説明

電熱加熱装置付き高周波加熱装置

【課題】電熱加熱装置付き高周波加熱装置において、加熱室内照明装置であるLED照明装置を利用して、温度検知素子を不要にすること。
【解決手段】高周波加熱装置の本体内に設けられた被加熱物を収納する加熱室5と、加熱室5内に高周波電力を供給する高周波発生手段であるマグネトロン1と加熱室5内を電熱加熱するヒータ6、加熱室5の側壁の外側に隣接して設けられたLED照明装置4と、高周波発生手段であるマグネトロン1とヒータ6とLED照明装置4を制御する制御手段である制御部2とを備え、LED照明装置4のLED素子の順電圧Vfから加熱室温度を測定することで、温度検知素子を不要にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱する電熱加熱装置付き高周波加熱装置において、電熱加熱調理時の加熱室内の温度検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の高周波加熱装置は、本体内に設けられた加熱室及び被加熱物用照明ランプ(加熱室内照明)と電熱加熱調理時の加熱室温度を測定するための温度検知素子としてのサーミスタとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−76990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の電熱加熱装置付き高周波加熱装置の構成では、被加熱物用照明装置(加熱室内照明装置)としてランプを用いているため、占有体積が大きく、また消費電力が大きいという課題を有していた。また、電熱加熱調理時の加熱室温度を測定するために、サーミスタを備える必要性があった。
【0005】
本発明の電熱加熱装置付き高周波加熱装置は、前記従来の課題を解決するもので、加熱室内照明装置にLED(発光ダイオード)素子を使用することで、従来のランプで課題となる照明装置のコンパクト化、長寿命化、消費電力低減を可能にすると共に、LED素子を温度検知素子として利用し、サーミスタのような温度検知素子を削減した電熱加熱装置付き高周波加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電熱加熱装置付き高周波加熱装置は、装置本体内に設けられた被加熱物を収納する加熱室と、加熱室内に高周波電力を供給する高周波発生手段と、加熱室内を電熱加熱する電熱加熱手段と、加熱室の側壁の外側に隣接して設けられた加熱室内照明装置と、高周波発生手段と電熱加熱手段と加熱室内照明装置を制御する制御手段とを備え、前記加熱室内照明装置はLED素子を用いたLED照明であり、LED照明のLED素子の順電圧Vfから加熱室温度を測定するとしたものである。
【0007】
これによって、順方向に電圧を印加した時に発光する半導体素子であるLED素子を用いた加熱室内照明装置で加熱室内のLED照明をおこなえるとともに、さらに、LED照明のLED素子のカソード(陰極)に対しアノード(陽極)に正電圧を印加して発光する時の順電圧(順方向降下電圧)Vfから加熱室温度を測定することが可能となり、加熱室内照明装置と温度検知素子とをLED素子でまかなうことができ、従来の加熱室内照明装置と温度検知素子の占有体積を大幅に小さくでき、またサーミスタを使用する必要が無く、コストを削減できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電熱加熱装置付き高周波加熱装置は、加熱室内照明装置にLED素子を用い、LED照明のLED素子の順電圧Vfから加熱室温度を測定することで、温度検知素子としてのサーミスタを不要にし、コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における電熱加熱装置付き高周波加熱装置の構造図
【図2】本発明の実施の形態1における電熱加熱装置付き高周波加熱装置のLED照明装置のLED素子の周囲温度−順電圧特性図
【図3】本発明の実施の形態1における電熱加熱装置付き高周波加熱装置の制御手段の動作を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態2における電熱加熱装置付き高周波加熱装置の制御手段の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態2における電熱加熱装置付き高周波加熱装置の制御手段の主要な部分の回路構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は装置本体内に設けられた被加熱物を収納する加熱室と、前記加熱室内に高周波電力を供給する高周波発生手段と、前記加熱室内を電熱加熱する電熱加熱手段と、前記加熱室の側壁の外側に隣接して設けられた加熱室内照明装置と、前記高周波発生手段と前記電熱加熱手段と前記加熱室内照明装置を制御する制御手段とを備え、前記加熱室内照明装置はLED(発光ダイオード)素子を用いたLED照明であり、前記LED照明のLED素子の順電圧Vfから加熱室温度を測定するものである。
