説明

電球型ヒータ、電球型ヒータ製造方法

【課題】放射透過性バルブ外面に白塗装反射膜および光熱開口部を備えたハロゲンランプの配熱特性と分光特性の向上を図ることで、ハロゲンランプを点灯させる電力の効率化を図る。
【解決手段】放射透過性のバルブ12とこのバルブ12内に封装された高融点金属のフィラメント13およびハロゲンガスを不活性ガスとともに封入し、バルブ12の両端を封止端部151,152で封止してハロゲンランプ11を構成する。バルブ12の外表面にアルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料を用いて、反射膜20をコーティングする。反射膜20は、バルブ12の長軸方向に光熱開口部21以外が所定の開口角となるようなコーティングを行って形成し、反射膜20の厚みを100μm以上300μm以下とした。これにより配熱特性と分光特性を向上させることができ、ハロゲンランプ11を点灯させる電力の効率化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射透過性のバルブ内に高融点金属のフィラメントが封装されるとともに、ハロゲンが封入されたペットボトル製造時の加熱用や暖房用等に用いられる電球型ヒータおよび電球型ヒータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発熱用ハロゲン電球である赤外線反射膜付きハロゲン電球は、透光性管型外囲器の長軸方向の表面に沿って光干渉膜を形成しない光熱放射開口部を残して反射膜である光干渉膜が形成されている。この光熱放射開口部はフロスト加工により粗面に形成されている。光干渉膜は、酸化チタンや酸化タンタル等の高屈折率を示す金属酸化物膜層と、酸化珪素等の低屈折率を示す金属酸化物膜層とを交互に積層して形成される膜厚を、0.1μm〜0.3μm程度にしてフィラメントから放射される赤外線を反射し、可視光を透過するようにされている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平7−230795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、例えばペットボトル製造時の加熱用ヒータとしては通常反射膜付タイプが使用されているが、分光特性が悪いものもあり、近年、飲料市場等での需要が拡大しているペットボトルを製造する会社では、ペットボトルの基となる試験管状のプリフォームを加熱してペットボトルの形状にするためのヒータの加熱量は、消費電力に大きな影響を与え、ペットボトルを成形するマシンには、1機当たり200〜400本のハロゲン電球形ヒータを必要とし、分光特性を向上させ全体の消費電力を低下させる要望があった。また、定着用のヒータとして用いた場合は、省電力化の要求が強く答えきれていないのが現状であった。
【0004】
この発明の目的は、分光特性を向上させることで消費電力の低下を図ることが可能な電球型ヒータおよびこれの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の電球型ヒータは、放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントおよびハロゲンガスを不活性ガスとともに封入して構成された電球型ヒータにおいて、前記バルブの外表面にアルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料を用いて、前記バルブの長軸方向に光熱開口部以外が所定の開口角となるコーティングを施し、該コーティングの厚みを100μm以上300μm以下としたことを特徴とする。
【0006】
また、この発明の電球形ヒータ製造方法は、放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントおよびハロゲンガスを不活性ガスとともに封入したのち、前記バルブの両端を封止端部で封止して電球型ヒータを形成し、前記管型ヒータの一方の封止端部から他方の封止端部に至る付近まで予め溶融されたアルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料を液槽内に浸し、長軸方向に所定時間をかけて前記管型ヒータを引き上げて厚みが100μm以上300μm以下の反射膜をコーティングし、前記管型ヒータの長軸方向に規定の開口角になるように切削し光熱開口部を形成したことを特徴とする。
【0007】
