電磁ユニット
【課題】扁平化が可能であって組立も容易な電磁ユニットを提供する。電磁ユニット内の循環電流や渦電流の発生を防止し、ロータ磁性歯の脱落や移動を防ぐ。
【解決手段】ステータユニット100は、多数のステータ磁性歯103からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気結合されたステータコア101,102と、これらの間に配置されたリング形コイルとを備える。ロータユニット200Aは、多数のロータ磁性歯205からなるロータ磁性歯列とロータ磁極204とを有し、これらがステータ磁性歯列に対向すると共に、ステータユニット100と同軸上に配置されたリング状のロータコアユニット203を有する。ロータユニット200Aは、非磁性材料からなるロータコアホルダ208を備え、積層鋼板からなるロータ磁性歯205を、ロータコアホルダ208にカシメ止めや焼き嵌めにて連結、固定する。
【解決手段】ステータユニット100は、多数のステータ磁性歯103からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気結合されたステータコア101,102と、これらの間に配置されたリング形コイルとを備える。ロータユニット200Aは、多数のロータ磁性歯205からなるロータ磁性歯列とロータ磁極204とを有し、これらがステータ磁性歯列に対向すると共に、ステータユニット100と同軸上に配置されたリング状のロータコアユニット203を有する。ロータユニット200Aは、非磁性材料からなるロータコアホルダ208を備え、積層鋼板からなるロータ磁性歯205を、ロータコアホルダ208にカシメ止めや焼き嵌めにて連結、固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平なモータ等の構成要素となる電磁ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボット、産業機械などの技術分野に適用される小型モータでは、コイルの巻回や装着を容易化し、コイルの実装密度を向上させて高効率化やトルク特性を向上させることが求められている。
ここで、図15、図16は特許文献1に記載されたリングコイルモータの例を示しており、図15はアウターロータ型、図16はインナーロータ型のステップモータである。
【0003】
図15において、1は固定軸、2,3は軸受、4はロータケース、5はロータヨーク、6,7はステータヨーク、8,9はリング形コイル、10はマグネット板である。
また、図16において、11は回転軸、12,13は軸受、15はロータヨーク、16,17はステータヨーク、18,19はリング形コイル、20はマグネット板である。
ロータヨーク5,15及びステータヨーク6,7,16,17の対向面には歯が形成されており、これらの歯の間には永久磁石がそれぞれ配置されている。
【0004】
上記モータでは、ロータの回転に伴い、内蔵された前記永久磁石の作用によってリング形コイル8,9,18,19に鎖交する磁束が変化する、すなわち、これらのコイルに無負荷誘起電圧が生じるように構成されている。このため、コイルに交番電流を通流することにより、モータにトルクが発生する仕組みとなっている。
これらのリングコイルモータでは、通常のモータのようにスロット内にコイルを配置する必要がなく、リング形コイルの製造も容易であると共に、ステータとロータとの相互作用によって高トルクを発生可能であるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−23732号公報(段落[0006]〜[0009]、図1,図8等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、狭いスペースにモータを配置して装置全体の小型化を図りたい場合には、軸方向の長さが短い扁平モータを使用することが望ましい。
しかし、図15、図16に示したモータは、ラジアルギャップ、すなわちステータとロータとの対向面が形成するギャップが円筒形状であるモータを想定している。この種のモータは軸方向に長くなりがちなため、モータを扁平に形成することが難しい。特に、三相のコイルを軸方向に並べる場合には、モータの扁平化は一層実現しにくくなる。
【0007】
更に、図16に示したインナーロータ型のモータでは、リング形コイル18,19の側部及び外周部をステータヨーク16,17によって囲む構造であるため、コイル18,19の構造が簡単であるにも関わらず、コイル18,19をステータヨーク16,17に組み込む場合に複雑な組立作業を要するという問題もある。
この組立作業を容易にするために、ステータヨーク16,17をそれぞれ軸方向中央部付近で2分割し、コイルを挟んだ後に結合するという方法が考えられるが、その場合にはステータコアにおける磁路が分断されるため、磁気抵抗が大きくなり、結果としてトルク低下を招くという問題がある。
一方、図15に示したアウターロータ型のモータによれば、ステータヨーク6,7の周囲にリング形コイル8,9を配置するため組立作業は容易であるものの、この種のアウターロータ型のモータを適用できる製品分野は必ずしも多くはない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、全体的に扁平化が可能であって組立が容易であり、大きなトルクを発生させるようにした電磁ユニットを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、循環電流や渦電流の発生を防止した電磁ユニットを提供することにある。
更に、本発明の別の目的は、ロータ磁極の移動や脱落を防止した電磁ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る電磁ユニットは、ステータユニットとロータユニットとから構成されている。
ここで、ステータユニットは、ステータ磁性歯列を有する第1のステータコアと、同じくステータ磁性歯列を有する第2のステータコアを有し、これら第1,第2のステータコアは同心円状に配置されたうえ互いに磁気的に結合されている。また、ステータユニットは、第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルを有する。
一方、ロータユニットは、ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有する。このロータコアユニットは、多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合うロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極とを備えている。これらのロータ磁性歯列及びロータ磁極は第1,第2のステータコアのステータ磁性歯列に対向するように配置される。
更に、ロータユニットは、ロータコアユニットと同軸上に配置されたアルミ等の非磁性材料からなるロータコアホルダを備えている。そして、本発明では、ロータ磁性歯を積層鋼板により構成し、このロータ磁性歯を、ロータコアホルダにカシメ止めにより一体的に連結、固定するものである。
【0010】
ここで、請求項2に記載するように、ロータ磁極は、軸方向から見てほぼ扇形(fan−shaped:以下、同じ)に形成することが望ましい。
また、請求項3に記載するように、ロータ磁性歯の側面を切り起こして係止部を形成し、この係止部によりロータ磁極の移動を防ぐような構造とすることが望ましい。
【0011】
請求項4に係る電磁ユニットにおいても、ステータユニットは、ステータ磁性歯列を有する第1のステータコアと、同じくステータ磁性歯列を有する第2のステータコアを有し、これら第1,第2のステータコアは同心円状に配置されたうえ互いに磁気的に結合されている。また、ステータユニットは、第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルを有する。
一方、ロータユニットは、ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有する。このロータコアユニットは、多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合うロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極とを備えている。これらのロータ磁性歯列及びロータ磁極は第1,第2のステータコアのステータ磁性歯列に対向するように配置される。
更に、ロータユニットは、ロータコアユニットと同軸上に配置されたアルミ等の非磁性材料からなるロータコアホルダを備えている。そして、本発明では、ロータ磁性歯を積層鋼板により構成し、このロータ磁性歯を、ロータコアホルダに焼き嵌めにより一体的に連結、固定するものである。
【0012】
また、請求項5に係る電磁ユニットは、隣り合うロータ磁性歯の隙間に、軸方向から見てほぼ扇形のスペーサを配置し、このスペーサ及びロータ磁性歯をロータコアホルダに焼き嵌めるものである。
【0013】
請求項6に係る電磁ユニットにおいても、ステータユニットは、ステータ磁性歯列を有する第1のステータコアと、同じくステータ磁性歯列を有する第2のステータコアを有し、これら第1,第2のステータコアは同心円状に配置されたうえ互いに磁気的に結合されている。また、ステータユニットは、第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルを有する。
一方、ロータユニットは、ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有する。このロータコアユニットは、多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合うロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極とを備えている。これらのロータ磁性歯列及びロータ磁極は第1,第2のステータコアのステータ磁性歯列に対向するように配置される。
更に、本発明において、ロータユニットは、ロータコアユニットと同軸上に配置されたアルミ等の非磁性材料からなる複数(例えば二個または三個)のロータコアホルダを備えている。そして、積層鋼板により構成されたロータ磁性歯を有するロータコアユニットを、複数のロータコアホルダにより挟み込んでボルト締めにより一体的に連結、固定したものである。
【0014】
なお、請求項7に記載するように、請求項6の電磁ユニットにおいても、ロータ磁極を、軸方向から見てほぼ扇形に形成することが望ましい。
【0015】
また、請求項8に記載するように、請求項6または7の電磁ユニットにおいて、ロータコアホルダのロータ磁性歯との接触面に面取り部を形成し、かつ、この面取り部に接触するロータ磁極の端部にテーパ部を形成すれば、ロータ磁性歯とロータ磁極とが隙間なく接触する。
【0016】
請求項9に記載するように、複数の円筒状のロータコアホルダを軸心方向に並べて嵌め合わせる嵌合構造によって連結することにより、ロータコアユニット及びロータコアホルダを含むロータユニット全体を一層強固に一体化することができる。
【0017】
請求項10に記載するように、請求項6〜9の何れか1項において、ロータ磁性歯の側面を切り起こして係止部を形成し、この係止部を、ロータ磁極の側面形成した凹部に係止させることにより、ロータ磁極の移動や脱落を防止することができる。
また、請求項11に記載するように、上記係止部及び凹部は、ほぼ同一平面上であってロータコアユニットの軸に対して非平行に配置される。
【0018】
請求項12に記載するように、請求項6〜11の何れか1項において、隣り合うロータ磁性歯により形成されるほぼ扇形の隙間に対し、同じくほぼ扇形のロータ磁極の内径側厚みを隙間公差により形成し、かつ、外径側厚みを厚め公差により形成することが望ましい。
【0019】
請求項13に係る電磁ユニットにおいても、ステータユニットは、ステータ磁性歯列を有する第1のステータコアと、同じくステータ磁性歯列を有する第2のステータコアを有し、これら第1,第2のステータコアは同心円状に配置されたうえ互いに磁気的に結合されている。また、ステータユニットは、第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルを有する。
一方、ロータユニットは、ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有する。このロータコアユニットは、多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合うロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極とを備えている。これらのロータ磁性歯列及びロータ磁極は第1,第2のステータコアのステータ磁性歯列に対向するように配置される。
更に、本発明では、前記ロータ磁性歯が、予め接着された複数の電磁鋼板からなる積層鋼板(接着鋼板)をワイヤカットにより切り出して形成されている。
また、ロータユニットは、ロータコアユニットと同軸上に配置されたアルミ等の非磁性材料からなるロータコアホルダを備えている。
そして、本発明では、ロータコアユニットを、複数のロータコアホルダにより挟み込んでボルト締めすることにより、一体的に連結、固定するものである。
【0020】
請求項14に記載するように、請求項13において、多数のロータ磁性歯をプラスチック等の非磁性・非導電性材料の締結具にて全体的に締結することにより、ロータ磁性歯やロータ磁極の移動を防止することができる。
また、請求項15に記載するように、ロータコアホルダのロータ磁性歯との接触面に面取り部を形成すると良い。
更に、請求項16に記載するように、請求項13〜15の何れか1項において、ロータ磁性歯にスリットを形成することによりロータ磁性歯にバネ機構を持たせ、各部の寸法公差を小さな応力で吸収させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、全体的に扁平化が可能であって組立が容易であり、大きなトルクを発生可能な電磁ユニットを提供することができる。
