説明

電磁波シールド材ロール体の製造方法

【課題】 写真銀−メッキ法において、露光工程の生産性を高めるとともに、電磁波シールドの性能の部分的なばらつきが少なく性能の安定した電磁波シールド材ロール体の製造方法の提供。
【解決手段】 露光及び現像によって金属銀を析出する物質を含む層が設けられた透明基材(ロールシート3)を連続的に繰り出し、該透明基材に連続露光装置16を用いて露光、次いで現像することにより、前記透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられた現像銀メッシュパターンを生成し、引き続いて、メッキ工程により前記現像銀メッシュパターンの上にメッキ層を形成したのち、再び巻き取ってロール体15とする製造方法により、ロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体15を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRT、PDP(プラズマディスプレイ)などの各種ディスプレイに用いられる電磁波シールド材及びその製造方法に関し、特に、ロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRT、PDP(プラズマディスプレイ)などの各種ディスプレイにおいては、ディスプレイ前面から発生する電磁波が人体に悪影響を与えたり、周囲の電子機器を誤動作させることが問題とされるようになり、ディスプレイの画像の鮮明さとともに、ディスプレイが周囲へ与える影響への対策がますます重要視されつつある。
【0003】
従来、ディスプレイから発生する電磁波が外部に漏洩して人体への悪影響を防ぐという要求に対して、種々の透明導電性フィルムおよび電磁波シールドフィルムが開発されている。公知の電磁波シールド材は、大きくは、透明導電膜による電磁波シールド材と、導電性の金属メッシュによる電磁波シールド材の2つに区分される。このうち、透明導電膜による電磁波シールド材は、金属メッシュによる電磁波シールド材に比べて透明性に優れる反面、表面抵抗率が大きく、電磁波シールド性能に劣る。このため、PDP等の強い電磁波を発生させる機器からの電磁波をシールドする用途では、金属メッシュによる電磁波シールド材が好ましい。
【0004】
さらに、導電性の金属メッシュによる電磁波シールド材の作製方法としては、下記の(1)〜(3)に示す方法が挙げられる。
(1)透明基材に金属箔を貼り合わせ、または透明基材に金属の薄膜を蒸着した後、フォトリソグラフ法により導電性金属パターンを形成するエッチング法(例えば、特許文献1参照)。
(2)透明基材の上に導電性の金属ペーストをメッシュパターンに印刷した後にメッキして導電性金属パターンを形成する印刷−メッキ法(例えば、特許文献2参照)。
(3)細線パターンを写真製法により現像された金属銀で形成した後、この金属銀を物理現像および/またはメッキすることにより導電性金属パターンを形成する写真銀−メッキ法(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。
【0005】
そして、写真製法により金属銀でメッシュパターンを形成する方法には、下記の(a)、(b)に示す2通りがある。
【0006】
(a)支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに前記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させた導電性金属部を形成する方法(例えば、特許文献3参照)。この方法は、露光マスクに覆われて露光されなかった部分には現象銀は発現せず、露光マスクに覆われていなくて露光された部分に現像銀が発現する、したがって、露光マスクと比較して反転した形に現像銀が表れるネガ型の露光・現像法である。
【0007】
(b)透明基材上に、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層とをこの順で有する感光材料を露光し、物理現像核上に任意の細線パターンで金属銀を析出させ、次いで前記物理現像核上に設けられた層を除去した後、前記物理現像された金属銀を触媒核として金属をめっきする方法(例えば、特許文献4参照)。この方法は、露光マスクに覆われて露光されなかった部分には現象銀が発現し、露光マスクに覆われていなくて露光された部分には現像銀が発現しない、したがって、露光マスクと同じ形に現像銀が表れるポジ型の露光・現像法(銀錯塩拡散転写法、以降DTR法と称す。)である。
【0008】
また、特許文献5には、上記(1)のエッチング法で銅薄膜の微細なメッシュパターンを形成する際、レジスト(光硬化性樹脂)を露光するため、所定のマスクパターンが形成された枚葉式の露光マスク(フォトマスク)を用いる枚葉処理方式の露光装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−075087号公報
【特許文献2】特開平11−170420号公報
【特許文献3】特開2004−221564号公報
【特許文献4】WO2004/007810号公報
【特許文献5】特開2003−295457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記(1)のエッチング法においては、エッチングにより細線部分となるほんのわずかな部分のみを残し、それ以外のほとんど大部分の金属を溶解除去するのは資源を節減するという観点から問題である。また、市販されている金属箔の最大規格寸法幅が約600mm以下であるから、金属箔を貼り合わせる方法ではこれ以上の寸法幅が広い電磁波シールド材は製造できない。また、金属の薄膜を蒸着する場合は、膨大な設備費が必要となることから簡単に製造を行うことができないという問題があった。
上記(2)の印刷−メッキ法においては、メッシュパターンの線幅を30μm以下にするのが困難であり、また、透明基材とメッシュパターンの密着性が悪く剥がれ易いという問題があった。
【0010】
上記(3)の写真銀−メッキ法においては、高い電磁波シールド性が得られ、また、透明基材の寸法に制約を受けることが無く、ロールtoロールで製造でき非常に生産性が高いことから好ましい製造方法である。
【0011】
ところで、写真銀−メッキ法において、上記の(a)または(b)の写真製法により現像銀メッシュパターンを生成する工程において、所定のマスクパターンが形成された枚葉式の露光マスク(フォトマスク)を用いて行う枚葉処理方式の露光装置(特許文献5)では、ロールシートを間欠送りで露光装置に送り、装置内を真空排気して露光マスクと基材とを密着させて隙間を無くしてから露光するので、処理速度を速くすることができないという問題があった。
【0012】
