説明

電磁制御燃料噴射装置の構造

【課題】 1個のプランジャユニットと2個のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを、少ない設置スペースで設置可能として殊に狭隘なシリンダヘッド上面への取付けを容易化するとともに、ソレノイド装置の励磁、非励磁の切換えによる2段噴射における燃料噴射の応答性を向上して、目標とするNOxの低減及びエンジン性能を保持可能な2段噴射の目標噴射モードが得られる電磁制御燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】 ソレノイド装置によって往復駆動せしめられる開閉弁により、プランジャユニットのプランジャで加圧された高圧燃料が収容される該プランジャユニットのプランジャ室への燃料通路と排油系へのスピル通路との間を開閉して、燃料噴射時期を制御するように構成された電磁制御燃料噴射装置において、1個のハウジングに、前記ソレノイド装置及び開閉弁を2個組付けて、該ハウジングを前記プランジャユニットに取り付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン用電磁式ユニットポンプ等に適用され、ソレノイド装置によって往復駆動せしめられる開閉弁により、プランジャで加圧された高圧燃料が収容されるプランジャ室への燃料通路と排油系へのスピル通路との間を開閉して燃料噴射時期を制御するように構成された電磁制御燃料噴射装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンに適用される電磁式ユニットポンプは、ソレノイド装置によって往復駆動せしめられるポペット開閉弁により、プランジャで加圧された高圧燃料が収容されるプランジャ室への燃料通路と排油系へのスピル通路との間を開閉して燃料噴射時期を制御するように構成されている。
かかる電磁式ユニットポンプを用いたディーゼルエンジンにおいては、NOx(窒素酸化物)の低減及び燃焼効率の向上の目的で、燃料噴射時期を初期噴射と主噴射の2段噴射で構成する手段が提案されている。
【0003】
このような燃料噴射を2段噴射で構成した電磁式ユニットポンプの一つとして、図5に示されるような、1台(1個)のプランジャユニットに2台(2個)のソレノイド装置を備えた電磁式ユニットポンプが提案されている。
図5において、40はプランジャユニットで、バレル7内を往復動するプランジャ5により、プランジャ室6内に供給された燃料を高圧に加圧して図示しない燃料噴射弁に送給するものである。
20は前記プランジャユニット1台につき2台設置されたソレノイド装置、011は弁ケース012内に収納され前記ソレノイド装置20によって往復駆動されるポペット弁装置である。前記プランジャユニット40のプランジャ室6と前記2つのポペット弁装置011とは、該プランジャユニット40のバレル7内に設けられた燃料通路014及び燃料管015を介して接続されている。
013は前記ポペット弁装置011からのスピル油が通流するスピル通路である。
【0004】
かかる電磁式ユニットポンプにおいては、前記ソレノイド装置20の励磁、非励磁の切換えによって往復駆動せしめられるポペット弁装置011のポペット弁により、プランジャユニット40のプランジャ5で加圧された高圧燃料が収容される該プランジャユニットのプランジャ室6への燃料通路014及び燃料管015と排油系へのスピル通路013との間を開閉して燃料噴射時期を制御する。
そして、前記2つのソレノイド装置20の励磁、非励磁の切換えタイミングを変化させて2つのポペット弁装置011の開閉タイミングに時間差を持たせることにより、プランジャユニット40によって初期噴射と主噴射の2段噴射を実現している。
【0005】
また、特許文献1(特開平7−269438号公報)には、ポペット弁の開弁ストロークを長くし、かつ閉弁ストロークを短くして、燃料噴射終りの圧力低下を迅速に行ない噴射の切れを良化するようにした電磁制御燃料噴射装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−269438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示される従来の電磁式ユニットポンプにあっては、1台(1個)のプランジャユニット40と2台(2個)のソレノイド装置20及びポペット弁装置011の組立体とを、燃料管015,015で接続するように構成されているため、電磁式ユニットポンプの設置スペースが大きくなり、殊に狭隘なクランクケース上面への取付けはきわめて困難となる。
