説明

電磁波遮蔽ケーブル

【課題】一層向上した電磁波遮蔽性能を示す電磁波遮蔽ケーブルを提供すること。
【解決手段】本発明の電磁波遮蔽ケーブルは、(a)導電性物質からなる一つ以上のコア100と、(b)前記コア100の周囲を取り囲む絶縁層102と、(c)導電性軟磁性体を含む絶縁体からなり、かつ前記絶縁層102の周囲を取り囲む電磁波遮蔽層110とを含んでいることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波遮蔽ケーブルに関する。より詳しくは、一層向上した電磁波遮蔽性能を示す電磁波遮蔽ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータまたは各種通信機器などのデジタル電子機器は、RAM、ROMまたはマイクロプロセッサなどの多数の電子部品によって構成される。これら電子部品は、多数の論理素子からなり、信号線が配線されたプリント配線基板上に実装される。
【0003】
しかしながら、これら論理素子内に流れる信号が電圧または電流の急激な変化を伴うことによって、前記電子部品が電磁波ノイズの発生源となり、この電磁波ノイズが、デジタル電子機器に連結された通信ケーブルまたは電源ケーブルに影響を及ぼし、誤動作を引き起こすようになる。
よって、前記電磁波ノイズの干渉による誤動作を防止するために、外部からの電磁波を遮蔽できる電磁波遮蔽ケーブルが、前記通信ケーブルまたは電源ケーブルなどに多く適用されている。
【0004】
主に、この電磁波遮蔽ケーブルは、導電性物質からなる一つ以上のコアと、これらコアの周囲を取り囲む絶縁層と、この絶縁層の周囲を取り囲む導電性電磁波遮蔽層とを含んで構成される。すなわち、前記コアおよび絶縁層からなる通常のケーブル構成において、前記絶縁層を導電性材料からなる電磁波遮蔽層で被覆して外部からの電磁波ノイズを遮蔽することで、前記電磁波ノイズの干渉による誤動作を防止できる。ここで、前記電磁波遮蔽層は、金属、半導体的導電性を有する導電性高分子、または、高分子に金属や合金などの導体を分散させた電気伝導性樹脂などの導電性材料によって形成できる。
【0005】
しかしながら、このような電磁波遮蔽ケーブルにおいては、外部からの電磁波ノイズを効果的に遮蔽できる一方、ケーブルの内部から放射される電磁波ノイズも内部に反射することで、ケーブルに悪影響を及ぼすという問題点があった。
上記の問題点を勘案して、特許文献1には、外部からの電磁波を遮蔽する性能を有するとともに、ケーブルの内部から放射される電磁波の内部反射も防止できる電磁波遮蔽ケーブルを開示している。この電磁波遮蔽ケーブルの構成は、図1に簡略に示されている。
【0006】
図1に示すように、前記電磁波遮蔽ケーブルは、導電性物質からなる一つ以上のコア100と、これらコア100の周囲を取り囲む絶縁層102と、この絶縁層102の周囲を取り囲む複合磁性体104と、この複合磁性体104を取り囲む導電性電磁波遮蔽層106と、この導電性電磁波遮蔽層106を取り囲む保護外皮108とを含んで構成される。ここで、前記複合磁性層104は、軟磁性体粉末とABS樹脂などの有機結合剤とが混合された材質からなる。
【0007】
上記のような従来の電磁波遮蔽ケーブルによると、前記導電性電磁波遮蔽層106によって外部からの電磁波ノイズを遮蔽でき、かつ、ケーブルの内部から放射される電磁波ノイズの内部反射も防止できる。
【0008】
しかしながら、このような電磁波遮蔽ケーブルにおいては、外部からの電磁波を遮蔽する性能が満足できる水準に達していないだけでなく、前記複合磁性層104及び前記導電性電磁波遮蔽層106の二つの層を形成すべきであるため、製造工程が困難になり、かつ、製造原価も上昇するという問題点があった。
【特許文献1】韓国特許登録第470798号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、一層向上した電磁波遮蔽性能を示す電磁波遮蔽ケーブルを提供することを目的とする。
本発明の技術的課題は、上記の技術的課題に制限されることなく、当業者であれば下記の記載によって他の技術的課題をも明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、(a)導電性物質からなる一つ以上のコアと、(b)前記各コアの周囲を取り囲む絶縁層と、(c)導電性軟磁性体を含む絶縁体からなり、かつ前記絶縁層の周囲を取り囲む電磁波遮蔽層とを含む電磁波遮蔽ケーブルを提供する。
【0011】