また、電解メッキする場合は、無電解メッキに比べてメッキ速度が速いが、従来技術においては、電解メッキするのにステップ送りにて電解槽に移送して1つのメッシュパターン毎に電解メッキを間欠送りにて行うので生産性が低いという問題があった。
また、電解メッキを連続工程で行う場合は、電解電流を供給する給電を均一に安定して行うことが技術的に困難であって、メッシュパターンの一部分にメッキ厚みのばらつきが出る「メッキむら」が生じ易く、結果としてメッシュパターンの一部分に電磁波シールド性能の部分的なばらつきが生じるという問題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、写真銀−メッキ法において、露光工程の生産性を高めるとともに、電磁波シールドの性能の部分的なばらつきが少なく性能の安定した、ロールの状態で供給される電磁波シールド材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明は、長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、写真製法により生成された現像銀メッシュパターンの上にメッキ層を形成してなる金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられ、かつロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体の製造方法であって、露光及び現像によって金属銀を析出する物質を含む層が設けられた透明基材を連続露光装置を用いて露光、次いで現像することにより、前記透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられた現像銀メッシュパターンが生成された原反ロールを製造する工程と、当該現像銀メッシュパターンが設けられた透明基材を原反ロールから連続的に繰り出したのち、前記現像銀メッシュパターンの上にメッキ層を形成し、再び巻き取ってロール体とするメッキ工程とを少なくとも有することを特徴とする電磁波シールド材ロール体の製造方法を提供する。
【0015】
また本発明は、長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、写真製法により生成された現像銀メッシュパターンの上にメッキ層を形成してなる金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられ、かつロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体の製造方法であって、露光及び現像によって金属銀を析出する物質を含む層が設けられた透明基材を連続的に繰り出し、該透明基材に連続露光装置を用いて露光、次いで現像することにより、前記透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられた現像銀メッシュパターンを生成し、引き続いて、メッキ工程により前記現像銀メッシュパターンの上にメッキ層を形成したのち、再び巻き取ってロール体とすることを特徴とする電磁波シールド材ロール体の製造方法を提供する。
【0016】
前記連続露光装置としては、上記写真製法における露光に用いられる光を透過する材質からなる円筒ドラムと、前記円筒ドラムの外周壁に設けられた露光マスク部分と、前記円筒ドラムの内部に配設された露光用光源とを備え、前記円筒ドラムに巻き付けられた透明基材に対して円筒ドラムの内側から光を照射する装置を用いることができる。
また、前記連続露光装置として、円筒ドラムと、連続したパターンが形成された露光マスクフィルムと、前記円筒ドラムの外部に配設された露光用光源とを備え、前記円筒ドラムに重ねて巻き付けられた透明基材及び前記露光マスクフィルムに対して前記円筒ドラムの外側から光を照射する装置を用いることもできる。
【0017】
前記メッキ工程を行う際に、前記現像銀メッシュパターンの周囲に配設された金属メッシュ又は金属薄膜からなるシールド枠、及び前記シールド枠の幅方向両外側に接しかつ前記透明基材の長手方向に連続して設けられた一定幅の電解メッキ用給電層を通して電解メッキ用の給電を行うことが好ましい。
前記電解メッキ用給電層は、金属メッシュ又は金属薄膜からなり、幅が15〜80mmであることが好ましい。
前記シールド枠にはさらに、金属メッシュ又は金属薄膜からなり、隣接するシールド枠を連結する連結帯が前記シールド枠の長手方向の片側又は両側に配設されていることが好ましい。
【0018】
前記現像銀メッシュパターンの生成は、露光した部分に現像銀が発現するネガ型の現像方法、露光しない部分に現像銀が発現するポジ型の現像方法のいずれによっても行うことができる。
前記電磁波シールド材は、プラズマディスプレイ用光学フィルターに用いられると好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、写真銀−メッキ法において、露光工程の生産性を高めると共に、電磁波シールドの性能の部分的なばらつきが少なく性能の安定した電磁波シールド材ロール体を製造することが可能である。ロールtoロールで電磁波シールド材を連続製造して供給することができるので、製造コストを大幅に低減することが可能である。また、原反シートのメッシュパターンを現像及び露光で形成するときに、透明基材の送りが連続送りである連続露光装置を用いて露光を行うので、透明基材の送りが間欠送りである枚葉処理方式の露光装置に比較して処理速度が速い。また、繋ぎ目の無い連続したパターンが得られるという利点があるので、透明基材の長手方向に連続して設けられた一定幅の電解メッキ用給電層をメッシュパターンで形成することも可能であり、この場合にはさらに生産性を向上させることができる。
【0020】
シールド枠の長手方向の片側又は両側に、金属メッシュ又は金属薄膜からなり、隣接するシールド枠を連結する連結帯を配設した場合、電解電流を供給する給電を均一に安定して行うことができるので、メッキ層の「メッキむら」およびそれに起因するメッシュパターンの電磁波シールド性能の部分的なばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明において、ロールtoロールで電解メッキを行う装置の一例を示す概略図である。図2は、本発明において、ロールtoロールで露光・現像に引き続いて電解メッキを連続して行う装置の一例を示す概略図である。図3は、本発明の電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。図4は、本発明の電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン、給電層及び連結帯の配置の一例を示す部分平面図である。図5は、本発明の電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン、給電層及び連結帯の配置の他の例を示す部分平面図である。図6は、従来の電磁波シールド材におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。図7は、本発明で用いられる連続露光装置の一例を示す概略図である。図8は、本発明で用いられる連続露光装置の別の一例を示す概略図である。
