説明

電界発光素子および発光装置

成膜性が良く、キャリア輸送性に優れ、固体状態で発光を示す材料であって、ホスト材料としても適した材料を用いた電界発光素子を提供する。 一対の電極間に電界発光層を有する電界発光素子において、元素周期律第4族金属錯体が、成膜性およびキャリア輸送性に優れ、且つ固体状態でも発光が得られることから、電界発光層の一部に元素周期律第4族金属錯体を用いて電界発光素子を形成する。なお、元素周期律第4族金属錯体は、従来のホスト材料(Alq等)に比べて、発光波長が長波長側にあることから、赤色発光のゲスト材料と組み合わせて、発光層を形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、一対の電極間に挟まれて形成される電界発光層に金属錯体を用いた電界発光素子に関するものである。
【背景技術】
薄型軽量、高速応答性、直流低電圧駆動などの特徴を有する材料を発光体として用いた電界発光素子は、次世代のフラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。また、電界発光素子をマトリクス状に配置した発光装置は、従来の液晶表示装置と比較して、視野角が広く視認性が優れる点に優位性があると言われている。
電界発光素子の発光機構は、一対の電極間に電界発光層を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が電界発光層中の発光中心で再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光するといわれている。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光はどちらの励起状態を経ても可能であると考えられている。
なお、電界発光素子の発光色を決定する発光性の材料については、これまで様々な研究がなされているが、中でも特に成膜時に凝集されることなく成膜することができる点で成膜性が良く、キャリア輸送性に優れ、且つ固体状態で発光を示す材料が、好ましいとされている。
また、発光色については、これらの材料自身が単独で有する色を用いる場合と、前述した材料をホスト材料とし、これにゲスト材料(ドーパント材料ともいう)をドーピングすることにより所望の発光色を得るという手法(いわゆる、ドーピング法)が用いられている。
ドーピング法を用いる場合には、一種類のホスト材料に異なるゲスト材料をドーピングすれば異なる発光色が得られるというメリットを有している。ドーピング法では、発光分子の濃度消光を抑制し、高輝度、高効率を得ることができるので濃度消光しやすい赤色発光材料を発光させる際には特に有効な手法である。しかしながら、ホスト材料として用いるのに適した材料が少ないというのが現状である。
ホスト材料とゲスト材料との関係において、ゲスト材料のHOMO−LUMO準位がホスト材料のHOMO−LUMO準位のギャップ内に位置しなければならないという基本的条件があり、さらに効率よくエネルギー移動が行われるためには、ホストの最大発光波長がゲストの最大吸収波長により近いことが好ましいとされている。
しかし、現状のホスト材料を用いて赤色発光を得る場合において、赤色発光のゲスト材料とそのホスト材料とのエネルギーギャップが大きいために、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動が効率よく行われないという問題が生じている。
例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Alqと示す)は、固体でも発光し、電子輸送性に優れ、成膜性や膜質も良好であるためホスト材料として良く用いられる。しかしながら、赤色発光のゲスト材料と共蒸着して発光層を形成すると、Alqの最大蛍光波長(λmax)が530〜540nmであるのに対し、赤色発光のゲスト材料の最大蛍光波長は560〜680nmであるため、円滑にエネルギーの移動が起こらずゲスト材料からの発光だけでなく、ホスト材料からの発光も生じてしまい、色純度の良い赤色発光を得るのが困難であるという報告がなされている(例えば、佐藤佳晴,Molecular Electronics and Bioelectronics,86−99(2000)参照。(文献1))。
また、このような問題を解決する方法として、ホスト材料であるAlqの最大蛍光波長と赤色発光のゲスト材料(例えば、DCM2)の最大蛍光波長との間に最大蛍光波長を有する補助材料(例えばルブレン)をドーピングすることによって、ホスト材料からのエネルギー移動が補助材料を介してゲスト材料へスムーズに行えるため、ゲスト材料から赤色発光のみを効率よく取り出せるという報告がなされている。(例えば、Yuji Hamada,Hiroshi Kanno,Tsuyoshi Tsujioka,Hisakazu Takahashi and Tatsuro Usuki.,“Red organic light−emittinng diodes using an emitting assist dopant”,Applied Physics Letters,vol.75,No.12,1682−1684(1999)参照。(文献2))。
しかし、このように用いる材料が多くなると、共蒸着の際に制御が難しくなることや、材料のロスが多くなるといった問題があり、さらなる改良が期待されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、成膜時に凝集されることなく成膜することができる点で成膜性が良く、キャリア輸送性に優れ、固体状態で発光を示す材料であって、ホスト材料としても適した材料を用いた電界発光素子を提供することを目的とする。
また、ホスト材料として用いる場合には、特にゲスト材料の最大吸収波長が、長波長側にある赤色発光の場合に、赤色発光のゲスト材料に対してエネルギーを効率よく移動させるのに適した材料を用いた電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、元素周期律第4族金属錯体が、上述したように成膜性およびキャリア輸送性に優れ、且つ固体状態でも発光が得られることを見出した。そこで、一対の電極間に電界発光層を有する電界発光素子において、電界発光層に元素周期律第4族金属錯体を用いることを発案した。
