説明

電源装置

【課題】ユーザによる不慮の電源遮断が行われた場合(例えばACコード抜けや、カートのスイッチオフなど)でも、データの保存を確実に行える電源装置を提供することである。
【解決手段】電源装置10は、コンバータ12と、整流回路13と、電圧周期検出回路14と、電源断信号出力手段15と、を備える。コンバータ12は、外部の電源より入力される交流電圧を直流電圧に変換し出力する。整流回路13は、外部の電源より入力される交流電圧を整流し、整流波形電圧を出力する。電圧周期検出回路14は、前記整流波形電圧が所定の閾値となる電圧周期を検出し、前記電圧周期が所定の周期より長いことを検出した時、電圧周期異常信号を出力する。電源断信号出力手段15は、前記電圧周期異常信号が入力された時、電源断信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に係り、特に医療用装置において不慮の電源遮断が行われた場合でもデータの保存を確実に行える電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用装置において、装置への電源供給が遮断されたときに、製品回路(例えばプロセッサ)側でそれまでに取得したデータを確実に保存できることが必要である。
【0003】
例えば特許文献1では、プロセッサに電源を供給する電源装置において、電源スイッチによる電源遮断が発生した場合には、電源スイッチのオフをトリガーにして、撮像素子や表示素子などに対しては即時の電源供給停止を行うための遮断信号を出力する一方、プロセッサに対しては電源遮断時のデータ保存を確実に実施するために一定時間遅延した遮断信号を生成してプロセッサへの電源供給を一定時間継続させ、一定時間経過後にプロセッサの電源供給を遮断する技術が提案されている。
【0004】
特許文献1は、具体的には、電源スイッチと並列に補助スイッチとしてのリレーを配置し、電源スイッチがオフになった時から一定期間リレーをオンさせる遅延回路が動作することにより、電源スイッチ断後も一定時間、プロセッサ内部に商用電圧が供給し続けられるため、データ保存を確実に行うのに必要な時間t1を確保できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−340921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の電源装置では、電源スイッチ断をトリガーとして電源遮断信号を生成するものであって、電源ケーブル外れなど、電源スイッチよりも前段で生じる入力交流電源断に対応できなかった。具体的には、電源スイッチの前段階に存在するACコードのプラグが配電用のコンセントから外れたとき(以下単にACコード抜けという)の電源遮断や、電源装置が搭載された医療用カートに設置されたスイッチがオフすることによって生じる電源遮断については、考慮されていなかった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題に鑑み、ユーザによる不慮の電源遮断が行われた場合(例えばACコード抜けや、カートのスイッチオフなど)でも、プロセッサ等のデータの保存を確実に行える電源装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電源装置は、外部の電源より入力される交流電圧を直流電圧に変換し出力するコンバータと、外部の電源より入力される交流電圧を整流し、整流波形電圧を出力する整流回路と、前記整流波形電圧が所定の閾値となる電圧周期を検出し、前記電圧周期が所定の周期より長いことを検出した時、電圧周期異常信号を出力する電圧周期検出回路と、前記電圧周期異常信号が入力された時、電源断信号を出力する電源断信号出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザによる不慮の電源遮断が行われた場合(例えばACコード抜けや、カートのスイッチオフなど)でも、データの保存を確実に行える電源装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の電源装置の構成を示す回路図。
【図2】図1における電源遮信号(オフ信号)出力部の一部の抵抗素子に代えて使用できる他の構成例を示す回路図。
【図3】図1におけるC点及びD点を入力端とするNOR回路の真理値表を示す図。