【0022】
(メッキ工程)
(連続給電による電解メッキ層の作製方法)
図1に示す電磁波シールド材製造装置1では、長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、写真製法により露光・現像されて現像銀がメッシュパターン形状に定着されているロールシート3が、ロール状に巻き取られた原反ロール2から、所要箇所に配置された移送ロール4、4、4、…により、同図の左から右に移送される。ロールシート3は、まず、水洗浄槽5に通されて洗浄され、不要な異物や汚染物が除去される。必要であれば無電解メッキ槽(図示せず)に通されて現像銀メッシュパターン上に無電解メッキされた後、少なくとも電解メッキ槽6に移送される。
【0023】
電解メッキ槽6では、陰極となる給電ロール7、7と陽極となる陽電極板8、8との間で電解メッキ液9を通して電解メッキが行われ、ロールシート3の現像銀メッシュパターン及び/又はその上に形成された無電解メッキ層の上に、電解メッキ層が析出する。電解メッキ液9の温度は、所定温度となるように温度調整器(図示せず)にて制御される。給電ロール7、7は、電解メッキ槽6にロールシート3が出入するための出入口に設けられており、電解メッキ液9は、電解メッキ槽6の給電ロール7、7等の隙間から漏出して落下しうる。このため、電解メッキ槽6の下方には、漏出した電解メッキ液9を受ける受け槽10が設置されており、受け槽10に受け止められた電解メッキ液9が循環ポンプ11及びフィルター12を経て再び電解メッキ槽6に再循環するように構成されている。
【0024】
電解メッキ槽6を出たロールシート3は、水洗浄槽13で不要な電解メッキ液9を洗い落としてから乾燥器14にて水切り乾燥され、再び巻き取られてロール形状の電磁波シールド材ロール体15となる。
【0025】
また、図2に示す電磁波シールド材製造装置1Aは、露光・現像に引き続いて電解メッキを連続して行う装置である。
図2に示す電磁波シールド材製造装置1Aにおいて、原反ロール2Aは、露光及び現像によって金属銀を析出する物質を含む層(詳しくは後述)を長尺の透明基材上に設けたロールシート3をロール状に巻き取ったものである。原反ロール2Aから繰り出されたロールシート3は、所要箇所に配置された移送ロール4、4、4、…により、同図の左から右に移送される。ロールシート3は、まず、連続露光装置16に移送されて所定のマスクパターンで焼き付けられる(露光される)。ここで、連続露光装置16とは、詳しくは後述するが、透明基材を連続送りにて移送しながら露光を行う装置である。
【0026】
次に、露光されたロールシート3は、現像装置17に移送されて、写真現像された現像銀がメッシュパターン形状に定着される。次に、水洗浄槽5に通されて洗浄され、不要な異物や汚染物が除去された後、メッキ工程を行うため少なくとも電解メッキ槽6に移送される。
図2の電磁波シールド材製造装置1Aにおいて、電解メッキ槽6から電磁波シールド材ロール体15までの構成は、図1に示す電磁波シールド材製造装置1と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0027】
図2の構成によれば、1回のロールtoロール処理の間に、写真製法による現像銀メッシュパターンの生成(露光・現像工程)とメッキ層の形成(メッキ工程)とを引き続いて連続的に実施することができ、処理速度の一層の向上、低コスト化を図ることができる。
本形態例において、写真製法による現像銀メッシュパターンの生成後、透明基材の表面が湿潤した状態を保持したまま引き続いてメッキ工程を行うことが好ましい。この場合、微小気泡が現像銀のメッシュパターン表面に付着してメッキ液との接触を妨害してメッキ不良の原因となるのを減少させることができる。
なお、必要であれば連続露光装置16及び現像装置17と電解メッキ槽6との間に無電解メッキ槽(図示せず)を配置し、露光・現像により生成した現像銀メッシュパターンの上に無電解メッキをした後、さらに電解メッキ槽6に移送して電解メッキを行う構成でも良い。このようにメッキ工程において無電解メッキと電解メッキを併用することにより、より性能の高い電磁波シールド材を得ることができる。
【0028】
ここで本発明では、電解メッキ槽6における電解メッキの際には、ロールシート3上において長手方向に連続して設けられた電解メッキ用給電層(以下、「連続給電層」という場合がある。)を通じ、現像銀メッシュパターンに対して給電を行うことが好ましい。
【0029】
従来技術においては、図6に示すロールシート50のように、長尺の透明基材51の上に一定の間隔54で、例えば矩形状のメッシュパターン52、52、…及びメッシュパターン52の周囲のシールド枠53、53、…が配置され、それぞれのシールド枠53の幅方向両外側に給電層55、55が設けられたものが用いられている。従来技術は、移送ロール4、4、4、…によりロールシート3をステップ送りにて移送して、ロールシート3を間欠的に電解メッキ槽6に導入し、電解メッキ槽6内でメッシュパターン52毎に電解メッキを行う、間欠方式によるものである。このため、従来技術では、各メッシュパターン52を電解メッキしている各メッキ工程の一定時間は、ロールシート3の供給及び移送が停止してしまうため、生産性が低く制限されるという問題があった。
【0030】
そこで本発明では、図1及び図2に示すように、露光・現像済みの原反ロール2または未露光の原反ロール2Aからロールシート3を連続的に繰り出し、移送ロール4、4、…の連続送りにて電解メッキ槽6に移送し、連続して間断なく電解メッキを行うため、図3に示すロールシート20のように、長尺の透明基材21の少なくとも一方の面に一定の間隔24でメッシュパターン22、22、…及びメッシュパターン22の周囲のシールド枠23、23、…が配置され、透明基材21の長手方向に連続した一定幅の連続給電層25、25がシールド枠23の幅方向の両外側に接して設けられたものが好ましく用いられる。
さらに、本発明のより好適な形態では、図2に示すように、電解メッキ槽6の前段に連続露光装置(詳しくは後述)16を設け、該連続露光装置16を用いてロールシート3の露光を行うようにしたので、露光・現像工程とメッキ工程の両方にわたって透明基材を連続送りにて移送することが可能となり、間断なく処理を続けることができる。
【0031】
連続給電層25は、ロールシート3が電解メッキ槽6に導入された箇所の前後において陰極となる給電ロール7、7に接触する。これにより、電解メッキの際には、連続給電層25を通じて電解電流がメッシュパターン22に給電され、現像銀メッシュパターン及び/又はその上に形成された無電解メッキ層の上に、電解メッキによるメッキ層が形成される。