その他の本発明の各実施形態の具体的な事項は、以下の詳細な説明及び図面に示されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一層向上した電磁波遮蔽性能を示す電磁波遮蔽ケーブルを提供することができる。また、本発明の電磁波遮蔽ケーブルは、従来よりも電磁波遮蔽のための構成および製造工程を単純化でき、製造原価も節減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施の形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、本発明に対する例示として提示されたもので、これによって本発明が限定されることはなく、本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態による電磁波遮蔽ケーブルを簡略に示した断面図である。図2に示すように、本発明の一実施形態による電磁波遮蔽ケーブルは、導電性物質からなる一つ以上のコア100と、これらコア100の周囲を取り囲む絶縁層102とを含んでいる。前記電磁波遮蔽ケーブルは、各種電子機器に連結されて信号または電力を伝達する任意の通信ケーブルまたは電力ケーブルに適用されるが、前記コア100および絶縁層102は、このようなケーブルの適用形態による通常の構成からなる。例えば、前記電磁波遮蔽ケーブルが所定の電子機器に連結されるビニール被覆通信ケーブルに適用される場合、前記コア100は、金属物質からなる信号線になり、前記絶縁層102は、前記コア100を取り囲むポリビニールクロライド材質のビニール層になる。
【0015】
また、前記電磁波遮蔽ケーブルは、前記コア100及び絶縁層102と共に、前記絶縁層102の周囲を取り囲む電磁波遮蔽層110を含んでいる。この電磁波遮蔽層110は、導電性軟磁性体を含む絶縁体からなる。
【0016】
この電磁波遮蔽層110は、前記導電性軟磁性体によって導電性と共に磁性を帯びている。したがって、前記導電性を帯びることで、外部からの電磁波を効果的に遮蔽できるとともに、前記磁性を帯びることで、電磁波遮蔽ケーブルの内部から放射される電磁波も効率良く吸収できる。後述する実施例においても具体的に説明するが、本発明者らの実験によると、このような電磁波遮蔽層110を含む本発明の一実施形態による電磁波遮蔽ケーブルは、従来よりも著しく向上した電磁波遮蔽効果を奏することが明らかになった。
【0017】
また、前記電磁波遮蔽層110は、導電性軟磁性体を含む絶縁体の単一層からなる。したがって、これを含む前記電磁波遮蔽ケーブルは、従来よりも製造工程が単純になり、か
つ、製造原価が低減することになる。
【0018】
一方、前記電磁波遮蔽層110の構成において、前記導電性軟磁性体には、金属軟磁性体またはフェライトが用いられる。具体的には、前記金属軟磁性体として、Ni−Co、Fe−Ni、Fe−Cr、Fe−AlまたはFe−Siなどの軟磁性体が用いられ、前記フェライトには、Ni−ZnフェライトまたはMn−Znフェライトなどが用いられる。さらに、これらの物質の他にも、導電性と共に磁性を帯びた任意の金属軟磁性体またはフェライトが限定されることなく用いられる。
【0019】
また、前記絶縁体には、織物、紙、不織布または高分子膜などの織物または織物類似体が用いられるが、これらの材質に限定されることなく、織物または織物類似体の形態を帯びた任意の材質も用いられる。
【0020】
また、前記電磁波遮蔽層110は、前記金属軟磁性体またはフェライトなどの導電性軟磁性体を絶縁体にメッキしたものである。ここで、前記導電性軟磁性体のメッキは、当業者にとって自明な通常の金属軟磁性体のメッキ方法またはフェライトのメッキ方法によって行われる。このように、前記導電性軟磁性体を絶縁体にメッキして前記電磁波遮蔽層を構成すると、電磁波遮蔽効率が一層好ましくなる上に、前記電磁波遮蔽層110の製造が非常に容易になる。
【0021】
一方、前記電磁波遮蔽ケーブルは、前記電磁波遮蔽層110を取り囲む保護外皮108をさらに含んでいる。この保護外皮108は、一般の樹脂物質などからなり、外部の水分または圧力などから前記電磁波遮蔽ケーブルを保護する役割をする。ただし、この保護外皮108は、前記電磁波遮蔽ケーブルに含まれていなくてもよく、各種の外部環境要因から電磁波遮蔽ケーブルを保護する必要があるときに選択的に含まれる。
【0022】
[実施例]
以下、本発明の好ましい実施例を通して、本発明の構成及び作用を一層詳しく説明する。これらの実施例は、本発明の好ましい例示として提示されたものに過ぎず、これによって本発明が限定されることはない。
【0023】
<電磁波を遮蔽する性能の評価方法>
電磁波遮蔽ケーブルについて、外部からの電磁波を遮蔽する性能の評価は、図3に示すような装置を用いるKEC法(電磁波シールド効果測定法)により行なった。具体的には、人為的にノイズを発生させる信号発生用送信アンテナと受信アンテナとの間に試料を挿入し、試料の有無によって電界および磁界の強度(単位:dB)を測定する。測定条件は以下のとおりである。
【0024】
測定周波数:10〜1000MHz
発信部(送信アンテナ)と受信部(受信アンテナ)の距離:10mm
