説明

電磁波吸収および遮蔽用フィルムとその製造方法、電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した電線およびケーブル

【課題】電線および通信ケーブルなどで発生する電磁波を吸収および遮蔽しながら騒音を減らすことができる柔軟な特性を有する電磁波吸収および遮蔽用フィルムとその製造方法、電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した電線およびケーブルを提供する。
【解決手段】メタルパウダーまたはフェライトパウダーを板状のメタルフレーク形態に加工した後、これを結合剤溶液に分散させ、電磁波遮蔽が可能な支持体上に塗布して乾燥させ、フィルム形状に製造し、該フィルムが通信線40、電力線50、アース線60を巻いた状態で絶縁被覆30内に内在され、電磁波遮蔽層20が通信線40、電力線50、アース線60側に配列され、電磁波吸収層10が絶縁被覆30側に配列されて巻かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波遮蔽および吸収が可能なフィルムの製造において、電磁波遮蔽が可能な支持体上に電磁波吸収が可能な電磁波吸収層を形成することにより、電磁波遮蔽はもちろん吸収が可能なフィルム形態の電磁波吸収および遮蔽用フィルムとその製造方法、電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した電線およびケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、多様な電気、電子機器の利用が急増されるにつれて、電磁雑音または電磁妨害という問題が台頭しており、このような雑音は一般的に伝導性雑音と放出または放射性雑音などに分類される。
【0003】
伝導性雑音を解決するための一般的な手段はノイズフィルターを使用し、放射性雑音については所定の空間を電磁気的に絶縁させる。
【0004】
このために、電気電子機器を金属製または伝導性ケース内に収納するか、金属板を2個の回路基板間に設置するか、または金属ホイルでケーブル周囲を囲む方法を行うことができ、更に、電気電子機器に電磁波吸収体を適用させて使用することができる。
【0005】
現在まで提示されている各種電磁波吸収体の中で、金属混合物を利用したラバーシートがあるが、これは無機物と高分子が機械的に混合されている状態であるため、諸般物性が脆弱であるだけでなく、耐熱度が低く、これにより電磁波吸収効率が劣るという短所がある。
【0006】
特に、前記のようなラバーシートの場合、塩素系ポリエチレン(ハロゲン族)を含む樹脂を使用するため、人体や周辺機器に有害な塩素やフッ素などのガスの発生により被害が生じる問題点がある。
【0007】
更に、既存の大部分の電磁波吸収体は、炭素、フェライトおよび金属などのような基本的な材料のみを使用したものであるため、加工および製品の厚さの調節が難しく、高い製造コストにより商業的に経済性が劣ると共に、産業的にも柔軟性や延伸性などが欠如しており、摩滅特性などの短所が露呈しやすく、また、適用周波数の調節が難しいという問題がある。
【0008】
また、前記短所を更に改善した電磁波吸収体として、携帯電話、PDAなどに適用される電磁波ガスケットがあるが、これはスポンジ外部に導電性金属コーティング繊維を包んだ形態であり、携帯電話やPDAの内部モジュールの間の電磁波漏れを防ぐ役割をする。
【0009】
しかし、前記のような電磁波ガスケットの場合も、繊維である特性上現れる問題点、例えば、ガスケット切断部位からほつれた一本の繊維による電子部品のショートにより、機器誤作動を招くなどの問題が憂慮される。
【0010】
従って、最近は、前記各種電磁波吸収体製品が有する短所を克服することができる、合金材料を用いた電磁波吸収体が開発され、携帯電話、LCDおよびPDAなどへの適用がなされている趨勢である。
【0011】
電磁波吸収体として使用される主要原材料としては、例えば、センダスト合金(SDST alloy)、ハイフラックス(HIGH−fluxe)、モリパーマロイ粉末(Molypermalloy powder;MMP)、純鉄(Fe−Si、Fe−Si−Cr)、非晶質(Amorphose、Fe−Si−Al−Cr)、カーボンコーティング鉄(Carboncoating Iron)、ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)フェライトおよびマンガン−亜鉛(Mn−Zn)フェライトパウダーなどが知られている。
【0012】
上記のようなパウダーは、横:縦の比が1〜5である球状のパウダーであり、これをペースト化またはシート化した電磁波吸収体が一部提供され始めている。
【0013】
しかし、上記のような球状の合金を原材料としてシート化する場合は、シート内部に積層される層が小さく、十分な電磁波吸収性能を期待することができない。また、厚さを厚くする場合、該当適用製品に空間上の制約を受けるため、機能性や実用性の側面から不利である。