また、循環電流や渦電流の発生を防止して損失を低減し、しかもロータ磁極の移動や脱落を防止すると共に、各部の寸法交差を吸収可能な電磁ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の基本的な構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1を具体化した本発明の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】図2の主要部の拡大図である。
【図4】第1実施形態におけるロータ磁性歯をロータコアユニットの内周側から見た斜視図である。
【図5】第1実施形態におけるロータ磁性歯の側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す分解斜視図である。
【図7】第2実施形態における電磁ユニットの組み立て方法を示す図である。
【図8】第2実施形態における電磁ユニットの組み立て方法を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示す分解斜視図である。
【図10】図9の主要部の拡大図である。
【図11】本発明の第4実施形態を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の第5実施形態を示す分解斜視図である。
【図13】本発明の第5実施形態を示す分解斜視図である。
【図14】図12,図13におけるロータ磁性歯及びロータ磁極等の拡大斜視図である。
【図15】従来技術の構成図である。
【図16】従来技術の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
まず、図1は、本発明の基本的な構成を示す分解斜視図である。図1において、101,102は何れもほぼ円筒状の第1,第2ステータコアであり、軸方向一端部がヨーク150によって磁気的に結合されている。第1のステータコア101の内径は第2のステータコア102の外径より長く、これらのステータコア101,102は同心円状に配置されている。また、ステータコア101,102の軸方向他端部には、その全周にわたり、例えば20°間隔で多数のステータ磁性歯103がそれぞれ規則的に形成されている。これら多数のステータ磁性歯103の集合体を、ステータ磁性歯列という。
なお、ステータ磁性歯103の配置間隔(角度)は、20°に何ら限定されるものではなく、この点は以下のすべての実施形態でも同様である。
ここで、ステータコア101,102は、例えば圧粉磁芯により構成されている。
【0024】
更に、ステータコア101,102に挟まれた環状の隙間には、リング形コイル300が配置されている。図1では、リング形コイル300を一点鎖線で示してある。
これらのステータコア101,102、ヨーク150及びリング形コイル300により、ステータユニット100が構成される。
【0025】
一方、200はロータユニットを示している。このロータユニット200は、円周方向に沿ってN極、S極を交互に着磁した永久磁石からなるロータ磁極201と、円周方向に沿ってロータ磁極201と交互に配置されるロータ磁性歯202とからなり、全体がリング状に形成されている。ロータ磁性歯202は、円周上に例えば10°間隔で配置されている。
なお、ロータ磁性歯202の配置間隔(角度)は、10°に何ら限定されるものではなく、これは以下のすべての実施形態でも同様である。
このロータユニット200は、ステータコア101,102に挟まれた環状の隙間において、前記リング形コイル300の上方に同軸上に配置されるものである。
【0026】
図1の構成において、ロータユニット200が10°回転するたびに、リング形コイル300に鎖交する磁束(ロータ磁極201及びロータ磁性歯202からステータコア101,102を介して還流する磁束)が交番する。この磁束と、コイル300に交番電流を流して発生させた磁束との相乗作用により、ロータ磁性歯202とステータ磁性歯103との間に吸引力または反発力を作用させ、これによってトルクを発生することができる。
【0027】
この構造によると、リング形コイル300を使用するため、通常のモータのようにスロット内にコイルを配置する必要がなく、コイルの製造も容易である。また、従来技術として説明した図15、図16のように複数のコイルを軸方向に並べて配置する必要がないので、モータの扁平化に最適である。
更に、ステータコア101,102の隙間にリング形コイル300を嵌めればよいため、一種のインナーロータ型でありながら、ステータユニット100の組立が容易である。また、ステータユニット100とロータユニット200との嵌め合いも軸方向に沿って行えるので、電磁ユニットとしても組立性も良い。
【0028】
次に、図2は、図1の構成を具体化した本発明の第1実施形態を示す分解斜視図であり、理解を容易にするために一部を切り欠いてある。
図2において、ステータユニット100の構成は図1と同様である。なお、図2では、便宜的にリング形コイルの図示が省略されている。
【0029】
200Aはロータユニットであり、このロータユニット200Aは、ロータコアユニット203と、リング状のロータコアホルダ208と、締結具211とを備えている。
ロータコアユニット203は、図1のロータユニット200に相当しており、図3に拡大して示すように、円周方向に沿ってN極、S極を交互に着磁した永久磁石からなるロータ磁極204と、円周方向に沿ってロータ磁極204と交互に配置されるロータ磁性歯205と、複数のロータ磁性歯205の外周部を連結する締結具206と、ロータ磁性歯205の内周部に嵌合する締結具207とを備え、全体がリング状に形成されている。ロータ磁性歯205は、電磁鋼板を複数積層してなる積層鋼板によって構成されており、円周上に例えば10°間隔で配置されている。なお、多数のロータ磁性歯205の集合体を、ロータ磁性歯列というものとする。
【0030】
この実施形態では、図2、図3から明らかなように、多数のロータ磁性歯205を円周方向に沿って放射状に配置するために、ロータ磁性歯205の間に配置されるロータ磁極204が、軸方向から見てほぼ扇形に形成されている。
また、図4は、隣り合う2個のロータ磁性歯205をロータコアユニット203の内周側から見た斜視図であり、図5は、ロータ磁性歯205の側面図である。
図4、図5に示すように、ロータ磁性歯205の外周部には、前記締結具206が嵌合する溝部212が複数形成されている。なお、図5において、213は締結具206の端部を引っ掛けて固定するための孔部である。更に、ロータ磁性歯205の内周部にも、溝部214が形成されている。この溝部214は、図2、図3に示す内周側の締結具207を嵌合させるためのものである。
【0031】
ここで、ロータ磁性歯205やロータ磁極204が円周方向に倒れると、ロータコアユニット203の外径が長くなったり、ロータ磁性歯205とステータ磁性歯103との対向面積が減少するという問題がある。ロータコアユニット203の外径が長くなる分は、公差として予め設計する必要があるため、結果としてロータ磁性歯205とステータ磁性歯103との隙間が広くなる。このように隙間が広くなると、磁気抵抗が増加する。また、ロータ磁性歯205とステータ磁性歯103との対向面積が減少することも、磁気抵抗の増加を招く。
【0032】
ロータ磁性歯205とステータ磁性歯103との隙間は、磁束を通すための大切な磁気回路の一部であるため、この隙間が広がると、リング形コイルに鎖交するロータ磁極204からの磁束が減り、漏れ磁束が増える。これにより、モータとしての発生トルクが減少してしまう。
更に、トルク発生時にロータ磁性歯205やロータ磁極204が円周方向に倒れると、ロータ磁性歯205とロータ磁極204との接触面や、ロータ磁性歯205を構成する電磁鋼板同士の接触面で摩擦熱が発生する。この摩擦熱はエネルギー損失となるだけでなく、ロータコアユニット203の過熱にもつながるので、ロータ磁性歯205やロータ磁極204が円周方向に倒れるのを防ぐ必要がある。
【0033】
上記の点にかんがみ、本実施形態では、多数の締結具206をロータコアユニット203の外周部に配置して複数のロータ磁極204及びロータ磁性歯205を締結している。この締結具206の締結作用により、トルク発生時にロータ磁性歯205やロータ磁極204が円周方向に倒れるのを防止し、ロータ磁性歯205とロータ磁極204との接触面や、ロータ磁性歯205を構成する電磁鋼板同士の接触面の面圧及び摩擦力を増加させている。
【0034】
なお、締結具206は、アルミのように強度があって加工精度が高い非磁性材料を用いると良い。これにより、締結効果を高めると共に、ロータ磁極204のN極、S極間の磁気的短絡を防止し、漏れ磁束を減少させることができる。
また、締結具206を多数、分離して配置することで、循環電流が流れるのを防止することができ、半径方向からの組み立てを容易にしている。また、締結具206を細長い棒状に形成することで、渦電流を流れにくくして損失低減を図っている。
【0035】
更に、ロータコアユニット203の内周部の締結具207は、後述する締結具211と共に、ロータ磁極204及びロータ磁性歯205が半径方向に倒れたり移動するのを防止している。この締結具207にも、アルミのように強度があって加工精度が高い非磁性材料を用いると良い。これにより、締結効果を高めると共に、ロータ磁極204のN極、S極間の磁気的短絡を防止し、漏れ磁束を減少させることができる。
【0036】
また、図4、図5に示すごとく、ロータ磁性歯205の側面には係止部216が形成されている。
締結具206による締結力がロータ磁性歯205に作用していることや、ロータ磁極204が軸方向から見てほぼ扇形に形成されていること、更には回転時の遠心力等により、ロータ磁極204には常に半径方向外向きの力が働く。このため、折り曲げ部215を残して電磁鋼板をコ字形(U−shaped:以下、同じ)に切り起こすことにより係止部216を形成し、その突出した部分をロータ磁極204に対するストッパーとして作用させ、ロータ磁極204が半径方向の外側に飛び出すのを防止している。
【0037】
なお、積層鋼板は弾性を有するため、ロータ磁極204を半径方向外側から挿入する際に係止部216が支障になるおそれはない。更に、モータの運転時にロータコアユニット203が熱膨張したとしても、積層鋼板の弾性により、ロータ磁極204が半径方向外向きに移動するだけで、ロータコアユニット203の外径増加を防ぐことができる。
【0038】
図2に戻って、ロータコアホルダ208の下面には、ロータ磁性歯205を受容する溝部210が放射状に形成されている。ロータ磁性歯205をこれらの溝部210に嵌合させ、カシメによって固定することにより、ロータコアユニット203とロータコアホルダ208とを一体的かつ強固に連結することができる。
また、ロータ磁性歯205と溝部210との嵌合部分を外側から覆うように、ベルト状の締結具211が取り付けられる。この締結具211も、前記締結具206,207と同様にアルミ等の非磁性材料からなっている。
【0039】
ロータコアホルダ208の上面(溝部210とは反対側の面)には、軸方向にボルト孔209が複数形成されている。これらのボルト孔209は、図示されていないシャフトや各種の負荷(以下、これらを総称して負荷という)をボルトによってロータコアホルダ208に連結するためのものであり、ロータコアユニット203の発生トルクがロータコアホルダ208を介して負荷に伝達されるようになっている。
【0040】
この実施形態において、ロータコアホルダ208も、アルミ等の非磁性材料によって形成することにより、ロータコアホルダ208を通じた磁気抵抗を高くしてロータ磁極204のN極とS極との磁気的短絡を防止することができる。
なお、締結具206,207,211及びロータコアホルダ208を、アルミ以外の非磁性材料により形成しても良いのは言うまでもない。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
前述した第1実施形態では、ロータコアホルダ208に、ロータ磁性歯205を嵌合させるための溝部210を形成することが必要である。この種のカシメ溝は、通常は平行な溝部として形成されるが、第1実施形態では構造上、放射状に形成しなくてはならず、その加工に多くの時間や労力を要する。
また、カシメによってロータコアホルダ208とロータ磁性歯205とを連結する際に、ロータ磁性歯205の積層鋼板を構成する個々の電磁鋼板に力を均等に加えることが難しく、応力集中が起きやすいという問題もある。
更に、締結具206の強度が小さい場合、ロータ磁極204とロータ磁性歯205との摩擦力が小さくなり、ロータコアユニット203からロータコアホルダ208側に伝達されるトルクが小さくなって高トルク密度化の要請に応えられなくなる。
そこで、本発明の第2実施形態は、上記の点を改良したものである。
【0042】
図6は、第2実施形態を示す分解斜視図である。
まず、ステータユニット100の構成は第1実施形態と同様である。図6では、便宜的にリング形コイルの図示が省略されている。
ロータコアユニット217は、積層鋼板からなる多数のロータ磁性歯218と、隣り合うロータ磁性歯218の隙間に配置されるロータ磁極204とを備えている。なお、ロータ磁極204は前記同様に軸方向から見てほぼ扇形に形成されている。
また、ロータ磁性歯218は、前記ロータ磁性歯205と同様にロータ磁極204に係止する係止部216を備えているが、この実施形態では前記締結具206が不要なため、ロータ磁性歯218には、締結具206に嵌合させるための溝部が存在しない。
【0043】
更に、図6に拡大して示すように、隣り合うロータ磁性歯218の間の、ロータ磁極204の上部の隙間220には、ロータ磁極204と同様にほぼ扇形に形成されたスペーサ221がそれぞれ収容される。これらのスペーサ221は、後述する如く、ロータ磁性歯218と共に、後述するロータコアホルダ219に焼き嵌めによって一体的に固定される。また、スペーサ221は、アルミのように強度が高く加工精度に優れた非磁性材料によって形成されている。
219はロータコアホルダであり、第1実施形態のロータコアホルダ208と同様にアルミ等の非磁性材料からなるが、特に、積層鋼板より降伏応力が低い材料、または、弾性係数が十分に低い材料が使用される。
【0044】
上記構成において、ステータユニット100側のリング形コイルに流れる交番電流により発生した磁界の方向は、ロータ磁性歯218の部分において常に変化する。このような磁界の方向の変化は、渦電流を発生させ、熱損失を発生させる。これにより、モータのエネルギー変換効率が下がるだけでなく、熱応力を発生させ,強度的な問題にも発展することになる。
