説明

電磁波シールド部材

【課題】カーボンブラック使用時のように導電インキの流動性を低下させたり、紫外線を吸収することがない方法で導電インキを黒色化した電磁波シールド部材を提供すること。
【解決手段】透明基材と、該透明基材上に所定のパターンで形成された導電層とを有する電磁波シールド部材であって、前記導電層が、(1)金属粒子、(2)バインダー樹脂、及び(3)2種以上の色素を組み合わせた、可視光域全域で吸収を有する混合色素からなることを特徴とする電磁波シールド部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にディスプレイ(画像表示装置)の前面に配置するに好適で、メッシュ形状に代表される導電性の所定のパターンが印刷法を利用して形成された電磁波シールド部材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電磁波シールド材としては、金属箔をエッチング処理してメッシュパターンとするフォトリソ(グラフィー)法によるものもあるが、コスト、廃液処理等の面から、例えば、透明基材の上に凹版オフセット法により導電インキをパターン印刷した電磁波シールド部材が提案されている(特許文献1など)。
【0003】
電磁波シールド部材には、優れた電磁波シールド性の他に、良好な可視光透過性、さらには、シールド材の存在を肉眼で確認することができない特性である非視認性も必要とされる。電磁波シールド部材における導電インキの導電性粒子としては、通常、金属粒子が用いられるが、電磁波シールド部材が透明基材側から観察される使用状態のときに、電磁波シールド部材の存在が金属光沢によって視認されるという問題があった。また、導電インキパターン層が外来光を反射すると、画面が白化し、更に画像のコントラスト、鮮明度が低下するという問題も生じる。
この問題を解決するために、特許文献1では、カーボンブラックなどの黒色顔料を添加して導電インキを黒色化することが提案されている。
しかしながら、カーボンブラックは、増粘性があるので導電インキの流動性を低下させ、印刷適性が悪くなり、印刷したパターンに欠損部を生じる。また、カーボンブラックは、紫外線を吸収するために、導電インキのバインダー樹脂として紫外線硬化型のものを使用したときに硬化不良を起こすという不都合が生じる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−13088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カーボンブラック使用時のように導電インキの流動性を低下させることがない方法で導電インキを黒色化した電磁波シールド部材を提供することにある。
本発明の更なる目的は、そのように黒色化した導電層を、導電インキの転写不良に基づく断線や形状不良、低密着性等の不具合が生じない方法で作製した電磁波シールド部材を提供することにある。
本発明の又更なる目的は、紫外線を吸収することがない方法で導電インキを黒色化した電磁波シールド部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第1の課題を解決するための本発明の第1の電磁波シールド部材は、透明基材と、該透明基材上に所定のパターンで形成された導電層とを有する電磁波シールド部材であって、前記導電層が、(1)金属粒子、(2)バインダー樹脂、及び(3)2種以上の色素を組み合わせた、可視光域全域で吸収を有する混合色素からなることを特徴とする。
上記第2の課題を解決するための本発明の第2の電磁波シールド部材は、透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電層とを有する電磁波シールド部材であって、前記プライマー層は、前記導電層が形成されている部分又は該部分とその周辺部において突出形状をなし、該プライマー層突出形状部の麓部分は導電層麓部分で覆われているか又は覆われずに露出しており、前記導電層が、(1)金属粒子、(2)バインダー樹脂、及び(3)2種以上の色素を組み合わせた、可視光域全域で吸収を有する混合色素からなることを特徴とする。
上記第3の課題を解決するための本発明の第3の電磁波シールド部材は、上記第1及び第2の各発明において、更に、前記混合色素が、可視光領域で吸收があって、且つ紫外域に吸收がないものからなることを特徴とする。
【0007】
ここで、2種以上の色素を組み合わせた、可視光域全域で吸収を有する混合色素、或いは更にこれに加えて紫外域に吸収のない混合色素(以下、単に「黒色混合色素」ということがある。)とは、可視光域の一部帯域に吸収域を有する、吸収域の波長が互いにずれた2種以上の色素の組み合わせであって、可視光線の全域にわたって吸収を示し、紫外域に吸収のないことがある、黒色系乃至灰色系の暗色を呈する混合色素をいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の電磁波シールド部材は、導電インキ中に、2種類以上の色素の組み合わせであって、可視光域全域で吸収を有する混合色素を添加するので、カーボンブラック使用時のように導電インキの流動性を低下させることがなく導電インキを黒色化できるので、該導電インキは印刷適性が良い。