【0014】
即ち、電磁波吸収体として使用される原料料であるパウダーが球状の場合、透磁率が低下されるため、適用できる周波数帯域に限界があり、また、高周波帯域では吸収効率が急激に落ちるという短所がある。
【0015】
このような点を勘案し、本発明の発明者は『アトリションミルを用いて球状の金属合成を板状のメタルフレークに加工する工程、高速攪拌を通して板状のメタルフレークを樹脂と混合してペーストに加工する工程、ラミネーティング処理を経て異形フィルム上にメタルフレークをシート化する工程などを含む電磁波吸収体の製造方法と、この時の製造方法を通して製造したペースト化またはシート化電磁波吸収体を提供することで、様々な形状や形態に製造が可能であり、少ない容量でも優れた電磁波吸収能力を発揮することができるため、携帯電話、LCD、ドライブIC用、PDA、無線LANなどの小型の複雑な構造を有する機器の電磁波吸収体として幅広く応用することができ、また、合金の形状の破壊なしに横:縦の比を大きくすることができる同時に、シート化した場合、吸収率を増加させることができる積層配向構造を確保することができるため、高周波帯域を含む広帯域で優れた電磁波遮蔽および吸収効果を期待することができる電磁波吸収体およびその製造方法』が登録を受けている(大韓民国特許第10−463593号公報を参照)。
【0016】
最近、通信機器の発達と合せて、通信機器と連結されるケーブルおよび電線でも電磁波が発生しており、このような電磁波による通信間雑音を減少させるために、図1に図示されるように、網形態に編組された構造を有する銅編組物80がケーブル20内に通信線40、電力線50、アース線60などを巻くように内在されている。
【0017】
更に、通信機器と連結されるケーブルおよび電線に適用されるまた別の電磁波遮蔽方法として、前記銅編組物の代りにセラミックコアを採択することもでき、前記ケーブルの先端部に連結されるコンセント部分の内部には電磁波吸収体シートが付着されている。
【0018】
従って、ケーブル内の通信線、電力線などで発生される電磁波を前記銅編組体で遮断する役割をするが、後述する試験例およびその結果を表す図5のグラフから分かるように、電磁波遮蔽効果が落ちるという問題がある。
【特許文献1】大韓民国特許第10−463593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は前記問題点を解決するために、本発明の目的は、メタルパウダーまたはフェライトパウダーを板状のメタルフレーク形態に加工した後、これを結合剤溶液に分散させ、電磁波遮蔽が可能な支持体上に塗布して乾燥させ、フィルム形状に製造することで、柔軟な特性が必要な電線および通信ケーブル、各種電気電子機器の電磁波発生部位に適用し、電磁波を吸収および遮蔽しつつ雑音を低減させることのできる電磁波吸収および遮蔽用フィルムとその製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明の別の目的は、製造された電磁波吸収および遮蔽フィルムがケーブル内に通信線、電力線およびアース線などを巻いた状態で内在され、電線および通信ケーブルなどで発生する電磁波を吸収および遮蔽しつつ通信間雑音を低減させることのできる電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した電線およびケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するための本発明は、電磁波吸収が可能なパウダーを製造する工程として、原材料である球状の合金をサスボールまたはセラミックボールに配合し、界面活性剤を添加し、所定の時間および速度で稼動されるアトリションミルを利用して板状のメタルフレークに加工する工程、および前記メタルフレークをエチルアルコール、メチルアルコールまたは水で洗浄して乾燥させる工程を含む電磁波吸収および遮蔽用フィルム製造方法において、電磁波吸収が可能な粉末であるFe−Si合金、Fe−Si−Cr合金、非晶質物質(amorphoussubstance)、センダスト合金、ハイフラックス、モリパーマロイ粉末、純鉄(Fe−Si、Fe−Si−Cr)、非晶質(Amorphose、Fe−Si−Al−Cr)、カーボンコーティング鉄(Carbon coating Iron)、ニッケル−亜鉛フェライト、マンガン−亜鉛フェライトの中から選択された粉末を単独または混合使用して結合剤溶液に分散させて電磁波吸収体用塗料を製造する工程、前記電磁波吸収体用塗料を電磁波遮蔽が可能なフィルムの表面に塗布する工程および乾燥させる工程とを通して、一面は厚さが10〜100μmの範囲の電磁波吸収体であり、多面は電磁波遮蔽体とからなる電磁波吸収および遮蔽用フィルムに製造されることを特徴とする。
【0022】
