説明

電磁スイッチ

【課題】電磁スイッチ1において、固定鉄心3と可動鉄心4との誤組付けによる組付け不良率を低減することにある。
【解決手段】電磁スイッチ1によれば、固定鉄心3と可動鉄心4とは、同一形状かつ同一寸法の互換可能な同一物であり、ロッド9は、可動接点7により軸振れが規制されている。固定鉄心3と可動鉄心4とを同一物とすることにより、固定鉄心3と可動鉄心4とを誤組付けする虞がなくなるので、組付け不良率を大幅に低減することができる。また、可動接点7によりロッド9の軸振れが規制されるので、可動接点7は、可動鉄心4に連動して軸方向へ円滑に変位することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路を開閉する電磁スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電磁スイッチは、ソレノイドコイルの内周の軸方向一方側に固定して配される固定鉄心と、ソレノイドコイルの内周に固定鉄心よりも軸方向他方側に配され、ソレノイドコイルへの通電により軸方向一方側に磁気吸引される可動鉄心と、可動鉄心を軸方向他方側に付勢するリターンスプリングと、所定の電気回路に接続され、可動鉄心の軸方向他方側に固定して配される固定接点と、固定接点の軸方向他方側に配され、固定接点に離接することで電気回路を開閉する可動接点と、可動接点を軸方向一方側に付勢する接点圧スプリングと、可動鉄心と可動接点との間に配され、可動鉄心に作用するリターンスプリングの付勢力を可動接点に伝達して可動接点を軸方向他方側に付勢するロッドとを備える。
【0003】
そして、この電磁スイッチは、ソレノイドコイルに通電が行われると、可動鉄心が軸方向一方側に変位するとともに、可動接点が接点圧スプリングに付勢されて軸方向一方側に変位し、固定接点に当接して電気回路を閉成し、ソレノイドコイルへの通電が停止されると、可動鉄心がリターンスプリングに付勢されて軸方向他方側に変位するとともに、可動接点がロッドに付勢されて軸方向他方側に変位し、固定接点から離脱して電気回路を開成する。
【0004】
ところで、従来の電磁スイッチによれば、ロッドは、可動鉄心の他端面に設けられた穴に嵌着され、この穴の近傍がロッドに向けてかしめられて固定されている(例えば、特許文献1参照)。つまり、可動鉄心と固定鉄心とは、径方向および軸方向の寸法を同一にできるにもかかわらず、ロッドを嵌着するための穴の有無により別個の部材となる。このため、可動鉄心と固定鉄心とを誤組付けする虞があり、組付け不良率の低減が課題となっている。
【特許文献1】特開2006−185816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、電磁スイッチにおいて、可動鉄心と固定鉄心との誤組付けによる組付け不良率を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の電磁スイッチは、ソレノイドコイルの内周の軸方向一方側に固定して配される固定鉄心と、ソレノイドコイルの内周に固定鉄心よりも軸方向他方側に配され、ソレノイドコイルへの通電により軸方向一方側に磁気吸引される可動鉄心と、可動鉄心を軸方向他方側に付勢するリターンスプリングと、所定の電気回路に接続され、可動鉄心の軸方向他方側に固定して配される固定接点と、固定接点の軸方向他方側に配され、固定接点に離接することで電気回路を開閉する可動接点と、可動接点を軸方向一方側に付勢する接点圧スプリングと、可動鉄心と可動接点との間に配され、可動鉄心に作用するリターンスプリングの付勢力を可動接点に伝達して可動接点を軸方向他方側に付勢するロッドとを備える。
【0007】
そして、ソレノイドコイルに通電が行われると、可動鉄心が軸方向一方側に変位するとともに、可動接点が接点圧スプリングに付勢されて軸方向一方側に変位し、固定接点に当接して電気回路を閉成する。また、ソレノイドコイルへの通電が停止されると、可動鉄心がリターンスプリングに付勢されて軸方向他方側に変位するとともに、可動接点がロッドに付勢されて軸方向他方側に変位し、固定接点から離脱して電気回路を開成する。
そして、この電磁スイッチによれば、固定鉄心と可動鉄心とは、同一形状かつ同一寸法の互換可能な同一物であり、ロッドは、可動接点により軸振れが規制されている。
【0008】
