説明

電磁妨害シールドを整合層の一部として組み込んでいる音響トランスデューサ

【課題】電磁シールドを有し、熱管理を改善した超音波プローブ、およびプローブを形成する方法を提供する。
【解決手段】特定のプローブは、能動層、保護面プレートまたはレンズ、および整合層を含む音響スタックを含む。整合層は、質量層および弾性層を含む。プローブは、超音波プローブに信号を伝え、また超音波プローブから信号を伝えるように構成されたケーブルをさらに含む。プローブは、質量層を含む電磁放射シールドをさらに含む。シールドは、能動層とケーブルを取り囲んでおり、電極を介して接地されている。シールドは、ケーブルを介して超音波プローブに伝えられる信号と、超音波プローブから伝えられる信号とに外部からの電磁放射が妨害を与えることを抑制するように構成されている。特定のプローブは、熱が保護面プレートまたはレンズから除かれるよう、質量層が熱ドレインまたはヒートシンクに熱的に接続されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術の実施形態は、概して超音波プローブに関し、より詳細には、超音波プローブ用の電磁シールドに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波プローブは、一般に多くの音響スタックを有しており、それらの音響スタックはプローブの撮像素子にそれぞれ対応する。それぞれの音響スタックはいくつかの層を有し、それらの層が積み重ね構成で共に取り付けられる。能動スタックは、スタック内に少なくとも1つの電気機械構造体、例えば、水または人体組織の音響インピーダンスに比べて高いインピーダンスを有する、圧電セラミック材料、単結晶材料、または圧電複合材料などの圧電材料から形成された圧電層などを含む。能動層の上部側に整合層が設けられ、高いインピーダンスを有する能動層と、低いインピーダンスを有する、プローブの外面もしくは保護面プレートまたはレンズ保護面プレート(しばしば保護面プレートまたはレンズとして同様に用いられる)との間で音響インピーダンスを変換する。この低いインピーダンスは、水、人、または、走査される他の対象に基づくものであり得る。超音波プローブ用の音響スタック構成は、例えば、米国出願公開第2010/0237746号として2010年9月23日に公開された「超音波プローブ用の多層インピーダンス整合構造」という名称の米国出願第12/406,731号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国出願公開第2010/0237746号明細書
【発明の概要】
【0004】
超音波トランスデューサは、周囲の機器によって電磁妨害を受ける恐れがある。このような電磁妨害から超音波トランスデューサを保護する方法の1つは、外側の整合層と、保護面プレートまたはレンズとの間に金属層を組み込むことである。しかし、このような解決策は、金属シールドの音響インピーダンスが外側の整合層の音響インピーダンスよりはるかに高いために、トランスデューサの帯域幅とパルス波形を劣化させる恐れがある。
【0005】
したがって、電磁シールドを備える改善された超音波プローブを実現することが望ましい。
【0006】
医療用の超音波トランスデューサは、過度の温度や空洞現象(cavitation)の危険性に対して確実に保護する特定の規制に準拠する必要がある。例えば、患者接触面の温度は、明確な試験条件下で43℃を超えるべきでない。必要となる用途および撮像モードに応じた最大レベルに加えて、トランスデューサの性能を定量化する規制によって、メカニカルインデックス(Mechanical Index)もまた用いられる。
【0007】
実際には、圧電トランスデューサは、多くの場合、熱的に制限されており、このことは、最大メカニカルインデックスに到達していなくても最大温度に達することを意味する。これは、規制によって許可された最大音圧を伝達するようにトランスデューサを設定することができないことを示唆し、これは画像およびドップラー信号品質に対して悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
したがって、トランスデューサの正面温度の低減に寄与する解決策を実施することが望ましい。
【0009】
本技術の実施形態では、能動層、保護面プレートまたはレンズ、および、能動層と、保護面プレートまたはレンズとの間に配置された整合層を含む音響スタックであって、この整合層が、第1の材料を含む質量層(mass layer)と、第1の材料とは異なる第2の材料を含む弾性層とを含む、音響スタックと、質量層を含み、能動層を取り囲み、ケーブルを介して超音波プローブに伝えられる信号と、超音波プローブから伝えられる信号とに外部からの電磁放射が妨害を与えることを抑制するように構成された電磁放射シールドとを含む超音波プローブが提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、熱が質量層から熱ドレインまたはヒートシンクに伝達され保護面プレートまたはレンズから遠ざけられるように、質量層は熱ドレインまたはヒートシンクに熱的に接続される。
【0011】
いくつかの実施形態では、整合層は、能動層またはグラウンド電極に当接する。