【図4】図1の電源装置の電源遮断時の動作例を説明するタイミングチャート。
【図5】図1の電源装置の電源遮断時のもう1つの動作例を説明するタイミングチャート。
【図6】本発明の第2の実施形態の電源装置の構成を示す回路図。
【図7】本発明の関連技術の電源装置を示すブロック図。
【図8】図7の電源装置の動作を説明するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図6を参照して本発明の実施形態を説明する前に、図7及び図8を参照して本発明の関連技術について説明する。
【0012】
図7は本発明の関連技術の電源装置を示している。
図7に、ACコード抜け、カートのスイッチオフによる電源遮断を考慮し、レギュレータを構成するスイッチングトランスの1次回路の平滑コンデンサの容量を増やすことで十分なデータ保存に必要な時間t1を確保し、あわせて従来例の特許文献1で述べたリレーと遅延回路を削除した構成の関連技術を示す。また、図8に、図7の電源装置におけるACコード抜け発生時のタイミングチャートを示す。なお、以下の説明で、1次側又は1次回路とは、スイッチングトランスTの1次側及びフォトカプラIC1の1次側又は1次回路を意味し、2次側又は2次回路とは、スイッチングトランスTの2次側及びフォトカプラIC1の2次側を又は2次回路を意味している。
【0013】
図7において、符号L,Nはそれぞれ商用電源の電源ラインのライブ側,ニュートラル側の各ライン、L1,L2はコモンモードフィルタ、R0は突入電流制限用サーミスタ、D2及びD3は半波整流用のダイオード直列回路、C1〜C4は高周波ノイズ除去用コンデンサ、SWは電源スイッチ、FGは大地に接続するフレームグラウンドを示す。また、符号1は4つのダイオードを用いたダイオードブリッジD1で構成される全波整流回路、2は全波整流出力を平滑化する2つの平滑コンデンサC5,C6を並列接続した平滑回路、Tはスイッチングトランス、3はトランジスタ等のスイッチング素子を含むスイッチング回路、4はスイッチングトランスTの2次側の整流回路、5は負荷回路を示す。さらに、D2,D3はダイオード、R2〜R13は抵抗、C7は充電用コンデンサ、ZD1は半波整流電圧入力用ツェナーダイオード(ツェナー電圧Vs)、Q1は半波整流電圧監視用のNPN型トランジスタ、ZD2は電源遮断検出用ツェナーダイオード(ツェナー電圧Vth)、IC4は電源遮断検出用コンパレータ、IC1は1次側と2次側を光結合するフォトカプラ、Q2は電源断信号(OFF信号)出力用のNPN型トランジスタ、C8はOFF信号波形整形用のコンデンサである。
【0014】
図8は図7の電源装置の動作を示すタイミングチャートである。図8は電源断が半波整流電圧波形の90度(以下、度はdegと表記) 付近のタイミングP1でACコードが外れた場合を例として説明する。
図8のタイミングチャートでA〜Dは1次回路の信号波形であって、波形の基準点は1次GNDである。E及びFは2次回路の信号波形であって、波形の基準点は2次GNDである。
【0015】
以降、図7のの動作について説明する。
Aは、L(ライブ)に接続されたダイオードのカソード側電位であって、1次GND基準で半波整流電圧となる。BはD2及びD3による半波整流電圧の監視回路6の入力部である。
【0016】
Cは、半被整流電圧を監視するトランジスタQ1のコレクタ出力であって、L(ライブ)−1次GNDの電位が高い期間に、Q1のベースに電流が流れ込み、Q1はオンされ、これによってCはローレベル(以下、LOWレベル)になる。L−1次GNDの電位が低い期間には、Q1はオフされ、時定数回路(R7,C7)の時定数でコンデンサC7に1次Vccが充電される。
【0017】
Dは、ツェナーダイオードZD2のツェナー電圧Vthと、CのトランジスタQ1のコレクタ電圧とを比較するコンパレータIC4の出力である。IC4の出力Dは、商用電源がある場合には、コンデンサC7が低いレベルに平滑化されているのでハイレベル(以下、HIGHレベル)であるが、商用電源が停止するとコンデンサC7の充電電圧によってCの電位が閾値Vthより高くなるためDはロー(LOW)レベルで出力する。
【0018】
Eは、フォトカプラIC1の出力である。Eはエミッタ接地のトランジスタQ2のベースに接続しているため、Dとは電圧レベルが反転している。F(OFF信号)は、監視回路6の出力信号である。OFF信号は、商用電源がある場合にはHIGHレベル、商用電源が停止するとLOWレベルになる。