固定鉄心と可動鉄心とを同一物とすることにより、可動鉄心と固定鉄心とを誤組付けする虞がなくなるので、組付け不良率を大幅に低減することができる。一方、可動鉄心にロッドを嵌着するための穴がなくなり、ロッドを可動鉄心により固定することができなくなるので、可動鉄心に代わって可動接点によりロッドの軸振れを規制する。この結果、固定鉄心と可動鉄心とが同一物となり可動鉄心によりロッドが固定されなくても、可動接点は、可動鉄心に連動して軸方向へ円滑に変位することができる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の電磁スイッチによれば、ロッドの他端は、段状に設けられるとともに、可動接点には穴が設けられ、ロッドは、穴にロッドの他端が遊嵌合して可動接点に係合することで、可動接点により軸振れが規制されている。
これにより、可動接点がロッドの軸振れを規制する一方で、ロッドは、段状の他端により可動接点を軸方向一方側から確実に支持することができる。このため、可動接点は、接点圧スプリングの付勢力に抗して、安定的に軸方向に変位することができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載の電磁スイッチによれば、可動接点は、内周側に向けてかしめられ、ロッドに固着している。
これにより、ロッドは、さらに強く可動接点に拘束されるので、ロッドの軸触れをより強く規制することができる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載の電磁スイッチによれば、ロッドは、熱可塑性樹脂を素材として設けられ、ロッドの他端は、穴を貫通して可動接点の軸方向他方側に突出し、突出したロッドの他端が熱かしめされることで、可動接点がロッドに固着している。
これにより、請求項3の手段と同様の効果を得ることができる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載の電磁スイッチによれば、ロッドは、熱可塑性樹脂を素材として設けられ、可動接点とロッドとは、インサート成型により一体化されている。
これにより、請求項3の手段と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
最良の形態1の電磁スイッチは、ソレノイドコイルの内周の軸方向一方側に固定して配される固定鉄心と、ソレノイドコイルの内周に固定鉄心よりも軸方向他方側に配され、ソレノイドコイルへの通電により軸方向一方側に磁気吸引される可動鉄心と、可動鉄心を軸方向他方側に付勢するリターンスプリングと、所定の電気回路に接続され、可動鉄心の軸方向他方側に固定して配される固定接点と、固定接点の軸方向他方側に配され、固定接点に離接することで電気回路を開閉する可動接点と、可動接点を軸方向一方側に付勢する接点圧スプリングと、可動鉄心と可動接点との間に配され、可動鉄心に作用するリターンスプリングの付勢力を可動接点に伝達して可動接点を軸方向他方側に付勢するロッドとを備える。
【0014】
そして、ソレノイドコイルに通電が行われると、可動鉄心が軸方向一方側に変位するとともに、可動接点が接点圧スプリングに付勢されて軸方向一方側に変位し、固定接点に当接して電気回路を閉成する。また、ソレノイドコイルへの通電が停止されると、可動鉄心がリターンスプリングに付勢されて軸方向他方側に変位するとともに、可動接点がロッドに付勢されて軸方向他方側に変位し、固定接点から離脱して電気回路を開成する。
そして、この電磁スイッチによれば、固定鉄心と可動鉄心とは、同一形状かつ同一寸法の互換可能な同一物であり、ロッドは、可動接点により軸振れが規制されている。
【0015】
また、この電磁スイッチによれば、ロッドの他端は、段状に設けられるとともに、可動接点には穴が設けられ、ロッドは、穴にロッドの他端が遊嵌合して可動接点に係合することで、可動接点により軸振れが規制されている。
【0016】
最良の形態2の電磁スイッチによれば、可動接点は、内周側に向けてかしめられ、ロッドに固着している。
最良の形態3の電磁スイッチによれば、ロッドは、熱可塑性樹脂を素材として設けられ、ロッドの他端は、穴を貫通して可動接点の軸方向他方側に突出し、突出したロッドの他端が熱かしめされることで、可動接点がロッドに固着している。
最良の形態4の電磁スイッチによれば、ロッドは、熱可塑性樹脂を素材として設けられ、可動接点とロッドとは、インサート成型により一体化されている。
【実施例1】
【0017】
〔実施例1の構成〕
実施例1の電磁スイッチ1の構成を、図1を用いて説明する。
