説明

電磁弁

【課題】電磁弁において、ピストン弁2の開状態を安定させる。
【解決手段】本体部1に入口ポート11、出口ポート12、シリンダ13、主弁ポート14、導通路15、ガイド孔16を形成する。ガイド孔16とシリンダ13内にピストン弁2を挿通する。ピストン弁2を開弁ばね3で開弁方向に付勢する。ピストン弁2にパイロット弁4を配設する。電磁駆動部5のプランジャ51の下端にパイロット弁4を係止させ、電磁駆動部5によりパイロット弁4を駆動し、ピストン弁2により主弁ポート14を開閉する。逆方向の流体の流れで、出口ポート12を高圧、入口ポート11を低圧とするとき、入口ポート11に導通する導通路15によりピストン弁2の背空間である弁上方室13Aを低圧にし、弁下方室11Aの高圧との差圧と開弁ばね3で弁開状態を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を流す一次側ポートと二次側ポートとの間にある主弁ポートに対してピストン弁を対向配置するとともに、このピストン弁のパイロットポートをパイロット弁で開閉し、開弁ばねのばね力あるいは流体の圧力によりピストン弁を開状態とする電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁弁として、実公昭61−41015号公報(特許文献1)及び特開2003−269504号公報(特許文献2)に開示されたものがある。特許文献1のものは、ピストン弁を弁開方向に付勢するばねを備えたものであるが、ばねが流体の流れにさらされているため、流体の流れによってばねが変位し、このばねを噛み込むおそれがある。この問題点を解決するものが特許文献2のものである。
【0003】
特許文献2のものは、弁体のばね接続部に先太の逆テーパ軸状部を形成し、この逆テーパ軸状部のテーパ外周に、圧縮コイルばねの最太部の外径より小さい内径の巻端部を嵌合させ、この嵌合によって圧縮コイルばねを弁体に抜け止め状態で接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭61−41015号公報
【特許文献2】特開2003−269504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1あるいは特許文献2のような電磁弁は、ピストン弁あるいは弁体を、ばねのばね力や流体の圧力により弁開状態とするものである。なお、弁閉状態は流体の圧力により保持される。このような電磁弁においては、弁開状態は流体の圧力の影響を受けて不安定になるという問題がある。
【0006】
本発明は、電磁弁において、ピストン弁の弁開状態を安定させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の電磁弁は、円柱形状のシリンダ内に軸線方向に移動可能に配設されるとともに、一次側ポートと二次側ポートとの間に形成された主弁ポートに対向配置されたピストン弁と、前記ピストン弁に形成されたパイロットポートに対向配置されたパイロット弁と、プランジャばねにより前記パイロットポート側に付勢されるとともに前記パイロット弁を保持するプランジャを有し該プランジャを軸線方向に駆動する電磁駆動部とを備え、前記シリンダが前記主弁ポートに対して前記二次側ポートとは反対側に形成され、前記ピストン弁の主弁部が前記一次側ポートの奥の弁下方室から前記主弁ポートに対向されるとともに、該ピストン弁の主弁部が該シリンダと前記弁下方室との間に形成されたガイド孔内に摺動自在に配置され、前記電磁駆動部の非通電時に前記パイロット弁で前記パイロットポートを閉状態として前記ピストン弁で前記主弁ポートを閉状態とし、前記電磁駆動部の通電時に前記パイロット弁を駆動して前記パイロットポートを開状態として前記ピストン弁で前記主弁ポートを開状態とする電磁弁であって、前記主弁部に対する前記パイロット弁側の背空間を前記一次側ポートに導通する導通路を形成し、前記二次側ポートから前記一次側ポートに流体を流すときに、前記導通路を介して前記背空間を低圧に導通するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の電磁弁は、請求項1に記載の電磁弁であって、前記シリンダ内に、前記ピストン弁を前記主弁ポートから離間する方向に付勢する開弁ばねを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の電磁弁によれば、二次側ポートから一次側ポートに流体を流すときに、前記シリンダ内の前記ピストン弁の主弁部に対する背空間が前記導通路を介して一次側ポートの低圧に導通されるので、二次側ポートに近い主弁ポートの高圧と前記背空間の低圧との差圧がピストン弁に作用し、該ピストン弁の開状態を安定に保持することができる。