【0032】
また、本発明の他の形態では、図4に示すロールシート30のように、長尺の透明基材31の少なくとも一方の面に一定の間隔34でメッシュパターン32、32、…及びメッシュパターン32の周囲のシールド枠33、33、…が配置され、透明基材31の長手方向に連続した一定幅の連続給電層35、35がシールド枠33の幅方向の両外側に接して設けられ、隣接するシールド枠33、33を連結する連結帯36、36がシールド枠33の長手方向の片側に配設されたものが用いられる。
【0033】
本発明のさらに他の形態では、図5に示すロールシート40のように、長尺の透明基材41の少なくとも一方の面に一定の間隔44でメッシュパターン42、42、…及びメッシュパターン42の周囲のシールド枠43、43、…が配置され、透明基材41の長手方向に連続した一定幅の連続給電層45、45がシールド枠43の幅方向の両外側に接して設けられ、隣接するシールド枠43、43を連結する連結帯46、46がシールド枠43の長手方向の両側に配設されたものが用いられる。
【0034】
図4に示すロールシート30及び図5に示すロールシート40のように、隣接するシールド枠33、43をメッシュ状または金属薄膜からなる連結帯36、46で連結することにより、電解電流を供給する給電を均一に安定して行うことができ、メッシュパターン32、42の一部分にメッキ厚みのばらつきが出る「メッキむら」を少なくできる。さらにその結果として、メッシュパターン32、42の一部分に電磁波シールド性能の部分的なばらつきが生じることを抑制することができる。
なお、連結帯36、46は、電解電流を適当に分散させる必要に応じて、図4及び図5に示すように、2本又は3本以上の複数本に分岐したものであっても良いし、広幅のもの1本を設けても良い。また連結帯36、46は、電解電流を分散させるのに適当であれば、線幅と間隔を選定された金属メッシュからなるものであっても構わないし、金属薄膜からなるものであっても構わない。
【0035】
メッシュパターン22、32、42は、図1における露光・現像済みの原反ロール2においては写真製法により生成された現像銀メッシュパターンである。すなわち、原反ロール2は、長尺の透明基材21、31、41の少なくとも一方の面に、現像銀メッシュパターンと、金属メッシュ又は金属薄膜からなるシールド枠23、33、43と、透明基材21、31、41の長手方向に連続して設けられた一定幅の連続給電層25、35、45、並びに任意に設けられる連結帯36、46を形成したものである。
【0036】
また、図2の原反ロール2Aから繰り出したロールシート3上には、連続露光装置16と現像装置17を用いて写真製法により現像銀メッシュパターン22、32、42を生成する。電解メッキ槽6に移送される位置でのロールシート3は、長尺の透明基材21、31、41の少なくとも一方の面に、現像銀メッシュパターンと、金属メッシュ又は金属薄膜からなるシールド枠23、33、43と、透明基材21、31、41の長手方向に連続して設けられた一定幅の連続給電層25、35、45、並びに任意に設けられる連結帯36、46を形成したものである。
ここでシールド枠23、33、43と連続給電層25、35、45、並びに任意に設けられる連結帯36、46は、細線パターンである必要はなく、換言すれば、現像銀メッシュパターン22、32、42ほど微細なパターンを要求されないため、少なくともこれらのうちいずれか一部を予め別法により原反ロール2A上に設けておくこともできる。しかしながら、より好適な形態としては、これら全てを写真製法により連続露光装置16と現像装置17を用いて、現像銀メッシュパターン22、32、42と一緒に、現像銀の薄膜またはメッシュとして生成することが好ましい。
【0037】
また、電磁波シールド材ロール体15におけるメッシュパターン22、32、42は、原反の現像銀メッシュパターンの上に少なくとも電解メッキによりメッキ層が形成されたものである。連続給電層25、35、45は、金属メッシュ又は金属薄膜からなり、幅が15〜80mmであることが好ましい。
メッシュパターン22、32、42の寸法や形状は特に限定されないが、例えばディスプレイ用電磁波シールド材を製造する場合には、例えばディスプレイの画面サイズとすることが好ましい。
【0038】
(透明基材)
本発明に使用される透明基材21、31、41としては、可視領域で透明性を有し、一般に全光線透過率が90%以上のものが好ましい。中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムは、取扱い性が優れている点で、好適に用いられる。透明基材21、31、41に使用される透明樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。
【0039】
(金属メッシュパターンの作製方法)
本発明に適用できる導電性の金属メッシュの作製方法は、細線パターンを写真製法により現像された金属銀で形成した後、この金属銀を物理現像および/またはメッキすることにより導電性金属パターンを形成する露光現像法によるものである。
本発明に適用できる、この写真製法に基づく露光現像法には、上記のとおり、(a)露光マスクに覆われていなくて露光された部分に現像銀が発現する、即ち、露光マスクと反対の形に現像銀が表れるいわゆるネガ型の露光現像方法と、(b)露光マスクに覆われて露光されなかった部分には現象銀が発現する、即ち、露光マスクと同じ形に現像銀が表れるいわゆるポジ型の露光現像方法の2通りがある。本発明には、(a)ネガ型の露光・現像方法と、(b)ポジ型の露光・現像方法のいずれでも適用できる。
【0040】
以下、ポジ型の露光・現像方法(DTR法)と電解メッキ法を用いた金属メッシュパターンの作製方法について説明する。DTR法の場合、透明基材表面には、予め物理現像核層が設けられていることが好ましい。物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法等によって透明基材上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0041】
透明基材は、塩化ビニリデンやポリウレタン等のポリマーラテックス層の接着層を設けることができ、また接着層と物理現像核層との間にはゼラチン等の親水性バインダーからなる中間層を設けることもできる。
【0042】
物理現像核層には、親水性バインダーを含有するのが好ましい。親水性バインダー量は物理現像核に対して10〜300質量%程度が好ましい。親水性バインダーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。物理現像核層には親水性バインダーの架橋剤を含有することもできる。
【0043】