【0019】
図8のタイミングチャート波形で分かるように、電源遮断が位相90deg付近(P1)でACコードが外れた場合には、電源スイッチSWの前段にあるコンデンサC1〜C4の残留電圧の影響により電源遮断後もC点の電位が低いレベルに保たれる結果、電源遮断P1から電圧遮断検出までの時間(図示t0にて示す)が長くなる。その影響により、データ保存に必要な時間tlを十分に確保できない可能性がある。これは、1次側平滑回路2のコンデンサC5,C6の容量によって電源遮断P1以後にトランスTの2次出力を維持できる時間はt0とこれに追加されるt1との和(=t0+t1)に規制されるためである。つまり、t0+t1は平滑コンデンサ容量で最大時間が制限されるためt0が長くなればt1が短くなってしまう。また、図7に示す電源装置はt1を1次回路の平滑コンデンサC5,C6で確保する設計思想であるため、平滑コンデンサをある程度大容量に設計しなければならず、小型化・低コスト化の実現が難しい。
【0020】
以上のように、図7の関連技術の電源装置では、ACコ−ト゛が抜けた場合の電源遮断タイミング(図8の例では位相90deg付近で遮断)によっては図8に示すt0が長くなってしまう。このとき、電源遮断からトランスTの2次出力が停止するまでの時間には前述したように制限があることから、結果的にt1が短くなってしまう場合がある。
【0021】
この課題を解決するために、本発明の実施形態では以下の手段を実施する。
(a)正常動作時に50〜60Hzで交流動作する商用電圧を、全波整流波形に変換する。
【0022】
(b)全波整流波形のゼロクロス付近をフォトカプラ(閾値VS1)を用いることによって100〜120Hzの矩形波に変換し、2次回路に伝達する。
(c)矩形波を監視し、その矩形波レベルが一定期間以上HIGHまたはLOWを継続した場合に製品回路(例えばプロセッサ)側へ電源遮断信号(OFF信号)を出力する。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態の電源装置の構成を示す回路図である。
図1において、電源装置10は、電源入力部11と、コンバータ12と、整流回路13と、電圧周期検出回路14と、電源断信号出力手段15と、を備える。
【0024】
電源入力部11は、ライブL,ニュートラルNの商用電源ラインがヒューズ、コモンモードフィルタL1、突入電流制限用サーミスタR0、コモンモードフィルタL2、高周波ノイズ除去用コンデンサC6〜C9を順に通して電源スイッチSWの入力端子に接続している。高周波ノイズ除去用コンデンサC6〜C9のうちのコンデンサC6,C7の各一端の電源ラインL,Nのそれぞれに接続し、コンデンサC6,C7の各他端はフレームグラウンド(FG)に接続されている。コンデンサC8,C9の各両端は電源ラインL,N間に接続されている。
【0025】
コンバ一タ12は、外部の商用電源ACより入力される交流電圧を直流電圧に変換し出力するもので、変換された直流電圧はプロセッサなどの負荷回路5に供給される。コンバ一タ12は、ダイオードブリッジD5で構成される整流回路1と、2つの平滑コンデンサC6及びC7を並列に接続した平滑回路2と、平滑化した直流電圧をトランスTとスイッチング回路3を用いて一旦交流に変換した後、整流回路4にて適宜の電圧レベルの直流電圧を得て、負荷回路5として製品回路(例えばプロセッサ)に供給する。
【0026】
整流回路13は、外部の電源より入力される交流電圧を整流し、整流波形電圧を出力する。整流回路13は、例えば、カソード同士が共通に接続され、各々のアノードが電源スイッチSWの2つの出力ラインに接続された2つのダイオードD3及びD4による全波整流回路で構成されている。
【0027】
図1のブロック図上において、符号Aは整流回路13から出力される全波整流波形電圧である。符号BはフォトカプラIC1の2次側のフォトトランジスタのコレクタ出力電圧であり、後述の第1の信号又は第2の信号に相当する。符号CはコンパレータIC2の出力端に接続された抵抗R5及びコンデンサC2の時定数回路の出力電圧であり、後述の第1の確定信号に相当する。符号DはコンパレータIC3の出力端に接続された抵抗R9及びコンデンサC3の時定数回路の出力電圧であり、後述の第2の確定信号に相当する。ここで、確定信号とは、このダイオードD1又はD2で検出されるD1又はD2の閾値以上の信号をいう。
