説明

電着組成物、及び、該組成物を用いた半導体基板のコーティング方法

【課題】電着組成物、及び、該組成物を用いた半導体基板のコーティング方法の提供。
【解決手段】本発明は、電着組成物、特に、集積回路内の配線を形成するために、「貫通ビア」型構造の形成用の半導体基板を銅でコーティングするための電着組成物に関する。本発明によれば、該溶液は、14〜120mMの濃度の銅イオンと、エチレンジアミンとを含み、エチレンジアミンと銅とのモル比は1.80〜2.03であり、該電着溶液のpHは6.6〜7.5である。本発明はまた、銅シード層を堆積させるための上記電着溶液の使用、及び、本発明に係る電着溶液を用いた銅シード層の堆積方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、銅で基板表面(特に、電気抵抗性材料で構成された表面)をコーティングするための電着組成物に関する。中でも、銅拡散に対するバリア層をコーティングするための電着組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、マイクロエレクトロニクス分野において、貫通ビア(「シリコン貫通電極」、「ウェハ貫通電極」又は「ウェハ貫通配線」とも言う)を金属化(メタライゼーション)する用途で主に使用される。貫通ビアは、電子の「チップ」(「ダイ」とも言う)を3次元(3D)又は垂直に集積する際の要となる。本発明はまた、他のエレクトロニクス分野において、貫通ビアと銅拡散に対するバリア形成層とを有する基板を銅層で被覆する必要があるような用途でも使用される。このような分野における例としては、プリント基板(「プリント回路板」又は「プリント配線板」とも言う)における配線素子の形成、及び、集積回路やマイクロシステム(「微小電気機械システム」とも言う)における受動素子(インダクタ等)や電気機械素子の形成等が挙げられる。
【0003】
最近の電子システムは、複数の集積回路で構成されているのが大半であり、各集積回路は、一以上の機能を実現する。例えば、コンピュータは少なくとも一つのマイクロプロセッサと複数のメモリ回路とを有する。各集積回路は、通常、それ自体が封入された「パッケージ」内の電子チップに相当する。各集積回路は、例えば、集積回路間を接続する「プリント回路板(PCB)」にはんだ付け又は挿入される。
【0004】
ここ数世代の集積回路については、機能密度の向上という需要が常に存在し、これにより、「システムオンチップ」という概念に従ってシステムが設計されることとなった。この場合、システムの一連の機能を実現するのに必要なあらゆる構成要素及び回路ブロックが、プリント基板を用いることなく同一チップ上に形成される。だが実際には、例えば論理回路とメモリ回路との製造方法は大きく異なるため、高性能な「システムオンチップ」を得るのは極めて困難である。
【0005】
従って、「システムオンチップ」法では、同一チップで実現される各種機能の性能の折り合いをつける必要がある。また、経済的な実現可能性の点から見ると、このようなチップのサイズとその生産歩留りとは限界に達している。
【0006】
他の手法としては、複数の集積回路が相互に配線されたモジュールを同一パッケージ内に製造する方法が挙げられる。この場合、各集積回路は、同一の半導体基板上に形成されても、異なる基板上に形成されてもよい。従って、こうして得られたパッケージ、すなわち「マルチチップモジュール(MCM)」は、単一の部材となっている。「MCM」基板については、積層型やセラミック等の様々な技術が挙げられる。「MCM」法では、あらゆる場合において高配線密度を実現することができ、従って、従来の「PCB」法よりも良好な性能を実現できる。しかしながら、両方法に根本的な面での違いはない。パッケージの容積及び重量に加え、基板の接続部の長さ、及び、基板又はチップとパッケージの「ピン」とを接続する接続配線(「ワイヤボンディング」)に関する寄生要素により、「MCM」の性能は依然として制限される。
【0007】
3次元(3D)集積又は垂直集積を採用すると、チップは「積層」され、垂直配線により相互に接続される。得られた積層体は、能動素子又はチップの層を複数有し、3次元の集積回路(「3D集積回路」又は「3D IC」とも言う)を構成する。
【0008】
3D集積の利点として以下のことが同時に挙げられる。
(1)高性能化:例えば、伝播時間及び消費電力の減少、機能ブロック間伝達の加速に伴うシステム動作速度の向上、各機能ブロックの通過帯域の拡大、ノイズ耐性の向上;
(2)コスト改善:例えば、集積密度の上昇、各機能ブロックに最適な電子チップ世代の使用による製造歩留まりの向上、信頼性の向上;
(3)異種技術の積層(コインテグレーション)、すなわち、異なる材料及び/又は異なる機能要素を用いた大規模集積システム製造の可能性。
【0009】
今日、性能、機能の多様性、製造コストといった点で、従来の手法は限界に達しており、3D集積は従来手法に代わる不可欠な手法であることが分かる。例えば接着剤で積層した後で、各チップは接続配線によって個別にパッケージのピンに接続することができる。だが、高配線密度でチップを相互に接続するには、貫通ビアを用いる必要がある。例えば非特許文献1には、3D集積の原理や利点が記載されている。
【0010】
3次元集積回路の製造に必要な基本技術としては、シリコン「ウェハ」の薄化、層間の位置合わせ、層の「ボンディング」、各層における貫通ビアのエッチング及び金属化が挙げられる。
【0011】
3次元集積回路は、シリコンウェハを薄化した後に貫通ビアを形成することで製造できる(例えば、特許文献1及び2)。
【0012】
ビアのエッチング及び金属化を、シリコンウェハを薄化する前に実施してもよい(例えば、特許文献1及び3)。この場合、ビアをシリコン内にエッチングしてから所望の深さで金属化した後に、シリコンウェハを薄化する。従って、金属化を行う間にビアが封止されて「ブラインド・ビア」となる。
【0013】
銅は導電性が良好で、エレクトロマイグレーション現象への耐性が高い。すなわち、動作不良の主原因となりやすい電流密度の影響による銅原子の移動が抑えられる。そのため、特に貫通ビアを金属化する材料として選ばれやすい。
【0014】
一般に、貫通ビアは、「ダマシン法」(マイクロエレクトロニクス分野において、集積回路を相互に接続するための素子を形成するのに採用される方法)と同様な方法により、以下の工程を順次行うことで形成される。
・シリコンウェハ内に、又は、シリコンウェハを貫通して、ビアをエッチングする;
・絶縁誘電体層を堆積する(一般的には、酸化又は窒化ケイ素等で構成される);
・銅の移動を防ぐためのバリア層、すなわち「ライナー」を堆積する(一般的には、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、チタン酸タングステン(TiW)、及び、窒化若しくは炭化タングステン(WCN)等、又は、これらの金属の組み合わせで構成される);
