説明

電着塗料用顔料分散ペースト及び電着塗料組成物

【課題】電着塗料組成物の顔料分散ペーストの貯蔵安定性を向上させ、電着塗装設備の省エネルギー化や省設備化にも対応できる電着塗料組成物の提供。
【解決手段】(i)顔料分散用樹脂、(ii)顔料成分、(iii)セルロース(A)、(iv)ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び/又は化合物(C)、及び(v)水を含有し、顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、特定のヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)0.1〜5質量部及び/又は下記式(2)で表される化合物(C)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JISーK5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする電着塗料用顔料分散ペースト。


(式(2)中、nは12〜15の整数を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性に優れた電着塗料用顔料分散ペーストならびに塗装設備の省エネルギー化及び省設備化が可能となる電着塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗料組成物は、塗装作業性に優れ防錆性が良好なことから、自動車ボディなどの金属製品の下塗り塗料組成物として広く使用されている。この電着塗料組成物に用いられる顔料分散ペーストは、通常、製造後にタンクに貯蔵され又はドラム缶に入れて倉庫に保管されるが、定期的に攪拌しないと顔料が沈降して使用に支障をきたすことがある。
【0003】
特に、海外の塗装設備に輸送するときには、ドラム缶に入れられた顔料分散ペーストは、長期間に亘って無攪拌状態にさらされることになるので、顔料分散ペーストの貯蔵安定性の向上は急務となっている。
【0004】
一方、電着塗料組成物は、顔料の沈降を防止するために、通常、休憩時間や夜間や休日でも、ポンプによって塗料の循環や攪拌を行なっているが、そのための設備の設置や維持などに莫大なコストがかかり、そのため塗装設備の省エネルギー化や省設備化に対応できる電着塗料組成物が求められている。
【0005】
従来、静置保管時に顔料沈降がほとんどない電着塗料で、顔料としてカーボンブラックを用い、さらに硬化触媒として液状の錫触媒を用いる発明がある(特許文献1)。
【0006】
また、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物およびそれらの1種または2種以上の混合物からなる群から選択される顔料沈降防止剤、および顔料を含有し、沈降安定性に優れる電着塗料組成物が開示されている(特許文献2)。他に、セルロース複合体を含有する電着塗料用顔料分散ペースト及び該電着塗料が開示されている(特許文献3、4)。
しかし、これらの発明は、顔料分散ペーストの貯蔵安定性においては、厳しい条件下に長期間置かれると顔料分散ペーストが沈降や凝集が発生したり、一方、該顔料分散ペーストを使用した電着塗料においては、攪拌や循環を休日や夜間に停止しても沈降した塗料の再分散性が十分ではなく、塗膜の仕上り性を損うことがあった。このようなことから塗料の攪拌や循環を休日や夜間に停止しても再分散性が良好な電着塗料組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−123942号公報
【特許文献2】特開2005−247892号公報
【特許文献3】特開2006−111699号公報
【特許文献4】特開2008−38056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れた電着塗料用の顔料分散ペーストを提供することである。また、本発明の目的は、塗料の攪拌や循環を休憩時間や休日や夜間に停止しても再分散性や塗料安定性に優れ、かつ幅広い塗色において適用可能な電着塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、顔料分散樹脂、顔料成分、セルロース(A)、ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び/又は化合物(C)及び水を含む電着塗料用顔料分散ペースト、さらに、該電着塗料用顔料分散ペーストを配合した電着塗料組成物によって、上記の目的を達成することできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、以下の顔料分散ペーストならびに電着塗料組成物を提供するものである。
項1. (i)顔料分散用樹脂、(ii)顔料成分、(iii)セルロース(A)、(iv)ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び/又は化合物(C)、及び(v)水を含有する顔料分散ペーストであって、
顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)0.1〜5質量部及び/又は下記式(2)で表される化合物(C)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする電着塗料用顔料分散ペースト。
【0011】
【化1】

【0012】
(式(1)中、Rは炭素数6〜32の炭化水素基を示し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を示す)
【0013】
【化2】

【0014】
(式(2)中、nは12〜15の整数を示す)
項2. 顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【0015】
項3. 顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、下記式(2)で表される化合物(C)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【0016】
項4. 顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)0.1〜5質量部及び下記式(2)で表される化合物(C)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【0017】
項5. セルロース(A)が、平均粒子径が0.01〜6μmの微細セルロース分散体である項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【0018】
項6. セルロース(A)が、微細セルロース分散体と水溶性ガム類及び/又は親水性物質からなるセルロース複合分散体(a)である項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【0019】
項7. 電着塗料用顔料分散ペーストを40℃で4週間貯蔵した後の、該顔料分散ペーストの固形分濃度40質量%における、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲である、項1〜6のいずれか1項に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【0020】
