説明

電磁アクチュエータ及びカメラ用羽根駆動装置

【課題】ロータをその作動範囲の両端位置と途中位置とにおいて停止し得る共に小型化された電磁アクチュエータ及び、この電磁アクチュエータを採用したカメラ用羽根駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る電磁アクチュエータ1は、励磁用のコイル4と、外周面を周方向に分割し、N極及びS極が交互に4極に着磁されたロータ2と、コイル4が巻回され、コイル4への通電によりロータ2を所定の作動範囲の両端位置及び途中位置にて停止させるべくロータ2に磁力を与える磁極部を有するステータ3と、を備え、磁極部は、ロータ2の中心からステータ3が配置されている方向に所定の鈍角度を有して配置された第1磁極部11及び第2磁極部12からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁アクチュエータに関する。また、この電磁アクチュエータを採用したカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラの機構の駆動源として採用され得る電磁アクチュエータとして、ロータを作動範囲の両端位置と途中位置との3箇所の位置に停止させることができるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−274629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1で開示する電磁アクチュエータは、ロータに磁気的吸引力及び反発力を与えるための磁極部が4つ備えられており、この磁極部はロータの外周面に対向するように配置されている。すなわち前記電磁アクチュエータの磁極部はロータの周囲を囲むように配置されているため、磁極部を構成するスペースが大きく必要となり、電磁アクチュエータの更なる小型化を図ることが困難となっていた。
特に、近年カメラの更なる小型化が要請されており、このような電磁アクチュエータでは採用することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、ロータをその作動範囲の両端位置と途中位置とにおいて停止し得ると共に小型化された電磁アクチュエータ及びカメラ用羽根駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、励磁用のコイルと、外周面を周方向に分割し、N極及びS極が交互に4極に着磁されたロータと、前記コイルが巻回され、前記コイルへの通電により前記ロータを所定の作動範囲の両端位置及び途中位置にて停止させるべく前記ロータに磁力を与える磁極部を有するステータと、を備え、前記磁極部は、前記ロータの中心から前記ステータが配置されている方向に所定の鈍角度を有して配置された第1及び第2磁極部(のみ)からなる電磁アクチュエータによって達成できる。
【0007】
この構成によれば、ロータを作動範囲の両端位置及び途中位置にて停止させることができる電磁アクチュエータにおいて、第1及び第2磁極部の2つの磁極部が、ロータの中心からステータが配置されている方向に所定の鈍角度を有して配置されているので、ステータがロータの全周を囲う必要がなく、電磁アクチュエータの小型化を図ることができる。また、ステータの形状を簡易なものとすることができる。
【0008】
また、上記構成において、前記第1及び第2磁極部は、前記ステータの両端部に配置されている、構成を採用できる。
この構成によれば、前記第1及び第2磁極部は、ステータの両端部に備えられているので、更に電磁アクチュエータを小型化することができる。
【0009】
また、上記構成において、前記所定の鈍角度は、120°±10°である、構成を採用できる。
【0010】
また、上記構成において、前記磁極部に前記ロータを前記途中位置及び前記両端位置の一方の位置に停止させるための磁極をそれぞれ生じさせる第1及び第2通電状態とに前記コイルへの通電方向を切り替える電流制御回路を備え、前記電流制御回路は、前記ロータを前記第2通電状態により前記一方の位置に保持し、さらに前記第1通電状態により前記ロータを前記途中位置へ回動させ、前記ロータが、前記途中位置を越えて前記他方の位置方向へオーバーランし、前記他方の位置方向に移動している時に、前記コイルを前記第1通電状態から前記第2通電状態に切り替える、構成を採用できる。