・「シード層」と呼ばれる金属銅の薄膜を堆積する;
・銅を電着してビアを埋める;
・化学機械研磨により余分な銅を取り除く。
【0015】
バリア層及びシード層の堆積、並びに、銅の埋め込み及び研磨により、貫通ビアが金属化される。
【0016】
一般的に、バリア層は抵抗が非常に大きいため、直接的な電気化学的手段ではウェハの大きさにあわせて均質又は均一に銅を堆積することができない。これは、「抵抗降下」という用語で当業者に知られている現象である。バリア層の抵抗が大きいのは、バリア層を構成する金属(例えば金属窒化物)の抵抗率が高いからである。
【0017】
従って、電着により銅を埋め込む前に、非電気化学的方法により、シード層と呼ばれる金属銅の薄膜でバリア層を被覆する必要がある。
【0018】
バリア層と同様に、このシード層は現在、「物理気相成長(PVD)」又は「化学気相成長(CVD)」法により形成されている。
【0019】
化学気相成長(CVD)では、コンフォーマルな銅層、すなわち、被覆される表面の形状に正確に一致する層を形成でき、広範なフォームファクタ(「アスペクト比」)に対応できる。
【0020】
しかし、銅層を化学気相成長で形成した場合、拡散バリアにうまく付着しない。そのため、実際には、銅とバリアとを強力に接着させて貫通ビアの信頼性を確保する必要がある場合は、このような方法を用いる利点が限られる。
【0021】
更に、実施する際に必要な消耗品(前駆体)及び装置のコストが高く、また、歩留まりが低いため、化学気相成長を利用した方法は比較的コストがかかる。
【0022】
現在、CVD法よりももっと良好に銅とバリアとを接着させつつ高抵抗の表面を被覆できるという点で、物理気相成長(PVD)が工業的観点から好ましいとされている。
【0023】
PVDにより堆積した被膜の厚みは、被覆される表面からの立体角に正比例する。従って、凸角を有する表面部分は、凹角を有する表面部分よりも厚い層で被覆される。この結果、物理気相成長により形成した銅シード層はコンフォーマルとならず、基板表面は場所によって厚みが異なる。
【0024】
特に、高密度3次元集積回路は、垂直プロファイルのビアを形成するのにシリコンの異方性エッチング法を採用する必要がある。シリコンの異方性エッチング(例えば、特許文献4)では、樽型(「ボウイング」)で粗く、溝又は筋(「スカロップ」)付きのプロファイルとなる場合がほとんどである。そのため、層の側面が部分的に被覆されなかったり、シード層の厚みが不十分となったりして、その後の埋め込みが不完全となり材料欠陥(「ボイド」)が生じることがある。更に、パターン側に形成されたシード層は、本質的に、基板の平坦な表面に堆積した層とは異なる接着性を有する。このため、信頼性が損なわれることがある。つまり、コンフォーマル性の欠陥は厚みの違いのみに表れるわけではなく、ビア側の層の連続性及び接着性が損なわれることもある。
【0025】
このような欠点が存在するため、フォームファクタが非常に大きい高密度3次元集積回路の貫通ビアをPVD法で金属化するのは極めて困難である。
【0026】
このような状況で、化学/物理気相成長法の代わりとなる方法が強く求められている。抵抗基板に使用できないために銅シード層の形成には不適であるという点で、従来の金属電着法はこのニーズに十分に応えることができない。
【0027】
実際、従来の銅電着法は、主として、ウェハを前もってシード層で被覆し、添加剤を含有する硫酸銅の酸性浴へ浸漬してから電流を流すことにより貫通ビアを埋めるという手順で今まで使用されてきた(例えば、特許文献1)。
【0028】
また、特に特許文献5では、「貫通ビア」型構造のシード層に発生しうるあらゆる空隙を埋めるため、又は、この層を修復(「シード層修復」又は「シード層補強」)するための方法として、銅電着法が提唱されている。
【0029】
上記先行文献に記載の好ましい実施形態においては、第一工程で不均一な銅シード層(厚さ200nm程度)を形成した後、第二工程で、該層を修復する方法によって該層のコンフォーマル性や均一性を改善している。
【0030】
また、特許文献6には、接着性を有し、コンフォーマルで均一な銅シード層を抵抗バリアに直接堆積できる電着組成物が教示されている。貫通ビア用の銅シード層が有するべき厚みの最小値について何ら詳細な記述がないようではあるが、とりわけ、ビア側のスカロップに起因するでこぼこしたプロファイル上に連続したコンフォーマルな銅層を形成するためには、やはり少なくとも数百nm程度の銅堆積とするのが一般的である。だが、特許文献6に記載の組成は、数十Ω/□程度の抵抗率を有する基板上に、概して20nm未満の厚みの極薄膜を形成するためのものである。更に、このような組成の場合、少なくとも工業用途に適合した堆積時間では、貫通ビアに必要な厚みが達成できないことが分かった。
【0031】
最後に、特許文献7には、半導体素子製造において、たった一つの工程で相互接続用の配線及びホールを銅で埋めることができる電着組成物が教示されている。該先行技術文献に記載された組成では比較的厚い銅層を形成できるものの、該組成は具体的には、小容量の相互接続用配線及びホールを埋めるという課題を解決するためのものであり、ここでは被膜のコンフォーマル性が論点となることはない。特許文献7に記載の実施例の組成物は、基板被覆率が現在の工業需要の点からは不十分なものとなる点で、貫通ビア上にコンフォーマルな銅シード層を形成する上では使用できないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】米国特許第7,060,624号明細書
【特許文献2】米国特許第7,148,565号明細書
【特許文献3】米国特許第7,101,792号明細書
【特許文献4】米国特許第5,501,893号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0045858号明細書(A1)
【特許文献6】国際公開第2007/034116号
【特許文献7】国際公開第2007/096390号
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】A.W.Topol,D.C.La Tulipe,L.Shi,D.J.Frank,K.Bernstein,S.E.Steen,A.Kumar,G.U.Singco,A.M.Young,K.W.Guarini,M.Leong,“Three−dimensional integrated circuits”,IBM Journal Res.&Dev.,vol.50,No4/5,2006年7月/9月,491−506ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