また、本発明の第2の電磁波シールド部材が有するプライマー層の形態によれば、該黒色化導電層の凹みを充填するようにプライマー層が設けられ、これを硬化して後、凹部内のインキごと凹版から引き抜くので、導電インキ等の転移不良に基づくパターンの断線や形状不良、低密着性等の不具合が生じない電磁波シールド部材を提供することができる。
更に、本発明の第3の電磁波シールド部材においては、更に、前記混合色素が、可視光領域で吸収があって、且つ紫外域に吸収がないものからなるため、該導電層が紫外線を吸収することがなく、そのため、短時間で効率的に硬化でき、強度、耐薬品性等の耐久性も良好な紫外線硬化型樹脂のバインダーが使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の第1の電磁波シールド部材の一例を示す模式的な断面図である。該電磁波シールド部材は、透明基材1と、透明基材1上に所定のパターンで形成された導電層2とを有し、導電層は金属粒子とバインダー樹脂と黒色混合色素とからなる。
ここで、「所定のパターン」とは、電磁波シールド部材の電磁波遮蔽パターンとして一般的な、メッシュ状又はストライプ状のパターンである。
【0010】
図2は、本発明の第2の電磁波シールド部材の一例を示す模式的な断面図である。該電磁波シールド部材は、透明基材1と、透明基材1上に形成されたプライマー層3と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電層2とを有し、導電層は金属粒子とバインダー樹脂と黒色混合色素とからなる。
プライマー層3は、導電層2が形成されている部分又は該部分とその周辺部において突出形状をなしており、該プライマー層突出形状部は、導電層の頂部直下に頂部を有し、なだらかに裾野をひいた山状形状である。導電層2は、そのパターン形成に用いる凹版の凹部形状の頂部を有する険しい山状形状であり、その裾野部はプライマー層裾野部を覆っている。また、導電層2は、全領域において金属粒子を均一に分散、含有させた形態でもよいし、或いは大部分において金属粒子を含有するが、裾野部等の透明基材側(下方部分)の領域においては金属粒子非含有となる様に形成してもよい。いずれの形態も導電層形成時(代表的には凹版印刷)の加工条件及び材料、又プライマー層を有する形態の場合においては、更にプライマーの加工条件及び材料の選定によって、いずれの形態にも加工可能である。なお、導電層の基材とは反対側の領域を金属粒子非含有とすることも可能である。
なお、図2においては、プライマー層突出形状部の麓部分は、導電層麓部分で覆われずに露出しているが、該プライマー層突出形状部の麓部分が全て導電層で被覆されている場合もある。
すなわち、プライマー層突出形状部の麓部分は、導電層麓部分で覆われているか、覆われていないかいずれの形態もある。特に、導電層の透明基材側領域に金属粒子が非含有の形態においては、この部分の両層はその上に金属粒子を含有した導電層が存在しない部分となり、その表面は、透明基材に対して傾斜及び/又は彎曲面をなしている。
以下、本発明の電磁波シールド部材の構成を説明する。
【0011】
(透明基材)
透明基材1は、電磁波シールド部材の基材であり、所望の透明性、機械的強度、プライマー層3との接着性等の要求適性を勘案の上各種材料の各種厚みのものを選択すればよい。材料としては樹脂、硝子等が、厚み形態としてはフィルム(乃至はシート)、或いは板の形態で用いられる。通常は、樹脂製の透明フィルムが好ましく用いられる。
そうした透明フィルムとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂等をベースとするフィルムが好ましいが、これに限定されない。具体的には、透明フィルムの材料としては、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、トリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、(メタ)アクリロニトリル樹脂等が使用できる。なかでも、二軸延伸PETフィルムが透明性、耐久性に優れ、しかもその後の工程で電離放射線照射処理を経た場合でも熱変形等しない耐熱性を有する点で好適である。
【0012】
透明基材1は、ロール・トウ・ロール(巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工後巻取に巻き取って保管乃至搬送する形態)で取扱可能な長尺帯状フィルムであってもよいし、所定の大きさからなる枚葉フィルムであってもよい。透明基材1の厚さは、通常は8μm〜1000μm程度が好ましいが、これに限定されない。透明基材1の光透過率としては、100%のものが理想であるが、透過率80%以上のものを選択することが好ましい。
透明基材1の表面には、必要に応じて、後述するプライマー層と基材との密着性を改善するために易接着層を設けたり、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理などの表面処理を行ってもよい。該易接着層の樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン等の樹脂の中から適宜選択する。
