電磁エネルギー吸収用のカプセル化されたナノ粒子
【課題】
【解決手段】本発明は電磁波を選択吸収するナノ粒子に関するものである。このナノ粒子は、コアとシェルから構成され、シェルがコアをカプセル化し、コアまたは/およびシェルが導電性材料からなり、この導電性材料は所定のスペクトル帯域で誘電率の負の実数部分を有する。また、このナノ粒子は、(i)コアが第1の導電性材料で、シェルが第1の導電性材料と異なる第2の導電性材料、または/および、(ii)コアまたは/およびシェルが屈折率1.8を超える屈折材料からなる。
【解決手段】本発明は電磁波を選択吸収するナノ粒子に関するものである。このナノ粒子は、コアとシェルから構成され、シェルがコアをカプセル化し、コアまたは/およびシェルが導電性材料からなり、この導電性材料は所定のスペクトル帯域で誘電率の負の実数部分を有する。また、このナノ粒子は、(i)コアが第1の導電性材料で、シェルが第1の導電性材料と異なる第2の導電性材料、または/および、(ii)コアまたは/およびシェルが屈折率1.8を超える屈折材料からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2003年2月25日出願の米国仮出願第60/450,131号の利益を主張する。上記出願の教示の全体は参照により本明細書に引用したものとする。
【0002】
本発明は、小さな粒子による電磁波の選択的吸収に関し、さらに詳細には、選択し所定の電磁波スペクトルの帯域内で、この帯域の外側ではほぼ透明さを維持しながら、強く吸収する固体および液体複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス、プラスチック、ゲル、および粘性のあるローションなどの透明および半透明な材料は、それらの光学的透過特性を変化させるため、長年の間着色剤と組み合わせられてきた。染料や顔料などの薬品は特有のスペクトル帯域内の電磁波を吸収するという、この特性を、それらを溶解し、または分散させる材料に付与している。適切な吸収剤の選択によって、望ましくない光の周波数の透過を遮断する複合材料の製造が容易になる。
【0004】
例えば、ビール瓶は、その内容物を分解から保護するために緑色または茶色を付与する添加剤を含んでいる。任意の様々な染料をプラスチック容器に使用することができるが、ガラス瓶の場合、これらは鉄(II価)酸化物および鉄(III価)酸化物を含んでいる。これらの添加剤の濃度(周囲のキャリア材料に対する重量パーセントで)は一般に非常に高く、1〜5%の範囲である。これはキャリア内への分散費用を高価にし、強い凝塊化傾向に対処するために特殊な混合技術を用いる必要がある。
【0005】
塗料やインクなどの塗工された着色剤は、様々な媒体に所望の外観を与えるために使用され、顔料または染料を適切なキャリアに溶解または分散することによって調製される。また、これらの材料は高濃度の顔料または染料を必要とする傾向があり、太陽光などの長期的な強い電磁波露出からの劣化を受けやすい。従来の顔料の限られた吸収と不均一な粒子の形態は、劣化がなくても色彩の純度を制限する傾向がある。
【0006】
市場の有用な着色剤の大部分は周波数の或る範囲で吸収し、それらのスペクトルは典型的に最大吸収のピーク波長、すなわちλmaxから定常的に減少することが特徴である。ホストキャリア中に混合されると、吸収を望ましくない周波数に対して正確に“微調整”することができないので、それらの材料は全体の透過特性が制限された、かなり暗い複合媒体を形成する傾向がある。例えば、容器として使用すれば、それらの媒体は観察者に対する内容物の視認性が比較的悪くなる。
【0007】
着色剤として働くことのできる粒子形成の従来の手段は、しばしば凝塊化のため均一な粒子サイズを信頼性高く維持することができず、粒子の形成中および/または形成後に沈降を招く。体積に対する表面積の比が非常に大きくなり、接着力がエネルギー低減の機構として凝塊化を促進するという凝塊化の問題は、特に非常に小さな直径の粒子で深刻になる。電磁波吸収が不正確であり、粒子のサイズまたは形態に大きな相関がない従来の使用には適しているが、不均一な粒子は、サイズが性能に直接影響を与えるさらに高性能の用途に使用することはできない。
【0008】
フレーリッヒ(Froelich)またはプラズモン共鳴として知られる、或る種の選択された導電性材料の電磁波吸収特性を利用して、均一な球状のナノサイズ粒子に高度に有利な光学特性を作り出すことができる。例えば、米国特許第5,756,197号を参照されたい。われわれの示したこれらの粒子は、高い吸収と低い吸収の領域の間、すなわち、材料が高度に透明である場合とそれが高度に不透明である場合の間にはっきりした遷移を要求する様々な製品の光学的透過−反射の“制御剤”として使用することができる。多くの適切なナノサイズ球状粒子の重要な特徴は“光学共鳴”であり、或るスペクトル帯域に1を超える“吸収断面積”を形成するために特定波長の電磁波が粒子との相互作用を起す、言い換えれば、粒子によって、実際にその最大断面積上に幾何形状的に吸収されるよりも多くの電磁波を吸収させることができる。従来の顔料は、漸近的にのみ接近できるが、決して1の値を超えない吸収断面積を提供するのに対して、共鳴粒子はその物理的直径を十分過剰に超える(例えば3〜5培)断面積を呈する。
【0009】
不運にも、それらの共鳴粒子の製造に適したほとんどの材料の物理特性は、望ましくないスペクトル帯域に位置する吸収ピークを与える。例えば、多くの金属は電磁波スペクトルの紫外領域にプラズモン共鳴を呈し、したがって、これらの材料は可視範囲の着色剤の製造に使用することができない。キャリアの屈折特性または粒子のサイズを変化させることによって吸収ピークを変化させることができる。しかし、これらの方法の両方とも、粒子による過剰の散乱またはキャリアによる吸収などの望ましくない結果を与えるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、所望のスペクトル帯域にわたって共鳴吸収ピークの微調整を可能にする、等しいサイズの、等しい形状の、および等しい化学物質の、光学的に共鳴する、狭い帯域周波数に応答するナノ粒子複合物とその製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
好ましい一実施形態において、本発明は、外部シェルと内部コアから構成される粒子を含み、コアまたは/およびシェルが導電性材料を含む電磁波吸収材料である。導電性材料は、所定のスペクトル帯域に負の実数部分の誘電率を有する。さらに、(i)コアは第1の導電性材料を含み、シェルは第1の導電性材料と異なる第2の導電性材料を含み、または/および、(ii)コアまたは/およびシェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなる。他の実施形態において、所与の特定材料で内部コア直径が固定されている場合、特定のシェル厚さを選択することによって、スペクトル全域にわたってピーク共鳴を移動することが可能になり、したがってピーク吸収の移動が可能になる。
【0012】
望ましい色彩特性を有する、インク、塗料、ローション、ゲル、フィルム、織物および他の固体は前述の電磁波吸収材料を含んで製造することができる。
【0013】
さらに他の実施形態において、本発明の粒子は、抗体、ペプチド、核酸、糖、脂質、および他の生物学ポリマー並びに小さな分子に付着させることができる。それらの組み立て体は、医学、生物科学、化学検出および同様の用途に使用することができる。
【0014】
本発明の前述のおよび他の目的、特徴および利点は、添付図面に示す、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明で明らかになるであろう。同一の参照符合は異なる図においても同一部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りでなく、代りに本発明の原理を示すために重点が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態の詳細を論じる前に、本明細書に用いられるいくつかの用語を以下のように定義する。
【0016】
電導体は電流が小さな抵抗で流れる物質である。固体(例えば結晶)中の電子および他の自由電荷キャリアは或る許されたエネルギー値を有することができる。これらの値は、電荷キャリアのエネルギースペクトルのレベルを形成する。結晶中で、これらのレベルは帯域として知られる群を形成する。電子および他の自由電荷キャリアはエネルギーを有し、または、いくつかの帯域のエネルギーレベルを占める。固体に電圧が印加されると、電荷キャリアは加速されてより高いエネルギーを獲得する傾向がある。しかし、実際にそのエネルギーを増加させるには、電子などの電荷キャリアは、それが入手可能なより高いエネルギーレベルをもたなければならない。金属などの電導体において、最も高い帯域は部分的にしか電子で埋められない。これは、電子が最も高い帯域のより高いレベルを占めることによってより高いエネルギー値を獲得し、従って自由に動くことを可能にする。純粋な半導体はその最も高い帯域が充填される。半導体は最高帯域全体からいくつかの電子を取り除き、または第1の空帯へいくつかの電子を与える不純物によって導体になる。金属の例は銀、アルミニウム、およびマグネシウムである。半導体の例はSi、Ge、InSb、およびGaAsである。
【0017】
半導体は、バンドギャップとして知られるエネルギー的な距離によって、空帯が充填された帯域から分離されている物質である。比較すれば、金属には占拠された帯域の上にバンドギャップはない。典型的な半導体において、バンドギャップは約3.5eVを超えない。半導体において、電導度はドーパントとして知られる不純物を非常に少量加えることによって大きさを制御することができる。ドーパントの選択によって自由電荷キャリアの種類が制御される。或るドーパントの電子は、最も高い帯域のレベルを用いてエネルギーを得ることができるであろう。いくつかのドーパントは必要な未占拠のエネルギーレベルを提供し、したがって、固体原子の電子により高いエネルギーレベルを獲得させる。それらの半導体において、自由電荷キャリアは負に荷電した電子ではなく、正に荷電した“正孔”である。半導体の特性はIV族の元素、ならびにII、III、V、およびVI族の元素を含む化合物によって表される。例えば、Si、AlP、およびInSbなどである。
【0018】
誘電材料は、電気の不良導体であり、したがって、電気絶縁体として働くことができる。誘電体において、導電帯は完全に空であり、バンドギャップは大きいので電子はより高いエネルギーレベルを得ることができない。したがって、自由電荷キャリアは、存在しても少ない。典型的な誘電体において、導電帯は約4eVを超えるギャップによって価電子帯から分離されている。例えば、磁器(セラミック)、マイカ、ガラス、プラスチック、およびTiO2など様々な金属の酸化物などである。誘電体の重要な特性はしばしば比較的高い値の誘電率である。
【0019】
誘電率は、電気信号、電流、または光波が材料中を移動するその相対的な速度を決定する金属特性である。電流または波の速度は誘電率の平方根の逆数にほぼ比例する。低い誘電率は高い伝播速度をもたらし、高い誘電率ははるかに低い伝播速度をもたらすであろう。(多くの点で誘電率は水の粘性に類似している)。一般に、誘電率は複素数であり、実数部分は反射性表面の特性を与え、虚数部分は電磁波吸収係数を与え、媒体への電磁波の浸透深さを決定する値である。
【0020】