このような状況を鑑み、本発明は、(とりわけ3次元集積回路の)貫通ビアを金属化するための新規な組成物であって、電着により、広範なフォームファクタに対して連続したコンフォーマルな銅シード層を形成でき、且つ、高抵抗の拡散バリア表面にも良好に付着する組成物を提供するという新たな技術的課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
的確に選択された銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする、極めて特徴的な電着組成物を用いることで、上述の技術的課題を解決できることが見出された。このような発見が本発明の土台となっている。
【0036】
第一の態様によれば、本発明は、電着組成物、特に、集積回路内の配線を形成するために、「貫通ビア」型構造の形成用の半導体基板をコーティングするための電着組成物であって、溶媒に溶解した状態において、
・14〜120mMの濃度の銅イオンと、
・エチレンジアミンとを含み、
・エチレンジアミンと銅とのモル比は1.80〜2.03であり、
・該組成物のpHは6.6〜7.5である
電着組成物に関する。
【0037】
ここで、電着とは、基板表面を金属又は有機金属被膜で被覆することができる方法を言い、基板は電気的に分極され、上記金属又は有機金属被膜の前駆体を含有する液体と接触すると被膜が形成される。基板が導電性を有する場合、例えば、被膜材の前駆体源(金属被膜の場合は金属イオン等)及び、必要に応じて、形成される被膜の性質(堆積の規則性及び精細さ、抵抗率等)を向上させるための様々な添加剤を含有する浴中で、必要であれば参照電極の存在下、第一の電極(金属又は有機金属被膜の場合はカソード)である被覆される基板と、第二の電極(アノード)との間に電流を通すことで電着が行われる。
【0038】
慣例により、電解セルに関して、電流は電気化学回路のカソードに流れる際(カソード電流)はマイナスの記号で示され、電気化学回路のアノードに流れる際(アノード電流)はプラスの記号で示される。
【0039】
本発明に係る電着組成物は、任意の一連の3次元回路製造(シリコンウェハ薄化工程前又は後の金属化)に使用できる。
【0040】
全く驚いたことに、上記組成物を用いれば、フォームファクタが大きく(3:1を超える、あるいは10〜15:1程度までにもなるアスペクト比)、且つ、ビア容量が比較的大きい(0.8×10〜5×10μm)構造であっても、更に臨界域においても、基板被覆率が著しく高い(99%を超える)ものとなる銅シード層を得られることが分かった。従って、上記組成物は工業規模での使用に完全に適合する。
【0041】
好ましい組成物としては、銅イオンの濃度が16〜64mMであるものが挙げられる。
【0042】
他の好ましい組成物としては、銅イオンとエチレンジアミンとのモル比が1.96〜2.00であるものが挙げられる。
【0043】
(溶液の活性種を充分に溶解し、電着を妨げないものであれば)溶媒の性質は基本的に限定されないが、溶媒は水であることが好ましい。
【0044】
本発明に係る電着組成物は、概して、銅イオン源、特に第二銅イオンCu2+を含む。
【0045】
銅イオン源は、銅塩であることが好ましい。銅塩としては、特に硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅等が挙げられる。中でも硫酸銅が好ましく、硫酸銅の5水和物がより好ましい。
【0046】
一特徴によれば、銅イオンは、電着組成物中に14〜120mM、好ましくは16〜64mMの濃度で存在する。
【0047】
組成物中に銅イオン源が16〜32mMの濃度で存在していた場合、優れた結果が得られた。
【0048】
本発明に係る電着組成物において、銅イオンとエチレンジアミンとのモル比は1.80〜2.03であり、好ましくは1.96〜2.00である。
【0049】
本発明に係る電着組成物のpHは、概して、6.6〜7.5である。この値は、本発明の電着組成物が上述した比率の銅イオン及びエチレンジアミンのみで構成されているならば、通常得られるものである。
【0050】
本発明の電着組成物が銅イオン源及びエチレンジアミン以外の化合物を含有している場合、「Handbook of Chemistry and Physics−84th edition」(David R.Lide著、CRC Press)に記載されたバッファ等により、組成物のpHを上述のpH範囲内に任意に調整することもできる。
【0051】
現時点で好ましい本発明の電着組成物は、水溶液の状態において、
・16〜64mMの濃度の銅イオンと、
・エチレンジアミンとを含み、
・エチレンジアミンと銅とのモル比は1.96〜2.00であり、
・該組成物のpHは6.6〜7.5である。
【0052】
本発明の電着組成物は、基板表面(特に、「貫通ビア」型構造の銅拡散バリア層等)と本発明の電着組成物とを接触させる工程、及び、十分に時間をかけて上記基板表面を分極させ、該表面をコーティングする工程を含む従来の電着方法で使用してもよい。
【0053】
驚いたことに、この場合には、本発明の電着組成物を用いると、電着過程において、被覆される表面が電着組成物と接触する際の条件をコーティング前に調節することで、優れた結果が得られることが分かった。
【0054】
全く予想しなかったことだが、電気分極させることなく、すなわち、裏面電極又は被覆される表面用の参照電極に電流又は電位を印加することなく、被覆される表面と本発明の電着組成物とを電着工程前に接触させると、電着で形成された銅被膜層とバリア層との接着性が非常に良好となることが分かった。
【0055】
さらに電着工程前に、被覆される基板表面を少なくとも1分間(例えば3分程度)電着組成物と接触させたままにしておく(例えば、電着組成物に浸漬しておく)と、上記接着性が向上することが分かった。
【0056】
だが、バリア層を有する基板が、バリア層の形成直後に銅で被覆されない場合には、接着性は向上しない。よって、バリア層を形成してから1日経過する前に電着により銅で被覆した基板と、バリア層を形成してから数日経過した後で電着により銅で被覆した同様の基板とを比較すると、接着性が50%程度減少していた。
【0057】
本発明の範囲において、本発明の電着組成物によるコーティングが、バリア層の形成から数日経過した後で実施される場合、バリア層で被覆された基板を「エージングされた基板」と呼ぶこととする。
【0058】
このような場合であっても、バリア層を本発明の電着組成物と接触させる際に、電着工程に先立って「アノード分極」式の電気化学的処理をバリア層に施しておけば、電着で形成された銅被膜層とバリア層との接着は、バリア層がエージングされているか否かにかかわらず、非常に良好となることが分かった。