また、かかる従来の電磁式ユニットポンプにあっては、1台(1個)のプランジャユニット40と2台(2個)のソレノイド装置20及びポペット弁装置011の組立体とを、燃料管015及びプランジャユニット40内の燃料通路014という長い燃料通路を介して接続しているため、ソレノイド装置20の励磁、非励磁の切換えによる2段噴射における燃料噴射の応答性が低くなって、噴射の切れの良好な2段噴射の目標噴射モードが得られ難く、目標とするNOx(窒素酸化物)の低減及びエンジン性能の保持が困難となる。
【0008】
また、前記(特開平7−269438号公報)には、ポペット弁の開弁ストローク及び閉弁ストロークを制御して、燃料噴射終りの噴射の切れを良化するようにした電磁制御燃料噴射装置が開示されているにとどまり、1台(1個)のプランジャユニットと2台(2個)のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを接続して、噴射の切れの良好な2段噴射モードを得る手段は開示されていない。
等の問題を抱えている。
【0009】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、1個のプランジャユニットと2個のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを、少ない設置スペースで設置可能として殊に狭隘なクランクケース上面への取付けを容易化するとともに、ソレノイド装置の励磁、非励磁の切換えによる2段噴射における燃料噴射の応答性を向上して、目標とするNOxの低減及びエンジン性能を保持可能な2段噴射の目標噴射モードが得られる電磁制御燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる目的を達成するもので、ソレノイド装置によって往復駆動せしめられる開閉弁により、燃料噴射ポンプのプランジャで加圧された高圧燃料が収容される該プランジャユニットのプランジャ室への燃料通路と排油系へのスピル通路との間を開閉して、燃料噴射時期を制御するように構成された電磁制御燃料噴射装置において、1個のハウジングに、前記ソレノイド装置及び開閉弁を2個組付けて、該ハウジングを前記プランジャユニットに取り付け、
前記ハウジングに組付けた前記2個のソレノイド装置及び開閉弁を、双方の中心が前記プランジャユニットの中心と直角になるように横置きに配置するとともに、前記2個のソレノイド装置及び開閉弁の中心がプランジャユニットの中心に対して放射状になるように所定の開き角で以って配置したことを特徴とする。
【0011】
かかる発明において好ましくは、前記ハウジングを、該ハウジングと前記プランジャユニットとの接合面と前記2個のソレノイド装置の取付け面が互いに直角になるように形成する。
【0012】
かかる発明によれば、1個のハウジングにソレノイド装置及び開閉弁を2個組み付けて、該ハウジングをプランジャユニットに取り付けるとともに、好ましくは前記2個のソレノイド装置及び開閉弁を双方の中心がプランジャユニットの中心と直角になるように横置きに配置して前記ハウジングに組付け、さらに2個のソレノイド装置及び開閉弁の中心がプランジャユニットの中心に対して放射状になるように所定の開き角で以って配置したので、1個のハウジングに2組のソレノイド装置及び開閉弁が双方の中心をプランジャユニットの中心に対して放射状になるようにかつ横置きに配置して組み込むことにより、2組のソレノイド装置及び開閉弁が1個のハウジングにコンパクトに組み込まれた単一のハウジング組立体を構成できる。
【0013】
そして、かかるコンパクトな構造の単一のハウジング組立体をプランジャユニットに取付けることにより、燃料配管を設けることなく2組のソレノイド装置及び開閉弁により2段噴射が可能な電磁制御燃料噴射装置を構成することができるので、該電磁制御燃料噴射装置の設置スペースを、図5のような1個のプランジャユニットと2個のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを燃料管で接続する構成に比べて大幅に縮小でき、殊に狭隘なクランクケース上面であっても電磁制御燃料噴射装置の取付けを容易にできる。
【0014】
またかかる発明によれば、前記のように、1個のハウジングに、2組のソレノイド装置及び開閉弁が、双方の中心をプランジャユニットの中心に対して放射状になるようにかつ横置きに配置して組み込むことにより、2組のソレノイド装置及び開閉弁が1個のハウジングにコンパクトに組み込まれた単一のハウジング組立体を構成することが可能となり、かかるコンパクトな構造の単一のハウジング組立体をプランジャユニットに取付けることにより、2組のソレノイド装置及び開閉弁により2段噴射が可能な電磁制御燃料噴射装置を構成することができるので、燃料配管が不要となって、燃料通路長さが図5のような1個のプランジャユニットと2個のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを燃料管で接続する構成に比べて短縮され、かかる従来技術に比べて、2組のソレノイド装置の励磁、非励磁の切換えによる2段噴射における燃料噴射の応答性を向上できる。