項8. 電着塗料用顔料分散ペーストの貯蔵前のTI値に対する40℃で4週間貯蔵後のTI値の増加量が0.5以下であり、かつ、貯蔵前と40℃で4週間貯蔵後のTI値がいずれも1.8〜4.0の範囲である項1〜7のいずれか1項に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【0021】
項9. 固形分含量が40〜60質量%である、項1〜8のいずれか1項に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【0022】
項10. 電着塗料用顔料分散ペースト中に存在する粒子の平均粒子径が1〜3,000nmである項1〜9のいずれか1項に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【0023】
項11. 基体樹脂、硬化剤及び基体樹脂と硬化剤の固形分合計100質量部あたり、項1〜10のいずれか1項に記載の電着塗料用顔料分散ペーストを固形分で0.1〜50質量部含有する電着塗料組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電着塗料用顔料分散ペーストは、貯蔵安定性に優れているため、貯蔵時の攪拌にかかる手間や費用を省くことができ、例えタンクやドラムに無攪拌状態で貯蔵しても、顔料の再分散性に優れているため仕上り性に優れた塗装物品を与えることができる。
【0025】
本発明の電着塗料組成物は、塗装ラインにおいて、塗料組成物の攪拌や循環を休日や夜間に長時間停止して再び稼動した時の塗料組成物の再分散性に優れているので、攪拌に用いるポンプの一時停止や台数を減らすなどの省エネルギー稼動及び省設備化が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の電着塗料用顔料分散ペースト及び電着塗料組成物について、詳細に説明する。
【0027】
[顔料分散ペースト及び電着塗料組成物]
本発明は、(i)顔料分散用樹脂、(ii)顔料成分、(iii)セルロース(A)、(iv)ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び/又は化合物(C)、及び(v)水を含有する顔料分散ペーストであって、
顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)0.1〜5質量部及び/又は下記式(2)で表される化合物(C)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする電着塗料用顔料分散ペーストである。
さらに、該電着塗料用顔料分散ペーストを含有した電着塗料組成物は、発明の効果に挙げた性能を発揮する。以下、詳細に説明する。
【0028】
(i)顔料分散用樹脂:
顔料分散用樹脂は、3級アミン型エポキシ樹脂、4級塩型エポキシ樹脂、4級塩型アクリル樹脂が挙げられる。具体的には、第4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム基含有エポキシ樹脂、3級アミノ基含有エポキシ樹脂等が好適に用いられる。
【0029】
(ii)顔料成分:
顔料成分は、特に制限なく使用でき、着色顔料としては、カーボンブラック、ペリレンブラック、酸化チタン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、オーカ等が挙げられる。部品用などの塗色が黒である場合には、カーボンブラック、ペリレンブラックが好ましい。体質顔料としては、クレー、マイカ、タルク、バリタ、シリカなどが挙げられる。防錆顔料としては、リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウムなどが挙げられる。その他に、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、ハイドロタルサイト、亜鉛化合物が挙げられる。上記顔料成分の配合量は、顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、0.1〜1,000質量部、好ましくは10〜800質量部、さらに好ましくは50〜600質量部である。
【0030】
(iii)セルロース(A):
本発明に用いるセルロース(A)は、木材パルプ、精製リンター等の素材から得られるセルロースを、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解、スチームエクスプロージョン分解等により解重合処理して、平均重合度が30〜375のセルロースとする。次いで磨砕、例えば機械的なシェアをかけ湿式磨砕することにより得られる、平均粒子径0.01〜6μmの微細セルロース分散体を用いることができる。
【0031】
上記湿式磨砕は、媒体ミル類、例えば、湿式振動ミル、湿式遊星振動ミル、湿式ボールミル、湿式ロールミル、湿式ボールミル、湿式ビーズミル、湿式ペイントシェーカー等の他、高圧ホモジナイザー等の機械を用いて行うことができる。高圧ホモジナイザーとしては、約500Kg/cm以上の高圧で、スラリーを微細オリフィスに導き高流速で対面衝突させるタイプのものが効果的である。
【0032】
これらのミルにおける最適磨砕濃度は、機種により異なるが、一般には、媒体ミルで5〜15%、高圧ホモジナイザーで5〜20%の範囲内の固形分濃度が適している。セルロースの磨砕を効率よく行うためには媒体ミルが適している。上記の磨砕によって、平均粒子径(注1)が0.01〜6μm、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.2〜1μm以下の微細セルロースを得ることができる。
【0033】
(注1)本明細書において平均粒子径は、動的光散乱法・レーザードップラー法(UPA法))を用いて測定した値を意味する。具体的には、「平均粒子径」は、UPA−EX250(日機装株式会社製、商品名、粒度分布測定装置)を用いて測定することができる。
【0034】
また、セルロース(A)として、上記微細セルロース分散体に、水溶性ガム類及び/又は親水性物質と混合したセルロース複合分散体(a)も使用することができる。これにより、乾燥時に微細化したセルロース粒子同士が再凝集するのを防ぐことができ、電着塗料用顔料分散ペーストの安定性向上をさらに図ることができる。
【0035】
セルロース複合分散体(a)には、例えば、微細セルロースと水溶性ガム類と親水性物質からなるセルロース複合体(a1);微細セルロースと水溶性ガム類からなるセルロース複合体(a2);及び微細セルロースと親水性物質からなるセルロース複合体(a3);が挙げられる。
【0036】
上記セルロース複合分散体(a)の製造方法は、セルロースを磨砕することにより得られる微細セルロース分散体に、水溶性ガム類及び/又は親水性物質を加えて分散させ均質なスラリーとし、次いでこれを乾燥することによって得ることができる。
【0037】
上記水溶性ガム類としては、水膨潤性が高く、セルロースとの水中における相溶性が良好な水溶性のガム類が好ましく、例えば、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、クインスシードガム、カラヤガム、アラビアガム、トラガントガム、ガッティーガム、アラビノガラクタン、寒天、カラギーナン、アルギン酸及びその塩、ファーセレラン、ペクチン、マルメロ、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、ゼラチン、繊維素グリコール酸ナトリウム等のセルロース誘導体等を用いることができる。このうち、繊維素グリコール酸ナトリウムは、膨潤性と親水性を兼ね備えているため、親水性物質と併用することなくガム単独での使用も可能である。