なお、元素周期律第4族金属錯体は、発光性を有することから単膜で用いて電界発光層を形成することもできるが、従来のホスト材料(Alq等)に比べて、発光波長が長波長側にあることから、赤色発光のゲスト材料と組み合わせて用いる場合に特に問題となるエネルギーギャップを緩和することができるので、ホスト材料として用い、ゲスト材料と組み合わせて電界発光層を形成する場合に、特に適している。
すなわち、この場合には公知のゲスト材料として、赤色発光を示し、好ましくは発光波長の極大値が580〜680nmの材料を用いることを特徴とする。
また、元素周期律第4族金属錯体において、錯体を形成する二座キレート配位子が、4つ配位するためには中心金属が8配位であることが好ましい。従って、中心金属は、元素周期律第4族に属する金属の中でもジルコニウム(Zr)や、ハフニウム(Hf)のようにイオン半径の大きい金属が好ましい。
以上より、本発明の構成は、
陽極、陰極、および電界発光層を少なくとも有する電界発光素子において、前記電界発光層は一般式[式1]で表される元素周期律第4族金属錯体を含むことを特徴とする電界発光素子である。

(式中、Mは、元素周期律第4族元素を示し、R1〜R6は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、シアノ基、アルキル基(ただし、炭素数1〜10)、ハロアルキル基(ただし、炭素数1〜10)、アルコキシル基(ただし、炭素数1〜10)、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
なお、上記構成において、前記電界発光層は積層構造を有し、白色発光を示すことを特徴とする電界発光素子である。
さらに、本発明の別の構成は、
陽極、陰極、および電界発光層を少なくとも有する電界発光素子において、前記電界発光層は一般式[式1]で表される元素周期律第4族金属錯体を含む発光層を有することを特徴とする電界発光素子である。

(式中、Mは、元素周期律第4族元素を示し、R1〜R6は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、シアノ基、アルキル基(ただし、炭素数1〜10)、ハロアルキル基(ただし、炭素数1〜10)、アルコキシル基(ただし、炭素数1〜10)、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
なお、上記構成において、
前記発光層は一般式[式1]で表される元素周期律第4族金属錯体およびゲスト材料を含むことを特徴とする電界発光素子である。
【発明の効果】
本発明において、元素周期律第4族金属錯体をその一部に用いることにより、素子特性に優れた電界発光素子を提供することができる。特に、元素周期律第4族金属錯体は、その発光波長が従来の材料に比べて長波長側にあるため、赤色発光の発光層におけるホスト材料として用いることにより、赤色発光のゲスト材料に対するエネルギー移動が効率良く行われるので、電界発光素子の発光効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施の形態1における電界発光素子の素子構造を説明する図である。
図2は、実施の形態2における電界発光素子の素子構造を説明する図である。
図3は、実施の形態3における電界発光素子の素子構造を説明する図である。
図4は、実施例2における電界発光素子の素子構造を説明する図である。
図5は、実施例3における電界発光素子の素子構造を説明する図である。
図6は、実施例4における電界発光素子の素子構造を説明する図である。
図7は、実施例5における電界発光素子の素子構造を説明する図である。
図8Aと図8Bは、Zr錯体およびそれを用いた電界発光素子の(PL、EL)スペクトルを示すグラフである。
図9Aと図9Bは、は、発光装置について説明する図である。
図10A−図10Gは、電子装置について説明する図である。
図11Aと図11Bは、Zr錯体のメタノール溶液中のPLスペクトルを示すグラフである。
図12Aと図12Bは、Hf錯体のメタノール溶液中のPLスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明における電界発光素子は、基本的には、一対の電極(陽極及び陰極)間に上述した元素周期律第4族金属錯体(一般式[式1]に示す)を含む電界発光層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層)を挟持した素子構成である。

(式中、Mは、元素周期律第4族元素を示し、R1〜R6は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、シアノ基、アルキル基(ただし、炭素数1〜10)、ハロアルキル基(ただし、炭素数1〜10)、アルコキシル基(ただし、炭素数1〜10)、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
なお、一般式[式1]に示す金属錯体は、元素周期律第4族に属する金属(Zr、Hf)を中心金属とするものであり、具体的には、化学式[式2]、一般式[式1]に示す8−キノリノールの2位(R1)にメチル基を導入することにより得られる化学式[式3]、8−キノリノールの5位(R4)にメチル基を導入することにより得られる化学式[式4]、8−キノリノールの2位(R1)と、4位(R3)にメチル基を導入することにより得られる化学式[式5]、8−キノリノールの5位(R4)にフェニル基を導入することにより得られる化学式[式6]、8−キノリノールの2位(R1)にメチル基、5位(R4)にシアノ基を導入することにより得られる化学式[式7]、8−キノリノールの2位(R1)にメチル基、6位(R5)にトリフルオロメチル基を導入することにより得られる化学式[式8]、8−キノリノールの2位(R1)にメチル基、4位(R3)にメトキシ基を導入することにより得られる化学式[式9]、8−キノリノールの5位(R4)に塩素を導入することにより得られる化学式[式10]、8−キノリノールの5位(R4)と7位(R6)にそれぞれ塩素を導入することにより得られる化学式[式11]に示す金属錯体を電界発光層に含む構成である。



なお、化学式[式2]〜[式11]には、中心金属がZrである場合について示したが、化学式[式2]〜[式11]の中心金属をHfとした同様の構造(例えば、化学式[式12])の場合も含めることとする。

また、電界発光層に用いる元素周期律第4族金属錯体以外の材料としては、公知の材料を用いることができ、低分子系材料および高分子系材料のいずれを用いることもできる。なお、発光層を形成する材料には、有機化合物材料のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
