説明

電着組成物および方法

電気めっき被覆組成物が、導電性基材上にめっきされた際に被覆物のエッジ被覆率を改善するために非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含む。該めっきされた被覆物を硬化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は電着被覆組成物、その製造方法、導電性基材上への被覆物の電気めっき方法、および電気めっきされた被覆物に関する。
【0002】
発明の背景
本段落の記載は単に本願に関する背景情報を提供するだけであり、且つ先行技術を構成しないものとする。
【0003】
電気めっき被覆("電着")組成物およびその方法は今日の産業において広く使用されている。電着浴は通常、水中または水と有機補助溶剤との混合物中でイオン安定化された、主な成形成エポキシ樹脂("ポリマー"と"樹脂"とは、本願において互換性のあるものとして使用される)を含む水性分散液またはエマルションを含む。耐久性のある電着膜が望まれる自動車または工業用途において、電着組成物は硬化性(熱硬化性)組成物であるように配合される。これは通常、主な膜形成樹脂と適切な条件下で、例えば熱を適用して、主な樹脂上の官能基と反応できる架橋剤とを乳化することによって実施され、そして該被覆物を硬化させる。電気めっきの間、比較的低い分子量を有する、イオンを帯びた樹脂を含有する被覆材料を導電性基材上に、該基材を電着浴中に浸し、その後、基材と逆電荷の極、例えばステンレス鋼電極との間に電位を印加することによって堆積させる。帯電された被覆材料が導電性基材へと移動し、且つその上に堆積される。被覆された基材をその後加熱して、該被覆物を硬化または架橋させる。
【0004】
電着組成物および方法の1つの利点は、適用された被覆組成物が、様々な金属基板の上で、形状または構成にかかわらず、均質且つ隣接する層を形成することである。これは特に、該被覆物が耐食被覆物として不規則な表面を有する基材、例えば自動車の車体上に適用される場合に有利である。金属基材の全ての部分にわたる平坦で連続的な被覆物層は、最大の耐食効果を提供する。そこで、電気めっき(または電着)された被覆物についての1つの望ましい特徴は、均質なエッジ被覆率である。即ち、物品のエッジ部上での膜厚(または形成膜)が、物品の内側の部分と同様に厚いことが、腐食保護のために重要である。Reuter他 米国特許第6951602号(WO01/02498号に対応)は、エッジの保護および汚染耐性のために、水溶性ポリビニルアルコール(コ)ポリマーまたはポリビニルアルコール(コ)ポリマーの混合物の電気めっき浴への添加を記載しており、このReuterの出版物は、腐食に対抗するエッジ保護のために使用されている他の方法も記載している。
【0005】
電気めっき被覆物の硬化層は、典型的には1つまたはそれより多くの異なる追加的な被覆物、例えば他のプライマー層およびトップコート層で上塗りされる。電気めっきされた被覆物の膜の平坦度は、他の重要な特性であり、なぜなら、より滑らかな電気めっきされた被覆物は、滑らかな仕上がりを達成するために必要とされる被覆物の追加的な層の被覆物厚を最小化するはずであるからである。
【0006】
発明の概要
本願は、電気めっき可能で且つ非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリ(ビニルホルムアミド)ポリマーである結合剤を含む、水性電気めっき被覆組成物(水性電気めっき浴とも呼ばれる)を記載する。少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーは、完全に加水分解されてもよく、且つ、非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーは、ビニルホルムアミド以外のコモノマーからのモノマー単位を含有してよい。該結合剤は、カソードまたはアノードのいずれかで、電気めっき可能であってよい。自動車用途は一般に、カソード電気めっき可能な結合剤を使用する。"結合剤"は、被覆組成物の膜形成成分を示す。典型的には、該結合剤は熱硬化性または硬化可能であり、自己架橋性樹脂またはポリマーか、あるいは硬化条件下で樹脂またはポリマーと反応する架橋剤と組み合わされた樹脂またはポリマーのいずれかを含む。便宜上、本願中で使用される"樹脂"は、樹脂とポリマーとの両方を包含する。いくつかの実施態様において、結合剤は、硬化条件下で加水分解されたポリビニルホルムアミドとも反応する架橋剤を含んでもよい。
【0007】