【0013】
(導電層)
本発明の電磁波シールド部材を構成する導電層2は、透明基材1上に金属粒子とバインダー樹脂、及び黒色混合色素を含む導電インキを所定のパターンで印刷し、溶剤乾燥、或いは硬化反応等により固化することで得られる。該パターンは、電磁波シールド部材に通常採用されるメッシュ状であってもストライプ状であってもよく、その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜30μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。またメッシュやストライプ形状の電磁遮蔽パターンとは別に、それと導通を保ちつつ隣接した全ベタ等の接地パターンが設けられる場合もある。
【0014】
(導電インキ)
導電インキを構成する金属粒子としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの粒子を好ましく挙げることができ、形状も球状、回転楕円体状、多面体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。これらの金属粒子、その形状は適宜混合して用いてもよい。金属粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、例えば、鱗片状の銀粒子の場合には粒子の平均粒子径が0.1〜10μm程度のものを用いることができる。導電インキ中の金属粒子の含有量は、金属粒子の導電性や粒子の形態に応じて任意に選択されるが、例えば導電インキの固形分100質量部のうち、金属粒子を40〜99質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した値を指している。
【0015】
導電インキを構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として後述する物を挙げることができ、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
また、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤を使用できる。溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ないほうが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
【0016】
本発明で使用する導電インキには、金属光沢、中でも特に透明基材1側から見たときの金属光沢を隠す目的で黒色混合色素を添加する。
2種以上の色素(染料或いは顔料)を組み合わせた、可視光域全域で吸収がある混合色素である黒色混合色素は、各色素の吸収スペクトル帯域が可視光域の一部帯域に吸収域を有するとともに、各色素の吸収域の波長が互いにずれた、2種以上の色素を組み合わせ、各色素の吸収スペクトルを全部重ね合わせることによって380〜780nmの可視光線帯域内全域を覆うような吸収スペクトルとなる色素の組合せを選ぶ。勿論、「各色素の吸収域の波長が互いにずれた」というのは、各色素の吸収域に共通しない部分が少なくとも一部分はあり、互いに相補うことで吸収域を拡大して全可視光線帯域を覆えればよい。必ずしも、各色素の吸収域が全く共通部分を持たないもの同士を組み合わせることを要求するものではない。
代表的な色素の色相の組合せを例示すると、2種の場合は、「緑と赤」等、所謂「補色」関係にある色相の色素を組み合わせる。3種の場合は、「黄、赤、青」の所謂「3原色」の関係にある色相のものを選ぶ。4種以上の色素を組み合わせることも勿論可能である。また、可視光域全域で吸収がある色相としては、黒又は灰色の様な完全な無彩色であっても勿論良い。但し、必ずしも完全無彩色でなく、多少色相を有していても(有彩色であっても)、褐色、紺色、えんじ色、深緑色等の低明度、低彩度であれば、本発明の目的に適う。可視光全域での光吸収の具体的程度は、実際にかかる色素を添加した導電層を形成した状態において、光線反射率で評価した場合、JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーター(例えば、株式会社村上色彩技術研究所製「HM150」商品名)を用いて、観察者側から該導電層を測定した値が5%以下とする。また、反射率の測定に換えて、色差計により反射のY値で表わしてもよく、この際には、観察者側から該導電層を測定したY値として好ましくは20以下、更に好ましくは10以下とする。
本発明で黒色混合色素に用いられる色素としては上記の関係を満たす色素(染料或いは顔料)であれば特に制限されない。