なお、本発明においては、陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ホールブロッキング層/電子輸送層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ホールブロッキング層/電子輸送層/電子注入層/陰極等の構成を有する電界発光素子において、発光層に前記元素周期律第4族金属錯体を用いることを特微とする。
以下に、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態1では、元素周期律第4族金属錯体を単体で用いて発光層を形成する場合における電界発光素子の素子構成について図1を用いて説明する。
図1では、基板100上に第1の電極101が形成され、第1の電極101上に電界発光層102が形成され、その上に第2の電極103が形成された構造を有する。
なお、ここで基板100に用いる材料としては、従来の電界発光素子に用いられているものであれば良く、例えば、ガラス、石英、透明プラスチックなどからなるものを用いることができる。
また、本実施の形態1における第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
すなわち第1の電極101は陽極材料で形成され、ここで用いることのできる陽極材料としては、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。なお、陽極材料の具体例としては、ITO(indium tin oxide)、酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(indium zinc oxide)の他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(TiN)等を用いることができる。
一方、第2の電極103の形成に用いられる陰極材料としては、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。なお、陰極材料の具体例としては、元素周期律の1族または2族に属する元素、すなわちLiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li)や化合物(LiF、CsF、CaF)の他、希土類金属を含む遷移金属を用いて形成することができるが、Al、Ag、ITO等の金属(合金を含む)との積層により形成することもできる。
なお、上述した陽極材料及び陰極材料は、蒸着法、スパッタリング法等により薄膜を形成することにより、それぞれ第1の電極101及び第2の電極103を形成する。膜厚は、10〜500nmとするのが好ましい。
また、本発明の電界発光素子において、電界発光層におけるキャリアの再結合により生じる光は、第1の電極101または第2の電極103の一方、または両方から外部に出射される構成となる。すなわち、第1の電極101から光を出射させる場合には、第1の電極101を透光性の材料で形成することとし、第2の電極103側から光を出射させる場合には、第2の電極103を透光性の材料で形成することとする。
また、電界発光層102は複数の層を積層することにより形成されるが、本実施の形態1では、正孔注入層111、正孔輸送層112、及び電子輸送性発光層113を積層することにより形成される。
なお、この場合において正孔注入層111を形成する場合に用いる正孔注入性材料としては、有機化合物であればポルフィリン系の化合物が有効であり、フタロシアニン(以下、H−Pcと示す)、銅フタロシアニン(以下、Cu−Pcと示す)等を用いることができる。また、導電性高分子化合物に化学ドーピングを施した材料もあり、ポリスチレンスルホン酸(以下、PSSと示す)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDOTと示す)や、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール(以下、PVKと示す)などを用いることもできる。
また、正孔輸送層112を形成する場合に用いる正孔輸送性材料としては、芳香族アミン系(すなわち、ベンゼン環−窒素の結合を有するもの)の化合物が好適である。広く用いられている材料として、例えば、TPDの他、その誘導体である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、α−NPDと示す)や、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(以下、TDATAと示す)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(以下、MTDATAと示す)などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。
さらに、電子輸送性発光層113を形成する材料としては、先に一般式[式1]で示した元素周期律第4族金属錯体であって、具体的に化学式[式2]〜[式12]で表される元素周期律第4族金属錯体を用いる。なお、中心金属が、Zr、Hfであることが好ましい。
本実施の形態1においては、電子輸送性発光層113に成膜性、キャリア輸送性に優れ、且つ固体状態で発光を示す元素周期律第4族金属錯体を用いることを特徴とし、単体から得られる発光を発光色とする発光素子である。
(実施の形態2)
本実施の形態2では、電界発光層に含まれる発光層が、ホスト材料となる元素周期律第4族金属錯体と、ゲスト材料とから形成される場合における電界発光素子について図2を用いて説明する。なお、本実施の形態2で示す構造は、実施の形態1に示す構造と類似しているが、電子輸送性発光層213が、元素周期律第4族金属錯体からなる部分と、ゲスト材料の共蒸着により形成されたドーピング層214を有する点で異なる。
なお、基板、第1の電極、第2の電極については、実施の形態1と同様の材料を用いて、同様にして形成することができるため、同じ符号を用いることとし、説明を省略する。また、電界発光層202についても、電子輸送性発光層213の構成が異なる以外は実施の形態1と同様であるので、図1と同様の符号を用いることとし、説明は省略する。
電子輸送性発光層213は、正孔輸送層112と接する側の一部にドーピング層214が形成されている。
