説明

電磁波遮蔽材、積層体および画像表示装置

【課題】モアレを目立たなくさせることができる電磁波遮蔽材を提供する。
【解決手段】電磁波遮蔽材30は、多数の開口領域42を画成する導電性メッシュ40を含む。導電性メッシュ40は、二つの分岐点46の間を延びて開口領域42を画成する多数の境界線分48から形成されている。一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が、3.0以上4.0未満である。開口領域42が一定のピッチで並べられている方向が存在しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波遮蔽用の導電性メッシュを含む電磁波遮蔽材に係り、とりわけ、画像表示パネル等の画面上に重ねた際にモアレを目立たなくさせることができる電磁波遮蔽材に関する。また、本発明は、この電磁波遮蔽材を有した積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイパネル(以下において、単に「PDP」とも呼ぶ)や陰極線管(CRT)等の画像形成装置を有した画像表示装置が広く普及している。これらの画像表示装置においては、画像形成装置の画像観察者側(画面側或いは前面側とも呼ぶ)に、種々の機能をそれぞれ付与された複数枚のシート状(フィルム状)の部材が配置される。
【0003】
PDPやCRTの画面側に配置される部材の一例として、電磁波遮蔽材(電磁波遮蔽シート)が挙げられる(例えば、特許文献1)。斯かる電磁波遮蔽材は、画像形成装置の画面から放射される輻射のうち、画像光は透過させ、且つ不要なkHzからGHz程度の周波数帯域の電磁波を遮蔽するためのシート状の部材である。広く普及している形態において、電磁波遮蔽材は、多数の開口領域を画成する導電性メッシュを含んでいる。そして、導電性メッシュは、典型的には、正方格子をなす規則的な繰返し周期を持つパターンで形成された導電体からなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−121974号公報
【特許文献2】WO2007/114076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、PDPやCRT等に代表される画像形成装置は、繰返し周期を持った画素配列を有し、画素毎の光を制御することによって所望の画像を形成している。このため、画像形成装置に電磁波遮蔽シートが積層されると、画素配列の周期性と導電性メッシュの周期性との干渉に起因した縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)が視認され、表示される画像の質を著しく劣化させる。このような不具合に対処するため、例えば特許文献1のように、モアレを目立たなくさせるため周期性を乱す種々の工夫が提案されてきたが、未だこの問題を十分解決するに至っていない。
【0006】
本発明は、このような点からなされたものであり、モアレを目立たなくさせることができる電磁波遮蔽材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第1の電磁波遮蔽材は、
多数の開口領域を画成する導電性メッシュを備えた電磁波遮蔽材であって、
前記導電性メッシュは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が、3.0以上4.0未満であり、且つ、前記開口領域が一定のピッチで並べられている方向が存在しない。
【0008】
本発明による第2の電磁波遮蔽材は、
多数の開口領域を画成する導電性メッシュを備えた電磁波遮蔽材であって、
前記導電性メッシュは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
前記導電性メッシュは、その内部に前記多数の開口領域が所定のパターンで面内に配列されている単位メッシュ領域を複数領域含み、
一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が、3.0以上4.0未満であり、且つ、前記開口領域が一定のピッチで並べられている方向が、前記一つの領域内に存在しない。
【0009】
本発明による第1または第2の電磁波遮蔽材において、前記導電性メッシュに含まれた前記開口領域のうち、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域が、最も多くなっていてもよい。
【0010】
本発明による第1または第2の電磁波遮蔽材において、5本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域および7本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域の少なくとも二種類が、前記導電性メッシュに含まれていてもよい。このような電磁波遮蔽材において、前記領域に含まれた5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分によって周囲を取り囲まれた複数の開口領域の面積又は形状は一定ではないようにしてもよい。このような電磁波遮蔽材において、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域が、少なくとも前記導電性メッシュに含まれるようにしてもよい。
【0011】
本発明による第1または第2の電磁波遮蔽材において、前記導電性メッシュに含まれた前記開口領域のうち、k本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域の数をNとすると、
kが3≦k≦5を満たす整数の場合に、N≦Nk+1となり、
kが6≦kを満たす整数の場合に、N≧Nk+1となる、
ようにしてもよい。
【0012】
本発明による第3の電磁波遮蔽材は、
多数の開口領域を画成する導電性メッシュを備えた電磁波遮蔽材であって、
前記導電性メッシュは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が、3.0以上4.0未満である。
【0013】
本発明による第3の電磁波遮蔽材において、前記導電性メッシュに含まれた前記開口領域のうち、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域が、最も多くなるようにしてもよい。
【0014】
本発明による第4の電磁波遮蔽材は、
多数の開口領域を画成する導電性メッシュを備えた電磁波遮蔽材であって、
前記導電性メッシュは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
前記導電性メッシュに含まれた前記開口領域のうち、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域が、最も多い。
【0015】
本発明による第3または第4の電磁波遮蔽材において、5本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域および7本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域の少なくとも二種類が、前記導電性メッシュに含まれていてもよい。このような電磁波遮蔽材において、前記領域に含まれた5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分によって周囲を取り囲まれた複数の開口領域の面積又は形状は一定ではないようにしてもよい。このような電磁波遮蔽材において、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域が、少なくとも前記導電性メッシュに含まれるようにしてもよい。
【0016】
本発明による第3または第4の電磁波遮蔽材において、前記導電性メッシュに含まれた前記開口領域のうち、k本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域の数をNとすると、
kが3≦k≦5を満たす整数の場合に、N≦Nk+1となり、
kが6≦kを満たす整数の場合に、N≧Nk+1となる、
ようにしてもよい。
【0017】
本発明による第1〜第4の電磁波遮蔽材のうちのいずれかにおいて、一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0より大きくてもよい。
【0018】
