説明

電磁波遮蔽電話ボックス

【課題】携帯電話機から放射される電磁波及び通話による騒音の外部への漏れを遮蔽できるようにした電磁波遮蔽電話ボックスを提供すること。
【解決手段】導電物質で主要部が形成された、床パネル,壁パネル20,ドアパネル30及び天井パネルにて構成される電磁波遮蔽電話ボックスにおいて、隣接する壁パネル20及びドアパネル30間に位置する4本の導電物質であるアルミニウム製の支柱50を設け、支柱50と壁パネル20の両端部に設けられた側端部材24とを、導電性ゴム部材60を介在して圧着嵌合により連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁波遮蔽電話ボックスに関するもので、更に詳細には、携帯電話機の使用を可能にした電磁波遮蔽電話ボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機は電波の届く範囲であれば場所を選ばずに送受信できるので、便利である反面、携帯電話機から放射される電磁波が精密機器や医療機器等に悪影響を与える虞があることから携帯電話機の使用が禁止される場所が設けられている。例えば、病院,劇場,ホテルのロビー等では携帯電話機の使用が禁止されている。
【0003】
携帯電話機の使用に伴う電磁波の放射を防止する手段として、電磁シールド層を有する壁面にて形成された開閉自在な箱体を、支持部材にて保持して床に立設した電話ボックスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、携帯電話機を使用する者が中に入ってその携帯電話機を使用するための空間を区画するボックス本体とドアとからなり、ボックス本体を区画する区画部のうち少なくとも側壁部を防音壁で構成し、ボックス本体を取り囲む区画部には、携帯電話機から発せられる電波が外部に漏れないようにする電波遮蔽部を備える構造のものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−309789(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開2002−208884(特許請求の範囲、図2,図3,図5〜図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者すなわち特開2002−309789に記載された技術においては、携帯電話機を使用する者の上半身が箱体内に包囲される構造であるため、携帯電話機から放射される電磁波が箱体の下部側から外部に漏れる虞があると共に、通話による騒音が外部に漏れる虞もあった。
【0006】
また、後者すなわち特開2002−208884に記載された技術においては、ボックス本体を区画する区画部のうち少なくとも側壁部を防音壁で構成し、ボックス本体を取り囲む区画部に電波遮蔽部を備える構造であるため、前者に比べて、電磁波及び騒音の外部への漏れを減少することができるが、電話ボックスを構成するボックス本体及びドア全体が電磁波遮蔽及び防音構造でないため、これにおいても携帯電話機から放射される電磁波や通話による騒音が外部に漏れる虞がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、携帯電話機から放射される電磁波及び通話による騒音の外部への漏れを遮蔽できるようにした電磁波遮蔽電話ボックスを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、導電物質で主要部が形成された、床パネル,壁パネル,ドアパネル及び天井パネルにて構成される電磁波遮蔽電話ボックスを前提とし、請求項1記載の発明は、隣接する上記壁パネル及びドアパネル間に位置する4本の導電物質からなる支柱を具備し、 上記支柱と壁パネルの側端部とを、導電性ゴム部材を介在して圧着嵌合により連結してなる、ことを特徴とする。
【0009】
