説明

電磁波遮蔽用積層材、電磁波遮蔽部材およびそれらの製造方法

【課題】最終的に製造される電磁波遮蔽部材の透視性を高めることができるとともに、電磁波遮蔽部材の製造工程においてエッチング不良に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することが可能な中間製造物としての電磁波遮蔽用積層材、電磁波遮蔽部材、および、これらの製造方法を提供する
【解決手段】電磁波遮蔽用積層材は、基材シート4と、基材シート4の表面の上に形成された接着層3と、金属箔10と、金属箔10の少なくとも一方の表面の上に形成された表面処理層2とを備え、基材シート4は、接着層3を介して表面処理層2に固着されている。電磁波遮蔽用積層材の製造方法は、金属箔10の一方の表面の上に表面処理層2を形成する工程と、基材シート4の表面の上に接着層3を形成する工程と、接着層3を介して表面処理層2に基材シート10を固着する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には電磁波遮蔽用積層材、電磁波遮蔽部材およびそれらの製造方法に関し、特定的にはプラズマディスプレイ等に用いられる電磁波遮蔽部材を製造するための中間製造物としての電磁波遮蔽用積層材、その電磁波遮蔽用積層材を用いて製造される電磁波遮蔽部材、それらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人が接近する環境下で利用する電子装置のうち電磁波を発生する電子装置、たとえば、陰極線管やプラズマディスプレイ等のディスプレイ用電子管は、人体への電磁波による弊害を考慮して電磁波放出の強さを規格内に抑えることが要求されている。さらに、プラズマディスプレイパネルにおいては、発光はプラズマ放電を利用しているので、周波数帯域が30MHz〜130MHzの不要な電磁波を外部に漏洩するため、他の機器、たとえば、情報処理装置等へ弊害を与えないように電磁波を極力抑制することが要求されている。
【0003】
これらの要求に対応し、一般的には、電磁波を発生する電子装置から装置の外部へ流出する電磁波を除去し、あるいは減衰させるために、電磁波を発生する電子装置等の外周部を適切な導電性部材で覆う電磁波シールド部材が設けられている。プラズマディスプレイパネル等のディスプレイ用パネルでは、良好な透視性のある電磁波遮蔽板をディスプレイの前面に設けるのが普通である。
【0004】
特に、透明なプラスチック基板の表面に金属薄膜からなるメッシュ層が形成された電磁波遮蔽板は、電磁波シールド性および光透過性の面において特に良好であり、近年、ディスプレイ用として広く用いられるようになってきている。
【0005】
特開2001−210988号公報(特許文献1)には、ディスプレイの前面に置いて用いられる電磁波遮蔽板用の部材で、透明なフィルム基材の一面に金属薄膜からなるメッシュを積層した電磁波遮蔽性と透視性を有する電磁波遮蔽用部材を製造するための製造方法が記載されている。この製造方法は、帯状に連続する金属箔と帯状に連続するフィルム基材とが貼り合わさって帯状に連続する積層部材を形成する積層部材形成処理と、この積層部材を連続的ないし間欠的に搬送しながら、順に、積層部材の金属箔をエッチングしてメッシュ等を形成するための耐エッチング性のレジストマスクを、金属箔のフィルム基材側でない面を覆うように、その長手方向に沿い連続的ないし間欠的に形成するマスキング処理と、レジストマスクの開口から露出している金属箔部分をエッチングして、金属薄膜からなるメッシュ等を形成するエッチング処理とを有する。
【0006】
しかしながら、この製造方法において、積層部材形成処理時に、接着剤を必要としないフィルム基材として、たとえば、エチレンビニルアセテート、エチレンアクリル酸樹脂、エチレンエチルアクリレート、アイオノマー樹脂等のフィルム基材を用いる場合、金属箔とフィルム基材の密着性が充分ではないので、エッチング処理中に金属メッシュ層の一部が欠落するという問題がある。
【0007】