このため、第1実施形態と同様に第2実施形態でも、渦電流を抑制するために、ロータ磁性歯218として積層鋼板を使用している。
また、ロータ磁性歯218は、発生トルクをロータコアホルダ219に効率よく伝達する必要があるが、この第2実施形態では、第1実施形態のようなカシメ構造を用いずに、焼き嵌め構造(焼き嵌め面圧による摩擦力)によってロータコアユニット217ロータコアユニット217ロータコアユニット217ロータコアユニット217とロータコアホルダ219とを連結し、ロータコアホルダ219側に力が伝達されるようにした。
【0045】
ところで、電磁鋼鈑は通常、厚さが均一であるため、この電磁鋼板を複数積層して積層鋼板を形成してもその厚さは均一である。従って、この積層鋼板により構成されたロータ磁性歯218を放射状に配置する場合、隣り合うロータ磁性歯218の間に軸方向から見てほぼ扇形の隙間(図6における隙間220)が残ることになる。このように隙間がある状態では、応力を支えることができず、焼き嵌めによってロータコアユニット217とロータコアホルダ219とを強固に連結することができない。
【0046】
よって、この第2実施形態では、焼き嵌め応力が加わる隙間220に、軸方向から見てほぼ扇形のスペーサ221を配置することとした。すなわち、隣り合うロータ磁性歯218の間の隙間220には、ロータ磁極204とスペーサ221とが配置されることになり、焼き嵌めによる強力な圧縮応力はロータ磁極204とスペーサ221とに分散して加わる。これにより、ロータ磁極204が破損するのを防止することができる。
もちろん、ロータ磁極204の強度が,焼き嵌めによる圧縮応力に対して十分強い場合は、スペーサ221の代わりにロータ磁極204を直接、焼き嵌めてしても良い。こうすると、スペーサ221を用いる場合に比べて、ロータ磁極204として面積の大きな永久磁石を使うことができ、モータの出力トルクの向上に繋がる。
【0047】
なお、上記のような電磁ユニットを構成する上での課題の一つに、組立性の向上がある。特に、ロータ磁性歯218の半径方向の位置決め精度は、モータの出力トルクに直結するため非常に重要である。ところが、図6に示したような構造は部品点数が多いため、個々の部品の加工精度の影響も大きく、加えて、組立精度の影響もある。
これらの点を考慮して、本実施形態では、図7、図8に示すような手順により電磁ユニットを組み立てることとし、これによってロータ磁性歯218の位置決め精度を向上させ、十分な出力トルクを確保するようにした。同時に、電磁ユニットの組立性や作業性の向上を可能にしている。
【0048】
以下、本実施形態における電磁ユニットの組立方法を図7、図8に基づいて説明する。
まず、円形の基板402とその中央部に形成された凸部403とからなる第1の組立ジグ401を用意する(図7(a))。
次に、第1の組立ジグ401の基板402上に、第2の組立ジグ404をネジ止めする(図7(b))。第2の組立ジグ404は、リング状の基板405と、その上面において円周方向に配置された多数の突起406を備えている。ここで、突起406は、ロータ磁性歯218の隙間に収容できるような大きさを持ち、ロータ磁性歯218と同様に例えば10°間隔で放射状に配置される。
【0049】
次いで、第2の組立ジグ404の基板405に、リング状の第3の組立ジグ407をネジ止めする(図7(c))。
そして、第2の組立ジグ404の突起406の相互間に、ロータ磁性歯218をそれぞれ配置する(図7(d))。
【0050】
次に、ロータ磁性歯218の相互間に、スペーサ221をそれぞれ配置する(図8(a))。
この状態で、ロータ磁性歯218及びスペーサ221の上面から、ロータコアホルダ219を焼き嵌めする(図8(b))。
その後、第1〜第3の組立ジグ401,404,407を取り除く(図8(c))。
次いで、図8(c)に示す部材を裏返し、ロータ磁性歯218の相互間のスペーサ221上に、ロータ磁極204をそれぞれ配置して組立を完了する。
以上のような手順で電磁ユニットを組み立てることにより、ロータ磁性歯218の位置決め精度が向上し、十分な出力トルクを確保することができる。
【0051】
ここで、ロータコアホルダ219の下面に形成される溝210とロータ磁性歯218とが線接触するような場合、両者の接触面積は少なくなる。更に公差について考えると、溝210とロータ磁性歯218とは点接触する可能性が高い。一般に、面接触>線接触>点接触の順に接触面積が小さくなるのに対し、ロータコアユニット217からロータコアホルダ219に伝達しなければならない力・焼き嵌め荷重は一定である。
つまり、ロータコアホルダ219側の溝210とロータ磁性歯218とが点接触する状態に近いほど、応力が高くなり、強度的な問題を生じる。
【0052】
このため、本実施形態では、ロータコアホルダ219の材質として、アルミのように積層鋼鈑よりも弾性係数・降伏応力が低く、しかも靭性の高いものを用いている。これにより、溝210とロータ磁性歯218との接触面に局所的に点接触や線接触が生じた場合でも、ロータコアホルダ219側を積極的に弾性変形・塑性変形させる構造としている。このロータコアホルダ219側の弾性変形・塑性変形により、点接触または線接触状態の接触面を面接触状態とすることができ、応力集中を緩和することができる。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。図9は第3実施形態に係る電磁ユニットの分解斜視図である。
図9において、ステータユニット100の構成は第1実施形態、第2実施形態と同様であり、図9では、便宜的にリング形コイルの図示が省略されている。
222はロータコアユニットであり、積層鋼板からなる多数のロータ磁性歯223とそれらの相互間に配置されるロータ磁極224とから構成される。なお、ロータ磁性歯223及びロータ磁極224の構造については後述する。
【0054】
225は、蓋状に形成された第1のロータコアホルダであり、複数のボルト孔226が形成されている。なお、235はロータコアホルダ225の円筒部である。また、227はリング状の第2のロータコアホルダであり、第1のロータコアホルダ225と第2のロータコアホルダ227とによってロータコアユニット222を上下から挟んだ状態でボルト締めすることで、第1,第2のロータコアホルダ225,227及びロータコアユニット222が一体的に連結、固定される。
これにより、ロータコアユニット222に発生したトルクは第1のロータコアホルダ225に確実に伝達され、更に、ロータコアホルダ225にボルト等にて連結された負荷(図示せず)に伝達されることになる。
なお、第1,第2のロータコアホルダ225,227は、ロータ磁性歯223の相互間を磁気的に絶縁するためにアルミ等の非磁性材料によって形成されている。
【0055】
図10は、図9の主要部の拡大図であり、特にロータ磁性歯223(その構成要素である電磁鋼板228)及びロータ磁極224の構造を説明するための図である。
図10において、ロータ磁性歯223を構成する電磁鋼板228の内側端部には、テーパ部229が形成されている。一方、第2のロータコアホルダ227の外周部には、アール状に面取りされた面取り部230が形成されており、前記テーパ部229は面取り部230に接触するようになっている。
【0056】
このため、ロータコアユニット222の内径と第2のロータコアホルダ227の外径との間に誤差があっても(すなわち、真円度に寸法公差があっても)、両者を間違いなく接触させて一体化することが可能である。つまり、第2のロータコアホルダ227として、積層鋼鈑より柔らかいアルミを用いると、ロータコアユニット222の内径と第2のロータコアホルダ227の外径との真円度が異なっても、ロータコアホルダ227側が確実に降伏または弾性変形するので、寸法公差を吸収することが可能である。
また、これにより、寸法公差によるロータ磁性歯223の相互間の偏荷重を極力抑えることもできる。更に、少なくともロータコアユニット222の外径寸法を、第1のロータコアホルダ225の円筒部材の内径の真円度に従わせることができる。
【0057】
更に、図10に示すように、ロータ磁性歯223の両側面には、電磁鋼板228をコ字状に切り起こすことにより係止部231が形成されている。また、この係止部231に合致するように、ロータ磁極224の両側面には凹部232が形成されている。
これらの係止部231及び凹部232は、何れもロータコアユニット222の軸と同一平面上にあり、しかも、上記軸に対して非平行に、つまり傾いて形成されている。また、ロータコアユニット222の組立に当たっては、係止部231が凹部232に収容されるようにロータ磁性歯223とロータ磁極224とが組み合わされる。これにより、ロータユニット200Cの回転時に、ロータ磁極224が半径方向外側に飛び出したり移動したりするのを防止することができる。
【0058】
本実施形態においても、ロータ磁極224は軸方向から見てほぼ扇形に形成され、このロータ磁極224がロータ磁性歯223の間のほぼ扇形の隙間に緊密に配置されているので、ロータ磁極224が移動または脱落するおそれは少ない。
ここで、ロータ磁極224が配置される隙間にもロータ磁極224自身にも、寸法公差が存在する。従って、ロータ磁極224が半径方向内側に移動し過ぎないように、所定の隙間よりもロータ磁極224の内径側厚みは薄めに、すなわち隙間公差によって製造され、ロータ磁極224の外径側厚みは厚めに、すなわち厚め公差によって製造されている。
また、係止部231はバネ特性を持つため、寸法公差があってもある程度屈曲するように設計することにより、寸法公差や熱膨張による寸法変化を、ばね部分の屈曲具合によって吸収することができる。
なお、第1のロータコアホルダ225の円筒部235の内周面は、前記面取り部230と同様にアール状に面取りされている。そして、この面取り部に対応するロータ磁性歯228側にも、図10に示すごとく半月状の凹部233が設けられている。この凹部233とロータコアホルダ225側の面取り部とを係止させることにより、組立性が一層向上する。
【0059】
図11は、本発明の第4実施形態を示す分解斜視図である。
この実施形態は、第3実施形態における第1のロータコアホルダ225を円板部と円筒部とに分離し、それぞれを第1のロータコアホルダ234、第3のロータコアホルダ236として、第2のロータコアホルダ227と共に用いたものである。第1のロータコアホルダ234には、第2のロータコアホルダ227をボルト締めするためのボルト孔237と、第3のロータコアホルダ236をボルト締めするためのボルト孔238とが形成されている。
なお、第1,第2,第3のロータコアホルダ234,227,236は、何れもアルミ等の非磁性材料によって形成されている。
【0060】
この実施形態においては、第1のロータコアホルダ234と第2のロータコアホルダ227とによりロータコアユニット222を上下から挟んでボルト締めし、更に、第1のロータコアホルダ234と第3のロータコアホルダ236とをボルト締めすることでロータユニット200Dが一体的に形成されるようになっている。
なお、ロータ磁性歯223の外周側端部には、図10の229:テーパ部229:テーパ部229:テーパ部テーパ部229と同様なテーパ部を形成し、このテーパ部に対応する第3のロータコアホルダ236の内周面には、図10のアール部230と同様のアール部を形成することが望ましい。
また、第1,第2,第3のロータコアホルダ234,227,236の軸位置公差を抑えるため、例えば第1のロータコアホルダ234と第2のロータコアホルダ227、第1のロータコアホルダ234と第3のロータコアホルダ236というように、円筒状の部品を軸心方向に並べて嵌め合わせる嵌合構造とすることが望ましい。
ここで、ロータ磁性歯223のテーパ部は、内周側端部、外周側端部の両方または何れか一方に形成すれば良く、このテーパ部に対応させてロータコアホルダ側のアール部を形成すれば良い。
【0061】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
前述した第1〜第4実施形態では、電磁鋼板を複数積層した積層鋼板によりロータ磁性歯を構成しているため、電磁ユニット全体として部品数が多くなる。また、ロータ磁性歯とステータ磁性歯との間の隙間を短くして磁気抵抗を減少させるためには、ロータ磁性歯の精密な組立が必要であるが、そのためには、積層鋼板を精密に作製しなくてはならない。しかし、電磁鋼板の精密な切り出しは困難であると共に、電磁鋼板を1枚ずつ精密に位置を合わせて積層することも難しい。
また、各部品の寸法公差の吸収を、金属自体の弾性変形や塑性変形に依存しているため、寸法公差の吸収幅が小さく、僅かな寸法公差を吸収するために大きな力が発生する等の問題がある。
そこで、本発明の第5実施形態は、上記問題を解決しようとするものである。
【0062】
図12,図13は第5実施形態を示す分解斜視図であり、図14は図12,図13におけるロータ磁性歯及びロータ磁極等の斜視図である。
図12において、100Aはステータユニットであり、軸方向に短いほぼ円筒状の第1のステータコア104と、同じくほぼ円筒状の第2のステータコア105と、これらのステータコア104,105を磁気的に結合するヨーク151と、を備えている。第1のステータコア104の内径は第2のステータコア105の外径より長く、これらのステータコア104,105は同心円状に配置されている。また、ステータコア104,105の対向面には、その全周にわたり、ステータ磁性歯106,107がそれぞれ形成されている。なお、外側のステータ磁性歯106と内側のステータ磁性歯107とは、周方向に5°ずらして形成されているが、このずれ角は5°以外であっても良い。
ステータコア104,105は圧粉磁芯により形成されており、これらの中心軸はロータユニット200Eの回転軸に一致している。
なお、ステータコア104,105の隙間にはリング形コイルが収納されるが、図12、図13では便宜的にリング形コイルの図示を省略してある。
【0063】
239はロータコアユニットであり、前記ステータコア104,105の隙間においてリング形コイルの上方に配置されるものである。
このロータコアユニット239は、多数のロータ磁性歯240を円周方向に沿って放射状に配置し、隣り合うロータ磁性歯240の間にロータ磁極241(図13参照)を配置して構成されている。ロータ磁極241は、前記同様に軸方向から見てほぼ扇形に形成されている。