このように構成することにより、電話ボックスを構成する導電性を有する壁パネルの隣接部同士を導電性ゴム部材を介して確実に導電状態で連結することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に加えて、上記ドアパネルの下端に、導電性ゴム部材を介在して、導電物質からなり、かつ、電話ボックス内方側に向かって上り勾配の傾斜面を有する閉鎖傾斜部材を沿設し、 上記床パネルにおける上記ドアパネルの閉鎖位置に、導電物質からなり、かつ、上記閉鎖傾斜部材の傾斜面と係合する外方に向かって下り勾配の傾斜面を有する戸当り部材を設置してなる、ことを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、ドアパネルを閉鎖した状態において、導電性を有するドアパネルと床パネルとを確実に導電状態で連結することができる。また、戸当り部材が外方に向かって下り勾配の傾斜面を有するので、利用者が躓く虞がない。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明に加えて、上記支柱と壁パネルの側端部とを、導電性ゴム部材を介在して圧着嵌合により連結し、 上記ドアパネルの下端に、導電物質からなる閉鎖部材を沿設し、 上記床パネルにおける上記ドアパネルの閉鎖位置に、ドアパネルが閉鎖した際に、上記閉鎖部材に圧接する導電ゴム製の戸当り部材を設置してなる、ことを特徴とする。この場合、上記戸当り部材は、床パネルに止着される導電物質からなる押縁にて圧着されると共に、この戸当り部材におけるボックス外方側に中空部を形成する方が好ましい(請求項5)。
【0013】
このように構成することにより、ドアパネルを閉鎖した状態において、導電性を有するドアパネルと床パネルとを確実に導電状態で連結することができる。この場合、戸当り部材を床パネルに止着される導電物質からなる押縁にて圧着することにより、戸当り部材を強固に床パネル上に設置することができ、また、戸当り部材におけるボックス外方側に中空部を形成することにより、ドアパネルの閉鎖時の衝撃を緩和することができると共に、ドアパネルと床パネルとを更に確実に導電状態で連結することができる(請求項5)。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の電磁波遮蔽電話ボックスにおいて、上記支柱は、壁パネルを嵌合する狭隘開溝を有すると共に、狭隘開口溝の開口部の対向面に導電性ゴム部材の取付溝を有し、 上記壁パネルは、側端部に導電物質からなる端部材を有すると共に、端部材には上記狭隘開口溝内に突入する一対の嵌合突片を突設し、かつ、嵌合突片の先端に、上記取付溝を構成する内側壁片に係合する係止爪を形成してなる、ことを特徴とする。
【0015】
このように構成することにより、支柱と壁パネルの連結を容易にすることができると共に、確実に導電状態に連結することができる。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の電磁波遮蔽電話ボックスにおいて、上記壁パネル及びドアパネルは、プラスチック又はガラス等からなる窓部を有し、この窓部には、電磁波遮蔽膜が形成されている、ことを特徴とする。この場合、電磁波遮蔽膜として、例えば電磁波遮蔽フィルムを窓部のプラスチック又はガラスに貼着するものやインジウムすず酸化物(ITO),メッシュ膜等を蒸着によって形成することができる。
【0017】
このように構成することにより、窓部における電磁波の遮蔽を確実にすることができる。
【0018】
また、この発明において、上記導電物質をアルミニウム,鉄等の導電金属で形成する方が好ましい(請求項7)。
【0019】
また、この発明において、電磁波減衰量を周波数800MHz〜2.2GHz帯で10dB以上、遮音性能を周波数1000〜4000Hz帯で20dB以上とする方が好ましい(請求項8)。
【0020】
このように構成することにより、電磁波の漏れを人への電磁波の影響を与えない範囲に減衰することができ、また、通話による騒音を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0022】
(1)請求項1〜3記載の発明によれば、電話ボックスを構成する導電性を有する壁パネルの隣接部同士を導電性ゴム部材を介して確実に導電状態で連結することができるので、電磁波の外部への漏れを確実に抑制することができる。
【0023】
(2)請求項2記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更にドアパネルを閉鎖した状態において、導電性を有するドアパネルと床パネルとを確実に導電状態で連結することができるので、電磁波の外部への漏れを確実に抑制することができる。また、戸当り部材が外方に向かって下り勾配の傾斜面を有するので、利用者が躓く虞がなく、安全である。