【0011】
これによって、前記加熱室温度を測定するための温度検知素子としてのサーミスタを不要にし、コストを削減することができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の加熱室内照明装置の前記LED素子を前記加熱室の上側に設置してLED照明をおこなうことにより、加熱室全体の照射を可能にし、前記加熱室内の熱風が上方へ向かうことを利用して加熱室温度検知の精度を向上させることができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の前記LED照明の加熱室内照明装置を備えた電熱加熱装置付き高周波加熱装置を、既知の温度に設定された第一の温度環境下におき、第一の電流値でLED素子を点灯させ、前記第一の温度環境下でのLED素子の順電圧Vf1の値を制御手段に読み込ませるとともに、その順電圧Vf1と第二の温度環境下で第一の電流値でLED素子を点灯させた際の順電圧Vf2との差から、第一の温度との温度差を計算し、第二の温度環境下の加熱室温度を測定するとしたことにより、LED素子の順電圧Vfの部品バラつきを抑制することができ、正確な加熱室温度を測定することができる。
【0014】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の前記順電圧Vf1の値と前記順電圧Vf2の差をオペアンプ等の増幅器で増幅して、加熱室温度を計算するとしたことにより、より正確な加熱室温度を測定することができる。
【0015】
第5の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の前記LED素子の順電圧Vfの値から加熱室温度を測定し、前記加熱室温度が任意の温度を超えた場合に、前記電熱加熱手段を停止させることができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における電熱加熱装置付き高周波加熱装置の構造図を示すものである。
【0018】
図1において、電熱加熱装置付き高周波加熱装置は、食品などの被加熱物を収納し、加熱調理する加熱室5が設けられている。また、電熱加熱装置付き高周波加熱装置本体内には、被加熱物を調理するための高周波発生手段であるマグネトロン1と、このマグネトロン1へ送風するファンにより構成した冷却手段3と、電熱加熱調理をするための電熱加熱装置として電熱加熱手段であるヒータ6が設けられている。
【0019】
高周波発生手段であるマグネトロン1で発生した2.45GHz帯の高周波電波は、導波管8を伝搬して、加熱室5内へ供給される。
【0020】
電熱加熱装置付き高周波加熱装置本体内には、加熱室5及び被加熱物を照明する加熱室内照明装置であるLED照明装置4が設けられている。このLED照明装置4は、後述するLED素子を用いたものである。
【0021】
制御手段である制御部2では、AC電源をDC電源に変換するAC−DC電源回路が使用されており、制御ICの駆動電圧やLED照明をおこなうLED素子を駆動する電圧を作り出している。
【0022】
制御部2には入力手段9が設けられており、入力手段9には、タッチキー、ダイヤル、レバー等が用いられる。
【0023】
以上のように構成された電熱加熱装置付き高周波加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0024】
まず、食品の加熱調理にあたって、入力手段9を用いて加熱出力や調理時間などの加熱条件を設定する。図3は本発明の第1の実施の形態における電熱加熱装置付き高周波加熱装置の制御手段の動作を示すフローチャートである。
【0025】
図3において、電熱加熱装置付き高周波加熱装置で電熱加熱調理をする場合の説明を行う。
【0026】
まず、加熱室5に被加熱物を収納し、制御部2の入力手段9を用いて、電熱加熱調理(手順F1)を開始し、ヒータ6に通電(手順F2)を行う。ヒータ6を通電により、発熱させることで、加熱室5内の被加熱物を加熱する。
【0027】