屈折は、1つの媒体から伝播速度の異なる他の媒体を通過する際の伝播波の波面に垂直な屈曲である。屈折はプリズムが白色光をその構成色彩に分離する理由である。これは光の異なる色彩(すなわち周波数または波長)が異なる速度でプリズム中を移動し、異なる色彩によって波面の偏り量が異なるためである。屈折量は屈折率として知られる量で特徴付けることができる。屈折率は誘電率の平方根に正比例する。
【0021】
全反射。異なる屈折率の2種の透明な媒体間の界面(ガラスと水)で、より高い屈折率の側から来る光は一部反射し、一部屈折する。入射が或る臨界角度を超えると光は界面で屈折せず、全反射が観察される。
【0022】
プラズモン(フレーリッヒ)共鳴。本明細書に使用されるプラズモン(フレーリッヒ)共鳴は、光が本発明の粒子などの導電性材料の表面に入射するときに起きる現象である。共鳴条件が満たされるとき、粒子の内部の光の強度は外部よりはるかに大きい。金属または金属窒化物などの電導体は電磁放射を強く吸収するので、ある波長またはその近傍の光波は共鳴的に吸収される。この現象は、吸収が電磁波とプラズモンとして知られる複数の自由電荷キャリアの間の共鳴エネルギーの移動によるものなので、プラズモン共鳴と呼ばれる。共鳴条件は導電性材料の組成物によって影響を受ける。
【0023】
フレーリッヒ(プラズモン)共鳴の簡単な説明
ここで重要な特性は、多くの導体において、誘電率の実数部分が紫外および可視周波数において負であることである。この効果の原因は知られており、高周波の電場における自由導電電子が振動の動きを示すことである。拘束されない電子では、この電子の動きは電場と180度外れた位相である。この現象は多くの共鳴器、簡単な機械的共鳴器でさえよく知られている。機械的に例えると、急速に前後に動いている手に弱いゴムバンドで取り付けられたテニスボールの動きによって示される。手が仮想上のx−軸上でその最大の正の偏位にあるとき、テニスボールは同じ軸上でその最大の負の偏位にあり、かつその逆でもある。
【0024】
高周波電場中に弱く拘束された、または拘束されない電子は、基本的にテニスボールと同じような動作を行う。電子分極、すなわち外部の場に対する電子の応答性の尺度は、したがって負である。分極はε−1に比例することが基本的な静電気学において知られている、ここでεはいわゆる“誘電率”(実際に、外部場の波長、または周波数の関数)であるので、εは1よりも小さいはずであり、実際に負になることさえできる。
【0025】
上述のように、誘電率は複素数であり、屈折率に比例する。金属の光学定数表には、通常屈折率の実数と虚数部分、NとKが波長の関数として表記されているのが見られる。
【0026】
誘電率は屈折率の平方、すなわち、
【数1】
【0027】
よって、
【数2】
【数3】
であり、したがって、KがNよりも大きいときεrealは負であることが分かる。
【0028】
上で述べた光学定数表を見れば、実際にしばしばこの条件を満足することが分かる。
【0029】
また、静電近似を用いて小さな誘電体球内部の電場を予測することが可能である。入射する電磁波の波長が球の半径よりもはるかに大きい場合を想定する。この場合、球は電場で取り囲まれ、電場は球全体にわたってほぼ一定である。基本的な静電気学から、球内部の場の大きさを求める。
【0030】
【数4】
式中、Eoutsideは周囲の場であり、Einsideは球内部の場であり、εoutsideとεinsideはそれぞれ球内部と周囲の媒体の相対的な誘電率である。
【0031】
上の式から、球内部の場は、
【数5】
が満たされるならば、無限大になるであろうことは明らかである。誘電率は実数ではないので、場は大きくなるが無限ではない。
【0032】
光波の一部である振動電場の場合、無論その大きな場も、相応して金属による大きな吸収をもたらすであろう。この場の強化は金属ナノ粒子中に生成される強い吸収ピークを引き起こす。複素数の誘電率を考慮して、誘電率の虚数部分が小さいと仮定すれば、概略の吸収断面積を計算することができる。
【0033】
いくつかのステップを省略し、断面積Qabsとして、
【数6】
が見出される。上の式中、εmediumは媒体の誘電率であり、εrealおよびεimagは金属球の誘電率の実数部分および虚数部分である。
【0034】
xの量は、
【数7】
で与えられる。式中、rは球の半径であり、λは波長である。
【0035】
再び、分母部分の括弧の中がゼロになるとき、最大吸収が予測される。明瞭かつ明確に線引きされた吸収領域で吸収の値が大きいと、εimagは小さく留まるはずである。最大吸収波長は媒体の誘電率が変化するとき移動することが分かる。これは所与の導体について色彩を微調整するひとつの方法である。
【0036】
異なる材料について、εrealは異なる関数であるので、プラズモン効果による共鳴吸収は、図1に示すように異なる波長で起きる。図1はフレーリッヒ共鳴を示す3種類の金属窒化物の実数誘電率を示す。フレーリッヒ共鳴周波数は、イプシロン(実数)曲線が“−2ε(媒体)”と表記した線と交差するところの位置で求められる。
【0037】
粒子の形状およびサイズ。
粒子の形状は重要である。ディスクなどの扁球な粒子の内部の場は、その粒子の外部の場に対して球形状粒子内部の場とは大きく異なる。
【0038】
ディスクが場の線方向に垂直にあれば、
【数8】
である。
【0039】
ここで、それらの波長で大きな吸収を伴う共鳴が起き、
【数9】
であろう。
【0040】
ディスクが薄く、場に整列しているならば、
【数10】
であり、特異ではなく、したがって共鳴は全く起きないであろう。
【0041】
一般に、異方性吸収効果を防止するために、粒子の形状はほぼ球状であることが好ましい。
【0042】
粒子サイズに起因する吸収波長の小さな移動がある。粒子がより大きくなると、前記の単純な仮説は壊れる。実証するまでもなく、粒子サイズの増加は吸収ピークを僅かに赤色、すなわちより長い波長へ向けて移動させる。外側の層が入射する共鳴電磁波を既に吸収して、球の最も内側の部分を占める材料はそれらが吸収するはずの光に全く遭遇しないので、より大きな粒子は吸収体としての効果が少なくなる。より大きな球では共鳴特性は徐々に消滅する。吸収および消光断面積は、球のサイズの成長とともに明確でなくなる。吸収および特に消光も、赤色、すなわちより長波長へより大きく移動する。
【0043】
吸収断面積の挙動のさらに他の例は、ZrNの吸収断面積の半径と波長に対してプロットした三次元図を示す、図2の三次元図を参照されたい。実際に最適粒子サイズを求めるには、透過、吸収、および消光をプロットすることが最善である。吸収断面積は小さな粒子で減少するが、大きな粒子よりも単位重量当たりにはより多くの小さな粒子が存在する。興味深いことに、所与の総質量の小さな粒子は、同じ総質量を有するいくらか大きな粒子と同じほど吸収するようである。最も重要なことに、小さな粒子は散乱しない。これらの点は図3でTiNについて示され、N=1.33の屈折率を有する溶液1cm3中に懸濁させた1gのTiN球の吸収係数を示している。小さな粒子は最善の吸収を与え、約0.025マイクロメートルの臨界半径以下では粒子がいかに小さくてもかまわない。
【0044】
媒体の効果
また、本発明の粒子を運ぶ媒体の誘電率に応じた吸収の移動もある。
【0045】
ドルーデ(Drude)理論は、誘電率の実数部分の近似値を与え、
【数11】
で変化する。式中、νplasmaはいわゆるプラズマ周波数であり、νは光波の周波数である。
【0046】
プラズマ周波数は通常スペクトルの紫外部分のどこかにある。金の球は5200A近傍に吸収ピークを有する。やはり金色に見えるTiN、ZrN、およびHfNは、以下に示すように、より短波長およびより長波長にピークを有する。TiNコロイドは、緑色と赤色の吸収のため青色を呈するように見えた。
【0047】
誘電率の上述の挙動は、媒体の誘電率を変化させたとき、吸収ピークがどれほど移動するかの予測を可能にする。
【0048】
上記の式の一次までの単純なテイラー級数展開を用いて、
【数12】
が得られる。
【0049】
最大吸収が6000Aで起き、媒体の誘電率を0.25倍増加させれば、吸収ピークは6500Aへ500A移動する。誘電率を減少させれば、吸収はより短い波長へ移動する。この点は図4に示されており、1、1.33、および1.6の異なる屈折率を有する3種類の媒体中の半径50nmのTiN球の吸収断面積を示す。
【0050】
本発明の好ましい実施形態
本発明は、選択された所定の電磁スペクトル部分を選択的に吸収し、この領域の外側をほぼ透明に保つことの可能な複合材料に関する。さらに詳細には、好ましい実施形態において、本発明は小さな粒子を提供し、該粒子は内部コアと外部シェルを有し、シェルはコアをカプセル化し、コアまたは/およびシェルが導電性材料を含む。導電性材料は、所定のスペクトル帯域において、誘電率の負の実数部分を有することが好ましい。さらに、(i)コアは第1の導電性材料を含み、シェルは第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、または/および、(ii)コアまたは/およびシェルが約1.8を超える高い屈折率を有する屈折材料からなる。
【0051】
例えば、一実施形態において、本発明の粒子は、導電性材料から作られたコアと、高屈折率材料を含むシェルを含む。他の実施形態において、粒子は高屈折率材料のコアと導電性材料のシェルを含む。さらに他の実施形態において、本発明の粒子は、第1の導電性材料を含むコアと、第2導電性材料を含むシェルを含み、第2導電性材料は第1導電性材料とは異なる。
【0052】
好ましい一実施形態において、粒子は所定のスペクトル帯域中に1よりも大きな吸収断面積を示す。他の実施形態において、粒子は約1nm〜約300nmの直径を有する球状またはほぼ球状である。好ましいシェルの厚さは約0.1nm〜約20nmである。
【0053】
約1.8を超える屈折率を有する任意の材料、および望ましいスペクトル帯域中に誘電率の負の実数部分を有する任意の材料を本発明の実施に使用することができる。好ましい実施形態において、これらの材料は、Ag、Al、Mg、Cu、Ni、Cr、TiN、ZrN、HfN、Si、TiO2、ZrO2等を含む。
【0054】
所定のスペクトル帯域での共鳴吸収の移動は、一実施形態においてシェルの厚さを変化させることによって、および他の実施形態においてシェルおよび/またはコアの材料を変化させることによって達成される。さらに他の実施形態では、両方とも変化させることができる。
【0055】
他の実施形態において、粒子の全体的な直径を同じに保ち、シェルの厚さとコアの直径を選択して所望の共鳴を達成する。導電性コアと高屈折率シェルを含む粒子において、シェルの厚さを調整して、紫外または可視スペクトル帯域でのピーク吸収を“赤”色の方に移動することができる。これは図5に示されており、様々な厚さ(1、5、および10nm)の高屈折材料(酸化チタン)で被覆した一定の半径(20nm)の金属(銀)コアについて、吸収(実線)と消光(点線)断面積を示す。
【0056】
上記のように、大部分の金属はそのプラズモン共鳴周波数を紫外線帯域に有する。これは、高屈折率コアと導電性シェルを含む粒子において、シェルの厚さを調整し、すなわち、ピーク吸収を可視および紫外スペクトル帯域へ移動させることを可能にする。これは図6に示されており、半径を40nmに固定し、厚さを1〜6nmに変化する銀のシェルで被覆した、TiO2のコアについての吸収(実線)と消光(点線)断面積を示す。
【0057】