このような構成によれば、2つの磁極部であっても、作動範囲の両端位置と途中位置の3箇所の位置でロータを停止させることができる。
【0011】
また、上記目的は、撮影用の開口と、上記に記載の電磁アクチュエータと、前記電磁アクチュエータに接続され外部に駆動力を出力するべく前記電磁アクチュエータのロータの回転軸から偏倚して形成された出力ピンと、前記出力ピンに連動して前記開口への光量を規制する羽根部材と、を備え、前記ロータは、その停止位置に応じて前記羽根部材による前記開口への光量を変化させるカメラ用羽根駆動装置によっても達成できる。
この構成によれば、小型化された電磁アクチュエータにより、ロータの停止位置に応じて開口への光量を変化させることができるので、小型化されたカメラ用羽根駆動装置を提供できる。
【発明の効果】
【0012】
ロータをその作動範囲の両端位置と途中位置とにおいて停止し得ると共に小型化された電磁アクチュエータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る一実施形態を図面を参照して説明する。図1は実施形態に係る電磁アクチュエータの主要部の構成を示した図である。本電磁アクチュエータ1は、中央に配置した両方向に回転可能なロータ2及びこのロータ2の外側に対向するように配置したステータ3を備えている。このロータ2は断面円形で円筒形状を成している。ステータ3は略コ字状で一体型に形成されている。そして、ステータ3には単一のコイル4が巻回されている。なお、図1ではステータ3のコ字の開放側が右上向きとなる状態で電磁アクチュエータ1を示している。また、ステータ3はロータの外周の半周未満の領域を覆うように配置されている。
【0014】
ロータ2は、外周面を周方向に4等分するように、2つのN極及びS極からなる4つの極に着磁された4磁極構成である。このロータ2は、同一磁極が互いに対向する位置に着磁された永久磁石であり、軸21を中心に両方向へ回動自在に設定されている。上記コ字形状を有するステータ3の両端部は、ロータ2の外周面に対向するように形成されている。ステータ3は、コイル4への通電により所定の作動範囲の両端位置及び途中位置にてロータ2を停止させるべくロータ2に磁力を与える第1磁極部11、第2磁極部12を備えている。
【0015】
上記第1磁極部11と第2磁極部12との間にはコイル4が巻回されている。第1磁極部11、第2磁極部12はコイル4が通電されたときに励磁される。コイル4への通電により、第1磁極部11、第2磁極部12は、互いに異なる磁極を生じる。
【0016】
また、第1磁極部11と第2磁極部12とは、ロータ2の中心からステータ3が配置されている方向に所定の鈍角度θを有して、ステータ3の両端部に配置されている。この所定の鈍角度θは、ロータ2の作動範囲の両端位置及び途中位置の3箇所の位置においてディテントトルク及び後述の規制部材により、または、ディテントトルクのみによりロータ2を保持できるように決定された角度で、本実施例の場合、具体的には、ロータの中心から120°±10°であり、好ましくは120°±5°の範囲である。上記鈍角度θが110°より小さくなると、隣り合うS極及びN極の中心がロータ2の中心から90°となっているロータ2の磁極構成により、ロータ2の作動範囲途中位置での起動トルクが大きくなるため消費電流が増えてしまう。さらに上記鈍角度θが90°に近づくにつれてロータ2の作動方向は不定となってしまう。また上記鈍角度θが130°より大きくなると、ロータ2の作動範囲の両端位置及び途中位置の3箇所の位置においてロータ2を保持できる範囲が小さくなりさらに上記鈍角度θが大きくなるにつれてロータ2は前記3箇所の位置において停止できなくなってしまう。
【0017】
図1では、電磁アクチュエータ1のコイル4に接続される電流制御回路25が点線で示されている。本実施形態では、この電流制御回路25からコイル4を励磁する電流が供給される。電流制御回路25は、通電方向を切り替えることによりコイル4の通電状態を切り替える。これによりロータ2の駆動状態が制御される。具体的には、電流制御回路25は、第1磁極部11がS極に、第2磁極部12がN極に励磁される状態をH励磁(第1通電状態)とし、第1磁極部11がN極に、第2磁極部12がS極に励磁される状態をL励磁(第2通電状態)とすると、電流制御回路25は、第1磁極部11及び第2磁極部12に発生する磁極をH励磁又はL励磁に切り替える。