好ましい具現例として、前記電磁波遮蔽体は、電磁伝導層として、アルミニウムホイル、銅ホイル、銀ホイル、ニッケルホイルの中から選択された金属薄膜をポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアラミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミドのうち1種のフィルム上にラミネーティングさせる段階、電気伝導層として、Al、Cu、Ag、Niの中から選択された金属成分を前記のポリマーフィルム上に蒸着させる段階、電気伝導層として、Al、Cu、Ag、Niの中から選択された金属成分を結合剤溶液に分散させて前記のポリマーフィルム上に塗布させる段階のうちいずれか一つの段階で製造され、前記電気伝導層の厚さは5〜20μm、前記ポリマーフィルム層の厚さは12〜50μmであり、二つの層を合わせた前記電磁波遮蔽体の厚さは17〜70μmの範囲であることを特徴とする。
【0023】
前記目的を達成するための本発明は、通信線、電力線、アース線を絶縁被覆で包む構造を有する通信用電線およびケーブルにおいて、上記の方法で製造された電磁波吸収および遮蔽用フィルムが前記通信線、電力線、アース線を巻いた状態で前記絶縁被覆内に内在され、電磁波遮蔽層が前記通信線、電力線、アース線側に配列され、前記電磁波吸収層が絶縁被覆側に配列されて巻かれることを特徴とする。
【0024】
好ましい具現例として、前記通信線、電力線、アース線と共に前記電磁波遮蔽層の内側には電気伝導性が優れたドレーンワイヤーが配設され、このドレーンワイヤーにより電磁波遮蔽層は前記アース線に接地連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
前記課題解決手段を通して、本発明は下記のような効果を提供することができる。
【0026】
電磁波遮蔽が可能な支持体上に電磁波吸収が可能な粉末を結合剤溶液に分散させて製造した塗料を塗布した後、乾燥して電磁波遮蔽層と吸収層にて構成される電磁波吸収および遮蔽用フィルムを提供することで、電線及び通信ケーブル、各種電気電子機器の電磁波発生部位に適用され、電磁波を吸収および遮蔽しながら通信シグナルの騒音を減らすことができる。
【0027】
特に、本発明による電磁波吸収および遮蔽フィルムは通信用電線またはケーブル内に通信線、電力線およびアース線などを巻いた状態で内在され、電線および通信ケーブルなどから発生する電磁波を吸収および遮蔽しつつ通信間騒音を大きく減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面を参照にし、詳しく説明する。
【0029】
本発明は電磁波吸収が可能なパウダーを製造する工程である球状の原材料を合金をサスボールまたはセラミックボールに配合し、界面活性剤を添加し、所定の時間および速度で稼動されるアトリションミルを利用して板状のメタルフレークに加工する工程、および前記メタルフレークをエチルアルコール、メチルアルコールまたは水で洗浄して乾燥させる工程を含むことはもちろん、電磁波吸収および遮蔽用フィルムを製造する工程であるスラリー製造工程、塗布工程、裁断工程などを含む。
【0030】
図2は本発明による電磁波吸収および遮蔽用フィルムを説明する概略図であり、図3は本発明による電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した通信ケーブルを表す概略図である。
【0031】
本発明はシート形態の電磁波吸収体10および電磁波遮蔽体20が互いに重なり合った形態の電磁波吸収および遮蔽用フィルム100を提供すると共に、このフィルムを通信用電線またはケーブル200に内在させて通信シグナルの騒音を大きく減少させることができるようにした点に主眼点がある。
【0032】
本発明の電磁波吸収および遮蔽用フィルムの一構成である電磁波吸収体の製造方法を順に説明すると下記の通りである。
【0033】
まず、原材料である球状の合金をサスボールと配合し、界面活性剤に添加し、所定の時間および速度で稼動されるアトリションミルを利用して板状のメタルフレークに加工する工程、および前記メタルフレークをエチルアルコールまたはメチルアルコールで洗浄して乾燥させる工程は、本願出願人により既に登録(特許文献1)されている製造方法と同様に行われる。
【0034】
即ち、前記メタルフレークに加工する工程において、前記合金と前記サスボールを注入する比率は50Lアトリションミルを使用する場合、合金:φ15ボール:φ20ボール=1:2.8〜4.5:2.3〜4.2であり、30Lアトリションミルを使用する場合、合金:φ10ボール:φ15ボール=1:2.3〜4.2:2.8〜4.5であり、5Lアトリションミルを使用する場合、合金:φ3ボール:φ5ボール=1:2.3〜4.2:2.8〜4.5と定める。
【0035】