また、上記の製造方法において、積層部材形成処理時に、接着剤を必要とするフィルム基材として、たとえば、ポリエステル、ポリエチレン等のフィルム基材を用いる場合、接着剤としてコーティングされるポリオレフィン、ポリエステエステル、エチレンビニルアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の表面に金属薄膜の表面粗度が転写され、エッチング処理後に、接着剤として用いられた樹脂層の表面が金属メッシュ層の開口部にて露出するため、透視性が劣るという問題がある。
【0008】
上記の透視性の問題を解消する方法として、特開2003−271065号公報(特許文献2)には、ディスプレイの前面に配置して使用される電磁波遮蔽部材を製造する方法が記載されている。この製造方法は、透明基材上に形成した金属箔をエッチングして金属製メッシュとするエッチング工程と、この金属製メッシュに接着剤付フィルムをオーバーコートするオーバーコート工程と、透明基材、金属製メッシュおよび接着剤付フィルムの積層体を熱プレスする熱プレス工程とを有する。
【0009】
この製造方法では、エッチング工程で白色化しても、その後のオーバーコート工程と熱プレス工程とを行うことにより、透明化されている。しかし、エッチング工程において形成される金属メッシュ層に、エッチング不良によって欠陥が生じるために透視性が劣化するという問題がある。このようなエッチング不良に基づく透視性の劣化という問題については上記の製造方法によっては解消されていない。すなわち、上記の製造方法では、エッチング工程の直後においては透明化されていないので、エッチング不良に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することは困難である。
【0010】
また、特開平11−266096号公報(特許文献3)には、EMIシールド材料において、金属箔層の接着層と接する面が凹凸に形成されているので、エッチングにより金属箔層が除去された後で接着層の表面が露出した部分には金属箔層の凹凸が転写され、その結果、視認性が低下するという問題が記載されている。この問題を解決するために、上記の公報に記載されたEMIシールド材料では、透明基材の片面に接着層が設けられ、接着層上にアース部と格子状、ストライプ状またはハニカム状等のパターンからなるシールド部とを有する金属箔層が設けられ、少なくとも接着層の露出部を覆うように透明オーバーコート層が設けられている。
【0011】
この材料においては、エッチング工程で接着層の表面が露出した部分に金属箔層の凹凸が転写されても、その後に接着層の露出部を覆うように透明オーバーコート層を形成することにより、視認性を向上させている。しかし、エッチング工程において形成される金属メッシュ層に、エッチング不良によって欠陥が生じるために透視性が劣化するという問題がある。このようなエッチング不良に基づく透視性の劣化という問題については上記の材料によっては解消されていない。すなわち、上記の材料の製造方法では、エッチング工程の直後においては視認性が低下しているので、エッチング不良に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することは困難である。
【特許文献1】特開2001−210988号公報
【特許文献2】特開2003−271065号公報
【特許文献3】特開平11−266096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明の目的は、最終的に製造される電磁波遮蔽部材の透視性を高めることができるとともに、電磁波遮蔽部材の製造工程においてエッチング不良に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することが可能な中間製造物としての電磁波遮蔽用積層材、透視性を高めることができるとともに製造工程においてエッチング不良に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することが可能な電磁波遮蔽部材、および、これらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に従った電磁波遮蔽用積層材は、基材シートと、この基材シートの表面の上に形成された接着層と、金属箔と、この金属箔の少なくとも一方の表面の上に形成された表面処理層とを備え、基材シートは、接着層を介して表面処理層に固着されている。
【0014】