温度:26℃
湿度:65%RH
得られた測定値であるE0(試料(遮蔽剤)がない場合の電界強度)およびEx(試料(遮蔽剤)がある場合の電界強度)の値に基づき、下記式により試料(遮蔽剤)の遮蔽効果を算出した。
【0025】
遮蔽効果=20log100/Ex[dB]
例えば、上記式で算出した遮蔽効果値が20dBの場合、遮蔽率が90%であることを意味し、40dBの場合、遮蔽率が99%であることを意味し、60dBであれば、遮蔽率が99.9%であることを意味する。
【実施例1】
【0026】
導電性物質からなるコアの周囲に絶縁層(ポリビニールクロライド層)を形成した。次いで、織物にNi−Co軟磁性体をメッキした後、この織物を絶縁層の周囲に被覆した。これによって、実施例1による電磁波遮蔽ケーブルを作製した。
【実施例2】
【0027】
導電性物質からなるコアの周囲に絶縁層(ポリビニールクロライド層)を形成した。次いで、織物にFe−Ni軟磁性体をメッキした後、この織物を絶縁層の周囲に被覆した。これによって、実施例2による電磁波遮蔽ケーブルを作製した。
【0028】
[比較例1]
導電性物質からなるコアの周囲に絶縁層(ポリビニールクロライド層)を形成した。次いで、前記絶縁層の周囲に、軟磁性体を高分子に噴射して作製された複合磁性体を被覆し、この複合磁性層の周囲に銅を含む導電性電磁波遮蔽層を形成した。これによって、比較例1による電磁波遮蔽ケーブルを作製した。
【0029】
[比較例2]
導電性物質からなるコアの周囲に絶縁層(ポリビニールクロライド層)を形成した。次いで、前記絶縁層の周囲に銅を含む導電性電磁波遮蔽層を形成した。これによって、比較例2による電磁波遮蔽ケーブルを作製した。
【0030】
[試験例]
前記実施例1及び2と比較例1及び2の電磁波遮蔽ケーブルに対し、上記KEC法(電磁波シールド効果測定)によって、800MHz帯域で外部からの電界および磁界を遮蔽する性能を比較試験した。その結果は、下記の表1に示したとおりである。
【0031】
【表1】

【0032】
上記の表1から、前記実施例1及び2は、比較例1及び2よりも著しく向上した電磁波遮蔽性能を示すことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の電磁波遮蔽ケーブルを簡略に示した断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による電磁波遮蔽ケーブルを簡略に示した断面図である。
【図3】KEC法に用いる装置の概略図である。
【符号の説明】
【0034】
100 コア
102 絶縁層
104 複合磁性体
106 導電性電磁波遮蔽層
108 保護外皮
110 電磁波遮蔽層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)導電性物質からなる一つ以上のコアと
(b)前記各コアの周囲を取り囲む絶縁層と
(c)導電性軟磁性体を含む絶縁体からなり、かつ前記絶縁層の周囲を取り囲む電磁波遮蔽層と
を含むことを特徴とする電磁波遮蔽ケーブル。
【請求項2】
前記導電性軟磁性体は、金属軟磁性体またはフェライトを含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽ケーブル。
【請求項3】
前記金属軟磁性体は、Ni−Co、Fe−Ni、Fe−Cr、Fe−AlまたはFe−Siを含むことを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽ケーブル。
【請求項4】
前記フェライトは、Ni−ZnフェライトまたはMn−Znフェライトを含むことを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽ケーブル。
【請求項5】
前記絶縁体は、織物、紙、不織布または高分子膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽ケーブル。
【請求項6】
前記電磁波遮蔽層(c)は、導電性軟磁性体でメッキされた絶縁体からなることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽ケーブル。
【請求項7】
前記電磁波遮蔽層(c)を取り囲む保護外皮をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽ケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−180007(P2007−180007A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216038(P2006−216038)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】