【0012】
いくつかの実施形態では、整合層は、保護面プレートまたはレンズに当接する。
【0013】
いくつかの実施形態では、質量層は金属を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、弾性層はポリマーを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、弾性層は、約1.5メガレイル未満の音響インピーダンスを有する材料を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、質量層は、弾性層より少なくとも約5倍大きいインピーダンスを有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、超音波プローブは、超音波プローブに信号を伝え、また超音波プローブから信号を伝えるように構成されたケーブルをさらに含み、電磁放射シールドはそのケーブルを取り囲んでおり、また電磁放射シールドは電極を介して接地される。
【0018】
いくつかの実施形態では、超音波プローブは、超音波システムと無線で通信するように構成される。
【0019】
本技術の実施形態では、能動層、保護面プレートまたはレンズ、および、能動層と、保護面プレートまたはレンズとの間に配置された整合層を含む音響スタックを設けるステップであって、この整合層が、第1の材料を含む質量層と、第1の材料とは異なる第2の材料を含む弾性層とを含む、ステップと、質量層を含み、能動層を取り囲み、超音波プローブに伝えられる信号と、超音波プローブから伝えられる信号とに外部からの電磁放射が妨害を与えることを抑制するように構成された電磁放射シールドを超音波プローブに設けるステップとを含む、超音波プローブを形成する方法が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態は、熱が質量層から熱ドレインまたはヒートシンクに伝達され保護面プレートまたはレンズから遠ざけられるように、質量層を熱ドレインまたはヒートシンクに熱的に接続するステップをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態は、整合層を能動層またはグラウンド電極に当接させるステップをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態は、整合層を保護面プレートまたはレンズに当接させるステップをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、質量層は金属を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、弾性層はポリマーを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、弾性層は、約1.5メガレイル未満の音響インピーダンスを有する材料を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、質量層は、弾性層より少なくとも約5倍大きいインピーダンスを有する。
【0027】
いくつかの実施形態は、超音波プローブに信号を伝え、また超音波プローブから信号を伝えるように構成されたケーブルを能動層に動作可能に接続するステップをさらに含み、電磁放射シールドはそのケーブルを取り囲み、またこの電磁放射シールドは電極を介して接地される。
【0028】
いくつかの実施形態では、超音波プローブは、超音波システムと無線で通信するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態によって形成された超音波システムの図である。
【図2】本発明の実施形態によって形成された3次元(3D)対応小型化超音波システムの図である。
【図3】本発明の実施形態によって形成された移動式超音波撮像システムの図である。
【図4】本発明の実施形態によって形成されたハンドキャリー式またはポケットサイズの超音波撮像システムの図である。
【図5A】本発明の実施形態による超音波システムの構成要素の図である。
【図5B】図5Aに示されている超音波トランスデューサの整合部の図である。
【図5C】本発明の実施形態による超音波トランスデューサの別の整合部の図である。
【図5D】本発明の実施形態による超音波システムの構成要素の図である。
【図6】本発明の実施形態による超音波プローブの帯域幅性能に関する音響シミュレーションの図である。
【図7】本発明の実施形態による超音波プローブの帯域幅性能に関する音響シミュレーションの図である。
【図8】本発明の実施形態による超音波プローブの帯域幅性能に関する音響シミュレーションの図である。
【図9】本発明の実施形態による超音波プローブの帯域幅性能に関する音響シミュレーションの図である。
【図10】本発明の実施形態による超音波プローブを形成する方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