この発明の電磁波遮蔽用積層材においては、接着層と金属箔との間に表面処理層が介在しているので、基材シートと金属箔との積層後において接着層の表面に金属箔の表面の凹凸が転写されない。また、この発明の電磁波遮蔽用積層材を用いて電磁波遮蔽部材を製造するとき、金属箔をエッチングした後、エッチングマスクとして用いられるレジスト層を除去する際に、金属箔から露出した表面処理層を除去することにより、接着層の表面が露出するが、接着層の表面が露出した部分には金属箔の表面の凹凸が転写されていない。したがって、最終的に製造される電磁波遮蔽部材の透視性を高めることができる。
【0015】
また、この発明の電磁波遮蔽用積層材を用いて電磁波遮蔽部材を製造するとき、エッチング工程の後に、接着層の表面が露出した部分には金属箔の表面の凹凸が転写されていないので、視認性が向上している。このため、エッチング工程の直後に、エッチング不良に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することができる。
【0016】
この発明に従った電磁波遮蔽部材は、基材シートと、この基材シートの表面の上に形成された接着層と、網の目状の開口を有する金属箔からなる金属メッシュ層と、この金属メッシュ層の少なくとも一方の表面の上に形成された表面処理層とを備え、基材シートは、接着層を介して表面処理層に固着されている。
【0017】
この発明の電磁波遮蔽部材においては、接着層と金属メッシュ層との間に表面処理層が介在しているので、製造工程において基材シートと金属箔とが積層されるが、その積層後に接着層の表面に金属箔の表面の凹凸が転写されない。このため、接着層の表面が露出した部分には金属箔の表面の凹凸が転写されていないので、電磁波遮蔽部材の透視性を高めることができる。
【0018】
この発明に従った電磁波遮蔽用積層材の製造方法は、金属箔の一方の表面の上に表面処理層を形成する工程と、基材シートの表面の上に接着層を形成する工程と、接着層を介して表面処理層に基材シートを固着する工程とを備える。
【0019】
この発明の電磁波遮蔽用積層材の製造方法においては、接着層を介して金属箔上の表面処理層に基材シートを固着するので、接着層と金属箔との間に表面処理層が介在している。このため、基材シートと金属箔との積層後において接着層の表面に金属箔の表面の凹凸が転写されない。また、この製造方法で得られた電磁波遮蔽用積層材を用いて電磁波遮蔽部材を製造するとき、金属箔をエッチングした後、エッチングマスクとして用いられるレジスト層を除去する際に、金属箔から露出した表面処理層を除去することにより、接着層の表面が露出するが、接着層の表面が露出した部分には金属箔の表面の凹凸が転写されていない。したがって、最終的に製造される電磁波遮蔽部材の透視性を高めることができる。
【0020】
また、この製造方法で得られた電磁波遮蔽用積層材を用いて電磁波遮蔽部材を製造するとき、金属箔のエッチング工程の後に、接着層の表面が露出した部分には金属箔の表面の凹凸が転写されていないので、視認性が向上している。このため、エッチング工程の直後に、エッチング不良に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することができる。
【0021】
この発明に従った電磁波遮蔽部材の製造方法は、金属箔の一方の表面の上に表面処理層を形成する工程と、基材シートの表面の上に接着層を形成する工程と、接着層を介して表面処理層に基材シートを固着する工程と、パターンを有するレジスト層を金属箔の他方の表面の上に形成する工程と、レジスト層をマスクとして用いて金属箔の一部をエッチングすることによって網の目状の開口を有する金属メッシュ層を形成する工程と、金属メッシュ層を形成した後、レジスト層と、金属メッシュ層から露出した表面処理層とを除去する工程とを備える。
【0022】
この発明の電磁波遮蔽部材の製造方法においては、接着層を介して金属箔上の表面処理層に基材シートを固着するので、接着層と金属メッシュ層との間に表面処理層が介在している。このため、基材シートと金属箔とが積層されるが、その積層後に接着層の表面に金属箔の表面の凹凸が転写されない。また、金属箔をエッチングして金属メッシュ層を形成した後、エッチングマスクとして用いられるレジスト層を除去する際に、金属メッシュ層から露出した表面処理層を除去することにより、接着層の表面が露出するが、接着層の表面が露出した部分には金属箔の表面の凹凸が転写されていない。したがって、最終的に製造される電磁波遮蔽部材の透視性を高めることができる。