ここで、電子輸送性発光層213は、先に一般式[式1]で示した元素周期律第4族金属錯体であって、具体的に化学式[式2]〜[式12]で表される元素周期律第4族金属錯体により形成され、ドーピング層214は、元素周期律第4族金属錯体とゲスト材料を共蒸着することにより形成される。なお、中心金属が、Zr、Hfであることが好ましい。
また、ゲスト材料としては公知の材料を用いることができ、具体的には、DCM1、DCM2、DCJT、キナクリドン、ジエチルキナクリドン(DEQ)、ルブレン、ペリレン、DPT、Co−6、PMDFB、BTX、ABTX等を用いることができる。
本実施の形態2においては、電子輸送性発光層213において、元素周期律第4族金属錯体をホスト材料として用いることを特徴とし、ホスト材料からゲスト材料にエネルギー移動させることにより、ゲスト材料から得られる発光を発光色とする発光素子である。
なお、本実施の形態2において、ホスト材料である元素周期律第4族金属錯体は、従来のホスト材料(Alq等)に比べて発光波長が長波長側にあることから、特に赤色発光のゲスト材料(例えば、DCM1、DCM2、DCJT)と組み合わせて用いた場合に効率よく発光を得ることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3では、電界発光層に含まれる発光層が、ホスト材料となる元素周期律第4族金属錯体と、ゲスト材料とから形成される場合における電界発光素子について図3を用いて説明する。なお、本実施の形態3で示す構造は、発光層313がホスト材料とゲスト材料との共蒸着により形成されること、また、発光層313と第2の電極103との間に電子輸送層314を有することを特徴とする。
なお、基板、第1の電極、第2の電極については、実施の形態1と同様の材料を用いて、同様にして形成することができるため、同じ符号を用いることとし、説明を省略する。また、電界発光層302については、発光層313および電子輸送層314の構成が異なる以外は実施の形態1と同様であるので、図1と同様の符号を用いることとし、説明は省略する。
ここで、発光層313は、先に一般式[式1]で示した元素周期律第4族金属錯体であって、具体的に化学式[式2]〜[式12]で表される元素周期律第4族金属錯体とゲスト材料を共蒸着することにより形成される。なお、中心金属が、Zr、Hfであることが好ましい。
また、ゲスト材料としては公知の材料を用いることができ、具体的には、DCM1、DCM2、DCJT、キナクリドン、ジエチルキナクリドン(DEQ)、ルブレン、ペリレン、DPT、Co−6、PMDFB、BTX、ABTX等を用いることができる。
また、電子輸送層314を形成する場合の電子輸送性材料としては、先に述べたAlq、Almq、BeBqなどのキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体や、混合配位子錯体であるBAlqなどが好適である。また、Zn(BOX)、Zn(BTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体もある。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(以下、PBDと示す)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(以下、OXD−7と示す)などのオキサジアゾール誘導体、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(以下、TAZと示す)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(以下、p−EtTAZと示す)などのトリアゾール誘導体、バソフェナントロリン(以下、BPhenと示す)、バソキュプロイン(以下、BCPと示す)などのフェナントロリン誘導体を用いることができる。
本実施の形態3においては、発光層313において、元素周期律第4族金属錯体をホスト材料として用いることを特徴とし、ホスト材料からゲスト材料にエネルギー移動させることにより、ゲスト材料から得られる発光を発光色とする発光素子である。また、電子輸送層314を発光層313と第2の電極103との間に挟む構造を有することから、発光層313への電子の輸送性を高めるだけでなく、発光層で生じた光が第2の電極近傍で消光するのを防ぐことができる。
なお、本実施の形態3において、ホスト材料である元素周期律第4族金属錯体は、従来のホスト材料(Alq等)に比べて発光波長が長波長側にあることから、特に赤色発光のゲスト材料(例えば、DCM1、DCM2、DCJT)と組み合わせて用いた場合に効率よく発光を得ることができる。また、赤色発光は発光波長が長波長側にあり、消光しやすいので本実施の形態3の示す素子構成に適している。
【実施例1】
以下に、本発明で用いる元素周期律第4族金属錯体の合成例、および実施例について説明するが、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。
(合成例1)
合成例1では、元素周期律第4族金属錯体のうち中心金属がZrであるZr錯体、テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)を合成する方法について説明する。
化学式[式13]に示す8−ハイドロキシキノリン2.90g(20mmol)を100mlのメタノールに溶解させた溶液と、塩化ジルコニウム(IV)1.17g(5mmol)を10mlのメタノールに溶解させた溶液とを混合し(なお、このときのモル比は4:1である)、1〜2時間程度還流させることにより黄色析出物を得た。ここで黄色析出物(pH1)にモルフォリン1.74g(20mmol)を60mlのメタノールに溶解させて得られたアルカリ性のモルフォリン溶液を塩化ジルコニウム(IV)に対して4等量加え、pH7とすることによりさらに黄色析出物を得た。その後再び4時間程度還流して、反応を終了させた。そして、黄色析出物を減圧濾過し、真空オーブンで乾燥させた。なおこのときの粗収率は94%であった。200〜300℃の温度勾配にて昇華精製を行い、黄色粉末であるテトラキス(8−ハイドロキシ−キノリノラト)ジルコニウム(IV)(Zrq)(化学式[式2])を得た。テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)のメタノール溶液に励起波長(375nm)を照射したところ、最大ピークを525〜530nmに有するPLスペクトルが得られた(図11A)。元素分析を行ったところ、テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)の質量に対するC、H、N、Zrの割合はCが64.2%、Hが3.8%、Nが8.2%、Zrが13.2%であった。HOMO準位は、−5.52、LUMO準位は、−2.87であった。また、融点はなく、分解温度は340℃であった。