物理現像核層や前記中間層等の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。本発明において物理現像核層は、上記したコーティング法によって、通常連続した均一な層として設けることが好ましい。
【0044】
物理現像核層に金属銀を析出させるためのハロゲン化銀の供給は、透明基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に一体的に設ける方法、あるいは別の紙やプラスチック樹脂フィルム等の基材上に設けられたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する方法がある。コスト及び生産効率の面からは前者の物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を一体的に設けるのが好ましい。
【0045】
前記ハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化銀写真感光材料の一般的なハロゲン化銀乳剤の製造方法に従って製造することができる。ハロゲン化銀乳剤は、通常、硝酸銀水溶液、塩化ナトリウムや臭化ナトリウムのハロゲン水溶液をゼラチンの存在下で混合熟成することによって作られる。
前記ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀組成は、塩化銀を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化銀であることが好ましい。塩化銀含有率を高くすることによって形成された物理現像銀の導電性が向上する。
【0046】
(露光方法)
前記ハロゲン化銀乳剤層は、各種の光源に対して感光性を有している。電磁波シールド材を作製するための1つの方法として、例えば網目状などの細線パターンの物理現像銀の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は細線パターン状に露光されるが、露光方法として、細線パターンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。前者の密着露光は、ハロゲン化銀の感光性は比較的低くても可能であるが、レーザー光を用いた走査露光の場合は比較的高い感光性が要求される。従って、後者の露光方法を用いる場合は、ハロゲン化銀の感光性を高めるために、ハロゲン化銀は化学増感あるいは増感色素による分光増感を施してもよい。化学増感としては、金化合物や銀化合物を用いた金属増感、硫黄化合物を用いた硫黄増感、あるいはこれらの併用が挙げられる。好ましくは、金化合物と硫黄化合物を併用した金−硫黄増感である。上記したレーザー光で露光する方法においては、450nm以下の発振波長の持つレーザー光、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いることによって、明室下(明るいイエロー蛍光灯下)でも取り扱いが可能となる。
【0047】
(露光装置)
上記の露光方法による露光装置としては、枚葉式の露光マスク(フォトマスク)を用いる枚葉処理方式の露光装置と、連続したパターンが形成できる連続露光装置とがある。枚葉処理方式の露光装置は、所定のマスクパターンが形成された枚葉式の露光マスク(フォトマスク)を用いて、ロールシートを間欠送りで露光装置に送り、装置内を真空排気して露光マスクと基材とを密着させて隙間を無くしてから、例えば紫外線で露光する。枚葉処理方式の露光装置では、真空排気、露光、大気開放を間欠的に行うので処理速度は遅くなるとともに、繋ぎ目の無い連続パターンを得ることができない。
【0048】
これに対して本発明では、図7、図8に例示するように、パターンを連続的に形成できる連続露光装置60、70を用いる。すなわち、露光及び現像によって金属銀を析出する物質を含む層が設けられた透明基材21、31、41を、連続露光装置60、70を用いて露光、次いで現像することにより、前記透明基材21、31、41の長手方向に一定の間隔を介して現像銀メッシュパターン22、32、42を生成する。
これらの連続露光装置60、70は、図1に示すように、メッキ工程を行うロールtoロール処理とは別に露光・現像工程を行う場合には、電磁波シールド材製造装置1とは別に設けられた装置により連続露光と現像を行い、前記原反ロール2を製造する。また、図2に示すように、ロールtoロールで露光・現像と電解メッキを引き続いて連続的に行う場合には、電磁波シールド材製造装置1Aに組み込まれる連続露光装置16として、図7、図8に例示するような連続露光装置60,70を用いることができる。
なお、これら連続露光装置60、70を示す図面では、前記露光に用いる透明基材には、前記パターンの形状を特に区別することなく共通の符号64、74を付して説明することにする。
【0049】
図7に示す連続露光装置60は、写真製法における露光に用いられる光を透過する材質からなる円筒ドラム61と、円筒ドラム61の外周壁に設けられた露光マスク部分62と、円筒ドラム61の内部に配設された露光用光源63とを備え、円筒ドラム61の内側の光源63から出射した光によって円筒ドラム61に巻き付けられた透明基材64を露光する装置である。この連続露光装置60には、特定の照射方向に光を透過する開口部66を有する光源カバー65を露光用光源63の周囲に設けることができる。透明基材64を露光するパターンは、露光マスク部分62の光を透過する部分のパターンによって決定される。円筒ドラム61に対する露光マスク部分62の配設は、例えば、円筒ドラム61の外周壁の表面(内面又は外面)に設けられ、あるいは外周壁の内部に挿入又は挟み込まれることによって行われる。なお図7は、露光マスク部分62を円筒ドラム61の外周壁の外面に設けた場合を例示した図面である。
【0050】
この連続露光装置60では、円筒ドラム61は、連続的に移送される透明基材64と同じ速度で回転しているので、透明基材64の各部分が円筒ドラム61に巻き付けられた箇所において露光される間、透明基材64に対する露光マスク部分62のパターン(光を透過する部分と遮光する部分のパターン)がずれることがなく、所要時間の露光を継続することが可能である。露光装置に利用する光源63としては、ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀乳剤の分光特性、感度により適宜選択することができるが、例えばタングステンランプ、紫外線ランプ、蛍光ランプ、キセノンランプ等を利用することができる。露光の際、光源カバー65は回転せず、開口部66が常時一定の方向(図7の右方向)を向いているので、透明基材64が円筒ドラム61の表面から離れている部分では光源63の光が光源カバー65によって遮られる。すなわち、露光装置60の光源63による透明基材64の露光は、透明基材64がその移送経路上において円筒ドラム61の表面に巻き付けられている一定の範囲67内でなされるので、露光の光量及び時間の制御を確実に行うことができる。