【0028】
また、符号EはダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードとの共通接続点の出力電圧であり、電圧同期異常信号に相当する。符号FはダイオードD1及びD2の共通出力点の出力電圧をトランジスタQ5を通すことで反転させて生成したQ5のコレクタ出力電圧であるOFF信号電圧を示している。
【0029】
電圧周期検出回路14は、全波整流波形電圧が所定の閾値となる電圧周期を検出し、電圧周期が所定の周期より長いことを検出した時、電圧周期異常信号を出力する。
電圧周期検出回路14は、整流回路13からの全波整流電圧Aを抵抗R1及びR2の直列回路を介してフォトカプラIC1の1次側の発光ダイオードの一端に入力したときに、入力された全波整流電圧が所定の閾値Vs1以上であれば、1次側の発光ダイオードが発光して、フォトカプラIC1の2次側のフォトトランジスタがこれを受光してそのコレクタ・エミッタ間が導通(オン)する。このとき、第1の電圧検出器としてのフォトカプラIC1の出力Bは、第1の信号として2次GND即ち0Vレベルを出力する。
【0030】
また、入力された全波整流電圧が所定の閾値Vs1未満であれば、1次側の発光ダイオードは発光せず、フォトカプラIC1の2次側のフォトトランジスタのコレクタ・エミッタ間は導通せずオフする。このとき、第2の電圧検出器としてのフォトカプラIC1の出力は、第2の信号として2次Vcc即ち回路電源電圧レベルを出力する。
【0031】
このように、フォトカプラIC1は、整流回路13から入力される全波整流波形電圧が、所定の閾値Vs1以上であることを検出した時、第1の信号を出力する第1の電圧検出器として機能する一方、入力される全波整流波形電圧が所定の閾値Vs1未満であることを検出した時、第2の信号を出力する第2の電圧検出器として機能する。
【0032】
具体的には、フォトカプラIC1は、電源ラインL,NをダイオードOR接続した信号を入力とする。A点は、ダイオードD3,D4によって全波交流電圧波形となるため、商用電源の位祖が0deg、180deg付近においてゼロクロスするタイミングで、フォトカプラIC1の出力がHIGH、LOWを繰り返し、IC1出力は、約10ms周期の矩形波となる。
【0033】
なお、商用電圧遮断時における、フォトカプラIC1の出力(B点)の状態は、以下の2通りが考えられる。(a) 電源遮断のタイミングが、位相0deg、180deg付近の場合には、HIGH出力を継続する(図4参照)。(b) 電源遮断のタイミングが、位相0deg、180deg付近でない場合、LOW出力を継続する(図5参照)。これらの動作を監視することで、商用電圧の遮断を監視している。
【0034】
なお、フォトカプラIC1の1次側の発光ダイオードの他端は1次側グラウンド(以下、1次GND)に接続され、2次側のフォトトランジスタのエミッタは2次側グラウンド(以下、2次GND)に接続されている。
【0035】
フォトカプラIC1の2次側のフォトトランジスタのコレクタ出力BはコンパレータIC2の−入力端に入力すると同時にコンパレータIC3の+入力端に入力している。そして、2次Vccと2次GND間に抵抗R4とツェナーダイオードZD1を直列に接続しており、ツェナーダイオードZD1のカソードに発生する一定電圧(ツェナー電圧)が基準値VthとしてコンパレータIC2の+入力端とコンパレータIC3の−入力端に供給されている。そして、抵抗R9及びR5の接続点はコンデンサC2を介して2次GNDに接に供給されている。コンパレータIC2の出力端は抵抗R9,R5及びコンデンサC2の回路を介してダイオードD1のアノードに接続し、抵抗R5の一端は2次Vccに接続し、コンデンサC2の一端は2次GNDに接続している。また、コンパレータIC3の出力端は抵抗R10,R6及びコンデンサC3の回路を介してダイオードD2のアノードに接続し、抵抗R6の一端は2次Vccに接続し、コンデンサC3の一端は2次GNDに接続している。2次Vccと2次GND間に接続した抵抗R5とコンデンサC2は時定数回路を構成し、同様に2次Vccと2次GND間に接続した抵抗R6とコンデンサC3も時定数回路を構成している。
【0036】