なお、化学式[式13]に示す8−ハイドロキシキノリンの代わりに化学式[式14]に示す2−メチル−8−ハイドロキシキノリンを用いる場合には、化学式[式3]に示すテトラキス(2−メチル−8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)(Zrmq)を形成することができる。合成例1のように(2−メチル−8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)を形成したとき、昇華精製前の粗収率は72%だった。テトラキス(2−メチル−8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)のメタノール溶液に励起波長(365nm)を照射したとき、最大ピークを510〜515nmに有するPLスペクトルが得られた(図11B)。また、元素分析を行ったところテトラキス(2−メチル−8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)の質量に対するC、H、N、Zrの割合はCが65.5%、Hが4.7%、Nが7.6%、Zrが12.9%であった。なお、分解温度は280℃であった。

(合成例2)
合成例2では、元素周期律第4族金属錯体のうち中心金属がHfであるHf錯体、テトラキス(8−キノリノラト)ハフニウム(IV)を合成する方法について説明する
合成例1で示したそれぞれの場合において塩化ジルコニウムの代わりに塩化ハフニウムを用いることで、テトラキス(8−キノリノラト)ハフニウム(Hfq)やテトラキス(2−メチル−8−キノリノラト)ハフニウム(Hfmq)を形成することができる。
合成例1のようにテトラキス(8−キノリノラト)ハフニウムやテトラキス(2−メチル−8−キノリノラト)ハフニウムを形成したとき、昇華精製前の粗収率はそれぞれ92%、69%だった。
テトラキス(8−キノリノラト)ハフニウムのメタノール溶液と、テトラキス(2−メチル−8−キノリノラト)ハフニウムのメタノール溶液のそれぞれに励起波長(380nm)、(365nm)を照射したとき、それぞれ最大ピークを516〜521nm、513〜518nmに有するPLスペクトルが得られた(図12A、図12B)。
また、元素分析を行ったところテトラキス(8−キノリノラト)ハフニウムの質量に対するC、H、N、Hfの割合はCが56.7%、Hが3.2%、Nが7.2%、Hfが22.9%、テトラキス(2−メチル−8−キノリノラト)ハフニウムの場合はCが58.4%、Hが4.0%、Nが6.5%、Hfが21.7%であった。なお、テトラキス(8−キノリノラト)ハフニウム、テトラキス(2−メチル−8−キノリノラト)ハフニウムの分解温度はそれぞれ340℃、280℃であった。
【実施例2】
本実施例では、元素周期律第4族金属錯体を発光層に用いて電界発光素子を作製する場合であって、特にZrを中心金属とするZr錯体を用いる場合について説明する。なお、本実施例では、本実施の形態1に示した構造を有する電界発光素子について図4を用いて説明する。
まず、基板400上に電界発光素子の第1の電極401が形成される。なお、本実施例では、第1の電極401は陽極として機能する。材料として透明導電膜であるITOを用い、スパッタリング法により110nmの膜厚で形成する。
次に、第1の電極(陽極)401上に電界発光層402が形成される。なお、本実施例では、電界発光層402が正孔注入層411、正孔輸送層412、電子輸送性発光層413からなる積層構造を有し、電子輸送性発光層413に化学式[式2]に示すZr錯体を用いる。
はじめに、第1の電極401が形成された基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極401が形成された面を下方にして固定し、真空蒸着装置の内部に備えられた蒸発源に銅フタロシアニン(以下、Cu−Pcと示す)を入れ、抵抗加熱法を用いた蒸着法により20nmの膜厚で正孔注入層411を形成する。
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層412を形成する。ここでは4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、α−NPDと示す)を同様の方法により、30nmの膜厚で形成する。
次に電子輸送性発光層413が形成される。なお、本実施例では、化学式[式2]に示すZr錯体(テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV))を用いて蒸着法により50nmの膜厚で形成する。
次に、陰極として機能する第2の電極403を形成する。なお、本実施例では、電界発光層402上にフッ化カルシウム(CaF)414(2nm)を蒸着法により形成した後、アルミニウム(Al)415(100nm)をスパッタリング法により形成して積層することにより第2の電極403を形成する。
以上により、Zr錯体を電子輸送性発光層413に用いた電界発光素子が形成される。なお、本実施例2に示す構造は、電界発光層402が、正孔注入層411、正孔輸送層412、電子輸送性発光層413とを有するシングルヘテロ構造である。また、Zr錯体は、成膜性、キャリア輸送性に優れ、且つ固体状態で発光を示すことから、安定であり、かつ発光効率の高い素子が形成される。
なお、本実施例では、基板上に形成される第1の電極401が陽極材料で形成され、陽極として機能する場合について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、第1の電極401を陰極材料で形成し、陰極として機能させることもできる。ただし、この場合(陽極と陰極とを入れ替えた場合)には、電界発光層の積層順が本実施例で示した場合と逆になる。さらに、本実施例では、第1の電極(陽極)401は透明電極であり、第1の電極(陽極)401側から電界発光層413で生じた光を出射させる構成としているが、本発明はこれに限定されることはなく、透過率を確保するために適した材料を選択することにより第2の電極(陰極)403側から光を出射させる構成とすることもできる。