コア中に1種類、シェル中に他の種類の、2種類の導電性材料を使用すれば、通常、粒子は各導電材料のピークの間にある波長で共鳴吸収を有するであろう。これは、コアとシェルの材料を選択することによって、および/またはコアの直径に対するシェルの厚さの比を調整することによって、可視および紫外帯域の両方でいずれの方向にも吸収のピークを移動させることを可能にする。例えば、TiNはその共鳴ピークを可視帯域に有するが、銀は紫外線帯域に共鳴吸収を示す。図7に、1nmまたは2nmのいずれかの厚さの銀シェルで被覆した半径20nmのTiN球についての吸収(実線)と消光(点線)断面積を示したように、銀シェルの厚さを調節することによってピークはより短波長へ移動する。
【0058】
図8は逆の効果を示しており、銀シェルの厚さを2nmに一定に保ちながら、TiNコアの半径を調整する(40nm、60nm、80nm)ことによって、吸収(実線)と消光(点線)断面積はより長波長に向かって移動する。
【0059】
図9はアルミニウムコアとZrNシェルを含む粒子についての吸収(実線)と消光(点線)断面積を示し、全体の粒子直径を一定に保ちながらコア直径に対するシェル厚さの比を変化させることによって、ピーク吸収の移動をいかにして得ることができるかを示す。アルミニウムのコアは15nmまたは11nmのいずれかの半径を有し、ZrNのシェルは8nmまたは12nmのいずれかの厚さを有する。
【0060】
以下に説明する図において、実線は吸収を表し、点線は消光を表す。
【0061】
図10は、半径22nm、ケイ素シェルで被覆したZrNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0、1、2、3、および4nmの厚さである。
【0062】
図11は、半径22nm、酸化チタンシェルで被覆したZrNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0nm、5nm、および10nmの厚さである。媒体の屈折率は1.33である。
【0063】
図12は、半径22nm、銀シェルで被覆したZrNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。移動はより短波長に向かう。シェルは、0nm、1nm、および2nmの厚さである。
【0064】
図13は、半径22nm、アルミニウムシェルで被覆したZrNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。移動はより短波長に向かう。シェルは、0nm、1nm、および2nmの厚さである。
【0065】
図14は、半径20nm、ケイ素シェルで被覆したTiNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0nm、1nm、2nm、および3nmの厚さである。
【0066】
図15は、半径20nm、酸化チタンシェルで被覆したTiNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0nm、1nm、3nm、および5nmの厚さである。
【0067】
図16は、半径22nm、ケイ素シェルで被覆したアルミニウムコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、2nm、4nm、8nm、12nm、18nmの厚さである。
【0068】
図17は、半径22nm、ケイ素シェルで被覆した銀コアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0nm、2nm、4nm、6nm、10nmの厚さである。
【0069】
図18は、クロム金属の共鳴がそれをZrNで被覆することによって可視帯域へ移動できることを示す。Cr球は半径20nm、シェルは6nmまたは10nmの厚さである。媒体はN=1.33を有する。
【0070】
図19は、半径22nm、結晶質ケイ素の層で被覆したマグネシウム球が、可視スペクトルに吸収ピークを与えることを示す。シェルは2nm、4nm、6nm、10nm、および14nmの厚さである。媒体の屈折率は、粗い点線がN=1.5である以外、N=1.33である。
【0071】
用途
本発明は、紫外線遮断剤、色フィルター、インク、塗料、ローション、ゲル、フィルム、および固体材料を含む広範囲の用途において用いることができる。
【0072】
本発明の粒子による電磁波吸収の共鳴性質は、(a)1を超える吸収断面積、(b)狭い帯域周波数応答をもたらすことができることに注目すべきである。これらの特性は、粒子の“光学的サイズ”をその物理的サイズよりも大きくし、着色剤の充填率を低くできる。また、小さなサイズは望ましくない電磁波散乱を低減する。低い充填率は使用において経済的である。狭い帯域周波数応答は優れた品質のフィルターおよび選択性遮断剤を可能にする。本発明の粒子に基づく顔料は、紫外線誘発の劣化を受けず、耐光性があり、毒性がなく、化学物質に抵抗性があり、高温に安定であり、発癌性がない。
【0073】
本発明の粒子は、本明細書において約200nm〜約400nmの波長の電磁波と定義される紫外(UV)帯域から、本明細書において約400nm〜約700nmの波長の電磁波と定義される可視帯域(VIS)までの電磁波の広いスペクトルを遮断するのに用いることができる。非制限的な例として、本発明の粒子は、ガラス、ポリエチレン、またはポリプロピレンなど、むしろ透明なキャリ中に分散することができる。得られる電磁波吸収材料は、可視帯域で良好な透明度を維持しながら、紫外線を吸収するであろう。それらの電磁波吸収材料から製造される容器は、例えば、紫外線感受性材料、化合物、または食品の貯蔵に使用することができる。
【0074】
金属を含むコアおよびシェルは紫外線帯域で吸収する粒子を製造するのに使用することができる。代りに、電磁波吸収材料から製造されたフィルムはコーティング材として使用することができる。
【0075】
波長に特有の強い吸収特性を備える粒子は、インクおよび塗料組成物に使用するための優れた顔料を作る。色彩は、白色光が、狭い帯域の周波数を選択的に吸収する材料を通過する、または反射するとき形成される。すなわち、TiN、HfN、およびZrNなどの優れた導電性材料、ならびに他の金属や高屈折率誘電材料を含むコアおよびシェルは、可視帯域に吸収する粒子を製造するのに使用することができ、したがって顔料として有用になる。表1は、本発明の粒子を用いることによって達成することのできる非制限的な色彩の例を提供する。
【0076】
【表1】
【0077】
本発明の粒子用の適切なキャリアは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリラート、ポリスチレン、およびそのコポリマーを含む。
【0078】
本発明は、前記のインクまたは塗料を含むフィルムまたはゲルを意図している。
【0079】
本発明の粒子は、粒子間の最小距離を保証するため、さらにビーズに埋め込むことができる。ビーズは透明な球状プラスチックまたはガラスビーズ中に個々に埋め込むことが好ましい。次いで、個々の粒子を含むビーズは適切なキャリア材料に分散することができる。
【0080】
また、本発明の粒子は効率の高い紫外線フィルターとして使用することもできる。従来のフィルターはしばしば“撫で肩”スペクトル吸収を起し、それによって望ましい帯域とともにかなり大きな割合で望ましくない周波数帯域が吸収される。本発明の粒子は、共鳴吸収のおかげで、選択的吸収を達成するための優れた機構を提供する。本発明の粒子をガラスまたはプラスチックなどの適切なキャリア中に分散することによって、あるいは、所望の材料を本発明の粒子を含むフィルムで被覆することによって、色フィルターを製造することができる。
【0081】
同じキャリア材料内に異なる種類の粒子を組み合わせることも本発明で意図されている。
【0082】
本発明の粒子は、細胞汚染、免疫検出、および拮抗的な結合検定などの生物医学的な用途に用いられる信号発生体として使用することができる。非制限的な例として、粒子を抗体に共有的に付着させることができる。それらの組成物は組織のサンプルに接触させ、白色光で照射することができる。所定の周波数帯域の粒子の吸収によって発生する可視信号は、顕微鏡検査など当技術分野で公知の標準的技術によって検出することができる。当業者であれば、抗体以外の物質も本発明の粒子に共有的に付着させることができることを理解するであろう。ペプチド、核酸、糖、脂質、および小さな分子は本発明の粒子に付着可能であることが意図されている。
【0083】
前記の用途に使用するのに適した粒子は、様々な商業過程によって製造することができるが、われわれは気相形成方法を発明した。この方法は米国特許第5,879,518号、および米国仮出願第60/427,088号に記載されている。
【0084】
図20に概要が示されているこの方法は、加熱された壁で覆われている真空チャンバーを用い、その中でコアを製造するのに使用される材料を球として蒸発させ、低温的に氷の塊の中に凍結される前にカプセル化し、後で収集される。正確な化学量論的単一分散(均一なサイズの)粒子および正確なカプセル厚さに達するための制御手段は、層流量比、温度、ガス速度、圧力、供給源からの膨張速度、およびガス混合物の組成物パーセントが関連する。
【0085】
図21を参照すれば、好ましい実施形態において、例としてチタンの供給を用いることができる。チタンまたは他の金属材料は、CO2レーザを入射することによってその面で蒸発し、金属の蒸気を形成する。これらの蒸気の形成は、振幅漸増の機械的ピークエネルギーを供給することによって溶融表面に音響表面波を確立し、蒸気の放出を容易にすることによって、より狭いサイズの制御の助けになる。
【0086】
供給棒は、その表面層が蒸気を形成するように、一様に前進させる。蒸気は、中央蒸発領域で無線周波数(RF)の場(約13.6MHzで約2kV)によってイオン化される、流入する窒素ガス(N2)によって吹き払われる。原子窒素の種である“N+”は金属蒸気と反応し、供給棒の材料に応じて、それらをTiN、またはZrNもしくはHfNなどの他の金属窒化物へ変化させる。
【0087】
真空の差圧と円錐形の円形開口部中の同時放射状ガス流のため、粒子は、最小の衝突でアルゴンの上流へ動いて、ガスを“凍結”して固化し、粒子が埋め込まれた氷の塊を形成するいくつかの交番低温ポンプに到達する。
【0088】
粒子形成のステップは図22に示されている。ここで、われわれは金属窒化物を形成するために金属蒸気と原子窒素ガスから開始する。粒子に一時的な電荷を与えることによって、それらを分離したままにすることができ、したがって、窒化物コアの周りに薄いシェルの成長を開始する間、衝突を防止することができる。非制限的な例として、ケイ素またはTiO2を使用することができ、シェルの厚さはシランガス(SiH4)またはTiCl4と酸素の混合物のそれぞれの供給速度によって制御される。
【0089】
後続の通路ゾーンにおいて、シランガスまたはTiCl4/O2混合物はまだ熱いナノ粒子上に凝結して、各個々の粒子の周りにSiO2またはTiO2の球状包を形成する。
【0090】
必要であれば、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)などの界面活性剤の立体障害層をビーズ上に堆積させ、例えば、油またはポリマーなど選択したキャリア全体に均一に分散した粒子を保つことができる。他の界面活性剤は水懸濁に使用することができる。
【0091】
この製造方法で、様々なカプセル化したナノ粒子を大量に製造することができ、単一の工程ステップで所望の共鳴吸収粒子が形成され、その回収性およびその均一なサイズを保証する。
【0092】