【0038】
一方、親水性物質としては、例えば、水、澱粉加水分解物、デキストリン類、ブドウ糖、果糖、キシロース、庶糖、乳糖、麦芽糖、異性化糖、カップリングシュガー、パラチノース、ネオシュガー、マンニトール、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等の単糖類、オリゴ糖類を含む水溶性糖類、キシリトール、マルチトール、マンニット、ソルビット等の糖アルコール類、ソルボース等が挙げられる。親水性物質は、微細セルロースの水中への分散を促進し、水溶性ガム類と組み合わせることにより分散容易性又は分散安定性に顕著な効果を奏する。
【0039】
このようなセルロース複合分散体(a)における微細セルロース分散体の割合は、セルロース複合分散体(a)の固形分を基準にして、一般に0.1〜99質量%、好ましくは1〜95質量%、さらに好ましくは10〜85質量%の範囲内にあることが、塗料組成物安定性の面から好適である。また、水溶性ガム類と親水性物質とを併用する場合の両者の比率は、水溶性ガム類/親水性物質の質量比で通常95/5〜5/95、好ましくは80/20〜20/80の範囲内とすることができる。
【0040】
なおセルロース複合分散体(a)は、微細化セルロース分散体を水溶性ガム類及び/又は親水性物質と混合し分散した後、乾燥することにより製造することができるが、その際、特に、水溶性ガム類は十分に溶解し均一混合することが重要である。溶解複合化を促進するために、加熱処理を行ってもよい。
【0041】
このようにして得られるセルロース(A)の乾燥は、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥等により行うこともできるが、フィルム状にて乾燥する方法が優れている。フィルム状にて乾燥する方法は、例えば、セルロースを磨砕することにより得られる微細化セルロース分散体のスラリー、又は該微細セルロース分散体に水溶性ガム類及び/又は親水性物質を加えて均一混合して得られるスラリーを、ガラス、ステンレス、アルミニウム、ニッケル・クロムメッキ鋼板等の基材上に塗布して乾燥する方法が挙げられる。
【0042】
基材は予め加熱されていてもよく、また、塗布後、赤外線、熱風、高周波等にて加熱してもよい。乾燥温度は200℃以下、そして塗布膜厚はスラリーの厚みとして10mm以下が好ましい。工業的には、スチールベルトドライヤー、ドラムドライヤー、ディスクドライヤー等の乾燥機を使用して乾燥粉体を得ることができる。かくして得られる乾燥粉体を電子顕微鏡で観察すると、表面に微粒子化したセルロース分散体が網目状に配列しており、微粒子セルロース分散体間には無数の空隙が見られる。
【0043】
以上のようなセルロース(A)の市販品としては、アビセルRC−N81、アビセルRC−N30、アビセルRC−591、アビセルCL−611、セオラスクリームFP−03(以上、旭化成ケミカルズ(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0044】
(iv-1)ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)
本発明の電着塗料用顔料分散ペーストには、必要に応じて、下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)を含有することができる。
【0045】
【化3】

【0046】
(式(1)中、Rは炭素数6〜32の炭化水素基を示し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を示す)
上記式(1)で表されるヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)、Rは炭素原子数6〜32、好ましくは10〜25、さらに好ましくは15〜19の炭化水素基を有し、かつ炭素原子数2〜6、好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3のROHで表されるヒドロキシアルキル基を有するイミダゾリン化合物である。
【0047】
式(1)においてRで表される炭化水素基としては、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、8−ヘプタデセン−1−イル基、8,11−ヘプタデカジエン−1−イン基などの炭素数6〜32、好ましくは10〜25、より好ましくは15〜19の直鎖又は分枝を有する炭化水素基(例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基)が挙げられる。
【0048】
詳しくは、ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)の製造には、トール油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、パーム油脂肪酸、落花生油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、綿花油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの脂肪酸を用いることができる。
【0049】
また、ヒドロキシアルキル基におけるRは炭素数2〜6のアルキレン基であり、例えば、エチレン残基、1,3−プロピレン残基、1,2−プロピレン残基、1,4−ブチレン残基、1,2−ブチレン残基、1,6−ヘキシレン残基などが挙げられる。ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)の中でも、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−2−イミダゾリンが、再分散性や塗料組成物安定性の面から好ましい。
【0050】
(iv-2)化合物(C)
本発明の電着塗料用顔料分散ペーストには、必要に応じて、下記式(2)で表される化合物(C)を含有することができる。なお化合物(C)は、ノニオン性界面活性剤として有用である。
【0051】
【化4】

【0052】
(式(2)中、nは12〜16の整数を示す)
本発明が目的とする電着塗料用顔料分散ペーストに有用な化合物(C)は、式(2)における−(CHCHO)−の繰り返し単位であるnの数は、12〜16の範囲、好ましくはn=13〜15、特に好ましくはn=14である。
【0053】
電着塗料組成物中へのセルロース(A)、ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び/又は化合物(C)の導入は、通常の電着塗料組成物における顔料配合と同様に行う。
【0054】
なお、セルロース(A)、ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び化合物(C)の配合量は、顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、セルロース(A)を0.1〜25質量部、好ましくは0.15〜10質量部、さらに好ましくは0.2〜5質量部である。