【0015】
また本発明は、前記ハウジング内には前記プランジャ室への燃料通路及び前記スピル通路が設けられて、前記ハウジングと前記プランジャユニットとを高圧シールボルトによって、該ハウジングとプランジャユニットとの接合面において前記燃料通路及びスピル通路が流体密になるように締着するとともに、前記ハウジングを取付けボルトによりクランクケースに締着するように構成したことを特徴とする。
かかる発明において、前記高圧シールボルトを前記プランジャユニット中心に対して同心円上に円周方向等間隔に複数個配設するとともに、前記取付けボルトを該高圧シールボルトの外側に円周方向等間隔に複数個配設し、さらに前記複数個の取付けボルトのうち1個を前記2つのソレノイド装置の間に配置するのが好ましい。
【0016】
かかる発明によれば、プランジャ室への燃料通路及びスピル通路が設けられたハウジングとプランジャユニットとを、好ましくは該プランジャユニット中心に対して同心円上に円周方向等間隔に複数個配設した高圧シールボルトによって、双方の接合面において強固にかつ流体密に締着できるので、高い燃料噴射圧力においても前記高圧シールボルトの締付力によって洩れを生じることなく確実に燃料シールが可能となり、高圧噴射に十分に対応可能な燃料シール構造が得られる。
また、前記ハウジング組立体及びプランジャユニットとを同時に複数個の取付けボルトによりクランクケースに固着できるとともに、複数個の取付けボルトのうち1個を前記2つのソレノイド装置の間に配置することにより、該複数個の取付けボルトを円周方向等間隔に配置できて、前記ハウジング組立体及びプランジャユニットを均一な締付力で強固にクランクケースに固着できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、1個のハウジングに2組のソレノイド装置及び開閉弁が双方の中心をプランジャユニットの中心に対して放射状になるようにかつ横置きに配置して組み込むことにより、2組のソレノイド装置及び開閉弁が1個のハウジングにコンパクトに組み込まれた単一のハウジング組立体を構成でき、かかるコンパクトな構造の単一のハウジング組立体をプランジャユニットに取付けることにより、燃料配管を設けることなく2組のソレノイド装置及び開閉弁により2段噴射が可能な電磁制御燃料噴射装置を構成することができるので、該電磁制御燃料噴射装置の設置スペースを、1個のプランジャユニットと2個のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを燃料管で接続する構成に比べて大幅に縮小でき、殊に狭隘なクランクケース上面であっても電磁制御燃料噴射装置の取付けを容易にできる。
【0018】
また本発明によれば、2組のソレノイド装置及び開閉弁が1個のハウジングにコンパクトに組み込まれた単一のハウジング組立体をプランジャユニットに取付けることにより、2組のソレノイド装置及び開閉弁により2段噴射が可能な電磁制御燃料噴射装置を構成することができるので、燃料配管が不要となって、燃料通路長さが1個のプランジャユニットと2個のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを燃料管で接続する構成に比べて短縮され、かかる従来技術に比べて、2組のソレノイド装置の励磁、非励磁の切換えによる2段噴射における燃料噴射の応答性を向上できる。
これにより、目標とするNOxの低減及びエンジン性能を保持可能な2段噴射の目標噴射モードを得ることができる。
【0019】
また本発明によれば、プランジャ室への燃料通路及びスピル通路が設けられたハウジングとプランジャユニットとを、プランジャユニット中心に対して同心円上に円周方向等間隔に複数個配設した高圧シールボルトによって、双方の接合面において強固にかつ流体密に締着できるので、高い燃料噴射圧力においても前記高圧シールボルトの締付力によって洩れを生じることなく確実に燃料シールが可能となり、高圧噴射に十分に対応可能な燃料シール構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
図1は、本発明の実施例に係るディーゼルエンジン用電磁式ユニットポンプの平面図、図2は前記実施例における図1のA−A線断面図、図3は前記実施例における図2のB−B線断面図、図4は前記実施例における電磁式ユニットポンプの斜視図である。