【0064】
なお、ロータ磁性歯240は積層鋼板によって構成されており、この点では第1〜第4実施形態と共通する。しかし、この第5実施形態では、複数枚の電磁鋼板を予め接着してなる積層鋼板、すなわち接着鋼板からワイヤカットにより切り出してロータ磁性歯240を作製する点が、第1〜第4実施形態と大きく異なっている。また、隣り合うロータ磁性歯240は、円周方向に5°の間隔(角度)で配置されており、この間隔(角度)は5°に限定されるものではない。
ロータ磁性歯240として接着鋼板を用いることにより、部品点数が減り、組立が容易になる。また、接着鋼板からワイヤカットにて切り出すことにより、精密な形状のロータ磁性歯240を作製することができる。
【0065】
図13,図14において、242は電磁鋼板であり、ロータ磁性歯240の構成部品として参考的に図示したものである。ロータ磁性歯240(電磁鋼板242)の外周部ほぼ中央には、切り欠き243が形成されており、ロータコアユニット239を構成した際に円周方向に連続する切り欠き243には、リング状の締結具247が取り付けられる。また、図14に詳しく示すように、ロータ磁性歯240(電磁鋼板242)の軸方向一端部にも、切り欠き245,246が形成されている。これらの切り欠き245,246には、図12,図13に示す如く、リング状の別の締結具248,249がそれぞれ取り付けられる。
締結具247,248,249は、プラスチック等の非磁性材料、非導電材料によって構成されている。これらの締結具247,248,249を用いて多数のロータ磁性歯240及びロータ磁極241を一体的に締結することで、ロータ磁極241の脱落や移動を防ぎ、外力(例えばトルクや磁気吸引力)に対して安定かつ強固なロータコアユニット239を形成することができる。
【0066】
更に、ロータ磁性歯240(電磁鋼板242)の軸方向他端部(切り欠き245,246とは反対側の端部)には、スリット244が形成されている。このスリット244により、ロータ磁性歯240には半径方向のバネ力が付与されるので、ある程度大きな寸法公差があったとしても、小さい応力によって公差を吸収することができる。
上記スリット244によるロータ磁性歯240のバネ作用は、後述するロータコアホルダ250,252及びロータコアユニット239の径や真円度が多少異なって公差があったとしても、この公差の吸収に寄与する。これにより、寸法公差によるロータ磁性歯240の相互間の偏荷重を極力抑制することができる。更に、ロータ磁性歯240の内径側の組み立て寸法は、ロータコアホルダ250の円筒部外側の真円度に従わせることができる。
【0067】
また、図13において、250は第1のロータコアホルダであり、その下面には円筒部251が形成されている。なお、図12において、253はロータコアホルダ250に形成されたボルト孔である。
更に、252はリング状の第2のロータコアホルダであり、第1のロータコアホルダ250と共にロータコアユニット239を軸方向に挟み込んだ状態でボルト締めすることにより、第1,第2のロータコアホルダ250,252及びロータコアユニット239が一体的に連結、固定される。
ここで、第1,第2のロータコアホルダ250,252は、アルミのように強度が高く加工精度に優れ、かつ高靱性の非磁性材料によって形成されている。前記同様に、非磁性材料からなるロータコアホルダ250,252は、ロータ磁性歯240同士の磁気的短絡を防止している。
なお、図示されていないが、第1のロータコアホルダ250には、ボルト等によって負荷が連結されるものである。
上述したロータコアユニット239、締結具247,248,249、第1,第2のロータコアホルダ250,252により、ロータユニット200Eが構成されている。
【0068】
第1のロータコアホルダ250の前記円筒部251の外周面と、第2のロータコアホルダ252の内周面には、72面カットの面取り部254,255がそれぞれ形成されている。
仮に、円筒部251の外周面とロータコアホルダ252の内周面とが曲面のままであると、これらの外周面及び内周面に接触するロータ磁性歯240との間に三日月状(crescent−shaped)の隙間ができてしまう。この場合、第2のロータコアホルダ252をボルトによって第1のロータコアホルダ250側に引っ張り上げた際に、接着鋼板からなるロータ磁性歯240の接着面には、半径方向のせん断応力が発生し、力学的に不安定は状態となる。従って、円筒部251の外周面とロータコアホルダ252の内周面とに面取り部254,255を形成することで、上記の問題を解消することができる。
なお、第2のロータコアホルダ252の内周面の面取り部255には、図14に示すロータ磁性歯240のテーパ部256が接触するものである。なお、ロータ磁性歯240の内周側にテーパ部を形成し、このテーパ部を第1のロータコアホルダ250の面取り部254に接触させても良い。
【0069】
本発明は、上述した各実施形態に何ら限定されないことは言うまでもなく、各請求項の記載を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
100,100A:ステータユニット
101,102,104,105:ステータコア
103,106,107:ステータ磁性歯
150,151:ヨーク
200,200A,200B,200C,200D,200E:ロータユニット
201,204,224,241:ロータ磁極
202,205,218,223,240:ロータ磁性歯
203,217,222,239:ロータコアユニット
206,207,211,247,248,249:締結具
208,219,225,227,234,236,250,252:ロータコアホルダ
209,226,237,238,253:ボルト孔
210,212,214:溝部
213:孔部
215:折り曲げ部
216,231:係止部
220:隙間
221:スペーサ
228,242:電磁鋼板
229,256:テーパ部
230,254,255:面取り部
232:凹部
235,251:円筒部
243,245,246:切り欠き
244:スリット
401,404,407:組立ジグ
402,405:基板
403:凸部
406:突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平なモータ等の構成要素となる電磁ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボット、産業機械などの技術分野に適用される小型モータでは、コイルの巻回や装着を容易化し、コイルの実装密度を向上させて高効率化やトルク特性を向上させることが求められている。
ここで、図15、図16は特許文献1に記載されたリングコイルモータの例を示しており、図15はアウターロータ型、図16はインナーロータ型のステップモータである。
【0003】
図15において、1は固定軸、2,3は軸受、4はロータケース、5はロータヨーク、6,7はステータヨーク、8,9はリング形コイル、10はマグネット板である。
また、図16において、11は回転軸、12,13は軸受、15はロータヨーク、16,17はステータヨーク、18,19はリング形コイル、20はマグネット板である。
ロータヨーク5,15及びステータヨーク6,7,16,17の対向面には歯が形成されており、これらの歯の間には永久磁石がそれぞれ配置されている。
【0004】
上記モータでは、ロータの回転に伴い、内蔵された前記永久磁石の作用によってリング形コイル8,9,18,19に鎖交する磁束が変化する、すなわち、これらのコイルに無負荷誘起電圧が生じるように構成されている。このため、コイルに交番電流を通流することにより、モータにトルクが発生する仕組みとなっている。
これらのリングコイルモータでは、通常のモータのようにスロット内にコイルを配置する必要がなく、リング形コイルの製造も容易であると共に、ステータとロータとの相互作用によって高トルクを発生可能であるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−23732号公報(段落[0006]〜[0009]、図1,図8等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、狭いスペースにモータを配置して装置全体の小型化を図りたい場合には、軸方向の長さが短い扁平モータを使用することが望ましい。
しかし、図15、図16に示したモータは、ラジアルギャップ、すなわちステータとロータとの対向面が形成するギャップが円筒形状であるモータを想定している。この種のモータは軸方向に長くなりがちなため、モータを扁平に形成することが難しい。特に、三相のコイルを軸方向に並べる場合には、モータの扁平化は一層実現しにくくなる。
【0007】
更に、図16に示したインナーロータ型のモータでは、リング形コイル18,19の側部及び外周部をステータヨーク16,17によって囲む構造であるため、コイル18,19の構造が簡単であるにも関わらず、コイル18,19をステータヨーク16,17に組み込む場合に複雑な組立作業を要するという問題もある。
この組立作業を容易にするために、ステータヨーク16,17をそれぞれ軸方向中央部付近で2分割し、コイルを挟んだ後に結合するという方法が考えられるが、その場合にはステータコアにおける磁路が分断されるため、磁気抵抗が大きくなり、結果としてトルク低下を招くという問題がある。
一方、図15に示したアウターロータ型のモータによれば、ステータヨーク6,7の周囲にリング形コイル8,9を配置するため組立作業は容易であるものの、この種のアウターロータ型のモータを適用できる製品分野は必ずしも多くはない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、全体的に扁平化が可能であって組立が容易であり、大きなトルクを発生させるようにした電磁ユニットを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、循環電流や渦電流の発生を防止した電磁ユニットを提供することにある。
更に、本発明の別の目的は、ロータ磁極の移動や脱落を防止した電磁ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る電磁ユニットは、ステータユニットとロータユニットとから構成されている。
ここで、ステータユニットは、ステータ磁性歯列を有する第1のステータコアと、同じくステータ磁性歯列を有する第2のステータコアを有し、これら第1,第2のステータコアは同心円状に配置されたうえ互いに磁気的に結合されている。また、ステータユニットは、第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルを有する。
一方、ロータユニットは、ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有する。このロータコアユニットは、多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合うロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極とを備えている。これらのロータ磁性歯列及びロータ磁極は第1,第2のステータコアのステータ磁性歯列に対向するように配置される。
更に、ロータユニットは、ロータコアユニットと同軸上に配置されたアルミ等の非磁性材料からなるロータコアホルダを備えている。そして、本発明では、ロータ磁性歯を積層鋼板により構成し、このロータ磁性歯を、ロータコアホルダにカシメ止めにより一体的に連結、固定するものである。
【0010】
ここで、請求項2に記載するように、ロータ磁極は、軸方向から見てほぼ扇形(fan−shaped:以下、同じ)に形成することが望ましい。
また、請求項3に記載するように、ロータ磁性歯の側面を切り起こして係止部を形成し、この係止部によりロータ磁極の移動を防ぐような構造とすることが望ましい。
【0011】
請求項4に係る電磁ユニットにおいても、ステータユニットは、ステータ磁性歯列を有する第1のステータコアと、同じくステータ磁性歯列を有する第2のステータコアを有し、これら第1,第2のステータコアは同心円状に配置されたうえ互いに磁気的に結合されている。また、ステータユニットは、第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルを有する。
一方、ロータユニットは、ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有する。このロータコアユニットは、多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合うロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極とを備えている。これらのロータ磁性歯列及びロータ磁極は第1,第2のステータコアのステータ磁性歯列に対向するように配置される。
更に、ロータユニットは、ロータコアユニットと同軸上に配置されたアルミ等の非磁性材料からなるロータコアホルダを備えている。そして、本発明では、ロータ磁性歯を積層鋼板により構成し、このロータ磁性歯を、ロータコアホルダに焼き嵌めにより一体的に連結、固定するものである。
【0012】
また、請求項5に係る電磁ユニットは、隣り合うロータ磁性歯の隙間に、軸方向から見てほぼ扇形のスペーサを配置し、このスペーサ及びロータ磁性歯をロータコアホルダに焼き嵌めるものである。
【0013】
請求項6に係る電磁ユニットにおいても、ステータユニットは、ステータ磁性歯列を有する第1のステータコアと、同じくステータ磁性歯列を有する第2のステータコアを有し、これら第1,第2のステータコアは同心円状に配置されたうえ互いに磁気的に結合されている。また、ステータユニットは、第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルを有する。
一方、ロータユニットは、ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有する。このロータコアユニットは、多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合うロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極とを備えている。これらのロータ磁性歯列及びロータ磁極は第1,第2のステータコアのステータ磁性歯列に対向するように配置される。