かかる色素の好ましいものを具体例に列挙すると、黄色系の色素としては、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、イソインドリノンイエロー、ポリアゾイエロー、ジスアゾイエロー等、赤色系の色素としては、朱、カドミウムレッド、弁柄、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、クロモフタールレッドタイペル(Cromohptal Red typel)、パーマネントレッドBL等、青色系色素としては群青、紺青、緑青、コバルトブルー、インダスレンブルー、フタロシアニンブルー、ジオキサジンバイオレット、ファストバイオレット等が挙げられる。これらの色素を前記の如く適宜選択し、適宜組合わせて配合する。その他の色素であっても有彩色色素の中から、樹脂バインダーと金属粒子を含む溶液乃至分散液からなる導電層形成用組成物に対する流動性の低下がカーボンブラック(墨)に比べて少ないものを選択すれば、本発明の目的に適う。通常、実用化されている有彩色色素の大部分はこの条件に適合する。
なお、色素の混合比率は通常各色素を大体等分(3種類の場合、1:1:1)とすることが基本であるが、所望の黒色度(黒色乃至灰色)によって、或いは色素の混色特性に応じて適宜増減できる。
なお、特に紫外域に吸収のない黒色混合色素とするためには、所望の可視光域全域の吸収を実現する程度該黒色混合色素を該導電層中に添加した状態において、紫外域(380nm以下の波長域)において、透過した紫外線が十分利用可能な程度の透過率が確保できればよい。透過した紫外線を利用する形態としては、後述の如く、導電インキを紫外線硬化性樹脂から構成し、紫外線照射によって導電インキを硬化せしめる形態が代表的なものである。かかる紫外線透過率としては、透過した紫外線の利用形態にもよるが、通常1%以上、好ましくは5%以上とする。具体的な色素の配合を例示すると、ジスアゾイエローからなる黄色系色素、クロモフタールレッドタイペル(Cromohptal Red typel)、又はパーマネントレッドBLからなる赤色系色素、及び銅フタロシアニンからなる青色系色素を混合した配合が挙げられる。
混合色素の添加量は、通常、導電インキ(導電層形成用組成物)中に1〜85質量%程度である。
【0017】
本発明で使用する導電インキには、品質向上等を目的に適当な添加物を加えてもよい。例えば、導電インキの流動性や安定性を改善するために、導電性等に悪影響を与えない限りにおいて適宜フィラーや増粘剤、界面活性剤、酸化防止剤などを添加してもよい。
【0018】
(導電インキの印刷法)
導電層形成用組成物(導電インキ、導電ペースト、導電塗料等とも呼称。以下導電インキという。)を透明基材上にパターン状に印刷する印刷法は本発明の効果を特に制限するものではなく、導電インキの性状により適宜選択して用いればよい。
ナノメートルサイズの金属微粒子を用いる場合は一般に導電インキの粘度が低く、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などが適しており、サブミクロン〜ミクロン程度の金属微粒子を用いる場合は一般に導電インキの粘度が高く、グラビア印刷等の凹版印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷やディスペンサーなどが適している。
印刷後、例えば、導電インキが固体樹脂の溶剤溶液乃至分散液からなる場合は80〜150℃程度で熱風乾燥して、溶剤を揮散させることで、また、導電インキが固体樹脂のモノマー(単量体)乃至はプレポリマー(オリゴマー)の未硬化物からなる場合は紫外線照射、加熱等の適宜手段により硬化反応を生起せしめることによって、導電インキを固化せしめ、透明基材上にパターン状に形成された導電層2を得る。特に、本発明において、黒色混合色素が紫外域に吸収のないものを選択した場合には、該導電性インキのバインダー樹脂として紫外線硬化性樹脂を使用することが支障なく可能となる。
【0019】
(プライマー層)
図2は、本発明の第2の電磁波シールド部材の一例を示す模式的な断面図である。
当該第2の電磁波シールド部材は、透明基材1上に電離放射線硬化性プライマー層3を形成し、その上に、金属粒子とバインダー樹脂と黒色混合色素とからなる導電インキを凹版印刷し、プライマー層を硬化させて、しかる後に版面から硬化したプライマー層及びパターン状導電体層2を一緒に引き抜く、所謂「引き抜きプライマー法」を適用する電磁波シールド部材である。かかる「引き抜きプライマー法」については、本願発明出願時において未公開の特願2007−299468にて出願した新規な製造方法である。
プライマー層3は、その主目的が導電層2を印刷形成時に、版から被印刷物へのインキ転移性を向上させ、転移後のインキと被印刷物とのインキ密着性を向上させるための層である。また、基本的機能として、透明基材及び導電層の双方に密着性が良く、また開口部(導電層非形成部)の光透過性確保のために透明な層でもある。プライマー層は単層でも多層でもよい。
更に、このプライマー層3は、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層として形成される層であり、電磁波シールド部材となったときに固化している層として形成される。
【0020】
本発明では、未硬化状態において液状(流動性)の電離放射線重合性化合物を含む電離放射線硬化性組成物を塗工、硬化(固体化)してなる層が好適に用いられる。
該電離放射線重合性化合物としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。尚、ここで(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマーとしては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
