説明

電磁波遮蔽材

【課題】 電磁波遮蔽材の電磁波遮蔽性能と光透過性を高度に両立させる為に、「引抜プラマイ方式凹版印刷法」で形成した導電性凸状パターン層の線幅が印刷速度を高速化した時に太るのを防いで製品品質への悪影響を防ぐ。
【解決手段】透明基材1上にプライマ層2を介して、導電性粒子とバインダ樹脂を含み非形成部に多数の開口部4が形成される導電性凸状パターン層3が積層され、且つプライマ層は導電性凸状パターン層の非形成部に比べて形成部で厚い電磁波遮蔽材10について、導電性凸状パターン層の互いに交差する2群の平行線条群のうちの少なくとも1群について、凸部の主切断面形状で頂部両側の斜面の傾斜を異ならせる。斜面を外側から測った傾斜角の一方をθL、他方を傾斜角θRとして、θL>θR≧90°とする。θRは印刷下流側に該当し、好ましくはθR=90〜110°とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種の用途、中でもディスプレイの前面に配置するのに好適な電磁波遮蔽材に関する。特に、印刷高速化時の導電性凸状パターン層のパターン精度低下による製品品質への影響を防げる電磁波遮蔽材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイ(画像表示装置とも言う)として、旧来のブラウン管(CRT)ディスプレイ以外に、フラットパネルディスプレイ(FPD)となる、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(以後PDPとも言う)、電界発光(EL)ディスプレイ等の各種ディスプレイが実用されている。これらの中でも、特に、PDPは不要な電磁波放出が強いため、ディスプレイの前面(観察者側面)に電磁波遮蔽材を配置している。
【0003】
また、ディスプレイ用途の電磁波遮蔽材では、優れた電磁波遮蔽性能と優れた可視光線に対する光透過性とを高度に両立できる点で、導電体層には導電性に優れた金属層など結果として不透明となる層が好適であり、不透明性な導電体層であっても光透過性を確保する為に、導電体層はメッシュ形状などのパターンで多数の開口部を設けた導電体パターン層として形成している。導電体パターン層の形成には、金属箔をフォトエッチング法で形成する方法もあるが、コスト的な面で印刷法が有利である。そして、導電体パターン層の形成に印刷法を利用した電磁波遮蔽材も各種提案されている。尚、本願明細書中に於いて、「電磁波」とは広義の電磁波の中で、特に、kHz〜GHz帯域を中心とした周波数帯域のもの(所謂電波)を意味する。より高周波数の赤外線、可視光線、紫外線等は、各々、赤外線、可視光線、紫外線等と呼称する。
【0004】
また、印刷法の中でも、従来では不可能であった様な線幅が細く且つ精細なパターン形成が可能で、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立できる、最近本出願人によって提案された凹版印刷法がある(特許文献1)。特許文献1に開示の凹版印刷法は、透明基材上に施した流動状態のままのプライマ流動層上に導電性組成物のインキを凹版印刷する方法であり、しかもその際、版面上に透明基材が存在している間に、版面と透明基材間にあるプライマ流動層を紫外線照射などで固化させてプライマ層とした後に透明基材を凹版から離版して、透明基材上にプライマ層を介して導電体パターン層として導電性組成物を固化させた導電性凸状パターン層を印刷形成する方法である。このプライマ層は流動状態のときに、版から被印刷物へのインキの転移を促進する作用、言い換えると凹版の版面凹部内に充填されたインキを引き抜いて被印刷物(透明基材)に移す作用を有しており、この凹版印刷法は「引抜プライマ方式凹版印刷法」と呼べる印刷法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/149969号のパンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただ、特許文献1で開示された「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、従来では不可能であった様な、細く且つ精細なパターン形成が可能になるとは言え、一般的な印刷法と同様に印刷速度を速くしていくと、パターン精度が悪化してくる。もちろん、量産性、低コスト化等を目指すには、パターン精度が許容される限り、印刷速度は速い方が好ましい。印刷高速化時のパターン精度の悪化は、シリンダ形状(円筒状)の凹版を用いて、回転する凹版の版面に導電性組成物のインキを供給後、ドクターブレードで版面凸部上の不要なインキを掻き取るときのインキ掻取性の異方性が、顕在化することが原因である。
【0007】