更に、本発明において、ロータユニットは、ロータコアユニットと同軸上に配置されたアルミ等の非磁性材料からなる複数(例えば二個または三個)のロータコアホルダを備えている。そして、積層鋼板により構成されたロータ磁性歯を有するロータコアユニットを、複数のロータコアホルダにより挟み込んでボルト締めにより一体的に連結、固定したものである。
【0014】
なお、請求項7に記載するように、請求項6の電磁ユニットにおいても、ロータ磁極を、軸方向から見てほぼ扇形に形成することが望ましい。
【0015】
また、請求項8に記載するように、請求項6または7の電磁ユニットにおいて、ロータコアホルダのロータ磁性歯との接触面に面取り部を形成し、かつ、この面取り部に接触するロータ磁極の端部にテーパ部を形成すれば、ロータ磁性歯とロータ磁極とが隙間なく接触する。
【0016】
請求項9に記載するように、複数の円筒状のロータコアホルダを軸心方向に並べて嵌め合わせる嵌合構造によって連結することにより、ロータコアユニット及びロータコアホルダを含むロータユニット全体を一層強固に一体化することができる。
【0017】
請求項10に記載するように、請求項6〜9の何れか1項において、ロータ磁性歯の側面を切り起こして係止部を形成し、この係止部を、ロータ磁極の側面形成した凹部に係止させることにより、ロータ磁極の移動や脱落を防止することができる。
また、請求項11に記載するように、上記係止部及び凹部は、ほぼ同一平面上であってロータコアユニットの軸に対して非平行に配置される。
【0018】
請求項12に記載するように、請求項6〜11の何れか1項において、隣り合うロータ磁性歯により形成されるほぼ扇形の隙間に対し、同じくほぼ扇形のロータ磁極の内径側厚みを隙間公差により形成し、かつ、外径側厚みを厚め公差により形成することが望ましい。
【0019】
請求項13に係る電磁ユニットにおいても、ステータユニットは、ステータ磁性歯列を有する第1のステータコアと、同じくステータ磁性歯列を有する第2のステータコアを有し、これら第1,第2のステータコアは同心円状に配置されたうえ互いに磁気的に結合されている。また、ステータユニットは、第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルを有する。
一方、ロータユニットは、ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有する。このロータコアユニットは、多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合うロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極とを備えている。これらのロータ磁性歯列及びロータ磁極は第1,第2のステータコアのステータ磁性歯列に対向するように配置される。
更に、本発明では、前記ロータ磁性歯が、予め接着された複数の電磁鋼板からなる積層鋼板(接着鋼板)をワイヤカットにより切り出して形成されている。
また、ロータユニットは、ロータコアユニットと同軸上に配置されたアルミ等の非磁性材料からなるロータコアホルダを備えている。
そして、本発明では、ロータコアユニットを、複数のロータコアホルダにより挟み込んでボルト締めすることにより、一体的に連結、固定するものである。
【0020】
請求項14に記載するように、請求項13において、多数のロータ磁性歯をプラスチック等の非磁性・非導電性材料の締結具にて全体的に締結することにより、ロータ磁性歯やロータ磁極の移動を防止することができる。
また、請求項15に記載するように、ロータコアホルダのロータ磁性歯との接触面に面取り部を形成すると良い。
更に、請求項16に記載するように、請求項13〜15の何れか1項において、ロータ磁性歯にスリットを形成することによりロータ磁性歯にバネ機構を持たせ、各部の寸法公差を小さな応力で吸収させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、全体的に扁平化が可能であって組立が容易であり、大きなトルクを発生可能な電磁ユニットを提供することができる。
また、循環電流や渦電流の発生を防止して損失を低減し、しかもロータ磁極の移動や脱落を防止すると共に、各部の寸法交差を吸収可能な電磁ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の基本的な構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1を具体化した本発明の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】図2の主要部の拡大図である。
【図4】第1実施形態におけるロータ磁性歯をロータコアユニットの内周側から見た斜視図である。
【図5】第1実施形態におけるロータ磁性歯の側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す分解斜視図である。
【図7】第2実施形態における電磁ユニットの組み立て方法を示す図である。
【図8】第2実施形態における電磁ユニットの組み立て方法を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示す分解斜視図である。
【図10】図9の主要部の拡大図である。
【図11】本発明の第4実施形態を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の第5実施形態を示す分解斜視図である。
【図13】本発明の第5実施形態を示す分解斜視図である。
【図14】図12,図13におけるロータ磁性歯及びロータ磁極等の拡大斜視図である。
【図15】従来技術の構成図である。
【図16】従来技術の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
まず、図1は、本発明の基本的な構成を示す分解斜視図である。図1において、101,102は何れもほぼ円筒状の第1,第2ステータコアであり、軸方向一端部がヨーク150によって磁気的に結合されている。第1のステータコア101の内径は第2のステータコア102の外径より長く、これらのステータコア101,102は同心円状に配置されている。また、ステータコア101,102の軸方向他端部には、その全周にわたり、例えば20°間隔で多数のステータ磁性歯103がそれぞれ規則的に形成されている。これら多数のステータ磁性歯103の集合体を、ステータ磁性歯列という。
なお、ステータ磁性歯103の配置間隔(角度)は、20°に何ら限定されるものではなく、この点は以下のすべての実施形態でも同様である。
ここで、ステータコア101,102は、例えば圧粉磁芯により構成されている。
【0024】
更に、ステータコア101,102に挟まれた環状の隙間には、リング形コイル300が配置されている。図1では、リング形コイル300を一点鎖線で示してある。
これらのステータコア101,102、ヨーク150及びリング形コイル300により、ステータユニット100が構成される。
【0025】
一方、200はロータユニットを示している。このロータユニット200は、円周方向に沿ってN極、S極を交互に着磁した永久磁石からなるロータ磁極201と、円周方向に沿ってロータ磁極201と交互に配置されるロータ磁性歯202とからなり、全体がリング状に形成されている。ロータ磁性歯202は、円周上に例えば10°間隔で配置されている。
なお、ロータ磁性歯202の配置間隔(角度)は、10°に何ら限定されるものではなく、これは以下のすべての実施形態でも同様である。
このロータユニット200は、ステータコア101,102に挟まれた環状の隙間において、前記リング形コイル300の上方に同軸上に配置されるものである。
【0026】
図1の構成において、ロータユニット200が10°回転するたびに、リング形コイル300に鎖交する磁束(ロータ磁極201及びロータ磁性歯202からステータコア101,102を介して還流する磁束)が交番する。この磁束と、コイル300に交番電流を流して発生させた磁束との相乗作用により、ロータ磁性歯202とステータ磁性歯103との間に吸引力または反発力を作用させ、これによってトルクを発生することができる。
【0027】
この構造によると、リング形コイル300を使用するため、通常のモータのようにスロット内にコイルを配置する必要がなく、コイルの製造も容易である。また、従来技術として説明した図15、図16のように複数のコイルを軸方向に並べて配置する必要がないので、モータの扁平化に最適である。
更に、ステータコア101,102の隙間にリング形コイル300を嵌めればよいため、一種のインナーロータ型でありながら、ステータユニット100の組立が容易である。また、ステータユニット100とロータユニット200との嵌め合いも軸方向に沿って行えるので、電磁ユニットとしても組立性も良い。
【0028】
次に、図2は、図1の構成を具体化した本発明の第1実施形態を示す分解斜視図であり、理解を容易にするために一部を切り欠いてある。
図2において、ステータユニット100の構成は図1と同様である。なお、図2では、便宜的にリング形コイルの図示が省略されている。
【0029】
200Aはロータユニットであり、このロータユニット200Aは、ロータコアユニット203と、リング状のロータコアホルダ208と、締結具211とを備えている。
ロータコアユニット203は、図1のロータユニット200に相当しており、図3に拡大して示すように、円周方向に沿ってN極、S極を交互に着磁した永久磁石からなるロータ磁極204と、円周方向に沿ってロータ磁極204と交互に配置されるロータ磁性歯205と、複数のロータ磁性歯205の外周部を連結する締結具206と、ロータ磁性歯205の内周部に嵌合する締結具207とを備え、全体がリング状に形成されている。ロータ磁性歯205は、電磁鋼板を複数積層してなる積層鋼板によって構成されており、円周上に例えば10°間隔で配置されている。なお、多数のロータ磁性歯205の集合体を、ロータ磁性歯列というものとする。
【0030】
この実施形態では、図2、図3から明らかなように、多数のロータ磁性歯205を円周方向に沿って放射状に配置するために、ロータ磁性歯205の間に配置されるロータ磁極204が、軸方向から見てほぼ扇形に形成されている。
また、図4は、隣り合う2個のロータ磁性歯205をロータコアユニット203の内周側から見た斜視図であり、図5は、ロータ磁性歯205の側面図である。
図4、図5に示すように、ロータ磁性歯205の外周部には、前記締結具206が嵌合する溝部212が複数形成されている。なお、図5において、213は締結具206の端部を引っ掛けて固定するための孔部である。更に、ロータ磁性歯205の内周部にも、溝部214が形成されている。この溝部214は、図2、図3に示す内周側の締結具207を嵌合させるためのものである。
【0031】
ここで、ロータ磁性歯205やロータ磁極204が円周方向に倒れると、ロータコアユニット203の外径が長くなったり、ロータ磁性歯205とステータ磁性歯103との対向面積が減少するという問題がある。ロータコアユニット203の外径が長くなる分は、公差として予め設計する必要があるため、結果としてロータ磁性歯205とステータ磁性歯103との隙間が広くなる。このように隙間が広くなると、磁気抵抗が増加する。また、ロータ磁性歯205とステータ磁性歯103との対向面積が減少することも、磁気抵抗の増加を招く。
【0032】
ロータ磁性歯205とステータ磁性歯103との隙間は、磁束を通すための大切な磁気回路の一部であるため、この隙間が広がると、リング形コイルに鎖交するロータ磁極204からの磁束が減り、漏れ磁束が増える。これにより、モータとしての発生トルクが減少してしまう。
更に、トルク発生時にロータ磁性歯205やロータ磁極204が円周方向に倒れると、ロータ磁性歯205とロータ磁極204との接触面や、ロータ磁性歯205を構成する電磁鋼板同士の接触面で摩擦熱が発生する。この摩擦熱はエネルギー損失となるだけでなく、ロータコアユニット203の過熱にもつながるので、ロータ磁性歯205やロータ磁極204が円周方向に倒れるのを防ぐ必要がある。
【0033】
上記の点にかんがみ、本実施形態では、多数の締結具206をロータコアユニット203の外周部に配置して複数のロータ磁極204及びロータ磁性歯205を締結している。この締結具206の締結作用により、トルク発生時にロータ磁性歯205やロータ磁極204が円周方向に倒れるのを防止し、ロータ磁性歯205とロータ磁極204との接触面や、ロータ磁性歯205を構成する電磁鋼板同士の接触面の面圧及び摩擦力を増加させている。
【0034】
なお、締結具206は、アルミのように強度があって加工精度が高い非磁性材料を用いると良い。これにより、締結効果を高めると共に、ロータ磁極204のN極、S極間の磁気的短絡を防止し、漏れ磁束を減少させることができる。
また、締結具206を多数、分離して配置することで、循環電流が流れるのを防止することができ、半径方向からの組み立てを容易にしている。また、締結具206を細長い棒状に形成することで、渦電流を流れにくくして損失低減を図っている。
【0035】
更に、ロータコアユニット203の内周部の締結具207は、後述する締結具211と共に、ロータ磁極204及びロータ磁性歯205が半径方向に倒れたり移動するのを防止している。この締結具207にも、アルミのように強度があって加工精度が高い非磁性材料を用いると良い。これにより、締結効果を高めると共に、ロータ磁極204のN極、S極間の磁気的短絡を防止し、漏れ磁束を減少させることができる。
【0036】
また、図4、図5に示すごとく、ロータ磁性歯205の側面には係止部216が形成されている。
締結具206による締結力がロータ磁性歯205に作用していることや、ロータ磁極204が軸方向から見てほぼ扇形に形成されていること、更には回転時の遠心力等により、ロータ磁極204には常に半径方向外向きの力が働く。このため、折り曲げ部215を残して電磁鋼板をコ字形(U−shaped:以下、同じ)に切り起こすことにより係止部216を形成し、その突出した部分をロータ磁極204に対するストッパーとして作用させ、ロータ磁極204が半径方向の外側に飛び出すのを防止している。