【0021】
電離放射線として、紫外線、又は可視光線を採用する場合には、通常は、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系等の化合物が、又カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤は、上記モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加する。
なお、電離放射線としては、紫外線、又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線等の荷電粒子線を用いることもできる。
【0022】
また、電離放射線硬化性組成物は、密着性、耐久性改善、各種物性付与のために各種添加剤や変性樹脂を使用してもよい。該添加剤としては、例えば、熱安定剤、ラジカル捕捉剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸收剤、赤外線吸收剤、色素(着色染料、着色顔料)、体質顔料等が挙げられる。
当該電離放射線硬化性組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要であるため、溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ)であることが好ましい。
【0023】
本発明においては、電離放射線硬化性プライマー層とプライマー層3の状態(流動状態と硬化状態)を適切に利用する点に特徴がある。具体的には、電離放射線硬化性プライマー層は、塗工後においても未硬化状態においては、流動性のある状態で透明基材1上に設けられており、電離放射線硬化性プライマー層を硬化させた後、導電インキを転写させる。したがって、電離放射線硬化性プライマー層は短時間で流動状態から硬化状態に変化し、プライマー層3を形成することができるものであることが必要である。このようにしてプライマー層2を透明基材1上に形成することにより、プライマー層3上に導電インキを転写する際に、その導電インキとプライマー層3との間に空隙がない状態で転写することができるので、従来生じるおそれがあった導電インキ層とプライマー層3との間の隙間の発生をなくすことができ、その隙間の存在による転写不良、密着不良の問題が生じない。
【0024】
なお、本明細書でいう「流動性」又は「流動状態」とは、電離放射線硬化性プライマー層を導電インキが充填された版面に圧着する際の圧力によって流動(変形)する性質又は状態をいい、水のように低粘度である必要はない。また、必ずしもNewton粘性でなくチキソトロピー性、ダイラタンシー性の様な非Newton粘性であっても良い。塗工に適した粘度に調整され、透明基材上に塗布後に流動(変形)すればよく、電離放射線硬化性プライマー層は圧着時において流動(変形)する温度になっていればよい。この場合軟化状態と言い換えてもよい。
【0025】
(導電インキの印刷法(2))
本発明の第2の電磁波シールド部材を作製する導電インキの印刷法としては、透明基材1上に電離放射線硬化性プライマー層を形成し、その上に、導電インキを凹版印刷し、プライマー層を硬化させて、しかる後に版面から硬化したプライマー層及びパターン状導電インキ層を一緒に引き抜く、所謂「引き抜きプライマー法」を適用する。
導電インキを凹版印刷して所定のパターンの導電層2を形成するには、例えば、凹版の凹部のみにドクターブレードなどを利用して導電インキを充填し、これに液状プライマー層を片面に形成済みの透明基材を、該プライマー層が凹版に接する向きで加圧ローラで圧着するなどして該プライマー層を接触させて、接触している状態でプライマー層を液状から固体状に固化させた後、透明基材を凹版から離して離版させることで、透明基材上の固化したプライマー層上にインキを転移させることで、印刷すればよい。
【0026】
印刷後、つまり離版後、まだ液状である導電層2に対しては、乾燥操作、加熱操作、冷却操作、化学反応操作などを適宜行い、導電性の導電層2を完成させる。例えば、乾燥操作は、インキ中の溶剤など不要な揮発成分を除去するため、加熱操作は該乾燥や、インキの熱硬化などの必要な化学反応を促進させるため、冷却操作はインキやプライマー層の固化促進のため、化学反応操作は加熱によらない電離放射線照射などのその他の手段によるインキやプライマー層の化学反応を進行させるために行う。
また、導電インキは、版上で半硬化固化させ離版後に完全硬化させてもよい。
【0027】
また、導電インキの固化は凹版接触中に行ってもよい。版接触中に導電インキを固化させるときは、凹版は導電インキに対しても賦形型として機能し、プライマー層も含めて凹版は完全な賦形型として用いることになる。この際、導電インキの固化方法はプライマー層で採用する固化方法と同じ方法でもよく、異なる方法でもよい。但し、例えば電離放射線照射など同じ方法を採用すれば、装置・工程的に簡素化でき、また類似の化学反応を採用すれば密着性の点でも有利である。その代表的実施形態は、黒色混合色素として紫外域に吸収のないものを、又該導電性インキのバインダー樹脂として紫外線硬化性樹脂を選択し、紫外線硬化性樹脂から構成した該プライマー層を凹版面上で紫外線照射により硬化させるのと同時に該導電インキも硬化せしめる形態である。