前述の概要、ならびに本発明のいくつかの実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付図面と併せ読めば、さらに良く理解できるであろう。本発明を説明するために、いくつかの実施形態は図面で示されている。しかし、添付図面に示されている構成および方法に本発明が限定されない点を理解されたい。図面は、様々な実施形態の機能ブロックの図を示しているため、これらの機能ブロックが、必ずしもハードウェア回路の区分を示しているわけではない。したがって、例えば、1つまたは複数の機能ブロック(例えば、プロセッサまたはメモリ)が単一のハードウェア(例えば、汎用信号プロセッサ、または、ランダムアクセスメモリ、ハードディスクなど)に実装されてもよい。同様に、プログラムは、独立型のプログラムでもよく、オペレーティングシステムのサブルーチンとして組み込まれてもよく、インストールされたソフトウェアパッケージの機能などでもよい。様々な実施形態が、図に示されている構成および方法に限定されないことを理解されたい。
【0031】
本明細書で用いられるとき、単数形で列挙され、「a」または「an」の語に続く要素またはステップは、明確に述べられていない限り、当該要素またはステップの複数形を排除しないものと理解されるべきである。さらに、本発明の「一実施形態」に対する参照は、挙げられた特徴を同様に取り入れた他の実施形態があることを排除するものとして解釈されるようには意図されていない。また、反対のことが明示的に述べられていない限り、特定の属性を有する1つまたは複数の要素を「含む」または「有する」実施形態は、その属性を有さない他の要素を含むことができる。
【0032】
図1は、プローブ106内の素子104(例えば、圧電素子)のアレイをドライブして体内にパルス化超音波信号を放射する送信器102を含む超音波システム100を示す。プローブ106は、図5に示されているように構成することができる。素子104は、例えば1次元または2次元状に配置することができる。様々な幾何学的配置を用いることができる。システム100は、プローブ106を受けるためのプローブポート120を有することができ、または、プローブ106は、システム100に配線によって接続することができる。
【0033】
超音波信号は、脂肪組織または筋肉組織などの、体内の構造体から後方散乱して素子104に戻る反射波(echo)を生み出す。この反射波は、受信器108によって受信される。受信された反射波は、ビーム形成を行い、また高周波(RF)信号を出力するビーム形成器110を通る。次いで、このRF信号は、RFプロセッサ112を通る。あるいは、RFプロセッサ112は、RF信号を復調して反射波信号を表す同相および直交(IQ)データペアを形成する複素復調器(complex demodulator)(図示せず)を含むこともできる。次いで、RF信号データまたはIQ信号データは、保存用にメモリ114に直接送ることができる。
【0034】
また、超音波システム100は、収集した超音波情報(例えば、RF信号データまたはIQデータペア)を処理し、また、ディスプレイ118に表示する超音波情報のフレームを整えるためのプロセッサモジュール116を含む。プロセッサモジュール116は、収集した超音波情報に対する複数の選択可能な超音波モダリティによって、1つまたは複数の処理動作を行うように適合される。反射波信号が受信される走査セッションの間に、収集された超音波情報をリアルタイムで処理および表示することができる。追加的または代替的に、走査セッションの間に超音波情報をメモリ114またはメモリ122に一時的に保存し、その後オフライン動作で処理および表示することもできる。
【0035】
データをシステム100に入力し、設定を調整し、またプロセッサモジュール116の動作を制御するために、ユーザインタフェース124を用いることができる。ユーザインタフェース124は、キーボード、トラックボール、および/またはマウス、ならびに、複数のノブ、スイッチ、または、タッチスクリーンなどの他の入力デバイスを有することができる。ディスプレイ118は、診断用超音波画像を含む患者情報を、診断および分析用にユーザに提示する1つまたは複数のモニタを含む。メモリ114およびメモリ122の一方または両方は、2次元(2D)画像および/または3次元(3D)画像を提示するためにアクセスされる、超音波データの2Dデータセットおよび/または3Dデータセットを保存することができる。例えば、リアルタイムの3Dディスプレイまたは4次元(4D)ディスプレイを実現するために、連続する複数の3Dデータセットをある期間にわたって収集して保存することもできる。これらの画像は変更することができ、またユーザインタフェース124を用いて、ディスプレイ118の表示設定を手動で調整することもできる。
【0036】
図2は、図5に示されているプローブ構成を含むことができるプローブ132を有する3D対応小型化超音波システム130を示す。プローブ132は、3D超音波データを収集するように構成することができる。例えば、プローブ132は、図1のプローブ106に関して先に説明したトランスデューサ素子104の2Dアレイを有することができる。(一体型ディスプレイ136を含むこともできる)ユーザインタフェース134は、オペレータからのコマンドを受け取るために設けられる。
【0037】