本発明による第1〜第4の電磁波遮蔽材のうちのいずれかにおいて、一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0であってもよい。
【0019】
本発明による第1〜第4の電磁波遮蔽材のうちのいずれかが、前記導電性メッシュを支持する透明基材を、さらに備えるようにしてもよい。
【0020】
本発明による第1の積層体は、
画像形成装置上に配置されて用いられる積層体であって、
上述した本発明による第1〜第4の電磁波遮蔽材のうちのいずれかを備える。
【0021】
本発明による第2の積層体は、
画像形成装置上に配置されて用いられる積層体であって、
上述した本発明による第2の電磁波遮蔽材を備え、
前記複数の単位メッシュ領域は、ある方向に所定のピッチで配列され、
前記所定のピッチは、前記ある方向に沿った画像形成装置の寸法の1/10以上となっている。
【0022】
本発明による第1の画像表示装置は、
画像形成装置と、
上述した本発明による第1〜第4の電磁波遮蔽材のうちのいずれかであって、前記画像形成装置上に設けられた電磁波遮蔽材と、を備える。
【0023】
本発明による第2の画像表示装置は、
画像形成装置と、
上述した本発明による第2の電磁波遮蔽材であって、前記画像形成装置上に設けられた電磁波遮蔽材と、を備え、
前記複数の単位メッシュ領域は、ある方向に所定のピッチで配列され、
前記所定のピッチは、前記ある方向に沿った画像形成装置の寸法の1/10以上となっている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、画像表示装置および積層体の概略構成を示す断面図である。
【図2A】図2Aは、図1の画像表示装置および積層体に組み込まれ得る電磁波遮蔽材の一実施の形態を示す平面図であって、電磁波遮蔽材の導電性メッシュのパターンを説明するための図である。
【図2B】図2Bは、導電性メッシュの拡大図であって、導電性メッシュのパターンを説明するための図である。
【図2C】図2Cは、図2Aに示された電磁波遮蔽材とは異なる電磁波遮蔽材を示す平面図である。
【図2D】図2Dは、各本数の境界線分によって取り囲まれた開口領域の個数を示すグラフである。
【図3】図3は、図1の画像表示装置に組み込まれ得る画像形成装置の画素配列を説明するための平面図である。
【図4A】図4Aは、図2Aに示された電磁波遮蔽材の導電性メッシュと、図3に示された画像形成装置の画素配列と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図4B】図4Bは、図2Cに示された電磁波遮蔽材の導電性メッシュと、図3に示された画像形成装置の画素配列と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図5】図5は、図2Aに示された導電性メッシュのパターンを設計する方法を説明するための図であって、母点を決定する方法を示す図である。
【図6】図6は、図2Aに示された導電性メッシュのパターンを設計する方法を説明するための図であって、母点を決定する方法を示す図である。
【図7】図7は、図2Aに示された導電性メッシュのパターンを設計する方法を説明するための図であって、母点を決定する方法を示す図である。
【図8】図8(a)〜(d)は、決定された母点群を絶対座標系および相対座標系において示す図であり、母点群の分散の程度を説明するための図である。
【図9】図9は、図2Aに示された導電性メッシュのパターンを設計する方法を説明するための図であって、決定された母点からボロノイ図を作成してパターンを決定する方法を示す図である。
【図10】図10は、電磁波遮蔽材の一変形例を示す平面図である。
【図11】図11は、図1の画像表示装置に組み込まれ得る従来技術に係わる電磁波遮蔽材の導電メッシュのパターンを説明するための平面図である。
【図12】図12は、図11に示された電磁波遮蔽材の導電性メッシュと、図3に示された画像形成装置の画素配列と、を重ねた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0027】
また、以下に説明する実施の形態は、本発明をプラズマディスプレイ装置として構成された画表示装置に適用する例とした。しかしながら、この例に限られず、本発明を、例えばCRTを用いた画像表示装置等、種々の画像表示装置或いは画像形成裝置以外の其の他の用途に対して広く適用することができる。
【0028】
図1〜図9は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は、画像表示装置10の表示面10aへの法線方向に沿った断面において当該画像表示装置10を示す断面図である。図2Aおよび図2Cは、電磁波遮蔽材30を法線方向から示す平面図である。図3は、画像形成装置15を法線方向から示す平面図であって、画像形成装置15の画素配列を説明するための図である。図4Aおよび図4Bは、それぞれ、図2Aおよび図2Cに示された電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40と、図3に示された画像形成装置15の画素配列と、を重ねた状態を法線方向から示す平面図である。図5〜図9は、図2Aに示された導電性メッシュ40のパターンを決定する方法を説明するための図である。
【0029】
図1に示すように、画像表示装置10は、画像を形成し得る画像形成装置15と、画像形成装置15の出光側(画像観察者側、以下、画像観察者(側)を単に観察者(側)とも略称する)に配置された積層体20と、を有している。したがって、積層体20の出光面が、画像表示装置10の表示面(出光面)10aをなし、観察者は、画像形成装置15で形成された画像を、積層体20を介して観察することになる。
【0030】
本実施の形態では、画像表示装置10をプラズマディスプレイ装置として構成していることに対応して、画像形成装置15は、プラズマディスプレイパネル(PDP)として構成されている。PDPは、二枚のガラス基板を有し、この二枚のガラス基板の間には画像を画成する放電セルを有し、該放電セル内にはキセノン等の希ガスが充填されている。そして、この希ガス雰囲気中にプラズマを生成し、このときに生じる紫外線を各放電セル内の蛍光体に当てることによって、画素毎に可視光を発生させるようになっている。PDPとして構成された画像形成装置15は、画素毎の発光を制御することにより、画像形成面15aから観察され得る画像を、形成することができる。
【0031】
図3には、画像像形成装置(画像表示パネル)15の画素配列の一例が開示されている。図3に示すように、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、画像形成装置15はカラーで画像を形成することができるようになっている。図3に示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(図3では縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(図3では横方向)に、一つずつ、交互に順に並べられている。なお、図3は、画像形成装置15の画像形成面(出光面)15aへの法線方向、言い換えると、画像形成装置15をなすプラズマディスプレイパネルのパネル面への法線方向から当該画像形成装置15を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0032】
画像形成装置15の出光側に配置された積層体20は、シート状に形成された電磁波遮蔽材(電磁波遮蔽シート)30を有している。上述したように、画像形成装置15からは、不要な電磁波も放射される。電磁波遮蔽材30は、画像形成装置15から放射されるkHzからGHz帯域の電磁波(すなわち、ここで言う「電磁波」とは、可視光線、近赤外線、及び紫外線を含まない概念である)を遮蔽し、且つ画像を構成する可視光線を透過させるためのフィルタとして機能する。なお、電磁波遮蔽材30については、詳しくは、後述する。
【0033】
加えて、積層体20は、電磁波遮蔽材30に積層された種々の機能層を含んでいる。積層体20に含まれる機能層は、画像形成装置15に対応して適宜選択され、例えば、プラズマディスプレイパネルからなる画像形成装置15から放射される特定波長域の放射線等を遮蔽するフィルタ機能を有した層や、光学機能を付与された層や、保護機能等のその他の機能を付与された層とすることができる。より具体的には、フィルタ機能を有した層としては、近赤外線を吸収する機能を有した層、ネオン光を吸収する機能を有した層、紫外線(UV)を吸収する機能を有した層、可視光線中の特定波長域の中に吸収スペクトルを持つ着色フィルタ機能を有した層等が挙げられる。また、光学機能を有した層としては、反射防止層、防眩層、特表2009−539139号公報等に開示の微小ルーバー層等が挙げられ、保護機能等を有した層としては、ハードコート層、耐衝撃層、防汚染層、帯電防止等が挙げられる。