【0018】
この構成によれば、ステータ3の第1磁極部11と第2磁極部12との2つの磁極部により、ロータ2を作動範囲の両端位置と途中位置の3箇所の位置において停止させることができる。ロータ2の回動状態については、後述する。
【0019】
次に、図2から図5を参照して、上記電磁アクチュエータ1をカメラの羽根駆動機構に採用してカメラ用羽根駆動装置を構成した一例を説明する。図2(A)は、基板50に対して電磁アクチュエータ1を配置した様子を平面視で模式的に示した図である。
羽根駆動装置は、第1シャッタ羽根60、第2シャッタ羽根65、絞り羽根70などから構成される。基板50は、後述するように撮影用のレンズ開口51を備えている。基板50の前面側には、第1シャッタ羽根60、第2シャッタ羽根65、絞り羽根70が基板面に沿うように配置されている。基板50の背面側には電磁アクチュエータ1が配置されている。
【0020】
この図2(A)では穴の位置は確認できないが、第1シャッタ羽根60は基板50に設けた突起61に係合する穴、及びロータ2に接続され外部に駆動力を出力するべくロータ2回転軸から偏倚して形成された出力ピン27に係合する穴を備えている。
同様に、第2シャッタ羽根65は基板50に設けた突起66に嵌合する穴、及びロータ2から延びた出力ピン27に係合する穴を備えている。また、絞り羽根70は基板50に設けた突起71に係合する穴、及びロータ2から延びた出力ピン27に係合する穴を備えている。これら第1シャッタ羽根60、第2シャッタ羽根65及び絞り羽根70は、後述する出力ピン27の回動動作に伴って、それぞれが独自の軌跡を描いて揺動する。これらの羽根60、65、70に設けられた穴の位置や、これらの動作はこの後に示す図3から図5で説明する。
【0021】
基板50の背面側に配置している電磁アクチュエータ1のロータ2には、半径方向に延出したアーム部26が接続されている。このアーム部26の端部からは基板50側に設けた開口55を通り反対側まで延在した出力ピン27が接続されている。前面側に出たこの出力ピン27に、前記第1シャッタ羽根60、第2シャッタ羽根65及び絞り羽根70のそれぞれに設けた穴が係合している。よって、電磁アクチュエータ1のロータ2が回動したときには、出力ピン27がこれに連動して回動し、さらに前記第1シャッタ羽根60、第2シャッタ羽根65及び絞り羽根70が所定の軌跡で揺動する。
【0022】
なお、図2(B)は、上記出力ピン27の移動軌跡CRについて示した図である。出力ピン27はロータ2の回動に伴って回転が可能であるが、基板50に形成された開口55は扇型であり、また、アーム26の移動を規制する部材29が配置されている。よって、本例では出力ピン27は所定の作動範囲RE内を回動するように設定されている。この作動範囲REは例えば中心角約120°に設定される。
【0023】
上記のような構成を有する羽根駆動装置を、動作させた場合を図3から図5を参照して説明する。これらの各図では、基板50の前面側から見て、第1シャッタ羽根60、第2シャッタ羽根65及び絞り羽根70の位置が変化する様子が示されている。なお、これら各図の上部には、ロータ2の回転状態が確認できるように電磁アクチュエータ1を示している。
【0024】
図3は、基板50に設けた撮影用のレンズ開口51を全開とした状態が示されている。図3中の符号CRは図2(B)と対応している。このとき電磁アクチュエータ1のロータ2は、規制部材29に当接することにより停止している。
また電流制御回路25は、コイル4への通電により、第1磁極部11をS極に、第2磁極部12をN極に励磁させ、ロータ2のN極は、第1磁極部11と対向し、ロータ2のS極は、第1磁極11と第2磁極部12との中間に位置している。ロータ2とステータ3の磁極部の位置関係については後で詳細に説明する。
尚、このロータ2の位置が、ロータ2の作動範囲の両端位置の一方の位置に該当する。
【0025】
ロータ2のN、S極のそれぞれは、ディテントトルクにより第1、第2磁極11、12に対向する位置に移動しようとして規制部材29により規制された状態で保持される。よって、図3に示す状態でコイル4への通電を行なわなくとも、この羽根の状態を保持できる。