【実施例3】
本実施例では、元素周期律第4族金属錯体を発光層に用いて電界発光素子を作製する場合であって、特にZrを中心金属とするZr錯体(テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)(一般式[式2]に示す))を用いる場合について説明する。なお、本実施例では、本実施の形態2で説明したように、電子輸送性発光層に含まれるドーピング層が、ホスト材料となるZr錯体とゲスト材料とを共蒸着して形成されている電界発光素子について図5を用いて説明する。
なお、本実施例3で示す構造は、実施例2に示す構造と類似しているが、電子輸送性発光層513が、元素周期律第4族金属錯体からなる部分515(30nm)と、ゲスト材料との共蒸着により形成されたドーピング層514を有する点で異なっている。
すなわち、基板500上に形成される第1の電極501、正孔注入層511、正孔輸送層512、および第2の電極503は、図5に示すように実施例2の電極403と同様の材料で同じ膜厚で形成される。
また、電子輸送性発光層513には、一部ドーピング層514が形成されている。ドーピング層514は、電子輸送性発光層513のうちで正孔輸送層512と接する側に形成され、本実施例ではZr錯体(テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV))と赤色発光を呈するゲスト材料であるDCM2とを共蒸着することにより、20nmの膜厚で形成する。
その後、テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)のみ蒸着法により、30nmの膜厚で形成する。このような構造とすることにより、ドーピング層514で生じた発光が第2の電極503近傍で消光するのを防ぐことができる。
なお、本実施例3に示す構造は、実施例2に示したシングルヘテロ構造の発光層に、ゲスト材料が部分的にドープされた構造を有している。
【実施例4】
本実施例では、元素周期律第4族金属錯体を発光層に用いて電界発光素子を作製する場合であって、特にZrを中心金属とするZr錯体(テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)(一般式[式2]に示す))を用いる場合について説明する。なお、本実施例では、本実施の形態3で説明したように、発光層が、ホスト材料となるZr錯体とゲスト材料とを共蒸着して形成され、発光層と第2の電極との間に電子輸送層が形成されている電界発光素子について図6を用いて説明する。
なお、本実施例4で示す構造は、実施例2に示す構造と類似しているが、発光層613の構成が異なり、また、電子輸送層614を有する点で異なっている。
すなわち、基板600上に形成される第1の電極601、正孔注入層611、正孔輸送層612、および第2の電極603は、図4に示すように実施例2の第2の電極403と同様の材料で同じ膜厚で形成される。
本実施例における発光層613は、ホスト材料となるZr錯体(テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV))と赤色発光を呈するゲスト材料であるDCM2とを共蒸着することにより、20nmの膜厚で形成する。
また、電子輸送層614は、BCPを蒸着法により20nmの膜厚で形成する。
以上により、本実施例における電界発光層602が形成される。なお、本実施例に示す電界発光素子の構造は、実施例2や実施例3で示した構造と異なり、発光層613とは別に正孔輸送層612および電子輸送層614が形成され、機能分離された構造(いわゆる、ダブルヘテロ構造)を有しており、発光効率を高める上で好ましい構造である。
【実施例5】
本実施例では、元素周期律第4族金属錯体を発光層に用いて電界発光素子を作製する場合であって、特にZrを中心金属とするZr錯体(テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)(一般式[式2]に示す))を用いる場合について説明する。なお、本実施例では、発光層が、白色を示し、複数の層を積層して形成されており、その一部にZr錯体がホスト材料、またはゲスト材料として用いられている電界発光素子について図7を用いて説明する。
なお、本実施例5で示す構造は、実施例4に示す構造と類似しており、発光層713が第1の層714、第2の層715、第3の層716からなる積層構造を有する点で異なっている。
基板700上に形成される第1の電極701、正孔注入層711、正孔輸送層712、および第2の電極703は実施例2の第2電極403と同じ材料を用いて同様に形成される。
本実施例における発光層713に含まれる第1の層714は、α−NPDとペリレンを共蒸着させることにより10nmの膜厚で形成される。なお、このとき、ペリレンの含有率は、1wt%である。また、第1の層714は、ゲスト材料となるペリレンにより青色発光を示す。
次に積層される第2の層715は、BAlqとZr錯体(テトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV))(Zrqと示す)を共蒸着させることにより10nmの膜厚で形成される。なお、このときZrqの含有率は、5wt%である。また、第2の層715は、ゲスト材料となるZrqにより緑色発光を示す。
次に積層される第3の層716は、ZrqとDCM2を共蒸着させることにより10nmの膜厚で形成される。なお、このときDCM2の含有率は、1wt%である。また、第3の層716は、ゲスト材料となるDCM2により赤色発光を示す。
また、電子輸送層717は、Zrqを蒸着法により30nmの膜厚で形成する。
以上により、本実施例における電界発光層702が形成される。なお、本実施例に示す電界発光素子の構造は、発光層713がそれぞれ青色発光を示す第1の層714、緑色発光を示す第2の層715、および赤色発光を示す第3の層716の積層により形成されるため、発光層713全体で白色発光を得られる電界発光素子となる。また、本実施例における素子構成では、第2の層715および第3の層716に共通してZrqを用いることができるので、素子作製が容易となるという特徴を有している。
なお、本実施例における白色発光の電界発光素子は、カラーフィルターと組み合わせて用いることにより容易にフルカラー化を実現させることが可能である。
【実施例6】
本実施例では、本実施の形態2や3に示すようにホスト材料として用いるZr錯体と、これまでホスト材料として用いられているAlqについてその発光特性を測定した結果を示す。