【0034】
ところで、積層体20に含まれる各層は、接着剤を用いて、互いに接合されていてもよい。また、この接着剤に、近赤外線を吸収する機能、ネオン光を吸収する機能、紫外線(UV)を吸収する機能等の種々の機能の一以上を付与するようにしてもよい。さらに、積層体20自体が、画像形成装置15の出光面15aに接着剤を用いて積層されていてもよいし、あるいは図1に示す如く、積層体20が、画像形成装置15の出光面15aに対面する位置に、間に空隙を介して、画像形成装置15とは別体として配置されていてもよい。積層体20が画像形成装置15と別体として配置される場合、積層体20に、硝子板等の高剛性を有した支持板(支持層)が含まれるようにしてもよい。なお、本明細書で用いる「接着剤」には、「粘着剤」も含まれるものとする。
【0035】
なお、本明細書において、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく画像形成装置15から積層体20を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図1においては紙面の上側)のことである。
【0036】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
【0037】
さらに、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面、パネル面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面(の広がり)方向と一致する面のことを指す。そして、本実施の形態においては、画像形成装置15のパネル面、画像形成装置15の出光面(画像形成面)15a、積層体20のシート面、電磁波遮蔽材30のシート面、画像表示装置10の表示面10a等は、互いに平行となっている。なお、各シート状部材は、通常は、何れも厚み分布が全面に亘って均一の為、各シート状部材のシート面は、其の表面、裏面、或いはこれら表裏面と平行な(仮想的)平面を意味する。
【0038】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」や「直交」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の許容誤差を含めて解釈することとする。
【0039】
次に、電磁波遮蔽材30についてさらに詳述する。図1に示すように、本実施の形態において、電磁波遮蔽材30は、シート状の透明基材35と、透明基材35上に設けられた導電性メッシュ40と、を有している。なお、図1に示された例において、電磁波遮蔽材30は積層体20の最も画像形成装置15の側に配置されており、且つ、電磁波遮蔽材30の基材35が画像形成装置15の側に配置されている。ただし、この例に限られず、電磁波遮蔽材30が積層体20のうちの最も画像形成装置15側以外の位置に配置されていてもよい。また、電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40が画像形成装置15の側に配置されていてもよい。
【0040】
透明基材35は、導電性メッシュ40を支持する層であり、適度な強度および適度な透明性を有するように、適宜構成される。一例として、透明基材35の厚さを20μm〜150μmとすることができ、また、透明基材35の光透過率が80%以上となるようにしてもよい。このような透明基材35として、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂フィルムを用いることができる。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、適度な透明性と、紫外線照射処理や加熱処理等に対する耐久性と、を有している点で、透明基材35としての適用に好適である。他の一例として、透明基材35の厚さは500μm〜10000μm(1cm)とすることができる。このような透明材料として、例えば、ソーダ硝子、カリ硝子等の硝子、PLZT等の透明セラミックス、石英の板を用いることが出来る。
【0041】
図2Aおよび図9に示されているように、電磁波遮蔽用の導電性メッシュ40は、多数の開口領域42を画成する網状に形成されたライン部44として形成されている。導電性メッシュ40をなすライン部44は、図示しない位置において、接地され、これにより、画像形成装置15の出光面15aと重なる位置に配置された導電性メッシュ40が、画像形成装置15からの電磁波を遮蔽するようになる。
【0042】
電磁波遮蔽材30に十分な電磁波遮蔽機能を付与するため、一つあたりの開口領域42の大きさは、導電体から成る開口領域42を奥行きの短い導波管と近似した場合の、其の遮斷周波数FCUTが当該電磁波遮蔽材30(導電性メッシュ40)の遮蔽すべき電磁波帯域の最大周波数FMAX以上、即ち、
CUT≧FMAX
となるように設定する。まず簡単の為に、各開口領域42の形状を1辺の長さがAの正方形(矩形)と近似すると、
CUT=C/(2A)
となる。但しここでは、導波管中を進行し得る各種モードのうちで最小周波数の基本モードを想定して算出している。従って、
CUT=C/(2A)≧FMAX
の関係が成り立つ。但し、式中におけるCは、光速度(約3.0×10+8m/s)である。これより、
C/(2FMAX)≧A
となる。
【0043】
ここで説明する導電性メッシュ40においては、現実の個々の開口領域42の形状は正方形では無く各種各様では有るが、近似的には、各開口領域について特定した次の値を、当該開口領域と同一面積の正方形の一辺の長さAとみなすことができ、この値Aの平均値を、平均化した矩形導波管の1辺の長さAAVGと見なすことが出来る。まず、対象となる開口領域42に属する分岐点46(分岐点につては、後述する)のすべてを通る円、すなわち外接円が描ける場合には、この円の直径の大きさを、値Aとして用いることができる。一方、対象となる開口領域42に属する分岐点46のすべてを通る円が描けない場合には、この開口領域42に属する二つの分岐点間の最大距離の大きさを、値Aとして用いることができる。なお、全開口領域に於いて確実にFMAX以下の周波数の電磁波を遮蔽する為には、AMIN〜AMAXの範囲に分布する個々のA(各開口領域と同一面積を有する正方形の一辺の長さとしての定義)の最大値AMAXについて、C/(2FMAX)を満たす様に設計すべきである為、結局、
C/(2FMAX)≧AMAX
とすることによって、遮蔽すべき電磁波帯域の最大周波数FMAXが決まれば、開口領域42を同一面積の正方形とみなした場合における一辺の長さAの最大値をAMAXが決まる。FMAX=100GHzとすれば、AMAX≦1.5mmとなり、多少の余裕を見込んで、AMAX≦1.0mmと設計すれば良い。
【0044】
尚、画像光の透過率(画面の明るさ)の確保(ある程度以上の開口面積率が必要)及び微細加工の難易度を考慮すると、最低でも、AMIN≧0.1mm程度は必要である。以上のことから、画像表示装置の画面設置用途の場合を想定すると、開口領域42をこれと同面積の正方形とみなした場合の一辺の長さAを、0.1mm≦AMIN≦AMAX≦1mm、或いはμm単位で、100μm≦AMIN≦AMAX≦1000μmとすれば良い。また、此のAMIN及びAMAXの値を開口領域42の(単位開口)面積の値に置き換えると、開口領域の平均面積は、0.01mm以上1mm以下の範囲であることが好ましい。又、斯かる導電性メッシュ40を遠方から観察した際の濃淡等の外観ムラを、より確実に、目立ち難くする為には、開口領域42の面積分布は小さい方が好ましい。一方、開口領域42の面積分布を小さくし過ぎると、画素配列とのモアレが視認され易くなる傾向となる。外観ムラとモアレ防止の両立性をより確実化する爲には、導電メッシュ40の開口領域42の面積分布について、
0.08≦(3×標準偏差/平均値)≦0.5
とすることが好ましく、更には、
0.16≦(3×標準偏差/平均値)≦0.25
とすることがより好ましい。
【0045】