加熱を開始すると、被加熱物を照らすためにLED照明装置4のLED素子が点灯(手順F3)する。LED照明装置4は、加熱室の上方に設置される。LED照明装置4のLED素子が点灯する際、LED照明装置4内のLED素子には、任意の電流が流れ、順電圧(順方向降下電圧)Vfが発生する。
【0028】
図2は、本発明の第1の実施の形態における電熱加熱装置付き高周波加熱装置のLED照明装置のLED素子の周囲温度−順電圧特性グラフである。
【0029】
図2において、横軸が、周囲温度T(℃)で、縦軸が順電圧Vf(V)を示しており、周囲温度が上昇すると、順電圧Vfが減少し、周囲温度が低下すると順電圧Vfが増加する。
【0030】
したがって、LED照明装置4のLED素子が点灯した後、順電圧Vfを制御部で読み込み(手順F4)、LED照明装置の周囲温度を求め、加熱室の温度を測定することが可能となる。
【0031】
この加熱室温度が目的の温度に達している場合は、電熱加熱手段であるヒータ6への通電を一定時間停止(手順F6)する。目的の温度に達していない場合は、順電圧Vfの読み込み(手順F4)を繰り返す(手順F5)。
【0032】
ヒータ6への通電を一定時間停止(手順F6)した後、順電圧Vfを制御部で読み込み(手順F7)、加熱室の温度を測定し、この加熱室温度が目的の温度以下であれば、ヒータ6に通電(手順F2)を行い、手順F2より再度、動作を繰り返す(手順F8)。
【0033】
加熱室温度が目的の温度以上であれば、順電圧Vfを制御部2で読み込み(手順F7)を繰り返し行う(手順F8)。
【0034】
この動作を調理終了まで行うことで、加熱室温度を目的の温度に保つことが可能となる。
【0035】
以上のように、本実施の形態においては、LED照明装置4にLED素子を使用することにより、LED素子の順電圧Vfを制御手段である制御部2で読み取り、LED素子の周囲温度−順電圧特性を利用して加熱室温度を測定し、加熱室温度の調整をすることができる。
【0036】
そのため、加熱室温度を測定する温度検知素子としてのサーミスタを使用する必要が無くなるため、温度検知素子による占有体積を大幅に小さくできると共に、温度検知素子のコストを削減できる。
【0037】
また、本実施の形態では、LED照明装置4を、加熱室の上方に設置したことにより、加熱室5全体を照射することが可能、さらに加熱室内の熱風は上方へ向かうことを利用して温度検知することが可能となる。
【0038】
(実施の形態2)
図4は本発明の第2の実施の形態における電熱加熱装置付き高周波加熱装置の制御手段の動作を示すフローチャートである。実施の形態1と同様に構成された電熱加熱装置付き高周波加熱装置について、以下実施の形態2の動作、作用を説明する。
【0039】
図4において、電熱加熱装置付き高周波加熱装置で電熱加熱調理する場合の説明を行う。実施の形態1と同じ内容の部分については同じ符号を付与している。
【0040】
まず、第一の温度環境下、例えば、製品組立時に、加熱室温度を温度計により測定する(手順F9)。この時の加熱室温度をTとする。次に任意の電流値IにてLED点灯を行い(手順F10)、LED素子12の順電圧Vfを読み込む(手順F11)。加熱室温度Tでの順電圧VfをVf1として制御部2に記憶させる。
【0041】
次に、第二の温度環境下、例えば、消費者が電熱加熱調理する場合について説明する。
【0042】
まず、加熱室5に被加熱物を収納し、制御部2の入力手段9を用いて、電熱加熱調理(手順F1)を開始し、ヒータ6に通電(手順F2)を行う。ヒータ6を通電により、発熱させることで、加熱室5内の被加熱物を加熱する。
【0043】
加熱を開始すると、被加熱物を照らすため、LED照明装置4のLED素子12が点灯(手順F3)する。LED照明装置4が点灯する際、LED照明装置4内のLED素子12には、前記任意の電流値Iの電流が流れ、順電圧Vf2が印加される。
【0044】
このVf2と前記第一の温度環境下で記憶したVf1の差を増幅して、読み込んで、加熱室温度の測定を行う(手順F13)。
【0045】
図5は本発明の第2の実施の形態における電熱加熱装置付き高周波加熱装置の制御手段の主要な部分の回路構成図であり、手順F13の回路構成例を示したものである。定電圧源15により、前記任意の電流値Iの電流がLED素子12に流れ、LED素子12に順電圧Vf2が印加される。
【0046】
この順電圧Vf2と制御IC11の出力ポート13より出力される前記第一の温度環境下で記憶したVf1との差をオペアンプ10で増幅して、制御IC11の入力ポート14へ入力し、前記第一の温度環境下での加熱室温度Tからの温度差を測定することで、加熱室温度を測定することができる。
【0047】