図8Aは、Zr錯体であるテトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)(Zrqと示す)と、Al錯体であるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alqと示す)をそれぞれ蒸着法により成膜した膜に各励起波長(395nm、347nm)の光を照射して得られた発光スペクトル(PLスペクトル)を示したものである。
これにより、AlqよりもZrqのPLスペクトルが長波長側にあることが分かる。従って、長波長に発光波長を有するゲスト材料(赤色発光を示すDCM1、DCM2等)と組み合わせる場合に、ホスト材料とゲスト材料との間のエネルギーギャップが緩和されるので、より効率よく発光が得られることが分かる。
図8Bは、Zr錯体であるテトラキス(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)(Zrqと示す)と、Al錯体であるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alqと示す)をそれぞれ用いて電界発光素子を形成した場合における電界発光スペクトル(ELスペクトル)を示したものである。
なお、図8Bに示す電界発光素子の素子構成は、Alqを電界発光層の一部に用いた素子を素子1とし、ITO(陽極)/Cu−Pc/α−NPD/Alq/CaF/Al(陰極)の順に順次積層形成されている。また、Zrqを電界発光層の一部に用いた素子を素子2とし、ITO(陽極)/Cu−Pc/α−NPD/Zrq/CaF/Al(陰極)の順に順次積層形成されている。
図8Aで示した単膜のPLスペクトルに比べると、Zrq、Alqのいずれも短波長側にシフトしているものの、Alqを用いた電界発光素子よりもZrqを用いた電界発光素子のELスペクトルが長波長側にあることが分かる。従って、長波長に発光波長を有するゲスト材料(赤色発光を示すDCM1、DCM2等)と組み合わせて電界発光素子を形成する場合に適することが分かる。
【実施例7】
本実施例7では、画素部に本発明の電界発光素子を有する発光装置について図9A、9Bを用いて説明する。なお、図9Aは、発光装置を示す上面図、図9Bは図9AをA−A’で切断した断面図である。点線で示された901は駆動回路部(ソース側駆動回路)、902は画素部、903は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、904は封止基板、905はシール剤であり、シール剤905で囲まれた内側907は、空間になっている。
なお、908はソース側駆動回路901及びゲート側駆動回路903に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)909からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
次に、断面構造について図9Bを用いて説明する。基板910上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路901と、画素部902が示されている。
なお、ソース側駆動回路901はnチャネル型TFT923とpチャネル型TFT924とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に形成することもできる。
また、画素部902はスイッチング用TFT911と、電流制御用TFT912とそのドレインに電気的に接続された第1の電極913とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極913の端部を覆って絶縁物914が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
また、カバレッジを良好なものとするため、絶縁物914の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物914の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物914の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物914として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
第1の電極913上には、電界発光層916、および第2の電極917がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極913に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)膜、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
また、電界発光層916は、蒸着マスクを用いた蒸着法、またはインクジェット法によって形成される。電界発光層916には、元素周期律第4族金属錯体をその一部に用いることとし、その他、組み合わせて用いることのできる材料としては、低分子系材料であっても高分子系材料であっても良い。また、電界発光層に用いる材料としては、通常、有機化合物を単層もしくは積層で用いる場合が多いが、本発明においては、有機化合物からなる膜の一部に無機化合物を用いる構成も含めることとする。さらに、公知の三重項材料を用いることも可能である。
さらに、電界発光層916上に形成される第2の電極(陰極)917に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF、またはCaN)を用いればよい。なお、電界発光層916で生じた光が第2の電極917を透過させる場合には、第2の電極(陰極)917として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
さらにシール剤905で封止基板904を素子基板910と貼り合わせることにより、素子基板910、封止基板904、およびシール剤905で囲まれた空間907に電界発光素子918が備えられた構造になっている。なお、空間907には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール剤905で充填される構成も含むものとする。