加えて、電磁波遮蔽材30に十分な電磁波遮蔽機能を付与するためには、導電性メッシュ40の面抵抗を低くする必要もある。同時に、導電性メッシュ40は、画像形成装置15の画像形成面(出光面)15a上に位置するため、高い可視光透過率を有している必要もある。そこで、一つあたりの開口領域42の面積を調整しながら、併せて導電性メッシュ40をなすライン部44の幅を調節することにより、導電性メッシュ40の面抵抗を低く保ちながら高い可視光透過率を確保することも可能となる。具体的には、一つあたりの開口領域42の面積を上述した範囲に調節しながら、画像形成装置(画像表示パネル)15の画像形成面15a上において多数の開口領域42が閉めている領域の総割合(以下において「開口率」とも呼ぶ)が50%以上95%以下となるように、ライン部44の線幅を設定することが好ましい。具体的な線幅としては、1μm〜100μm程度、好ましくは5μm〜50μmの範囲で選定する。
【0046】
開口領域42をこれと同面積の正方形とみなした場合の一辺の長さの平均値AAVGと画像表示装置の画素Pとの関係についても、各様の設計が可能である。導電メッシュの濃淡ムラを特に軽減することを求める場合は、開口領域42についての平均値AAVGを画像表示装置の画素Pの縦横の寸法のうちの小さい方の寸法TMIN(画素が正方形ならば、何れか1辺の寸法)よりも小さく設定し、
AVG<TMIN
とすることが好ましい。通常、AAVG=0.1×TMIN〜0.7×TMINの範囲とする。又、画面の明るさ(可視光線透過率)及びライン部44の不可視性を特に求める場合は、開口領域42についての平均値AAVGを画像表示装置の画素Pの縦横の寸法のうちの大きい方の寸法TMAX(画素が正方形ならば、何れか1辺の寸法)以上に設定し、
AVG≧TMAX
とすることが好ましい。通常、AAVG=1.3×TMAX〜2.0×TMAXの範囲とする。
【0047】
以上のような導電性メッシュ40は、例えば、透明基材35上に銅、アルミニウム等の導電性金属箔を積層し、この箔を所望のパターンでエッチングする方法、あるいは、導電性インキ(例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂バインダー中に銀、銅、ニッケル等の導電性金属粒子を分散させた導電性インキ)を透明基材35上に所望のパターンで印刷する方法等の従来既知の方法によって、透明基材35上に形成することができる。
【0048】
さらに、図2A〜図2Dおよび図9を主として参照しながら、シート状の電磁波遮蔽材30のシート面への法線方向から観察した場合における導電性メッシュ40のパターンについて、説明する。
【0049】
図2Aおよび図9に示すように、導電性メッシュ40のライン部44は、多数の分岐点46を含んでいる。そして、導電性メッシュ40のライン部44は、両端において分岐点46を形成する多数の境界線分48から構成されている。すなわち、導電性メッシュ40のライン部44は、二つの分岐点46の間を延びる多数の境界線分48から構成されている。そして、分岐点46において、境界線分48が接続されていくことにより、開口領域42が画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分48で囲繞、区劃されて1つの開口領域42が画成されている。
【0050】
なお、図2Aおよび図9に示すように、ライン部44が境界線分48のみから構成されているため、開口領域42の内部に延び入るライン部44は存在しない。これは、言葉を換えて言えば、断線し、電気回路として開いた回路は無く、全てのライン部44が閉回路を構成することになる。その結果、ライン部44全体を回路網として考えた場合に、同じ導電体の被覆面積率及び厚みで最大の電気伝導度を得ることができる。このような態様によれば、電磁波遮蔽材30に十分な電磁波遮蔽機能と高い可視光透過率とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0051】
ところで、上述したように、画素配列を有する画像形成装置15に導電性メッシュ140を有した従来の電磁波遮蔽シート130が積層されると、画素の規則的(周期的)パターンと導電性メッシュ140の規則的(周期的)パターンとに起因した縞状の模様、すなわちモアレが視認されることがある。モアレが視認されると、画像表示装置に表示される画像の画質を著しく劣化させることになる。
【0052】
図11には、正方格子状パターンで形成された導電性メッシュ140を有した従来の電磁波遮蔽シート130が示されている。また、図12には、図11に示された従来の電磁波遮蔽シート130の導電性メッシュ140を、図3に示された典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図12からも理解され得るように、導電性メッシュ140が画像形成装置15の画素配列上に配置されると、導電性メッシュ140の規則的(周期的)パターンと画素の規則的(周期的)パターンとの干渉によって、明暗の筋(図12に示された例では、左上から右下に延びている明暗の筋)が視認されるようになる。
【0053】
なお、図11および図12に示された例では、導電性メッシュ140によって形成された正方格子の配列方向が、画素Pの配列方向に対して、数度傾斜している。此の傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。但し、図12に於いても、なお残留した縞状模様が視認されることからも理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳では無く、其の他、画素P及び導電性メッシュ140間の繰返周期の比、導電性メッシュ140の線幅等の要因にも依存する。導電性メッシュ140のバイアス角のみでモアレを解消しようとすると、画像形成装置15の設計仕様毎に応じてバイアス角の異なる導電性メッシュを用意する必要が有る。
【0054】
一方、モアレの発生を防止するため、本実施の形態による電磁波遮蔽部材30の導電性メッシュ40では、開口領域42が繰返し規則性(周期的)を持ったピッチで並べられた直線方向が存在しないようになっている。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単に導電性メッシュ40のパターンを不規則化するのではなく、導電性メッシュ40の開口領域42が一定のピッチで並べられた方向が存在しないように導電性メッシュ40のパターンを画成することにより、電磁波遮蔽材30と画素配列を有した画像形成装置15とを重ねた際に生じ得るモアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることを知見した。
【0055】
ここで、図2Bは、開口領域42が一定のピッチで並べられた方向が存在しない状態、言い換えると、開口領域42が規則的に配列された方向が存在しない状態、さらに言い換えると、開口領域42が規則性を持って並べられた方向が存在しない状態を説明するための平面図である。図2Bにおいては、電磁波遮蔽材30のシート面上において、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線dが選ばれている。この一本の直線dは、ライン部42の境界線分48と交差し交差点を形成している。この交差点を、図面では図面左下の側から順に、交差点C,C,C,・・・・・,Cとして図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点Cと交差点Cとの距離が、前記或る一つの開口領域42の直線d上での寸法Tである。次に、寸法Tを持つ開口領域42に対して直線dに沿って隣接する別の開口領域42についても、同様に、直線d上での寸法Tが定まる。そして、任意位置で任意方向の直線dについて、直線dと交差する境界線分48とから、任意位置で任意方向の直線dと遭遇する多数の開口領域42について、該直線d上における寸法として、T,T,T,・・・・・・,Tが定まる。そして、T,T,T,・・・・・・,Tの数値の並びには、周期性(規則性)が存在しない。すなわち、開口領域42は、直線方向dに沿って規則性を持たないように並べられ、
≠Tk+l(k:任意の自然数、l:任意の自然数) ・・・条件式(x)
を満たすようになっている。なお、図2Bでは、このT,T,T,・・・・・・,Tは、判り易い様に図面下方に、直線dと共に導電性メッシュ40とは分離して描いてある。
【0056】
また、この直線dを図2Bで図示のものから任意の角度だけ回転させて別の方向について各開口領域Aの寸法T,T,・・を求めると、やはり図2Bで図示された場合と同様に、直線di+1方向に対しても、条件式(x)が満たされ、開口領域の寸法T,T,・・に繰返し周期性(規則性)は見られない。このように、開口領域42がいずれの方向においても条件式(x)を満たす場合、開口領域42が一定のピッチで並べられた方向が存在しない、あるいは、開口領域が規則的に配列された方向が存在しない、あるいは、開口領域42が繰返周期を持つ方向が存在しない、あるいは、開口領域の配列が規則性を持たない、と表現する。