【0024】
(3)請求項3記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更にドアパネルを閉鎖した状態において、導電性を有するドアパネルと床パネルとを確実に導電状態で連結することができるので、電磁波の外部への漏れを確実に抑制することができる。この場合、戸当り部材を床パネルに止着される導電物質からなる押縁にて圧着することにより、戸当り部材を強固に床パネル上に設置することができ、また、戸当り部材におけるボックス外方側に中空部を形成することにより、ドアパネルの閉鎖時の衝撃を緩和することができると共に、ドアパネルと床パネルとを更に確実に導電状態で連結することができる(請求項5)。
【0025】
(4)請求項4記載の発明によれば、支柱と壁パネルの連結を容易にすることができると共に、確実に導電状態に連結することができるので、上記(1)に加えて、更に組立作業を容易にすることができる。
【0026】
(5)請求項6記載の発明によれば、上記(1)〜(4)に加えて、更に窓部における電磁波の遮蔽を確実にすることができる。
【0027】
(6)請求項7記載の発明によれば、上記(1)〜(5)に加えて、更に電磁波の漏れを人への電磁波の影響を与えない範囲に減衰することができ、また、通話による騒音を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1は、この発明に係る電磁波遮蔽電話ボックス(以下に電話ボックスという)の使用状態を示す概略斜視図、図2は、上記電話ボックスの正面図(a)及びその側面図(b)、図3は、上記電話ボックスの横断面図である。
【0030】
上記電話ボックス1は、電磁波遮蔽機能を有する導電物質で主要部が形成された、床パネル10,3枚の壁パネル20,ドアパネル30及び天井パネル40にて構成されており、隣接する壁パネル20及びドアパネル30間に位置する4本の導電物質からなる支柱50を具備し、この支柱50と壁パネル20の側端部とを、導電性ゴム部材60を介在して圧着嵌合により連結してなる。
【0031】
上記のように構成される電話ボックス1内には、機種の異なる携帯電話機に接続可能なケーブル接続コネクタ(図示せず)が設置されており、ケーブル接続コネクタはアンテナ接続ケーブル2を介して建物4の窓部等に設置された収納ボックス3内に収納された外部アンテナ(図示せず)に接続されている。
【0032】
上記壁パネル20は、図3及び図4に示すように、導電物質例えばアルミニウム製の一対の表面板21と、表面板21の周辺部に配置される例えばアルミニウム製の押出形材にて形成される上,下端部材22,23及び側端部材24と、表面板21と各端部材22,23,24とで形成される空間内に充填される発泡ポリウレタン製の心材25とで電磁波遮蔽機能及び遮音機能を有するパネル本体26が形成されている。
【0033】
また、各壁パネル20の上部側には窓用開口27が設けられており、この窓用開口27の内側縁部に導電ゴム製のスペーサ28を介在してアルミニウム製押出形材にて形成される窓枠29が装着され、この窓枠29内にシール部材71及び押縁72を介して例えば透明なガラス製の窓部70が形成されている。また、この窓部70の片側面には電磁波遮蔽膜を形成する電磁波遮蔽膜フィルム73が貼着されている。なお、窓部70は必ずしも透明である必要はなく半透明であってもよく、また、ガラスに代えてプラスチックを用いてもよい。また、電磁波遮蔽膜を上記フィルム73に代えて例えばインジウムすず酸化物(ITO)やメッシュ膜等を蒸着により形成してもよい。このような蒸着によって電磁波遮蔽膜を形成することによって電磁波遮蔽膜を容易かつ均一に形成することができる。
【0034】
上記支柱50は、図4及び図4Aに示すように、断面中空扇状の基部51の隣接する角部に、壁パネル20を嵌合する狭隘開口溝52を有すると共に、狭隘開口溝52の開口部の対向面に導電性ゴム部材60の取付溝53を有している。この場合、取付溝53を構成する内外側壁片53a,53bの対向面すなわち溝内側面には、互いに平行な凹凸条部54が形成されており、取付溝53内に嵌合される板状の導電性ゴム部材60が位置ずれなく密接嵌合されるようになっている。なお、導電性ゴム部材60は少なくとも一方の取付溝53内に嵌合されていればよい。
【0035】