本明細書で用いられるとき、「小型化」は、超音波システム130が手持ち式またはハンドキャリー式のデバイスであるか、または、人の手、ポケット、ブリーフケース大のケース、もしくはバックパックで運搬されるように構成されることを意味する。例えば、超音波システム130は、例として、約2.5インチ(6.35cm)の奥行き、約14インチ(35.6cm)の幅、および約12インチ(30.5cm)の高さの寸法を有する通常のラップトップコンピュータのサイズを有するハンドキャリー式のデバイスでもよい。超音波システム130は約10ポンド(4.54kg)の重さでもよいため、オペレータが容易に携帯可能である。また、一体型ディスプレイ136(例えば、内部ディスプレイ)が設けられており、医用画像を表示するように構成される。
【0038】
超音波データは、有線または無線のネットワーク140(または、例えば、シリアルもしくはパラレルケーブルまたはUSBポートを介する直接接続)を通じて、外部デバイス138に送ることができる。いくつかの実施形態では、外部デバイス138は、ディスプレイを有するコンピュータまたはワークステーションでもよい。あるいは、外部デバイス138は、ハンドキャリー式の超音波システム130から画像データを受信することができ、また一体型ディスプレイ136より高い解像度を有し得る画像を表示または印刷することができる独立した外部ディスプレイまたはプリンタでもよい。異なる寸法、重さ、および消費電力を有する小型化超音波システムに関連する様々な実施形態を実施することができる点に留意されたい。
【0039】
図3は、可動ベース146の上に設けられた移動式超音波撮像システム144を示す。この超音波撮像システム144は、カートベースのシステム(cart−based system)と呼ばれることもある。ディスプレイ142およびユーザインタフェース148が設けられているが、ディスプレイ142は、ユーザインタフェース148から離れていてもよく、または、ユーザインタフェース148から分離可能であってもよい点を理解されたい。このシステム144は、図5に示されているプローブ構成を含むことができるプローブ(図示せず)を受け入れるための少なくとも1つのプローブポート150を有する。
【0040】
ユーザインタフェース148は、適宜、オペレータが、表示されたグラフィクス、アイコンなどを触ることによってオプションを選択することを可能とするタッチスクリーンでもよい。また、ユーザインタフェース148は、望む通りに、もしくは必要に応じて超音波撮像システム144を制御するために用いることができ、かつ/または、通常備わっているコントロールボタン152を含む。このユーザインタフェース148は、ユーザが情報を入力し、走査パラメータを設定および変更するためだけでなく、超音波データと、表示可能な他のデータとを連携させるように物理的に操作することができる複数のインタフェースオプションを提供する。このインタフェースオプションは、特定の入力、プログラム可能な入力、コンテキスト入力(contextual input)などに対して用いることができる。例えば、キーボード154およびトラックボール156を設けることができる。
【0041】
図4は、ディスプレイ172およびユーザインタフェース174が単一ユニットを形成する、ハンドキャリー式またはポケットサイズの超音波撮像システム170を示す。例として、ポケットサイズの超音波撮像システム170は、約2インチ(5.08cm)の幅、約4インチ(10.2cm)の長さ、および約0.5インチ(1.27cm)の奥行きでもよく、また3オンス(85.05g)未満の重さである。ディスプレイ172は、例えば、(医用画像176を表示することができる)320×320ピクセルのカラーLCDディスプレイでもよい。ユーザインタフェース174には、ボタン182からなるタイプライタ状のキーボード180が適宜含まれてもよい。整合層構造体を含むことができるプローブ178は、システム170と相互接続される。
【0042】
複数機能コントロール部184にはそれぞれ、システム動作のモードに応じた機能を割り当てることができる。したがって、複数の異なる動作を実現するために、複数機能コントロール部184のそれぞれを構成することができる。必要に応じて、複数機能コントロール部184に対応したラベル表示部分186が、ディスプレイ172上に含まれてもよい。また、このシステム170は、特定目的の機能のためにさらなるキーおよび/またはコントロール部188を有することができ、これらの機能には、限定されないが、「静止」、「深さ調整」、「ゲイン調整」、「カラーモード」、「印刷」、および「保存」が含まれる場合がある。
【0043】
図5Aは、本発明の実施形態による超音波システムの構成要素500を示す。これらの構成要素500には、超音波プローブ502、ケーブル504、増幅器506、および電磁放射シールド508が含まれる。プローブ502は、超音波を受信して、電子回路521(例えば、フレックス回路)を用いてそれらを電気信号に変換するように構成される。プローブ502は、電気信号を、ケーブル504および電子回路523を介して増幅器506に伝える。増幅器506は、例えば図1に示されている受信器108などの受信器の一部でもよい。
【0044】
