説明

電磁波シールドフィルタ用銅箔及び電磁波シールドフィルタ

外観の明度、色度が小さく且つ模様やムラが少ない、ディスプレイ前面の電磁波シールド用途に優れた銅箔及びそれを用いて製造される電磁波シールドフィルタを提供する。
銅箔表面に、銅、コバルト及び亜鉛からなる着色層を形成することにより、表面の明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5の電磁波シールドフィルタ用銅箔を製造する。得られた電磁波シールドフィルタ用銅箔は、外観に模様やムラが少なく、この電磁波シールドフィルタ用銅箔を用いたディスプレイ前面の電磁波シールドフィルタは、外観に優れディスプレイの視認性が良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルタ用銅箔及びそれを用いた電磁波シールドフィルタに関する。更に詳しくは、PDP(プラズマディスプレイパネル)や陰極線管(CRT)などのディスプレイ装置の前面に設置される、電磁波シールドフィルタ用銅箔及びそれを用いた電磁波シールドフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
PDPやCRTなどのディスプレイ装置においては、装置前面に電磁波シールドフィルタを設置して、電磁波の放射を防止する必要がある。電磁波シールドフィルタとしては、電磁波シールド性と光透過性とを両立するために、蒸着により導電性薄膜を形成する方法と、金属箔や導電性繊維を用いて導電性メッシュを形成する方法とが提案されている。電気伝導性に優れ、かつ、安価な銅箔をエッチングすることにより、導電性メッシュを形成するサブトラクティブ方式は、導電性が高く細線の銅メッシュを形成できることから、電磁波シールド性と光透過性とに優れ、かつ、プリント配線板の製造に用いられてきたエッチング技術を転用できることから、生産性に優れる。電磁波シールド性と光透過性、ならびに強度の点から、銅メッシュの線幅は一般に5〜30μmである。銅メッシュ単体では取扱い性が悪いことから、銅箔を透明な接着剤を用いて支持体に貼付けてから、銅箔をエッチングして銅メッシュを形成することも行われる。支持体が透明樹脂フィルムまたはガラスの場合は、そのまま電磁波シールドフィルタとして用いることができる。銅メッシュを支持体から透明樹脂フィルムまたはガラスに転写することも行われている。
【0003】
ディスプレイ装置の画質を損なわないために、サブトラクティブ方式による銅メッシュは視認されにくいことが望ましく、細線化に加えて、表面の明度と色度が小さく、模様やムラが少ないことが必要である。表面粗さが小さく、かつ、厚さが9〜18μmのプリント配線板用電解銅箔は、エッチングにより形成した細線の直線性に優れ、かつ、エッチングファクターが高く断面形状に優れることから、細線の形成に適しているが、明度、色度が高く、銅メッシュの視認性が高くなる。表面の明度、色度を下げ、黒色化する方法としては、黒クロムめっきと黒ニッケルめっきが知られているが、黒クロムめっきは、クロムの環境への影響が大きく、また、エッチングが難しい。黒ニッケル処理は、エッチング液のしみ込みで黒ニッケル層が溶失する問題がある。また、反射率が小さく、外観に模様やムラの少ない電磁やシールド用銅箔として、表面に錫とニッケルとモリブデンとからなる合金めっき層を有し、反射率が1%〜15%であることを特徴とする銅箔が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。この銅箔は、有害なクロムを使用せず、また、エッチング液のしみ込みにより外観が変化する問題はなく、電磁波シールドフィルタに適している。銅メッシュの黒色化された面と、透明樹脂フィルムまたはガラスに接着される面とは、同一の面であっても、異なる面であってもよい。銅メッシュの黒色化された面と、透明樹脂フィルムまたはガラスに接着される面とが異なる場合、あるいは銅箔単体をエッチングして銅メッシュとして用いる場合は、黒色化処理は任意の段階で行うことができるが、生産性に優れることから、黒色化された銅箔に対してエッチング処理を行うのが一般的である。
【特許文献1】特開2003−201597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PDPでは、色相補正などの目的で、電磁波シールドフィルタに加えて多数の光学フィルタ等が設置されてきたが、構造の簡素化が進み、光学フィルタ等の層数が減少したことにより、電磁波シールドフィルタが視認されやすくなってきた。このため、電磁波シールドフィルタ用銅箔には、明度と色度とを減少させ、従来よりも黒く、かつ、色味のない均一な外観が要求され、特許文献1に記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔では、明度や色度を満足できないこととなった。