【0057】
一般的には、導電性メッシュのパターンを不規則化することが、モアレの不可視化に有効であるとされてきた。しかしながら、本件発明者らの研究によれば、単に導電性メッシュのパターンの形状及び配列ピッチを不規則化したとしても、常に、モアレを十分に目立たなくさせることはできなかった。且つ、不規則化に伴う別の問題を生じた。例えば、特許文献1の如く、開口領域の形状又は配列ピッチを部分的にでも不規則化することによれば、当該開口領域の配列の繰返規則性は、同一形状の単位開口部が縦横に一定の繰り返しピッチで特定の直線方向に並べられている図11の正方格子配列と比較して低下し、導電性メッシュ自体は全体として不規則なパターンとして視認されるようになり得る。言い換えると、この導電性メッシュでは、2次元XY平面内に於いてY軸方向については繰り返し周期性を持たない為、2次元平面全体としては完全な繰返周期を持たず不一定のパターンとして視認され得る。しかしながら、この不規則性パターンとして視認される導電性メッシュでは、モアレが知覚され得る程度に発生することを防止することができなかった。
モアレを有効に目立たなくさせることができない原因は、依然としてX軸方向には繰返周期を有している為と考えられる。すなわち、部分的にでもXY平面内の何れかの方向に繰り返し周期性が殘存していると、その残存周期性によってモアレが発生する。
【0058】
一方、特許文献2の如く、2次元XY平面内のX軸方向、Y軸方向共に各単位開口領域が繰返周期性を持た無い完全に不規則なパターンとすれば、モアレの完全な解消は可能であった。しかし、斯かる完全不規則なパターンを採用した場合、新たな問題点が発生した。それは、各開口領域の形状及び面積が不揃いの為、該導電性メッシュ全体を眺めたとき、導電性メッシュそれ自体に外観上、濃淡のムラが目立ってしまうことである。此れは、画像表示装置の画面上に設置する用途に於いては欠点となる。これに加えて、メッシュを構成するライン部がランダムに配置される結果、ライン部先端が他のライン部と接続し無いで断線し、回路として開いてしまう箇所が生じる。その結果、導電メッシュ全体としての電気伝導度が低下する。このような断線箇所の存在は、電気伝導度の改善に寄与しないだけでなく、可視光透過率を下げる原因となるため、電磁波遮蔽材としては大きな欠点となる。この点において、本発明の如く、開口領域42(閉回路)が一定のピッチで並べられた直線方向が存在しないように導電性メッシュ40を構成し、且つ、ある程度の制約条件(開口領域42の開口面積乃至外接円直径の分布幅を規定)を課すことによって、モアレの発生を効果的に防止した上で、濃淡ムラを防止し、且つ十分な電磁波遮蔽性(導電性)も確保し得ることは、技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果であると言える。
【0059】
加えて、本実施の形態による電磁波遮蔽部材30の導電性メッシュ40では、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満となっている。このように一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満となっている場合、導電性メッシュ40の配列パターンを、図11に示された正方格子配列から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0より大きく4.0未満となっている場合には、ハニカム配列からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均を3.0以上4.0未満とした場合、開口領域42の配列を不規則化して、開口領域42が繰返規則性(周期性)を持って並べられた方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、結果として、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0060】
なお、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均は、厳密には、導電性メッシュ40内に含まれる全ての分岐点46について、延び出す境界線分48の数を調べてその平均値を算出することになる、ただし、実際的には、ライン部44によって画成された一つあたりの開口領域42の大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、上述した寸法例で開口領域42が形成されている導電性メッシュにおいては、30mm×30mmの部分)に含まれる分岐点46について延び出す境界線分48の数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該導電性メッシュについての一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均値として取り扱うようにしてもよい。
【0061】
同様に、開口領域が一定のピッチで並べられている方向が存在するか否かについても、厳密には、対象となる導電性メッシュの全領域内において任意の方向における開口領域の配列を調査することなる。ただし、実際的には、開口領域42の配列の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、上述した寸法例で開口領域42が形成されている導電性メッシュにおいては、30mm×30mmの部分)に於いて其の中心の1点を通過すると共に全方向についての周期性の傾向を反映すると期待され得る程度の角度にて等分した各方向(例えば、上述した寸法例で開口領域42が形成されている導電性メッシュにおいては、15°おきの方向)について、開口領域42の配列を調査して、開口領域が規則的に配列された方向か存在するか否かを判断すればよい。
【0062】
図2Aに示された電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40では、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0より大きく4.0未満となっている。さらに具体的には、387個の分岐点46について境界線分48の数を確認したところ、3つの境界線分48が延び出している分岐点46が373個存在し、その他の14個の分岐点46からは4つの境界線分48が延び出していた。其の結果、一つの分岐点46から延び出す協会線分48の数の平均値は3.04であった。
【0063】
そして、図4Aには、図2Aに示された電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40を、図3に示された典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図4Aからも理解され得るように、図2Aに示された導電性メッシュ40を実際に作製して画像形成装置15の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0064】
また、本件発明者らが種々の導電性メッシュ40のパターンについて調査を行ったところ、次の条件(A)、(B)および(C)のうちの一以上の条件を満たす場合に、濃淡ムラおよびモアレの両方をより目立たなくさせることができた。
【0065】
・条件(A):6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた開口領域42が、最も多く含まれている。すなわち、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた開口領域42が、他の本数の境界線分48によって周囲を取り囲まれた開口領域42と比較して、より多く導電性メッシュ40に含まれている。
【0066】
・条件(B):次の条件(b1)を満たす。好ましくは、次の条件(b1)と、条件(b2)よび(b3)の一方と、を満たす。より好ましくは、次の条件(b1)、(b2)および(b3)のすべてを満たす。