これを図3及び図4の概念図で説明する。先ず、図3(a)の斜視図では、シリンダ形状(円筒状)で回転する凹版31の版面には印刷形成する導電性凸状パターン層に対応する溝パターンからなる凹部32が形成されている。そして、この凹版31の版面に、インキパン33に蓄えた導電性組成物からなるインキ34が供給される。版面に供給されたインキ34の余剰分はドクターブレード35によって掻き取って、凹部32内に充填されたインキ34を印刷対象物(透明基材)に転移させることで、凹版印刷する。なお、シリンダ形状の凹版31の回転方向Xpに対して、ドクターブレード35の掻取方向Xdは逆向きとなる。即ち、此処でドクターブレード35の掻取方向Xdは、版面(上に固定された架空の観察者)に対するドクターブレード35の相対的な移動方向として定義される。現実には、ドクターブレード35は凹版31の円周方向に対しては固定され、凹版31の方が回転する。また、同図では、版面上の凹部32の溝パターンは正方格子状のメッシュパターンで互いに直交して交差する2群の平行線条群からなり、凹版31の回転方向Xp(円周方向)に対して、2群の一方の平行線条群の線条が延在する方向は平行で、他方の平行線条群の線条が延在する方向は直角の関係となっている。
【0008】
次に、図3(b)の断面図では、ドクターブレード35の掻取方向XdをX軸の正の方向とし、掻取方向Xdと版面上で直交する方向をY軸としたときに、版面上で凹部32の溝が延在する方向がY軸に平行な溝、言い換えると、X軸方向に配列した平行線条群の溝、について、ドクターブレード35のインキ掻取状況を概念的に示してある。そして、印刷速度を速くしていくと、ドクターブレード35で版面凸部上の不要なインキ34を掻き取った後に、凹部32のドクターブレード35の掻取方向Xdで下流側に位置する版面凸部上に、凹部32の内部に充填されたインキ34がはみ出した様に、インキ34が版面凸部上に残る漏出部5が発生する。この結果、漏出部5のインキも印刷されて、印刷物上での漏出部5の分だけ線幅が太ることになる。
【0009】
一方、凹部32の溝の延在方向がX軸に平行な溝であるときは、凹部32のドクターブレード35の掻取方向Xdの下流側は、引き続き凹部32に該当する溝が存在し、漏出部5が発生する版面凸部自体が存在しないので、漏出部5は発生しない。
この為、凹部32の溝パターンに、溝の延在方向にX軸方向とY軸方向とがある場合で説明すると、版面上の凹部32の溝幅がX軸方向とY軸方向で同じであっても、実際に印刷形成された導電性凸状パターン層の線幅では、X軸方向に対し直交する方向(Y軸方向)に延在する線条の方は線幅はX軸方向(掻取方向Xd)の正の方向に拡張され、線幅が太ることになる。一方、Y軸方向に対して直交する方向(X軸方向)に延在する線条の方は線幅は太らない。よって、X軸方向とY軸方向とで、線幅が異なる異方性が発生することになる。
【0010】
また、図4の断面図で示す様に、「引抜プライマ方式凹版印刷法」を利用した電磁波遮蔽材では、流動状態のプライマ(流動)層の面に印刷する方式になるため、漏出部5の導電性組成物が固化したプライマ層2の内部に表面から埋まり込んだ(めり込んだ)様な形状となる。つまり、漏出部5は印刷結果物ではプライマ層2に嵌入した嵌入部となる。また、漏出部5は、ドクターブレード35の掻取特性に起因する関係上、ドクターブレード35の掻取方向Xdで正の方向、つまり、凹部を構成する溝の下流側の版面凸部上にのみに現れ、その結果導電性凸状パターン層3の線幅Wは、漏出部5が発生しないときの線幅Woに対して、漏出部5の幅ΔWだけ片側(図面では右側)に太ることになる。また、連続帯状の透明基材1に対して印刷形成された導電性凸状パターン層3では、通常は、透明基材1の長手方向がドクターブレードの掻取方向Xdに平行となるので、漏出部5は、長手方向に直交する方向に延在する線条では、該長手方向(掻取方向Xdでの下流側)に現れ、長手方向に平行な方向に延在する線条では現れない。
【0011】
そして、印刷物上に於ける漏出部5の内部では、漏出部以外の部分と比較して導電性粒子間の電気的接触が低下し不十分となる傾向があり、印刷形成された導電性凸状パターン層の導電性(表面抵抗率)への寄与が他の部分に比べて小さく、その一方で、メッシュパターンの開口部4に進入した漏出部5によって、可視光線の光透過性を低下させる。従って、電磁波遮蔽性能と光透過率を高度に両立させる点でも、好ましい部分とは言えない。
【0012】
更に、印刷形成する導電性凸状パターン層3が、正方格子など格子状で互いに異なる2方向に延びる線条群同士で線幅が異なると、電磁波遮蔽材をディスプレイの前面に配置した時に、観察されるディスプレイの画質の均質性が低下し、製品品質上好ましくない。
【0013】
すなわち、本発明の課題は、特にPDPなど各種ディスプレイの前面(観察者側面)に配置する用途に好適な電磁波遮蔽材について、電磁波遮蔽性能と光透過性を高度に両立させる為に、「引抜プライマ方式凹版印刷法」によって形成した導電性凸状パターン層の形成部である線条(ライン部)の線幅に印刷速度を速くした時に生じる漏出部の発生を防いで、漏出部によって生じる、導電性の有効性低下と光透過性低下、線幅の異方性による画質の均質性の低下を回避して、製品品質へ影響するのを防いだ、電磁波遮蔽材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明の電磁波遮蔽材は、次の構成とした。
