出値が2.0A以下となったとき、すなわち電流検出部105が検出した負荷112の消費電流すなわち電圧変換部103の出力電流が電圧変換部103の変換効率の最大値のときの電流値2Aの100%のときに負荷112への電力供給を第1の電力供給経路に切り替える。
【0039】
パルス状の負荷等があった場合に出力の切り替えによるばたつきを抑えるために、一時的な負荷変動に対しては電力供給経路の切り替えを行わないようにするために、変換効率や負荷電流の電力供給経路の切り替えのしきい値を超えて所定の時間しきい値を超えた状態が認められてから電力供給経路の切り替えを行うようにする。本実施の形態では、パルス負荷の発生時間に対して十分な余裕を持たせるために350msec以上変換効率や負荷電流の電力供給経路の切り替えのしきい値を超えた状態を維持しなければ切り替えを行わないようにした。変換効率や負荷電流の電力供給経路の切り替えのしきい値を超えてから電力供給経路の切り替えを行うまでの保持時間は、パルス負荷のパルス幅やパルス負荷の大きさ、パルス負荷の発生頻度なに応じて適宜設定を行うことが望ましい。
上述の通りの制御を行うようにプログラムを作成しそのプログラムをマイコンに書き込んだ。
【0040】
(B)スイッチング損失と電流供給経路の切替
図1を用いて、スイッチング損失と電流供給経路の切替の動作について具体的に説明する。
【0041】
始めに、電圧変換部103のスイッチング損失を求めておき、負荷112の消費電流、すなわち電圧変換部103の出力電流を電流検出部105により検出すると同時に、負荷112の消費電圧、すなわち電圧変換部の出力電圧を電圧検出部104により検出し、消費電流と消費電圧とから負荷112の消費電力を求め、負荷112の消費電力よりスイッチング損失の方が大きい場合は、電力供給経路を電圧変換部103を介さない第2の電力供給経路とすることで、電圧変換部103の変換効率が低い電力供給を回避することができる。また、負荷112の消費電流、または消費電力よりスイッチング損失電流またはスイッチング損失の方が小さい場合は、制御部110は第2の切替部109を遮断し、第1の切替部102を導通状態とする。これにより、負荷112への電力供給経路を電圧変換部103を介す、発電機100から電力の供給を行う、第1の電力供給経路にする。
【0042】
また、負荷への電力供給経路を切り換える際にはヒステリシスを持たせても良い。例えば、予め求めていたスイッチング損失より負荷の消費電力が所定の電力分大きくなってから電力供給経路を第2の電力供給経路から第1の電力供給経路に切り替え、逆に予め求めていたスイッチング損失より負荷の消費電力が所定の電力分小さくなってから電力供給経路を第1の電力供給経路から第2の電力供給経路に切り替えても良い。ここで、所定の電力分小さい負荷の消費電力とは、変換効率が十分に良い負荷の消費電流値の最小の値である。電源装置を適用する負荷の種類や電源装置に用いた蓄電部の電源容量の大きさや発電機と蓄電部の出力配分に応じて、電力供給経路を切り換える際のヒステリシスの電力値を適宜設定することが望ましい。これによって負荷変動が微動だった場合等の電力供給経路の切り替えのばたつきを抑え、安定した電力を供給することができる。
【0043】
電圧変換部103のスイッチング損失は、MOS−FETなどのスイッチング素子のターンオン/オフ時の状態遷移中の電力損失である。
【0044】
ターンオン時は、Pr=(Vin×I×Fsw×Trise)/2の損失、ターンオフ時は、Pf=(Vin×I×Fsw×Tfall)/2の損失が生じ、スイッチング損失は、PrとPfを加算したものである。ここで、Vinは入力電圧、Iはスイッチング素子に流れる電流、Fswはスイッチング周波数、Triseはターンオン時のスイッチング遷移時間、Tfallはターンオフ時のスイッチング遷移時間である。TriseやTfallはスイッチング素子のデータシートに記載の値を用いても良いし、オシロスコープなどを用い実測値を用いても良い。
【0045】
また、事前にスイッチング損失を求めておいても良いし、それぞれのパラメータを電圧変換部103の動作時に都度検出しスイッチング損失を求めても良い。
【0046】
以下に、図1、2を用いて、スイッチング損失と電流供給経路の切替の一例を説明する。なお、負荷の平均消費電力、パルス負荷が42W、発電機100、蓄電部106の具体的な構成は(A)の記載と同じである。
【0047】
本実施の形態では、負荷の変動はあるが、平均のVinおよびIを設定し、予めスイッチング損失を求めた。なお、Vinは8.4V、Iは3.2A、スイッチング周波数は500kHzであり、Triseはデータシートより15nsec、Tfallはデータシートより40nsecだったので、スイッチング損失値を制御部110に記憶させた。このスイッチング損失値と電圧検出部104の検出値および電流検出部105の検出値より求められる負荷112へ供給する電力よりスイッチング損失の方が大きい場合は、制御部110が負荷112へ供給する電力経路を第2の電力供給経路とするよう第1の切替部102及び第2の切替部109の導通状態を制御す様にした。
【0048】
制御部110は、負荷112への供給電力がスイッチング損失の150%以下となったとき、第1の電力供給経路から第2の電力供給経路に切り替え、反対に負荷112への供給電力がスイッチング損失の70%以上となったとき、第2の電力供給経路から第1の電力供給経路に切り替えるように、プログラムを作成し、制御部110に書き込んだ。