電気伝導性の基材を被覆する方法は、電気伝導性の基材を、電気めっき可能で且つ非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリ(ビニルホルムアミド)ポリマーである結合剤を含む水性電気めっき被覆組成物中に設置し、且つ、該電気伝導性の基材を1つの電極として使用し、該水性電気めっき被覆組成物を介して電流を通して該電気伝導性の基材上への被覆物層の堆積を引き起こすことを含む。その後、堆積された被覆物層を硬化して、硬化被覆物層にできる。堆積された(随意に硬化された)被覆物層上に、次の被覆物層を適用してよい。例えば、堆積された被覆物層はプライマー層および他の層、例えば随意に噴霧塗布されたプライマーサーフェイサーであってよく、且つ、堆積された被覆物層の上に、トップコート層または複数のトップコート層(例えば着色ベースコート層およびクリアコート層)を適用してよい。
【0008】
被覆された電気伝導性基材は、基材上に電気的に堆積された被覆物層を含み、該電気的に堆積された被覆物層は非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含む。電気的に堆積された被覆物層中の非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーの存在が、改善された流動制御およびより良好なエッジ被覆率を提供する。電気的に堆積された被覆物層は、非常により良好な膜の平坦度を有している。それらの長所は一般に、非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーが電気めっき浴中に非常にわずかな量で含まれている場合でも得られることが見出されている。該被覆物は優れたエッジ被覆率および保護を有し、特に油に対する汚染耐性を有し、且つ電気めっき可能な被覆物浴は製造が複雑ではなく、且つ、長期的な安定性を有する。この目的のために使用されている従来のポリマー添加剤、例えばポリビニルアルコールと比較して、非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーは、より少ない量で使用されても、望ましいエッジ被覆率をもたらす。
【0009】
ここで使用される際、"a"および"an"は、"少なくとも1つ"の物品が存在することを示し、可能であれば複数のかかる物品が存在してもよい。詳細な説明の最後で提供する実施例の他に、付記される請求項を含む本明細書中のパラメータの全ての数値(例えば量および条件)は、どの場合でも、用語"約"によって修正されると理解されるべきであり、いずれにせよ"約"は実際には数値の前に現れている。"約"は、述べられた数値にいくらかのわずかな不正確性が見込まれることを示す(その値における正確さに近く、およそ、または適度にその値に近づいて; ほぼ)。"約"によって提供される不正確性は、当該技術分野におけるこの通常の意味以外には理解されず、その際、"約"はここで使用される場合、少なくとも、かかるパラメータの測定および使用の通常の方法から生じ得る変動を示す。さらには、範囲の開示は全ての値の開示および全ての範囲内でさらに分割された範囲を含む。
【0010】
適用範囲のさらなる領域は、ここで提供される記載から明らかになる。記載および特定の例は、説明だけの目的が意図されており、且つ、本願の範囲を制限する意図ではないと理解されるべきである。
【0011】
詳細な説明
以下の記載は単に例示的なものであり、且つ、本願、用途、または使用を制限することを意図していない。
【0012】
水性電気めっき被覆組成物は、(A) 結合剤、(その際、該結合剤は、カソードまたはアノード電気めっき可能である)、および(B) 非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含むことが開示される。
【0013】
ポリビニルホルムアミドポリマーは非加水分解か、または部分的もしくは完全に加水分解されていてよい。ホルムアミド基の加水分解は、第一級アミン基を提供する; ポリビニルホルムアミドポリマーの完全な加水分解はポリ(ビニルアミン)を提供する。加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーは、BASF社から、様々な質量平均分子量(約340,000ダルトンから10,000ダルトン未満まで)、および様々な加水分解度合い(10%、30%、および90%)を有する"LUAMIN(登録商標)"の商標で市販である。非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーは、ビニルアミドおよびビニルアミンモノマー単位以外のモノマー単位を含んでもよい。かかるコポリマーの1つの実施態様において、ビニルホルムアミドは、酢酸ビニルと共重合されていてよく、得られるコポリマーの加水分解は、ビニルアルコールモノマー単位並びにビニルアミンモノマー単位を提供できる。1つの実施態様において、ポリビニルホルムアミドポリマーは、ビニルアミドおよびビニルアミンモノマー単位のみを含む(即ち、ポリビニルホルムアミドポリマーは、ビニルホルムアミドのホモポリマーまたはビニルホルムアミドの少なくとも部分的に加水分解されたホモポリマーである)。