なお、シール剤905にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板904に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
以上のようにして、本発明の電界発光素子を有する発光装置を得ることができる。
なお、本実施例に示す発光装置は、実施例2〜実施例5に示した電界発光素子の構成を自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例8】
本実施例8では、本発明の電界発光素子を有する発光装置を用いて完成させた様々な電子装置について説明する。
本発明の電界発光素子を有する発光装置を用いて作製された電子装置として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子装置の具体例を図10A−10Gに示す。
図10Aは表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2003に用いることにより作製される。なお、表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。
図10Bはノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2203に用いることにより作製される。
図10Cはモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2302に用いることにより作製される。
図10Dは記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示するが、本発明の電界発光素子を有する発光装置をこれら表示部A、B2403、2404に用いることにより作製される。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
図10Eはゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2502に用いることにより作製される。
図10Fはビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2602に用いることにより作製される。
ここで図10Gは携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2703に用いることにより作製される。なお、表示部2703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
以上の様に、本発明の電界発光素子を有する発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子装置に適用することが可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極、および電界発光層を少なくとも有する電界発光素子において、前記電界発光層は一般式[式1]で表される元素周期律第4族金属錯体を含むことを特微とする電界発光素子。

(式中、Mは、元素周期律第4族元素を示し、R1〜R6は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、シアノ基、アルキル基(ただし、炭素数1〜10)、ハロアルキル基(ただし、炭素数1〜10)、アルコキシル基(ただし、炭素数1〜10)、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
【請求項2】
陽極、陰極、および電界発光層を少なくとも有する電界発光素子において、前記電界発光層は一般式[式1]で表される元素周期律第4族金属錯体を含む発光層を有することを特徴とする電界発光素子。

(式中、Mは、元素周期律第4族元素を示し、R1〜R6は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、シアノ基、アルキル基(ただし、炭素数1〜10)、ハロアルキル基(ただし、炭素数1〜10)、アルコキシル基(ただし、炭素数1〜10)、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
【請求項3】
陽極、陰極、および電界発光層を少なくとも有する電界発光素子において、前記電界発光層は一般式[式1]で表される元素周期律第4族金属錯体およびゲスト材料を含む発光層を有することを特微とする電界発光素子。

(式中、Mは、元素周期律第4族元素を示し、R1〜R6は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、シアノ基、アルキル基(ただし、炭素数1〜10)、ハロアルキル基(ただし、炭素数1〜10)、アルコキシル基(ただし、炭素数1〜10)、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
【請求項4】
請求項3において、
前記ゲスト材料は、発光波長の極大値が580〜680nmの範囲にあることを特徴とする電界発光素子。
【請求項5】
請求項3において、 前記ゲスト材料は、赤色発光を示す材料であることを特徴とする電界発光素子。
【請求項6】
陽極、陰極、および電界発光層を少なくとも有する電界発光素子において、前記電界発光層は一般式[式1]で表される元素周期律第4族金属錯体を含み、かつ白色発光を示すことを特徴とする電界発光素子。

(式中、Mは、元素周期律第4族元素を示し、R1〜R6は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、シアノ基、アルキル基(ただし、炭素数1〜10)、ハロアルキル基(ただし、炭素数1〜10)、アルコキシル基(ただし、炭素数1〜10)、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
【請求項7】
請求項1、2、3、6のいずれか一において、前記電界発光素子を有することを特徴とする発光装置。

【国際公開番号】WO2004/046275
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553158(P2004−553158)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014381
【国際出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】