【0059】
極めて意外なことに、このようにアノード分極処理をすると、バリア層のエージングによる接着性低下を完全に抑えられるとともに、被覆される表面がエージングされていてもいなくても、該表面を電気分極させることなく本発明の電着組成物と接触させた場合に比べて接着性が良好となることが分かった。また、このような処理をすると、バリア層がエージングされている場合に、電着で形成された銅被膜層とバリア層との接着性が低下するのを避けることができる。
【0060】
「アノード分極」工程は、一般的に、少なくとも+0.3mA/cm(例えば+0.9mA/cm程度)の電流密度で、少なくとも2秒間(例えば30秒程度)にわたって実施される。
【0061】
また、バリア層上のシード層の接着性が向上すると、「シード層/埋込層又は厚銅又は厚膜」という組み合わせの接着性、すなわち、シード層形成が目的とするところのアセンブリの「製造工程時の」接着性も向上することが分かった。
【0062】
上記接着性は、例えば、アセンブリの上面に貼られた接着テープを、試験機又は引張装置等で「剥離」することで評価できる。こうして測定された接着性、すなわちJ/mで表される界面エネルギーは、バリア層上のシード層が有する接着性と、シード層上の厚銅層が有する接着性とが総合的に表されたものである。
【0063】
コーティング後に銅シード層で被覆された基板を取り出す工程は、特に限定されない。
【0064】
例えば、電着組成物から取り出した後に、好ましくは1〜10秒間、より好ましくは1〜5秒間にわたって、被覆された表面を電気分極させた状態に保った場合、電着による従来の埋め込み方法に適合した導電性を有するシード層が得られることが分かった。
【0065】
従って、第一実施形態によれば、本発明の電着組成物は、以下の工程を含む電着方法に使用される。
・いわゆる「非通電投入(cold entry)」工程:電気分極させることなく、被覆される表面を電着浴と接触させ、好ましくは、この状態に少なくとも1分間にわたって保持する。
・コーティング工程:十分に時間をかけて該表面を分極させ、コーティングする。
・いわゆる「通電取出(hot exit)」工程:電気分極させた状態のまま、該表面を電着浴から取り出す。
【0066】
第二実施形態によれば、本発明の電着組成物は、以下の工程を含む電着方法に使用される。
・被覆される表面を電気分極させることなく電着浴と接触させ、5秒未満、好ましくは3秒未満の非常に短い時間にわたってこの状態に保持する工程。
・「アノード分極」工程:+0.3〜+4mA/cm、好ましくは+0.6〜+1.5mA/cmの電流密度で、2秒〜3分、好ましくは20秒〜1分間にわたって、該表面を分極させる。
・該表面を、電気分極させることなく、0秒〜5分、好ましくは10秒〜1分にわたって電着浴内に保持する工程。
・コーティング工程:十分に時間をかけて該表面を分極させ、コーティングする。
・いわゆる「通電取出(hot exit)」工程:電気分極させた状態のまま、該表面を電着浴から取り出す。
【0067】
銅シード層を堆積する前の段階で、バリア層で被覆された基板が著しくエージングされている場合は、上記第二実施形態が特に有用である。
【0068】
この方法では、所望の被膜を形成するために、電着によるコーティング工程に十分に時間をかける。この時間は当業者であれば容易に設定でき、膜成長は、堆積時間内に回路に流れた電流の時間積分に等しい電荷と相関する(ファラデーの法則)。
【0069】
通常、電着工程は室温で行われる。
【0070】
コーティング工程においては、定電流(galvanostatic)モード(印加電流固定)、定電圧(potentiostatic)モード((必要に応じ参照電極に対して)印加電位固定)、又は、パルス(電流又は電圧)モードのいずれかで、被覆される表面をカソード分極させてもよい。
【0071】
通常は、パルスモードで、好ましくは矩形波電流を印加するようにして、分極させれば、非常に好適な被膜が得られることが分かった。
【0072】
この工程では、通常、単位面積当たりの最大電流が−0.6〜−10mA/cm、好ましくは−1〜−5mA/cmであり、単位面積当たりの最小電流が0〜−5mA/cm、好ましくは0mA/cmである矩形波電流を印加できる。
【0073】
具体的には、最大電流での分極時間は、2×10−3〜1.6秒、好ましくは0.1〜0.8秒(例えば0.35秒程度)であってもよく、また、最小電流での分極時間は、2×10−3〜1.6秒、好ましくは0.1〜0.8秒(例えば0.25秒程度)であってもよい。
【0074】
工程中に実行されるサイクル数は、所望の被膜厚によって異なる。
【0075】
代表的な実施例に記載される上述した優先的条件下において堆積速度が約0.3nm/秒となることが示されたことから、当業者であれば、通常、実行サイクル数を容易に設定できよう。
【0076】
本発明の該実施形態によれば、「貫通ビア」型構造の高抵抗基板上に、50nm〜1μmの厚みの銅シード層を形成できるが、該基板の「シート抵抗」は、1000Ω/□程度あるいは数メガΩ/□程度までになっていてもよい。
【0077】
第二の態様によれば、本発明は、集積回路用配線の形成において、「貫通ビア」型構造を有する銅拡散バリア層をコーティングするための、上記電着組成物の使用に関する。
【0078】
この態様によれば、本発明はまた、(特に「貫通ビア」型構造を有する銅拡散バリア層の表面等の)基板表面をコーティングする方法も含む。この方法は、該表面を上記電着組成物と接触させる工程、及び、十分に時間をかけて該表面を分極させ、コーティングする工程を含む。
【0079】
一特徴によれば、銅拡散バリア層は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)、チタン酸タングステン(TiW)、及び、窒化又は炭化タングステン(WCN)から選択される少なくとも一つの材料を含む。
【0080】
上記コーティング方法は、「貫通ビア」型構造を有する上述の銅拡散バリアの表面に、50nm〜5μm程度、好ましくは100nm〜3μm程度(例えば300nm程度)の厚みとなる銅シード層を形成するのに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】採用可能な定電流パルスプロトコルの詳細を示す。
【図2】アノード分極下での採用可能な投入プロトコルを示す。
【図3】採用可能ないわゆる「逆パルス」プロトコルを示す。
【図4】実施例1(被覆率100%)の走査型電子顕微鏡写真(倍率20K)である。
【図5】比較例11(被覆率55%)の走査型電子顕微鏡写真(倍率20K)である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されない。実施例において、本発明に係る組成物は、銅拡散バリア層で被覆された貫通ビア上に銅シード層を堆積するのに使用される。これらの実施例は、とりわけ、集積回路用の銅配線構造を形成するのに採用できる。