【0049】
(C)電力供給経路の優先経路の決定
図1を用いて、電力供給経路の優先経路の設定の動作について具体的に説明する。
【0050】
制御部110は、発電機100の残容量と蓄電部106の充電状態とを比較して、エネルギーの残量の多い方、或いはエネルギーの残量率の高いいずれか一方と接続している、第1の電力供給経路または第2の電力供給経路のいずれか一方を、電源装置の起動初期において負荷へ電力を供給する優先経路として決定する。なお、電源装置10の起動初期とは、負荷が電力を消費しだしたとき、あるいは発電機が発電しだしたとき、いずれの場合も含む。
【0051】
以下に、図1を用いて、電力供給経路の優先経路の決定の一例を説明する。なお、負荷の平均消費電力、パルス負荷が42W、発電機100、蓄電部106の具体的な構成は(A)の記載と同じである。
【0052】
本実施例では、発電機100として燃料電池を用いた。燃料電池には燃料を燃料タンクの約半分しか用意しなかったため、約24Wh分の容量で、残量率は50%である。蓄電部106はほぼ満充電状態とし、3.7Whの容量があり、残量率(SOC:state of charge)はほぼ100%であった。本実施例では、エネルギーの残量率の高い方を起動時など最初に負荷112へ電力供給を行う優先経路として設定したため、ここでは第2の電力供給経路が優先経路となった。
【0053】
なお、燃料電池の燃料の残容量や蓄電部106の充電状態が不明確な場合や、燃料の残容量と充電状態が同等であると制御部110が判断した場合は、電源装置10の起動時に制御部110は、負荷112へ電力供給を最初に行う優先経路を第2の電力供給路としてよい。電源装置10の起動初期に第2の電力供給路から負荷112へ電力が供給された後に、電力供給路の切り替えを行う変換効率のしきい値やスイッチング損失のしきい値を超えた場合は、制御部110は上述の通りの切り替え制御を行う。
【0054】
また、制御部110が燃料電池に燃料が継ぎ足され燃料タンクが満杯になったことを検知したり、燃料が満杯である新しい燃料カートリッジに交換されたことを検知して、電源装置10が起動されるときは、負荷112へ電力を供給する優先経路を第1の優先経路としてよい。
【0055】
なお、図5に示したように、第1の電力供給路を介して負荷112へ電力を供給している際に燃料電池の出力が定格出力に満たない場合には、制御部110は充電制御部111に燃料電池の出力が定格を超えない範囲で、燃料電池の出力を充電制御部111を介して蓄電部106の充電を行う制御を行っても良い。だたし、電力供給路の切り替えを行う変換効率のしきい値やスイッチング損失のしきい値を超え、電力供給経路の切り替えを行うような場合には、制御部110は充電制御部111の動作を停止させ、蓄電部106の充電を中止させる。
【0056】
このようにして、発電機100と入力電圧を昇圧または降圧して出力する電圧変換部103103と蓄電部106を有する電源装置10において、電源装置10の出力が低い場合でも電源装置のエネルギー効率の低下を排除し、安定的に電力が得られる電源装置10を提供することが可能となる。
【0057】
(D)負荷変動が大きい場合の電圧変換部の変換効率と電流供給経路の切替
図1を用いて、負荷変動が大きい場合の電圧変換部の変換効率と電流供給経路の切替の動作について具体的に説明する。
【0058】
負荷112の平均消費電力が2.2W(7.4V・0.3A)、パルス負荷が18.5W(約2.0msec)の負荷112に対して、発電機100としてPEFCタイプの燃料電池を用意した。燃料電池は5直列の定格出力2.5W(3.5V・0.72A)である。
【0059】
蓄電部106として、容量が500mAh、公称電圧3.7Vのリチウムイオン二次電池を2直列接続したものを用意した。
【0060】
電圧変換部103として市販されている昇圧タイプのスイッチングレギュレータICを用いて昇圧回路を作製した。変換効率の最大値は電圧変換部103の出力電流が約0.15Aのときに効率が約88%であった。第2の電力供給経路から第1の電力供給経路へ切り替えるときの効率を40%とした。このときの出力電流は10mA以下であった。
【0061】
反対に、第1の電力供給経路から第2の電力供給経路へ切り換える際の変換効率は、30%とした。
電力供給経路の切り替えは、8ビットマイコンを用いた制御部110によって制御した。
【0062】
電圧変換部103の変換効率は、出力電流が0.15Aのときに変換効率88%を境に出力電流が増加すると伝導損失が増加する。そこで、電流検出部105による電流検出値が0.35Aを超えたとき、すなわち電流検出部105が検出した負荷112の消費電流すなわち電圧変換部103の出力電流が電圧変換部103の変換効率の最大値のときの電流値0.15Aの234%のときに負荷112への電力供給を第1の電力供給経路と第2の電力供給経路となるように切替部の制御を行う。反対に、電流検出部105による電流検出値が0.27A以下となったとき、すなわち電流検出部105が検出した負荷112の消費電流すなわち電圧変換部103の出力電流が電圧変換部103の変換効率の最大値のときの電流値0.15Aの180%のときに負荷112への電力供給を第1の電力供給経路に切り替える。
【0063】