表面粗さを大きくすることにより、明度や色度を低減することは可能であるが、銅箔と透明樹脂フィルムやガラス面との接着に用いた接着剤に、銅箔の表面形状が転写し、この転写された凹凸によりヘイズと呼ばれる曇りが発生するため、透明性が低下することから、表面粗さを大きくすることはできない。黒色化された面と、接着面とを異なる面とすれば、表面形状の転写によるヘイズは発生しないが、接着時に銅メッシュの表面が損傷し、視認されやすくなる。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、表面の明度と色度が低く、かつ、ヘイズが小さく、視認されにくい電磁波シールドフィルタ用銅箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、少なくとも一方の表面の明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5であることを特徴とする、電磁波シールドフィルタ用銅箔に関する。
【0007】
(2)本発明は、また、銅箔層と、銅箔層の少なくとも片面上の銅、コバルト及び亜鉛を含有する着色層とを有し、着色層が、明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5である表面と銅箔層との間に位置することを特徴とする(1)に記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔に関する。
【0008】
(3)本発明は、また、着色層の銅、コバルト及び亜鉛の含有量が、銅、コバルト及び亜鉛の合計量に対して、銅が40〜70重量%、コバルトが10〜30重量%、亜鉛が10〜30重量%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔に関する。
【0009】
(4)本発明は、また、着色層の銅、コバルト及び亜鉛の含有量の合計量が3〜10mg/dm2であることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔に関する。
【0010】
(5)本発明は、また、少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さRaで0.1〜0.5μmであることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔に関する。
【0011】
(6)本発明は、また、銅箔層と、銅箔層の少なくとも片面上のモリブデンを含有する銅微粒子からなる微細粗化層と、微細粗化層上の銅、コバルト及び亜鉛を含有する着色層とを有し、着色層が、明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5である表面と微細粗化層との間に位置することを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔に関する。
【0012】
(7)本発明は、また、(1)〜(6)いずれかに記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔を用いた電磁波シールドフィルタに関する。
(8)本発明は、また、プラズマディスプレイパネル用に用いられる(7)に記載の電磁波シールドフィルタに関する。
【0013】
着色層は、微細な針状構造の集合体を形成することによって入射光の反射を抑制し、黒色の外観を実現する。着色層だけでも十分な黒色外観が得られるが、さらに、微細粗化層による同様な反射抑制効果とあいまって、外観をより黒色かすることが可能となる。
【0014】
本発明の電磁波シールドフィルタ用銅箔は、例えば、銅箔の少なくとも一方の表面に銅、コバルト及び亜鉛を含有する着色層を形成することにより製造される。さらに、本発明の電磁波シールドフィルタ用銅箔は、銅箔上に、モリブデンを含有する銅微粒子からなる微細粗化層と、銅、コバルト及び亜鉛を含有する着色層とを、順次形成することにより製造することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電磁波シールドフィルタ用銅箔は、表面の明度と色度が低く、かつ、ヘイズが小さく、視認されにくいため、PDPなどのディスプレイ装置の電磁波シールドフィルタに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の電磁波シールドフィルタ用銅箔は、例えば、銅箔層と、銅箔層の少なくとも片面上の銅、コバルト及び亜鉛を含有する着色層とを有するものであり、この電磁波シールドフィルタ用銅箔においては、着色層が、明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5である表面と銅箔層との間に位置する。着色層は、銅箔層の片面上のみに存在していても、両面上に存在していてもよい。このような電磁波シールドフィルタ用銅箔は、例えば、銅箔の表面に、銅、コバルト及び亜鉛を含有する着色層を形成することにより製造することができる。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔のいずれも使用できるが、広幅で大面積の電磁波シールドフィルタを形成でき、かつ、安価なことから、電解銅箔が好適に用いられる。銅箔の厚さは1〜18μmであることが好ましく、厚すぎるとエッチングによる細線形成が困難となるので好ましくない。