電磁放射シールド508は、プローブ502の能動層510を封入し、またケーブル504および電子回路521、523を介して伝わる電気信号を封入するようにプローブ502に組み込まれる。プローブ502は、バックスタック(back−stack)513、能動層510、グラウンド電極509、整合部511、および、保護面プレートまたはレンズ514を含む。プローブ502では、能動層510は、例えばモノリシックまたは圧電複合材料である、少なくとも1つの電極化圧電材料を含む。プローブ502では、バックスタック513は、電極を電気回路521に接続するために用いられる任意のパッシブ層と、トランスデューサの後ろ側に進むエネルギーを吸収するために用いられる材料とを含むことができる。プローブ502では、整合部511は、複数の整合層ML1、ML2、ML3、ML4、およびML5を含み、それぞれの整合層は、弾性材料を含む弾性層と、質量材料(mass material)を含む質量層とを含む。図5Bに示されているように、第1の整合層ML1は、弾性層551および質量層552を含み、第2の整合層ML2は、弾性層553および質量層554を含み、第3の整合層ML3は、弾性層555および質量層556を含み、第4の整合層ML4は、弾性層557および質量層558を含み、第5の整合層ML5は、弾性層559および質量層560を含む。他の設計では異なる数の整合層が用いられる場合があり、また、全ての整合層が必ずしも弾性層と質量層で作られていない点を理解されたい。しかし、いくつかの実施形態では、例えば、第1の整合層ML1が弾性層561と質量層562を含み、第2の整合層ML2である563と、第3の整合層ML3である564とが弾性層と質量層の両方を含まない別の整合部565を示す図5Cに示されているように、少なくとも1つの整合層に弾性層と質量層が含まれる。
【0045】
本明細書で用いられるとき、例えば、弾性材料は、エポキシベースのネガ型フォトレジストであるSU8(商標)またはポリイミド材料であるKapton(商標)などポリマーまたはフィルム、シリコーンなどの比較的低損失および低密度の材料であり、弾性/質量整合層の目標音響インピーダンスに応じて、3メガレイル(MR)未満、さらには1.5MR未満の音響インピーダンスを有することができる。本明細書で用いられるとき、質量材料は、タングステン、銅、または他の金属などの比較的高密度の材料であり、30MRに近い音響インピーダンスを有することができる。他の材料が用いられることがある点を理解されたい。
【0046】
いくつかの実施形態では、弾性層および質量層からなる整合層部のそれぞれは、4分の1波長、例えば約50マイクロメートル(μm)よりはるかに小さい厚さを有するが、他の厚さも企図されている。いくつかの実施形態では、弾性層および質量層は、中心周波数における波長の約6分の1より小さい厚さをそれぞれ有することができ、また質量層は、弾性層より少なくとも約5倍大きいインピーダンスを有することができる。いくつかの実施形態では、能動層510から最も遠く、保護面プレートまたはレンズ514に最も近い整合層が整合層の最小インピーダンスを有するように、整合層は、全体的に低下するインピーダンスを有することができる。図5Bに示されているように、全体的に低下するインピーダンスは、整合層において質量層の厚さを減らし、弾性層の厚さを増やすことによって実現することができる。例えば、最も高いインピーダンスの整合層は、最も高い質量材料の割合と、最も低い弾性材料の割合とを有することができ、最も低いインピーダンスの整合層は、最も低い質量材料の割合と、最も高い弾性材料の割合とを有することができる。
【0047】
図示されているように、電磁放射シールド508は、整合層ML1の質量層を含む。他の実施形態では、電磁放射シールド508は、質量層と弾性層の両方を含む任意の整合層の質量層を含むことができる。いくつかの実施形態では、電磁放射シールドに組み込まれている質量層は、約10μの厚さか、またはそれより厚くてもよい。いくつかの実施形態では、電磁放射シールド508は、能動層510および/またはグラウンド電極509に当接する整合層の質量層を含むことができる。いくつかの実施形態では、電磁放射シールド508は、保護面プレートまたはレンズ514に当接する整合層の質量層を含むことができる。いくつかの実施形態では、電磁放射シールド508は、能動層510、グラウンド電極509、または、保護面プレートもしくはレンズ514に当接していない整合層の質量層を含むことができる。
【0048】
電磁放射シールド508は、電極520を介してグラウンド522に接地される。いくつかの実施形態では、電磁放射シールド508は、例えば超音波システムのシャーシコンソール(chassis console)に接地することができる。プローブ502の能動層510は、電極524を介して増幅器506に動作可能に接続される。
【0049】
いくつかの実施形態では、超音波プローブは、ケーブルを用いずに超音波システムと通信する無線超音波プローブでもよい。このような実施形態では、電磁放射シールドは、プローブの整合層の質量層を含むことができ、またプローブの能動層、およびプローブの電子回路(例えば、フレックス回路)を取り囲むことができる。このような実施形態は、例えば、図5Dに関連して以下で説明される熱ドレイン/ヒートシンクを含むことができる。
【0050】