一方、壁パネル20の両側端部に設けられる側端部材24は、図4及び図4Aに示すように、両端に折曲片24aを有するチャンネル状基部24bの外側面に、支柱50の狭隘開口溝52内に突入する一対の嵌合突片24cが突設されている。この嵌合突片24cの先端には、取付溝53を構成する内側壁片53aに係合する先端に向かって狭小テーパ状の係止爪24dが形成されている。また、基部24bの内側面の両端部には一対の脚片24eが突設されている。これら脚片24eの基部24b側の対向する面には、基部24bとの間に適宜間隔をおいて突片24fが突設されており、この突片24fと基部24bの内側面とで形成される溝部24g内に例えば鋼製板材にて形成される第1の補強板24hが嵌挿されている。また、両脚片24eと表面板21との間には、例えばアルミニウム製板材にて形成される第2の補強板24iが嵌挿されている。
【0036】
なお、上記導電性ゴム部材60、側端部材24を別の構造としてもよい。例えば、図4Bに示すように、板状の伝導性ゴム部材60に代えて、支柱50の取付溝53内に嵌合される断面略矩形状の取付基部60aと、該取付基部60aの一側端から狭隘開口溝52側に向かって突出する可撓性を有するフィン部60bとからなるフィン付き導電性ゴム部材60Aを用いてもよい。このフィン付き導電性ゴム部材60Aも少なくとも一方の取付溝53内に嵌合すればよい。このように、フィン付き導電性ゴム部材60Aを用いることにより材料費の削減が図れると共に、側端部材24との密着性を良好にし、隣接する壁パネル20の導電状態を更に確実にすることができる。
【0037】
また、上記側端部材24に代えて、図4Bに示すような側端部材24Aを用いてもよい。すなわち、側端部材24Aを、両端に折曲片24aを有するチャンネル状基部24bと、該基部24bの外側面から支柱50の狭隘開口溝52内に突入すると共に先端が互いに近接方向に傾斜する一対の嵌合突片24kと、該嵌合突片24kの基端部に設けられて取付溝53の内側壁片53aに係合する係止爪24dとで構成してもよい。なお、側端部材24Aのチャンネル状基部24bは、壁パネル20を構成する心材25の発泡充填によって固定されている。
【0038】
また、上,下端部材22,23は、側端部材24と同様に形成されている。すなわち、側端部材24と同様の符号を用いて説明すると、図5に示すように、両端に折曲片24aを有するチャンネル状基部24bの外側面に、一対の嵌合突片24cが突設されており、また、基部24bの内側面の両端部には一対の脚片24eが突設されている。そして、上端部材22の一対の嵌合突片24c間には、アルミニウム製板材にて形成された天井パネル40の端部下面に導電ゴム製のパッキン41を介して突設されたアルミニウム製のチャンネル状補強部材42が嵌合固定されている。これにより、壁パネル20と天井パネル40とが導電状態で連結される。また、下端部材23の一対の嵌合突片24c間には、アルミニウム製板材にて形成された床パネル10の端部側上面に突設されたアルミニウム製の中空角部材11が嵌合固定されている。これにより、壁パネル20と床パネル10とが導電状態で連結される。なお、上,下端部材22,23の脚片24eと表面板21との間には、例えばアルミニウム製板材8にて形成される補強板24jが嵌挿されている。
【0039】
上記ドアパネル30は、図2に示すように、壁パネル20の端部に連結された支柱50に、導電物質例えばステンレス製のヒンジ31を介して開閉可能に装着されている。このドアパネル30は、アルミニウム製の中空押出形材にて形成される上,下枠部材32,33と一対の縦枠部材34及び中間仕切り枠部材35とで構成されるドアパネル枠体36と、このドアパネル枠体36の上下2箇所に形成される窓用開口37,38にそれぞれシール部材71を介して嵌合される例えば透明なガラス製の窓部70とで形成されている(図4及び図4A参照)。また、この窓部70の片側面には電磁波遮蔽膜例えば電磁波遮蔽フィルム73が貼着されている。この場合、窓部70は必ずしも透明である必要はなく半透明であってもよく、また、ガラスに代えてプラスチックを用いてもよい。また、電磁波遮蔽膜を上記フィルム73に代えて例えばインジウムすず酸化物(ITO)やメッシュ膜等を蒸着により形成してもよい。なお、ドアパネル30は、対峙する支柱50の対向面と天井パネル40出入口側下面に連結される導電物質例えばアルミニウム製押出形材にて形成される固定枠部材39内に収納されるようになっている。この場合、固定枠部材39は、図4及び図6に示すように、電話ボックス1内に延在する内側フランジ39aを具備し、この内側フランジ39aに設けられた狭隘開口状の嵌合溝39bに導電性ゴムパッキン39cが嵌合固定されている。したがって、ドアパネル30が閉鎖された状態において、ドアパネル30と壁パネル30及び天井パネル40とが導電状態に保持される。