【0010】
請求項2の電磁弁によれば、請求項1の効果に加えて、前記開弁ばねによりピストン弁が開方向に付勢されるので、さらに開状態を安定に保持することができる。また、開弁ばねはピストン内に配置されているので、この開弁ばねが流体の流れの影響を受けることがなく、開弁ばねの高い耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の電磁弁の通電時の縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態の電磁弁の非通電時の縦断面図である。
【図3】本発明の各実施形態における導通路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の電磁弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は実施形態の電磁弁の通電時の縦断面図、図2は同電磁弁の非通電時の縦断面図である。この実施形態の電磁弁は図1の状態で配置されるものであり、以下の説明における「上下」の概念は図1の図面における上下に対応する。
【0013】
この実施形態の電磁弁はパイロット式の電磁弁であり、冷媒等の流体を流すときは図1のように常時通電され、流体を遮断するときは図2のように非通電とする。金属製の本体部1には、図示しない継手に接続される「一次側ポート」としての入口ポート11と、図示しない継手に接続される「二次側ポート」としての出口ポート12と、シリンダ13が形成されている。冷媒等の流体が順方向に流れるときは、図に破線の矢印で示したように、流体は入口ポート11から流入して出口ポート12から流出し、流体が逆方向に流れるときは、図に実線の矢印で示したように、流体は出口ポート12から流入して入口ポート11から流出する。
【0014】
また、本体部1には、入口ポート11と出口ポート12との間に円形開口をなす主弁ポート14が形成されている。この主弁ポート14の周囲は主弁座14aとなっており、入口ポート11の奥の主弁座14aの回りには弁下方室11Aが形成されている。さらに、本体部1には、シリンダ13と入口ポート11の上端部とを導通する導通路15が形成されている。
【0015】
シリンダ13は、軸線Lを回転中心とする円筒形状をしており、その底部にはシリンダ13内から弁下方室11Aに通じる円形開口をなすガイド孔16が形成されている。そして、シリンダ13及びガイド孔16内には金属製のピストン弁2が内挿されている。
【0016】
ピストン弁2は、シリンダ13内に摺動自在に整合する円盤状の大径部21と、ガイド孔16内に摺動自在に整合する円柱状の主弁部22と、大径部21と主弁部22より径の小さな円柱状の小径部23とを一体に形成したものである。この小径部23の周囲は弁上方室13Aとなっている。この弁上方室13Aは前記導通路15により入口ポート11の上端部と導通される。なお、この弁上方室13Aがピストン弁2の主弁部22に対する「背空間」である。
【0017】
ピストン弁2はその主弁部22を主弁ポート14(主弁座14a)に対向して配置されている。シリンダ13の底部と大径部21との間には開弁ばね3が圧縮して配設されており、この開弁ばね3のばね力によりピストン弁2は主弁ポート14から離間する方向(開弁方向)に付勢されている。また、主弁部22の下端には主弁座14aに対向するように環状のシール部材22aが取り付けられており、このシール部材22aはピストン弁2が主弁座14aに着座したときに、主弁ポート14を閉じる。なお、主弁部22とガイド孔16との間にはクリアランスが設けられ、このクリアランスを介して弁下方室11Aの流体がシリンダ13内に流入可能となっている。