また、この発明の他の電球形ヒータ製造方法は、放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントおよびハロゲンガスを不活性ガスとともに封入したのち、前記バルブの両端を封止端部で封止して電球型ヒータを形成し、前記管型ヒータの両封止端部にキャップを被せ、前記各ガスを封入後に塞くことで前記バルブに形成されたチップ部から予め溶融されたアルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料を液槽内に浸し、所定時間をかけて前記管型ヒータを引き上げて厚みが100μm以上300μm以下の反射膜をコーティングし、前記管型ヒータの長軸方向に規定の開口角になるように切削し光熱開口部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、配熱特性と分光特性を向上させたハロゲンランプを得ることができることから、ハロゲンランプを点灯させる電力の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1〜図3は、それぞれこの発明の電球型ヒータの一実施形態について説明するためのもので、図1はハロゲンランプの全体構成を示す構成図、図2は図1の要部を拡大して示す構成図、図3は図1のx−x’断面図である。
図1、図2において、11はハロゲンランプである。ハロゲンランプ11は、例えばペットボトルのプリフォーム用や暖房用等のヒータとして多用される管型であり、放射透過性を有する石英ガラス製等のバルブ12を有する。バルブ12は、その内部に耐火性金属の電気抵抗線の一例であるタングステンフィラメント13を熱源として同心状に収容している。このフィラメント13は、バルブ12内で軸方向に複数配設されたアンカー14…により、バルブ12に対する同心状態が保持される。
【0011】
また、バルブ12内には、不活性ガスとしてアルゴン(Al)を封入するとともに、所容量のハロゲンガスを封入し、バルブ12の長軸方向の両端部を直径方向に圧潰するピンチシールによって、矩形扁平状の一対の封止端部151,152を形成する。これら封止端部151,152内には、バルブ12と膨張係数が近似した導電性の例えばモリブデン(Mo)で形成された矩形箔状の金属箔161,162をそれぞれ埋設している。121は、バルブ12内にアルゴンガスやハロゲンガスを封入した後に密封されたチップ部である。
【0012】
各金属箔161,162は、その内端部に、一対のインナーリード線171,172を介してフィラメント13の軸方向両端を接続する一方、各外端部には、給電のための一対のアウターリード線181,182をそれぞれ接続している。アウターリード線181,182は、各封止端部151,152から気密に外部へ延出している。
【0013】
バルブ12の外表面には白塗装を反射する反射膜20がコーティングされる。反射膜20は、アルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料を、バルブ12の長軸方向に規定の開口角になるように光熱開口部21以外にコーティングし、焼成する。反射膜20の膜厚は、100μm以上300μm以下の範囲とする。
【0014】
反射膜20の膜厚を100μm〜300μmの範囲とすることにより、反射膜20から可視光が漏れることを抑えることで、光熱開口部21から放射される白塗装の出力を向上させることができる。
【0015】
なお、バルブ12と反射膜20との境界部分は、図3の囲みyの拡大断面図を示す図4のように、反射膜20は斜めに切削されている。これにより反射膜20の剥がれ防止に寄与する。
【0016】
図5は、アウターリード181,182に給電のためのリード線51,52をそれぞれ接続するとともに、取り付けのための例えばセラミック製の口金53,54をセメント55,56で固着した状態について示している。
【0017】
次に、図6を参照し、バルブ12内にハロゲンガスそれに不活性ガスとして、アルゴンガスを封入した場合と窒素ガスを封入した場合との波長(nm)および分光出力(μm/cm)の関係について説明する。
【0018】
図6からわかるように、400nm〜2500nmの波長の全帯域に渡りアルゴンガスを封入した場合は、約20%程度分光特性が向上することがわかった。
【0019】
次に、図7〜図9を参照してこの発明と従来の比較について説明する。従来の反射膜の膜圧を30μmとし、この発明の反射膜の膜厚を120μmとする。
【0020】
図7に示すように、反射膜20の膜厚を、30μmとした従来の場合と、120μmとしたこの発明の場合とを比較したもので、配熱特性を図8に、分光特性を図9にそれぞれ示す。
【0021】
また、図8は、波長が400nm〜2500nmにおける分光出力(μm/cm)の関係について示すもので、ピーク波長1100nm付近で20%程度の向上を図ることができる。