なお、この図3では、第1シャッタ羽根60の突起61に係合する穴62、第2シャッタ羽根65の突起66に嵌合する穴67、及び絞り羽根70の突起71に係合する穴72が示されている。また、出力ピン27に係合する係合穴は、手前側にある絞り羽根70の係合穴73が確認できる。
【0026】
図4は、基板50に設けた撮影用のレンズ開口51を全閉とした状態が示されている。この図4は、図3の状態からロータ2が約60°時計方向に回転した状態であり、出力ピン27がロータ2に連動して回動する。この出力ピン27の回動に伴って第1シャッタ羽根60、第2シャッタ羽根65、絞り羽根70が所定の軌跡を描いて揺動し、第1シャッタ羽根60及び第2シャッタ羽根65によりレンズ開口51が閉じられる。
【0027】
このとき電流制御回路25は、コイル4への通電により、第1磁極部11をN極に励磁させ、第2磁極部12をS極に励磁させる。
また、ロータ2は、時計方向に回転して、ロータ2のS極は、第1磁極部11と対向し、ロータ2のN極は、第2磁極部12と対向する。
尚、このロータ2の位置が、ロータ2の作動範囲の途中位置に該当する。
この図4の場合は、ロータ2のN、S磁極それぞれが、ちょうど第1、第2磁極11、12に対向した位置でディテントトルクにより保持される。よって、図4で示した場合もこの状態でコイル4への通電が遮断されても、各シャッタ羽根60、65をこの閉状態にて保持できる。
【0028】
図5は、基板50に設けた撮影用のレンズ開口51に絞り羽根70を位置させて小絞りとした状態を示した図である。この図5は図4の状態からロータ2がさらに時計方向に回転した状態である。尚、図4の状態から図5の状態へのロータ2の回転についての詳細は後述する。
このとき電磁アクチュエータ1は、コイル4への通電により、第1磁極部11にはS極が、第2磁極部12にはN極が発生する。
また、このとき電磁アクチュエータ1のロータ2は、時計方向に回転して、ロータ2のS極は、第2磁極部12と対向し、ロータ2のN極は、第1磁極部11と第2磁極部12との中間に位置している。
尚、このロータ2の位置が、ロータ2の作動範囲の両端位置の他方の位置に該当する。
【0029】
ロータ2のN,S極のそれぞれは、ディテントトルクにより第1、第2磁極11、12に対向する位置に移動しようとして規制部材29により規制された状態で保持される。よって、図5に示す状態でコイル4への通電を行なわなくとも、この各羽根の状態を保持できる。
【0030】
ロータ2の回転に伴って、出力ピン27がこれに連動して回動する。この出力ピン27の回動に伴って第1シャッタ羽根60、第2シャッタ羽根65、絞り羽根70が所定の軌跡を描いて揺動し、第1シャッタ羽根60及び第2シャッタ羽根65はレンズ開口51を開く位置まで遠ざかり、その代わりに絞り羽根70がレンズ開口51を覆う位置にくる。この絞り羽根70は絞り開口75を備えているので、レンズ開口51を小絞りとした状態を実現する。この図5で示す場合もコイル4への通電を遮断しても、各羽根の位置が保持されるので小絞り状態を保持できる。
【0031】
以上のように、第1磁極部11と第2磁極部12との2つの磁極部により、ロータを作動範囲の両端位置と途中位置との3箇所の位置において停止させることができる。
また、図1に示すように、第1磁極部11と第2磁極部12とは、ステータ3の配置されている方向にロータ2の中心から所定の鈍角度θを有している。このため、ステータ3がロータ2の全周を囲う必要がなく、電磁アクチュエータ1の小型化を図ることができる。また、ステータ3の形状を簡易なものとすることができる。
また、図1に示すように、第1磁極部11と第2磁極部12とは、ステータ3の両端部に備えられているので、更に電磁アクチュエータ1を小型化することができる。
【0032】
また、第1シャッタ羽根60、第2シャッタ羽根65、絞り羽根70などから構成される羽根駆動装置は、出力ピン27に連動してレンズ開口51への光量を規制するので、ロータ2は、その停止位置に応じて前記羽根駆動装置によるレンズ開口51への光量の規制量を変化させることができる。これにより、ロータ2は作動範囲の両端位置と途中位置の3箇所の位置において停止されるため、3箇所の停止位置に応じてレンズ開口51への光量の規制量を変化させることができる。従って、小型化された電磁アクチュエータ1により、ロータ2の停止位置に応じてレンズ開口51への光量の規制量を変化させることができるので、小型化されたカメラ用羽根駆動装置を提供できる。