電磁スイッチ1は、ソレノイドコイル2の内周の軸方向一方側に固定して配される固定鉄心3と、ソレノイドコイル2の内周に固定鉄心3よりも軸方向他方側に配され、ソレノイドコイル2への通電により軸方向一方側に磁気吸引される可動鉄心4と、可動鉄心4を軸方向他方側に付勢するリターンスプリング5と、所定の電気回路(図示せず)に接続され、可動鉄心4の軸方向他方側に固定して配される固定接点6と、固定接点6の軸方向他方側に配され、固定接点6に離接することで電気回路を開閉する可動接点7と、可動接点7を軸方向一方側に付勢する接点圧スプリング8と、可動鉄心4と可動接点7との間に配され、可動鉄心4に作用するリターンスプリング5の付勢力を可動接点7に伝達して可動接点7を軸方向他方側に付勢するロッド9とを備える。
【0018】
ここで、電磁スイッチ1の外郭は、底側を一端側とする有底円筒状のヨーク13の内周に、底側を他端側とする樹脂カバー14を装着し、ヨーク13の他端を樹脂カバー14にかしめて固定することで構成されている。そして、ソレノイドコイル2は、樹脂製のボビン15に巻線されヨーク13の底部に組み込まれ、固定鉄心3と可動鉄心4とは、ボビン15の内周にリターンスプリング5を介して所定の隙間を形成するように配される。また、ソレノイドコイル2の他端には、第2の固定鉄心16が配され、ヨーク13、固定鉄心3および可動鉄心4とともに、磁気回路を形成する。また、固定接点6は、樹脂カバー14の底面に配され、ナット17によりワッシャ18、19を介して固定されている。
【0019】
以上の構成により、ソレノイドコイル2に通電が行われると、可動鉄心4が軸方向一方側に変位するとともに、可動接点7が接点圧スプリング8に付勢されて軸方向一方側に変位し、固定接点6に当接して電気回路を閉成する。また、ソレノイドコイル2への通電が停止されると、可動鉄心4がリターンスプリング5に付勢されて軸方向他方側に変位するとともに、可動接点7がロッド9に付勢されて軸方向他方側に変位し、固定接点6から離脱して電気回路を開成する。
【0020】
〔実施例1の特徴〕
実施例1の電磁スイッチ1によれば、固定鉄心3と可動鉄心4とは、同一形状かつ同一寸法の互換可能な同一物であり、ロッド9は、可動接点7により軸振れが規制されている。すなわち、この電磁スイッチ1によれば、ロッド9の他端は、段状に設けられるとともに、可動接点7には穴22が設けられ、ロッド9は、穴22にロッド9の他端が遊嵌合して可動接点7に係合することで、可動接点7により軸振れが規制されている。
【0021】
つまり、ロッド9の他端部24は、本体部25よりも小径に設けられ、穴22を貫通して可動接点7の軸方向他方側に突出し、他端部24と本体部25とは、段26をなして1つのロッド9を構成する。そして、この段26に可動接点7の一端面27が当接する。
【0022】
〔実施例1の効果〕
実施例1の電磁スイッチ1によれば、固定鉄心3と可動鉄心4とは、同一形状かつ同一寸法の互換可能な同一物であり、ロッド9は、可動接点7により軸振れが規制されている。
固定鉄心3と可動鉄心4とを同一物とすることにより、固定鉄心3と可動鉄心4とを誤組付けする虞がなくなるので、組付け不良率を大幅に低減することができる。また、可動接点7によりロッド9の軸振れが規制されるので、可動接点7は、可動鉄心4に連動して軸方向へ円滑に変位することができる。
【0023】
また、ロッド9の他端は、段状に設けられるとともに、可動接点7には穴22が設けられ、ロッド9は、穴22にロッド9の他端が遊嵌合して可動接点7に係合することで、可動接点7により軸振れが規制されている。
これにより、可動接点7がロッド9の軸振れを規制する一方で、ロッド9は、段26により可動接点7を軸方向一方側から確実に支持することができる。このため、可動接点7は、接点圧スプリング8の付勢力に抗して、安定的に軸方向に変位することができる。
【実施例2】
【0024】
実施例2の電磁スイッチ1によれば、可動接点7は、図2に示すように、他端面29のロッド9の近傍で内周側に向けてかしめられ、ロッド9に固着している。
これにより、ロッド9は、さらに強く可動接点7に拘束されるので、ロッド9の軸触れをより強く規制することができる。
【実施例3】
【0025】
実施例3の電磁スイッチ1によれば、ロッド9は、熱可塑性樹脂を素材として設けられ、ロッド9の他端は、図3に示すように、穴22を貫通して可動接点7の軸方向他方側に突出し、突出したロッド9の他端が熱かしめされることで、可動接点7がロッド9に固着している。つまり、他端部24を、穴22を貫通させて可動接点7の軸方向他方側に突出させ、加熱溶融して固化させる。この結果、ロッド9は、樹脂の固着力によりさらに強く可動接点7に拘束され、ロッド9の軸触れをより強く規制することができる。
【実施例4】
【0026】