図1〜4において、40はプランジャユニットで、ポンプバレル7内を往復動するプランジャ5により、プランジャ室6内に供給された燃料を高圧に加圧して図示しない燃料噴射弁に送給するものである。
1はハウジング、20はソレノイド装置、11は該ソレノイド装置20によって往復駆動されるポペット弁装置であり、本発明においては、1個の前記ハウジング1に、前記ソレノイド装置20及びポペット弁装置11を2個組み付けて、該ハウジング1を前記プランジャユニット40のバレル7に取り付けるように構成している。36は前記ハウジング1の上面に固定される吐出金物である。
【0022】
前記ソレノイド装置20及びポペット弁装置11において、4はポペット弁、4bは内部に該ポペット弁4が往復動自在に嵌合された弁座、4aはポペット弁ばねである。また
22は前記ソレノイド装置20の電磁コイル、23は前記ポペット弁4の上端に固定されて前記電磁コイル22に吸引あるいは離間されるアーマチュアである。
前記ソレノイド装置20及びポペット弁装置11自体の構成は従来のものと同様であるので、詳細な構造説明は省略する。
【0023】
前記2個のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11は、双方の中心101a,101bが前記プランジャユニットの中心100と直角になるように横置きに配置されるとともに、図2、図3のように、該2個のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11の中心101a,101bが前記プランジャユニットの中心100に対して放射状になるように所定の開き角αで以って配置される。
そして、前記ハウジング1内に前記ポペット弁装置11,11が収納され、平面方向において前記開き角αで傾斜した前記ハウジング1の2つの取付け面1c,1cに前記アーマチュア23が収納されるアーマチュアケース20a,20aが固定され、さらに該アーマチュアケース20a,20aに前記ソレノイド装置20,20が固定されている。
また、前記ハウジング1は、該ハウジング1と前記プランジャユニット40との接合面32及びハウジング1と吐出金物36との接合面31と前記2個のソレノイド装置20,20側の取付け面1c,1cが互いに直角になるように形成される。
21は前記ソレノイド装置20,20及びアーマチュアケース20a,20aを共締めにて前記ハウジング1に固定するためのボルトである。
【0024】
前記ハウジング1内には、前記プランジャ室6と吐出金物36内の燃料出口通路33とを接続する燃料通路37が前記プランジャユニットの中心100の方向に穿孔されるとともに該燃料通路37から分岐して前記ポペット弁装置11に接続される燃料通路34、及び前記ポペット弁装置11のスピル出口と排油系とを接続するスピル通路35が穿孔されている。
2は高圧シールボルトで、図1、図3のように前記プランジャユニット中心100に対して同心円上に円周方向等間隔に複数個(この例では3個)配設されて、前記吐出金物36及びハウジング1を共締めにて、かつ前記ハウジング1とポンプバレル7との接合面32及び該ハウジング1と吐出金物36との接合面31が流体密になるように前記バレル7に締めつけている。
【0025】
3は取付けボルトで、該高圧シールボルト2の外側に円周方向等間隔に複数個(この例では4個)配設し、さらに前記複数個(4個)の取付けボルト3のうち1個を前記2つのソレノイド装置20,20の間に配置している。
前記複数個(4個)の取付けボルト3は、図2のように前記ハウジング1の上面から該ハウジング1内を挿通され、該ハウジング1とポンプケース39とを両者の接合面38を介して共締めの形態でクランクケース30に締めつけている。
【0026】
かかる電磁式ユニットポンプを備えたディーゼルエンジンの運転時において、エンジンの燃料カム(図示省略)により往復駆動される前記プランジャ5によって高圧に加圧された燃料は、プランジャ室6内に溜められる。
そして、前記ソレノイド装置20の励磁によって前記ポペット弁4が固定されたアーマチュア23が該ソレノイド装置20の電磁コイル22に吸引されると、該ポペット弁4と弁座4bとの間のシート部が閉じて、前記プランジャ室6から燃料通路37、34、及び図示しない燃料噴射弁への燃料通路の燃料圧力が上昇する。
該燃料圧力が燃料噴射弁の開弁圧力を超えると、図示しない針弁が開弁して高圧燃料が燃焼室(図示省略)内に噴射される。
【0027】