(1)透明基材上にプライマ層を介して、導電体パターン層として導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性凸状パターン層が形成され且つ該導電性凸状パターン層の非形成部として多数の開口部が形成され、前記プライマ層は該導電性凸状パターン層の非形成部での厚さに比べて導電性凸状パターン層の形成部での厚さが厚い、電磁波遮蔽材において、
導電性凸状パターン層は互いに交差する2群の平行線条群のうちの少なくとも1群について、導電性凸状パターン層の形成部である凸部の主切断面形状が、頂部両側の斜面の傾斜が互いに異なり、夫々の斜面の傾斜を透明基材表面から夫々凸部の外側で測った傾斜角について、一方を傾斜角θL、他方を傾斜角θRとしたときにθL>θR≧90°である、電磁波遮蔽材。
(2)上記(1)の構成に於いて、傾斜が急峻で垂直に近い方の斜面の傾斜角θRが90〜110°である、電磁波遮蔽材。
(3)更に、上記(1)又は(2)の構成において、導電性凸状パターン層の凸部内の導電性粒子の分布が、相対的に、プライマ層近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密である、電磁波遮蔽材、とした。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明によれば、導電性凸状パターン層を構成する互いに交差する2群の平行線条群のうち少なくとも一方の1群の線条について、断面での左右の傾斜角θLと傾斜角θRとを違えてあるので、漏出部の発生を防いで、漏出部に起因する導電性凸状パターン層の導電性と光透過率への悪影響、及び、線幅の異方性に起因するディスプレイ画像の画質の均質性への悪影響を抑えられ、製品品質の低下を防ぐことができる。
(2)更に、傾斜が急峻な方の傾斜角を所定の角度範囲に規定することで、より確実に漏出部の発生を防いで、製品品質の低下を防ぐことができる。
(3)更に、導電性凸状パターン層の凸部内部に於ける、導電性粒子の分布に所定の粗密を持たせることで、同じ導電性粒子使用量でも導電性凸状パターン層全体としての表面抵抗率を下げて電磁波遮蔽性能と光透過性とをより高度に両立できる上、導電性凸状パターン層とプライマ層との密着性を強化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電磁波遮蔽材の一形態を例示する説明図であり、(a)は断面図、(b)は平面図。
【図2】引抜プライマ方式凹版印刷法による導電性凸状パターン層の凸部(形成部)の一形態として、導電性凸状パターン層の非形成部よりも形成部でプライマ層が厚く、導電性凸状パターン層の凸部内での導電性粒子の分布が凸部の頂部近くが密でプライマ層近くが疎の形態を、概念的に示す断面図。
【図3】印刷時の凹版上の版面パターンと線幅の異方性の関係の説明面であり、(a)はシリンダ形状の凹版上の凹部の溝パターンとドクターブレードの関係を説明する斜視図、(b)は漏出部発生の原因となるドクターブレード掻取時のインキ漏出を説明する断面図。
【図4】漏出部が生じたことによる導電性凸状パターン層の線幅の太りを説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
〔実施形態例〕
先ず、本発明の電磁波遮蔽材の一実施形態例を、図1(a)の断面図、図1(b)の平面図で説明する。同図の様に、本発明の電磁波遮蔽材10は、透明基材1の少なくとも片面に、プライマ層2が形成され、このプライマ層2の上に導電体パターン層として、導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性組成物の固化物として導電性凸状パターン層3が形成されており、該導電性凸状パターン層3の非形成部として光透過性確保の為の多数の開口部4が形成されている。また、本実施形態例では、導電性凸状パターン層3の平面視形状は図1(b)の様に、正方格子状のメッシュ形状であり、X軸方向に互いに平行に配列し且つX軸方向に直交する方向に直線的に延びる線条Lxと、Y軸方向に互いに平行に配列し且つY軸方向に直交する方向に直線的に延びる線条Lyとが、互いに直交して交差するメッシュパターンである。尚、ここでは、X軸方向は図3(b)の如くドクターブレードの掻取方向Xdと一致している。
【0019】
しかも、線条Lxは、図1(a)の断面図で概念的に示す様に、導電性凸状パターン層3の形成部である凸部の主切断面形状(延在方向と直交する断面)において、凸部の頂部P両側の斜面(側面)の傾斜が左右で異なる。同図の場合、凸部の形状は両側斜辺の傾斜が異なる台形形状であり、頂部は平坦で透明基材面に水平な面となっている。そして、図面上で頂部右側の斜面の傾斜角θRが、左側の斜面の傾斜角θLよりも急峻となっている。なお、頂部Pとは最も標高が高い頂上部分であり、透明基材1表面からの垂直方向で最も離れた位置の部分である。