【0028】
本発明では、このようにして印刷することで、凹版凹部内に充填された導電インキの上部に不可避的に頻発する窪みが生じても、液状で流動性のプライマー層を介して印刷するので、印刷中にプライマー層を窪みに流し込み隙間なく密着させた状態にでき、その後、プライマー層を固化させてから透明基材を凹版から離すので、透明基材上に固化したプライマー層3を介して所定パターンの導電層2を、細線でも、転移不足による断線や形状不良、インキ密着性不足などの印刷不良の発生なく形成できる。
【0029】
なお、導電層とプライマー層突出形状部分との界面においては、両層の材料が相互に拡散し合って混在し、この界面状態が密着性、導電インキの転移性の点で好ましい結果を与えている。
導電層とプライマー層突出形状部分との界面を中心に導電層の断面TEM観察を行ったところ、プライマー層3と導電層2との界面がグラデーションのようになっており、また細かく入り組んだ構造も観察され、境界部分が一部なじんでいる(相溶)していることが確認された。また、導電層2の表面部分をSIMS分析したところ、プライマー層3に含まれるプライマー成分が観測され、プライマー成分の一部が硬化前に導電インキ中に侵入していることが確認された。これらの状況から考えると、流動性があるプライマー層3が導電インキに接触した際に、その境界部分の相溶及び/又は境界の乱れが生じ、この状態でプライマー層3を固化させると、境界部分から導電インキ内部に向かう領域で、導電インキの増粘やゲル化などの現象が起こり、導電インキを版から引き抜きやすくなっているのではないかと推測された。または、流動性のあるプライマー層のプライマー成分の一部が版内の導電インキ層と混ざり、プライマー層を固化させた際に導電インキ層の粘度を全体的に上げていることが推察される。いずれにしろ、流動性のあるプライマー層3を導電インキ層に接触させて、プライマー層3を固化させた後に剥離すれば、導電インキ層が完全に固化していないにもかかわらず、ほぼ100%近い転移が可能であった。
【0030】
かかる断面TEM観察、SIMS分析の結果から、本発明の第2の電磁波シールド部材における導電層とプライマー層との界面は、詳細には、図3〜5に示すような3つの態様をとり得る。
【0031】
界面形態の第1態様は、図3に示すように、プライマー層3と導電層2との界面が、プライマー層3側と導電層2側とに交互に入り組んだ形態である。
なお、この界面形態の第1態様において、入り組んだ界面は、全体としては中央が高い山型の断面形態となっている。
【0032】
こうした界面形態の第1態様は、そもそも平坦面でない山型のプライマー層3上に導電層2が形成されていることをもってしても密着性がよいのに加え、上記のように界面が入り組んだ形態になっているので、所謂投錨効果により、プライマー層3と導電層2との密着性が著しく高くなっている。さらに、こういう界面形態をとるゆえに、版凹部内に充填された導電インキがプライマー層3上に極めて高い転移率(ほぼ100%)で転写されるという格別の効果を備えている。
【0033】
界面形態の第2態様は、図4に示すように、プライマー層3と導電層2との界面の近傍に、プライマー層に含まれるプライマー成分と、導電層を構成する成分とが混合する領域21が存在している形態である。図4では界面が明確に現れているが、実際には、明瞭でない曖昧な界面が現れる。また、図4では混合領域21は、界面11を上下に挟むように存在する。この場合は、プライマー層中のプライマー成分と導電層2中の任意の成分とが両層内に相互に侵入する場合である。なお、混合領域21は界面11の上側(透明基材とは反対側)に存在しても下側(透明基材側)に存在してもよい。混合領域21が界面11の上側に存在する場合としては、プライマー層中のプライマー成分が導電層内に侵入し、導電層中の成分がプライマー層内に侵入しない場合であり、一方、混合領域21が界面11の下側に存在する場合としては、導電層中の任意の成分がプライマー層内に侵入し、プライマー層中のプライマー成分が導電層内に侵入しない場合である。
【0034】
こうした界面形態の第2態様も上記第1態様の場合と同様、そもそも平坦面でない山型のプライマー層3上に導電層2が形成されていることをもってしても密着性がよいのに加え、上記のように界面近傍に混合領域21を有するので、プライマー層3と導電層2との密着性が著しく高くなっている。さらに、こういう界面形態をとるゆえに、版凹部内に充填された導電インキがプライマー層3上に極めて高い転移率(ほぼ100%)で転写されるという格別の効果を備えている。
【0035】
界面形態の第3態様は、図5に示すように、導電層2中に広く、プライマー層3に含まれるプライマー成分31が存在している形態である。図5ではプライマー成分31が界面11付近で多く、頂部に向かって少なくなって態様を模式的に表しているが、こうした態様には特に限定されない。プライマー成分31は、導電層2の頂部から検出される程度に導電層2内に侵入していてもよいし、主として界面近傍で検出される程度であってもよい。なお、第3態様において、特に、プライマー成分31が導電層内に存在している領域が界面11の近傍に局在化している場合が、上記第2態様において混合領域が界面11の上側にのみ存在する形態に相当するといえる。