【0040】
また、ドアパネル30の下端には、下端が狭隘開口のチャンネル状に形成されるアルミニウム製の取付部材80が固着(沿設)されており、この取付部材80内に鋼板製の導電部材81及び導電性ゴム部材82を介して導電物質である例えばステンレス製の閉鎖傾斜部材83が導電性ゴム部材82に圧接した状態で垂下状に取り付けられている。この場合、閉鎖傾斜部材83は、図6及び図7に示すように、取付部材80内に配設される水平片83aと、この水平片83aの下面に垂下する垂下片83bと、この垂下片83bの下端から電話ボックス1の内方側に向かって上り勾配の傾斜面を有する傾斜片83cとを具備している。このように形成される閉鎖傾斜部材83は、水平片83aが取付部材80内に配設された導電性ゴム部材82の下面に圧接された状態で取り付けられ、ドアパネル30の閉鎖に伴って傾斜片83cが、後述する床パネル10に設けられた戸当り部材90に接触係合することにより、上方に移動して水平片83aが導電性ゴム部材82に圧着し得るように形成されている。
【0041】
上記戸当り部材90は、図6及び図7に示すように、導電物質例えばアルミニウム製押出形材にて形成され、閉鎖傾斜部材83の傾斜片83cにスライドしながら接触係合すべく電話ボックス1の外方に向かって下り勾配の傾斜面90aを有している。このように形成される戸当り部材90は、アルミニウム製板部材にて形成される床パネル10における電話ボックス1の出入口すなわち閉鎖状態のドアパネル30の下方部位にねじ等の固定手段によって固定(設置)される。したがって、電話ボックス1の出入口の床面には段差が生じないので、利用者が躓く心配がない。
【0042】
なお、床パネル10における電話ボックス1内の表面には、ベニヤ板からなる下地材12を介して例えば塩化ビニル等の合成樹脂製シート13が貼着されている(図5及び図6参照)。
【0043】
上記天井パネル40は、床パネル10と同様にアルミニウム製板部材にて形成されており、下面における周辺部及び中間部には上記チャンネル状補強部材42やアルミニウム製の補強用中空角部材42Aがねじ等の固定手段によって固定されている(図6参照)。
【0044】
上記のようにドアパネル30の下端部に、導電性ゴム部材82を介在して電話ボックス1の内方側に向かって上り勾配の傾斜片83cを有する導電性の閉鎖傾斜部材83を沿設し、床パネル10におけるドアパネル30の閉鎖位置に、電話ボックス1の外方に向かって下り勾配の傾斜面90aを有する導電性の戸当り部材90を設置することにより、ドアパネル30の閉鎖状態においてドアパネル30と床パネル10とを確実に導電状態にすることができ、電話ボックス1内で使用する携帯電話機から発生する電磁波を確実に遮蔽することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、ドアパネル30の下端に沿設されるアルミニウム製の取付部材80内に鋼板製の導電部材81及び導電性ゴム部材82を介してステンレス製の閉鎖傾斜部材83を垂下状に取り付け、床パネル10における出入口部に、アルミニウム製押出形材にて形成される戸当り部材90を設置する場合について説明したが、必ずしもこのような構造とする必要はない。例えば、図8及び図9に示すように、ドアパネル30の下端に、導電物質例えばアルミニウム製板部材からなる閉鎖部材85を沿設し、床パネル10におけるドアパネル30の閉鎖位置に、ドアパネル30が閉鎖した際に、閉鎖部材85に圧接する導電ゴム製の戸当り部材90Aを設置してもよい。この場合、戸当り部材90Aは、取付ブロック部91の一側端に中空部92を有する膨隆部93を具備してなり、導電物質例えばアルミニウム製押出形材からなる押縁94を床パネル10にねじ止めすることによって圧着されている。
【0046】