【0022】
なお、ここでの反射膜20の膜厚は100μmとしたが、100μm〜300μmの範囲で同様の効果を得ることができる。
【0023】
この実施形態の場合、100μm〜300μmの膜厚を有する反射膜20が形成されたハロゲンランプ11の光開口部21からの従来よりも、配熱特性は約20%〜30%、分光特性は20%程度向上させることができる。このため、例えば従来2kW必要だった消費電力を1600W〜1700Wに低下させることも可能である。換言すれば、同じ加熱量で生産性の向上も見込むことができる。
【0024】
図9は、反射膜20の膜厚を、従来の35μmとこの発明の100μm、150μm、300μmにおける光熱開口部21の開口角との放射比率の関係について説明するために示したものである。なお、図9では反射膜20がない状態での分光出力を100%を基準にしている。
【0025】
すなわち、膜厚が35μmで開口角が90°(=反射膜角270°)の場合の放射比率は、200%を超えない程度である。これに対し、膜厚が100μm〜300μmでは、開口角が同じ90°の場合は、210%程度以上の一番大きな放射比率を得ることができる。図9から明らかなように、放射比率は、反射膜20の膜厚を100μm〜300μmとした場合に、光熱開口部21の開口角が150°〜55°とした場合においてより向上が見られる。
【0026】
図10(a)〜(d)は、この発明の電球型ヒータ製造方法の一実施形態について説明するための説明図である。
【0027】
まず、図10(a)において、予めバルブ12内で軸方向に複数配設されたアンカー14…により同心状態でフィラメント13を保持し、さらに不活性ガスとしてアルゴン(Al)を封入するとともに、所容量のハロゲンガスを封入し、その軸方向両端部を直径方向に圧潰するピンチシールにより矩形扁平状の一対の封止端部151,152を形成された管型のハロゲンランプ11を用意する。
【0028】
図10(b)において、アルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料が溶融された液槽100内にハロゲンランプ11の一方の封止端部151からバルブ12、封止端部152の手前まで浸ける。これにより、図10(c)に示すように封止端部151、バルブ12の全体に渡り反射膜20が100μm以上300μmの範囲内の厚みで持ってコーティングされる。
【0029】
次に、図10(d)において、封止端部151およびバルブ12の所定の開口角になるように光熱開口部21を形成するように切削する。なお、切削は、硬化型樹脂である例えばシリコンラバーやテフロン(登録商標)ラバーのエッジ部分を使用し、不要な部分の反射膜を削り落とす作業を行うことで可能となる。
【0030】
これにより、膜厚が100μm以上300μm以下の反射膜20の所望の開口角の光熱開口部21が形成された、反射膜付きのハロゲンランプ11を作成する。なお、膜厚の調整は、液槽100に入れた反射膜材料の粘性を調整することで可能である。
【0031】
この方法の場合、反射膜20の膜厚形成を液槽100内に一度浸けるという作業だけで所望の膜厚を得ることが可能となる。しかも、バルブ12の長手方向から液槽100内に浸けることから、液垂れ部分の反射膜材料が後で切削する封止端部151の部分であることから、残る反射膜20の膜厚の均一化も実現することができる。
【0032】
図11(a)〜(c)は、この発明の電球型ヒータ製造方法の他の実施形態について説明するための説明図である。
【0033】
まず、図11(a)において、予めバルブ12内で軸方向に複数配設されたアンカー14…により同心状態でフィラメント13を保持し、さらに不活性ガスとしてアルゴン(Al)を封入するとともに、所容量のハロゲンガスを封入し、その軸方向両端部を直径方向に圧潰するピンチシールにより矩形扁平状の一対の封止端部151,152を形成された管型のハロゲンランプ11を用意する。
【0034】
図11(b)において、アルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料が溶融された液槽100内に、ハロゲンランプ11の封止端部151,152にシリコンキャップ122,123を被せる。そしてハロゲンランプ11のチップ部121を下にした状態で所望の開口角の光熱開口部21が形成される位置まで液槽100に浸ける。これにより、反射膜20が100μm以上300μmの範囲内の厚みで持ってコーティングされる。
【0035】
次に、図11(c)において、シリコンキャップ122,123を取り外す。これにより、所望の開口角の光熱開口部21が形成された反射膜付きのハロゲンランプ11が完成する。