【0037】
なお、積層鋼板は弾性を有するため、ロータ磁極204を半径方向外側から挿入する際に係止部216が支障になるおそれはない。更に、モータの運転時にロータコアユニット203が熱膨張したとしても、積層鋼板の弾性により、ロータ磁極204が半径方向外向きに移動するだけで、ロータコアユニット203の外径増加を防ぐことができる。
【0038】
図2に戻って、ロータコアホルダ208の下面には、ロータ磁性歯205を受容する溝部210が放射状に形成されている。ロータ磁性歯205をこれらの溝部210に嵌合させ、カシメによって固定することにより、ロータコアユニット203とロータコアホルダ208とを一体的かつ強固に連結することができる。
また、ロータ磁性歯205と溝部210との嵌合部分を外側から覆うように、ベルト状の締結具211が取り付けられる。この締結具211も、前記締結具206,207と同様にアルミ等の非磁性材料からなっている。
【0039】
ロータコアホルダ208の上面(溝部210とは反対側の面)には、軸方向にボルト孔209が複数形成されている。これらのボルト孔209は、図示されていないシャフトや各種の負荷(以下、これらを総称して負荷という)をボルトによってロータコアホルダ208に連結するためのものであり、ロータコアユニット203の発生トルクがロータコアホルダ208を介して負荷に伝達されるようになっている。
【0040】
この実施形態において、ロータコアホルダ208も、アルミ等の非磁性材料によって形成することにより、ロータコアホルダ208を通じた磁気抵抗を高くしてロータ磁極204のN極とS極との磁気的短絡を防止することができる。
なお、締結具206,207,211及びロータコアホルダ208を、アルミ以外の非磁性材料により形成しても良いのは言うまでもない。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
前述した第1実施形態では、ロータコアホルダ208に、ロータ磁性歯205を嵌合させるための溝部210を形成することが必要である。この種のカシメ溝は、通常は平行な溝部として形成されるが、第1実施形態では構造上、放射状に形成しなくてはならず、その加工に多くの時間や労力を要する。
また、カシメによってロータコアホルダ208とロータ磁性歯205とを連結する際に、ロータ磁性歯205の積層鋼板を構成する個々の電磁鋼板に力を均等に加えることが難しく、応力集中が起きやすいという問題もある。
更に、締結具206の強度が小さい場合、ロータ磁極204とロータ磁性歯205との摩擦力が小さくなり、ロータコアユニット203からロータコアホルダ208側に伝達されるトルクが小さくなって高トルク密度化の要請に応えられなくなる。
そこで、本発明の第2実施形態は、上記の点を改良したものである。
【0042】
図6は、第2実施形態を示す分解斜視図である。
まず、ステータユニット100の構成は第1実施形態と同様である。図6では、便宜的にリング形コイルの図示が省略されている。
ロータコアユニット217は、積層鋼板からなる多数のロータ磁性歯218と、隣り合うロータ磁性歯218の隙間に配置されるロータ磁極204とを備えている。なお、ロータ磁極204は前記同様に軸方向から見てほぼ扇形に形成されている。
また、ロータ磁性歯218は、前記ロータ磁性歯205と同様にロータ磁極204に係止する係止部216を備えているが、この実施形態では前記締結具206が不要なため、ロータ磁性歯218には、締結具206に嵌合させるための溝部が存在しない。
【0043】
更に、図6に拡大して示すように、隣り合うロータ磁性歯218の間の、ロータ磁極204の上部の隙間220には、ロータ磁極204と同様にほぼ扇形に形成されたスペーサ221がそれぞれ収容される。これらのスペーサ221は、後述する如く、ロータ磁性歯218と共に、後述するロータコアホルダ219に焼き嵌めによって一体的に固定される。また、スペーサ221は、アルミのように強度が高く加工精度に優れた非磁性材料によって形成されている。
219はロータコアホルダであり、第1実施形態のロータコアホルダ208と同様にアルミ等の非磁性材料からなるが、特に、積層鋼板より降伏応力が低い材料、または、弾性係数が十分に低い材料が使用される。
【0044】
上記構成において、ステータユニット100側のリング形コイルに流れる交番電流により発生した磁界の方向は、ロータ磁性歯218の部分において常に変化する。このような磁界の方向の変化は、渦電流を発生させ、熱損失を発生させる。これにより、モータのエネルギー変換効率が下がるだけでなく、熱応力を発生させ,強度的な問題にも発展することになる。
このため、第1実施形態と同様に第2実施形態でも、渦電流を抑制するために、ロータ磁性歯218として積層鋼板を使用している。
また、ロータ磁性歯218は、発生トルクをロータコアホルダ219に効率よく伝達する必要があるが、この第2実施形態では、第1実施形態のようなカシメ構造を用いずに、焼き嵌め構造(焼き嵌め面圧による摩擦力)によってロータコアユニット217ロータコアユニット217ロータコアユニット217ロータコアユニット217とロータコアホルダ219とを連結し、ロータコアホルダ219側に力が伝達されるようにした。
【0045】
ところで、電磁鋼鈑は通常、厚さが均一であるため、この電磁鋼板を複数積層して積層鋼板を形成してもその厚さは均一である。従って、この積層鋼板により構成されたロータ磁性歯218を放射状に配置する場合、隣り合うロータ磁性歯218の間に軸方向から見てほぼ扇形の隙間(図6における隙間220)が残ることになる。このように隙間がある状態では、応力を支えることができず、焼き嵌めによってロータコアユニット217とロータコアホルダ219とを強固に連結することができない。
【0046】
よって、この第2実施形態では、焼き嵌め応力が加わる隙間220に、軸方向から見てほぼ扇形のスペーサ221を配置することとした。すなわち、隣り合うロータ磁性歯218の間の隙間220には、ロータ磁極204とスペーサ221とが配置されることになり、焼き嵌めによる強力な圧縮応力はロータ磁極204とスペーサ221とに分散して加わる。これにより、ロータ磁極204が破損するのを防止することができる。
もちろん、ロータ磁極204の強度が,焼き嵌めによる圧縮応力に対して十分強い場合は、スペーサ221の代わりにロータ磁極204を直接、焼き嵌めてしても良い。こうすると、スペーサ221を用いる場合に比べて、ロータ磁極204として面積の大きな永久磁石を使うことができ、モータの出力トルクの向上に繋がる。
【0047】
なお、上記のような電磁ユニットを構成する上での課題の一つに、組立性の向上がある。特に、ロータ磁性歯218の半径方向の位置決め精度は、モータの出力トルクに直結するため非常に重要である。ところが、図6に示したような構造は部品点数が多いため、個々の部品の加工精度の影響も大きく、加えて、組立精度の影響もある。
これらの点を考慮して、本実施形態では、図7、図8に示すような手順により電磁ユニットを組み立てることとし、これによってロータ磁性歯218の位置決め精度を向上させ、十分な出力トルクを確保するようにした。同時に、電磁ユニットの組立性や作業性の向上を可能にしている。
【0048】
以下、本実施形態における電磁ユニットの組立方法を図7、図8に基づいて説明する。
まず、円形の基板402とその中央部に形成された凸部403とからなる第1の組立ジグ401を用意する(図7(a))。
次に、第1の組立ジグ401の基板402上に、第2の組立ジグ404をネジ止めする(図7(b))。第2の組立ジグ404は、リング状の基板405と、その上面において円周方向に配置された多数の突起406を備えている。ここで、突起406は、ロータ磁性歯218の隙間に収容できるような大きさを持ち、ロータ磁性歯218と同様に例えば10°間隔で放射状に配置される。
【0049】
次いで、第2の組立ジグ404の基板405に、リング状の第3の組立ジグ407をネジ止めする(図7(c))。
そして、第2の組立ジグ404の突起406の相互間に、ロータ磁性歯218をそれぞれ配置する(図7(d))。
【0050】
次に、ロータ磁性歯218の相互間に、スペーサ221をそれぞれ配置する(図8(a))。
この状態で、ロータ磁性歯218及びスペーサ221の上面から、ロータコアホルダ219を焼き嵌めする(図8(b))。
その後、第1〜第3の組立ジグ401,404,407を取り除く(図8(c))。
次いで、図8(c)に示す部材を裏返し、ロータ磁性歯218の相互間のスペーサ221上に、ロータ磁極204をそれぞれ配置して組立を完了する。
以上のような手順で電磁ユニットを組み立てることにより、ロータ磁性歯218の位置決め精度が向上し、十分な出力トルクを確保することができる。
【0051】
ここで、ロータコアホルダ219の下面に形成される溝210とロータ磁性歯218とが線接触するような場合、両者の接触面積は少なくなる。更に公差について考えると、溝210とロータ磁性歯218とは点接触する可能性が高い。一般に、面接触>線接触>点接触の順に接触面積が小さくなるのに対し、ロータコアユニット217からロータコアホルダ219に伝達しなければならない力・焼き嵌め荷重は一定である。
つまり、ロータコアホルダ219側の溝210とロータ磁性歯218とが点接触する状態に近いほど、応力が高くなり、強度的な問題を生じる。
【0052】
このため、本実施形態では、ロータコアホルダ219の材質として、アルミのように積層鋼鈑よりも弾性係数・降伏応力が低く、しかも靭性の高いものを用いている。これにより、溝210とロータ磁性歯218との接触面に局所的に点接触や線接触が生じた場合でも、ロータコアホルダ219側を積極的に弾性変形・塑性変形させる構造としている。このロータコアホルダ219側の弾性変形・塑性変形により、点接触または線接触状態の接触面を面接触状態とすることができ、応力集中を緩和することができる。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。図9は第3実施形態に係る電磁ユニットの分解斜視図である。
図9において、ステータユニット100の構成は第1実施形態、第2実施形態と同様であり、図9では、便宜的にリング形コイルの図示が省略されている。
222はロータコアユニットであり、積層鋼板からなる多数のロータ磁性歯223とそれらの相互間に配置されるロータ磁極224とから構成される。なお、ロータ磁性歯223及びロータ磁極224の構造については後述する。
【0054】
225は、蓋状に形成された第1のロータコアホルダであり、複数のボルト孔226が形成されている。なお、235はロータコアホルダ225の円筒部である。また、227はリング状の第2のロータコアホルダであり、第1のロータコアホルダ225と第2のロータコアホルダ227とによってロータコアユニット222を上下から挟んだ状態でボルト締めすることで、第1,第2のロータコアホルダ225,227及びロータコアユニット222が一体的に連結、固定される。
これにより、ロータコアユニット222に発生したトルクは第1のロータコアホルダ225に確実に伝達され、更に、ロータコアホルダ225にボルト等にて連結された負荷(図示せず)に伝達されることになる。
なお、第1,第2のロータコアホルダ225,227は、ロータ磁性歯223の相互間を磁気的に絶縁するためにアルミ等の非磁性材料によって形成されている。
【0055】
図10は、図9の主要部の拡大図であり、特にロータ磁性歯223(その構成要素である電磁鋼板228)及びロータ磁極224の構造を説明するための図である。
図10において、ロータ磁性歯223を構成する電磁鋼板228の内側端部には、テーパ部229が形成されている。一方、第2のロータコアホルダ227の外周部には、アール状に面取りされた面取り部230が形成されており、前記テーパ部229は面取り部230に接触するようになっている。
【0056】
このため、ロータコアユニット222の内径と第2のロータコアホルダ227の外径との間に誤差があっても(すなわち、真円度に寸法公差があっても)、両者を間違いなく接触させて一体化することが可能である。つまり、第2のロータコアホルダ227として、積層鋼鈑より柔らかいアルミを用いると、ロータコアユニット222の内径と第2のロータコアホルダ227の外径との真円度が異なっても、ロータコアホルダ227側が確実に降伏または弾性変形するので、寸法公差を吸収することが可能である。
また、これにより、寸法公差によるロータ磁性歯223の相互間の偏荷重を極力抑えることもできる。更に、少なくともロータコアユニット222の外径寸法を、第1のロータコアホルダ225の円筒部材の内径の真円度に従わせることができる。
【0057】
更に、図10に示すように、ロータ磁性歯223の両側面には、電磁鋼板228をコ字状に切り起こすことにより係止部231が形成されている。また、この係止部231に合致するように、ロータ磁極224の両側面には凹部232が形成されている。
これらの係止部231及び凹部232は、何れもロータコアユニット222の軸と同一平面上にあり、しかも、上記軸に対して非平行に、つまり傾いて形成されている。また、ロータコアユニット222の組立に当たっては、係止部231が凹部232に収容されるようにロータ磁性歯223とロータ磁極224とが組み合わされる。これにより、ロータユニット200Cの回転時に、ロータ磁極224が半径方向外側に飛び出したり移動したりするのを防止することができる。
【0058】
本実施形態においても、ロータ磁極224は軸方向から見てほぼ扇形に形成され、このロータ磁極224がロータ磁性歯223の間のほぼ扇形の隙間に緊密に配置されているので、ロータ磁極224が移動または脱落するおそれは少ない。
ここで、ロータ磁極224が配置される隙間にもロータ磁極224自身にも、寸法公差が存在する。従って、ロータ磁極224が半径方向内側に移動し過ぎないように、所定の隙間よりもロータ磁極224の内径側厚みは薄めに、すなわち隙間公差によって製造され、ロータ磁極224の外径側厚みは厚めに、すなわち厚め公差によって製造されている。
また、係止部231はバネ特性を持つため、寸法公差があってもある程度屈曲するように設計することにより、寸法公差や熱膨張による寸法変化を、ばね部分の屈曲具合によって吸収することができる。