上記のように、ドアパネル30の下端に、アルミニウム製板部材からなる閉鎖部材85を沿設し、床パネル10におけるドアパネル30の閉鎖位置に、ドアパネル30が閉鎖した際に、閉鎖部材85に圧接する導電ゴム製の戸当り部材90Aを設置することにより、ドアパネル30を閉鎖した状態において、導電性を有するドアパネル30と床パネル10とを確実に導電状態で連結することができる。また、戸当り部材90Aを床パネル10に止着される導電性の押縁94にて圧着することにより、戸当り部材90Aを強固に床パネル10上に設置することができ、また、戸当り部材90Aにおけるボックス外方側に中空部92を形成することにより、ドアパネル30の閉鎖時の衝撃を緩和することができると共に、ドアパネル30と床パネル10とを更に確実に導電状態で連結することができる。
【実施例】
【0047】
次に、この発明に係る電話ボックス1の電波遮蔽性能及び遮音性能について説明する。
【0048】
電波遮蔽性能及び遮音性能の実験に当って、上記実施形態で説明した電話ボックス1を構成する壁パネル20,ドアパネル30,天井パネル40,床パネル10等の材質,寸法を以下のように設定する。
【0049】
・壁パネル:アルミニウム製表面板(厚さ1mm)、発泡ポリウレタン製心材(厚さ40mm)、上,下,側端部材(アルミニウム製押出形材)
・ドアパネル:アルミニウム製枠材、見込40mm
・窓部:アルミニウム製窓枠、ガラス(透明5mm)電磁波遮蔽フィルム貼着
・天井パネル:アルミニウム製板材(厚さ3mm)
・床パネル:アルミニウム製板材(厚さ3mm){ベニヤ下地、塩化ビニルシート貼着}
・支柱:アルミニウム製押出形材
上記のように構成された電話ボックスにおいて、異なる周波数の携帯電話機を用いて周囲360°における電波遮蔽性能を調べたところ図10に示すような結果が得られた。この実験の結果、周波数が、800MHz帯の平均値は15.6dB,900MHz帯の平均値は17.6dB,1000MHz(1GHz)帯の平均値は17.3dB,2000MHz(2GHz)帯の平均値は16.0dB,2200MHz(2.2GHz)帯の平均値は17.3dBであり、いずれの周波数帯においても電界強度を15dB以上減衰する効果があり、医療機器及びペースメーカなどを使用している人へ電磁波の影響を与えることがないことが判った。
【0050】
また、図11に示すように、電話ボックス1内の床面から0.8mの位置にスピーカS{SS−02(リオン(株)製)}を配置し、電話ボックス1から1m離れた地上から1.1mの位置に騒音計N{NA27(リオン(株)製)}を配置し、そして、図示しない信号発生器{SF−05(リオン(株)製)}を用いて、周波数125Hz,250Hz,500Hz,1000Hz(1KHz),2000Hz(2KHz),4000Hz(4KHz),音の全領域であるAP(オールパス)における扉を開いた状態と扉を閉じた状態の遮音性能を調べたところ、表1に示すような結果が得られた。
【表1】

【0051】
上記実験の結果、周波数1000〜4000Hz帯で20dB以上の防音効果があり、会話による騒音を減少できることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明に係る電磁波遮蔽電話ボックスの使用状態を示す概略斜視図である。
【図2】上記電話ボックスの概略正面図(a)及び概略側面図(b)である。
【図3】上記電話ボックスの概略横断面図である。
【図4】上記電話ボックスの拡大横断面図である。
【図4A】図4の要部拡大断面図である。
【図4B】この発明における導電性ゴム部材と壁パネルの側端部材の別の形態を示す拡大断面図である。
【図5】この発明における天井パネル,壁パネル及び床パネルの連結状態を示す断面図である。
【図6】この発明におけるドアパネルの閉鎖状態を示す断面図である。
【図7】図6における導電性ゴム部材と閉鎖傾斜部材及び戸当り部材を示す分解斜視図である。
【図8】この発明における別の形態のドアパネルの閉鎖状態を示す断面図である。
【図9】図8における閉鎖部材,戸当り部材及び押縁を示す分解斜視図である。
【図10】この発明に係る電話ボックスの電磁波遮蔽性能の実験結果を示すグラフである。
【図11】この発明に係る電話ボックスの騒音性能を実験する機器の配置状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 床パネル
20 壁パネル
21 表面板
24,24A 側端部材
24c 嵌合突片
24d 係止爪
30 ドアパネル
40 天井パネル
50 支柱
52 狭隘開口溝
53 取付溝
53a 内側壁片