実施例4の電磁スイッチ1によれば、ロッド9は、熱可塑性樹脂を素材として設けられ、可動接点7とロッド9とは、図4に示すように、インサート成型により一体化されている。この結果、さらに可動接点7に作用する樹脂の固着力が強化されるので、ロッド9の軸触れをさらに強く規制することができる。
【0027】
〔変形例〕
実施例1〜4の電磁スイッチ1によれば、ロッド9の他端に段26が設けられ、段26により可動接点7が軸方向に支持されていたが、段26を設けることなく可動接点7を軸方向に支持することもできる。つまり、ロッド9は、かしめによる固着力や樹脂の固着力等により可動接点7を軸方向に支持することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は電磁スイッチの断面図であり、(b)はロッドおよび可動接点を示す断面図である(実施例1)。
【図2】ロッドおよび可動接点を示す断面図である(実施例2)。
【図3】ロッドおよび可動接点を示す断面図である(実施例3)。
【図4】ロッドおよび可動接点を示す断面図である(実施例4)。
【符号の説明】
【0029】
1 電磁スイッチ
2 ソレノイドコイル
3 固定鉄心
4 可動鉄心
5 リターンスプリング
6 固定接点
7 可動接点
8 接点圧スプリング
9 ロッド
22 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドコイルの内周の軸方向一方側に固定して配される固定鉄心と、
前記ソレノイドコイルの内周に前記固定鉄心よりも軸方向他方側に配され、前記ソレノイドコイルへの通電により軸方向一方側に磁気吸引される可動鉄心と、
前記可動鉄心を軸方向他方側に付勢するリターンスプリングと、
所定の電気回路に接続され、前記可動鉄心の軸方向他方側に固定して配される固定接点と、
この固定接点の軸方向他方側に配され、前記固定接点に離接することで前記電気回路を開閉する可動接点と、
この可動接点を軸方向一方側に付勢する接点圧スプリングと、
前記可動鉄心と前記可動接点との間に配され、前記可動鉄心に作用する前記リターンスプリングの付勢力を前記可動接点に伝達して前記可動接点を軸方向他方側に付勢するロッドとを備え、
前記ソレノイドコイルに通電が行われると、前記可動鉄心が軸方向一方側に変位するとともに、前記可動接点が前記接点圧スプリングに付勢されて軸方向一方側に変位し、前記固定接点に当接して前記電気回路を閉成し、
前記ソレノイドコイルへの通電が停止されると、前記可動鉄心が前記リターンスプリングに付勢されて軸方向他方側に変位するとともに、前記可動接点が前記ロッドに付勢されて軸方向他方側に変位し、前記固定接点から離脱して前記電気回路を開成する電磁スイッチにおいて、
前記固定鉄心と前記可動鉄心とは、同一形状かつ同一寸法の互換可能な同一物であり、
前記ロッドは、前記可動接点により軸振れが規制されていることを特徴とする電磁スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁スイッチにおいて、
前記ロッドの他端は、段状に設けられるとともに、前記可動接点には穴が設けられ、
前記ロッドは、前記穴に前記ロッドの他端が遊嵌合して前記可動接点に係合することで、前記可動接点により軸振れが規制されていることを特徴とする電磁スイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載の電磁スイッチにおいて、
前記可動接点は、内周側に向けてかしめられ、前記ロッドに固着していることを特徴とする電磁スイッチ。
【請求項4】
請求項2に記載の電磁スイッチにおいて、
前記ロッドは、熱可塑性樹脂を素材として設けられ、
前記ロッドの他端は、前記穴を貫通して前記可動接点の軸方向他方側に突出し、
突出した前記ロッドの他端が熱かしめされることで、前記可動接点が前記ロッドに固着していることを特徴とする電磁スイッチ。
【請求項5】
請求項1に記載の電磁スイッチにおいて、
前記ロッドは、熱可塑性樹脂を素材として設けられ、
前記可動接点と前記ロッドとは、インサート成型により一体化されていることを特徴とする電磁スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−97893(P2008−97893A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275973(P2006−275973)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】