【0036】
こうした界面形態の第3態様も上記第1及び第2形態の場合と同様、そもそも平坦面でない山型のプライマー層3上に導電層2が形成されていることをもってしても密着性がよいのに加え、上記のようにプライマー成分31が導電層3に侵入しているので、プライマー層2と導電層3との密着性が著しく高くなっている。さらに、こういう界面形態をとるゆえに、版凹部内に充填された導電インキがプライマー層3上に極めて高い転移率(ほぼ100%)で転写されるという格別の効果を備えている。
【0037】
こうして得られた電磁波シールド部材に光学調整層を設けて光学フィルタとして利用することができる。光学調整層としては、従来公知のものをそのまま用いればよく、例えば近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、紫外線吸収層、反射防止層、ハードコート層、防汚層、及び防眩層等を挙げることができる。こうした電磁波シールド部材又は電磁波シールド部材を有する光学フィルタをプラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)等を用いた画像表示パネル(ディスプレイパネル)の画像表示面(前面)に装着することにより、画像表示装置(ディスプレイ装置)とすることができる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0039】
(製造例1)導電インキの調製
導電性粒子として平均粒径約2μmの鱗片状銀粒子70質量部、バインダー樹脂として熱可塑性のポリエステル樹脂5質量部、溶剤として酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル25質量部を配合し、さらに、黒色化材として黒色混合色素又はカーボンブラックを添加し、十分に攪拌混合した後、3本ロールで混練りして導電インキを調製した。
【0040】
(実施例1)
先ず、透明基材として、片面に易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、易接着処理面にプライマー層用の電離放射線硬化性組成物を厚さ8μmとなるように塗布形成した。塗布方式は、通常のグラビアリバース法を採用し、電離放射線硬化性組成物としては、エポキシアクリレート40質量部、単官能モノマー(フェノキシエチルアクリレート等からなる親水性でない単官能アクリレートモノマー混合物)53質量部、3官能モノマー(エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート)7質量部、さらに光開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ))3質量部添加したものを使用した。塗布後の電離放射線硬化性プライマー層は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなかった。
次に、電離放射線硬化性プライマー層が形成されたPETフィルムを転写工程を行う凹版ロールに供するが、それに先だって、線幅が20μmで線ピッチが300μm、版深10μmの格子状のメッシュパターンとなる凹部が形成された凹版ロールの版面に、製造例1において、黒色化材として黒色混合色素(黄色のジスアゾイエロー系/赤色のクロモフタルレッドタイペル系/青色の銅シアニンブルー=47/34/19(質量比)、粒径分布は150〜400nmの範囲に分布)を60質量%(対銀ペーストのバインダー樹脂に対する比で換算)含有させて調製した導電インキをピックアップロールで塗布し、ドクターブレードで凹部内以外の導電インキを掻き取って凹部内のみに導電インキを充填させた。導電インキを凹部内に充填させた状態の凹版ロールと、ニップロールとの間に、プライマー層が形成されたPETフィルムを供し、凹版ロールに対するニップロールの押圧力(付勢力)によって、電離放射線硬化性プライマー層を凹部内に存在する導電インキの凹みに流入させ、導電インキと電離放射線硬化性プライマー層とを隙間なく密着させた。
【0041】
次いで行われる転写工程は以下の通りである。先ず、電離放射線硬化性プライマー層が形成されたPETフィルムを、そのプライマー層が凹版ロールの版面側に対向した状態で、凹版ロールとニップロールとの間に挟む。その凹版ロールとニップロールとの間でPETフィルムのプライマー層は版面に押し付けられる。プライマー層は流動性を有しているので、版面に押し付けられたプライマー層は、導電インキが充填した凹部内にも流入し、凹部内の表面側で生じた導電インキの凹みを充填する。こうして電離放射線硬化性プライマー層は導電インキに対して隙間なく密着した状態となる。その後、さらに凹版ロールが回転してUVランプによって紫外線が照射され、電離放射線硬化性組成物からなるプライマー層が硬化する。プライマー層の硬化により、凹版ロールの凹部内の導電インキはプライマー層と密着し、その後、出口側のニップロールによってフィルムが凹版ロールから剥離され、プライマー層上には導電インキが転写形成される。このようにして得られた転写フィルムを、110℃の乾燥ゾーンを通過させて導電インキの溶剤を蒸発させ、プライマー層上にメッシュパターンからなる導電層を形成した。このときの導電層の厚さ(導電層が形成されているメッシュパターン部分とそれ以外の部分との厚さの差)は約9μmであり、版の凹部内の導電インキが高い転移率で転移していた。導電層の断面を拡大観察すると、該導電層の透明基材側は銀粒子が存在しない領域となり、ここには黒色混合色素のみがバインダー樹脂中に分散し、導電層の中でも黒色混合色素濃度が高く黒色度も高くなっていた。一方、導電層の透明基材とは反対側では銀粒子が密集し、中間の導電層のバインダー樹脂中に黒色混合色素が分散していた。また、断線や形状不良も見られなかった。