コンパレータIC2,時定数回路(R5及びC2)及びダイオードD1の回路は、フォトカプラIC1の出力である前記第1の信号が、所定の第1の時間以上出力を継続した時、第1の確定信号を出力する第1の時間検出器として機能する。また、コンパレータIC3,時定数回路(R6及びC3)及びダイオードD2の回路は、フォトカプラIC1の出力である前記第2の信号が、所定の第2の時間以上出力を継続した時、第2の確定信号を出力する第2の時間検出器として機能する。
【0037】
コンパレータIC2は、ツェナーダイオードZD1で生成されるリファレンス電圧Vthと、フォトカプラIC1の出力Bとを比較するコンパレータであり、フォトカプラIC1の出力Bがリファレンス電圧Vthより低い期間に、R5及びC2の時定数で、コンデンサC2に2次Vccが充電される(Cの電位)。
【0038】
コンパレータIC3は、ツェナーダイオードZD1で生成されるリファレンス電圧Vthと、フォトカプラIC1の出力Bとを比較するコンパレータであり、フォトカプラIC1の出力Bがリファレンス電圧Vthより高い期間に、R6及びC3の時定数で、コンデンサC3に2次Vccが充電される(Dの電位)。
【0039】
前記第1の確定信号と前記第2の確定信号のどちらか一方が入力された時、電圧周期検出回路14は、ダイオードD1の出力とダイオードD2の出力のOR(オア)出力(Eの出力)として電圧周期異常信号を電源断信号出力手段15へ出力する。
そして、電源断信号出力手段15は、前記電圧周期異常信号が入力された時、電源断信号(OFF信号)を出力する。
【0040】
電源断信号出力手段15において、ダイオードD1及びD2の共通接続点Eと2次GND間にはコンデンサC4が接続され、さらに共通接続点Eと2次GND間には抵抗R8が接続されている。そして、共通接続点Eは抵抗R13を介してNPN型トランジスタQ5のベースに接続し、Q5のベースは抵抗R12を介して2次GNDに接続し、Q5のエミッタは2次GNDに直接接続し、Q5のコレクタは抵抗R7を介して2次Vccに接続している。トランジスタQ5のベースと2次GNDとの間には、ノイズ除去用のバイパスコンデンサC10を接続している。なお、上記抵抗R13の代わりに、図2に示すようなツェナーダイオードZD2と抵抗R14の直列回路を用いる構成としてもよい。
【0041】
そして、トランジスタQ5のコレクタは抵抗R11を介してOFF信号を出力する接続点Fに接続し、接続点FはコンデンサC5を介して2次GNDに接続しかつOFF信号を出力する出力端子6に接続している。
【0042】
NPNトランジスタQ5は、ダイオードD1,D2がダイオードOR接続された出力信号を入力とするエミッタ接地回路である。トランジスタQ5によって、C点,D点を入力とするNOR回路を構成している( 図3の真理値表参照)。OFF信号は、商用電源からの供給電圧が有る場合はハイレベル電圧、商用電源からの電圧供給が遮断されて供給電圧が無い場合はローレベル電圧となる。
【0043】
トランジスタQ5のベースに供給される電圧は、共通接続点Eの電圧即ちコンデンサC4に充電される充電電圧を抵抗R13と抵抗R12で分圧した電圧となっている。従って、コンデンサC4が充電されていく過程で抵抗R13と抵抗R12との接続点の分圧電圧がトランジスタQ5のベース・エミッタ間電圧(=閾値VS2)を超えた時にトランジスタQ5が導通(オン)して出力端子6のOFF信号はローレベル電圧となり、この時点で商用電源が遮断されたことが検出できたことになる。このようなローレベルのOFF信号を用いて医療用装置内の図示しない撮像素子や表示素子への電源供給をオフにすることができる。
【0044】
一方、コンバータ12の2次側の整流回路4からの2次出力は、前記OFF信号がローレベルとなっていても、1次側平滑回路2の平滑コンデンサの容量をコンデンサC6,C7によって大きくすることで、2次出力の出力維持時間t1を十分に確保することができ、ACコード抜けやカートのスイッチオフによる電源遮断時でもデータ保存を確実に行うことが可能となる。
【0045】
しかも、図4及び図5のタイミングチャートからも分かるように、時間t0は、コンデンサC6〜C9の残留電圧の影響により決まるわけはなく、全波整流波形電圧をフォトカプラを通してその2次側電圧を監視することによって決まるものであるので、C6〜C9の残留電圧の影響を受けないためt0を短くすることができる。