【0051】
一方、図8に示す連続露光装置70は、円筒ドラム71と、連続したパターンが形成された露光マスクフィルム72と、前記円筒ドラム71の外部に配設された露光用光源73とを備え、前記円筒ドラム71に重ねて巻き付けられた透明基材74及び前記露光マスクフィルム72に対して前記円筒ドラム71の外側から光を照射し、透明基材74を露光する装置である。
露光マスクフィルム72は、透明樹脂フィルムの上に、縮小露光によるフォトリソグラフ方法などの公知の方法にてマスクとなるメッシュパターンを形成し、透明基材74と円筒ドラム71で重ね合わされて露光する。その後、露光マスクフィルム72は、透明基材74から切離されて巻き取られ、繰り返しての使用に供される。
光源73が円筒ドラム71の外部にある場合は、円筒ドラム71の透明性について特に限定はなく、不透明でもよい。
【0052】
この連続露光装置70には、特定の照射方向に光を透過する開口部76を有する光源カバー75を露光用光源73の周囲に設けることができ、これにより、光源73による透明基材74の露光は、透明基材74がその移送経路上において円筒ドラム71の表面に巻き付けられている一定の範囲77内でなされるので、露光の光量及び時間の制御を確実に行うことができる。ここで光源73としては、上記の連続露光装置60の光源63と同様のものを利用できるので、重複する説明を省略する。
【0053】
この連続露光装置70は、重ね合わせた透明基材74と露光マスクフィルム72を、円筒ドラム71に巻きつけながら連続的に移送するので、両者に適度なテンションを与えながら移送が可能であり、移送速度の制御が容易であるとともに、透明基材74の各部分が円筒ドラム71に巻き付けられた箇所において露光される間、透明基材74に対する露光マスクフィルム72のパターン(光を透過する部分と遮光する部分のパターン)がずれることがなく、所要時間の露光を継続することが可能である。
なお、上記に例示した連続露光装置60、70以外にも、例えば、重ね合わせた透明基材と露光マスクフィルムを、直線状の経路に沿って連続的に搬送しながら光源を用いて連続露光する装置などを用いることもできる。また、露光用の光源の個数は特に限定されず、必要に応じて複数個(複数箇所に)設けても良い。
【0054】
連続露光装置60、70は、従来の枚葉処理方式の露光装置に比較して処理速度が速く、かつ、繋ぎ目の無い連続したパターンが得られるという長所がある。そこで本発明では、上記透明基材21、31、41上に現像銀メッシュパターン22、32、42を形成するとき、現像に先立つ露光の際に、連続露光装置60、70を用いる。これにより、処理速度の向上を図ることができる。
【0055】
本発明では、シールド枠23、33、43や連続給電層25、35、45、連結帯36、46は、前記メッシュパターン22、32、42のメッキ工程を行うより前に透明基材21、31、41上に配設されていればどの順序で生成してもよく、現像銀メッシュパターン22、32、42を生成するための前記連続露光・現像工程とは別の方法、別の工程によって透明基材上に生成することもできる。しかし生産性等の観点から、使用する装置類や工程の種類をいたずらに増大させることは好ましくないので、現像銀メッシュパターンの生成と同じ工程中で、メッシュパターン22、32、42の周囲のシールド枠23、33、43のパターンと、該シールド枠23、33、43のロール幅方向の両外側に形成した一定幅の連続給電層25、35、45、また、必要に応じて任意に設けられる連結帯36、46のパターンを生成することが好ましい。このためには、前記の露光マスク部分62や露光マスクフィルム72に設けるネガまたはポジの露光パターンが、前記現像銀メッシュパターン22、32、42のみならず、シールド枠23、33、43や連続給電層25、35、45、また、必要に応じて任意に設けられる連結帯36、46に対応するものとする。そして、このような露光マスク部分62や露光マスクフィルム72を用いて前記透明基材64、74の露光および現像を行うことにより、現像銀メッシュパターン22、32、42とともに、シールド枠23、33、43等を現像銀のメッシュまたは薄膜として、一工程でまとめて生成することができる。この手順によれば、処理速度の一層の向上を図ることができる。
【0056】
物理現像核層が設けられる透明基材上の任意の位置、たとえば接着層、中間層、物理現像核層あるいはハロゲン化銀乳剤層、保護層、または支持体を挟んで設けられる裏塗り層にハレーションないしイラジエーション防止用の染料もしくは顔料を含有させてもよい。
【0057】
物理現像核層の上に直接にあるいは中間層を介してハロゲン化銀乳剤層が塗設された感光材料を用いて電磁波シールド材を作製する場合は、網目状パターンのような任意の細線パターンの透過原稿と上記感光材料を密着して露光、あるいは、任意の細線パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記感光材料に走査露光した後、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で処理することにより銀錯塩拡散転写現像(DTR現像)が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して細線パターンの物理現像銀薄膜を得ることができる。露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、ハロゲン化銀乳剤層及び中間層、あるいは必要に応じて設けられた保護層は水洗除去されて、細線パターンの物理現像銀薄膜が表面に露出する。
【0058】
DTR現像後、物理現像核層の上に設けられたハロゲン化銀乳剤層等の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。
【0059】
一方、物理現像核層が塗布された透明基材とは別の基材上に設けたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する場合、前述と同様にハロゲン化銀乳剤層に露光を与えた後、物理現像核層が塗布された透明基材と、ハロゲン化銀乳剤層が塗布された別の感光材料とを、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で重ね合わせて密着し、アルカリ液中から取り出した後、数十秒〜数分間経過した後に、両者を剥がすことによって、物理現像核上に析出した細線パターンの物理現像銀薄膜が得られる。
【0060】
次に、銀錯塩拡散転写現像のために必要な可溶性銀錯塩形成剤、還元剤、及びアルカリ液について説明する。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物であり、これらの作用はアルカリ液中で行われる。