なお、第1のロータコアホルダ225の円筒部235の内周面は、前記面取り部230と同様にアール状に面取りされている。そして、この面取り部に対応するロータ磁性歯228側にも、図10に示すごとく半月状の凹部233が設けられている。この凹部233とロータコアホルダ225側の面取り部とを係止させることにより、組立性が一層向上する。
【0059】
図11は、本発明の第4実施形態を示す分解斜視図である。
この実施形態は、第3実施形態における第1のロータコアホルダ225を円板部と円筒部とに分離し、それぞれを第1のロータコアホルダ234、第3のロータコアホルダ236として、第2のロータコアホルダ227と共に用いたものである。第1のロータコアホルダ234には、第2のロータコアホルダ227をボルト締めするためのボルト孔237と、第3のロータコアホルダ236をボルト締めするためのボルト孔238とが形成されている。
なお、第1,第2,第3のロータコアホルダ234,227,236は、何れもアルミ等の非磁性材料によって形成されている。
【0060】
この実施形態においては、第1のロータコアホルダ234と第2のロータコアホルダ227とによりロータコアユニット222を上下から挟んでボルト締めし、更に、第1のロータコアホルダ234と第3のロータコアホルダ236とをボルト締めすることでロータユニット200Dが一体的に形成されるようになっている。
なお、ロータ磁性歯223の外周側端部には、図10の229:テーパ部229:テーパ部229:テーパ部テーパ部229と同様なテーパ部を形成し、このテーパ部に対応する第3のロータコアホルダ236の内周面には、図10のアール部230と同様のアール部を形成することが望ましい。
また、第1,第2,第3のロータコアホルダ234,227,236の軸位置公差を抑えるため、例えば第1のロータコアホルダ234と第2のロータコアホルダ227、第1のロータコアホルダ234と第3のロータコアホルダ236というように、円筒状の部品を軸心方向に並べて嵌め合わせる嵌合構造とすることが望ましい。
ここで、ロータ磁性歯223のテーパ部は、内周側端部、外周側端部の両方または何れか一方に形成すれば良く、このテーパ部に対応させてロータコアホルダ側のアール部を形成すれば良い。
【0061】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
前述した第1〜第4実施形態では、電磁鋼板を複数積層した積層鋼板によりロータ磁性歯を構成しているため、電磁ユニット全体として部品数が多くなる。また、ロータ磁性歯とステータ磁性歯との間の隙間を短くして磁気抵抗を減少させるためには、ロータ磁性歯の精密な組立が必要であるが、そのためには、積層鋼板を精密に作製しなくてはならない。しかし、電磁鋼板の精密な切り出しは困難であると共に、電磁鋼板を1枚ずつ精密に位置を合わせて積層することも難しい。
また、各部品の寸法公差の吸収を、金属自体の弾性変形や塑性変形に依存しているため、寸法公差の吸収幅が小さく、僅かな寸法公差を吸収するために大きな力が発生する等の問題がある。
そこで、本発明の第5実施形態は、上記問題を解決しようとするものである。
【0062】
図12,図13は第5実施形態を示す分解斜視図であり、図14は図12,図13におけるロータ磁性歯及びロータ磁極等の斜視図である。
図12において、100Aはステータユニットであり、軸方向に短いほぼ円筒状の第1のステータコア104と、同じくほぼ円筒状の第2のステータコア105と、これらのステータコア104,105を磁気的に結合するヨーク151と、を備えている。第1のステータコア104の内径は第2のステータコア105の外径より長く、これらのステータコア104,105は同心円状に配置されている。また、ステータコア104,105の対向面には、その全周にわたり、ステータ磁性歯106,107がそれぞれ形成されている。なお、外側のステータ磁性歯106と内側のステータ磁性歯107とは、周方向に5°ずらして形成されているが、このずれ角は5°以外であっても良い。
ステータコア104,105は圧粉磁芯により形成されており、これらの中心軸はロータユニット200Eの回転軸に一致している。
なお、ステータコア104,105の隙間にはリング形コイルが収納されるが、図12、図13では便宜的にリング形コイルの図示を省略してある。
【0063】
239はロータコアユニットであり、前記ステータコア104,105の隙間においてリング形コイルの上方に配置されるものである。
このロータコアユニット239は、多数のロータ磁性歯240を円周方向に沿って放射状に配置し、隣り合うロータ磁性歯240の間にロータ磁極241(図13参照)を配置して構成されている。ロータ磁極241は、前記同様に軸方向から見てほぼ扇形に形成されている。
【0064】
なお、ロータ磁性歯240は積層鋼板によって構成されており、この点では第1〜第4実施形態と共通する。しかし、この第5実施形態では、複数枚の電磁鋼板を予め接着してなる積層鋼板、すなわち接着鋼板からワイヤカットにより切り出してロータ磁性歯240を作製する点が、第1〜第4実施形態と大きく異なっている。また、隣り合うロータ磁性歯240は、円周方向に5°の間隔(角度)で配置されており、この間隔(角度)は5°に限定されるものではない。
ロータ磁性歯240として接着鋼板を用いることにより、部品点数が減り、組立が容易になる。また、接着鋼板からワイヤカットにて切り出すことにより、精密な形状のロータ磁性歯240を作製することができる。
【0065】
図13,図14において、242は電磁鋼板であり、ロータ磁性歯240の構成部品として参考的に図示したものである。ロータ磁性歯240(電磁鋼板242)の外周部ほぼ中央には、切り欠き243が形成されており、ロータコアユニット239を構成した際に円周方向に連続する切り欠き243には、リング状の締結具247が取り付けられる。また、図14に詳しく示すように、ロータ磁性歯240(電磁鋼板242)の軸方向一端部にも、切り欠き245,246が形成されている。これらの切り欠き245,246には、図12,図13に示す如く、リング状の別の締結具248,249がそれぞれ取り付けられる。
締結具247,248,249は、プラスチック等の非磁性材料、非導電材料によって構成されている。これらの締結具247,248,249を用いて多数のロータ磁性歯240及びロータ磁極241を一体的に締結することで、ロータ磁極241の脱落や移動を防ぎ、外力(例えばトルクや磁気吸引力)に対して安定かつ強固なロータコアユニット239を形成することができる。
【0066】
更に、ロータ磁性歯240(電磁鋼板242)の軸方向他端部(切り欠き245,246とは反対側の端部)には、スリット244が形成されている。このスリット244により、ロータ磁性歯240には半径方向のバネ力が付与されるので、ある程度大きな寸法公差があったとしても、小さい応力によって公差を吸収することができる。
上記スリット244によるロータ磁性歯240のバネ作用は、後述するロータコアホルダ250,252及びロータコアユニット239の径や真円度が多少異なって公差があったとしても、この公差の吸収に寄与する。これにより、寸法公差によるロータ磁性歯240の相互間の偏荷重を極力抑制することができる。更に、ロータ磁性歯240の内径側の組み立て寸法は、ロータコアホルダ250の円筒部外側の真円度に従わせることができる。
【0067】
また、図13において、250は第1のロータコアホルダであり、その下面には円筒部251が形成されている。なお、図12において、253はロータコアホルダ250に形成されたボルト孔である。
更に、252はリング状の第2のロータコアホルダであり、第1のロータコアホルダ250と共にロータコアユニット239を軸方向に挟み込んだ状態でボルト締めすることにより、第1,第2のロータコアホルダ250,252及びロータコアユニット239が一体的に連結、固定される。
ここで、第1,第2のロータコアホルダ250,252は、アルミのように強度が高く加工精度に優れ、かつ高靱性の非磁性材料によって形成されている。前記同様に、非磁性材料からなるロータコアホルダ250,252は、ロータ磁性歯240同士の磁気的短絡を防止している。
なお、図示されていないが、第1のロータコアホルダ250には、ボルト等によって負荷が連結されるものである。
上述したロータコアユニット239、締結具247,248,249、第1,第2のロータコアホルダ250,252により、ロータユニット200Eが構成されている。
【0068】
第1のロータコアホルダ250の前記円筒部251の外周面と、第2のロータコアホルダ252の内周面には、72面カットの面取り部254,255がそれぞれ形成されている。
仮に、円筒部251の外周面とロータコアホルダ252の内周面とが曲面のままであると、これらの外周面及び内周面に接触するロータ磁性歯240との間に三日月状(crescent−shaped)の隙間ができてしまう。この場合、第2のロータコアホルダ252をボルトによって第1のロータコアホルダ250側に引っ張り上げた際に、接着鋼板からなるロータ磁性歯240の接着面には、半径方向のせん断応力が発生し、力学的に不安定は状態となる。従って、円筒部251の外周面とロータコアホルダ252の内周面とに面取り部254,255を形成することで、上記の問題を解消することができる。
なお、第2のロータコアホルダ252の内周面の面取り部255には、図14に示すロータ磁性歯240のテーパ部256が接触するものである。なお、ロータ磁性歯240の内周側にテーパ部を形成し、このテーパ部を第1のロータコアホルダ250の面取り部254に接触させても良い。
【0069】
本発明は、上述した各実施形態に何ら限定されないことは言うまでもなく、各請求項の記載を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
100,100A:ステータユニット
101,102,104,105:ステータコア
103,106,107:ステータ磁性歯
150,151:ヨーク
200,200A,200B,200C,200D,200E:ロータユニット
201,204,224,241:ロータ磁極
202,205,218,223,240:ロータ磁性歯
203,217,222,239:ロータコアユニット
206,207,211,247,248,249:締結具
208,219,225,227,234,236,250,252:ロータコアホルダ
209,226,237,238,253:ボルト孔
210,212,214:溝部
213:孔部
215:折り曲げ部
216,231:係止部
220:隙間
221:スペーサ
228,242:電磁鋼板
229,256:テーパ部
230,254,255:面取り部
232:凹部
235,251:円筒部
243,245,246:切り欠き
244:スリット
401,404,407:組立ジグ
402,405:基板
403:凸部
406:突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に沿って規則的に配置された多数のステータ磁性歯からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気的に結合されたリング状の第1,第2のステータコアと、
第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルと、
を有するステータユニット、
及び、
多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極と、を有し、前記ロータ磁性歯列及びロータ磁極が第1,第2のステータコアの前記ステータ磁性歯列に対向すると共に、前記ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有するロータユニット、
を備えた電磁ユニットにおいて、
前記ロータユニットは、
前記ロータコアユニットと同軸上に配置された非磁性材料からなるロータコアホルダを備え、
積層鋼板により構成された前記ロータ磁性歯を、前記ロータコアホルダにカシメ止めにより一体的に連結、固定したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁極が、軸方向から見てほぼ扇形に形成されていることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁性歯の側面を切り起こし、前記ロータ磁極に係止してその移動を防ぐための係止部を形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項4】
周方向に沿って規則的に配置された多数のステータ磁性歯からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気的に結合されたリング状の第1,第2のステータコアと、
第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルと、
を有するステータユニット、
及び、
多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極と、を有し、前記ロータ磁性歯列及びロータ磁極が第1,第2のステータコアの前記ステータ磁性歯列に対向すると共に、前記ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有するロータユニット、
を備えた電磁ユニットにおいて、
前記ロータユニットは、
前記ロータコアユニットと同軸上に配置された非磁性材料からなるロータコアホルダを備え、
積層鋼板により構成された前記ロータ磁性歯を、前記ロータコアホルダに焼き嵌めにより一体的に連結、固定したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載した電磁ユニットにおいて、
隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間に、軸方向から見てほぼ扇形のスペーサを配置し、このスペーサ及び前記ロータ磁性歯を、前記ロータコアホルダに焼き嵌めることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項6】
周方向に沿って規則的に配置された多数のステータ磁性歯からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気的に結合されたリング状の第1,第2のステータコアと、