【0014】
水性電気めっき被覆組成物は、わずかな量の非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含み、一般に、被覆組成物の1質量パーセント未満である。例えば、水性電気めっき被覆組成物は、少なくとも約25質量ppmの非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含んでよい; 他の例では、水性電気めっき被覆組成物は、少なくとも約50質量ppmの非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含んでよい。非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーは、水性電気めっき被覆組成物中で非常にわずかな水準の際に効率的であることが観察されている。例えば、水性電気めっき被覆組成物は、非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを約1000質量ppmまで含んでよい; 他の例では、水性電気めっき被覆組成物は、非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを約100質量ppmまで含んでよい。エポキシ樹脂を含む結合剤を有する水性電気めっき被覆組成物は、該水性電気めっき被覆組成物が約50ppm〜約100ppmの非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含む場合、優れたエッジ被覆性および他の被覆特性を提供することが観察されている。非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーの、特定の水性電気めっき被覆組成物に対する最適量の測定は直接的であり、且つ、一般に、水性電気めっき被覆組成物の質量に対して1000ppm未満の量の非加水分解または加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを用いて充分な結果が達成される。
【0015】
該電気めっき被覆組成物は、電気めっき可能な樹脂を含む結合剤を含む。様々なかかる樹脂が公知であり、限定されずにアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂およびポリブタジエン樹脂を含む。自動車の電気めっき用途は、典型的には、カソード性である、即ち塩にされている塩基性基(例えば、第一級、第二級、または第三級アミン基)または第四級基(例えばアンモニウム、スルホニウムまたはホスホニウム基)を有する、電気めっき可能な樹脂を使用する。カソード電気めっき法において、被覆されるべき物品はカソードである。カソード電気めっき被覆法において使用される水分散可能な樹脂は、カチオン性の官能基、例えば第一級、第二級、第三級および/または第四級アミン成分を、プラスに帯電可能な親水性基として有する。
【0016】
適した樹脂の例は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル樹脂、例えばポリアクリレート樹脂、およびポリブタジエン樹脂を含む。好ましい実施態様において、該樹脂はアミン基で官能化されたエポキシ樹脂である。好ましくは、エポキシ樹脂はポリグリシジルエーテルから製造される。好ましくは、ポリグリシジルエーテルはビスフェノールAまたは類似のポリフェノールのポリグリシジルエーテルである。エポキシ樹脂を、エポキシド基当量の過剰量を変性材料、例えばポリオール、ポリアミンまたはポリカルボン酸と反応させることによって伸長させ、膜特性を改善することが有利であることもある。好ましくは、ポリグリシジルエーテルはビスフェノールAによって伸長される。この種の有用なエポキシ樹脂は、GPCによって測定される約3000〜約6000の質量平均分子量を有する。エポキシ当量は、約200〜約2500に及んでよく、且つ、好ましくは約500〜約1500に及ぶ。
【0017】