【0020】
なお、頂部P両側の斜面の傾斜が異なる線条Lxは、導電性凸状パターン層3を印刷する凹版の版面上で、導電性凸状パターン層3に対応した溝パターンを成す凹部を、切削バイトで切削して作製するときに、切削バイトに先端の傾斜形状が左右で異なるバイトを用いて形成する。そして、本実施形態例では傾斜角θLは115°、傾斜角θRは90°とした。また、線条Lxは凹版版面上では、該線条Lxの延在する方向がドクターブレードの掻取方向Xdに直交する方向であり、図3(a)で言えばシリンダ形状の凹版31の回転軸の方向であるY軸方向であり、言い換えれば、線条Lxの配列方向がX軸方向であり且つ掻取方向Xdである。
【0021】
この様な凸部形状を形成する為の凹版は、凹部32を成す溝の斜面のうち、ドクターブレード35の掻取方向Xdで下流側に位置する斜面の方を(図面では頂部に対して右側の斜面)、印刷形成する導電性凸状パターン層3の凸部の斜面の急峻な方の斜面の傾斜角θRに対応させる角度とした。つまり、版面上での凹部の溝の側面の傾斜は、印刷物とは逆に版面から(溝内部を通る内側で測らずに)版の中実内部を通る溝の外側から測定した角度を傾斜角θRと同じく90°にし、他方の溝の側面の傾斜を傾斜角θLと同じ115°とした。
【0022】
一方、導電性凸状パターン層3に戻って、その凸部の両側斜面の傾斜が異なる線条Lxに直交する他方の1群に属する線条Lyは、両側斜面の傾斜角は同じでθL=θR=102.5°(透明基材面に対する劣角で見れば77.5°)の台形形状とした。
また、図1(b)の平面図の様に、線条Lxの線幅Wxと、線条Lxと直交する線条Lyの線幅Wyと同じで各々15μmである。また、凹版版面上での線条Lxに対する凹部の溝幅も、線条Lyに対する凹部の溝幅も各々15μmである。また、線条Lx及び線条Lyの配列周期も同じで各々300μmである。
【0023】
なお、本実施形態例では、透明基材1には透明なポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、導電性凸状パターン層3は、銀の導電性粒子とポリエステル系樹脂、溶剤等からなる樹脂バインダからなる導電性組成物(インキ)を国際公開第2008/149969号のパンフレットに開示の所謂「引抜プライマ方式凹版印刷法」によって印刷形成したものである。また、プライマ層2は、アクリレート系の紫外線硬化性樹脂のプライマを用いて透明基材1上に厚さ7μmのプライマ層となる様に形成した。
【0024】
この様に、本実施形態では、両方の線群に属する線条Ly及び線条Lyに漏出部5が存在せず且つ線幅も同じにして印刷形成してあるので、ディスプレイ画像の画質の均質性に悪影響する様な外観不良となる製品品質の低下を防げる。また、漏出部が存在しないから、漏出部の存在による、導電性凸状パターン層の導電性の有効性の低下や、開口部の光透過性の低下を防げる。
【0025】
一方、線条Lxも、線条Lyと同じ傾斜、つまり頂部両側の斜面の傾斜角をθL=θR=102.5°にすると(線幅は同じ15μmのまま)、図4に示す様な漏出部5が線条Lxに発生し、その結果、線状Lxの線幅が16μmとなり、その異方性が目立ち製品品質に悪影響する。
【0026】
〔各層の詳細〕
以下、本発明の電磁波遮蔽材の各層について、更に詳述する。
【0027】
[透明基材]
先ず、透明基材1には、公知の透明な材料を使用すれば良く、樹脂フィルムの様な有機系基材、ガラス、セラミックスの様な無機系基材があるが、可視光線領域での透明性、耐熱性、機械的強度、取扱性等を考慮すると、樹脂フィルム(乃至シート)が代表的である。樹脂フィルム(乃至シート)の樹脂は例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、透明基材1の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は、12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
なお、透明基材1は、生産性に優れたロール・ツー・ロール方式での生産適性の点で、フレキシブルな(可撓性の)材料を選べる樹脂フィルムが好ましい。更に、この点では、透明基材1は、ロールに巻き取り可能な程度に長手方向に連続して長い連続帯状の樹脂フィルムを用いるのが好ましい。
【0028】
[プライマ層]
プライマ層2は、後述図2の様に導電性凸状パターン層3の形成部と非形成部での厚み差を有し、引抜プライマ方式凹版印刷法に特有の層であり、透明な樹脂層として形成する。該樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などを使用でき、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂を使用できる。ただ、該樹脂としては、凹版印刷時に、流動状態から固化状態への迅速な変化を制御できる点で、好ましくは電離放射線硬化性樹脂が使用される。なお、電離放射線硬化性樹脂としては公知のものから適宜選択できる。例えば、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。また、電離放射線としては、通常、紫外線、電子線などが使用される。
