説明

電界発光性チオフェン誘導体

一般構造:(B−S−)−A−(−S−B)(構造1)のOLED化合物において、棒状分子核Aは、構造:−Ar(−T−Ar)−(構造2)を含み、ここで、Tは、ジラジカルを含むことを特徴とする化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式:

(式中、Aは、直線状芳香族分子核を表し、Sは、柔軟なスペーサー単位を表し、そしてBは、架橋基(例えば、メタクリレート基)を表す)の一部の反応性メソゲン(ポリマーマトリックスへと化学的に架橋されることができる液晶性材料)は、有機電子デバイスの製造において有用であり得ることが知られている。Bが光架橋性基である場合は特にそうである。なぜなら、そのときこの材料は、本質的にフォトレジストとして機能するからであり、すなわち、この材料の薄層が、光(特にUV光)のパターン形成露光によって有用な電子構造物へとパターン形成され得るからである。
【0003】
さらに、直線状芳香族核Aが本質的にルミネセンス性である場合、この反応性メソゲン材料は、電界発光デバイス(例えば、有機発光ダイオード(organic light emitting diodes:OLEDS)および有機ダイオードレーザー)中の活性発光層へとパターン形成され得る。
【0004】
ディスプレイ用途のための反応性メソゲン材料の開発における重要な側面は、赤色、緑色、および青色発光材料の全てが、複数の画素からなりそしてその画素は赤色、緑色、および青色の電子的にアドレス指定可能な素子の三つ組からなるフルカラードットマトリックスディスプレイの製造を可能にするように開発される必要があることである。その分子核が本質的に完全に炭素環式である式B−S−A−S−Bの材料は、この材料中の炭素−水素結合および炭素−炭素結合の分極率が比較的低いために、可視スペクトルの紫〜青の部分の光を発する。より長い波長の発光を有する材料を製造するためには、直線状分子核の主鎖に、より分極性の高い助色団官能基単位を導入する必要がある。チオフェン環は、チオフェン自体がその高度の芳香族性ゆえに極めて安定な材料である上に、その硫黄原子が実質的により高い電気分極率を付与するので、この目的のために特に有用であることが見出された。
【0005】
当該分子主鎖中に単一のチオフェンジラジカル(例えば、

(ここで、2つのAr置換基はこの分子核の残部である))を加えると、ルミネセンス波長を赤色方向にシフトさせるが、青色エミッタを緑色エミッタに変えるほどにはシフトさせない。先行技術発明において、当該分子主鎖に2対のチオフェン環(例えば、

)を加えると、青色のルミネセンス放出を緑色にシフトさせることが見出された。
【0006】
このアプローチに関する問題は、チオフェン環間の単結合の周りに、エミッタ分子の剛性を低下させエミッタ分子が棒状にならないようにする自由な回転が存在することである。これは、この材料の液晶相を不安定化させる。また、この今述べた回転が自由な状態は、結晶質よりもむしろガラス質の固相の形成に有利に働く傾向がある。ガラス質材料は、結晶質固相を有する材料に比べて、電子用途のための超精製(ultrapurify)がはるかに困難である。
【0007】
この問題を解決しようとする先行技術の試みは、2個のチオフェン環を一緒に縮合させて、チエノ[3,2−b]チオフェン環構造

を形成することであった。
【0008】
この単位2個が分子主鎖

に含まれる場合:液晶相の安定性および固相の結晶性が高められる。さらに、分子主鎖から単結合が除去されたので、この材料のルミネセンス効率が高められる。このアプローチの別の利点は、さらにより多くのチオフェン環をチエノ[3,2−b]チオフェン環構造上に縮合させ、例えば:

を生じさせることにより、さらにより大きい放出波長赤色シフトの可能性があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの材料が文献で最初に作製されたとき、上に示された2つの例は、いずれも加熱すると分解することが見出された。これは、電子用途におけるチエノチオフェンベースの材料の安定性に重大な疑問を投げかける。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一般構造:

のOLED化合物を包含し、ここで、棒状分子核Aは、構造:

を含み、ここで、Tは、以下のジラジカル:








から選択され得、ここで、置換基

は、この構造の出現ごとに、以下のスピロまたは二環式スピロ基:



のうちの1つから独立して選択され得る。
【0011】
これらのスピロ二環式置換基およびスピロ置換基において、Rは、アルキル基であり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−アミル、3−アミル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−3−アミル、3−エチル−3−アミル、またはネオ−ペンチルから選択され得、そしてRは、各出現で独立して、置換されていないかまたはF、Cl、Br、IもしくはCNにより一置換もしくは多置換されている3個〜12個の炭素原子を有する分岐、直鎖、もしくは環状のアルキル基を含み得る、あるいは1つ以上の隣接していないCH基が、O原子およびS原子が他のO原子またはS原子と直接結合されないように、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiRR−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−C≡C−で置き換えられている。構造56〜82中の水素原子は、フッ素原子により独立して置換され得る。構造2中のArは、各出現で、芳香族ジラジカル、ヘテロ芳香族ジラジカル、単結合、または上記のうちの2つ以上が一緒に連結されて実質的に直鎖をなしているものを含み得る。融点を低下させ、液晶相の安定性を高め、本発明の材料の溶媒溶解性を向上させるためには、少なくとも1つのArは、以下のジラジカル:



から選択されることが好ましく、ここで、Xは、各出現で、−CH−または−N−から選択され得、そして置換基

は、この構造の出現ごとに、構造56〜82のうちの1つから独立して選択され得、RおよびRは、上記と同じ意味を有する。
【0012】
最も好ましいのは、

が、構造56〜78から選択されることである。Arはまた、1,4−フェニレン、ビフェニル−4,4’−ジイル、テルフェン−4,4’’−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ペリレン−3,10−ジイル、ピレン−2,7−ジイル、2,2’−ジチオフェン−5,5’−ジイル、オキサゾール−2,5−ジイル、チエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイル、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−2,6−ジイル、チアゾロ[5,4−d]チアゾール−2,5−ジイル、オキサゾロ[5,4−d]オキサゾール−2,5−ジイル、チアゾロ[5,4−d]オキサゾール−2,5−ジイル、チアゾロ[4,5−d]チアゾール−2,5−ジイル、オキサゾロ[4,5−d]オキサゾール−2,5−ジイル、チアゾロ[4,5−d]オキサゾール−2,5−ジイル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル、もしくはイミダゾ[4,5−d]イミダゾール−2,5−ジイルジラジカル、または単結合のうちの1つも含み得る。分子核AのAr単位およびT単位は、実質的に直線状に一緒に連結され得る。
【0013】
構造1中のSは、単結合原子の鎖を含む柔軟なスペーサーを表し得る。この鎖は、アルキル鎖を含み得る。このアルキル鎖は、1個以上ヘテロ原子を含有し得る。
【0014】
Bは、架橋化学基を表し得、これは、メタクリレート基、1,4−ペンタジエン−3−イル基、エタクリレート基、ビニルオキシ基、アルキルビニルオキシ基、エチルマレアト(ethylmaleato)基、エチルフマラト(ethylfumarato)基、N−マレイミド(maleimido)基、ビニルマレアト基、ビニルフマラト基、またはN−(2−ビニルオキシマレイミド)基であり得る。
【0015】
構造2において、pの値は1〜5である。構造1において、nおよびmの値は1〜3から独立して選択され、かつその分子の実質的に直線状の性質は維持される。
【0016】
縮合芳香族環系Tにおいて、複数のチオフェン環が、1個以上の隣接するベンゼン環と縮合される場合、ルミネセンス光出力の波長を適切に赤色シフトさせるために必要とされる2個以上のチオフェン環が存在すると同時に、そのベンゼン環の存在が、こうした縮合環系の化学安定性を向上させる。
【実施例】
【0017】
これらの本発明の材料の実施例構造は、以下である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造:

のOLED化合物において、
棒状分子核Aは、構造:

を含み、
ここで、Tは、ジラジカルを含む
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物において、Tは、構造3乃至45の何れか1つを含むことを特徴とする化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物において、Tは、構造55を含むことを特徴とする化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物において、Tは、構造46乃至54の何れか1つを含み、ここで、置換基