【0046】
次に、図4及び図5のタイミングチャートを説明する。
図4及び図5は電源装置10が正常動作している状態で、電源スイッチSWの前段階においてACコード抜け等による不測の「電源遮断」が生じた場合における、回路図上での各ポイントA〜Fでの電圧波形を示している。
符号Aは1次回路の信号波形であり、その波形の基準点は1次GNDである。また、B〜Fは2次回路の信号波形であり、その波形の基準点は2次GNDである。
【0047】
図4は電源装置10が正常動作している状態から、ACコード抜け等による電源遮断が、入力交流電源電圧の位相0deg、180deg付近のタイミングで生じた各ポイントA〜Fでの電圧波形を示している。
【0048】
また、図5はACコード抜け等による電源遮断が、入力交流電源電圧の位相0deg、180deg付近でない場合(例えば90deg付近などの場合)のタイミングで生じた場合における各ポイントA〜Fでの電圧波形を示している。
【0049】
図4では、電源遮断時、整流回路13による全波整流波形電圧Aが位相0deg、180deg付近で遮断されているので、電源遮断時以降、フォトカプラIC1の1次側電圧はフォトカプラIC1の閾値VS1を下回った状態を維持し、IC1は非導通(オフ)し、IC1の2次側出力電圧Bは2次Vccに基づくHIGHレベルの状態を維持することになり、その状態が1次平滑回路2の平滑コンデンサC6及びC7の容量で決まる時間(=t0+t1)だけ継続される。
【0050】
電源遮断後、フォトカプラIC1はオフを維持し、フォトカプラIC1の2次側出力電圧BはHIGHレベルを維持するので、コンパレータIC2(閾値Vth)の比較出力はLOWレベルであり、ダイオードD1の入力電圧CもLOWレベルとなる。
【0051】
このとき、コンパレータIC3(閾値Vth)の比較出力となるコンデンサC3出力は、R6,C3の時定数で上昇し、HIGHレベルの2次Vccにまで上昇した電圧に維持されるので、ダイオードD2の入力電圧DはHIGHレベルとなる。
【0052】
その結果、ダイオードD1,D2のOR出力電圧Eは、コンデンサC4の容量に起因して立上りが少し緩やかとなるが、電圧Dとほぼ同様な電圧波形となる。電圧E即ちコンデンサC4の電圧は抵抗R13と抵抗R12の直列回路の両端にかかり、電圧Eが立ち上がる過程で、抵抗R13と抵抗R12の接続点電位即ちトランジスタQ5のベース電位がトランジスタQ5のベース・エミッタ間の導通(オン)電位(=閾値VS2)以上になった時点でトランジスタQ5がオンし、出力端子Fに出力されるOFF信号がHIGHレベルからLOWレベルに変化する。このLOWレベルのOFF信号によって、負荷回路5(例えばプロセッサ)以外の撮像素子や表示素子等の駆動電源を停止させることが可能となる。
【0053】
このように、OFF信号がLOWレベルになっても、2次側の負荷回路5には1次側平滑回路2の平滑コンデンサ容量に充電された電荷によって出力維持時間t1の期間だけ2次出力を継続して高いレベルで供給することができる。
【0054】
図5では、電源遮断時、整流回路13による全波整流波形電圧Aが位相0deg、180deg付近でない場合(例えば位相90deg付近の場合)に遮断されているので、即ち全波整流波形電圧Aのピーク付近で電源遮断されているため、電源入力部11内のコンデンサC6〜C9の残留電圧も高いレベルを維持することによって全波整流波形電圧AはフォトカプラIC1の閾値VS1を上回った高いレベルの状態が暫く続く。その後、前記残留電圧の下降に伴いフォトカプラIC1はその1次側電圧Aが徐々に下降して閾値VS1を下回ったところでIC1は非導通(オフ)となり、IC1の2次側出力電圧BはHIGHレベルとなる。その後、電圧Bは1次側平滑回路2のコンデンサC6,C7の容量に基づく出力維持時間t1に対応する時間が経過するまでHIGHレベルを維持する。
【0055】
フォトカプラIC1の2次側出力電圧Bは、電源遮断後の電源遮断検出後も比較的長い一定期間、LOWレベルを維持するので、コンパレータIC2(閾値Vth)の比較出力となるコンデンサC2出力はR5,C2の時定数で上昇し、ダイオードD1の入力電圧CはHIGHレベルの2次Vccまで上昇した電圧に維持される。
【0056】
このとき、コンパレータIC3(閾値Vth)の比較出力は、電源遮断以後、上記一定期間LOWレベルであり、ダイオードD2の入力電圧DもLOWレベルとなる。