【0055】
必要に応じて添加するヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)は、0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部である。必要に応じて添加する化合物(C)は0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部が、電着塗料用顔料分散ペーストの再分散性と仕上り性の面から好ましい。
【0056】
本発明の電着塗料用顔料分散ペーストは、顔料分散用樹脂、顔料成分、セルロース(A)、ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び/又は化合物(C)を一定範囲配合することに加え、固形分濃度が40質量%の電着塗料用顔料分散ペーストにおけるTI値(注2)を1.8〜4.0の範囲、好ましくは2.0〜3.8、さらに好ましくは2.5〜3.5とすることが好適である。
【0057】
さらに、電着塗料用顔料分散ペーストを固形分濃度40質量%に調整し、40℃で4週間貯蔵後、該顔料分散ペーストのTI値が1.8〜4.0の範囲、好ましくは2.0〜3.8、さらに好ましくは2.0〜3.5の範囲であることが、夏場などの厳しい条件を想定して望ましい。
【0058】
(注2)本明細書において、「TI値(チクソトロピックインデックス)」とは、JIS K 5101−6−2(2004)、顔料試験方法 第2節 回転粘度計法に記載されるもので、B型粘度計(例えば「RE-80U型粘度計」東機産業社製)を用い、20℃、回転数6rpmおよび60rpmでの粘度(mPa・s)を測定して、「6rpmでの粘度測定値/60rpmでの粘度測定値」での粘度測定値の値を算出して求めることができる。なお、TI値は、顔料分散ペーストの調製直後から使用時までのいずれの時期に測定してもよく、その測定値が1.8〜4.0の範囲に入っていれば、本発明の顔料分散ペーストの要件を満足することになる。
ここで、電着塗料用顔料分散ペーストにおけるTI値が4.0を超えると顔料が凝集し易い。この為、該顔料分散ペーストを用いてなる電着塗料組成物においては、フィルターを閉塞させる場合がある。また、得られた電着塗膜は、ブツやムラが発生し仕上り性の低下を招くことがある。
【0059】
一方、電着塗料用顔料分散ペーストにおけるTI値が1.8未満であると、顔料が沈降し易く、また沈降した顔料は固いケーキ層を形成する為、再分散性が困難となり易い。この為、該顔料分散ペーストを用いてなる電着塗料組成物においては、フィルターを閉塞させることがある。また、得られた電着塗膜は、ブツやムラが発生し仕上り性の低下を招くことがある。
【0060】
このようなことから本発明の電着塗料用顔料分散ペーストを適用した電着塗料組成物を使用する塗装ラインは、休日や夜間に塗料組成物循環を長時間停止して、稼動時に再び電着塗料組成物を循環しても再分散性に優れる為、フィルターを閉塞させることがなく、得られた塗膜は仕上り性に優れるものとなる。
【0061】
本発明の電着塗料用顔料分散ペーストの調整は、顔料分散用樹脂、顔料成分、セルロース(A)、ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び/又は化合物(C)、水、必要に応じて、硬化触媒、中和剤等を加え、顔料分散して得ることができる。
【0062】
上記、硬化触媒は、塗膜の架橋反応を促進するために有効であり、例えば、ジオクチル錫オキサイト、ジブチル錫オキサイト、錫オクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジベンゾエートなどが挙げられる。中和剤としては、酢酸、蟻酸、乳酸などのカルボン酸が挙げられる。
【0063】
電着塗料用顔料分散ペースト中の固体粒子(顔料とセルロースを含む)の平均粒子径は、分散手段として、例えば、ボールミル、ペブルミル、サンドミル、遊星ボールミル、ホモジナイザーなどで、平均粒子径が1〜3,000nm、好ましくは1〜1,000nm、さらに好ましくは300〜700nmの固体粒子が得られるまで、0.5〜96時間、好ましくは1〜48時間、さらに好ましくは5〜24時間程度処理することにより、再分散性に優れた電着塗料用顔料分散ペーストとなる。
【0064】
得られた電着塗料用顔料分散ペーストは、コンテナやドラムに貯蔵して無攪拌で長期間保存しても再分散性に優れ、長期間に亘る貯蔵や長距離の輸送が容易になった。上記の電着塗料用顔料分散ペーストを、基体樹脂及び硬化剤などを分散したエマルションと混合して、電着塗料組成物を製造することができる。以下、電着塗料組成物について説明する。
【0065】
電着塗料組成物について:
ここで本発明の電着塗料用顔料分散ペーストを含有してなる電着塗料組成物は、アニオン型及びカチオン型いずれであってもよいが、耐食性の点からカチオン型が好ましく、また基体樹脂としては、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリブタジエン樹脂系、アルキド樹脂系、ポリエステル樹脂系のいずれの樹脂でも使用することができるが、なかでもアミン付加エポキシ樹脂が、防食性の面からも好ましい。
【0066】
上記基体樹脂であるが、基体樹脂の出発材料として用いられるエポキシ樹脂は、塗膜の防食性等の観点から、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂が好適である。
【0067】
基体樹脂は、分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などのカチオン化可能な基を有する樹脂であり、樹脂種としては、通常使用されているもの、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂にアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂が防食性、合金化溶融メッキ鋼板上の電着塗装適性の両立から好適である。
【0068】
上記のアミン付加エポキシ樹脂としては、例えば、(1)エポキシ樹脂と第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第4,017,438号 明細書参照);(3)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59−43013号公報参照)等を挙げることができる。
【0069】
これらの先行文献は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0070】
上記のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、その分子量は一般に少なくとも300、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも160、好ましくは180〜2,500、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。
【0071】