アミノ基を、ポリフェノールのポリグリシジルエーテルとアミンまたはポリアミンと反応させることによって組み込んでよい。典型的なアミンおよびポリアミンは、限定されずに、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノブチルアミン、ジプロピルアミン、および類似の化合物、およびそれらの組み合わせを含む。好ましい実施態様において、エポキシ樹脂上のエポキシド基が、第二級アミン基と少なくとも1つの潜在性第一級アミンとを含む化合物と反応する。潜在性第一級アミン基は好ましくはケチミン基である。該第一級アミンは、樹脂が乳化された際に再生される。
【0018】
第四級アンモニウム基が組み込まれてもよく、且つ、それは例えば第三級アミンから、酸を用いてそれを塩にして、その後、塩になっている水素を例えばエポキシド基を有する化合物と反応させてアンモニウム基を生成することによって形成される。本発明によって使用される樹脂は、好ましくは、約300〜約3000、およびより好ましくは約850〜約1300の第一級アミン当量を有する。
【0019】
エポキシ変性ノボラックを、本発明において樹脂として使用できる。エポキシ−ノボラック樹脂を、エポキシ樹脂について先に記載されたのと同様にキャップできる。
【0020】
カチオン性ポリウレタンおよびポリエステルもまた使用してよい。かかる材料を、例えばアミノアルコールでエンドキャップすることによって製造でき、または、ポリウレタンの場合、先に記載された、塩にされ得る(saltable)アミン基を含む同一の化合物も使用できる。
【0021】
ポリブタジエン、ポリイソプレン、または他のエポキシ変性ゴムベースのポリマーを、本発明において樹脂として使用できる。エポキシゴムを、塩にされ得るアミン基を含む化合物でキャップできる。
【0022】
選択的な実施態様において、カチオン性のアクリル樹脂を使用してよい。アクリルポリマーを、アミノ含有モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート tert−ブチルアミノエチルメタクリレート 2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルピロリドンまたは他のかかるアミノモノマーの組み込みによってカソード性にしてもよい。選択的に、重合反応中にエポキシ官能性モノマーを含めることによってエポキシ基が組み込まれてもよい。かかるエポキシ官能性アクリルポリマーを、エポキシ樹脂について先に記載された方法による、エポキシ基とアミンとの反応によってカソード性にしてもよい。該重合は、ヒドロキシル官能性モノマーも含んでよい。有用なヒドロキシル官能性エチレン性不飽和モノマーは、限定されずに、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、メタクリル酸とスチレンオキシドとの反応生成物などを含む。好ましいヒドロキシルモノマーは、化合物のヒドロキシルを有するアルコール部分が、1〜約8つの炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のヒドロキシアルキル成分である、メタクリルまたはアクリル酸エステルである。
【0023】
ヒドロキシル基を保有するモノマーおよび塩にするための基(カチオン性基のためのアミン、またはアニオン性基のための酸または無水物)を保有するモノマーを、1つまたはそれより多くの他のエチレン性不飽和モノマーと重合してよい。共重合のためのかかるモノマーは当該技術分野で公知である。例示的な例は、限定されずに、アクリルまたはメタクリル酸のアルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、置換されたシクロヘキシルアクリレートおよびメタクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、およびイタコン酸の相応するエステル、およびその種のもの; およびビニルモノマー、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルトルエン、およびその種のものを含む。他の有用な重合可能なコモノマーは、例えば、アルコキシエチルアクリレートおよびメタクリレート、アクリルオキシアクリレートおよびメタクリレート、および化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレイン、およびメタクロレインを含む。それらの組み合わせも通常、用いられる。
【0024】
典型的なアクリル樹脂の分子量は、通常、約2000〜約50,000、且つ、好ましくは約3000〜約15,000の範囲である。
【0025】
カチオン性樹脂のアミノ当量は、約150〜約5000、且つ、好ましくは約500〜約2000に及んでよい。ヒドロキシル基を有する場合、樹脂のヒドロキシル当量は、一般に約150〜約2000、且つ、好ましくは約200〜約800の間である。