【0033】
次に、図6〜図8を参照して、電磁アクチュエータ1のロータ2が回転する際の様子をより詳細に説明する。尚、コイル4への通電は、電流制御回路25により行なわれるが、これらの図6〜図8では図示を省略している。
図6は、レンズ開口51を全開又は小絞りの状態から全閉の状態に移行する際のロータ2の回転する様子の説明図である。
まず、レンズ開口51を全開の状態から全閉の状態に移行するロータ2の回転について説明する。
【0034】
図6(A)は、レンズ開口51が全開の状態のロータ2を示している。ロータ2は、第1磁極部11及び第2磁極部12からの磁力により、ロータ2を反時計回りに回転させようとするが、規制部材29により回転が規制されている。
このときのロータ2は、S極に励磁されている第1磁極部11がロータ2のN極の略中心と対向し、N極に励磁されている第2磁極部12は、第1磁極部11と対向するN磁極以外の隣接し合う2つの磁極(S極とN極)のそれぞれの中心線S1、N1に挟まれる位置で、ロータ2と対向する。詳細には、第1磁極部11は、N極の中心線から反時計方向に僅かにずれた位置でロータ2と対向する。
また、レンズ開口51が全開の状態の場合には、電流制御回路25は、第1磁極部11及び第2磁極部12の励磁状態をH励磁とする。
【0035】
図6(B)は、レンズ開口51が全閉の状態のロータ2を示している。図6(A)から図6(B)の状態に移行するために、電流制御回路25は、第1磁極部11及び第2磁極部12の励磁状態をH励磁からL励磁に切り替える。ここで、S極からN極へ切り替わった第1磁極部11と、第1磁極部11より時計方向に僅かにずれた位置にあるロータ2のN極とが反発することにより、ロータ2は図6(A)の状態から時計方向に約60°回転し、図6(B)の状態で停止する。
図6(B)に示すように、第1磁極部11は、ロータ2のS極と対向し、第2磁極部12は、ロータ2のN極と対向する。詳細には、第1磁極部11は、ロータ2のS極の中心から、時計方向に僅かにずれた位置で対向し、第2磁極部12は、ロータ2のN極の中心から、反時計方向に僅かにずれた位置で対向する。
【0036】
図6(C)は、レンズ開口51が小絞りの状態のロータ2を示している。
尚、詳しくは後述するがロータ2は、図6(B)の状態から図6(C)の状態に一度の励磁切り替えで移行することはできない。従って、以下には、図6(C)の状態から図6(B)の状態に移行するロータ2の回転について説明する。
【0037】
まず、図6(C)に示すように、電流制御回路25は、第1磁極部11及び第2磁極部12の励磁状態をH励磁とするため、図6(A)の状態と同様に、第1磁極部11はS極に、第2磁極部12がN極に励磁されている。
また、ロータ2は、第1磁極部11及び第2磁極部12からの磁力により、ロータ2を時計回りに回転させようとするが、規制部材29により回転が規制されている。
【0038】
このときのロータ2は、N極に励磁されている第2磁極部12がロータ2のS極の略中心と対向し、S極に励磁されている第1磁極部11は、第2磁極部と対向するS磁極以外の隣接し合う2つの磁極(S極とN極)のそれぞれの中心線S1、N2に挟まれる位置で、ロータ2と対向する。詳細には、第2磁極部12は、S極の中心線から時計方向に僅かにずれた位置で対向する。
【0039】
また、図6(C)から図6(B)の状態に移行するために、電流制御回路25は、第1磁極部11及び第2磁極部12の励磁状態をH励磁からL励磁に切り替える。ここで、N極からS極へ切り替わった第2磁極部12と、第2磁極部12より反時計方向に僅かにずれた位置にあるロータ2のS極とが反発することにより、ロータ2は図6(C)の状態から反時計方向に約60°回転し、図6(B)の状態で停止する。
【0040】
次に、レンズ開口51を全閉の状態から全開の状態に移行する際のロータ2の回転について説明する。
図7は、レンズ開口51を全閉の状態から全開の状態に移行する際のロータ2の回転する様子の説明図である。図7(A)は、レンズ開口51が全閉の状態のロータ2を示している。図7(B)は、レンズ開口51が全開の状態のロータ2を示している。