動作時には、電磁放射シールド508は、周囲の機器により生じた電磁放射が、能動層510によって生成され、ケーブル504と増幅器506の間を伝わる電気信号に妨害を与えないようにすることができる。さらに、整合層の質量層を電磁放射シールドの一部として利用することによって、超音波トランスデューサの音響スタックに金属層を導入することに通常関係する望ましくない影響を有することなく、シールドを実現することが可能になる。
【0051】
少なくとも1つの実施形態に関する技術的効果は、電磁放射シールドによって、周囲の機器により生じた電磁放射が、超音波トランスデューサの能動層によって生成され、ケーブルと、受信器の増幅器との間を伝わる電気信号に妨害を与えないようにされることである。
【0052】
図5Dは、本発明の実施形態による超音波システムの構成要素570を示す。超音波システム570は、図5Aに関連して上述の構成要素を含み、また、バックスタック513に隣接して配置された熱ドレイン/ヒートシンク574をさらに含む。図5Dに示されているように、熱ドレイン/ヒートシンク574は、熱接続部572を介して第1の整合層ML1の質量層576に熱的に接続されており、この熱接続部572は、質量層576から熱ドレイン/ヒートシンク574に熱を伝達し、保護面プレートまたはレンズ514から熱を除くように構成される。いくつかの実施形態では、熱ドレイン/ヒートシンク574は、(1つまたは複数の)質量層から熱ドレイン/ヒートシンク574に熱を伝達するように構成された熱接続部を介して、整合部の任意および/または全ての質量層に熱的に接続され得る。いくつかの実施形態では、熱ドレイン/ヒートシンク574は、電磁放射シールド508の一部でもよく、また電極520を介してグラウンド522に接続されてもよい。
【0053】
少なくとも1つの実施形態に関する技術的効果は、超音波プローブの整合部における1つまたは複数の質量層の熱が、保護面プレートまたはレンズから離れて、トランスデューサの後部における熱ドレイン/ヒートシンクの方に導かれ、それによって保護面プレートまたはレンズの動作温度が低下することである。
【0054】
図6〜図9は、外側の整合層が質量−弾性構造体である、本発明の実施形態による超音波プローブの帯域幅性能に関する音響シミュレーションを示す。図6は、発明性のある電磁放射シールド、および音響スタックの以下の属性を有する試作超音波プローブに対する帯域幅性能を示す。音響スタックの属性は、いかなる整合層もレンズも有さず、空中における能動スタックの共振周波数が約3MHz、すなわちプローブに対する所望の中心周波数に近い周波数となるように設計された厚さを有する複合PZTからなる圧電層を含む能動スタックと、200μmの厚さを有し約11.5メガレイルの音響インピーダンスを有する材料からなる整合層と、170μmの厚さを有し約5メガレイルの音響インピーダンスを有する材料からなる整合層と、25μmの厚さを有しダイスカットされていないシリコーンからなる弾性層、および7μmの厚さを有しダイスカットされていない銅からなる質量層を含む整合層とである。このトランスデューサは、220μmのピッチ、40μmのカーフ(kerf)で動作した。
【0055】
図7は、発明性のある電磁放射シールドを有さない超音波プローブに対する、また、音響スタックの以下の属性に対する帯域幅性能を示す。音響スタックの属性は、いかなる整合層もレンズも有さず、空中における能動スタックの共振周波数が約3MHzとなるように設計された厚さを有する複合PZTからなる能動層と、200μmの厚さを有し約11.5メガレイルの音響インピーダンスを有する材料からなる整合層と、170μmの厚さを有し約5メガレイルの音響インピーダンスを有する材料からなる整合層と、140μmの厚さを有し約2メガレイルの音響インピーダンスを有する、ダイスカットされていない材料からなる整合層とである。このトランスデューサは、220μmのピッチ、40μmのカーフで動作した。
【0056】
図8〜図9は、発明性のある電磁放射シールドを有する試作超音波プローブ、および、発明性のある電磁放射シールドを有さない超音波プローブの音響性能をグラフで示す。特に、図6〜図9に見られ、またこれらの図で与えられている結果は同様であり、それによって、発明性のある電磁放射シールドが音響性能を損ねなかったことが示される。
【0057】
さらに、上述の発明性のある電磁放射シールドを有する超音波プローブを製造および使用する方法もまた企図されており、その方法が本発明の一部とみなされる。
【0058】
図10は、本発明の実施形態による超音波プローブを形成する方法1000を示す。1002では、能動層、保護面プレートまたはレンズ、および、能動層と、保護面プレートまたはレンズとの間に配置される整合層を含む音響スタックが設けられ、この整合層は、第1の材料を含む質量層と、第1の材料とは異なる第2の材料を含む弾性層とを含む。1004では、質量層を含み、能動層を取り囲み、ケーブルを介して超音波プローブに伝えられる信号と、超音波プローブから伝えられる信号とに外部からの電磁放射が妨害を与えることを抑制するように構成された電磁放射シールドが、超音波プローブに設けられる。1006では、熱が質量層から熱ドレインまたはヒートシンクに伝達され保護面プレートまたはレンズから遠ざけられるように、質量層が熱ドレインまたはヒートシンクに熱的に接続される。1008では、超音波プローブに信号を伝え、また超音波プローブから信号を伝えるように構成されたケーブルが、例えばフレキシブル回路を用いて能動層に動作可能に接続され、電磁放射シールドは、ケーブルを取り囲み、またこの電磁放射シールドは電極を介して接地される。