フォトカプラIC1がオフした後のIC1の2次側出力電圧Bは時間t1が経過するまで2次Vccの電圧に維持されるが、その電圧BがHIGHレベルに変化すると、コンパレータIC2の比較出力はLOWレベルになり、ダイオードD1の入力電圧CもLOWレベルになるが、ダイオードD2の入力電圧DもLOWレベルからHIGHレベルに立ち上がって出力される。
【0057】
ダイオードD1,D2の2つの共通出力点の電圧Eは、図5Eのようになる。本来、電圧Eは電圧Cと電圧DとのOR電圧となるところであるが、電源遮断前は電圧Cが電源半周期のサイクルの鋸歯状波形電圧に形成されており、この電圧CがダイオードD1を通してコンデンサC4を充電する結果、電圧Eは電源遮断前は平滑化されて低いレベルの直流電圧となっている。図5の場合は、電圧Cは電源遮断が全波整流電圧Aのピーク付近で生じる結果、IC1の出力電圧BがLOWレベルとなり、その結果コンパレータIC2の出力側のHIGHレベルの電圧CがR5,C2の時定数で徐々に上昇して2次VccのHIGHレベルとなり、その状態が全波整流電圧AがIC1の閾値Vs1を下回るとき電圧CはLOWレベルに降下する。
【0058】
このようなダイオードD1の時間経過に伴う入力電圧Cの変化において、電源遮断時付近での電圧Cの徐々に上昇していく電圧Cは、電源遮断前と同様にダイオードD1を通してコンデンサC4に引き続き充電されかつ平滑される結果、電圧Eは電源遮断直後の短期間は低いレベルの直流電圧を維持した後、電圧Eは電圧CがVccの一定電圧(HIGHレベル)に達する時点辺りから次第に上昇し、さらに電圧DがIC1の2次電圧BがHIGHレベルになったタイミングから徐々に上昇してVccに達する波形の電圧となるがこのような電圧Dと前記電圧CとがコンデンサC4で合成される結果、図5Eに示すような波形となる。
このような電圧Eは、前述したように抵抗R13と抵抗R12とで合成され、その分圧された電圧がトランジスタQ5のベースに印加されるので、電圧Eの上昇していく過程でQ5のベース・エミッタ間オン電圧を超えるとQ5はオンしてF点のOFF信号はLOWレベルとなる。
【0059】
ところで、図5に示した、ダイオードD1,D2の出力点Eにおける合成電圧Eの波形、及び、F点における出力電圧F即ちOFF信号の波形には、電圧Eの波形におけるa部分、電圧Fの波形におけるb部分のような波形乱れ部分が生じる。これを防ぐためコンデンサC4、C5を設けているが、これについて以下に説明する。
【0060】
図5のように、符号Fで示すOFF信号がHIGレベル(=2次Vcc)からLOWレベル(=0V)に切り替わった後にA点のフォトカプラIC1の入力電圧がコンデンサC6〜C9の残留電圧の放電に基づきある電圧まで下降すると、IC1がオフすることによって、フォトカプラIC1の出力(B点)がHIGHレベルに変化しそのタイミングでOFF信号がLOWレベルからHIGHレベルへ急峻に切り替わってしまう現象が生じる。これを防止するために、コンデンサC4、C5を搭載している。
【0061】
(a)コンデンサC4の容量を大きくすることで、ダイオードD1、D2のOR出力(E点出力)の波形におけるa部分の放電時間を長くする。つまり、C4によって放電時間を稼ぎ急峻な立下りを防いでいる。a部分の凹んでいる状態の時間長t3を第3の時間と呼ぶ。
【0062】
(b)コンデンサC5の容量を大きくすることで、F点のOFF信号の波形におけるb部分(図示点線部分)が急峻に立ち上がるのを防止している。つまり、C5によってOFF信号に生じる急峻な立上りを防いでいる。これによって、OFF信号の波形品質保持即ちLOWレベルであるべき状態を維持でき、瞬時でもOFF信号がHIGHレベルに変わってデータ保存のために用いられるコンバータ2次出力の出力維持状態に変化を生じないようにしている。従って、電源断信号出力手段15は、少なくとも前記第3の時間の間、電源断信号(OFF信号)の出力を保持する信号保持手段を備えることになる。
【0063】
本実施形態においては、データの保存を確実するための新たな解決手段として、商用電源電圧を全波整流電圧に変換し、ゼロクロスするタイミング(100〜120Hz)を監視することによって実施している。ゼロクロスするタイミングが一定時間以下の場合は正常動作、一定時間以上になった場合は、電源遮断したものと判定し、プロセッサ等の製品回路側へ電源遮断信号(OFF信号)を出力するものである。