【0023】
また、この発明の電磁波遮蔽部材の製造方法においては、エッチング工程の後に、接着層の表面が露出した部分には金属箔の表面の凹凸が転写されていないので、視認性が向上している。このため、エッチング工程の直後に、エッチング不良に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のようにこの発明によれば、最終的に製造される電磁波遮蔽部材の透視性を高めることができるとともに、エッチング工程の直後に、エッチング不良に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1〜図5は、この発明の一つの実施の形態として、電磁波遮蔽用積層材の製造方法と、この電磁波遮蔽用積層材を用いた電磁波遮蔽部材の製造方法とを工程順に示す模式的な断面図である。
【0026】
図1に示すように、たとえば、銅箔からなる金属箔10の一方の表面の上に表面処理層2を形成する。
【0027】
一方、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材シート4の表面の上に接着層3を形成する。そして、図2に示すように、表面処理層2が形成された金属箔10を基材シート4の上に積層することにより、接着層3を介して表面処理層2に基材シート4を固着する。このようにして、電磁波遮蔽部材の中間製造物としての本発明の電磁波遮蔽用積層材が得られる。このとき、接着層3を介して金属箔10上の表面処理層2に基材シート4を固着するので、接着層3と金属箔10との間に表面処理層2が介在している。このため、基材シート4と金属箔10とが積層されるが、その積層後に接着層3の表面に金属箔10の表面の凹凸が転写されない。
【0028】
その後、図3に示すように、所定のメッシュ状のパターンを有するレジスト層5を金属箔10の他方の表面の上に形成する。
【0029】
そして、図4に示すように、レジスト層5をマスクとして用いて金属箔10の一部をエッチングすることによって網の目状の開口を有する金属メッシュ層1を形成する。このとき、表面処理層2の露出した一方の表面部分には金属箔10の表面の凹凸が転写されている。
【0030】
最後に、図5に示すように、レジスト層5を除去すると同時に、金属メッシュ層1から露出した表面処理層2を除去する。これにより、電磁波遮蔽部材100が得られる。このとき、接着層3の表面が露出するが、接着層3の表面が露出した部分には金属箔10の表面の凹凸が転写されていない。したがって、最終的に製造される電磁波遮蔽部材の透視性を高めることができる。
【0031】
また、エッチング工程の直後において、いいかえれば、レジスト層5を除去し、金属メッシュ層1の表面が露出した直後において、接着層3の表面が露出した部分には金属箔10の表面の凹凸が転写されていないので、視認性が向上している。このため、エッチング工程の直後に、エッチング不良や欠陥に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することができる。この判定に基づいて、エッチング工程の条件、たとえば、エッチング液の温度、エッチング速度等を調整し、リアルタイムでフィードバックしてエッチング工程を制御することができる。
【0032】
基材シート4の材質は、透明性および耐エッチング性に優れたものであれば特に限定されず、濁度(ヘイズ)が1以下のポリエステル系またはポリオレフィン系のフィルムが好適に使用される。特に、透明性および機械特性の点から、基材シートの材質は50〜200μmの2軸延伸タイプのものが好ましい。
【0033】
金属箔10は、特に限定されず、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等を使用することができるが、特に、厚みが5〜20μm程度の銅箔が好適に使用される。金属箔10は、少なくとも一方の表面に黒化処理を施したものを使用してもよい。
【0034】