図7に示すように、電流制御回路25は、第1磁極部11及び第2磁極部12の励磁状態をL励磁からH励磁に切り替えることにより、第1磁極部11はS極へ、第2磁極部12はN極へ切り替わる。ここで、S極へ切り替わった第1磁極部11と、第1磁極部11より反時計方向に僅かにずれた位置にあるロータ2のS極とが、また、N極へ切り替わった第2磁極部12と、第2磁極部12より時計方向に僅かにずれた位置にあるロータ2のN極とが反発し合う状態となる。しかし、第1磁極部11とロータ2とのエアギャップA1は、第2磁極部12とロータ2とのエアギャップA2より小さく設定されているため、第1磁極部11のS極とロータ2のS極との反発力の方が大きくなる。その結果、ロータ2は反時計方向に約60°回転して、規制部材29によりそれ以上の回転が規制される。
【0041】
次に、全閉の状態又は全開の状態から、小絞りの状態に移行する際のロータ2の回転について説明する。
図8は、全閉の状態又は全開の状態から、小絞りの状態に移行する際のロータ2の回転の様子の説明図である。
図8(A)及び図8(C)は、レンズ開口51が全閉の状態のロータ2を示している。図8(B)は、レンズ開口51が全開の状態のロータ2を示している。図8(D)は、レンズ開口51が小絞りの状態のロータ2を示している。
【0042】
まず、図8(A)に示す状態から、図8(B)に示す状態に移行するために、電流制御回路25は、第1磁極部11及び第2磁極部12の励磁状態をL励磁からH励磁に切り替えて、レンズ開口51を全閉の状態から全開の状態としてロータ2を作動範囲の両端位置の一方で停止させる。
【0043】
次に、図8(B)に示す状態から、図8(C)に示す状態に移行するために、電流制御回路25は、第1磁極部11及び第2磁極部12の励磁状態をH励磁からL励磁に切り替える。これにより、ロータ2は、時計方向に約60°回転して、レンズ開口51を全開の状態から全閉の状態に移行する。この移行過程において、ロータ2が全閉状態で停止する前に、電流制御回路25は、L励磁からH励磁に切り替えて、図8(C)の状態から図8(D)の状態に移行する。
【0044】
詳細に説明すると、ロータ2が作動範囲の両端位置の一方の位置(レンズ開口51が全開状態となる位置)から途中位置へ回動する際に、途中位置を越えて作動範囲の他方の位置(レンズ開口が小絞りの状態となる位置)方向へオーバーランし、他方の位置方向に移動している時に、電流制御回路25は、L励磁からH励磁に切り替える。即ち、図8(C)に示す全閉状態において、ロータ2が静安定位置で停止する前に、この静安定位置を越えてオーバーランし、前記一方の位置方向に移動し始める前に、電流制御回路25は、L励磁からH励磁に切り替える。すなわち、S極へ切り替わった第1磁極部11とロータ2のS極との反発力より、N極へ切り替わった第2磁極部12とロータ2のS極との吸着力の方が大きくなるロータ2の位置においてL励磁からH励磁に切り替わっている様に電流制御回路25は電流を制御する。
【0045】
これにより、図8(C)に示す全閉状態から、ロータ2が時計方向に約60°回転し、図8(D)に示す、レンズ開口51が小絞りの状態に移行することができる。
このように、ロータ2に磁力を与える磁極部が、第1磁極部11及び第2磁極部12の、2つの磁極部のみから構成されるものであっても、作動範囲の両端位置と途中位置の3箇所の位置でロータを停止させることができる。
【0046】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0047】
上記実施例において、羽根駆動装置は、レンズ開口51を全開、全閉、小絞りの状態へと移行させることができるが、このような構成に限定されず、例えば、2種類の小絞りの状態を形成することができる羽根を採用して、レンズ開口51を第1小絞り、全開、第2小絞りの状態と移行させる構成を採用してもよい。また、NDフィルタを有する絞り羽根を採用してもよい。
【0048】
上記実施例において、レンズ開口51が全閉又は全開状態から小絞り状態に移行する過程で、全閉状態でロータ2をオーバーランさせて、小絞り状態に移行する形態について説明したが、このような構成に限定されず、例えば、全閉又は小絞り状態から全開の状態に移行する過程で、全閉状態でロータ2をオーバーランさせて、全開の状態に移行するように構成してもよい。