【0064】
本実施形態の場合、残留電圧の影響を受けすに電源遮断を速やかに検知することができるため、ACコード抜け、カートのスイッチオフによる電源遮断時でも、データを保存するのに必要な2次出力電源を維持する時間を確保することができる。また、1次回路の平滑コンデンサの低容量化、リレーの削除が可能となるため、電源ユニットの小型化や、価格価低減が期待可能である。
【0065】
第1の実施形態によれば、残留電圧の影響を受けすに電源遮断を速やかに検知できるためt0が短く、ACコード抜け、カートのスイッチオフによる電源遮断時でも、データを保存するのに必要な2次出力電圧や患者回路電源を維持する時間tlを確保することができる。よって、データの保存を確実に行え、かつ1次回路の平滑コンデンサの低容量化、リレーの削除が可能となり、電源ユニットの小型化や、価格低減も可能となる。
【0066】
[第2の実施形態]
図6は本発明の第2の実施形態の電源装置の構成を示す回路図である。
図6の実施形態は、 図1の実施形態における、B点の信号を生成するためのフォトカプラIC1に代えて、交流用フォトカプラIC1Aを用いる構成例を示している。その他の構成は図1と同様である。
交流用フォトカプラを用いれば、図1のダイオードD3、D4を削除することができ、部品点数の削減を図ることができる。
交流用フォトカプラIC1Aとしては、例えばルネサスエレクトロニクス社製のAC入力対応型フォトカプラであるPS2505−1,−4,PS2505L−1,−4などを用いることができる。
【0067】
第2の実施形態によれば、電源装置の部品点数を削減することができる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して実施することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成することができる。
【符号の説明】
【0069】
11…電源入力部、12…コンバータ、13…整流回路、14…電圧周期検出回路、15…電源断信号出力手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の電源より入力される交流電圧を直流電圧に変換し出力するコンバータと、
外部の電源より入力される交流電圧を整流し、整流波形電圧を出力する整流回路と、
前記整流波形電圧が所定の閾値となる電圧周期を検出し、前記電圧周期が所定の周期より長いことを検出した時、電圧周期異常信号を出力する電圧周期検出回路と、
前記電圧周期異常信号が入力された時、電源断信号を出力する電源断信号出力手段と、
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記整流回路は全波整流回路であることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電圧周期検出回路は、
前記全波整流波形電圧が、前記所定の閾値以上であることを検出した時、第1の信号を出力する第1の電圧検出器と、
前記第1の信号が、所定の第1の時間以上出力を継続した時、第1の確定信号を出力する第1の時間検出器と、
前記全波整流波形電圧が、前記所定の閾値未満であることを検出した時、第2の信号を出力する第2の電圧検出器と、
前記第2の信号が、所定の第2の時間以上出力を継続した時、第2の確定信号を出力する第2の時間検出器と、を備え、
前記第1の確定信号と前記第2の確定信号のどちらか一方が入力された時、前記電圧周期異常信号を出力すること特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記電源断信号出力手段は、
少なくとも第3の時間の間、前記電源断信号の出力を保持する信号保持手段を備えることを特徴とする請求項3記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−152065(P2012−152065A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10128(P2011−10128)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】