パルス状の負荷等があった場合に変換効率や負荷電流の電力供給経路の切り替えのしきい値を一時的にまたいで往来する際、出力の切り替えによるばたつきを抑えるために、一時的な負荷変動に対して、電力供給経路の切り替えを行うが、電力供給経路の切り替えの下限値を下回り、負荷変動が納まった後も以前の状態に戻さず、電力供給経路を維持させる。本実施の形態の負荷の場合、パルス幅の時間よりも長いが連続的にパルス負荷が発生する負荷112を用いているため、パルス負荷が発生した際に、電流検出部105が検出した負荷112の消費電流が0.35Aを超えたとき、制御部110は、負荷112への電力供給を第1の電力供給経路と第2の電力供給経路となるように切替部の制御を行うが、0.35Aを超える電流を検出してから約2.0msec後には負荷112への消費電流が0.27A以下となり、制御部110は、負荷112への電力供給を第1の電力供給経路のみとするところを、負荷112への電力供給を第1の電力供給経路と第2の電力供給経路を用いる状態を維持させる。これは、最初のパルス負荷の数百msec後にまた同様のパルス負荷が発生するため、出力の切り替えによるばたつきの発生を抑える為である。負荷112への消費電流が0.27A以下の状態が1sec以上続いて初めて制御部110は、負荷112への電力供給を第1の電力供給経路第2の電力供給経路を用いる状態から第1の電力供給経路のみとする様に制御を行う。
【0064】
上述の通りの制御を行うようにプログラムを作成しそのプログラムをマイコンに書き込んだ。
【0065】
このようにして、発電機100と入力電圧を昇圧または降圧して出力する電圧変換部103と蓄電部106とを有する電源装置10において、負荷112の消費電流が小さい場合でも電源装置10のエネルギー効率の低下を排除した小型な電源装置10を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
10 : 電源装置
100 : 発電機
102 : 第1の切替部
103 : 電圧変換部
104 : 電圧検出部
105 : 電流検出部
106 : 蓄電部
109 : 第2の切替部
110 : 制御部
111 : 充電制御部
112 : 負荷
201 : 第1切替スイッチ
202 : ダイオード
203 : インダクタ
204 : 第2切替スイッチ
205 : ダイオード
206 : 抵抗分圧回路
207 : コンデンサ
208 : 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機からの出力を電圧変換部を介して負荷に供給する第1の電力供給経路と、
蓄電部からの出力を前記電圧変換部を介さずに前記負荷に供給する第2の電力供給経路と、
前記負荷の消費電流を検出する電流検出部と、
前記第1の電力供給経路と前記第2の電力供給経路とを切り替える制御部とを有し、
前記電圧変換部は、前記消費電流に応じて変換効率が変化するものであり、
前記制御部は、前記変換効率が最低値と最高値の中間値以上となるときの前記消費電流を前記電流検出部が検出したときに前記第1の電力供給経路に切り替え、前記電流検出部が前記中間値より低くなるときの前記消費電流を検出したときに前記第2の電力供給経路に切り替えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電圧変換部は、前記発電機の電圧を昇圧または降圧して前記負荷へ供給するものであり、
前記電圧変換部は、前記発電機からの出力をエネルギーとしてチャージあるいは放出するインダクタと、前記インダクタに前記エネルギーをチャージするチャージ状態と前記エネルギーを前記負荷に放出する放出状態とに切り替えるスイッチング素子とを有し、
前記スイッチング素子は、前記エネルギーの前記放出状態を切り替えるときに前記エネルギーの損失であるスイッチング損失が生じるものであり、
前記変換効率は、前記スイッチング損失値と前記消費電流とに影響されるものであり、
前記制御部は、前記スイッチング損失値を下回る前記負荷の消費電力に等価な前記消費電流を前記電流検出部が検出したときに前記第2の電力供給経路に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電圧変換部は、前記消費電流に比例して導通損失が増加するものであり、
前記変換効率は、前記導通損失が増大することにより低下するものであり、
前記制御部は、前記変換効率が最大値となるときの前記消費電流の70%以上の前記消費電流を前記電流検出部が検出したときに前記第1の電力供給経路と前記第2の電力供給経路から前記負荷へ電力を供給することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項4】
前記発電機は、燃料電池であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記発電機と前記蓄電部のうち電力残容量が多いいずれか一方を検出し、前記発電機の電力残容量が多い場合は前記第1の電力供給経路に切り替え、前記蓄電部の電力残容量が多い場合は前記第2の電力供給経路に切り替えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−211812(P2011−211812A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76374(P2010−76374)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】