【0083】
(実施例1)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物を使用した、タンタル系バリア層への銅シード層の形成
A.材料及び装置
基板:
本実施例で使用した基板は、直径200mm、厚さ750μmのシリコンウェハで構成され、深さ25μm、直径5μmの「貫通ビア」型円柱パターンにエッチングされている。
【0084】
これらのパターンを、厚さ400nmの二酸化ケイ素層で被覆する。二酸化ケイ素層自体も、PVD(物理気相成長)により堆積するタンタル系層で被覆する。このタンタル系層は、3つの副層(タンタル(80nm)、窒化タンタル(15nm)、さらにタンタル(10nm))からなる。
【0085】
集積回路の製造において、このTa/TaN/Ta「三重層」は、いわゆる「貫通ビア」構造等で使用されるような銅拡散バリアとなる。
【0086】
本実施例では、銅拡散バリア層で被覆された基板が、バリア層形成後すぐに(例えば1日未満で)使用される。
【0087】
電着溶液:
本実施例で使用した電着溶液は、2.1ml/l(すなわち32mM)のエチレンジアミンと4g/l(すなわち16mM)のCuSO(HO)とを含有する水溶液である。
【0088】
溶液の性質については、表1に示す。
【0089】
装置:
本実施例では、マイクロエレクトロニクス産業で使用される代表的な電解析出装置であり、直径200mmのウェハを処理できるSemitool(登録商標)社のEquinox(登録商標)モデルを使用した。
【0090】
該装置は、シード層の堆積を行う電気化学的析出セルと、堆積後に使用されるすすぎ/乾燥部とを備える。
【0091】
電解析出セルは、不活性金属(例えば、白金被覆チタン等)又はシード層を構成するものと同じ金属(この場合は銅)のいずれかで構成されるアノードを有する。Ta/TaN/Taバリア層で被覆されたシリコンウェハは、該セルのカソードとなる。
【0092】
このセルはまた、120V及び15Aまで供給できる安定電源と、カソードとの電気接触を形成するデバイス(封止ガスケットによって溶液とは物理的に隔離されている)を備える。電気接触デバイスは概して環状で、該デバイス上に規則正しく配置された複数の接点において基板に電力を供給する。
【0093】
上記セルはまた、被覆されるウェハを支持するデバイスを備え、このデバイスは該ウェハを所定の速度で回転させる手段を備えている。
【0094】
B.実験手順
必要であれば、電着方法を実施する前に化学的処理を施してもよい。このような処理は、ビア内での電着溶液に対するぬれ性を向上させ、気泡を取り除くことを目的としたものである。該処理では、例えば、ウェハを酸性又は中性溶液に浸漬し、これら全てを超音波槽に少なくとも5分間(例えば10分間)配置する。このような化学的処理は、バリア層の性質及び貫通ビアの寸法によって異なる。
【0095】
本実施例における電着方法では、以下に記載の各種工程を連続して実施する。
【0096】
工程1:「非通電投入」
この工程は、2つのサブ工程に分けられる。
1.1
上述の基板を電解析出セルに投入し、Ta/TaN/Taバリア層を有する面を電気接触デバイスと接触させる。この時点では、後者にまだ電力は供給されていない。
【0097】
1.2
電気接触デバイスと基板とで構成されるアセンブリ(以下、「カソード・アセンブリ」とする)を、浸漬等により電着溶液と接触させる。ここでは、まだ該デバイスには通電していない状態で接触させ、通常、接触時間は5秒以下(例えば2秒)である。カソード・アセンブリは、その後少なくとも1分(例えば3分程度)にわたって、分極されることなく、電着溶液内に保持されるのが好ましい。
【0098】
工程2:銅被膜の形成
その後、カソード・アセンブリを定電流パルスモードで分極させ、同時に、20〜100rpm(例えば40rpm)の速度で回転させる。
【0099】
図1は、採用可能な定電流パルスプロトコルの詳細を示す。全周期Pは、10ミリ秒〜2秒(本実施例では0.6秒)であり、単位面積当たり概して−0.6〜−10mA/cm(本実施例では−2.77mA/cm)の電流を印加した際の分極時間TONは、2ミリ秒〜1.6秒(本実施例では0.35秒)であり、分極を行わない休止時間は2ミリ秒〜1.6秒(本実施例では0.25秒)である。
【0100】
当然のことながら、本工程にかかる時間は所望のシード層厚によって異なる。この時間は当業者であれば容易に設定できるものであり、膜成長は、回路に流れた電荷と相関する。
【0101】
上述の条件下において、堆積速度は、回路を流れた電荷1クーロン当たり約1.5nmであり、従って、厚さ300nmの被膜を得るのに必要な電着時間は17分程度となる。
【0102】
工程3:「通電取出」
この工程は2つのサブ工程に分けられる。
3.1
電着工程が終わると、電圧分極下に保持しつつ、回転を止めた状態で、銅で被覆されたカソード・アセンブリを電着溶液から取り出す。この段階にかかる時間は約2秒である。
【0103】
その後10秒間、回転速度を500rpmまで上昇させ、この最終段階の間に、カソード・アセンブリの分極を終了する。
【0104】
セル内で、脱イオン水により予備すすぎを行う。
【0105】
3.2
次に、シード層で被覆された基板をすすぎ/乾燥部へ移動させ、脱イオン水ですすぐ。
【0106】
続いて、すすぎ水を排出して、窒素を通気させながら乾燥する。
【0107】
その後、回転を止めて、被覆・乾燥された基板を取り出す。
【0108】
本実施例では、取出工程、とりわけ、電着溶液からカソード・アセンブリを取り出す工程は、被膜形成工程時と同程度の電圧分極下で行った。
【0109】
C.結果
上述した実験手順を適用すると、厚さ300nmの銅層が得られた。
【0110】
この層(300nm)に対する測定及び特性決定については、実施例18〜20で示す。
【0111】
(実施例2)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物を使用した、タンタル系バリア層への銅シード層の形成
実施例1に記載した実験手順を適用し、本発明に係る電着溶液を用いて、厚さ300nmの銅シード層を形成した。該溶液の性質を表1に示す。
【0112】
この層(300nm)に対する測定及び特性決定については、実施例18〜20で示す。
【0113】
(実施例3)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物を使用した、タンタル系バリア層への銅シード層の形成
A.材料及び装置
基板:
本実施例で使用した基板は、実施例1で使用した基板と同じである。
【0114】
電着溶液:
本実施例で使用した電着溶液は、8.4ml/l(すなわち128mM)のエチレンジアミンと16g/l(すなわち64mM)のCuSO(HO)とを含有し、pHが7.2の水溶液である。
【0115】
装置:
本実施例で使用した装置は、実施例1と同じである。
【0116】
B.実験手順
4通りの実験を行った。
【0117】
B.1.バリア層エージング無しの非通電投入
ここで採用した実験手順は実施例1と全く同じものであり、銅シード層は、バリア層の形成直後(1日未満で)形成する。
【0118】
B.2.バリア層エージング後の非通電投入
ここで採用した実験手順は、バリア層を形成してから数日後に銅シード層を形成すること以外は、実施例1と同じである。
【0119】
B.3.バリア層エージング後のアノード分極
ここでは、バリア層で被覆された基板を、上記手順B.2で用いた基板と同様にエージングして用いた。
【0120】
銅シード層を形成するのに採用した電着方法では、被覆される層をアノード分極下で接触させる。この電着方法では、以下に記載の各種工程を連続して実施する。
【0121】
工程1:アノード分極下での投入
図2は、アノード分極下での採用可能な投入プロトコルを示す。このプロトコルは3つのサブ工程に分けられる。
1.1
上述の基板を電解析出セル内に投入し、タンタル系バリア層を有する面を電気接触デバイスと接触させる。この時点では、後者にまだ電力は供給されていない。
【0122】
1.2
電気接触デバイスと基板とで構成されるアセンブリ(以下、「カソード・アセンブリ」とする)を、浸漬等により電着溶液と接触させる。ここでは、まだ該デバイスには通電していない状態で接触させ、通常、接触時間は5秒以下(例えば2秒)である。カソード・アセンブリは、その後5秒以下(例えば3秒)の時間Tにわたって、分極されることなく、電着溶液内に保持されるのが好ましい。
【0123】
1.3
続いて、単位面積当たり概して+0.3〜+4mA/cm(本実施例では+0.9mA/cm)の電流を、2秒〜3分(本実施例では30秒)の時間TONにわたって印加することで、カソード・アセンブリをアノード分極させる。
【0124】
1.4
その後、アノード分極を終了するが、カソード・アセンブリは0秒〜5分(実施例では1分)の時間TOFFにわたって電着溶液内に保持したままにする。
【0125】
工程2:銅被膜の形成
本工程は、実施例1の対応する工程と同じである。
【0126】
工程3:「通電取出」
本工程は、実施例1の対応する工程と同じである。
【0127】
B.4.バリア層エージング無しのアノード分極
エージングされていない同じ基板に適用したことを除き、採用した実験手順は上述の手順B.3と全く同じである。
【0128】
C.結果
上述した実験手順を適用すると、厚さ300nmの銅層が得られた。
【0129】
このシード層(300nm)の堆積後に行った測定及び特性決定については、実施例18〜20に示す。
【0130】
(実施例4)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物を使用した、窒化チタンバリア層で被覆された「貫通ビア」型構造への銅シード層の形成
A.材料及び装置
基板:
本実施例で使用した基板は、直径200mm、厚さ750μmのシリコンウェハで構成され、深さ50μm、直径5μmの「貫通ビア」型円柱パターンにエッチングされている。
【0131】
これらのパターンを、厚さ400nmの二酸化ケイ素層で被覆する。二酸化ケイ素層自体も、CVD(化学気相成長)により堆積する窒化チタン(TiN)層で被覆する。
【0132】
集積回路の製造において、窒化チタンは、いわゆる「貫通ビア」構造等で使用されるような銅拡散バリアとなる。
【0133】
電着溶液:
本実施例で使用した電着溶液は、実施例3と同じである。
【0134】
装置:
本実施例で使用した装置は、実施例1と同じである。
【0135】
B.実験手順
実施例3に記載の手順B.1、B.2、B.3、及びB.4に従って、4通りの実験を行った。
【0136】
いずれの場合にも、厚さ300nmの銅層が得られた。
【0137】
C.結果
この層に対する測定及び特性決定については、実施例18〜20で示す。
【0138】
(実施例5)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物を使用した、窒化チタンバリア層への銅シード層の形成
A.材料及び装置
基板:
本実施例で使用した基板は、直径200mm、厚さ750μmのシリコンウェハで構成され、深さ200μm、直径75μmの「貫通ビア」型円柱パターンにエッチングされている。
【0139】
これらのパターンを、厚さ400nmの二酸化ケイ素層で被覆する。二酸化ケイ素層自体も、原子層成長(atomic layer deposition:ALD)により堆積する50nmの窒化チタン層で被覆する。
【0140】
集積回路の製造において、窒化チタンは、いわゆる「貫通ビア」構造等で使用されるような銅拡散バリアとなる。
【0141】
電着溶液:
本実施例で使用した溶液は、実施例1と同じである。
【0142】
装置:
本実施例で使用した装置は、実施例1と同じである。
【0143】
B.実験手順
本実施例で採用した実験手順は、実施例1と同じである。
【0144】
C.結果
上述した実験手順を適用すると、厚さ300nmの銅層が得られた。
【0145】
このシード層(300nm)の堆積後に行った測定及び特性決定については、実施例18〜20で示す。
【0146】
(実施例6)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物を使用した、窒化チタンバリア層への銅シード層の形成
A.材料及び装置
基板:
本実施例で使用した基板は、直径200mm、厚さ750μmのシリコンウェハで構成され、深さ50μm、直径5μmの「貫通ビア」型円柱パターンにエッチングされている。
【0147】
これらのパターンを、厚さ400nmの二酸化ケイ素層で被覆する。二酸化ケイ素層自体も、CVD(化学気相成長)により堆積する40nmの窒化チタン層で被覆する。
【0148】
集積回路の製造において、窒化チタンは、いわゆる「貫通ビア」構造等で使用されるような銅拡散バリアとなる。
【0149】
電着溶液:
本実施例で使用した溶液は、実施例1と同じである。
【0150】
装置:
本実施例で使用した装置は、実施例1と同じである。
【0151】
B.実験手順
本実施例で採用した実験手順は、実施例1と同じである。
【0152】
C.結果
上述した実験手順を適用すると、厚さ300nmの銅層が得られた。
【0153】
このシード層(300nm)の堆積後に行った測定及び特性決定については、実施例18〜20で示す。