この時、前記合金、即ち、前記電磁波吸収体を製造するための原材料は、Fe−Si合金、Fe−Si−Cr合金、非晶質物質(amorphoussubstance)、センダスト合金、ハイフラックス、モリパーマロイ粉末、ニッケル−亜鉛フェライト、マンガン−亜鉛フェライトパウダーなどを単独または混合して使用が可能であり、前記粉末に局限されるわけではなく、前記サスボールはSUS301、304などに製作されたものを使用することができる。
【0036】
更に、前記メタルフレークに加工する工程において、添加される界面活性剤の比率は、前記合金に対して、オレイン酸が0.005〜0.03重量%、トリエタノールアミンが0.0001〜0.003重量%、酒石酸が0.005〜0.03重量%、蟻酸が0.0002〜0.004重量%を添加することができる。
【0037】
このような扁平化工程において、アトリションミル内に合金パウダー、サスボールおよび界面活性剤を入れ、これを攪拌する時間は3〜12時間程度、速度は200〜400rpm程度が好ましく、前記のような過程を通して図7に図示したような扁平状粉末に加工されたメタルフレークパウダーをエチルアルコール、メチルアルコールまたは水でにより洗浄した後、36〜48時間自然乾燥させるか、または60〜120℃乾燥機で6〜12時間乾燥させる。
【0038】
このように加工を終えたメタルフレークの横:縦の比は1〜5程度の合金に比べ著しく増加され、150〜450程度となる。
【0039】
前記の電磁波吸収体粉末製造のための一連の工程を経て製造される粉末は、フィルム上の形態に作るためには結合剤溶液に分散させる塗料製造工程、製造された塗料を支持体上に塗布する塗布工程および一定な幅に裁断するスリッティング工程が必要である。
【0040】
前記の塗料製造工程は、電磁波吸収が可能な前記の粉末を支持体上に付着するための結合剤溶液に湿潤、分散させて製造する工程である。
【0041】
前記の塗料製造工程に使用可能な結合剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂およびポリイソシアネート系樹脂の中から選択される少なくとも1種の混合系を使用することができ、各結合剤には−COOM、−OSOM、−SOM、PO(OM)(OM)、−OPO(OM)(OM)、NRX(ここで、M、M、MはLi、Na、K、H、−NRまたはNHRを表示し、Rはアルキル基またはHを表示し、Xはハロゲン原子を表示する)から選択される少なくとも1種の官能基を含有する。
【0042】
具体的には、ダウ・ケミカル(米)のUCAR−527、UCAR−569、VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFEなどと、日新化学工業のMPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAOなどと、電気化学工業の100OW、DX80、DX82、DX83、100FDなどと、日本ゼオンのMR105、MR100、MR−110などと、日本ポリウレタン工業のニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ化学工業のペンタックスT−5105、T−R3080、T5201などと、モートン(米)のCA−271、CA−237、CA2237、CA−236、CA−239、CA−397、CA−398、CA−399、84847、CA−151HT、CA−152などと、三養化成(韓国)のTIシリーズであるTI−9200、TI−1331、TI−8222、TI−8202、TI−8202、TI−8321、TI−8405、TI−8550、TI−8800、TI−8860、TI−8870、TI−8890、TI−8900、TI−8911、TI−8912などと、BFグッドリッチ(米)の5714F1、5703P、5791F1P、5788P、5719P、5715P、5706P、5755P、5778P、5799Pなどを使用することができる。
【0043】
結合剤を溶液化するために使用可能な溶剤としては、任意比率のアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノンなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーエル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレン、塩化エチレン、四塩化炭素などの塩素化炭素水素類などを使用することができる。
【0044】
このような有機溶剤は必ず100%純度である必要はなく、主成分以外に異性体、副反応物、分解物などの10〜30%以下、好ましくは10%以下の不純物でもかまわない。
【0045】
また、塗膜の耐久性を向上させるために、3次元構造をネットワーク構造を形成可能な硬化剤を使用することができ、この硬化剤としては、適正量のNCO基を含有するイソシアネート系の硬化剤などを使用することができる。
【0046】