【0017】
また、上記の電磁波シールドフィルタ用銅箔は、銅箔層上に着色層とモリブデンを含有する銅微粒子からなる微細粗化層を有していてもよい。例えば、銅箔層と着色層との間に、モリブデンを含有する銅微粒子からなる微細粗化層を有していてもよい。このような電磁波シールドフィルタ用銅箔においては、着色層が、明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5である表面と微細粗化層との間に位置する。
【0018】
モリブデンを含有する銅微粒子からなる微細粗化層と、着色層とは、電解銅箔においては光沢面と粗化面のいずれに形成してもよい。また、電磁波シールドフィルタの支持体である透明樹脂フィルムやガラスとの接着面となる電磁波シールドフィルタ用銅箔の表面は、銅箔層の光沢面と粗化面側の表面のいずれであってもよい。これらは、電磁波シールドフィルタの製造工程により任意に決定される。接着に用いられる表面、例えば、電磁波シールドフィルタ用銅箔の明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各+5から−5である表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaは0.1〜0.5μmであることが好ましく、0.1〜0.3μmであることがより好ましい。中心線平均粗さRaが0.5μmより大きいと、表面形状の転写に起因する接着剤層のヘイズが大きななり、電磁波シールドフィルタの透明性が低下するので好ましくない。一方、中心線平均粗さRaが0.1μmより小さいと、接着力が十分でなく、信頼性が低下するので好ましくない。モリブデンを含有する銅微粒子からなる微細粗化層を形成することにより、支持体との接着力とヘイズ防止に好ましい表面粗さとを両立させることができる。このような微細粗化方法としては、特許第3429290号公報に記載された方法がある。
【0019】
本発明の電磁波シールドフィルタ用銅箔は、少なくとも一方の表面の明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各+5から−5であることを特徴とする。明度と色度は、色彩式差計により測定される。JIS Z 8729に規定されたL***表色系、JIS Z 8701に規定されたXYZ表色系で表示することができる。夫々の表色系において、明度はL*及びYにより、色度はa**及びxyにより表される。本発明では、明度及び色度を、JIS Z 8729に規定されたL***表色系で規定する。明度は値が小さいほど黒く光を反射せずに見え難いことを意味し、理論的な最小値は0である。色度は色度図上の座標を表し、色相と彩度を表す。L***表色系において、a**の値が共に0の座標は理論的な無彩色を表す。明度がL*で1〜20の範囲では、銅箔の表面は黒く、差異を肉眼で識別することは困難である。明度はL*での値が低いほど好ましいが、通常、10〜20でも目的とする効果が得られる。一方、色度がa*、b*で各々+5から−5であると、肉眼では色相の識別が困難である。a*が+5を超えると銅メッシュが赤系色に見え、−5未満では緑系に見え、b*が+5を超えると黄系に、−5未満では青系に見える。a*の好ましい範囲は、+4〜−2であり、b*の好ましい範囲は+2〜−5である。
【0020】
明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5である表面と銅箔層との間に形成される銅、コバルト、亜鉛を含有する着色層中、銅、コバルト、亜鉛の含有量は、銅、コバルト、亜鉛の合計量に対して、銅が好ましくは40〜70重量%、より好ましくは50〜70重量%、コバルトが好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%、亜鉛が好ましくは10〜30%、より好ましくは20〜25重量%である。また、着色層中の銅、コバルト及び亜鉛の含有量の合計量は、好ましくは3〜10mg/dm2である。着色層の形成は、微細粗化後に行うことが好ましく、すなわち、着色層を微細粗化層の表面に形成することが好ましい。
【0021】