ここで、「数平均分子量」は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、分離カラムとして「TSK GEL4000HXL」、「TSK GEL3000HXL」、「TSK GEL2500HXL」、「TSK GEL2000HXL」(東ソー株式会社製)の4本を用いて、溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用いて40℃及び流速1.0ml/分において、RI屈折計で得られたクロマトグラムと標準ポリスチレンの検量線から求めた。
【0072】
該エポキシ樹脂の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
【0073】
また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式の樹脂が好適である。
【0074】
【化5】

【0075】
ここで、n=0〜8で示されるものが好適である。
【0076】
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0077】
該エポキシ樹脂は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物などと部分的に反応させたものであってもよく、さらにまた、ε−カプロラクトンなどのラクトン類、アクリルモノマーなどをグラフト重合させたものであってもよい。
【0078】
上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミンなどを挙げることができる。
【0079】
上記(2)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとしては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1、2級混合ポリアミンのうち、例えば、ジエチレントリアミンなどにケトン化合物を反応させて生成させたケチミン化物を挙げることができる。
【0080】
上記(3)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基とヒドロキシル基を有する化合物、例えば、モノエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミンなどにケトン化合物を反応させてなるヒドロキシル基含有ケチミン化物を挙げることができる。
【0081】
特に、基体樹脂として、エポキシ当量が180〜2,500、好ましくは250〜2,000のエポキシ樹脂に、フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を反応させて得られるキシレン樹脂変性アミン付加エポキシ樹脂であって、アミノ基含有化合物の使用割合が、エポキシ樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の合計固形分質量を基準にして5〜25質量%であるキシレン樹脂変性アミン付加エポキシ樹脂を用いることが、本発明の効果を得るにはよい。
【0082】
上記アミノ基含有エポキシ樹脂の製造のための出発材料として用いられるエポキシ樹脂としては、前記と同様のエポキシ樹脂を用いることができる。キシレンホルムアルデヒド樹脂は、エポキシ樹脂の内部可塑化(変性)に役立つものであり、例えばキシレン及びホルムアルデヒド類ならびにフェノール類を酸性触媒の存在下で縮合反応させることにより製造することができる。
【0083】
上記のホルムアルデヒド類としては、工業的に入手容易なホルマリン、パラホルムアルデヒドを例示することができる。さらに、ホルムアルデヒド類を直接添加するだけでなく、トリオキサン等のホルムアルデヒド類を発生する化合物等を上記樹脂の合成に用いることができる。
【0084】
さらに、上記のフェノール類には、2又は3個の反応部位を持つ1もしくは2価のフェノール性化合物が包含され、具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、パラ−オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールプロパン、ビスフェノールメタン、レゾルシン、ピロカテコール、ハイドロキノン、パラ−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールエーテル、パラ−フェニルフェノール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。この中で特に、フェノール、クレゾールが好適である。
【0085】
上記キシレン及びホルムアルデヒド類ならびにフェノール類の縮合反応に使用される酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸及びシュウ酸等が挙げられるが、一般的には、特に硫酸が特に好適である。
【0086】
縮合反応は、例えば、反応系に存在するキシレン、フェノール類、水、ホルマリン等が還流する温度、通常、80〜約100℃の温度に加熱することにより行うことができ、通常、2〜6時間程度で終了させることができる。
【0087】
上記条件下で、キシレン及びホルムアルデヒド類及びさらに場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下で加熱反応させることによって、キシレンホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
【0088】
かくして得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に、20〜50,000mPa・s(25℃)、好ましくは25〜30,000、さらに好ましくは30〜15,000mPa・s(25℃)の範囲内の粘度を有することができ、そして一般に100〜50,000、特に150〜30,000、さらに特に200〜10,000の範囲内の水酸基当量を有していることが好ましい。
【0089】
アミノ基含有化合物は、エポキシ樹脂にアミノ基を導入して、該エポキシ樹脂をカチオン性化するためのカチオン性基付与化合物であり、前記カチオン性樹脂の製造の際に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0090】
前記エポキシ樹脂に対する上記のキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の反応は任意の順序で行うことができるが、一般には、エポキシ樹脂に対して、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を同時に付加反応させるのが好適である。
【0091】
上記の付加反応は、通常、適当な溶媒中で、80〜170℃、好ましくは90〜150℃の温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度行うことができる。上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系溶媒;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0092】
上記の付加反応における各反応成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく適宜変えることができるが、エポキシ樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の3成分の合計固形分質量を基準にして、以下の範囲内が適当である。