【0018】
ピストン弁2には上部に開口するガイド孔24が形成され、このガイド孔24の底部には中心にパイロットポート25が形成されている。パイロットポート25の下部には主弁ポート14側に導通する逆止弁室26が形成されており、逆止弁室26内にはボール状の逆止弁27が配設されている。パイロットポート25は逆止弁室26を介して主弁ポート14側に導通される。なお、主弁部22には、ガイド孔24内の冷媒を主弁部22の側部に逃がすためのブリードポート28が形成されている。
【0019】
ピストン弁2のガイド孔24内には、略円柱形状のパイロット弁4が内挿されている。パイロット弁4は下端部にボール弁41を有するとともに、この下端部の周囲にパイロット弁ばね42を備えている。また、パイロット弁4の中心にはシリンダ13及びガイド孔24の内部を上端に導通する通路43が形成されている。
【0020】
シリンダ13の上部には上蓋17がかしめ固着されており、この上蓋17の中央にはプランジャチューブ18が取り付けられている。プランジャチューブ18内には、電磁駆動部5のプランジャ51が内挿されている。プランジャ51は磁性体からなり、プランジャチューブ18内で軸線L方向(上下方向)に摺動可能に配設されている。プランジャ51の軸線L上には、中程から下方に向けて円筒形状のガイド孔51aが形成されるとともに、中程から上方に向けて縦孔51bが形成されている。ガイド孔51aにはパイロット弁4の上端部が挿通され、このガイド孔51aの下端部にはパイロット弁4のフランジ部44に係合する止め金51cが取り付けられている。
【0021】
電磁駆動部5はプランジャチューブ18に取り付けられており、前記プランジャ51と、プランジャチューブ18の上端に固定された磁性体からなる吸引子52と、プランジャ51と吸引し52との間に配設されたプランジャばね53と、プランジャチューブ18と吸引子52の外周に配置された電磁コイル54と、外函55を備えている。電磁コイル54は外函55でカバーされ、外函55は上部をネジ56により吸引子52にネジ止めされている。
【0022】
以上の構成により、実施形態の電磁弁は冷凍サイクルに設けられ、順方向では入口ポート11から冷媒(流体)が流され、逆方向では出口ポート12から冷媒が流される。この冷媒が流れるときは、図1に示すように電磁駆動部5に通電された状態となる。
【0023】
電磁コイル54に通電がなされていないとき(非通電持)は図2の状態となり、冷媒は流れない。すなわち、電磁コイル54では磁力は発生しておらず、プランジャばね53の付勢力及びプランジャ51の自重により、プランジャ51が吸引子52から離間した位置となる。このときパイロット弁4のボール弁41がパイロットポート25を弁閉状態とする。また、パイロット弁4と共にピストン弁2が下降して主弁部22が主弁ポート14を閉状態とし、冷媒の通路は遮断される。
【0024】
次に、順方向や逆方向に冷媒が供給された状態で電磁コイル54に通電がなされると、図2の状態から図1の状態に移行する。まず、吸引子52に磁力が伝わり、プランジャ51が上昇し、プランジャ51の下端の止め金51cがパイロット弁4のフランジ部44に当接係合し、プランジャ51とパイロット弁4が係合状態を保持して共に上昇する。また、ピストン弁2は開弁ばね3のばね力により主弁ポート14から離し、入口ポート11、主弁ポート14及び出口ポート12が導通する。
【0025】
順方向に冷媒が流れるときは、入口ポート11が高圧、出口ポート12が低圧になる。また、入口ポート11の高圧は、導通路15を介して弁上方室13Aに供給されるとともに、この入口ポート11の高圧は弁下方室11Aにも供給される。したがって、弁上方室13Aと弁下方室11Aとの差圧は殆どなく、ピストン弁2は開弁ばね3のばね力により安定して開状態を保持する。
【0026】
一方、逆方向に冷媒が流れるときは、出口ポート12が高圧、入口ポート11が低圧になる。また、入口ポート11の低圧により、導通路15を介して弁上方室13Aが低圧になる。出口ポート12の高圧冷媒の力は主弁ポート14を介して主弁部22の下部に作用するとともに、弁下方室11Aも入口ポート11よりも高圧になる。したがって、弁下方室11Aと弁上方室13Aとの差圧がピストン弁2に対して弁開方向に働き、開弁ばね3のばね力と協働して、ピストン弁2は安定して開状態を保持する。なお、逆方向に冷媒が流れるときは、差圧により逆止弁27がパイロットポート25を閉じるので、弁下方室11Aと弁上方室13Aとの差圧が確実に発生する。