60,60A 導電性ゴム部材
70 窓部
73 電磁波遮蔽フィルム(電磁波遮蔽膜)
83 閉鎖傾斜部材
83c 傾斜片
90,90A 戸当り部材
90a 傾斜面
92 中空部
94 押縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電物質で主要部が形成された、床パネル,壁パネル,ドアパネル及び天井パネルにて構成される電磁波遮蔽電話ボックスであって、
隣接する上記壁パネル及びドアパネル間に位置する4本の導電物質からなる支柱を具備し、
上記支柱と壁パネルの側端部とを、導電性ゴム部材を介在して圧着嵌合により連結してなる、ことを特徴とする電磁波遮蔽電話ボックス。
【請求項2】
導電物質で主要部が形成された、床パネル,壁パネル,ドアパネル及び天井パネルにて構成される電磁波遮蔽電話ボックスであって、
隣接する上記壁パネル及びドアパネル間に位置する4本の導電物質からなる支柱を具備し、
上記支柱と壁パネルの側端部とを、導電性ゴム部材を介在して圧着嵌合により連結し、
上記ドアパネルの下端に、導電性ゴム部材を介在して、導電物質からなり、かつ、電話ボックス内方側に向かって上り勾配の傾斜面を有する閉鎖傾斜部材を沿設し、
上記床パネルにおける上記ドアパネルの閉鎖位置に、導電物質からなり、かつ、上記閉鎖傾斜部材の傾斜面と係合する外方に向かって下り勾配の傾斜面を有する戸当り部材を設置してなる、ことを特徴とする電磁波遮蔽電話ボックス。
【請求項3】
導電物質で主要部が形成された、床パネル,壁パネル,ドアパネル及び天井パネルにて構成される電磁波遮蔽電話ボックスであって、
隣接する上記壁パネル及びドアパネル間に位置する4本の導電物質からなる支柱を具備し、
上記支柱と壁パネルの側端部とを、導電性ゴム部材を介在して圧着嵌合により連結し、
上記ドアパネルの下端に、導電物質からなる閉鎖部材を沿設し、
上記床パネルにおける上記ドアパネルの閉鎖位置に、ドアパネルが閉鎖した際に、上記閉鎖部材に圧接する導電ゴム製の戸当り部材を設置してなる、ことを特徴とする電磁波遮蔽電話ボックス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電磁波遮蔽電話ボックスにおいて、
上記支柱は、壁パネルを嵌合する狭隘開口溝を有すると共に、狭隘開口溝の開口部の対向面に導電性ゴム部材の取付溝を有し、
上記壁パネルは、側端部に導電物質からなる端部材を有すると共に、端部材には上記狭隘開口溝内に突入する一対の嵌合突片を突設し、かつ、嵌合突片の先端に、上記取付溝を構成する内側壁片に係合する係止爪を形成してなる、ことを特徴とする電磁波遮蔽電話ボックス。
【請求項5】
請求項3記載の電磁波遮蔽電話ボックスにおいて、
上記戸当り部材は、床パネルに止着される導電物質からなる押縁にて圧着されると共に、この戸当り部材におけるボックス外方側に中空部を形成してなる、ことを特徴とする電磁波遮蔽電話ボックス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の電磁波遮蔽電話ボックスにおいて、
上記壁パネル及びドアパネルは、プラスチック又はガラス等からなる窓部を有し、この窓部には、電磁波遮蔽膜が形成されている、ことを特徴とする電磁波遮蔽電話ボックス。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の電磁波遮蔽電話ボックスにおいて、
上記導電物質がアルミニウム,鉄等の導電金属である、ことを特徴とする電磁波遮蔽電話ボックス。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の電磁波遮蔽電話ボックスにおいて、
電磁波減衰量を周波数800MHz〜2.2GHz帯で10dB以上、遮音性能を周波数1000〜4000Hz帯で20dB以上とした、ことを特徴とする電磁波遮蔽電話ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−132036(P2007−132036A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324592(P2005−324592)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(502444733)日軽金アクト株式会社 (107)
【Fターム(参考)】