【0093】
すなわち、エポキシ樹脂は、一般に50〜90質量%、好ましくは50〜85質量%;キシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に5〜45質量%、好ましくは6〜43質量%;アミノ基含有化合物は、一般に5〜25質量%、好ましくは6〜20質量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0094】
カチオン電着塗料組成物の硬化剤としては、ブロック化ポリイソシアネート化合物やアミノ樹脂等の従来から知られた硬化剤を用いることができ、特にブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0095】
ブロック化ポリイソシアネート化合物で使用されるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI(「ポリメチレンポリフェニルイソシアネート」)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0096】
特に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI等の芳香族ポリイソシアネート化合物が、防食性の観点から特に好適である。
【0097】
このポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂環族または脂肪族のポリイソシアネート化合物およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物が挙げられる。
【0098】
ブロック剤としては、例えばε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物等が挙げられる。これらのうち、オキシム系およびラクタム系のブロック剤は、比較的低温で解離するブロック剤であるため低温硬化性の点から特に好適である。基体樹脂は、通常、該樹脂をギ酸、酢酸、乳酸などの水溶性有機酸で中和して水溶化・水分散化することによってエマルションを得ることができる。
【0099】
カチオン電着塗料組成物は、エマルションに前記電着塗料用顔料分散ペーストを配合し、必要に応じて、有機溶剤、界面活性剤、表面調整剤、はじき防止剤などの添加物を配合し、固形分が1〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるように脱イオン水などで希釈し、pHを5.0〜7.0の範囲内に調整し、カチオン電着塗料組成物の浴を得ることができる。
【0100】
電着塗装は、通常、浴温15〜35℃に調整し、印加電圧100〜400Vの条件で行うことができる。電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、硬化塗膜に基いて10〜40μmの範囲が好ましい。また、塗膜の焼付け硬化温度は、一般に100〜200℃の範囲で5〜90分間が適している。
【0101】
本発明の効果を得るには、電着塗料用顔料分散ペースト中に、(1)セルロース(A)、ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び/又は化合物(C)を含有し、(2)電着塗料用顔料分散ペーストをTI値を一定範囲内とする、(3)好ましくは電着塗料用顔料分散ペースト中に存在する粒子の平均粒子径を1〜3,000とすることが必要である。
【0102】
上記顔料分散ペーストを含有する電着塗料組成物は、塗装ラインにおいて塗料組成物の攪拌や循環を休日や夜間に長時間停止して、再び稼動した時の塗料組成物の再分散性や塗料組成物安定性に優れる為、省エネルギー稼動が可能である。
【0103】
得られた塗膜は、防食性、防錆用鋼板に対する電着塗装適性、基材との密着性に優れた硬化塗膜を形成するものであり、例えば、自動車車体、自動車部品、工業用などにおける下塗り塗料組成物として有用である。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0105】
製造例1 セルロース分散体No.1の製造
市販されているパルプ(DPパルプ)を細断後、65質量%硫酸へパルプ含率4質量%となるように−5℃で溶解させ、このセルロース/硫酸溶液1に対し質量比で2.7相当の水中へ、セルロース/硫酸溶液を強撹拌下で注ぎ、セルロースを析出させた。得られたフレーク状のセルロース分散液を80℃で40分間加水分解した後、濾過、水洗してスラリー状のセルロースの水分散体を得た。次いでこの水分散体をイオン交換水で希釈してセルロース濃度4.0質量%とした後、超高圧ホモジナイザーにて操作圧力175MPaで処理し、これを80℃60分間の加熱処理を行った後噴霧乾燥により、セルロース分散体No.1を得た。なおセルロース分散体No.1の平均粒子径は0.24μmであった。
【0106】
製造例2 セルロース分散体No.2の製造
市販されているパルプ(DPパルプ)を細断後、10%塩酸中で105℃20分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄した後、固形分10%のセルロース分散体を調製した。
【0107】
このセルロース分散体を媒体撹拌湿式粉砕装置(コトブキ技研工業株式会社製アペックスミル、AM−1型)で、媒体として直径1mmφのジルコニアビーズを用いて、撹拌翼回転数1,800rpm、セルロース分散体の供給量0.4L/minの条件で2回通過で粉砕処理を行い、ペースト状のセルロースを得た。セルロース分散体の平均粒子径は3.1μmであった。
【0108】
次に、セルロースと、キサンタンガム、ブドウ糖を配合組成がそれぞれ固形分比で75/5/20とした総固形分濃度が3.5%の分散液を調整した。これを撹拌しながら80℃60分間の加熱処理を行った後噴霧乾燥によりセルロース分散体No.2を得た。
【0109】
製造例3 顔料分散ペーストNo.1の製造
ボールミルに、60%エポキシ系4級アンモニウム塩型の顔料分散樹脂 8.33部(固形分5部)、製造例1で得たセルロース分散体No.1を0.25部(固形分0.25部)、ハートールM33(注5)を1.0部(固形分0.25部)、クレー7部、カーボンブラック3部、水酸化ビスマス1部、ジオクチル錫オキサイド1部、脱イオン水22部を配合して、ボールミルにて分散時間を調整して、固形分40%の顔料分散ぺーストNo.1を得た。該顔料分散ぺーストNo.1の平均粒子径は、2,000nmであった。
【0110】
製造例4 顔料分散ペーストNo.2の製造
表1の配合内容にて、製造例3の顔料ペーストNo.1と同様にして、顔料分散ペーストNo.2を得た。該顔料分散ぺーストNo.2の平均粒子径は、1,500nmであった。
【0111】
製造例5 顔料分散ペーストNo.3の製造
ボールミルに、60%エポキシ系4級アンモニウム塩型の顔料分散樹脂 8.33部(固形分5部)、製造例2で得たセルロース分散体No.2を0.25部(固形分0.25部)、ハートールM33(注5)を1.0部(固形分0.25部)、クレー7部、カーボンブラック3部、水酸化ビスマス1部、ジオクチル錫オキサイド1部、脱イオン水22.0部を配合して、ボールミルにて分散時間を調整して、固形分40%の顔料分散ぺーストNo.3を得た。該顔料分散ぺーストNo.3の平均粒子径は、2,800nmであった。
【0112】
製造例6〜11 顔料分散ペーストNo.4〜No.9の製造