【0029】
[導電性凸状パターン層]
導電性凸状パターン層3は、導電性粒子を樹脂バインダ中に分散させた導電性組成物を用いて引抜プライマ方式凹版印刷法で形成する層であり、導電性組成物の固化物からなる。また、導電性凸状パターン層3の非形成部として無数の開口部4が形成される(図1参照)。また、導電性凸状パターン層3は、凸部断面形状にて両側斜面の傾斜が異なる。なお、導電性凸状パターン層3の厚みは、電磁波遮蔽性能等の点から、通常は2〜100μm、より好ましくは5〜20μm程度である。
【0030】
導電性凸状パターン層3のパターンの平面視形状はメッシュ形状であり、互いに交差する2群の平行線条群からなるパターン形状を有する。平行線条群は、直線を成す線条をその延在方向を互いに平行にして且つ延在方向に直交する方向に多数配列させた線群である。そして、2群の平行線条群が交差する角度が直角で、且つ2群の平行線条群の夫々の線条の配列ピッチが同じとき、所謂正方格子状のパターンとなる。なお、メッシュ形状は、この他、交差する角度が直角でないパターンでもよく、また、配列ピッチが互いに交差する2群で異なっていてもよく、また、配列ピッチ自体が不規則でも良い。
なお、線条の線幅、つまり導電性凸状パターン層3の形成部3aの凸部の線幅は(図2参照)、電磁波遮蔽性能などの観点から通常は5〜50μmである。また、導電性凸状パターン層3の開口率〔(導電性凸状パターン層3の開口部4の合計面積/導電性凸状パターン層3の開口部4及び導電性凸状パターン層3の形成部3aを含めた全被覆面積)×100で定義〕は、電磁波遮蔽性能及び可視光透過性との両立の点から、50〜95%程度である。
【0031】
なお、導電性凸状パターン層3を形成する為の導電性組成物は、導電性粒子を樹脂バインダ中に分散させた液状の組成物(インキ)であり、溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化手段によって固化し、固化物が導電性を示す組成物である。導電性粒子及び樹脂バインダには公知の物、例えば、導電ペースト、導電インキなどを適宜採用できる。
導電性粒子としては、金、銀、白金、銅、錫、アルミニウム、ニッケルなど高導電性金属(乃至その合金)の粒子やコロイド、或いは、樹脂粒子や無機非金属物粒子の表面を金、銀など上記高導電性金属(乃至その合金)で被覆した金属被覆粒子、或いは黒鉛粒子、などを用いる。
樹脂バインダは導電性組成物から導電性粒子を除いた残りの成分であり、樹脂バインダの樹脂(バインダ樹脂)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、熱硬化性樹脂にはメラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などを使用する。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋など重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。
また、導電性組成物は、焼成加熱の様な樹脂が劣化する様な高温ではなく低温加熱により導電性を向上できる様な、ナノサイズの導電性粒子、導電性樹脂、導電性化合物、化学反応によって導電性となる導電性化合物などを含む組成物でもよい。また、誘導加熱処理、その他の加熱処理等の物理的処理、酸や水と接触させて表面抵抗を低減する薬品処理などの化学処理、電気化学的処理等によって、導電性を向上させてもよい。
【0032】
なお、「引抜プライマ方式凹版印刷法」では、例えば次の様にして印刷する。印刷インキとして導電性ペーストなどの固化前の導電性組成物を、凹版の版面の凹部のみにドクターブレードによって充填すると共に凹部以外の版面凸部上の導電性組成物は掻き取って除去する。凹部に充填された導電性組成物の表面は版面(凸部)と完全な面一にならず僅かに窪んだ凹みが生じる。この凹版に、未だ流動状態のプライマ流動層が塗工された透明基材1を供給してプライマ流動層を版面に圧着すると、プライマ流動層が凹みに流れ込み凹みを充填し、また版面凸部も覆う。この状態でプライマ流動層を紫外線照射による硬化等によって固化してプライマ層2とした後、透明基材1を凹版から離版して、透明基材1上にプライマ層2と、未硬化の導電性組成物、或いは導電性組成物が固化済みの導電性凸状パターン層3が積層された印刷物を得る。なお、導電性組成物の固化は、未硬化の導電性組成物が溶剤を含むときは離版後に行い、無溶剤の場合は離版後、或いは、離版前のプライマ固化と同時又はプライマ固化後に行う。
【0033】