【0059】
いくつかの実施形態では、本方法は、整合層を能動層および/またはグラウンド電極に当接させるステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、整合層を保護面プレートまたはレンズに当接させるステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、質量層は金属を含む。いくつかの実施形態では、弾性層はポリマーを含む。いくつかの実施形態では、弾性層は、圧電材料のインピーダンスの約5分の1より小さい音響インピーダンスを有する材料を含む。いくつかの実施形態では、質量層は、弾性層より少なくとも約5倍大きいインピーダンスを有する。
【0060】
上記の説明は例示的であり、限定的でないことが意図されていることを理解されたい。例えば、上記の実施形態(および/または、それらの態様)は、互いとの組み合わせで用いられてもよい。さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況または特定の材料を適合させるために多くの変更がなされてもよい。本明細書に記載の寸法および材料の種類は、本発明のパラメータを定めることが意図されているが、それらは決して限定的なものではなく、例示的実施形態である。上記の説明を吟味すると、当業者には多くの他の実施形態が明らかとなろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲が権利を有する等価物の全ての範囲と共に、そのような特許請求の範囲を参照して定められることになる。添付の特許請求の範囲においては、「含む(including)」および「in which」の用語は、「含む(comprising)」および「wherein」のそれぞれの用語と等価である平易な英語として用いられている。その上、以下の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」、および「第3の」などの用語は、単にラベルとして用いられており、それらの対象となるものに対して数値的要件を課すようことは意図されていない。さらに、以下の特許請求の範囲の限定部分は、ミーンズプラスファンクション形式で書かれておらず、そのような特許請求の範囲の限定部分によって、さらなる構造が説明されていない機能の記述が後に続く「means for」という句が明確に用いられない限り、またこの句が明確に用いられるまでは、米国特許法第112条、第6段落に基づいて解釈されることは意図されていない。
【0061】
本書では、最良の形態を含めて本発明を開示するために、また、任意のデバイスまたはシステムを製造および使用すること、および組み入れられた任意の方法を実行することを含めて任意の当業者が本発明を実施できるようにするために、例が用いられている。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定められており、当業者に思い浮かぶ他の例を含むことができる。このような他の例は、それらが本特許請求の範囲の文字通りの言葉と異なることのない構造的要素を有する場合、または、本特許請求の範囲の文字通りの言葉と実質的に異なることのない等価な構造的要素を含む場合には、本特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0062】
100 超音波システム
102 送信器
104 圧電素子のアレイ
106 プローブ
108 受信器
110 ビーム形成器
112 RFプロセッサ
114 メモリ
116 プロセッサモジュール
118 ディスプレイ
120 プローブポート
122 メモリ
124 ユーザインタフェース
130 小型化超音波システム
132 プローブ
134 ユーザインタフェース
136 一体型ディスプレイ
138 外部デバイス
140 ネットワーク
142 ディスプレイ
144 移動式超音波撮像システム
146 可動ベース
148 ユーザインタフェース
150 プローブポート
152 コントロールボタン
154 キーボード
156 トラックボール
170 ポケットサイズの超音波撮像システム
172 ディスプレイ
174 ユーザインタフェース
178 プローブ
180 キーボード
182 ボタン
184 複数機能コントロール部
186 ラベル表示部分
188 キーおよび/またはコントロール部
500 超音波システムの構成要素
502 超音波プローブ
504 ケーブル
506 増幅器
508 電磁放射シールド
509 グラウンド電極
510 能動層
511 整合部
513 バックスタック
514 保護面プレートまたはレンズ
520 電極
521 電子回路
522 グラウンド
523 電子回路
524 電極
ML1 整合層
ML2 整合層
ML3 整合層
ML4 整合層
ML5 整合層
551 弾性層
552 質量層
553 弾性層
554 質量層
555 弾性層
556 質量層
557 弾性層