次いで、前記ソレノイド装置20が非励磁となると、前記アーマチュア23がポペット弁ばね4aの弾力によって図2の左動し、前記ポペット弁4と弁座4bとのシート部にはシート部通路が形成され、プランジャ室6内の燃料は、燃料通路37,34から前記シート部通路を通ってスピル通路35に排出される。
以上のパターンによる燃料噴射を、前記2つのソレノイド装置20,20の励磁、非励磁の切換えタイミングを変化させて、2つのポペット弁装置11の開閉タイミングに時間差を持たせることにより、プランジャユニット40によって、図6のようにθ1からの初期噴射とθ2からの主噴射の2段噴射を実現している。
【0028】
かかる実施例によれば、1個のハウジング1にソレノイド装置20及びポペット弁装置11を2個組み付けて、該ハウジング1をプランジャユニット40に取り付けるとともに、前記2個のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11を双方の中心101a,101bがプランジャユニット40の中心100と直角になるように横置きに配置して前記ハウジング1に組付け、さらに2個のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11の中心がプランジャユニット40の中心100に対して放射状になるように所定の開き角αで以って配置したので、1個のハウジング1に2組のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11がコンパクトに組み込まれた単一のハウジング組立体を構成できる。
【0029】
そして、かかるコンパクトな構造の単一のハウジング組立体をプランジャユニット40に取付けることにより、燃料配管を設けることなく2組のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11により2段噴射が可能な電磁式ユニットポンプを構成することができるので、該電磁式ユニットポンプの設置スペースを、図5のような1個のプランジャユニットと2個のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを燃料管で接続する従来の構成に比べて大幅に縮小でき、殊に狭隘なクランクケース30の上面であっても電磁式ユニットポンプの取付けを容易にできる。
【0030】
またかかる実施例によれば、前記のように、1個のハウジング1に、2組のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11が、双方の中心101a,101bがプランジャユニット40の中心100に対して放射状になるようにかつ横置きに配置して組み込むことにより、2組のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11が1個のハウジング1にコンパクトに組み込まれた単一のハウジング組立体を構成することが可能となり、かかるコンパクトな構造の単一のハウジング組立体をプランジャユニット40に取付けることにより、2組のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11により2段噴射が可能な電磁式ユニットポンプを構成することができるので、燃料配管が不要となって、燃料通路長さが図5の従来技術のような1個のプランジャユニットと2個のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを燃料管で接続する構成に比べて短縮され、かかる従来技術に比べて、2組のソレノイド装置20,20の励磁、非励磁の切換えによる2段噴射における燃料噴射の応答性を向上できる。
【0031】
またかかる実施例によれば、プランジャ室6への燃料通路34,37及びスピル通路35が設けられたハウジング1とプランジャユニット40のバレル、及び該ハウジング1と吐出金物36とを、プランジャユニット中心100に対して同心円上に円周方向等間隔に複数個(この例では3個)配設した高圧シールボルト2によって、双方の接合面32,31において強固にかつ流体密に締着できるので、高い燃料噴射圧力においても前記高圧シールボルト2の締付力によって洩れを生じることなく確実に燃料シールが可能となり、高圧噴射に十分に対応可能な燃料シール構造が得られる。
【0032】
また、前記複数個(4個)の取付けボルト3により、前記ハウジング1の上面から該ハウジング1内を挿通し、該ハウジング1とバレル7とを両者の接合面32を介して共締めの形態でクランクケース30に締めつけているので、前記2組のソレノイド装置20,20及びポペット弁装置11,11が1個のハウジング1にコンパクトに組み込まれた単一のハウジング組立体及びプランジャユニット40を同時に前記複数個(4個)の取付けボルト3によりクランクケース30に固着できるとともに、複数個(4個)の取付けボルト3のうち1個を前記2つのソレノイド装置20,20の間に配置することにより,該複数個(4個)の取付けボルト3を円周方向等間隔に配置できて、前記ハウジング組立体及びプランジャユニット40を均一な締付力で強固にクランクケース30に固着できる。