第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルと、
を有するステータユニット、
及び、
多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極と、を有し、前記ロータ磁性歯列及びロータ磁極が第1,第2のステータコアの前記ステータ磁性歯列に対向すると共に、前記ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有するロータユニット、
を備えた電磁ユニットにおいて、
前記ロータユニットは、
前記ロータコアユニットと同軸上に配置された非磁性材料からなる複数のロータコアホルダを備え、
積層鋼板により構成された前記ロータ磁性歯を有する前記ロータコアユニットを、複数の前記ロータコアホルダにより挟み込んでボルト締めにより一体的に連結、固定したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁極が、軸方向から見てほぼ扇形に形成されていることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項8】
請求項6または7に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータコアホルダの前記ロータ磁性歯との接触面に面取り部を形成し、かつ、この面取り部に接触する前記ロータ磁極の端部にテーパ部を形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか1項に記載した電磁ユニットにおいて、
互いに連結される前記ロータコアホルダの双方に、前記ロータコアホルダを軸心方向に並べて嵌め合わせる嵌合構造を形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項10】
請求項6〜9の何れか1項に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁性歯の側面を切り起こして係止部を形成し、前記ロータ磁極の側面に、前記係止部に係止する凹部を形成した凹部凹部ことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載した電磁ユニットにおいて、
前記係止部及び凹部がほぼ同一平面上に形成され、かつ、前記ロータコアユニットの軸に対して非平行であることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項12】
請求項6〜11の何れか1項に記載した電磁ユニットにおいて、
隣り合う前記ロータ磁性歯により形成される、軸方向から見てほぼ扇形の隙間に対し、同じくほぼ扇形の前記ロータ磁極の内径側厚みが隙間公差により形成され、かつ、外径側厚みが厚め公差により形成されていることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項13】
周方向に沿って規則的に配置された多数のステータ磁性歯からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気的に結合されたリング状の第1,第2のステータコアと、
第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルと、
を有するステータユニット、
及び、
多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極と、を有し、前記ロータ磁性歯列及びロータ磁極が第1,第2のステータコアの前記ステータ磁性歯列に対向すると共に、前記ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有するロータユニット、
を備えた電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁性歯は、予め接着された複数の電磁鋼板からなる積層鋼板をワイヤカットにより切り出して形成され、
前記ロータユニットは、前記ロータコアユニットと同軸上に配置された非磁性材料からなる複数のロータコアホルダを備え、
前記ロータコアユニットを、複数の前記ロータコアホルダにより挟み込んでボルト締めにより一体的に連結、固定したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項14】
請求項13に記載した電磁ユニットにおいて、
多数の前記ロータ磁性歯を、非磁性・非導電性材料の締結具にて全体的に締結したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項15】
請求項13または14に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータコアホルダの前記ロータ磁性歯との接触面に面取り部を形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項16】
請求項13〜15の何れか1項に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁性歯にスリットを形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項1】
周方向に沿って規則的に配置された多数のステータ磁性歯からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気的に結合されたリング状の第1,第2のステータコアと、
第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルと、
を有するステータユニット、
及び、
多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極と、を有し、前記ロータ磁性歯列及びロータ磁極が第1,第2のステータコアの前記ステータ磁性歯列に対向すると共に、前記ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有するロータユニット、
を備えた電磁ユニットにおいて、
前記ロータユニットは、
前記ロータコアユニットと同軸上に配置された非磁性材料からなるロータコアホルダを備え、
積層鋼板により構成された前記ロータ磁性歯を、前記ロータコアホルダにカシメ止めにより一体的に連結、固定したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁極が、軸方向から見てほぼ扇形に形成されていることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁性歯の側面を切り起こし、前記ロータ磁極に係止してその移動を防ぐための係止部を形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項4】
周方向に沿って規則的に配置された多数のステータ磁性歯からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気的に結合されたリング状の第1,第2のステータコアと、
第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルと、
を有するステータユニット、
及び、
多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極と、を有し、前記ロータ磁性歯列及びロータ磁極が第1,第2のステータコアの前記ステータ磁性歯列に対向すると共に、前記ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有するロータユニット、
を備えた電磁ユニットにおいて、
前記ロータユニットは、
前記ロータコアユニットと同軸上に配置された非磁性材料からなるロータコアホルダを備え、
積層鋼板により構成された前記ロータ磁性歯を、前記ロータコアホルダに焼き嵌めにより一体的に連結、固定したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載した電磁ユニットにおいて、
隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間に、軸方向から見てほぼ扇形のスペーサを配置し、このスペーサ及び前記ロータ磁性歯を、前記ロータコアホルダに焼き嵌めることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項6】
周方向に沿って規則的に配置された多数のステータ磁性歯からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気的に結合されたリング状の第1,第2のステータコアと、
第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルと、
を有するステータユニット、
及び、
多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極と、を有し、前記ロータ磁性歯列及びロータ磁極が第1,第2のステータコアの前記ステータ磁性歯列に対向すると共に、前記ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有するロータユニット、
を備えた電磁ユニットにおいて、
前記ロータユニットは、
前記ロータコアユニットと同軸上に配置された非磁性材料からなる複数のロータコアホルダを備え、
積層鋼板により構成された前記ロータ磁性歯を有する前記ロータコアユニットを、複数の前記ロータコアホルダにより挟み込んでボルト締めにより一体的に連結、固定したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁極が、軸方向から見てほぼ扇形に形成されていることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項8】
請求項6または7に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータコアホルダの前記ロータ磁性歯との接触面に面取り部を形成し、かつ、この面取り部に接触する前記ロータ磁極の端部にテーパ部を形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか1項に記載した電磁ユニットにおいて、
互いに連結される前記ロータコアホルダの双方に、前記ロータコアホルダを軸心方向に並べて嵌め合わせる嵌合構造を形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項10】
請求項6〜9の何れか1項に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁性歯の側面を切り起こして係止部を形成し、前記ロータ磁極の側面に、前記係止部に係止する凹部を形成した凹部凹部ことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載した電磁ユニットにおいて、
前記係止部及び凹部がほぼ同一平面上に形成され、かつ、前記ロータコアユニットの軸に対して非平行であることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項12】
請求項6〜11の何れか1項に記載した電磁ユニットにおいて、
隣り合う前記ロータ磁性歯により形成される、軸方向から見てほぼ扇形の隙間に対し、同じくほぼ扇形の前記ロータ磁極の内径側厚みが隙間公差により形成され、かつ、外径側厚みが厚め公差により形成されていることを特徴とする電磁ユニット。
【請求項13】
周方向に沿って規則的に配置された多数のステータ磁性歯からなるステータ磁性歯列をそれぞれ有し、かつ、同心円状に配置されて互いに磁気的に結合されたリング状の第1,第2のステータコアと、
第1,第2のステータコアの間に配置されたリング形コイルと、
を有するステータユニット、
及び、
多数のロータ磁性歯からなるロータ磁性歯列と、隣り合う前記ロータ磁性歯の隙間にそれぞれ配置されたロータ磁極と、を有し、前記ロータ磁性歯列及びロータ磁極が第1,第2のステータコアの前記ステータ磁性歯列に対向すると共に、前記ステータユニットと同軸上に配置されたリング状のロータコアユニットを有するロータユニット、
を備えた電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁性歯は、予め接着された複数の電磁鋼板からなる積層鋼板をワイヤカットにより切り出して形成され、
前記ロータユニットは、前記ロータコアユニットと同軸上に配置された非磁性材料からなる複数のロータコアホルダを備え、
前記ロータコアユニットを、複数の前記ロータコアホルダにより挟み込んでボルト締めにより一体的に連結、固定したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項14】
請求項13に記載した電磁ユニットにおいて、
多数の前記ロータ磁性歯を、非磁性・非導電性材料の締結具にて全体的に締結したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項15】
請求項13または14に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータコアホルダの前記ロータ磁性歯との接触面に面取り部を形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【請求項16】
請求項13〜15の何れか1項に記載した電磁ユニットにおいて、
前記ロータ磁性歯にスリットを形成したことを特徴とする電磁ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−41421(P2011−41421A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188332(P2009−188332)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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