金属箔10の少なくとも一方の表面に表面処理層2を形成し、表面処理層2の表面粗度(Rz)を1.5μm以下とする。表面処理層2の表面粗度(Rz)が1.5μmを超えると、接着層3の表面に凹凸が転写されるので、金属メッシュ層1から露出する接着層3の表面に凹凸が残存し、最終的に製造される電磁波遮蔽部材の透視性が低下し、また、エッチング工程の直後に、エッチング不良や欠陥に基づく透視性の劣化に対処するためにエッチング工程の良否を即座に判定することが困難になる。
【0035】
金属箔10の表面上に形成される表面処理層2の材料は、レジスト層5を除去する際に容易に溶解し、金属箔10との密着性に優れ、上記の表面粗度(Rz)を満足するものであれば特に限定されないが、たとえば、ビニル系、アクリル系、エポキシ系等の合成樹脂製コーティング剤を、グラビアコート、ロールコートなどの汎用の方法により金属箔の表面上にコーティングすることによって表面処理層を形成すればよい。
【0036】
接着層3の材料は、特に限定されず、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などを使用することができ、スクリーン印刷法、ロールコーター法、ダイコーター法等により基材シートの表面上に接着層を形成すればよい。
【0037】
上述したように、本発明のディスプレイ用電磁波遮蔽部材100は、本発明の積層材を構成する金属箔10をエッチングして金属メッシュ層1を形成することにより得られる。さらに具体的には、本発明の積層材を構成する金属箔10の表面上に耐エッチング性のレジスト層5を形成した後、図3と図4に示すようにレジスト層5の開口から露出している金属箔10の部分をエッチング処理し、図5に示すようにレジスト層5を剥離処理することにより、金属メッシュ層1を形成する。
【0038】
本発明の製造方法では、エッチング処理の後には、図4に示すように、金属箔10の表面粗度が転写されている表面処理層2がレジスト層5の開口から露出し、透明性が劣る状態にある。しかしながら、その後のレジスト層5の剥離処理により、金属箔10の表面粗度が転写されている表面処理層2が溶解除去されるため、表面処理層2の下にある平滑な表面の接着層3が露出することになるので、本発明の積層材を用いると、エッチング工程後において透明性が向上する。
【実施例】
【0039】
実施例1、2および従来例に示す積層材およびディスプレイ用電磁波遮蔽部材を作製し、日本電色工業株式会社製 COH300A を用いて濁度(ヘイズ)を測定することにより、透明性を評価した。
【0040】
また、表面粗度(Rz)は、JIS B 0651に準拠して、触針式表面粗さ測定機(株式会社東京精密製 サーフコム1400D)を用いて測定した。
【0041】
(実施例1)
図1に示すように、金属箔10として、片面黒化処理した厚みが10μmの電解銅箔(三井金属鉱業株式会社製 TQM2−VLP)の黒化処理面(表面粗度Rz=1.8μm)に、表面処理層2として、アクリル系コーティング剤(大日本インキ化学工業株式会社製 ダイキュアRE97)2g/mをグラビア法により塗布した。電解銅箔の表面上の表面処理層の表面粗度Rzは1.2μmであった。
【0042】
次に、図2に示すように、電解銅箔の表面上の表面処理層2と、基材シート4として厚みが100μmのPETフィルム(基材シート、東洋紡績株式会社製 コスモシャインA4100)とを、接着層3としてポリエステル系接着剤(三井武田ケミカル株式会社製 タケラックA515)10g/mを用いてドライラミネート法により貼り合せることによって、積層材を作製した。
【0043】
そして、図3に示すように、得られた積層材の電解銅箔の表面上に、厚みが25μmのドライフィルムエッチングレジストをロールラミネートで形成し、露光および現像により、線幅が10μm、線間が300μmの格子状パターンのレジスト層5を形成した。
【0044】
その後、図4に示すように、レジスト層5で覆われていない部分の電解銅箔を塩化第2鉄液によりエッチング除去した。
【0045】
最後に、図5に示すように、レジスト層5と、露出している表面処理層2とを、温度20℃の3%水酸化ナトリウム水溶液に10秒間浸漬して剥離除去し、水洗後、温度70℃の温風で乾燥させることにより、ディスプレイ用電磁波遮蔽部材100を得た。
【0046】
得られたディスプレイ用電磁波遮蔽部材の濁度は6%であり、透明性は良好であった。
【0047】
(実施例2)