558 質量層
559 弾性層
560 質量層
561 弾性層
562 質量層
563 整合層
564 整合層
565 整合部
570 超音波システム
572 熱接続部
574 熱ドレイン/ヒートシンク
576 質量層
FIG.10 フローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動層(510)、保護面プレートまたはレンズ(514)、および、前記能動層(510)と、前記保護面プレートまたはレンズ(514)との間に配置された整合層(ML1)を含む音響スタック(513)であって、前記整合層(ML1)が、第1の材料を含む質量層(552)と、前記第1の材料とは異なる第2の材料を含む弾性層(551)とを含む、音響スタック(513)と、
前記質量層(552)を含み、前記能動層(510)を取り囲み、超音波プローブ(502)に伝えられる信号と、前記超音波プローブ(502)から伝えられる信号とに外部からの電磁放射が妨害を与えることを抑制するように構成された電磁放射シールド(508)と
を含む、超音波プローブ(502)。
【請求項2】
熱が前記質量層(552)から熱ドレインまたはヒートシンク(574)に伝達され前記保護面プレートまたはレンズ(514)から遠ざけられるように、前記質量層(552)が前記熱ドレインまたはヒートシンク(574)に熱的に接続されている、請求項1記載の超音波プローブ(502)。
【請求項3】
前記整合層(ML1)が、前記能動層(510)またはグラウンド電極(509)に当接する、請求項1記載の超音波プローブ(502)。
【請求項4】
前記整合層(ML1)が、前記保護面プレートまたはレンズ(514)に当接する、請求項1記載の超音波プローブ(502)。
【請求項5】
前記質量層(552)が金属を含む、請求項1記載の超音波プローブ(502)。
【請求項6】
前記弾性層(551)がポリマーを含む、請求項1記載の超音波プローブ(502)。
【請求項7】
前記弾性層(551)が、約1.5メガレイル未満の音響インピーダンスを有する材料を含む、請求項1記載の超音波プローブ(502)。
【請求項8】
前記質量層(552)が、前記弾性層(551)より少なくとも約5倍大きいインピーダンスを有する、請求項1記載の超音波プローブ(502)。
【請求項9】
前記超音波プローブ(502)に信号を伝え、また前記超音波プローブ(502)から信号を伝えるように構成されたケーブルをさらに含み、前記電磁放射シールド(508)が前記ケーブルを取り囲んでおり、また前記電磁放射シールド(508)が電極を介して接地されている、請求項1記載の超音波プローブ(502)。
【請求項10】
前記超音波プローブ(502)が、超音波システムと無線で通信するように構成されている、請求項1記載の超音波プローブ(502)。
【請求項11】
能動層(510)、保護面プレートまたはレンズ(514)、および、前記能動層(510)と、前記保護面プレートまたはレンズ(514)との間に配置される整合層(ML1)を含む音響スタック(513)を設けるステップであって、前記整合層(ML1)が、第1の材料を含む質量層(552)と、前記第1の材料とは異なる第2の材料を含む弾性層(551)とを含む、ステップと、
前記質量層(552)を含み、前記能動層(510)を取り囲み、ケーブルを介して超音波プローブ(502)に伝えられる信号と、前記超音波プローブ(502)から伝えられる信号とに外部からの電磁放射が妨害を与えることを抑制するように構成された電磁放射シールド(508)を前記超音波プローブ(502)に設けるステップと
を含む、超音波プローブ(502)を形成する方法。
【請求項12】
熱が前記質量層(552)から熱ドレインまたはヒートシンク(574)に伝達され前記保護面プレートまたはレンズ(514)から遠ざけられるように、前記質量層(552)を前記熱ドレインまたはヒートシンク(574)に熱的に接続するステップをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記整合層(ML1)を前記能動層(510)またはグラウンド電極(509)に当接させるステップをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記整合層(ML1)を前記保護面プレートまたはレンズ(514)に当接させるステップをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記超音波プローブ(502)に信号を伝え、また前記超音波プローブ(502)から信号を伝えるように構成されたケーブルを前記能動層(510)に動作可能に接続するステップをさらに含み、前記電磁放射シールド(508)が前記ケーブルを取り囲み、また前記電磁放射シールド(508)が電極を介して接地される、請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−135616(P2012−135616A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−273828(P2011−273828)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】