(b1)5本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた開口領域42、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた開口領域42および7本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた開口領域42の少なくとも二種類が、それぞれ複数、導電性メッシュ40に含まれている。
(b2)5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の開口領域42の面積又は形状が一定ではない。すなわち、5本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の開口領域42が含まれている場合に、当該5本の境界線分48によって画成されている複数の開口領域42の少なくとも二つが異なる面積又は形状を有し、且つ、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の開口領域42が含まれている場合に、当該6本の境界線分48によって画成されている複数の開口領域42の少なくとも二つが異なる面積又は形状を有し、且つ、7本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の開口領域42が含まれている場合に、当該7本の境界線分48によって画成されている複数の開口領域42の少なくとも二つが異なる面積又は形状を有している。
(b3)6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた開口領域42が、複数含まれている。
【0067】
・条件(C):k本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた開口領域42の数をNとして、
kが3≦k≦5を満たす整数の場合に、N≦Nk+1
kが6≦kを満たす整数の場合に、N≧Nk+1
となっている。すなわち、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた開口領域42が最も多く含まれ、開口領域42を取り囲む境界線分48の本数が6本から多くなっていくにつれて、且つ、開口領域42を取り囲む境界線分48の本数が6本から少なくなっていくにつれて、開口領域42の数量が少なくなっていく。
【0068】
なお、各条件(A)〜(C)を満たすか否かは、厳密には、導電性メッシュ40内に含まれる全ての開口領域42について調査することになる。ただし、実際的には、ライン部44によって画成された一つあたりの開口領域42の大きさ等を考慮した上で、一つの開口領域42を取り囲む境界線分48の本数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、上述した寸法例で開口領域42が形成されている導電性メッシュにおいては、30mm×30mmの部分)に含まれる開口領域42について取り囲む境界線分48の数を調査して、各条件(A)〜(C)が満たされるか否かを判断すればよい。
【0069】
上述した条件(A)〜(C)の一以上を満たす導電性メッシュ40によって奏される作用効果は、モアレの不可視化として単にパターンの不規則化を実施してきた従来の技術水準に照らして、予測され得る範囲を超えた顕著な効果であると言える。そして、条件(A)〜(C)の一以上を満たす導電性メッシュ40によってこのような作用効果が得られるようになる理由の詳細は不明であるが、次のことがその理由になっているものと推定される。ただし、本願発明は、以下の推定に限定されるものではない。
【0070】
条件(A)〜(C)の一以上を満たす導電性メッシュでは、開口領域42の配列が、同一形状の正六角形を規則的に配置してなるハニカム配列から、各開口領域の形状および配置の規則性を崩した配列、言い換えると、ハニカム配列を基準として各開口領域の形状および配置をランダム化した配列とすることができる。これにより、開口領域42の配列に明らかな粗密が生じてしまうことを抑制することができ、多数の開口領域42を概ね均一な密度で、すなわち概ね一様に分布させることができるものと推測される。この結果として、開口領域42の配列を完全に不規則化し得ること、すなわち、開口領域42が規則的に配列された方向が存在しないようにし得ることが、安定して可能となり、開口領域の配列を単に不規則化する場合と比較して、濃淡ムラおよびモアレの両方を効果的に目立たなくさせることができるものと推測される。
【0071】
本件発明者らが行った実験の一例として、図2Cに示されたパターンの導電性メッシュ40について調査したところ、図2Dに示すように、この導電性メッシュ40には、4本、5本、6本、7本、8本、9本の境界線分48によって取り囲まれた開口領域42が、それぞれ、79個、1141個、2382個、927個、94個、8個含まれていた。また、この導電性メッシュ40には、3本の境界線分によって取り囲まれた開口領域、および、10本以上の境界線分48によって取り囲まれた開口領域42が含まれていなかった。すなわち、図2Cに示された導電性メッシュ40は、条件(A)、(B)および(C)のすべてを満たしていた。さらに、図2Cに示された導電性メッシュ40では、開口領域42が一定のピッチで並べられている方向が存在せず、且つ、一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が、3.0以上4.0未満となっていた。
【0072】
そして、図4Bには、図2Cに示された電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40を、図3に示された典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図4Bからも理解され得るように、図2C示された導電性メッシュ40を実際に作製して画像形成装置15の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0073】
ここで、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0より大きく4.0未満であり且つ開口領域42が一定のピッチで並べられた直線方向が存在しない導電性メッシュのパターンを作製する方法の一例を以下に説明する。
【0074】
以下に説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分の経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分を画定して導電性メッシュ40(ライン部44)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図2Aに示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0075】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系XYの任意の位置に一つめの母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0076】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0077】
以上の手順で、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0078】
此のような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離の分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挟んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。尚、此処で、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0079】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。斯かる相対座標形上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、RAVG―ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。なお図8(A)において、これら母点群から得られるボロノイ境界(図9参照)を参考までに破線で図示してある。
【0080】
斯くの如く各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口領域42の面積の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