【0027】
これに対して、導通路15が無いと、すなわち弁上方室13Aと入口ポート11とが導通されていないと、主弁部22とガイド孔16とのクリアランスから高圧冷媒が弁上方室13A内に流入するため、この弁上方室13Aと片側の入口ポート11Aとの差圧により、ピストン弁2の開状態が不安定になるが、上記導通路15により、このような状態を防止できる。
【0028】
上記の実施形態では、ガイド孔16の近傍に孔状の導通路15を形成するようにしているが、導通路の例として、例えば図3のようなものでもよい、図3(A) はガイド孔16の入口ポート11側の一部に、この入口ポート11に通じる溝状の導通路15′を形成したものである。図3(B) はガイド孔16の入口ポート11側の一部を大きくして、導通路15″を形成したものである。また、図示は省略するが入口ポート11とシリンダ13を導通するように、本体部の外部に導通路を設けてもよいし、主弁部22に導通路を形成してもよい。
【0029】
なお、上記のように導通路15により弁開状態が安定するので、電磁駆動部5に供給する電圧をPWM(Pulse Width Modulation)制御し、弁開状態の保持電力を少なくし、省エネを図ることもできる。また、電磁駆動部のコイル寿命が向上する。
【符号の説明】
【0030】
1 本体部
11 入口ポート(一次側ポート)
11A 弁下方室
12 出口ポート(二次側ポート)
13 シリンダ
13A 弁上方室(背空間)
14 主弁ポート
14a 主弁座
15 導通路
16 ガイド孔
2 ピストン弁
21 大径部
22 主弁部
23 小径部
24 ガイド孔
25 パイロットポート
3 開弁ばね
4 パイロット弁
41 ボール弁
42 パイロット弁ばね
5 電磁駆動部
51 プランジャ
51a ガイド孔
52 吸引子
53 プランジャばね
54 電磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状のシリンダ内に軸線方向に移動可能に配設されるとともに、一次側ポートと二次側ポートとの間に形成された主弁ポートに対向配置されたピストン弁と、
前記ピストン弁に形成されたパイロットポートに対向配置されたパイロット弁と、
プランジャばねにより前記パイロットポート側に付勢されるとともに前記パイロット弁を保持するプランジャを有し該プランジャを軸線方向に駆動する電磁駆動部とを備え、
前記シリンダが前記主弁ポートに対して前記二次側ポートとは反対側に形成され、前記ピストン弁の主弁部が前記一次側ポートの奥の弁下方室から前記主弁ポートに対向されるとともに、該ピストン弁の主弁部が該シリンダと前記弁下方室との間に形成されたガイド孔内に摺動自在に配置され、
前記電磁駆動部の非通電時に前記パイロット弁で前記パイロットポートを閉状態として前記ピストン弁で前記主弁ポートを閉状態とし、前記電磁駆動部の通電時に前記パイロット弁を駆動して前記パイロットポートを開状態として前記ピストン弁で前記主弁ポートを開状態とする電磁弁であって、
前記主弁部に対する前記パイロット弁側の背空間を前記一次側ポートに導通する導通路を形成し、前記二次側ポートから前記一次側ポートに流体を流すときに、前記導通路を介して前記背空間を低圧に導通するようにしたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記シリンダ内に、前記ピストン弁を前記主弁ポートから離間する方向に付勢する開弁ばねを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−36599(P2013−36599A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175718(P2011−175718)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】