具体的には、トリレンジイソシアネート、4−4'ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどを使用することができる。
【0047】
前記の結合剤が溶解されている結合剤溶液に吸収体粉末を分散させるために、ニーダー、サンドミル、プラネタリーミキサー、3ロールミルなどの公示の分散器を使用することができる。
【0048】
結合剤溶液に分散された吸収体塗料をフィルム上に形成するために塗布工程を経るが、塗布工程においては、一定厚さの塗布膜を形成するために、Gravure,MicroGravure,Reverse,DieおよびCommaなどの塗布ヘッドを使用し、溶剤が含有されている塗布層は乾燥工程を減ることで乾燥状態のフィルムを形成することができる。
【0049】
乾燥後の電磁波吸収体層はアルミニウムホイル、銅ホイル、銀ホイル、ニッケルホイルなどの電気伝導性が優れた金属薄膜をポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアラミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミドなどの公示のフィルム上にラミネーティングするか、電気伝導性が優れたAl、Cu、Ag、Niなどの金属成分を前記のポリマーフィルム上に蒸着して使用可能であり、またはAl、Cu、Ag、Niを結合剤溶液に分散させて前記のポリマーフィルム上に塗布した支持体を使用することができる。
【0050】
この時、前記電磁波吸収体層は10〜100μmの厚さを有することが好ましく、その理由は10μm以下の厚さを形成すると、電磁波吸収能力の低下はもちろん、フィルムの引張強伸度の低下により、工程特性低下の問題があり、100μm以上の塗布層が形成されると、材料費の増加によるコスト上昇、および製品適用時の外観不良などの問題点が生じるためである。
【0051】
前記吸収体層を支持し、電磁波を遮蔽することができる電磁波遮蔽体層は、アルミニウムホイル、銅ホイル、銀ホイル、ニッケルホイルなどの電気伝導性が優れた金属薄膜をポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアラミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミドなどの公示のフィルム上にラミネーティングさせたもの、または電気伝導性が優れたAl、Cu、Ag、Niなどの金属成分を前記のポリマーフィルム上に蒸着させたもの、またはAl、Cu、Ag、Cuを結合剤溶液に分散させえ前記のポリマーフィルム上に塗布させたものの中から選択されたいずれか一つであり、この時、電磁波遮蔽のための電気伝導性が優れた伝導層の厚さは5〜20μm、支持のためのポリマーフィルム層の厚さは12〜50μm、2層の全体の厚さは即ち、電磁波遮蔽体の厚さは17〜70μmの範囲が好ましい。
【0052】
電磁波遮蔽体の厚さを17〜70μm範囲に限定した理由は、伝導層の厚さが低い場合、社業時にフィルム破断および電気伝導度が低下し、遮蔽効果が低下する可能性があり、厚さが厚い場合、コスト上昇、および最終製品の外観問題が生じるためである。
【0053】
ここで、前記のように製造された電磁波吸収および遮蔽用フィルムが採用された電線またはケーブル構造について説明すると下記の通りである。
【0054】
前述した通り、通信電線またはケーブル200は、最外側に絶縁被覆30が包まれており、その内部には2本の通信線40、1本の電力線50、1本のアース線60などが配線されている。
【0055】
ここで、前記のように製造された本発明の電磁波吸収および遮蔽用フィルム100を前記通信用電線またはケーブル200に内在させ、通信間の騒音発生を抑制させることができるようにする。
【0056】
この時、前記電磁波吸収および遮蔽用フィルム100はその電磁波遮蔽体20が前記通信線40、電力線50、アース線60側に配列され、前記電磁波吸収体10が絶縁被覆30側に配列されるようにする。
【0057】
従って、本発明の電磁波吸収および遮蔽用フィルム100を絶縁被覆30の内部に内在させるが、前記通信線40、電力線50、アース線60を巻いた状態で内在されるようにすることで、通信線40から発生される騒音を前記電磁波吸収および遮蔽用フィルム100から除去する効果を得ることができる。
【0058】
また、前記通信線40、電力線50、アース線60と共に、前記電磁波吸収および遮蔽用フィルム100の内側にAgドレーンワイヤー70が配設されるようにし、このAgドレーンワイヤー70により電磁波吸収および遮蔽用フィルム100の電磁波遮蔽体20は前記アース線60に接地連結されるようにすることで、電磁波などが電磁波遮蔽体20からアース線60に接地されて除去されるようにする。
【0059】
以下、本発明による電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した電線およびケーブルに対する電磁波遮蔽および騒音除去効果を下記の実施例および試験例を通して詳しく説明するが、下記実施例により本発明の範疇が制限されるわけではない。