【0081】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口領域42の大きさを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口領域42の大きさを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口領域42の大きさを大きくすることができる。
【0082】
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、垂直二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0083】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、導電性メッシュ40の分岐点46をなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分48を設ける。この際、境界線分48は、図2Aに示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分48と接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分48は、図2Aに示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分48を画成するようになる。
【0084】
各境界線分48の経路を決定した後、各境界線分48の線幅(太さ)を決定する。境界線分48の線幅は、例えば、開口率が上述した範囲となるように、すなわち、導電性メッシュ40が所望の電気伝導度および可視光透過率を発現するように、具体例としては前記に例示の如き範囲の線幅に決定される。以上のようにして、導電性メッシュ40のパターンを決定することができる。
【0085】
以上のような本実施の形態によれば、電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40が、二つの分岐点46の間を延びて開口領域42を画成する多数の境界線分48から形成されており、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満となっており、且つ、開口領域42が一定のピッチ、即ち一定の繰返ピッチで並べられた方向が存在しないようになっている。この結果、規則的(周期的)に画素Pが配列された画像形成装置15に、この電磁波遮蔽材30を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0086】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
【0087】
例えば、上述した実施の形態において、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満である例、あるいは、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0より大きく4.0未満である例を示したが、これらの例に限られず、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0となるようにしてもよい。一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0とした場合、不規則的に配置された開口領域42が、導電性メッシュ40が形成されている領域内により一様に分散された状態とすることができ、これにより、電磁波遮蔽効率を向上させることが可能となる。
【0088】
また、上述した実施の形態において、導電性メッシュ40の境界線分48が直線状に形成されている例を示したが、これに限られない。境界線分48が、前記の如く二つの分岐点46の間を、曲線状等の種々の経路に沿って延びていてもよい。
【0089】
さらに、上述した導電性メッシュ40のパターン設計方法は単なる一例に過ぎない。例えば、次の手順で母点を配置していってもよい。まず、図5と同様に、絶対座標系XYの任意の位置に一つめの母点BP1を配置する。次に、第1の母点BP1から距離r以上離れた任意の位置に第2の母BP2を配置する。その後、第1の母点BP1および第2の母点BP2のそれぞれから距離r以上離れた任意の位置に第3の母点BP3を配置する。その後、既に配置されている全ての母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を順に配置していく。以上の手順で、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。このような処理によっても、不規則的に配置された母点群が、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に一様に分散した状態とすることができる。
【0090】
また、他の例として、次の手順で母点を配置していってもよい。まず、絶対座標系XYの任意の位置に一つ目の母点BP1を配置する。次に、第1の母点BP1から距離r1以上且つ距離r2以下離れた任意の位置に第2の母BP2を配置する。その後、第1の母点BP1から距離r1以上且つ距離r2以下離れた位置であるとともに、第2の母点BP2から距離r1以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離r1以上且つ距離r2以下離れた位置であるとともに、既に配置されている第1母点BP1以外の全ての母点BP2,BP3から距離r1以上離れた任意の位置に、次の母点を順に配置していく。以上の手順で第1の母点BP1から距離r1以上且つ距離r2以下離れた位置に母点を配置することができなくなったら、次に、第2の母点から距離r1以上且つ距離r2以下離れた位置であるとともに、既に配置されている第2母点BP2以外の全ての母点から距離r1以上離れた任意の位置に、次の母点を順に配置していく。このように第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更していき、同様の手順で母点を形成していく。以上の手順で、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。このような処理によっても、不規則的に配置された母点群が、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に一様に分散した状態とすることができる。なお、図2Cに示された導電性メッシュ40は、この変形例の方法で母点の位置を決定して作成されたパターンである。したがって、ここで説明した方法によっても、不規則的に配置された母点群が、導電性メッシュ40が形成されるべき領域内に一様に分散した状態とすることができる。
【0091】
さらに、上述した実施の形態では、電磁波遮蔽材30の導電性メッシュ40の全領域において、開口領域42が一定のピッチで並べられている方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、その内部において複数の開口領域42が、所定の、繰返周期性の無い、パターンで配列されている領域(単位メッシュ領域)Sが複数集合して導電性メッシュ40の全領域が構成されているようにしてもよい。即ち、此の形態に於いては、導電性メッシュ40の全領域中に、局所的に観たときに、同一パターンで開口領域群42が配列されてなる単位メッシュ領域Sを2箇所以上含むようになる。此の場合もで、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、モアレ発生は実質上目立ち難く、無視し得る。この例において、一つの領域S内における導電性メッシュのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。昨今では、プラズマディスプレイ装置に代表されるよう、画像表示装置10の表示面10aの大型化が進んでいる。とりわけこのような大型画像表示装置に対しては、導電性メッシュ40が、複数の単位メッシュ領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位メッシュ領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口領域42が配列されている構成とした場合、導電性メッシュ40のパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0092】