【0036】
なお、膜厚の調整は、液槽100に入れた反射膜材料の粘性を調整することで可能である。
【0037】
この方法の場合、液槽100から引き上げた後の反射膜材料の液垂れは、チップ部121に発生する。このため、ハロゲンランプ11を液槽100に水平に浸けた場合でも長手方向の反射膜20の膜厚の均一化が実現できるとともに、反射膜20の所望箇所を切削する手間の係る作業も軽減することができる。さらに、液槽100を浅くでき、使用する反射膜材料も少なくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の電球型ヒータの一実施形態について説明するための構成図。
【図2】図1の一部を拡大して説明するための構成図。
【図3】図1のx−x’断面図。
【図4】図3の要部を拡大して示す断面図。
【図5】図1に口金を取り付けた状態について説明するための構成図。
【図6】アルゴンガスと窒素ガスを封入した場合の波長および分光出力の関係について説明する説明図。
【図7】反射膜の膜厚を変更した場合における配熱特性と分光特性の効果について説明するための説明図。
【図8】反射膜の膜厚を変更した場合における分光特性について説明するための説明図。
【図9】反射膜の膜厚を変更した場合の開口角との放射比率の関係について説明するための説明図。
【図10】この発明の電球型ヒータ製造方法の一実施形態について説明するための説明図。
【図11】この発明の電球型ヒータ製造方法の他の実施形態について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0039】
11 ハロゲンランプ
12 バルブ
121 チップ部
13 フィラメント
14 アンカー
151,152 封止端部
161,162 金属箔
171,172 インナーリード線
181,182 アウターリード線
20 反射膜
21 光熱開口部
100 液槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントおよびハロゲンガスを不活性ガスとともに封入して構成された電球型ヒータにおいて、
前記バルブの外表面にアルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料を用いて、前記バルブの長軸方向に光熱開口部以外が所定の開口角となるコーティングを施し、該コーティングの厚みを100μm以上300μm以下としたことを特徴とする電球型ヒータ。
【請求項2】
前記バルブ内に封入された不活性ガスは、アルゴン(Al)ガスであることを特徴とする請求項1記載の電球型ヒータ。
【請求項3】
前記開口角は、150°〜55°の範囲としたことを特徴とする請求項1記載の電球型ヒータ。
【請求項4】
放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントおよびハロゲンガスを不活性ガスとともに封入したのち、前記バルブの両端を封止端部で封止して電球型ヒータを形成し、
前記管型ヒータの一方の封止端部から他方の封止端部に至る付近まで予め溶融されたアルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料を液槽内に浸し、長軸方向に所定時間をかけて前記管型ヒータを引き上げて厚みが100μm以上300μm以下の反射膜をコーティングし、
前記管型ヒータの長軸方向に規定の開口角になるように切削し光熱開口部を形成したことを特徴とする電球形ヒータ製造方法。
【請求項5】
放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントおよびハロゲンガスを不活性ガスとともに封入したのち、前記バルブの両端を封止端部で封止して電球型ヒータを形成し、
前記管型ヒータの両封止端部にキャップを被せ、前記各ガスを封入後に塞くことで前記バルブに形成されたチップ部から予め溶融されたアルミナ、シリカを主成分とする反射膜材料を液槽内に浸し、所定時間をかけて前記管型ヒータを引き上げて厚みが100μm以上300μm以下の反射膜をコーティングし、
前記管型ヒータの長軸方向に規定の開口角になるように切削し光熱開口部を形成したことを特徴とする電球形ヒータ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−78065(P2008−78065A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258471(P2006−258471)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】