本発明をその好ましい実施形態を参照して詳細に示し説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の技術的範囲を逸脱することなく、形態および細部について様々な変更が可能であることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】TiN、HfN、およびZrNの誘電率の実数部分を波長の関数として示す図である。
【図2】ZrN球の吸収断面積を半径と波長の両方の関数として示す三次元図である。
【図3】TiN球の特定量の吸収を半径および波長の両方の関数として示す三次元図である
【図4】異なる屈折率を有する3種の異なる媒体中におけるTiN球の吸収断面積の図である。
【図5】銀コアおよび酸化チタンシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図6】酸化チタンコアおよび銀シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図7】窒化チタンコア(半径 一定)および銀シェル(厚さ 可変)を有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図8】窒化チタンコア(半径 可変)および銀シェル(厚さ 一定)を有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図9】アルミニウムコアおよび窒化ジルコニウムシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図10】ZrNコアおよびSiシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図11】ZrNコアおよび酸化チタンシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図12】ZrNコアおよび銀シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図13】ZrNコアおよびアルミニウムシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図14】TiNコアおよびケイ素シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図15】TiNコアおよび酸化チタンシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図16】アルミニウムコアおよびケイ素シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図17】銀コアおよびケイ素シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図18】マグネシウムコアおよびケイ素シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図19】クロムコアおよびZrNシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図20】本発明の粒子の製造に用いることのできる製造工程の概要図である。
【図21】ナノ粒子製造システムの詳細を示す概要図である。
【図22】粒子形成のステップ図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は2003年2月25日出願の米国仮出願第60/450,131号の利益を主張する。上記出願の教示の全体は参照により本明細書に引用したものとする。
【0002】
本発明は、小さな粒子による電磁波の選択的吸収に関し、さらに詳細には、選択し所定の電磁波スペクトルの帯域内で、この帯域の外側ではほぼ透明さを維持しながら、強く吸収する固体および液体複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス、プラスチック、ゲル、および粘性のあるローションなどの透明および半透明な材料は、それらの光学的透過特性を変化させるため、長年の間着色剤と組み合わせられてきた。染料や顔料などの薬品は特有のスペクトル帯域内の電磁波を吸収するという、この特性を、それらを溶解し、または分散させる材料に付与している。適切な吸収剤の選択によって、望ましくない光の周波数の透過を遮断する複合材料の製造が容易になる。
【0004】
例えば、ビール瓶は、その内容物を分解から保護するために緑色または茶色を付与する添加剤を含んでいる。任意の様々な染料をプラスチック容器に使用することができるが、ガラス瓶の場合、これらは鉄(II価)酸化物および鉄(III価)酸化物を含んでいる。これらの添加剤の濃度(周囲のキャリア材料に対する重量パーセントで)は一般に非常に高く、1〜5%の範囲である。これはキャリア内への分散費用を高価にし、強い凝塊化傾向に対処するために特殊な混合技術を用いる必要がある。
【0005】
塗料やインクなどの塗工された着色剤は、様々な媒体に所望の外観を与えるために使用され、顔料または染料を適切なキャリアに溶解または分散することによって調製される。また、これらの材料は高濃度の顔料または染料を必要とする傾向があり、太陽光などの長期的な強い電磁波露出からの劣化を受けやすい。従来の顔料の限られた吸収と不均一な粒子の形態は、劣化がなくても色彩の純度を制限する傾向がある。
【0006】
市場の有用な着色剤の大部分は周波数の或る範囲で吸収し、それらのスペクトルは典型的に最大吸収のピーク波長、すなわちλmaxから定常的に減少することが特徴である。ホストキャリア中に混合されると、吸収を望ましくない周波数に対して正確に“微調整”することができないので、それらの材料は全体の透過特性が制限された、かなり暗い複合媒体を形成する傾向がある。例えば、容器として使用すれば、それらの媒体は観察者に対する内容物の視認性が比較的悪くなる。
【0007】
着色剤として働くことのできる粒子形成の従来の手段は、しばしば凝塊化のため均一な粒子サイズを信頼性高く維持することができず、粒子の形成中および/または形成後に沈降を招く。体積に対する表面積の比が非常に大きくなり、接着力がエネルギー低減の機構として凝塊化を促進するという凝塊化の問題は、特に非常に小さな直径の粒子で深刻になる。電磁波吸収が不正確であり、粒子のサイズまたは形態に大きな相関がない従来の使用には適しているが、不均一な粒子は、サイズが性能に直接影響を与えるさらに高性能の用途に使用することはできない。
【0008】
フレーリッヒ(Froelich)またはプラズモン共鳴として知られる、或る種の選択された導電性材料の電磁波吸収特性を利用して、均一な球状のナノサイズ粒子に高度に有利な光学特性を作り出すことができる。例えば、米国特許第5,756,197号を参照されたい。われわれの示したこれらの粒子は、高い吸収と低い吸収の領域の間、すなわち、材料が高度に透明である場合とそれが高度に不透明である場合の間にはっきりした遷移を要求する様々な製品の光学的透過−反射の“制御剤”として使用することができる。多くの適切なナノサイズ球状粒子の重要な特徴は“光学共鳴”であり、或るスペクトル帯域に1を超える“吸収断面積”を形成するために特定波長の電磁波が粒子との相互作用を起す、言い換えれば、粒子によって、実際にその最大断面積上に幾何形状的に吸収されるよりも多くの電磁波を吸収させることができる。従来の顔料は、漸近的にのみ接近できるが、決して1の値を超えない吸収断面積を提供するのに対して、共鳴粒子はその物理的直径を十分過剰に超える(例えば3〜5培)断面積を呈する。
【0009】
不運にも、それらの共鳴粒子の製造に適したほとんどの材料の物理特性は、望ましくないスペクトル帯域に位置する吸収ピークを与える。例えば、多くの金属は電磁波スペクトルの紫外領域にプラズモン共鳴を呈し、したがって、これらの材料は可視範囲の着色剤の製造に使用することができない。キャリアの屈折特性または粒子のサイズを変化させることによって吸収ピークを変化させることができる。しかし、これらの方法の両方とも、粒子による過剰の散乱またはキャリアによる吸収などの望ましくない結果を与えるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、所望のスペクトル帯域にわたって共鳴吸収ピークの微調整を可能にする、等しいサイズの、等しい形状の、および等しい化学物質の、光学的に共鳴する、狭い帯域周波数に応答するナノ粒子複合物とその製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
好ましい一実施形態において、本発明は、外部シェルと内部コアから構成される粒子を含み、コアまたは/およびシェルが導電性材料を含む電磁波吸収材料である。導電性材料は、所定のスペクトル帯域に負の実数部分の誘電率を有する。さらに、(i)コアは第1の導電性材料を含み、シェルは第1の導電性材料と異なる第2の導電性材料を含み、または/および、(ii)コアまたは/およびシェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなる。他の実施形態において、所与の特定材料で内部コア直径が固定されている場合、特定のシェル厚さを選択することによって、スペクトル全域にわたってピーク共鳴を移動することが可能になり、したがってピーク吸収の移動が可能になる。
【0012】
望ましい色彩特性を有する、インク、塗料、ローション、ゲル、フィルム、織物および他の固体は前述の電磁波吸収材料を含んで製造することができる。
【0013】
さらに他の実施形態において、本発明の粒子は、抗体、ペプチド、核酸、糖、脂質、および他の生物学ポリマー並びに小さな分子に付着させることができる。それらの組み立て体は、医学、生物科学、化学検出および同様の用途に使用することができる。
【0014】
本発明の前述のおよび他の目的、特徴および利点は、添付図面に示す、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明で明らかになるであろう。同一の参照符合は異なる図においても同一部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りでなく、代りに本発明の原理を示すために重点が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態の詳細を論じる前に、本明細書に用いられるいくつかの用語を以下のように定義する。
【0016】
電導体は電流が小さな抵抗で流れる物質である。固体(例えば結晶)中の電子および他の自由電荷キャリアは或る許されたエネルギー値を有することができる。これらの値は、電荷キャリアのエネルギースペクトルのレベルを形成する。結晶中で、これらのレベルは帯域として知られる群を形成する。電子および他の自由電荷キャリアはエネルギーを有し、または、いくつかの帯域のエネルギーレベルを占める。固体に電圧が印加されると、電荷キャリアは加速されてより高いエネルギーを獲得する傾向がある。しかし、実際にそのエネルギーを増加させるには、電子などの電荷キャリアは、それが入手可能なより高いエネルギーレベルをもたなければならない。金属などの電導体において、最も高い帯域は部分的にしか電子で埋められない。これは、電子が最も高い帯域のより高いレベルを占めることによってより高いエネルギー値を獲得し、従って自由に動くことを可能にする。純粋な半導体はその最も高い帯域が充填される。半導体は最高帯域全体からいくつかの電子を取り除き、または第1の空帯へいくつかの電子を与える不純物によって導体になる。金属の例は銀、アルミニウム、およびマグネシウムである。半導体の例はSi、Ge、InSb、およびGaAsである。
【0017】