銅、コバルト及び亜鉛からなる着色層は、銅、コバルト及び亜鉛を電気めっきにより同時にめっきすることにより、形成することができる。着色層は、銅、コバルト、亜鉛の含有量によって明度、色度が異なる。銅の比率が、40重量%未満では、明度が高くなる傾向がある。また70重量%を超えると赤みを呈する傾向があるので好ましくない。亜鉛の比率が30重量%を超えた場合及びコバルトの比率が10重量%未満では、黄色系に着色し明度も高くなる傾向がある。また、亜鉛の比率が10重量%未満及びコバルトの比率が30重量%を超えると、青色系に着色し明度も高くなる傾向があり、好ましくない。着色層の銅、コバルト、亜鉛の含有量の合計量は、3〜10mg/dm2であることが好ましい。さらに好ましい範囲は6〜10mg/dm2である。3mg/dm2未満では、明度が高くなる傾向があり、色度も銅に近い赤みを呈する傾向があり、一方、10mg/dm2を超えても明度、色度の改善はみられない。
【0022】
銅、コバルト、亜鉛を含有する着色層の形成に用いるめっき液は、硫酸銅、塩化銅、炭酸銅、水酸化銅など銅を含む銅化合物と、硫酸コバルト、塩化コバルト、炭酸コバルト、水酸化コバルトなどコバルトを含むコバルト化合物と、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛などの亜鉛を含む亜鉛化合物とを含有する水溶液である。めっき液には、電気抵抗を下げる目的で硫酸ナトリウムなどのめっきされない電解質の金属塩と、めっき液のpHを安定化させる目的で硼酸などの緩衝剤を加えると好適である。
【0023】
着色層形成のためのめっき浴の銅イオン濃度は、好ましくは1.9〜3.8g/l、より好ましくは2.5〜3.2g/lであり、コバルトイオン濃度は、好ましくは1.8〜3.5g/lであり、より好ましくは2.4〜2.9g/lであり、亜鉛イオン濃度は、好ましくは2.0〜3.9g/l、より好ましくは2.4〜3.3g/lである。めっきは、例えば、電流密度2.0〜6.0A/dm2、好ましくは2.5〜6.0A/dm2、めっき浴温度20〜30℃、めっき時間3〜10秒、好ましくは3〜6秒の条件で行なうことが望ましい。
【0024】
モリブデンを含有する銅微粒子からなる微細粗化層中、モリブデンの含有量は、銅及びモリブデンの合計量に対して、0.01〜1重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量%である。
【0025】
モリブデンを含有する銅微粒子からなる微細粗化層の形成は、例えば、特許第3429290号公報に記載されているように、銅箔を陰極として、銅イオン、モリブデンイオン、亜鉛イオン、塩素イオンを含有するめっき浴を用い、めっき浴の限界電流密度未満の電流密度で電界処理し、次いで、銅イオンを含有するめっきよくを用いて、めっき浴の限界電流密度未満の電流密度で電界処理処理することにより行なうことができる。
【0026】
着色層を形成後、防錆層を形成し銅箔の保管時の防錆性や、エッチング加工など製造工程上の化学処理での耐薬品性を向上させることができる。防錆処理は色相に影響しないものであれば、特に限定されず、プリント配線板用途の銅箔に使用される各種の防錆処理が適用できる。クロムによる防錆処理は、色相に影響しないため、好適である。
【0027】
本発明の電磁波シールドフィルタは、本発明の電磁波シールドフィルタ用銅箔を用いたものであり、透明樹脂フィルム、透明樹脂板又はガラス等の透明基板と、本発明の電磁波シールドフィルタ用銅箔からメッシュ状等の回路状に加工された導電性回路であって、接着剤を介してこの透明基板に貼付けられている導電性メッシュとからなる構造を有する。電磁波シールドフィルタ用銅箔の片面のみが明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5である表面である場合、導電性メッシュの透明基板に貼付けられている面は、明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5である表面であっても、他方の面であってもどちらでもよい。微細粗化層は、透明基板との貼付けに用いられる面と銅箔層との間に形成されていることが好ましい。
【0028】
本発明の電磁波シールドフィルタは、例えば、透明基板に電磁波シールドフィルタ用銅箔を接着剤で貼り付けた後、電磁波シールドフィルタ用銅箔をエッチングすることにより所望の導電性回路を形成することによって製造することができる。また、透明基板以外の支持体上に同様にして導電性回路を形成した後、その導電性回路を接着剤を用いて透明基板上に転写してもよい。本発明の電磁波シールドフィルタは、種々のディスプレイ装置、例えばPDP(プラズマディスプレイパネル)や陰極線管(CRT)などのディスプレイ装置の全面に配置されて用いられ、特にPDP用電磁波シールドフィルタとして好適に用いられる。
【0029】
以下に実施例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0030】