【0033】
以上の実施例は電磁式ユニットポンプに本発明を適用したものであるが、本発明は、ソレノイド装置及びこれにより燃料噴射時期を制御される電磁制御燃料噴射装置に広く適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、1個のプランジャユニットと2個のソレノイド装置及びポペット弁装置の組立体とを、少ない設置スペースで設置可能となり、殊に狭隘なクランクケース上面への取付けが容易化できるとともに、ソレノイド装置の励磁、非励磁の切換えによる2段噴射における燃料噴射の応答性を向上でき、目標とするNOxの低減及びエンジン性能を保持可能な2段噴射の目標噴射モードが得られる電磁制御燃料噴射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例に係るディーゼルエンジン用電磁式ユニットポンプの平面図である。
【図2】前記実施例における図1のA−A線断面図である。
【図3】前記実施例における図2のB−B線断面図である。
【図4】前記実施例における電磁式ユニットポンプの斜視図である。
【図5】従来技術に係る電磁式ユニットポンプの要部断面図である。
【図6】前記実施例における燃料噴射圧力線図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ハウジング
2 高圧シールボルト
3 取付けボルト
4 ポペット弁
5 プランジャ
6 プランジャ室
7 バレル
11 ポペット弁装置
20 ソレノイド装置
22 電磁コイル
23 アーマチュア
34,37 燃料通路
35 スピル通路
30 クランクケース
31,32,38 接合面
39 ポンプケース
100 プランジャユニット中心
101a,101b ソレノイド、ポペット弁中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイド装置によって往復駆動せしめられる開閉弁により、燃料噴射ポンプのプランジャで加圧された高圧燃料が収容される該プランジャユニットのプランジャ室への燃料通路と排油系へのスピル通路との間を開閉して、燃料噴射時期を制御するように構成された電磁制御燃料噴射装置において、1個のハウジングに、前記ソレノイド装置及び開閉弁を2個組付けて、該ハウジングを前記プランジャユニットに取り付け、
前記ハウジングに組付けた前記2個のソレノイド装置及び開閉弁を、双方の中心が前記プランジャユニットの中心と直角になるように横置きに配置するとともに、前記2個のソレノイド装置及び開閉弁の中心がプランジャユニットの中心に対して放射状になるように所定の開き角で以って配置したことを特徴とする電磁制御燃料噴射装置の構造。
【請求項2】
前記ハウジングは、該ハウジングと前記プランジャユニットとの接合面と前記2個のソレノイド装置の取付け面とが互いに直角になるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の電磁制御燃料噴射装置の構造。
【請求項3】
前記ハウジング内には前記プランジャ室への燃料通路及び前記スピル通路が設けられて、前記ハウジングと前記プランジャユニットとを高圧シールボルトによって、該ハウジングとプランジャユニットとの接合面において前記燃料通路及びスピル通路が流体密になるように締着するとともに、前記ハウジングを取付けボルトによりクランクケースに締着するように構成したことを特徴とする請求項1記載の電磁制御燃料噴射装置の構造。
【請求項4】
前記高圧シールボルトをプランジャユニット中心に対して同心円上に円周方向等間隔に複数個配設するとともに、前記取付けボルトを該高圧シールボルトの外側に円周方向等間隔に複数個配設し、さらに前記複数個の取付けボルトのうち1個を前記2つのソレノイド装置の間に配置したことを特徴とする請求項1及び3のいずれかの項に記載の電磁制御燃料噴射装置の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−241988(P2006−241988A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54677(P2005−54677)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】