半導体は、バンドギャップとして知られるエネルギー的な距離によって、空帯が充填された帯域から分離されている物質である。比較すれば、金属には占拠された帯域の上にバンドギャップはない。典型的な半導体において、バンドギャップは約3.5eVを超えない。半導体において、電導度はドーパントとして知られる不純物を非常に少量加えることによって大きさを制御することができる。ドーパントの選択によって自由電荷キャリアの種類が制御される。或るドーパントの電子は、最も高い帯域のレベルを用いてエネルギーを得ることができるであろう。いくつかのドーパントは必要な未占拠のエネルギーレベルを提供し、したがって、固体原子の電子により高いエネルギーレベルを獲得させる。それらの半導体において、自由電荷キャリアは負に荷電した電子ではなく、正に荷電した“正孔”である。半導体の特性はIV族の元素、ならびにII、III、V、およびVI族の元素を含む化合物によって表される。例えば、Si、AlP、およびInSbなどである。
【0018】
誘電材料は、電気の不良導体であり、したがって、電気絶縁体として働くことができる。誘電体において、導電帯は完全に空であり、バンドギャップは大きいので電子はより高いエネルギーレベルを得ることができない。したがって、自由電荷キャリアは、存在しても少ない。典型的な誘電体において、導電帯は約4eVを超えるギャップによって価電子帯から分離されている。例えば、磁器(セラミック)、マイカ、ガラス、プラスチック、およびTiO2など様々な金属の酸化物などである。誘電体の重要な特性はしばしば比較的高い値の誘電率である。
【0019】
誘電率は、電気信号、電流、または光波が材料中を移動するその相対的な速度を決定する金属特性である。電流または波の速度は誘電率の平方根の逆数にほぼ比例する。低い誘電率は高い伝播速度をもたらし、高い誘電率ははるかに低い伝播速度をもたらすであろう。(多くの点で誘電率は水の粘性に類似している)。一般に、誘電率は複素数であり、実数部分は反射性表面の特性を与え、虚数部分は電磁波吸収係数を与え、媒体への電磁波の浸透深さを決定する値である。
【0020】
屈折は、1つの媒体から伝播速度の異なる他の媒体を通過する際の伝播波の波面に垂直な屈曲である。屈折はプリズムが白色光をその構成色彩に分離する理由である。これは光の異なる色彩(すなわち周波数または波長)が異なる速度でプリズム中を移動し、異なる色彩によって波面の偏り量が異なるためである。屈折量は屈折率として知られる量で特徴付けることができる。屈折率は誘電率の平方根に正比例する。
【0021】
全反射。異なる屈折率の2種の透明な媒体間の界面(ガラスと水)で、より高い屈折率の側から来る光は一部反射し、一部屈折する。入射が或る臨界角度を超えると光は界面で屈折せず、全反射が観察される。
【0022】
プラズモン(フレーリッヒ)共鳴。本明細書に使用されるプラズモン(フレーリッヒ)共鳴は、光が本発明の粒子などの導電性材料の表面に入射するときに起きる現象である。共鳴条件が満たされるとき、粒子の内部の光の強度は外部よりはるかに大きい。金属または金属窒化物などの電導体は電磁放射を強く吸収するので、ある波長またはその近傍の光波は共鳴的に吸収される。この現象は、吸収が電磁波とプラズモンとして知られる複数の自由電荷キャリアの間の共鳴エネルギーの移動によるものなので、プラズモン共鳴と呼ばれる。共鳴条件は導電性材料の組成物によって影響を受ける。
【0023】
フレーリッヒ(プラズモン)共鳴の簡単な説明
ここで重要な特性は、多くの導体において、誘電率の実数部分が紫外および可視周波数において負であることである。この効果の原因は知られており、高周波の電場における自由導電電子が振動の動きを示すことである。拘束されない電子では、この電子の動きは電場と180度外れた位相である。この現象は多くの共鳴器、簡単な機械的共鳴器でさえよく知られている。機械的に例えると、急速に前後に動いている手に弱いゴムバンドで取り付けられたテニスボールの動きによって示される。手が仮想上のx−軸上でその最大の正の偏位にあるとき、テニスボールは同じ軸上でその最大の負の偏位にあり、かつその逆でもある。
【0024】
高周波電場中に弱く拘束された、または拘束されない電子は、基本的にテニスボールと同じような動作を行う。電子分極、すなわち外部の場に対する電子の応答性の尺度は、したがって負である。分極はε−1に比例することが基本的な静電気学において知られている、ここでεはいわゆる“誘電率”(実際に、外部場の波長、または周波数の関数)であるので、εは1よりも小さいはずであり、実際に負になることさえできる。
【0025】
上述のように、誘電率は複素数であり、屈折率に比例する。金属の光学定数表には、通常屈折率の実数と虚数部分、NとKが波長の関数として表記されているのが見られる。
【0026】
誘電率は屈折率の平方、すなわち、
【数1】
【0027】
よって、
【数2】
【数3】
であり、したがって、KがNよりも大きいときεrealは負であることが分かる。
【0028】
上で述べた光学定数表を見れば、実際にしばしばこの条件を満足することが分かる。
【0029】
また、静電近似を用いて小さな誘電体球内部の電場を予測することが可能である。入射する電磁波の波長が球の半径よりもはるかに大きい場合を想定する。この場合、球は電場で取り囲まれ、電場は球全体にわたってほぼ一定である。基本的な静電気学から、球内部の場の大きさを求める。
【0030】
【数4】
式中、Eoutsideは周囲の場であり、Einsideは球内部の場であり、εoutsideとεinsideはそれぞれ球内部と周囲の媒体の相対的な誘電率である。
【0031】
上の式から、球内部の場は、
【数5】
が満たされるならば、無限大になるであろうことは明らかである。誘電率は実数ではないので、場は大きくなるが無限ではない。
【0032】
光波の一部である振動電場の場合、無論その大きな場も、相応して金属による大きな吸収をもたらすであろう。この場の強化は金属ナノ粒子中に生成される強い吸収ピークを引き起こす。複素数の誘電率を考慮して、誘電率の虚数部分が小さいと仮定すれば、概略の吸収断面積を計算することができる。
【0033】
いくつかのステップを省略し、断面積Qabsとして、
【数6】
が見出される。上の式中、εmediumは媒体の誘電率であり、εrealおよびεimagは金属球の誘電率の実数部分および虚数部分である。
【0034】
xの量は、
【数7】
で与えられる。式中、rは球の半径であり、λは波長である。
【0035】
再び、分母部分の括弧の中がゼロになるとき、最大吸収が予測される。明瞭かつ明確に線引きされた吸収領域で吸収の値が大きいと、εimagは小さく留まるはずである。最大吸収波長は媒体の誘電率が変化するとき移動することが分かる。これは所与の導体について色彩を微調整するひとつの方法である。
【0036】
異なる材料について、εrealは異なる関数であるので、プラズモン効果による共鳴吸収は、図1に示すように異なる波長で起きる。図1はフレーリッヒ共鳴を示す3種類の金属窒化物の実数誘電率を示す。フレーリッヒ共鳴周波数は、イプシロン(実数)曲線が“−2ε(媒体)”と表記した線と交差するところの位置で求められる。
【0037】
粒子の形状およびサイズ。
粒子の形状は重要である。ディスクなどの扁球な粒子の内部の場は、その粒子の外部の場に対して球形状粒子内部の場とは大きく異なる。
【0038】
ディスクが場の線方向に垂直にあれば、
【数8】
である。
【0039】
ここで、それらの波長で大きな吸収を伴う共鳴が起き、
【数9】
であろう。
【0040】
ディスクが薄く、場に整列しているならば、
【数10】
であり、特異ではなく、したがって共鳴は全く起きないであろう。
【0041】
一般に、異方性吸収効果を防止するために、粒子の形状はほぼ球状であることが好ましい。
【0042】
粒子サイズに起因する吸収波長の小さな移動がある。粒子がより大きくなると、前記の単純な仮説は壊れる。実証するまでもなく、粒子サイズの増加は吸収ピークを僅かに赤色、すなわちより長い波長へ向けて移動させる。外側の層が入射する共鳴電磁波を既に吸収して、球の最も内側の部分を占める材料はそれらが吸収するはずの光に全く遭遇しないので、より大きな粒子は吸収体としての効果が少なくなる。より大きな球では共鳴特性は徐々に消滅する。吸収および消光断面積は、球のサイズの成長とともに明確でなくなる。吸収および特に消光も、赤色、すなわちより長波長へより大きく移動する。
【0043】
吸収断面積の挙動のさらに他の例は、ZrNの吸収断面積の半径と波長に対してプロットした三次元図を示す、図2の三次元図を参照されたい。実際に最適粒子サイズを求めるには、透過、吸収、および消光をプロットすることが最善である。吸収断面積は小さな粒子で減少するが、大きな粒子よりも単位重量当たりにはより多くの小さな粒子が存在する。興味深いことに、所与の総質量の小さな粒子は、同じ総質量を有するいくらか大きな粒子と同じほど吸収するようである。最も重要なことに、小さな粒子は散乱しない。これらの点は図3でTiNについて示され、N=1.33の屈折率を有する溶液1cm3中に懸濁させた1gのTiN球の吸収係数を示している。小さな粒子は最善の吸収を与え、約0.025マイクロメートルの臨界半径以下では粒子がいかに小さくてもかまわない。
【0044】
媒体の効果
また、本発明の粒子を運ぶ媒体の誘電率に応じた吸収の移動もある。
【0045】
ドルーデ(Drude)理論は、誘電率の実数部分の近似値を与え、
【数11】
で変化する。式中、νplasmaはいわゆるプラズマ周波数であり、νは光波の周波数である。
【0046】
プラズマ周波数は通常スペクトルの紫外部分のどこかにある。金の球は5200A近傍に吸収ピークを有する。やはり金色に見えるTiN、ZrN、およびHfNは、以下に示すように、より短波長およびより長波長にピークを有する。TiNコロイドは、緑色と赤色の吸収のため青色を呈するように見えた。
【0047】
誘電率の上述の挙動は、媒体の誘電率を変化させたとき、吸収ピークがどれほど移動するかの予測を可能にする。
【0048】
上記の式の一次までの単純なテイラー級数展開を用いて、
【数12】
が得られる。
【0049】
最大吸収が6000Aで起き、媒体の誘電率を0.25倍増加させれば、吸収ピークは6500Aへ500A移動する。誘電率を減少させれば、吸収はより短い波長へ移動する。この点は図4に示されており、1、1.33、および1.6の異なる屈折率を有する3種類の媒体中の半径50nmのTiN球の吸収断面積を示す。
【0050】
本発明の好ましい実施形態
本発明は、選択された所定の電磁スペクトル部分を選択的に吸収し、この領域の外側をほぼ透明に保つことの可能な複合材料に関する。さらに詳細には、好ましい実施形態において、本発明は小さな粒子を提供し、該粒子は内部コアと外部シェルを有し、シェルはコアをカプセル化し、コアまたは/およびシェルが導電性材料を含む。導電性材料は、所定のスペクトル帯域において、誘電率の負の実数部分を有することが好ましい。さらに、(i)コアは第1の導電性材料を含み、シェルは第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、または/および、(ii)コアまたは/およびシェルが約1.8を超える高い屈折率を有する屈折材料からなる。
【0051】
例えば、一実施形態において、本発明の粒子は、導電性材料から作られたコアと、高屈折率材料を含むシェルを含む。他の実施形態において、粒子は高屈折率材料のコアと導電性材料のシェルを含む。さらに他の実施形態において、本発明の粒子は、第1の導電性材料を含むコアと、第2導電性材料を含むシェルを含み、第2導電性材料は第1導電性材料とは異なる。
【0052】