なお、図10に示された例では、電磁波遮蔽材30が、同一の形状を有した六つの単位メッシュ領域Sに分割され、各領域S内で導電性メッシュ40が同一に構成されている。そして、六つの領域Sは、図10の縦方向に三つの領域が並ぶとともに、図10の横方向に二つの領域が並ぶように配列されている。
【0093】
なお、このような変形例では、例えば図10に示すように、開口領域42の配列が同一のパターンで配列されている領域Sが複数、規則的に配列されていると、導電性メッシュ40内において、開口領域42が一定の配列で並べられている範囲が、単位メッシュ領域Sの数だけ、当該領域の配列方向と平行な方向に繰り返し存在するようになる。すなわち、導電性メッシュ40内において、各開口領域42が所定の繰り返しピッチで並べられている直線方向が存在するようになる。この場合、領域Sの規則的な配列に起因して、縞状模様(モアレ、干渉縞)或いは濃淡ムラが発生する心配もある。但し、特定方向への同一単位メッシュ領域Sの繰返しが3箇所以下、さらに好ましくは2箇所以下であれば、斯かる縞状模様や濃淡ムラは無視し得る。すなわち、図10に示すように、複数の単位領域Sがある方向に所定のピッチSP1,SP2で配列されている場合、当該所定のピッチSP1,SP2は、ある方向に沿った画像形成装置の寸法L1,L2の1/3以上となっていることが好ましく、ある方向に沿った画像形成装置の寸法L1,L2の1/2以上となっていることがさらに好ましい。
【0094】
尚、図10の形態に於いては、1画面内に於いて、単位メッシュ領域Sを(図10に於いて)左右方向に2領域、上下方向に3領域配列させた。但し、隣接する単メッシュ領域同士の境界の継目の修整処理(継目が目立た無くするパターンの変形、修整処理)、単位メッシュ領域の形状(図10では長方形としたが、其の他、3角形、6角形、星芒形、其の他形状も可能)、配列様式(図10では長方形の単位メッシュ領域を縦横に碁盤の目上に配列したが、単位メッシュ領域が長方形であっても、これを煉瓦積みの如き配列とすることも可能)等の工夫如何によっては、単位メッシュ領域Sの縦横の配列ピッチSP1、SP2は、1/10以上となっていれば、縞状模様や濃淡ムラを目立た無くすることは可能である。又、隣接する単位メッシュ領域S同士の境界線は圖10の形態では直線となっているが、該境界線をより目立ち難くする為には、該境界線を折線乃至はジグザグ(zig zag)線、正弦曲線の如くの波型曲線等の線とし、隣接する両単位領域が交互に入り組むように構成されることが好ましい。
【0095】
(着色フィルタとの組み合わせ)
本発明に係わる特定の導電性メッシュ40を用いた電磁波遮蔽材30は、実質上、画素Pとのモアレを生じ無いとともに、濃淡のムラも生じ無いものである。しかしながら、詳細な原因は現在不明で有るが、画像形成裝置15の出光面15a上に設置した場合、条件如何によっては、画像に微細なチラツキを生じる場合が有る。斯かるチラツキを目立ち難くする為、積層体20の適宜位置に、可視光線中の特定波長域の中に吸収スペクトルを持つ着色フィルタを積層することが有効である。該着色フィルタとしては、無彩色(黒色乃至灰色)、有彩色(青、茶、緑等)何れでも良いが、画像の色彩に影響が少ない無彩色の方ものが好ましい。
【0096】
(用途)
以上に説明してきた電磁波遮蔽材30は各種用途に使用可能である。特に、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類、各種事務用機器、各種医療機器、電算機器、電話機、電飾看板、各種遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)装置、ブラウン管ディスプレイ(CRT)装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)装置などの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にプラズマディスプレイ装置用として好適である。また、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車両、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジの窓等の等の各種家電製品の窓等の電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【0097】
更には、本発明の電磁波遮蔽材は電磁波遮蔽材以外の用途にも転用可能であり、例えば、上記各種画像表示装置の画面上に配置して、各種電波を送受信し且つ画像も視認可能な透明アンテナ、上記各種画像表示装置の画面上に配置して、各種情報の入力に用いるタッチパネル用電極、太陽電池の集電電極、前記各種画像表示裝置の画素を駆動する電極、或いは車輛、航空機、船舶、建築物等の窓硝子の結露防止用面発熱体電極等にも使用することができる。
【符号の説明】
【0098】
10 画像表示装置
10a 表示面
15 画像像形成装置、画像表示パネル
15a 出光面、画像形成面
20 積層体
30 電磁波遮蔽材、電磁波遮蔽シート
35 基材、透明基材
40 導電性メッシュ
42 開口領域
44 ライン部
46 分岐点
48 境界線分
XA ボロノイ領域
XB ボロノイ境界
XP ボロノイ点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の開口領域を画成する導電性メッシュを備えた電磁波遮蔽材であって、
前記導電性メッシュは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が、3.0以上4.0未満であり、且つ、前記開口領域が一定のピッチで並べられている方向が存在しない、電磁波遮蔽材。
【請求項2】
多数の開口領域を画成する導電性メッシュを備えた電磁波遮蔽材であって、
前記導電性メッシュは、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
前記導電性メッシュは、その内部に前記多数の開口領域が所定のパターンで面内に配列されている単位メッシュ領域を複数領域含み、
一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が、3.0以上4.0未満であり、且つ、前記開口領域が一定のピッチで並べられている方向が、前記一つの領域内に存在しない、電磁波遮蔽材。
【請求項3】
前記導電性メッシュに含まれた前記開口領域のうち、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域が、最も多い、請求項1または2に記載の電磁波遮蔽材。
【請求項4】
一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0より大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽材。
【請求項5】
一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽材。
【請求項6】
前記導電性メッシュを支持する透明基材を、さらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽材。
【請求項7】
画像形成装置上に配置されて用いられる積層体であって、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽材を備える、積層体。
【請求項8】
画像形成装置と、
前記画像形成装置上に設けられた、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽材と、を備える、画像表示装置。
【請求項9】
画像形成装置と、
前記画像形成装置上に設けられた、請求項2に記載の電磁波遮蔽材と、を備え、
前記複数の領域は、ある方向に所定のピッチで配列され、
前記所定のピッチは、前記ある方向に沿った画像形成装置の寸法の1/10以上である、画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−178556(P2012−178556A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20081(P2012−20081)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】