【0154】
(実施例7)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物を使用した、窒化チタンバリア層で被覆された「貫通ビア」型構造への銅シード層の形成
A.材料及び装置
基板:
本実施例で使用した基板は、実施例1で使用した基板と同じである。
【0155】
電着溶液:
本実施例で使用した電着溶液は、実施例3と同じである。
【0156】
装置:
本実施例で使用した装置は、実施例1と同じである。
【0157】
B.実験手順
本実施例では、いわゆる「逆パルス」プロトコルで銅シードコーティングを実施した。銅シード層は、バリア層を形成してから数日後に形成する。
【0158】
本実施例における電着方法では、以下に記載の各種工程を連続して実施する。
【0159】
工程1:アノード分極下での投入
採用した実験手順は、実施例3に記載した手順B.3と同じである。
【0160】
工程2:銅被膜の形成
次に、カソード・アセンブリを「逆パルス」モードで分極させ、同時に、20〜100rpm(本実施例では40rpm)の速度で回転させる。
【0161】
図3は、採用可能ないわゆる「逆パルス」プロトコルを示す。全周期Pは、10ミリ秒〜3秒(本実施例では0.9秒)であり、単位面積当たり概して−0.6〜−10mA/cm(本実施例では−2.77mA/cm)の電流を印加した際のカソード分極時間TONは、2ミリ秒〜1.6秒(本実施例では0.35秒)であり、単位面積当たり概して+0.2〜+5mA/cm(本実施例では+1.11mA/cm)の電流を印加した際のアノード分極時間Tは、2ミリ秒〜1.6秒(本実施例では0.25秒)であり、分極を行わない任意の休止時間TOFFは、0秒〜1秒(本実施例では0.3秒)である。
【0162】
当然のことながら、本工程にかかる時間は、所望のシード層厚によって異なる。この時間は当業者であれば容易に設定できるものであり、膜成長は、回路に流れた電荷と相関する。
【0163】
工程3:「通電取出」
本工程は、実施例1の対応する工程と同じである。
【0164】
同じ実験手順を同じ基板に適用した。ただし、基板はエージングされていない。
【0165】
C.結果
上述した実験手順を適用すると、厚さ300nmの銅層が得られた。
【0166】
このシード層(300nm)の堆積後に行った測定及び特性決定については、実施例18〜20で示す。
【0167】
(実施例8)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物を使用した、チタンバリア層で被覆された「貫通ビア」型構造への銅シード層の形成
A.材料及び装置
基板:
本実施例で使用した基板は、直径200mm、厚さ750μmのシリコンウェハで構成され、深さ60μm、直径30μmの「貫通ビア」型円柱パターンにエッチングされている。
【0168】
これらのパターンを、厚さ400nmの二酸化ケイ素層で被覆する。二酸化ケイ素層自体も、PVD(物理気相成長)により堆積する0.3μmのチタン(Ti)層で被覆する。
【0169】
集積回路の製造において、チタンは、いわゆる「貫通ビア」型構造等で使用されるような銅拡散バリアとなる。
【0170】
電着溶液:
本実施例で使用した電着溶液は、実施例3と同じである。
【0171】
装置:
本実施例で使用した装置は、実施例1と同じである。
【0172】
B.実験手順
実施例3に記載の手順B.1、B.2、B.3、及びB.4に従って、4通りの実験を行った。
【0173】
いずれの場合にも、厚さ300nmの銅層が得られた。
【0174】
C.結果
この層に対する測定及び特性決定については、実施例18〜20で示す。
【0175】
(実施例9)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物を使用した、チタンバリア層への銅シード層の形成
A.材料及び装置
基板:
本実施例で使用した基板は、直径200mm、厚さ750μmのシリコンウェハで構成され、深さ60μm、直径30μmの「貫通ビア」型円柱パターンにエッチングされている。
【0176】
これらのパターンを、厚さ400nmの二酸化ケイ素層で被覆する。二酸化ケイ素層自体も、PVD(物理気相成長)により堆積する0.3μmのチタン層で被覆する。
【0177】
集積回路の製造において、チタンは、いわゆる「貫通ビア」構造等で使用されるような銅拡散バリアとなる。
【0178】
電着溶液:
本実施例で使用した溶液は、実施例1と同じである。
【0179】
装置:
本実施例で使用した装置は、実施例1と同じである。
【0180】
B.実験手順
本実施例で採用した実験手順は、実施例1と同じである。
【0181】
C.結果
上述した実験手順を適用すると、厚さ300nmの銅層が得られた。
【0182】
このシード層(300nm)の堆積後に行った測定及び特性決定については、実施例18〜20で示す。
【0183】
(比較例10〜17)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする比較組成物を使用した、タンタル系バリア層への銅シード層の形成
実施例1に記載の実験手順を適用することで、比較電着溶液を用いて、厚さ300nmの銅シード層を形成した。該溶液の性質を表1に示す。
【0184】
この層(300nm)に対する測定及び特性決定については、実施例18〜20で示す。
【0185】
以下の表に、上記実施例1〜17で調製した溶液の性質をまとめて示す。
【0186】
【表1】

【0187】
(実施例18)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物及び比較組成物を使用して「貫通ビア」型構造に形成された各シード層が有する抵抗率の特性決定
A.材料及び装置
薄膜の電気抵抗を測定する装置として当業者に周知である「4点」型(「4点プローブ」)測定装置を用いて、「シート抵抗」を測定した。シート抵抗はΩ/□で表し、二次元系、すなわち、電流が、膜に垂直な面ではなく膜面内を流れる系の抵抗率に等しい。シート抵抗値は、数学的には、膜を構成する材料の抵抗率(Ω・m又はμΩ・cmで表記)を膜厚(m又はnmで表記)で割ることで得られる。
【0188】
B.測定方法
シート抵抗にシード層の厚みを掛けると、銅の抵抗率が得られる。
【0189】
C.結果
上記実施例1〜14で得られた銅の抵抗率は、厚さ200nmのシード層では2μΩ・cm程度であり、400nm以上のシード層では1.8μΩ・cm程度である。
【0190】
抵抗率がこのような水準であれば、工業規模での使用にも完全に適合する。
【0191】
(実施例19)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物及び比較組成物を使用して「貫通ビア」型構造に形成された各シード層の被覆性の特性決定