【実施例】
【0060】
前記のように羅列された電磁波吸収が可能な粉末(Fe系列アロイ)を結合剤溶液に分散させて電磁波吸収体用塗料を製造した。
【0061】
塗料の特性を向上させるために、分散剤、消泡剤およびラベリング剤などの添加剤を付加して適用することにおいて、粉末の含量を82%、結合剤の含量を15%、分散剤1%、消泡剤1%およびラベリング剤1%にて塗料を製造した。
【0062】
製造された塗料を電磁波遮蔽層を有する支持体(アルミニウムホイルがポリイミドフィルム上にラミネーティングされたフィルム)上に塗布した後、その厚さを異にして電磁波吸収および遮蔽用フィルムを製造した。
【0063】
このように製造された電磁波吸収層の厚さおよび電磁波遮蔽層の厚さは下記の表1に表した。
【0064】
また、製造された電磁波吸収および遮蔽用フィルムを内在させて作った通信線の構造、即ち、電磁波吸収体と電磁波遮蔽体を通信線の被覆内に配列される方向をことにし、内在させて巻くが、その巻き付ける方向も下記の表1に表した通りである。
【表1】

【0065】
[試験例1]
実施例と比較例で製作された通信線を下記の試験方法にて作業性、転送状態、電磁波適合性可否および外観状態を評価し、その結果は表2に表した通りである。
【0066】
−作業性
実施例および比較例による電磁波遮蔽および吸収フィルムを利用し、ケーブル製作時に作業時の破断などの問題なしに良好に作業が可能であるかを適合および不適合で評価した。
【0067】
−バーストテスト
データ転送完了時まで中断せずにデータを高速で転送し、ケーブルの通信データ転送状態が良好であるかをNoiseKen FNS−AX2装備を利用してテストした後、良好および不良で表示した。
【0068】
−CSシグナル転送テスト
CSシグナルが転送されるかの可否をSCHAFENERNSG2070 RF−Generator装備を利用してテストを行った後、良好および不良で表示した。
【0069】
−電磁波適合性テスト
EMC AnalyzerE7403A装備およびEMIチェンバー(シールド特性:MIL−STD−285、実験室減殺特性ANSI63.4を持つ)を利用して電磁波適合性可否を測定し、良好および不良で表示した。
【0070】
−外観評価
ケーブル製作後、ケーブルの外観を評価して適合可能性有無を評価し、適合および不適合で表示した。
【表2】

【0071】
上の表2で確認することができるように、本発明により製造した電磁波吸収および遮蔽用フィルムを内在したケーブルは全ての特性で良好な結果を示したが、特にデータの通信特性が良好であり、電磁波適合性が良好であるのはもちろん、作業性と外観が優れていることが分かる。
【0072】
[試験例2]
本発明の電磁波吸収および遮蔽用フィルムをサムソンデジタルカメラNV−1−83モデルのUSBケーブルの絶縁被覆内に内在させた。即ち、厚さ30μmの電磁波遮蔽体と、厚さ50μmの電磁波吸収体が接合されたストリップタイプの電磁波吸収および遮蔽用フィルムで、前記USBケーブル内の通信線、電力線、アース線を巻き、Agドレーンワイヤーで電磁波遮蔽体とアース線を連結した後、EMCAnalyzer E7403A装備およびEMIチャンバー(シールド特性:MIL−STD−285、実験室減殺特性ANSI63.4を有する)を利用し、電磁波適合性可否を測定し、その結果は図5のグラフから分かるように、上限基準値(赤色ライン)を超過しないことが分かる。
【0073】
反面、サムソンデジタルカメラNV−1−83モデルのUSBケーブルに別途の電磁波遮蔽または騒音除去などの手段を全く内在させない場合は、図4のグラフから分かるように、241.0Mhz、721.1Mhz周波数で上限線超過、481.1Mhz周波数で上限線近接など電磁波適合性にて不良が発生することが分かる。
【0074】
このような試験例を通して、本発明の電磁波吸収および遮蔽用フィルムを通信線を始めとして各種ケーブルに内在させることによって、電磁波適合性で優れた効果を提供することができることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】既存の電磁波による騒音対策案にて通信ケーブル内にCu編造体が内在された状態を説明する概略図である。
【図2】本発明による電磁波吸収および遮蔽用フィルムを説明する概略図である。
【図3】本発明による電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した通信ケーブルを表す概略図である。
【図4】電磁波遮蔽および吸収体がないケーブルの騒音発生に対する実験結果を表すグラフである。
【図5】本発明による電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した通信ケーブルの騒音発生に対する実験結果を表すグラフである。