そして、この様な、「引抜プライマ方式凹版印刷法」による印刷物が、他の印刷法に見られない大きな特徴は、図2の断面図(透明基材1は略して図示)で概念的に示す様に、プライマ層2と導電性凸状パターン層3との界面について、プライマ層2は、導電性凸状パターン層3の形成部3aでの厚さTaが導電性凸状パターン層3の非形成部3bでの厚さTbよりも厚い形状となることである。なお、非形成部3bの厚さTbは、形成部3aの厚さTaの影響のない非形成部3bつまり開口部4の中央部での厚さとする。
【0034】
更に、プライマ層2と導電性凸状パターン層3との界面は、次の(A)〜(C)のいずれかの1以上の断面形態を有する(但し、図2では図示は省略)。(A)プライマ層2と導電性凸状パターン層3との界面が非直線状に入り組んでいる断面形態、(B)プライマ層2を構成する成分と導電性凸状パターン層3を構成する成分とが混合している混合層を界面近傍に有する断面形態、(C)導電性凸状パターン層3を構成する導電性組成物中にプライマ層2に含まれる成分が存在している断面形態。この様な、界面の断面形態は、プライマ層2がプライマ層2と導電性凸状パターン層3との離版時の密着性を強化し、凹版からインキ(導電性組成物)の被印刷物(透明基材1)への転移を促進し高精度且つ高品質の凹版印刷を可能にしている理由であると思われる。
【0035】
また、導電性凸状パターン層3の形成部3aである導電性凸状パターン層3自体の凸部の内部では、図2で概念的に示す様に、導電性粒子Cpが一様な均一な分布ではなく、導電性粒子Cpの分布が、相対的に、凸部の頂部の近くが密でそれよりも頂部から遠いプライマ層2の近くが疎である分布を持つ内部構造が好ましい。密とは単位体積中の導電性粒子Cpの粒子数で見た数密度(体積密度)である。つまり、凸部内部の導電性粒子Cpの数密度が、プライマ層2近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布である。数密度が大きい方が導電性粒子Cp同士の電気的接触が行われ易い。従って、たとえ導電性凸状パターン層3中の導電性粒子Cpの平均濃度が同じであっても、同じ数の導電性粒子Cpを数密度一様で分布させた場合に比べて、数密度が大きい部分での体積抵抗率の低下が寄与して全体として体積抵抗率が下がり、電磁波遮蔽性能が向上する。更に、プライマ層2との境界近傍での導電性粒子Cpの数密度が小さいことによって、導電性凸状パターン層3とプライマ層2との密着性が向上する。尚、導電性凸状パターン層3中に於ける導電性粒子Cpの分布状態は、線条Lx、Lyの延在方向には依存性を持たない(延在方向には単位体積中の粒子の数密度は一定)。その為、この様な単位体積中の導電性粒子Cpの数密度は、線条Lx、Lyの主切断面に於ける単位面積中の導電性粒子Cpの数密度(面密度)で評価出来る。すなわち、図2の如く、主切断面内に於いて、導電性粒子Cpの面密度がプライマ層2近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布であれば、即ち、導電性粒子Cpの体積密度もプライマ層2近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布であると判断して良い。
この様に凸部の頂部Pの方に導電性粒子Cpを偏在させるには、例えば、プライマ流動層形成済みの透明基材1を版面に圧着する圧着力を強くすると共に、導電性組成物は粘度を低めにし且つ凹版凹部内では固化させずに版面から離版後に固化させると良い。この他、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差、固化前の導電性組成物の粘度(樹脂材料及び樹脂量、溶剤量、その他添加剤量、導電性粒子の形状、粒度分布、含有量など関係)、固化条件などにも依存するので、これらは適宜実験的に決定すると良い。導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差については、もしも、頂部Pが重力の向きと逆向き(鉛直上向き)にして導電性凸状パターン層3を流動状態から固化させる場合は、導電性粒子Cpの比重<樹脂バインダの比重、とする。もしも、頂部Pが重力の向きと同じ向き(鉛直下向き)にして導電性凸状パターン層3を流動状態から固化させる場合は、導電性粒子Cpの比重>樹脂バインダの比重、とする。ただ、一般には、導電性粒子Cpとして金属を用い、樹脂バインダとして有機高分子化合物を用いる場合には、導電性粒子Cpの比重>樹脂バインダの比重、となる為、比重差のみを利用して導電性粒子Cpの数密度を前記の如くの分布にする場合は、頂部Pが重力の向きと同じ向きにして導電性凸状パターン層3を固化させることになる。
【0036】
(斜面の傾斜角)
また、導電体凸状パターン層3は、その形成部3aである凸部の主切断面形状が、互いに交差する2群の平行線条群のうちの少なくとも1群について、頂部P両側の斜面の傾斜が異なる。つまり、頂部両側の斜面の傾斜角の一方を傾斜角θL、他方を傾斜角θRとしたときに、θL≠θRである。なお、主切断面とは、透明基材1の表面に垂直でなお且つ導電性凸状パターン層3の線条が延在する方向に直交する断面である。