作製した電磁波シールド部材の導電層は、透明基材側から見たとき、黒に近い灰色で金属光沢はなく、また、電磁波シールド部材の表面抵抗は1Ωであり、黒色混合色素を添加しないときの表面抵抗と変わらず、良好な電磁波シールド性を示した。
【0042】
(比較例1)
黒色化材として実施例1の黒色混合色素に代えて、カーボンブラック(ピグメントブラックK、平均粒径は150〜400nmの範囲に分布する)60質量%(対銀ペーストのバインダー樹脂に対する比で換算)を含有させて導電インキを調製した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド部材の作製を行った。
しかしながら、導電インキの流動性が悪いため、凹版ロールの凹部内への充填性がよくなく、導電インキの転移率が低く、十分な形状のメッシュ状導電層は形成できなかった。その結果、作製した電磁波シールド部材の表面抵抗は10Ωであり、電磁波シールド性は極めて不良であった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の電磁波シールド部材の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第2の電磁波シールド部材の一例を示す模式的な断面図である。
【図3】導電層とプライマー層との界面が第1態様である本発明の第2の電磁波シールド部材の一例を示す模式的な断面図である。
【図4】導電層とプライマー層との界面が第2態様である本発明の第2の電磁波シールド部材の一例を示す模式的な断面図である。
【図5】導電層とプライマー層との界面が第3態様である本発明の第2の電磁波シールド部材の一例を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 透明基材
2 導電層
3 プライマー層
11 プライマー層と導電層との界面
12 麓部分
13 第1の山
14 第2の山
21 混合領域
31 プライマー成分
A 導電層が形成されている部分
TA Aの厚さ
B 導電層が形成されていない部分
TB Bの厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材上に所定のパターンで形成された導電層とを有する電磁波シールド部材であって、
前記導電層が、(1)金属粒子、(2)バインダー樹脂、及び(3)2種以上の色素を組み合わせた、可視光域全域で吸収を有する混合色素からなることを特徴とする電磁波シールド部材。
【請求項2】
透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電層とを有する電磁波シールド部材であって、
前記プライマー層は、前記導電層が形成されている部分又は該部分とその周辺部において突出形状をなし、該プライマー層突出形状部の麓部分は、導電層麓部分で覆われているか又は覆われずに露出しており、
前記導電層が、(1)金属粒子、(2)バインダー樹脂、及び(3)2種以上の色素を組み合わせた、可視光域全域で吸収を有する混合色素からなることを特徴とする電磁波シールド部材。
【請求項3】
プライマー層と導電層との界面が交互に入り組んでいることを特徴とする請求項2に記載の電磁波シールド部材。
【請求項4】
プライマー層と導電層との界面近傍には、プライマー成分と導電層成分とが混在している領域が存在することを特徴とする請求項2に記載の電磁波シールド部材。
【請求項5】
導電層中に、プライマー層に含まれるプライマー成分が存在することを特徴とする請求項2に記載の電磁波シールド部材。
【請求項6】
前記混合色素が、可視光領域で吸收があって、且つ紫外域に吸收がないものからなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電磁波シールド部材。
【請求項7】
前記導電層は、前記透明基材側において金属粒子非含有であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電磁波シールド部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−158670(P2009−158670A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333971(P2007−333971)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】