は、スピロまたは二環式スピロ基であることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項4に記載の化合物において、前記スピロまたは二環式スピロ基は、構造56乃至82の何れか1つを含むことを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の化合物において、前記スピロ置換基および二環式スピロ置換基中のRは、アルキル基であることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物において、前記アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−アミル、3−アミル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−3−アミル、3−エチル−3−アミル、またはネオ−ペンチルから選択されることを特徴とする化合物。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の化合物において、Rは、各出現で独立して、置換されていないか、またはF、Cl、Br、IもしくはCNにより一置換もしくは多置換されている、3個乃至12個の炭素原子を有する分岐、直鎖、もしくは環状のアルキル基を含むことを特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の化合物において、1つ以上の隣接していないCH基が、O原子およびS原子が他のO原子またはS原子と直接結合されないように、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiRR−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−C≡C−で置き換えられていることを特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項4乃至9の何れか1項に記載の化合物において、前記スピロまたは二環式スピロ基中の少なくとも1つの水素原子は、フッ素原子で置換されていることを特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の化合物において、構造2中のArは、各出現で、芳香族ジラジカル、ヘテロ芳香族ジラジカル、単結合、または上記のうちの2つ以上が一緒に連結されて実質的に直鎖をなしているものを含むことを特徴とする化合物。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の化合物において、少なくとも1つのArは、構造83乃至93から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項13】
請求項12に記載の化合物において、Xは、各出現で、−CH−または−N−から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の化合物において、置換基

は、この構造の出現ごとに、構造56乃至82のうちの1つから独立して選択されることを特徴とする化合物。
【請求項15】
請求項14に記載の化合物において、

は、構造56乃至78から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の化合物において、Arは、1,4−フェニレン、ビフェニル−4,4’−ジイル、テルフェン−4,4’’−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ペリレン−3,10−ジイル、ピレン−2,7−ジイル、2,2’−ジチオフェン−5,5’−ジイル、オキサゾール−2,5−ジイル、チエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイル、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−2,6−ジイル、チアゾロ[5,4−d]チアゾール−2,5−ジイル、オキサゾロ[5,4−d]オキサゾール−2,5−ジイル、チアゾロ[5,4−d]オキサゾール−2,5−ジイル、チアゾロ[4,5−d]チアゾール−2,5−ジイル、オキサゾロ[4,5−d]オキサゾール−2,5−ジイル、チアゾロ[4,5−d]オキサゾール−2,5−ジイル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル、もしくはイミダゾ[4,5−d]イミダゾール−2,5−ジイルジラジカル、または単結合のうちの1つを含むことを特徴とする化合物。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の化合物において、前記分子核AのAr単位およびT単位は、実質的に直線状に一緒に連結されていることを特徴とする化合物。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項に記載の化合物において、構造1中のSは、単結合原子の鎖を含む柔軟なスペーサーを表すことを特徴とする化合物。
【請求項19】
請求項18に記載の化合物において、前記鎖は、アルキル鎖を含むことを特徴とする化合物。
【請求項20】
請求項19に記載の化合物において、前記アルキル鎖は、1個以上のヘテロ原子を含有することを特徴とする化合物。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか1項に記載の化合物において、Bは、架橋化学基を表すことを特徴とする化合物。
【請求項22】
請求項21に記載の化合物において、前記架橋化学基は、メタクリレート基、1,4−ペンタジエン−3−イル基、エタクリレート基、ビニルオキシ基、アルキルビニルオキシ基、エチルマレアト(ethylmaleato)基、エチルフマラト(ethylfumarato)基、N−マレイミド(maleimido)基、ビニルマレアト基、ビニルフマラト基、またはN−(2−ビニルオキシマレイミド)基を含むことを特徴とする化合物。
【請求項23】
請求項1乃至22の何れか1項に記載の化合物において、構造2中のpの値は、1乃至5であることを特徴とする化合物。
【請求項24】
請求項1乃至23の何れか1項に記載の化合物において、構造1中のnおよびmの値は1乃至3から独立して選択され、かつ前記分子の実質的に直線状の性質は維持されることを特徴とする化合物。
【請求項25】
化合物1。
【請求項26】
化合物2。
【請求項27】
化合物3。
【請求項28】
化合物4。

【公表番号】特表2013−506646(P2013−506646A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531492(P2012−531492)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001817
【国際公開番号】WO2011/039505
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512078683)ロモックス リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】LOMOX LIMITED
【Fターム(参考)】