また、上記傾斜角は、本発明では、頂部両側の夫々の斜面の傾斜を透明基材表面から夫々凸部の外側で測った角度で定義する。図1(a)で言えば、頂部の左側斜面の傾斜角θLは透明基材表面(実際にはプライマ層2の表面)から時計回りで測定し、他方の傾斜角θRは時計回りとは逆回りで測定する。したがって、この定義により、傾斜が最も急峻なときの傾斜角は90°であり、傾斜が最も穏やかで極限までいった時の傾斜、つまり透明基材の面と平行になった時の傾斜角が180°となる。また、傾斜角θLと傾斜角θRのうち、最も急峻な方の傾斜でも90°以上とするのが、凹版版面の凹部内部からのインキの転移が容易となる点で好ましい。最も急峻な方の傾斜でも90°未満とすると、版面上での凹部形状が凹部底部から版面に近い程小さくなりインキが凹部内部から脱出しにくくなるからである。従って、この条件を満たし且つ傾斜角が頂部両側で異なると、仮に最も急峻な方の傾斜角を傾斜角θRとすれば、傾斜角θL>傾斜角θR≧90°と表せる。
【0037】
なお、斜面の形状が、図1(a)では両側の斜面は頂部Pから透明基材1の面に至るまで直線的な斜面であったが、曲線や折れ線の場合は、傾斜角は、頂部から透明基材1の面に至るまでの傾斜を平均化した平均傾斜角で捉えることができる。この場合でも、部分的な傾斜角は90°以上とするのが、凹版凹部の内部からインキの転移が容易な点で好ましい。凹版版面の凹部形状を、この様な傾斜角の凸部を形成できる形状とすることによって、漏出部5の発生を防げる。具体的には、凹部形状を凸部形状と逆凹凸関係とすると良い。更により確実に漏出部を防ぐには、傾斜が急峻で垂直に近い方の斜面の傾斜角θRを90〜110°とすると良い。なお、頂部Pの形状は図1(a)では、平面で且つ透明基材1の面に平行であったが、平面で且つ透明基材1の面に非平行、或いは曲面などであっても良い。曲面の場合は、最も透明基材から垂直距離で遠い部分(頂点)から斜面が生成していることになる。又、凸部の主切断面形状は任意に選択する事が可能で便宜上台形としたが、切削バイトの形状を変更する事で楕円の一部、三角形状、五角形、六角形など製造に最も適した形状を選択する事が可能である。
【0038】
また、頂部P両側の斜面の傾斜角を違える平行線条群の1群は、互いに交差する2群の平行線条群のうちの少なくとも一方であるが、これは、少なくとも1方の平行線条群は、その線条が延在する方向をベクトルで捉えたときに、必ず、凹版版面上でドクターブレード35の掻取方向Xdに直交する方向成分、つまりY軸方向成分を有するからである。この最も顕著な場合が、図1(b)の平行線条(群)Lxの延在方向が該掻取方向Xdに完全に直交する場合である。従って、他方の1群の平行線条群もその線条が延在する方向のベクトル成分が、ドクターブレード35の掻取方向Xdに直交する方向成分を有し、両側斜面の傾斜角を同じにすると漏出部発生が無視できない場合には、こちらの1群も、傾斜角θL>傾斜角θR≧90°とするのが好ましい。但し、線条の延在方向が掻取方向Xdに完全に平行な方向、或いは該完全平行な方向に近い方向の場合など、漏出部の発生が実質的に認められない場合は、この限りでない。
【0039】
従って、本発明を適用するメッシュパターンは、図1(b)の様に、互いに直交して交差する2群の平行線条群で、しかもその一方の線条(Lx)が延在する方向が印刷形成時のドクターブレードの掻取方向Xdと直交する場合以外でも良い。例えば、印刷形成された導電性凸状パターン層3が、2群の平行線条群が互いに交差する角度が直角以外でも良いし、また直角であっても2群両方の線条群を構成する線状が掻取方向Xdに直交していない凹版31を用いて形成されたものでも良い。
つまり、印刷時の方向関係を定義した図3(a)で示したXY座標系のX軸の方向と、印刷物上での方向関係を定義した図1(b)で示したXY座標系のX軸の方向とが一致し平行とはならずに、両座標系のX軸が互いに交差する関係である。また、印刷物上での方向関係を定義した図1(b)で示したXY座標系は直交座標系であったが、X軸、Y軸は各々、2群の平行線条群の配列方向乃至は線条が延在する方向を示し、2群の平行線条群が直角に交差しない場合は、そのXY座標系は直交座標系ではなく斜交座標となる。
【0040】
従って、互いに交差する2群の平行線条群の両方の群に、傾斜角を違えないと無視できない漏出部5が発生するときは、両側傾斜角を違える上記規定を両方の群に適用することが好ましい。
なお、連続帯状の透明基材1に対して印刷形成された導電性凸状パターン層3では、通常は、透明基材1の長手方向がドクターブレードの掻取方向Xdに平行となるので、上記角度関係にて「掻取方向Xd」は「長手方向」に言い換えることができる。
【0041】
この様にして、漏出部5の発生を防ぐことで、導電性凸状パターン層3を「引抜プライマ方式凹版印刷法」の特徴を活かしつつ、製品品質への悪影響を回避して印刷速度をより速くして形成できる。
【0042】
[導電性金属層]