好ましい一実施形態において、粒子は所定のスペクトル帯域中に1よりも大きな吸収断面積を示す。他の実施形態において、粒子は約1nm〜約300nmの直径を有する球状またはほぼ球状である。好ましいシェルの厚さは約0.1nm〜約20nmである。
【0053】
約1.8を超える屈折率を有する任意の材料、および望ましいスペクトル帯域中に誘電率の負の実数部分を有する任意の材料を本発明の実施に使用することができる。好ましい実施形態において、これらの材料は、Ag、Al、Mg、Cu、Ni、Cr、TiN、ZrN、HfN、Si、TiO2、ZrO2等を含む。
【0054】
所定のスペクトル帯域での共鳴吸収の移動は、一実施形態においてシェルの厚さを変化させることによって、および他の実施形態においてシェルおよび/またはコアの材料を変化させることによって達成される。さらに他の実施形態では、両方とも変化させることができる。
【0055】
他の実施形態において、粒子の全体的な直径を同じに保ち、シェルの厚さとコアの直径を選択して所望の共鳴を達成する。導電性コアと高屈折率シェルを含む粒子において、シェルの厚さを調整して、紫外または可視スペクトル帯域でのピーク吸収を“赤”色の方に移動することができる。これは図5に示されており、様々な厚さ(1、5、および10nm)の高屈折材料(酸化チタン)で被覆した一定の半径(20nm)の金属(銀)コアについて、吸収(実線)と消光(点線)断面積を示す。
【0056】
上記のように、大部分の金属はそのプラズモン共鳴周波数を紫外線帯域に有する。これは、高屈折率コアと導電性シェルを含む粒子において、シェルの厚さを調整し、すなわち、ピーク吸収を可視および紫外スペクトル帯域へ移動させることを可能にする。これは図6に示されており、半径を40nmに固定し、厚さを1〜6nmに変化する銀のシェルで被覆した、TiO2のコアについての吸収(実線)と消光(点線)断面積を示す。
【0057】
コア中に1種類、シェル中に他の種類の、2種類の導電性材料を使用すれば、通常、粒子は各導電材料のピークの間にある波長で共鳴吸収を有するであろう。これは、コアとシェルの材料を選択することによって、および/またはコアの直径に対するシェルの厚さの比を調整することによって、可視および紫外帯域の両方でいずれの方向にも吸収のピークを移動させることを可能にする。例えば、TiNはその共鳴ピークを可視帯域に有するが、銀は紫外線帯域に共鳴吸収を示す。図7に、1nmまたは2nmのいずれかの厚さの銀シェルで被覆した半径20nmのTiN球についての吸収(実線)と消光(点線)断面積を示したように、銀シェルの厚さを調節することによってピークはより短波長へ移動する。
【0058】
図8は逆の効果を示しており、銀シェルの厚さを2nmに一定に保ちながら、TiNコアの半径を調整する(40nm、60nm、80nm)ことによって、吸収(実線)と消光(点線)断面積はより長波長に向かって移動する。
【0059】
図9はアルミニウムコアとZrNシェルを含む粒子についての吸収(実線)と消光(点線)断面積を示し、全体の粒子直径を一定に保ちながらコア直径に対するシェル厚さの比を変化させることによって、ピーク吸収の移動をいかにして得ることができるかを示す。アルミニウムのコアは15nmまたは11nmのいずれかの半径を有し、ZrNのシェルは8nmまたは12nmのいずれかの厚さを有する。
【0060】
以下に説明する図において、実線は吸収を表し、点線は消光を表す。
【0061】
図10は、半径22nm、ケイ素シェルで被覆したZrNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0、1、2、3、および4nmの厚さである。
【0062】
図11は、半径22nm、酸化チタンシェルで被覆したZrNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0nm、5nm、および10nmの厚さである。媒体の屈折率は1.33である。
【0063】
図12は、半径22nm、銀シェルで被覆したZrNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。移動はより短波長に向かう。シェルは、0nm、1nm、および2nmの厚さである。
【0064】
図13は、半径22nm、アルミニウムシェルで被覆したZrNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。移動はより短波長に向かう。シェルは、0nm、1nm、および2nmの厚さである。
【0065】
図14は、半径20nm、ケイ素シェルで被覆したTiNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0nm、1nm、2nm、および3nmの厚さである。
【0066】
図15は、半径20nm、酸化チタンシェルで被覆したTiNコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0nm、1nm、3nm、および5nmの厚さである。
【0067】
図16は、半径22nm、ケイ素シェルで被覆したアルミニウムコアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、2nm、4nm、8nm、12nm、18nmの厚さである。
【0068】
図17は、半径22nm、ケイ素シェルで被覆した銀コアの共鳴吸収ピークが、シェルの厚さに応じて移動できることを示す。シェルは、0nm、2nm、4nm、6nm、10nmの厚さである。
【0069】
図18は、クロム金属の共鳴がそれをZrNで被覆することによって可視帯域へ移動できることを示す。Cr球は半径20nm、シェルは6nmまたは10nmの厚さである。媒体はN=1.33を有する。
【0070】
図19は、半径22nm、結晶質ケイ素の層で被覆したマグネシウム球が、可視スペクトルに吸収ピークを与えることを示す。シェルは2nm、4nm、6nm、10nm、および14nmの厚さである。媒体の屈折率は、粗い点線がN=1.5である以外、N=1.33である。
【0071】
用途
本発明は、紫外線遮断剤、色フィルター、インク、塗料、ローション、ゲル、フィルム、および固体材料を含む広範囲の用途において用いることができる。
【0072】
本発明の粒子による電磁波吸収の共鳴性質は、(a)1を超える吸収断面積、(b)狭い帯域周波数応答をもたらすことができることに注目すべきである。これらの特性は、粒子の“光学的サイズ”をその物理的サイズよりも大きくし、着色剤の充填率を低くできる。また、小さなサイズは望ましくない電磁波散乱を低減する。低い充填率は使用において経済的である。狭い帯域周波数応答は優れた品質のフィルターおよび選択性遮断剤を可能にする。本発明の粒子に基づく顔料は、紫外線誘発の劣化を受けず、耐光性があり、毒性がなく、化学物質に抵抗性があり、高温に安定であり、発癌性がない。
【0073】
本発明の粒子は、本明細書において約200nm〜約400nmの波長の電磁波と定義される紫外(UV)帯域から、本明細書において約400nm〜約700nmの波長の電磁波と定義される可視帯域(VIS)までの電磁波の広いスペクトルを遮断するのに用いることができる。非制限的な例として、本発明の粒子は、ガラス、ポリエチレン、またはポリプロピレンなど、むしろ透明なキャリ中に分散することができる。得られる電磁波吸収材料は、可視帯域で良好な透明度を維持しながら、紫外線を吸収するであろう。それらの電磁波吸収材料から製造される容器は、例えば、紫外線感受性材料、化合物、または食品の貯蔵に使用することができる。
【0074】
金属を含むコアおよびシェルは紫外線帯域で吸収する粒子を製造するのに使用することができる。代りに、電磁波吸収材料から製造されたフィルムはコーティング材として使用することができる。
【0075】
波長に特有の強い吸収特性を備える粒子は、インクおよび塗料組成物に使用するための優れた顔料を作る。色彩は、白色光が、狭い帯域の周波数を選択的に吸収する材料を通過する、または反射するとき形成される。すなわち、TiN、HfN、およびZrNなどの優れた導電性材料、ならびに他の金属や高屈折率誘電材料を含むコアおよびシェルは、可視帯域に吸収する粒子を製造するのに使用することができ、したがって顔料として有用になる。表1は、本発明の粒子を用いることによって達成することのできる非制限的な色彩の例を提供する。
【0076】
【表1】
【0077】
本発明の粒子用の適切なキャリアは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリラート、ポリスチレン、およびそのコポリマーを含む。
【0078】
本発明は、前記のインクまたは塗料を含むフィルムまたはゲルを意図している。
【0079】
本発明の粒子は、粒子間の最小距離を保証するため、さらにビーズに埋め込むことができる。ビーズは透明な球状プラスチックまたはガラスビーズ中に個々に埋め込むことが好ましい。次いで、個々の粒子を含むビーズは適切なキャリア材料に分散することができる。
【0080】
また、本発明の粒子は効率の高い紫外線フィルターとして使用することもできる。従来のフィルターはしばしば“撫で肩”スペクトル吸収を起し、それによって望ましい帯域とともにかなり大きな割合で望ましくない周波数帯域が吸収される。本発明の粒子は、共鳴吸収のおかげで、選択的吸収を達成するための優れた機構を提供する。本発明の粒子をガラスまたはプラスチックなどの適切なキャリア中に分散することによって、あるいは、所望の材料を本発明の粒子を含むフィルムで被覆することによって、色フィルターを製造することができる。
【0081】
同じキャリア材料内に異なる種類の粒子を組み合わせることも本発明で意図されている。
【0082】
本発明の粒子は、細胞汚染、免疫検出、および拮抗的な結合検定などの生物医学的な用途に用いられる信号発生体として使用することができる。非制限的な例として、粒子を抗体に共有的に付着させることができる。それらの組成物は組織のサンプルに接触させ、白色光で照射することができる。所定の周波数帯域の粒子の吸収によって発生する可視信号は、顕微鏡検査など当技術分野で公知の標準的技術によって検出することができる。当業者であれば、抗体以外の物質も本発明の粒子に共有的に付着させることができることを理解するであろう。ペプチド、核酸、糖、脂質、および小さな分子は本発明の粒子に付着可能であることが意図されている。
【0083】
前記の用途に使用するのに適した粒子は、様々な商業過程によって製造することができるが、われわれは気相形成方法を発明した。この方法は米国特許第5,879,518号、および米国仮出願第60/427,088号に記載されている。
【0084】
図20に概要が示されているこの方法は、加熱された壁で覆われている真空チャンバーを用い、その中でコアを製造するのに使用される材料を球として蒸発させ、低温的に氷の塊の中に凍結される前にカプセル化し、後で収集される。正確な化学量論的単一分散(均一なサイズの)粒子および正確なカプセル厚さに達するための制御手段は、層流量比、温度、ガス速度、圧力、供給源からの膨張速度、およびガス混合物の組成物パーセントが関連する。
【0085】
図21を参照すれば、好ましい実施形態において、例としてチタンの供給を用いることができる。チタンまたは他の金属材料は、CO2レーザを入射することによってその面で蒸発し、金属の蒸気を形成する。これらの蒸気の形成は、振幅漸増の機械的ピークエネルギーを供給することによって溶融表面に音響表面波を確立し、蒸気の放出を容易にすることによって、より狭いサイズの制御の助けになる。
【0086】