【0026】
該樹脂は、塩になっている化合物の存在中で、水中で乳化される。該樹脂が塩基性基、例えばアミン基を有する場合、該樹脂は酸を用いて塩にされ、該樹脂が酸性基を有する場合、該樹脂は塩基を用いて塩にされる。通常、主な樹脂と架橋剤とを共に配合した後、樹脂を水中で分散させる。非加水分解または部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを、主な樹脂および架橋剤と配合した後、水中に分散させてよい; 少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを塩にして、且つ水中に分散させてよい。好ましい実施態様において、樹脂の基はアミン基であり、且つ、酸、例えばリン酸、プロピオン酸、酢酸、乳酸、またはクエン酸を用いて塩にされる。塩にする酸を、水と混合された樹脂または複数の樹脂と配合するか、または両者を配合した後、樹脂を水に添加してよい。主な樹脂のアミン基を中和して該樹脂に水分散性を付与するために充分な量で、酸を使用する。該樹脂を完全に中和するが、しかしながら、必要とされる水分散性を付与するためには、通常は部分的な中和で充分である。"部分的な中和"によって、少なくとも1つの、しかし全部よりは少ない、樹脂上の塩にされ得る基が中和されることを意味する。樹脂が少なくとも部分的に中和されていると言うことによって、樹脂上の少なくとも1つの塩にされ得る基が中和され、且つ全てまでのかかる基が中和され得ることを意味する。特定の樹脂に必須の水分散性をもたらすために必要とされる中和の程度は、その化学的な組成、分子量、および他のかかる要素に依存し、且つ、当業者は直接的な実験を通じて簡単に測定できる。
【0027】
同様に、アニオン性樹脂の酸性基は、アミン、例えばジメチルエタノールアミンまたはトリエチルアミンで塩にされる。ここでもまた、塩にする薬剤(この場合ではアミン)を、水と混合された該樹脂と配合するか、または両者を配合した後、該樹脂を水に添加する。該樹脂を少なくとも部分的に中和するが、しかし完全に中和してもよい。水分散性を該樹脂に付与するために少なくとも充分な酸性基をアミンを用いて塩にする。
【0028】
塩にされ得る樹脂を、架橋剤と組み合わせた後、水中で分散させてよい。特定の官能性を有する、主な樹脂に適している架橋剤は、当該技術分野で公知であり、且つ、単独または組み合わせて使用してよい。ブロックトポリイソシアネートが特筆される。芳香族、脂肪族、または脂環式のポリイソシアネートの例は、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート (MDI)、2,4−または2,6−トルエンジイソシアネート (TDI)、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、混合物のフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン 2,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソ−シアナトメチル)シクロヘキサン、二量体の脂肪酸から誘導されるジイソシアネート、例えばHenkel社によって商品名DDI 1410で販売されているもの、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナト−メチルヘプタン、または1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)−シクロヘキサン、およびより高次のポリイソシアネート、例えばトリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、またはそれらのポリイソシアネートの混合物を含む。適したポリイソシアネートは、イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、イミノオキサジアジンジオン、ウレタン、ウレア、またはウレトジオン基を含有するものから誘導されるポリイソシアネートも含む。例えば、ポリイソシアネート含有ウレタン基は、いくつかのイソシアネート基とポリオール、例えばトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、およびグリセロールとを反応させることによって得られる。該イソシアネート基は、ブロッキング剤と反応させられる。適したブロッキング剤の例は、フェノール、クレゾール、キシレノール、イプシロン−カプロラクタム、デルタ−バレロラクタム、ガンマ−ブチロラクタム、ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、アルコール、例えばメタノールまたはイソブタノール、酸アミド (例えばアセトアニリド)、イミド (例えばスクシンイミド)、アミン (例えばジフェニルアミン)、イミダゾール、ウレア、エチレンウレア、2−オキサゾリドン、エチレンイミン、オキシム (例えばメチルエチルケトキシム)、およびその種のものを含む。