表1の配合内容にて、製造例5の顔料ペーストNo.3と同様にして、顔料分散ペーストNo.4〜No.9を得た。なお顔料分散ペーストNo.4〜No.9の平均粒子径については、後記の表3中に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
(注3)アビセルRC−N81:旭化成ケミカルズ(株)製、商品名、セルロース
分散体(結晶セルロース、カラヤガム、デキストリン)
(注4)アビセルRC−N30:旭化成ケミカルズ(株)製、商品名、セルロース分散体(結晶セルロース、キサンタンガム、デキストリン)
(注5)ハートールM33:ハリマ化成株式会社製、商品名、(式(1)において、R=C1733、R=C)、固形分20%
(注6)界面活性剤No.1:ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(式(1)においてn=14)
比較製造例1〜6 顔料分散ペーストNo.10〜No.15の製造
製造例3の顔料ペーストNo.1と同様にして、表2のような配合で顔料分散ペーストNo.10〜No.15を得た。
【0115】
また顔料分散ペーストNo.10〜No.15の平均粒子径は、後記の表4中に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
(注7)界面活性剤No.2:ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(式(1)においてn=16)
(注8)界面活性剤No.3:ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(式(1)においてn=11)
(注9)ノイゲンEA80:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ノニオン系界面活性剤、(CO)=1
実施例1
製造例3で得た顔料分散ペーストNo.1のTI値(注10)を測定した。さらに各々の顔料分散ペーストを100g採り、蓋のついたガラス容器に入れて40℃で4週間貯蔵した。貯蔵後の状態観察とTI値(注10)を測定した。
【0118】
実施例2〜9
実施例1と同様にして、顔料分散ペーストNo.2〜No.9を貯蔵し、貯蔵後の状態観察とTI値(注2参照)を測定した。
【0119】
【表3】

【0120】
比較例1〜6
実施例1と同様にして、顔料分散ペーストNo.10〜No.15を貯蔵し、貯蔵後の状態観察とTI値(注10)を測定した。
【0121】
【表4】

【0122】
(注10)貯蔵安定性:貯蔵後の各々の顔料分散ペーストを500gを蓋付きガラス瓶入れて、40℃にて4週間貯蔵した。貯蔵後の状態を観察し、下記基準に基づいて評価した。
【0123】
◎は、攪拌すると直ぐに貯蔵前の状態に戻り、問題なし
〇は、顔料が沈降してケーキ層がみられ、1時間未満攪拌すれば貯蔵前の状態に戻る。
△は、顔料が沈降してケーキ層がみられ、1〜5時間以上攪拌すれば貯蔵前の状態に戻る。
×は、顔料が沈降してケーキ層がみられ、5時間を越えて攪拌しても顔料の凝集ブツが顔料分散ペースト中に残る。
【0124】
[カチオン電着塗料組成物の製造]
製造例12 基体樹脂No.1の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器を備えた反応容器にjER828EL(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂、エポキシ当量約190)を380部、ビスフェノールAを137部仕込み、100℃に加熱保持しながら、N−ベンジルジメチルアミン0.26部を添加し、120℃まで加熱昇温し、約2時間反応させた。
【0125】
その後、メチルイソブチルケトン120部を配合し、80℃まで冷却し、ジエチレントリアミンのメチルイソブチルジケチミン(メチルイソブチルケトンの75%溶液)14部とN−エチルモノエタノールアミン57部を配合し、100℃まで加熱昇温して約5時間反応させ、ついでプロピレングリコールモノメチルエーテル41部を加え、固形分80%の基体樹脂No.1を得た。
【0126】
製造例13 基体樹脂No.2の製造
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに50%ホルマリン240部、フェノール55部、98%工業用硫酸101部及びメタキシレン212部を仕込み、84〜88℃で4時間反応させる。反応終了後、静置して樹脂相と硫酸水相とを分離した後、樹脂相を3回水洗し、20〜30mmHg/120〜130℃の条件で20分間未反応メタキシレンをストリッピングして、粘度1050センチポイズ(25℃)のフェノール変性のキシレンホルムアルデヒド樹脂240部を得た。
【0127】
別のフラスコに、jER828EL(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂 、エポキシ当量190、分子量350)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
【0128】
次に、フェノール変性のキシレンホルムアルデヒド樹脂を300部、ジエタノールアミンを140部及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65部を加え120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルを420部加え、固形分80%のキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.2を得た。
【0129】
製造例14 ブロック化ポリイソシアネート硬化剤の製造例
反応容器中にコスモネートM−200(三井化学社製、商品名、クルードMDI) 270部及びメチルイソブチルケトン25部を加え70℃に昇温した。その中に2,2−ジメチロールブタン酸15部を徐々に添加し、ついでエチレングリコールモノブチルエーテル118部を滴下して加え、70℃で1時間反応させた後、60℃に冷却し、プロピレングリコール152部を添加した。
【0130】
この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアナト基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分90%のブロックポリイソシアネート硬化剤を得た。
【0131】
製造例15 エマルションNo.1の製造
製造例12で得た基体樹脂No.1を87.5部(固形分70部)、製造例11で得たブロック化ポリイソシアネート硬化剤33.3部(固形分30部)、10%酢酸15部を配合し均一に撹拌した後、脱イオン水158.3部を強く撹拌しながら約15分かけて滴下し、固形分34%のカチオン電着用のエマルションNo.1を得た。
【0132】
製造例16 エマルションNo.2の製造
製造例13で得た基体樹脂No.2を87.5部(固形分70部)、製造例11で得たブロック化ポリイソシアネート硬化剤 33.3部(固形分30部)、10%酢酸15部を配合し均一に撹拌した後、脱イオン水158.3部を強く撹拌しながら約15分かけて滴下し、固形分34%のカチオン電着用のエマルションNo.2を得た。
【0133】
実施例10 カチオン電着塗料組成物No.1の製造