なお、導電性凸状パターン層3の表面には、更に、電解めっき等によって導電性金属層を形成して表面抵抗率を下げてもよい。この場合、導電性凸状パターン層3と導電性金属層とから導電体パターン層が構成され、導電体パターン層2して表面抵抗率が要求を満足する様にすればよい。導電性金属層の金属としては、導電性が高く容易にめっき可能な金属(乃至は合金)であれば特に制限はなく、例えば、銅、銀、金、白金、クロム、ニッケル、錫、などを用いることができる。なかでも、銅は材料費及び導電性に優れているので、好ましい金属の一種である。
【0043】
[黒化処理]
また、導電性金属層に対して、更に黒化処理を施しても良い。黒化処理は、公知の処理、例えば黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金めっき、或いは粗面化処理等を利用できる。黒化処理により、画像の明室コントラストが向上する。
【0044】
[その他の層]
なお、本発明による電磁波遮蔽材は、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、上記した以外のその他の層を含んでもよい。例えば、導電性金属層の表面酸化を防止する防錆層、導電性凸状パターン層3による凹凸を平坦化する平坦化樹脂層、導電性凸状パターン層3が形成された側とは反対側の透明基材1の面に、ディスプレイ前面板などの被着体に貼り付ける為の粘着剤層、その面を一時的に保護するセパレータフィルムなどである。或いは、導電性凸状パターン層3側の面、或いはその反対側の透明基材1の面に対する、各種光学フィルタ、光学フィルタ以外のその他の機能層などである。例えば、光学フィルタは、近赤外線吸収層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、微小ルーバによる外光反射防止層(特開2007−272161号公報など参照)などであり、光学フィルタ以外の機能層は、保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、粘着剤層などである。なお、これらの層には公知のものを適宜使用すれば良い。
【0045】
〔用途〕
本発明による電磁波遮蔽材は、特に、テレビジョン受像装置、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの各種画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 透明基材
2 プライマ層
3 導電性凸状パターン層
3a 導電性凸状パターン層の形成部
3b 導電性凸状パターン層の非形成部
4 開口部
5 漏出部
10 電磁波遮蔽材
31 シリンダ形状の凹版
32 版面上の凹部(溝)
33 インキパン
34 インキ(導電性組成物)
35 ドクターブレード
Cp 導電性粒子
Lx X軸に直交する方向に延在する線条(群)
Ly Y軸に直交する方向に延在する線条(群)
P 頂部
Ta 導電性凸状パターン層の形成部(凸部)のプライマ層の厚み
Tb 導電性凸状パターン層の非形成部のプライマ層の厚み
W 線幅
Wo 本来の線幅
ΔW 漏出部の幅
X 印刷方向(=掻取方向)に平行な座標軸
Xd ドクターブレードの掻取方向(=印刷方向)
Xp 版の回転方向
Y X軸に直交する座標軸
θ 頂部両側斜面の傾斜角
θL 一方(図面上で左側)の斜面の傾斜角
θR 他方(図面上で右側)の斜面の傾斜角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上にプライマ層を介して、導電体パターン層として導電性粒子とバインダ樹脂を含む導電性凸状パターン層が形成され且つ該導電性凸状パターン層の非形成部として多数の開口部が形成され、前記プライマ層は該導電性凸状パターン層の非形成部での厚さに比べて導電性凸状パターン層の形成部での厚さが厚い、電磁波遮蔽材において、
導電性凸状パターン層は互いに交差する2群の平行線条群のうちの少なくとも1群について、導電性凸状パターン層の形成部である凸部の主切断面形状が、頂部両側の斜面の傾斜が互いに異なり、夫々の斜面の傾斜を透明基材表面から夫々凸部の外側で測った傾斜角について、一方を傾斜角θL、他方を傾斜角θRとしたときにθL>θR≧90°である、電磁波遮蔽材。
【請求項2】
傾斜が急峻で垂直に近い方の斜面の傾斜角θRが90〜110°である、請求項1記載の電磁波遮蔽材。
【請求項3】
導電性凸状パターン層の凸部内の導電性粒子の分布が、相対的に、プライマ層近傍において分布が疎であり頂部近傍において分布が密である、請求項1又は2記載の電磁波遮蔽材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−176194(P2011−176194A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40067(P2010−40067)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】