図1に示すように、金属箔10として、片面黒化処理した厚みが10μmの電解銅箔(日本電解株式会社製 PBR−10A)の黒化処理面(表面粗度Rz=1.7μm)に、表面処理層2として、アクリル/スチレン系コーティング剤(株式会社T&K東華製 KSE)2.5g/mをグラビア法により塗布した。電解銅箔の表面上の表面処理層の表面粗度Rzは0.8μmであった。
【0048】
次に、図2に示すように、電解銅箔の表面上の表面処理層2と、基材シート4として厚みが100μmのPETフィルム(基材シート、東洋紡績株式会社製 コスモシャインA4100)とを、接着層3としてウレタン系接着剤(大日本インキ化学工業株式会社製 LX500)15g/mを用いてドライラミネート法により貼り合せることによって、積層材を作製した。
【0049】
作製された積層材から、実施例1と同様にしてディスプレイ用電磁波遮蔽部材を得た。
【0050】
得られたディスプレイ用電磁波遮蔽部材の濁度は2%であり、透明性は良好であった。
【0051】
(従来例)
表面処理層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、積層材を作製し、作製された積層材からおよびディスプレイ用電磁波遮蔽部材を得た。
【0052】
得られたディスプレイ用電磁波遮蔽部材の濁度は50%であり、不透明であった。
【0053】
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の一つの実施の形態の電磁波遮蔽部材の製造方法にて、第1の製造工程における模式的な断面を示す図である。
【図2】この発明の一つの実施の形態の電磁波遮蔽部材の製造方法にて、第2の製造工程における模式的な断面を示す図である。
【図3】この発明の一つの実施の形態の電磁波遮蔽部材の製造方法にて、第3の製造工程における模式的な断面を示す図である。
【図4】この発明の一つの実施の形態の電磁波遮蔽部材の製造方法にて、第4の製造工程における模式的な断面を示す図である。
【図5】この発明の一つの実施の形態の電磁波遮蔽部材の製造方法にて、第5の製造工程における模式的な断面を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1:金属メッシュ層、2:表面処理層、3:接着層、4:基材シート、5:レジスト層、10:金属箔、100:電磁波遮蔽部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シートの表面の上に形成された接着層と、
金属箔と、
前記金属箔の少なくとも一方の表面の上に形成された表面処理層とを備え、
前記基材シートは、前記接着層を介して前記表面処理層に固着されている、電磁波遮蔽用積層材。
【請求項2】
基材シートと、
前記基材シートの表面の上に形成された接着層と、
網の目状の開口を有する金属箔からなる金属メッシュ層と、
前記金属メッシュ層の少なくとも一方の表面の上に形成された表面処理層とを備え、
前記基材シートは、前記接着層を介して前記表面処理層に固着されている、電磁波遮蔽部材。
【請求項3】
金属箔の一方の表面の上に表面処理層を形成する工程と、
基材シートの表面の上に接着層を形成する工程と、
前記接着層を介して前記表面処理層に前記基材シートを固着する工程とを備えた、電磁波遮蔽用積層材の製造方法。
【請求項4】
金属箔の一方の表面の上に表面処理層を形成する工程と、
基材シートの表面の上に接着層を形成する工程と、
前記接着層を介して前記表面処理層に前記基材シートを固着する工程と、
パターンを有するレジスト層を前記金属箔の他方の表面の上に形成する工程と、
前記レジスト層をマスクとして用いて前記金属箔の一部をエッチングすることによって網の目状の開口を有する金属メッシュ層を形成する工程と、
前記金属メッシュ層を形成した後、前記レジスト層と、前記金属メッシュ層から露出した前記表面処理層とを除去する工程とを備えた、電磁波遮蔽部材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−234858(P2007−234858A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54600(P2006−54600)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】