【0029】
電着浴は通常、凝集および安定性に寄与する、少量のより高沸点の補助溶剤、例えばグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステルを含む。凝集溶剤の限定されない例は、アルコール、ポリオール、およびケトンを含む。特定の凝集溶剤は、エチレングリコールのモノブチルおよびモノヘキシルエーテル、およびプロピレングリコールのフェニルエーテル、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、例えばエチレングリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピル、およびモノブチルエーテル; エチレングリコールのジアルキルエーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテル; またはジアセトンアルコールを含む。凝集溶剤の量は肝要ではなく、且つ一般に樹脂固形物の総質量に対して約0〜15質量パーセント、好ましくは約0.5〜5質量パーセントである。
【0030】
電着浴は通常、1つまたはそれより多くの顔料およびさらなる所望の材料、例えば凝集助剤、消泡助剤、および他の添加剤を含む。電着プライマーのための従来の顔料は、二酸化チタン、鉄酸化物、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、沈殿炭酸バリウム、リンモリブデン酸アルミニウム、クロム酸ストロンチウム、塩基性ケイ酸鉛またはクロム酸鉛を含む。顔料を、グラインド樹脂、または好ましくは顔料分散剤を使用して分散させてよい。電着浴中の顔料と樹脂との質量比が重要であることがあり、且つ、好ましくは50:100未満、より好ましくは40:100未満、且つ、通常は約10〜30:100であるべきである。より高い顔料と樹脂固形物との質量比は、凝集および流動に悪影響することが判明している。通常、該顔料は、浴中の不揮発性材料の10〜40質量パーセントである。好ましくは、該顔料は、浴中の不揮発性材料の15〜30質量パーセントである。電着プライマー中で一般に使用される任意の顔料および充填材を含んでよい。増量剤、例えば粘度および耐食顔料が通例的に含まれる。
【0031】
電気めっき被覆組成物は、随意の成分、例えば染料、流動調整剤、可塑剤、触媒、湿潤剤、界面活性剤、UV吸収剤、HALS化合物、酸化防止剤、脱泡剤などを含有してよい。界面活性剤および湿潤剤の例は、アルキルイミダゾリン、例えばCiba−Geigy Industrial ChemicalsからAMINE C(登録商標) アセチレンアルコールとして入手可能なもの、例えばAir Products and Chemicalsから商標SURFYNOL(登録商標)の下で入手可能なものを含む。界面活性剤および湿潤剤は、存在する場合、典型的には樹脂固形物の質量の2パーセントまでの量である。流動を促進するために、またはめっき特性を修正するために、可塑剤が随意に含まれる。例は、高沸点で水に不混和性の材料、例えばノニルフェノールまたはビスフェノールAのエチレンまたはプロピレンオキシド付加物である。可塑剤を、樹脂固形物の15質量%までの水準で使用してよい。
【0032】
硬化触媒、例えばスズ触媒を被覆組成物中で使用してよい。典型的な例は、限定されずに、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシド、およびビスマスオクトエートを含むスズおよびビスマス化合物である。使用される場合、触媒は典型的には、樹脂固形物全体の総質量に対して約0.05〜2質量%の量で存在する。
【0033】
電着浴は一般に、800マイクロモー〜6000マイクロモーの電気伝導性を有している。伝導性が低すぎる場合、所望の厚さ且つ所望の特性を有する膜を得ることは難しい。他方、該組成物があまりに導電性であると、問題、例えば浴中での基材または対向電極の溶解、不均一な膜厚、膜の破裂、または膜の腐食または水のしみに対する乏しい耐性が引き起こされることがある。
【0034】