表1に示す組成のめっき液を用いて、電解銅箔(日本電解株式会社製、厚さ18μm、光沢面の中心線平均粗さRa=0.20μm)の光沢面に、めっき処理を行って着色層を形成し、電磁波シールドフィルタ用銅箔を作製した。この電磁波シールドフィルタ用銅箔の着色層上の表面について、色彩色差計(コニカミノルタ株式会社製、CR−241型)を用いて、色彩色差を測定した。結果を表1に示した。また、アクリル樹脂系接着剤を用いて電磁波シールドフィルタ用銅箔を、着色層面を接着面として厚さ50μmのポリエステル樹脂製フィルムにフィルムの接着剤層を介して接着した。その後、塩化第2銅を用いてエッチングを行い、電磁波シールドフィルタ用銅箔(銅箔層及び着色層、又は、銅箔層、微細粗化層及び着色層)を全面除去し、目視により外観を観察し、電磁波シールドフィルタ用銅箔の表面粗さが接着剤層に及ぼす影響を評価した。フィルムを通して文字が明瞭に読みとれるものを○、輪郭が不明瞭となるものを×とした。
【0031】
表1中、A1〜A4は、本発明による電磁波シールドフィルタ用銅箔、B1〜B7は、A1〜A4の優位性を示すための比較例である。A1〜A4の銅箔はいずれも、赤みや青み、黄みなどを呈しない黒色であった。また、A1〜A3は粗化処理を行わず、A4は粗化処理を行ってから本発明の銅、コバルト、亜鉛からなる着色層を形成したものであるが、同様の外観を示した。なお、A4において粗化処理を行っているにも関わらず、中心線平均粗さに変化が見られないのは、通常の表面粗さ測定法では検出できない程度の微細な差であることによる。
【0032】
【表1】

【0033】
粗化A:ZnSO4・7H2O:57.5g/l、CuSO4・5H2O:50g/l、Na2MoO4・2H2O:2.0g/l、塩素20ppmの粗化液で8A/dm2で0.5秒間、粗化の粒付け処理をし、次にCuSO4・5H2O:125g/l、H2SO4:100g/lの粗化液で4A/dm2で5秒間粗化粒子の補強処理を行った。極めて微細な粗化粒子が均一に分布し、粗化前後で表面粗さの測定値に差異は見られなかった。
【0034】
以上の結果から明らかなように、本発明の電磁波シールドフィルタ用銅箔は、黒色で、エッチング後のヘイズが小さく透明性に優れ、電磁波シールドフィルタ用銅箔として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
外観の明度、色度が小さく且つ模様やムラが少ない、ディスプレイ前面の電磁波シールド用途に優れた銅箔として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面の明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5であることを特徴とする、電磁波シールドフィルタ用銅箔。
【請求項2】
銅箔層と、銅箔層の少なくとも片面上の銅、コバルト及び亜鉛を含有する着色層とを有し、着色層が、明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各々+5から−5である表面と銅箔層との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔。
【請求項3】
着色層の銅、コバルト及び亜鉛の含有量が、銅、コバルト及び亜鉛の合計量に対して、銅が40〜70重量%、コバルトが10〜30重量%、亜鉛が10〜30重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔。
【請求項4】
着色層の銅、コバルト及び亜鉛の含有量の合計量が3〜10mg/dm2であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔。
【請求項5】
少なくとも一方の表面の表面粗さが、中心線平均粗さRaで0.1〜0.5μmであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔。
【請求項6】
銅箔層と、銅箔層の少なくとも片面上のモリブデンを含有する銅微粒子からなる微細粗化層と、微細粗化層上の銅、コバルト及び亜鉛を含有する着色層とを有し、着色層が、明度がL*で1〜20、色度がa*、b*で各+5から−5である表面と微細粗化層との間に位置することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の電磁波シールドフィルタ用銅箔を用いた電磁波シールドフィルタ。
【請求項8】
プラズマディスプレイパネル用に用いられる請求項7に記載の電磁波シールドフィルタ。

【国際公開番号】WO2005/067362
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516850(P2005−516850)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019529
【国際出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000232014)日本電解株式会社 (11)
【Fターム(参考)】