供給棒は、その表面層が蒸気を形成するように、一様に前進させる。蒸気は、中央蒸発領域で無線周波数(RF)の場(約13.6MHzで約2kV)によってイオン化される、流入する窒素ガス(N2)によって吹き払われる。原子窒素の種である“N+”は金属蒸気と反応し、供給棒の材料に応じて、それらをTiN、またはZrNもしくはHfNなどの他の金属窒化物へ変化させる。
【0087】
真空の差圧と円錐形の円形開口部中の同時放射状ガス流のため、粒子は、最小の衝突でアルゴンの上流へ動いて、ガスを“凍結”して固化し、粒子が埋め込まれた氷の塊を形成するいくつかの交番低温ポンプに到達する。
【0088】
粒子形成のステップは図22に示されている。ここで、われわれは金属窒化物を形成するために金属蒸気と原子窒素ガスから開始する。粒子に一時的な電荷を与えることによって、それらを分離したままにすることができ、したがって、窒化物コアの周りに薄いシェルの成長を開始する間、衝突を防止することができる。非制限的な例として、ケイ素またはTiO2を使用することができ、シェルの厚さはシランガス(SiH4)またはTiCl4と酸素の混合物のそれぞれの供給速度によって制御される。
【0089】
後続の通路ゾーンにおいて、シランガスまたはTiCl4/O2混合物はまだ熱いナノ粒子上に凝結して、各個々の粒子の周りにSiO2またはTiO2の球状包を形成する。
【0090】
必要であれば、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)などの界面活性剤の立体障害層をビーズ上に堆積させ、例えば、油またはポリマーなど選択したキャリア全体に均一に分散した粒子を保つことができる。他の界面活性剤は水懸濁に使用することができる。
【0091】
この製造方法で、様々なカプセル化したナノ粒子を大量に製造することができ、単一の工程ステップで所望の共鳴吸収粒子が形成され、その回収性およびその均一なサイズを保証する。
【0092】
本発明をその好ましい実施形態を参照して詳細に示し説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の技術的範囲を逸脱することなく、形態および細部について様々な変更が可能であることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】TiN、HfN、およびZrNの誘電率の実数部分を波長の関数として示す図である。
【図2】ZrN球の吸収断面積を半径と波長の両方の関数として示す三次元図である。
【図3】TiN球の特定量の吸収を半径および波長の両方の関数として示す三次元図である
【図4】異なる屈折率を有する3種の異なる媒体中におけるTiN球の吸収断面積の図である。
【図5】銀コアおよび酸化チタンシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図6】酸化チタンコアおよび銀シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図7】窒化チタンコア(半径 一定)および銀シェル(厚さ 可変)を有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図8】窒化チタンコア(半径 可変)および銀シェル(厚さ 一定)を有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図9】アルミニウムコアおよび窒化ジルコニウムシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図10】ZrNコアおよびSiシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図11】ZrNコアおよび酸化チタンシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図12】ZrNコアおよび銀シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図13】ZrNコアおよびアルミニウムシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図14】TiNコアおよびケイ素シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図15】TiNコアおよび酸化チタンシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図16】アルミニウムコアおよびケイ素シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図17】銀コアおよびケイ素シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図18】マグネシウムコアおよびケイ素シェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図19】クロムコアおよびZrNシェルを有する球の吸収(実線)および消光(点線)断面積の図である。
【図20】本発明の粒子の製造に用いることのできる製造工程の概要図である。
【図21】ナノ粒子製造システムの詳細を示す概要図である。
【図22】粒子形成のステップ図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)コアと、
(b)シェルと、
を含む電磁波吸収粒子であって、
前記シェルが前記コアをカプセル化し、
前記コアまたは/および前記シェルが導電性材料を含み、前記材料が所定のスペクトル帯域で誘電率の負の実数部分を有し、
(i)前記コアが第1の導電性材料を含み、前記シェルが第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、または/および、
(ii)前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなる粒子。
【請求項2】
請求項1において、
前記粒子が、所定のスペクトル帯域で1を超える吸収断面積を示す粒子。
【請求項3】
請求項1において、
前記粒子がほぼ球状である粒子。
【請求項4】
請求項3において、
前記粒子が1nm〜300nmの直径を有する粒子。
【請求項5】
請求項3において、
前記粒子が10nm〜50nmの直径を有する粒子。
【請求項6】
請求項1において、
前記シェル厚さが0.1nm〜20nmである粒子。
【請求項7】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェル材料が、Ag、Al、Mg、Cu、Ni、Cr、TiN、ZrN、HfN、Si、ZrO2、およびTiO2からなる群から選択されている粒子。
【請求項8】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が350nm〜450nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項9】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が450nm〜500nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項10】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が450nm〜500nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択される粒子。
【請求項11】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が500nm〜550nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項12】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が550nm〜600nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項13】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が600nm〜650nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項14】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が650nm〜700nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項15】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が350nm〜450nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項16】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が450nm〜500nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項17】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が500nm〜550nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項18】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が550nm〜600nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項19】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が600nm〜650nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項20】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が650nm〜700nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項21】
コアをシェルでカプセル化するステップを含む、特定帯域の電磁波を吸収する粒子を製造する方法であって、
前記コアまたは/および前記シェルが導電性材料を含み、前記材料が所定のスペクトル帯域に誘電率の負の実数部分を有し、
(i)前記コアが第1の導電性材料を含み、前記シェルが第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、または/および、
(ii)前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなる粒子を製造する方法。
【請求項22】
請求項21において、
前記コアが第1の導電性材料を含み、前記シェルが第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、前記粒子が所望のスペクトル帯域に吸収のピークを示すように前記第1および第2導電性材料が選択される方法。
【請求項23】
請求項21において、
前記コアまたは/および前記シェルが約1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が所望のスペクトル帯域に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さが選択される方法。