本発明による被覆組成物は、基材上に電気めっきされ、その後、硬化されて被覆された物品を形成する。本発明による被覆物調製物の電気めっきを、当業者に公知の、任意の多くの方法によって実施してよい。電気めっき被覆組成物を、任意の導電性基材、例えば鋼、銅、アルミニウム、または他の金属または金属合金上に、好ましくは乾燥膜厚10〜23μmで適用してよい。本発明の組成物で被覆された物品は、金属質の自動車部品またはボディであってよい。適用後、被覆された物品を浴から取り出し、そして脱イオン水で濯ぐ。該被覆物を、適切な条件下で、例えば約275°F〜約375°Fで約15〜約60分間のベーキングによって、硬化させてよい。
【0035】
電気めっきに続いて、適用された被覆物を通常、硬化させた後、他の被覆物を(使用する場合)適用する。電着層が自動車用途におけるプライマーとして使用される場合、1つまたはそれより多くの追加的な被覆物層、例えばプライマーサーフェイサー、カラーコート、および随意にクリアコート層を、該電着層上に適用してよい。該カラーコートは、トップコートエナメルであってよい。自動車産業において、カラーコートはしばしば、クリアコート層で上塗りされるベースコートである。該プライマーサーフェイサーおよびトップコートエナメルまたはベースコートおよびクリアコート複合トップコートは、水媒性または溶剤媒性のいずれかであってよい。該被覆物を、当該技術分野で公知の多くの種々の方法で配合し、且つ、適用できる。例えば、使用される樹脂はアクリル、ポリウレタン、またはポリエステルであってよい。典型的なトップコート配合物は、BASF CorporationまたはBASF AGに付与された様々な米国特許内に記載されている。該被覆物を、任意の公知のメカニズム、および硬化剤、例えばメラミンまたはブロックトイソシアネートによって硬化してよい。
【0036】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明する。実施例は単に例証するものであって、記載され且つ請求される本発明の範囲をどのようにも限定するものではない。全ての部は、特段記載されない限り、質量部である。
【0037】
実施例
電着浴を、1500質量部の電着プライマー結合剤のエマルション(27質量%の酸で塩にされたアミン官能性エポキシ樹脂、12質量%のブロックトイソシアネート架橋剤、および2質量%の可塑剤を有する、40質量%の不揮発性の水性エマルション)と、240質量部の顔料ペースト(16質量%の酸で塩にされたアミン官能性エポキシ樹脂と51質量%の顔料の組み合わせの、67質量%の不揮発性水性分散液)とを、2260質量部の脱イオン水と混合することによって製造した。電着被覆組成物の実施例1〜6を、以下の通りに加水分解されたポリビニルホルムアミドのこの組成物を電着浴内に混ぜ込むことによって製造した: 実施例1、 400ppmのPVAM9030 (30%加水分解されたポリビニルホルムアミド); 実施例2、 200ppmのPVAM9030; 実施例3、 100ppmのPVAM9030; 実施例4、 50ppmのPVAM9010 (10%の加水分解されたポリビニルホルムアミド); 実施例5、 100ppmのPVAM9010; および実施例6、 50ppmのPVAM9010。比較例Aを、実施例1〜6と同一の条件で、しかし、ポリビニルホルムアミドの代わりに800ppmのポリビニルアルコールを用いて製造した。
【0038】
各実施例の電着浴から、0.8ミルの目標形成膜で、パネルをめっきした。試験は、長波領域(1〜12mmの範囲の組織)での平坦度をByk−Gardnerウェーブスキャン装置を使用して、反射性の日東テープを上に適用されたパネル上で測定することによって実施され、60度の光沢はASTM D523に従って測定され、膜の平坦度(Ra(μ−in))はプロフィルメータ、およびエッジ分離によって測定された。エッジ分離のパーセント(または"絶縁能力")は、パネルのエッジに平行にパネルに沿って引かれたすり接点(ピン)によって、一定の速度で、且つ、わずかな針厚を及ぼしながら測定される。ピンと基材との間に、高い内部抵抗(10MΩ)を有する調節可能な電圧源(0〜1000V)がある。ピンと試験パネルとの間の、電圧/時間積分を測定しながら、すり接点が一定の距離を移動する。この積分は、ピンと基材との間のコンタクト抵抗に依存する。該コンタクト抵抗は、電圧に強く依存する: 高電圧の破壊が、絶縁層の厚さの関数として生じる。種々の電圧での電圧−時間積分の測定は、測定されたエッジ沿いの被覆物の絶縁能力についての図を提供する。
【0039】
結果を以下の表に記録する。
【表1】

【0040】