製造例15で得たエマルションNo.1を294部(固形分100部)に、顔料分散ペーストNo.1を43.8部(固形分17.5部)、10%酢酸5.6部、脱イオン水440.0部を加え、均一に混合して固形分20%のカチオン電着塗料組成物No.1を得た。
【0134】
実施例11〜21 カチオン電着塗料組成物No.2〜No.12の製造
実施例10と同様の操作にて、表5のような配合内容にてカチオン電着塗料組成物No.2〜No.12を得た。下記の試験方法に従って、試験に供したので併せて表記する。
【0135】
【表5】

【0136】
比較例11〜16 カチオン電着塗料組成物No.13〜No.18の製造
実施例10と同様の操作にて、表6のような配合内容にてカチオン電着塗料組成物No.13〜No.18を得た。下記の試験方法に従って試験に供したので、併せて表示する。
【0137】
【表6】

【0138】
試験板の作成
実施例10〜21、及び比較例11〜20で得たカチオン電着塗料組成物中に、パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8×150×70mmの冷延ダル鋼板を浸漬し、それをカソードとして電着塗装にて膜厚20μmの電着塗膜を形成し、水洗後、170℃−20分の焼付けを行って試験板を得た。塗料組成物試験及び試験板の性能試験結果を、併せて表5及び表6に示す。
(注11)ろ過残渣:カチオン電着塗料組成物の攪拌を24時間停止した後、
再び1時間攪拌し、塗料組成物を400メッシュの濾過網を用いて濾過した時の残さ量(mg/L)を測定した。
◎:残さ量が1mg/L未満
〇:残さ量が1〜10mg/L未満
△:残さ量が10〜20mg/L未満
×:残さ量が20mg/L以上
(注12)L字仕上り性:カチオン電着塗料組成物の攪拌を24時間停止した後、再び1時間攪拌し、被塗物としてL字に折り曲げた試験板を用いて3分間の電着塗装を行い、水平面(L面)の評価を行った。
◎:問題なく良好
〇:やや光沢の低下がみられるが製品として問題ないレベル
△:塗膜のハジキ性、ラウンド感の低下がみられる
×:塗膜のハジキ性、ラウンド感、光沢の低下が著しい
(注13)耐塩温水性:実施例及び比較例で得られた塗装板に、ナイフでクロスカット傷を入れ55℃、5%食塩水に10日間浸漬したときの結果を下記の基準で評価した。
◎:錆、フクレの最大幅がカット部より2mm未満(片側)
〇:錆、フクレの最大幅がカット部より2mm以上で、かつ3mm未満(片側)
△:錆、フクレの最大幅がカット部より3mm以上で、かつ4mm未満(片側)
×:錆、フクレの最大幅がカット部より4mm以上(片側)
(注14)耐衝撃性:デュポン式衝撃試験機を用いて、撃心の直径1/2インチ、落錘高さ50cm、測定雰囲気20℃の条件で試験を行ない、衝撃を受けた凸凹部を目視で評価した。
◎:裏表面とも異常なし
〇:裏面に細かな亀裂が少しみられる
△:裏表面とも細かな亀裂が少しみられる
×:裏表面とも大きなワレがみられる
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の顔料分散ペーストは、貯蔵時の攪拌を省略でき、かつ該顔料分散ペーストを使用した電着塗料組成物は、塗装ラインにおいては省エネルギー化が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)顔料分散用樹脂、(ii)顔料成分、(iii)セルロース(A)、(iv)ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)及び/又は化合物(C)、及び(v)水を含有する顔料分散ペーストであって、
顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)0.1〜5質量部及び/又は下記式(2)で表される化合物(C)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする電着塗料用顔料分散ペースト。
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数6〜32の炭化水素基を示し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を示す)
【化2】

(式(2)中、nは12〜15の整数を示す)
【請求項2】
顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【請求項3】
顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、下記式(2)で表される化合物(C)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【請求項4】
顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部とセルロース(A)0.1〜25質量部、下記式(1)で表されるヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(B)0.1〜5質量部及び下記式(2)で表される化合物(C)0.1〜5質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【請求項5】
セルロース(A)が、平均粒子径が0.01〜6μmの微細セルロース分散体である請求項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【請求項6】
セルロース(A)が、微細セルロース分散体と水溶性ガム類及び/又は親水性物質からなるセルロース複合分散体(a)である請求項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【請求項7】
電着塗料用顔料分散ペーストを40℃で4週間貯蔵した後の、該顔料分散ペーストの固形分濃度40質量%における、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲である、請求項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【請求項8】
電着塗料用顔料分散ペーストの貯蔵前のTI値に対する40℃で4週間貯蔵後のTI値の増加量が0.5以下であり、かつ、貯蔵前と40℃で4週間貯蔵後のTI値がいずれも1.8〜4.0の範囲である請求項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【請求項9】
固形分含量が40〜60質量%である、請求項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【請求項10】
電着塗料用顔料分散ペースト中に存在する粒子の平均粒子径が1〜3,000nmである請求項1に記載の電着塗料用顔料分散ペースト。
【請求項11】
基体樹脂、硬化剤及び基体樹脂と硬化剤の固形分合計100質量部あたり、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電着塗料用顔料分散ペーストを固形分で0.1〜50質量部含有する電着塗料組成物。

【公開番号】特開2009−242778(P2009−242778A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32381(P2009−32381)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】