【請求項24】
(a)キャリア材料と、
(b)前記キャリア材料中に分散された粒子状材料であり、主要な粒子がコアと前記コアをカプセル化するシェルとを含み、前記コアまたは/および前記シェルが導電性材料を含み、前記材料が所定のスペクトル帯域に誘電率の負の実数部分を有する、
電磁波の選択されたスペクトル帯域の通路をほぼ遮断するための電磁波吸収材料であって、
(i)前記コアが第1の導電性材料を含み、前記シェルが第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、または/および、
(ii)前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなる材料。
【請求項25】
請求項24において、
前記キャリアが、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリラート、ポリスチレン、およびそのコポリマーからなる群から選択されている材料。
【請求項26】
請求項24において、
1種または複数の個別の粒子状材料をさらに含む材料。
【請求項27】
請求項24において、
前記材料がインクである材料。
【請求項28】
請求項24において、
前記材料が塗料である材料。
【請求項29】
請求項24において、
前記材料がローションである材料。
【請求項30】
請求項24において、
前記材料がゲルである材料。
【請求項31】
請求項24において、
前記材料がフィルムである材料。
【請求項32】
請求項24において、
前記材料が固体である材料。
【請求項33】
請求項24において、
前記主要粒子が、ペプチド、核酸、糖、脂質、および小さな分子からなる群から選択されている分子に共有的に付着されている材料。
【請求項34】
請求項24において、
前記主要粒子がさらにビーズに埋め込まれている材料。
【請求項35】
請求項34において、
前記主要粒子がほぼ球状のビーズに個々に埋め込まれている材料。
【請求項1】
(a)コアと、
(b)シェルと、
を含む電磁波吸収粒子であって、
前記シェルが前記コアをカプセル化し、
前記コアまたは/および前記シェルが導電性材料を含み、前記材料が所定のスペクトル帯域で誘電率の負の実数部分を有し、
(i)前記コアが第1の導電性材料を含み、前記シェルが第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、または/および、
(ii)前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなる粒子。
【請求項2】
請求項1において、
前記粒子が、所定のスペクトル帯域で1を超える吸収断面積を示す粒子。
【請求項3】
請求項1において、
前記粒子がほぼ球状である粒子。
【請求項4】
請求項3において、
前記粒子が1nm〜300nmの直径を有する粒子。
【請求項5】
請求項3において、
前記粒子が10nm〜50nmの直径を有する粒子。
【請求項6】
請求項1において、
前記シェル厚さが0.1nm〜20nmである粒子。
【請求項7】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェル材料が、Ag、Al、Mg、Cu、Ni、Cr、TiN、ZrN、HfN、Si、ZrO2、およびTiO2からなる群から選択されている粒子。
【請求項8】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が350nm〜450nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項9】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が450nm〜500nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項10】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が450nm〜500nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択される粒子。
【請求項11】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が500nm〜550nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項12】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が550nm〜600nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項13】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が600nm〜650nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項14】
請求項1において、
前記コアと前記シェルの両方とも導電性材料を含み、前記粒子が650nm〜700nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記コアと前記シェルの材料が選択されている粒子。
【請求項15】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が350nm〜450nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項16】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が450nm〜500nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項17】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が500nm〜550nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項18】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が550nm〜600nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項19】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が600nm〜650nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項20】
請求項1において、
前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が650nm〜700nmの波長の範囲に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さおよび/または前記コアのサイズが独立に調整されている粒子。
【請求項21】
コアをシェルでカプセル化するステップを含む、特定帯域の電磁波を吸収する粒子を製造する方法であって、
前記コアまたは/および前記シェルが導電性材料を含み、前記材料が所定のスペクトル帯域に誘電率の負の実数部分を有し、
(i)前記コアが第1の導電性材料を含み、前記シェルが第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、または/および、
(ii)前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなる粒子を製造する方法。
【請求項22】
請求項21において、
前記コアが第1の導電性材料を含み、前記シェルが第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、前記粒子が所望のスペクトル帯域に吸収のピークを示すように前記第1および第2導電性材料が選択される方法。
【請求項23】
請求項21において、
前記コアまたは/および前記シェルが約1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなり、前記粒子が所望のスペクトル帯域に吸収のピークを示すように前記シェルの厚さが選択される方法。
【請求項24】
(a)キャリア材料と、
(b)前記キャリア材料中に分散された粒子状材料であり、主要な粒子がコアと前記コアをカプセル化するシェルとを含み、前記コアまたは/および前記シェルが導電性材料を含み、前記材料が所定のスペクトル帯域に誘電率の負の実数部分を有する、
電磁波の選択されたスペクトル帯域の通路をほぼ遮断するための電磁波吸収材料であって、
(i)前記コアが第1の導電性材料を含み、前記シェルが第1の導電性材料とは異なる第2の導電性材料を含み、または/および、
(ii)前記コアまたは/および前記シェルが1.8を超える屈折率を有する屈折材料からなる材料。
【請求項25】
請求項24において、
前記キャリアが、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリラート、ポリスチレン、およびそのコポリマーからなる群から選択されている材料。
【請求項26】
請求項24において、
1種または複数の個別の粒子状材料をさらに含む材料。
【請求項27】
請求項24において、
前記材料がインクである材料。
【請求項28】
請求項24において、
前記材料が塗料である材料。
【請求項29】
請求項24において、
前記材料がローションである材料。
【請求項30】
請求項24において、
前記材料がゲルである材料。
【請求項31】
請求項24において、
前記材料がフィルムである材料。
【請求項32】
請求項24において、
前記材料が固体である材料。
【請求項33】
請求項24において、
前記主要粒子が、ペプチド、核酸、糖、脂質、および小さな分子からなる群から選択されている分子に共有的に付着されている材料。
【請求項34】
請求項24において、
前記主要粒子がさらにビーズに埋め込まれている材料。
【請求項35】
請求項34において、
前記主要粒子がほぼ球状のビーズに個々に埋め込まれている材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2006−523593(P2006−523593A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503672(P2006−503672)
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/004785
【国際公開番号】WO2004/077453
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(506186466)
【氏名又は名称原語表記】Manfred R. Kuehnle
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/004785
【国際公開番号】WO2004/077453
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(506186466)
【氏名又は名称原語表記】Manfred R. Kuehnle
【Fターム(参考)】
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