【0061】
本発明に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、アルカノールアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475項(1977年)に記載されている化合物等が挙げられる。
【0062】
前記還元剤としては、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0063】
上記した可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤は、物理現像核層と一緒に透明基材に塗布してもよいし、ハロゲン化銀乳剤層中に添加してもよいし、またはアルカリ液中に含有させてもよく、更に複数の位置に含有してもよいが、少なくともアルカリ液中に含有させるのが好ましい。
【0064】
アルカリ液中への可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.1〜5モルの範囲で用いるのが適当であり、還元剤は現像液1リットル当たり0.05〜1モルの範囲で用いるのが適当である。
【0065】
アルカリ液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14の範囲が好ましい。銀錯塩拡散転写現像を行うためのアルカリ液の適用は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯流されたアルカリ液中に、物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層が設けられた透明基材を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上にアルカリ液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0066】
前述したように、細線パターンとしては、たとえば線幅10〜100μm程度の細線を縦横に格子状に設けられたものがあるが、細線幅を小さくして格子の間隔を大きくすると透光性は上がるが導電性は低下し、逆に細線幅を大きくして格子の間隔を小さくすると透光性は低下して導電性は高くなる。本発明にかかる透明基材上に形成された任意の細線パターンの物理現像による銀画像は、全光線透過率50%以上の透光性と表面抵抗率10オーム/□以下の導電性とを同時に満足させることは困難である。具体的にはこの物理現像による銀画像は、表面抵抗率50オーム/□以下、好ましくは20オーム/□以下の導電性を有しているが、細線幅50μm以下、たとえば細線幅20μmのパターンで、全光線透過率50%以上とした場合には、表面抵抗率は数百オーム/□〜千オーム/□以上にもなってしまう。しかしながら、この物理現像による銀画像自身は、現像処理後に得られた銀画像を形成する金属銀粒子が極めて小さく、且つ銀画像中に存在する親水性バインダー量が極めて少ないことにより、銀画像を形成する金属銀粒子が最密充填状態に近い状態で銀画像が形成されて通電性を有しているため、銅やニッケルなどの金属による鍍金(メッキ)、特に電解メッキを施すことにより、細線パターンが0.5〜15μmの厚み及び10〜50μmの線幅であるとき、全光線透過率50%以上、好ましくは60%以上の透光性の細線パターンであっても、表面抵抗率10オーム/□以下、好ましくは7オーム/□以下の導電性を保持することができる。
金属メッシュの全光線透過率を向上させるためには、細線が設けられた領域の面積に対して、細線間の光透過部の面積を十分に広くする必要がある。このため、細線の間隔は、100〜900μmであることが好ましく、より好ましくは150〜700μmである。
【0067】
金属メッキした細線パターンの厚みは所望とする特性により任意に変えることができるが、0.5〜15μm、好ましくは2〜12μmの範囲である。また上述の方法によって作製された電磁波シールド材は、30MHz〜1,000MHzのような広い周波数帯に亘って30dB以上のシールド効果を得ることができる。
【0068】
細線パターンの物理現像銀のメッキは、無電解メッキ法、電解メッキ法あるいは両者を組み合わせたメッキ法のいずれでも可能であるが、透明基材上に電磁波シールド層を作製するにあたり、透明基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を設けたロール状の長尺ウェブに、少なくとも細線パターンの露光、現像処理およびメッキ処理という一連の処理を施すことができる観点からも、電解メッキによる方法が好ましい。
【0069】
本発明において、金属メッキ法は公知の方法で行うことができるが、たとえば電解メッキ法は、銅、ニッケル、銀、金、半田、あるいは銅/ニッケルの多層あるいは複合系などの従来公知の方法を使用でき、これらについては、「表面処理技術総覧;(株)技術資料センター、1987年12月21日初版、281〜422頁」等の文献を参照することができる。
【0070】
メッキが容易で、かつ導電性に優れ、さらに厚膜にメッキでき、低コスト等の理由により、銅および/またはニッケルを用いることが好ましい。電解メッキの一例を挙げると、硫酸銅、硫酸等を主成分とする浴中に前述した物理現像銀が形成された透明基材を浸漬し、10〜40℃で、電流密度1〜20アンペア/dmで通電することによりメッキすることができる。
使用する電解メッキ槽6の型式は、竪型、横型のいずれであっても構わないが、所定のメッキ滞留時間を確保できるようにロールシート3の移送速度に応じて電解メッキ槽の長さを決定する。
【0071】
上記方法によって得られる電磁波シールド層(金属メッシュパターン)は、メッシュパターンが0.5〜15μmの厚み及び10〜50μmの線幅であるとき、全光線透過率50%以上、かつ表面抵抗率が10オーム/□以下という優れた透光性能と導電性能を持ち、30MHz〜1,000MHzのような広い周波数帯に亘って30dB以上のシールド効果を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、露光工程の生産性が高く、電磁波シールドの性能の部分的なばらつきが少なく性能の安定した電磁波シールド材ロール体の製造方法を提供することができる。この電磁波シールド材ロール体は、PDP用光学フィルター等の製造工程にロールの状態で供給することができるので、品質向上やコスト削減などに益するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明において、ロールtoロールで電解メッキを行う装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明において、ロールtoロールで露光・現像に引き続いて電解メッキを連続して行う装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。