この加熱室温度が目的の温度に達している場合は、ヒータ6への通電を一定時間停止(手順F6)する。目的の温度に達していない場合は、順電圧Vfの読み込み(手順F13)を繰り返す(手順F5)。
【0048】
ヒータ6への通電を一定時間停止(手順F6)した後、再度順電圧Vf2と前記第一の温度環境下で記憶したVf1の差を増幅して、読み込み(手順F14)、加熱室の温度を測定し、この加熱室温度が目的の温度以下であれば、ヒータ6に通電(手順F2)を行い、手順F2より再度、動作を繰り返す(手順F8)。
【0049】
加熱室温度が目的の温度以上であれば、順電圧Vf2と前記第一の温度環境下で記憶したVf1の差を増幅して、制御部2への読み込み(手順F14)を繰り返し行う(手順F8)。
【0050】
この動作を調理終了まで行うことで、加熱室温度を目的の温度に保つことが可能となる。
【0051】
以上のように、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、LED素子12の周囲温度−順電圧特性を利用して加熱室温度を測定し、加熱室温度の調整をすることができ、温度検知素子による占有体積を大幅に小さくできると共に、温度検知素子のコストを削減できる。
【0052】
また、本実施の形態では、第一の温度環境下での順電圧Vf1と第二の温度環境下で順電圧Vf2の電圧差から、温度差を計算し、第二の温度環境下での加熱室温度を測定しているため、LED素子12の順電圧Vfの部品バラつきを抑制することができる。
【0053】
さらに、LED素子12の順電圧Vf1とVf2との電圧差をオペアンプで増幅しているため、正確な加熱室温度を測定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にかかる電熱加熱装置付き高周波加熱装置は、LED素子の順電圧Vfを利用して、LED素子の周囲温度を測定することが可能となるので、温度検知を必要とするLED照明機器の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 マグネトロン(高周波発生手段)
2 制御部
3 冷却手段
4 LED照明装置
5 加熱室
6 ヒータ
8 導波管
9 入力手段
10 オペアンプ
11 制御IC
12 LED素子
13 出力ポート
14 入力ポート
15 定電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に設けられた被加熱物を収納する加熱室と、前記加熱室内に高周波電力を供給する高周波発生手段と、前記加熱室内を電熱加熱する電熱加熱手段と、前記加熱室の側壁の外側に隣接して設けられた加熱室内照明装置と、前記高周波発生手段と前記電熱加熱手段と前記加熱室内照明装置を制御する制御手段とを備え、前記加熱室内照明装置はLED素子を用いたLED照明であり、前記LED照明のLED素子の順電圧Vfから加熱室温度を測定する電熱加熱装置付き高周波加熱装置。
【請求項2】
前記加熱室内照明装置の前記LED素子を前記加熱室の上側に設置してLED照明をおこなう請求項1に記載の電熱加熱装置付き高周波加熱装置。
【請求項3】
前記LED照明の加熱室内照明装置を備えた電熱加熱装置付き高周波加熱装置を、既知の温度に設定された第一の温度環境下におき、第一の電流値でLED素子を点灯させ、前記第一の温度環境下でのLED素子の順電圧Vf1の値を制御手段に読み込ませるとともに、その順電圧Vf1と第二の温度環境下で第一の電流値でLED素子を点灯させた際の順電圧Vf2との差から、第一の温度との温度差を計算し、第二の温度環境下の加熱室温度を測定する請求項1に記載の電熱加熱装置付き高周波加熱装置。
【請求項4】
前記順電圧Vf1の値と前記順電圧Vf2の差をオペアンプ等の増幅器で増幅して、加熱室温度を計算する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電熱加熱装置付き高周波加熱装置。
【請求項5】
LED素子の順電圧Vfの値から加熱室温度を測定し、前記加熱室温度が任意の温度を超えた場合に、前記電熱加熱手段を停止させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の電熱加熱装置付き高周波加熱装置。

【図2】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−53783(P2013−53783A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191325(P2011−191325)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】