該結果は、ポリビニルホルムアミド(PVAM)ポリマーの水準の増加が、電着被覆物のエッジ分離のパーセント(エッジ保護)を増加させるが、しかし、被覆物の光沢および平坦度を低下させることを示している。ポリビニルアルコール(PVA)と比べて、ポリビニルホルムアミドは、非常により低い水準で、匹敵するエッジ分離のパーセントを、より高い光沢およびいくぶん良好な平坦度と共に提供できる。(長波測定について、より少ない数はより大きな平坦度を示す)。
【0041】
本記載は単に例示的なものに過ぎず、従って本願の要旨から逸脱しない変形は本発明の一部である。変形は本願の主旨および範疇からの逸脱としてはみなされないものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 結合剤(その際、該結合剤はカソードまたはアノード電気めっき可能である)、および(B) 非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含む、水性電気めっき被覆組成物。
【請求項2】
約25質量ppm〜約1000質量ppmの非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含む、請求項1に記載の水性電気めっき被覆組成物。
【請求項3】
約50ppm〜約100ppmの非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含む、請求項1に記載の水性電気めっき被覆組成物。
【請求項4】
ポリビニルホルムアミドポリマーが、全ホルムアミド基に基づいて約10%〜約90%加水分解されている、請求項1に記載の水性電気めっき被覆組成物。
【請求項5】
非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーが、約8,000〜約500,000ダルトンの質量平均分子量を有する、請求項1に記載の水性電気めっき被覆組成物。
【請求項6】
非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーが、ビニルアミドまたはビニルアミンモノマー単位の他にモノマー単位を有する、請求項1に記載の水性電気めっき被覆組成物。
【請求項7】
結合剤が、カソード堆積可能である、請求項1に記載の水性電気めっき被覆組成物。
【請求項8】
結合剤が、カソードめっき可能なエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の水性電気めっき被覆組成物。
【請求項9】
結合剤が、さらにブロックトポリイソシアネートを含む、請求項8に記載の水性電気めっき被覆組成物。
【請求項10】
結合剤が、カソード堆積可能な樹脂および硬化条件下で該カソードめっき可能な樹脂と反応性のある架橋剤を含み、且つさらに該架橋剤が硬化条件下で、非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーと反応性がある、請求項1に記載の水性電気めっき被覆組成物。
【請求項11】
電気伝導性基材の被覆方法であって、
(a) 電気伝導性基材を、請求項1に記載の水性電気めっき被覆組成物中に設置し、
(b) 該電気伝導性基材を電極として接続し、且つ、水性電気めっき被覆組成物を介して電流を通して該電気伝導性基材上に被覆物層を堆積させること
を含む方法。
【請求項12】
水性電気めっき被覆組成物が硬化性結合剤を含み、且つ、該方法がさらに該被覆物層の硬化を含む、請求項11に記載の電気伝導性基材の被覆方法。
【請求項13】
水性電気めっき被覆組成物が、約25質量ppm〜約50質量ppmの非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含む、請求項12に記載の電気伝導性基材の被覆方法。
【請求項14】
基材上に電気的に堆積された被覆物層を含み、該電気的に堆積された被覆物層は非加水分解または少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドポリマーを含む、被覆された電気伝導性基材。
【請求項15】
電気的に堆積された被覆物層が、さらに硬化結合剤を含む、請求項14に記載の被覆された電気伝導性基材。

【公表番号】特表2011−524934(P2011−524934A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514638(P2011−514638)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038233
【国際公開番号】WO2009/154832
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】