【図4】本発明の電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン、給電層及び連結帯の配置の一例を示す部分平面図である。
【図5】本発明の電磁波シールド材ロール体におけるメッシュパターン、給電層及び連結帯の配置の他の例を示す部分平面図である。
【図6】従来の電磁波シールド材におけるメッシュパターン及び給電層の配置の一例を示す部分平面図である。
【図7】本発明で用いられる連続露光装置の一例を示す概略図である。
【図8】本発明で用いられる連続露光装置の別の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0074】
1、1A…電磁波シールド材製造装置、2、2A…原反ロール、3…ロールシート、4…移送ロール、5…水洗浄槽、6…電解メッキ槽、7…給電ロール、8…陽電極板、9…電解メッキ液、10…受け槽、11…循環ポンプ、12…フィルター、13…水洗浄槽、14…乾燥器、15…電磁波シールド材ロール体、16…連続露光装置、17…現像装置、20、30、40…本発明によるロールシート、21、31、41…透明基材、22、32、42…メッシュパターン、23、33、43…シールド枠、24、34、44…間隔、25、35、45…連続給電層、36、46…連結帯、60…連続露光装置、61…円筒ドラム、62…露光マスク部分、63…露光用光源、64…透明基材、65…光源カバー、70…連続露光装置、71…円筒ドラム、72…露光マスクフィルム、73…露光用光源、74…透明基材、75…光源カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、写真製法により生成された現像銀メッシュパターンの上にメッキ層を形成してなる金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられ、かつロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体の製造方法であって、
露光及び現像によって金属銀を析出する物質を含む層が設けられた透明基材を連続露光装置を用いて露光、次いで現像することにより、前記透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられた現像銀メッシュパターンが生成された原反ロールを製造する工程と、
当該現像銀メッシュパターンが設けられた透明基材を原反ロールから連続的に繰り出したのち、前記現像銀メッシュパターンの上にメッキ層を形成し、再び巻き取ってロール体とするメッキ工程とを少なくとも有することを特徴とする電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項2】
長尺の透明基材の少なくとも一方の面に、写真製法により生成された現像銀メッシュパターンの上にメッキ層を形成してなる金属メッシュパターンが前記透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられ、かつロールの状態で供給される電磁波シールド材ロール体の製造方法であって、
露光及び現像によって金属銀を析出する物質を含む層が設けられた透明基材を連続的に繰り出し、該透明基材に連続露光装置を用いて露光、次いで現像することにより、前記透明基材の長手方向に一定の間隔を介して設けられた現像銀メッシュパターンを生成し、引き続いて、メッキ工程により前記現像銀メッシュパターンの上にメッキ層を形成したのち、再び巻き取ってロール体とすることを特徴とする電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項3】
前記連続露光装置は、上記写真製法における露光に用いられる光を透過する材質からなる円筒ドラムと、前記円筒ドラムの外周壁に設けられた露光マスク部分と、前記円筒ドラムの内部に配設された露光用光源とを備え、前記円筒ドラムに巻き付けられた透明基材に対して円筒ドラムの内側から光を照射する装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項4】
前記連続露光装置は、円筒ドラムと、連続したパターンが形成された露光マスクフィルムと、前記円筒ドラムの外部に配設された露光用光源とを備え、前記円筒ドラムに重ねて巻き付けられた透明基材及び前記露光マスクフィルムに対して前記円筒ドラムの外側から光を照射する装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項5】
前記メッキ工程を行う際に、前記現像銀メッシュパターンの周囲に配設された金属メッシュ又は金属薄膜からなるシールド枠、及び前記シールド枠の幅方向両外側に接しかつ前記透明基材の長手方向に連続して設けられた一定幅の電解メッキ用給電層を通して電解メッキ用の給電を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項6】
前記電解メッキ用給電層は、金属メッシュ又は金属薄膜からなり、幅が15〜80mmであることを特徴とする請求項5に記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項7】
前記シールド枠にはさらに、金属メッシュ又は金属薄膜からなり、隣接するシールド枠を連結する連結帯が前記シールド枠の長手方向の片側又は両側に配設されていることを特徴とする請求項5または6に記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項8】
前記現像銀メッシュパターンの生成は、露光した部分に現像銀が発現するネガ型の現像方法により行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項9】
前記現像銀メッシュパターンの生成は、露光しない部分に現像銀が発現するポジ型の現像方法により行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。
【請求項10】
前記電磁波シールド材が、プラズマディスプレイ用光学フィルターに用いられるものであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電磁波シールド材ロール体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−80901(P2007−80901A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263318(P2005−263318)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】