A.材料及び装置
銅シード層の被覆性及びコンフォーマル性は、最も被覆しにくい領域である構造底部に着目し、走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察することで評価した。
【0192】
B.測定方法
被覆率は、構造の底部領域、すなわち、ビア底部からその4μm上部までの領域で測定する。被覆率100%とは、完全な被覆、つまり、底部領域のバリア表面が銅で完全に被覆されていることをいう。銅で部分的にしか被覆されていない表面については、銅で被覆された表面の比率(パーセントで表記)を示す。
【0193】
完全に被覆されている場合、ビアの垂直面(側面)上のシード層厚を、ビア上端の水平面上のシード層厚で割ると、コンフォーマル性の度合い(コンフォーマル度(パーセント))が算出される。垂直面上の厚みは、ビアの所定の深さ(ビアの底部から4μm上部)で測定する。コンフォーマル度100%とは、完全にコンフォーマルであることをいう。
【0194】
C.結果
下記の表2に、上記実施例1〜17の組成物を使用して形成された銅シード層についての結果をまとめる。
【0195】
図4は、実施例1(被覆率100%)の走査型電子顕微鏡写真(倍率20K)であり、図5は、比較例11(被覆率55%)の同写真である。
【0196】
表2:実施例1〜17で得られた銅シード層のコンフォーマル度及び被覆率
【0197】
【表2】

【0198】
上記の表2の結果に、本発明に係る電着組成物の決定的な特性が示される。
【0199】
本発明に係る全ての電着組成物(実施例1〜9)について、基板被覆率は100%であり、コンフォーマル度は30%以上である。従って、工業規模において申し分ないものである。実施例1の組成物では、100%に届くような優れたコンフォーマル度が得られる。
【0200】
比較組成物(実施例10〜17)は、本発明の組成物に(質的にも量的にも)比較的近いものの、被覆率は95%未満である。そのため、工業規模での実用性はない。
【0201】
(実施例20)
銅とエチレンジアミンとの混合物をベースとする本発明の組成物及び比較組成物を使用して「貫通ビア」型構造に形成されたシード層が有する接着性の特性決定
A.材料及び装置
接着性又は界面エネルギーは、強力な接着テープを用いて、表面に対する垂直引張力を銅層が基板から剥がれるまで増加させていく装置(いわゆる試験機又は引張装置)により測定した。
【0202】
B.測定方法
上述の装置で測定された力の仕事(剥離された膜の長さを掛け合わせた力)は、銅層を基板から剥がすのに必要だったと考えられるエネルギーに等しい。剥離された表面積の値でこのエネルギーを割ると、単位面積当たりのエネルギーが得られる。
【0203】
C.結果
下記の表3に、上記実施例1〜17で得られた結果をまとめて示す。
【0204】
【表3】

表3:実施例1〜17で得られた銅シード層が有する接着性
【0205】
上記の表3の結果から、本発明に係る組成物を用いた場合、工業用途に適合する良好な接着性を有する銅シード層が得られることが分かる。
【0206】
また、上記表より、アノード分極法は工業的観点から有利であり、バリア層を備えた基板が経時的にエージングされた場合に有益であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着組成物、特に、集積回路内の配線を形成するために、「貫通ビア」型構造の形成用の半導体基板をコーティングするための電着組成物であって、溶媒に溶解した状態において、
・14〜120mMの濃度の銅イオンと、
・エチレンジアミンとを含み、
・エチレンジアミンと銅とのモル比は1.80〜2.03であり、
・該組成物のpHは6.6〜7.5である
電着組成物。
【請求項2】
前記銅イオンの濃度は16〜64mMである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記銅イオンは、第二銅イオン、好ましくは硫酸銅由来の第二銅イオンである、
請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エチレンジアミンと銅イオンとのモル比は1.96〜2.00である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
被覆率が99%を超える基板コーティングを可能とする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
コンフォーマル度が30%を超える基板コーティングを可能とする、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
集積回路内の配線を形成するために、「貫通ビア」型構造を有する半導体基板上に、被覆率が99%を超え、且つ、コンフォーマル度が30%を超える銅シード層を堆積するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項8】
特に集積回路内の配線を形成するために、基板の表面、特に、「貫通ビア」型構造を有する銅拡散に対するバリア層の表面等をコーティングする方法であって、
該表面を、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電着組成物と接触させる工程;及び、
十分に時間をかけて該表面を分極させ、コーティングする工程
を含む方法。
【請求項9】
前記銅拡散に対するバリアを形成する表面は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)、チタン酸タングステン(TiW)、及び、窒化又は炭化タングステン(WCN)から選択される少なくとも1つの材料を含む、
請求項8に記載のコーティング方法。
【請求項10】
前記銅拡散に対するバリアを形成する表面は、タンタル/窒化タンタル/タンタルの三層、又は、窒化タンタル/タンタルの二層、又は、窒化チタンの層で構成される、
請求項9に記載のコーティング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−520039(P2011−520039A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507970(P2011−507970)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050812
【国際公開番号】WO2009/141551
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(508084928)
【Fターム(参考)】