【図6】本発明の電磁波吸収体に使用されるメタルフレークの形態を表す電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明で提供するメタルフレークを使用してシート形態に製造した電磁波吸収体を表す電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0076】
10 電磁波吸収体
20 電磁波遮蔽体
30 絶縁被覆
40 通信線
50 電力線
60 アース線
70 Agドレーンワイヤー
80 Cu編造物
100 電磁波吸収および遮蔽用フィルム
200 通信電線またはケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波吸収が可能なパウダーを製造する工程として、原材料である球状の合金をサスボールまたはセラミックボールに配合し、界面活性剤を添加し、所定の時間および速度で稼動されるアトリションミルを利用して板状のメタルフレークに加工する工程、および前記メタルフレークをエチルアルコール、メチルアルコールまたは水で洗浄して乾燥させる工程を含む、電磁波吸収および遮蔽用フィルムの製造方法において、
電磁波吸収が可能な粉末であるFe−Si合金、Fe−Si−Cr合金、非晶質物質(amorphoussubstance)、センダスト合金、ハイフラックス(HIGH−FLUXE)、モリパーマロイ粉末、純鉄(Fe−Si、Fe−Si−Cr)、非晶質(Amorphose、Fe−Si−Al−Cr)、カーボンコーティング鉄(Carbon coating Iron)、ニッケル−亜鉛フェライト、マンガン−亜鉛フェライトの中から選択された粉末を単独または混合使用して結合剤溶液に分散させて電磁波吸収体用塗料を製造する工程、
前記電磁波吸収体用塗料を電磁波遮蔽が可能なフィルムの表面に塗布する工程および乾燥させる工程とを通して、
一面は厚さが10〜100μmの範囲の電磁波吸収体であり、多面は電磁波遮蔽体とからなる電磁波吸収および遮蔽用フィルムに製造されることを特徴とする電磁波吸収および遮蔽用フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記電磁波遮蔽体は、
電磁伝導層として、アルミニウムホイル、銅ホイル、銀ホイル、ニッケルホイルの中から選択された金属薄膜をポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアラミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミドのうち一つのフィルム上にラミネーティングさせる段階、
電気伝導層として、Al、Cu、Ag、Niの中から選択された金属成分を前記のポリマーフィルム上に蒸着させる段階、
電気伝導層として、Al、Cu、Ag、Niの中から選択された金属成分を結合剤溶液に分散させて前記のポリマーフィルム上に塗布させる段階
のうちいずれか一つの段階で製造され、
前記電気伝導層の厚さは5〜20μm、前記ポリマーフィルム層の厚さは12〜50μmであり、二つの層を合わせた前記電磁波遮蔽体の厚さは17〜70μmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁波吸収および遮蔽用フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電磁波吸収および遮蔽用フィルムの製造方法により製造された電磁波吸収および遮蔽用フィルム。
【請求項4】
通信線、電力線、アース線を絶縁被覆で包む構造を有する通信用電線およびケーブルにおいて、
請求項1または2に記載の方法で製造された電磁波吸収および遮蔽用フィルムが前記通信線、電力線、アース線を巻いた状態で前記絶縁被覆内に内在され、電磁波遮蔽層が前記通信線、電力線、アース線側に配列され、前記電磁波吸収層が絶縁被覆側に配列されて巻かれることを特徴とする電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した電線およびケーブル。
【請求項5】
前記通信線、電力線、アース線と共に前記電磁波遮蔽層の内側には電気伝導性が優れたドレーンワイヤーが配設され、このドレーンワイヤーにより電磁波遮蔽層は前記アース線に接地連結されることを特徴とする、請求項4に記載の電磁波吸収および遮蔽用フィルムを採用した電線およびケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−71266(P2009−71266A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16648(P2008−16648)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(508028759)エムピコ カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】