【0049】
上記実施形態において、ロータ2が、その作動範囲の両端位置の一方の位置で停止している場合には、レンズ開口51を全開の状態とし、途中位置では全閉状態とし、作動範囲の両端位置の他方の位置では小絞り状態とする3種類の状態の制御に関して説明したが、このような構成に限定されずに、ロータ2の両端位置、または途中位置と両端位置の一方の位置を使用して全開位置、全閉位置、小絞り位置のうち2つの状態の組み合わせを制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態に係る電磁アクチュエータの主要部の構成を示した図である。
【図2】(A)は基板に対して図1の電磁アクチュエータを配置した様子を平面視で模式的に示した図、(B)は係合ピンの移動軌跡について示した図である。
【図3】基板に設けた撮影用のレンズ開口を全開とした状態について示した図である。
【図4】基板に設けた撮影用のレンズ開口を全閉とした状態について示した図である。
【図5】基板に設けた撮影用のレンズ開口を小絞りとした状態について示した図である。
【図6】レンズ開口51を全開又は小絞りの状態から全閉の状態に移行する際のロータ2の回転する様子の説明図である。
【図7】レンズ開口51を全閉の状態から全開の状態に移行する際のロータ2の回転する様子の説明図である。
【図8】全閉の状態又は全開の状態から小絞りの状態に移行する際のロータ2の回転の様子の説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 電磁アクチュエータ
2 ロータ
3 ステータ
4 第1のコイル
11 第1磁極
12 第2磁極
25 電流制御回路
27 出力ピン
60 第1シャッタ羽根
65 第2シャッタ羽根
70 絞り羽根
73 係合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁用のコイルと、
外周面を周方向に分割し、N極及びS極が交互に4極に着磁されたロータと、
前記コイルが巻回され、前記コイルへの通電により前記ロータを所定の作動範囲の両端位置及び途中位置にて停止させるべく前記ロータに磁力を与える磁極部を有するステータと、を備え、
前記磁極部は、前記ロータの中心から前記ステータが配置されている方向に所定の鈍角度を有して配置された第1及び第2磁極部からなる、
ことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1及び第2磁極部は、前記ステータの両端部に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記所定の鈍角度は、120°±10°である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記磁極部に前記ロータを前記途中位置及び前記両端位置の一方の位置に停止させるための磁極をそれぞれ生じさせる第1及び第2通電状態とに前記コイルへの通電方向を切り替える電流制御回路を備え、
前記電流制御回路は、前記ロータを前記第2通電状態により前記一方の位置に保持し、さらに前記第1通電状態により前記ロータを前記途中位置へ回動させ、前記ロータが、前記途中位置を越えて前記他方の位置方向へオーバーランし、前記他方の位置方向に移動している時に、前記コイルを前記第1通電状態から前記第2通電状態に切り替える、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
撮影用の開口と、
請求項1乃至4の何れかに記載の電磁アクチュエータと、
前記電磁アクチュエータに接続され外部に駆動力を出力するべく前記電磁アクチュエータのロータの回転軸から偏倚して形成された出力ピンと、
前記出力ピンに連動して前記開口への光量を規制する羽根部材と、を備え、
前記ロータは、その停止位置に応じて前記羽根部材による前記開口への光量を変化させる、
ことを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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